【パブリックカンパニーとは】パソナが本社主要機能を淡路島に移転

経営企画

2020年8月31日、人材派遣大手の株パソナグループが、本社主要機能を淡路島に移転する、という報道が出ました。
これに対して世の中の反応は様々ですが、ガバナンス観点での指摘が非常に少ないように感じます。
今回は、会社の社会的意義とパブリックカンパニーとは、についてパソナの事例で考えてみます。

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パソナの淡路島への本社機能移転

まずは報道を見てみましょう。

人材サービス大手のパソナグループは、9月から段階的に東京都千代田区にある本社の主要機能を兵庫県の淡路島に移すと明らかにした。
経営企画や広報、人事などを担当する約1200人が対象で、2024年5月までに進める計画だ。災害などに備え、本社機能の東京への一極集中を避ける狙いもある。(以下略)

朝日新聞2020年8月31日「パソナ、本社の主要機能を淡路島に 東京一極集中避ける」より

ポイントとしては、次の通りのようです。

  • 2024年5月までに段階的に、本社主要機能を東京から兵庫県淡路島に移転
  • 対象は主要幹部、経営企画や人事などの本部社員の約1,200人
  • 通勤混雑や災害対応などのBCP的観点と、本社家賃,人件費などの削減も効果として見込む

なるほど、と。
これだけ見れば、大企業が率先して新しい取り組みを行う、というポジティブな報道のように見えます。

「リモート対応が可能だから淡路島に移転しよう」と言っているわけです。

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話自体は悪いことでは無い

まず、この話自体は決して悪いことではありません。

東京の一極集中化は従前より問題視されており、また同時に、国として地方創生の必要性も訴えられていました。
(本当に東京一極集中が悪いのか、地方創生がそもそもとして必要なのか、は別議論としてありますが。)

ですので、大企業が率先して地方に移転し、地方の活性化に貢献する、ということ自体は決しておかしな話ではありません。

また、東京の通勤の混雑・ストレスも、かなり昔から問題視されているにもかかわらず、一向に解消される様子が見られませんでした。
東京を中心としたエリアは家賃も高く、従業員にとって生活負担となる場合もある点も当然に指摘できます。

その意味で、従業員に新しい生活、新しい働き方を提案するということは、これもまた悪い話ではありません。
選択肢が増えるのですから。

更に、企業の役目の一つは利益を出すことです。

東京は本社費コストが高く、また生活費も高いが故に人件費も高く、企業の費用負担は大きなものとなっています。
地方に移転すれば、本社費コスト、人件費などが抑制され、高い利益の創出に繋がり得ます。
(後、おそらく、移転により補助金が出るのでしょう。)

つまり、これらの話をあげるならば、今回のパソナの淡路島への本社機能移転の話は、決して悪い話では無い、むしろ良い話の可能性が高いわけです。

それでは何が問題なのでしょうか?

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何が問題なのか?

問題は次の3点です。

  • 創業社長の公私混同
  • 地方創生ソリューションの累積する赤字
  • 従業員の選択可能性の乏しさ

創業社長の公私混同

まず、㈱パソナグループは東証1部上場企業であり、日本を代表する人材派遣大手企業です。
ようは、パブリックカンパニーとしての模範を示さなければいけない立場なわけです。

さて、こちらはパソナ社の最新の有報から出してきた「大株主の状況」です。

こちらにある通り、筆頭株主は創業社長様であり、株式の37%を保有しています。
資産管理会社分を含めれば、46.37%を保有している形になります。

そして住所を見ていただきたいのですが、「兵庫県神戸市」となっております。

次に、こちらの画像(パソナ社のグループ代表紹介ページ)をご覧ください。

㈱パソナグループHPより

創業社長様の出身が「兵庫県 神戸市 出身」となっています。

ようは、会社組織の筆頭株主であり最大権力者がご自身の出身地であり、かつ現住所の側に本社を移転しよう、という話なのです。
(各地域との比較を含めた慎重な検討の上で、会社組織として兵庫県が最適だ、という結論に至ったのであれば、もちろん問題はありませんよ。)

ガバナンス的観点で補足すると、役員9名(この中には、かの竹中平蔵氏も含まれています)のうち、独立性があるのは3名(監査等委員会)のみです。
この種の話があがった時、まず、取締役会で否決されることは無いと言って良いでしょう。

地方創生ソリューションの累積する赤字

次に、パソナ社の事業上の問題です。

こちらはパソナ社のセグメント利益になります。

問題となるのは「地方創生ソリューション」事業です。

こちらは、パソナふるさとインキュベーションやニジゲンノモリといった、兵庫県を中心とした、地域活性化、地方創生事業になります。
(京都や東北など、他地域でも事業活動を行ってはいるようです。)

地域貢献はパブリックカンパニーにとっての役割の一つですので、何かしらこのような事業を行うこと自体は問題があるわけではありません。

しかし、問題は利益が出ているのか?です。

過去5期分の累積赤字を算出してみると、約56億円の赤字になります。
(直近2期だけで約31億円の赤字)

この数字を見ると、創業社長の思い入れのある事業が赤字であり、その赤字事業の継続を目的とした本社機能移転なのでは?と疑いを持ってしまいます。
(BCPとか、コスト削減とかは、建前では?という疑いです。わかりやすいコスト削減は、地方創生ソリューション事業から撤退することなのですから!)
(もちろん、これからの日本において、地方の衰退懸念はあり、今の内に地方再生ノウハウを得られれば将来に渡って、大きなビジネスチャンスに成り得る、上記赤字は将来のための成長投資だ、という話ができないわけでもありません。)

従業員の選択可能性の乏しさ

最後に従業員の選択可能性の乏しさについてです。

こちら、最初は「希望する社員は異動&引っ越しで、他の社員はリモート対応なのね」と思いましたが。

が、しかし、どうやら違うようです。

各報道記事文面を見る限りは、1,200人が移住を行うこと前提、となっています。

冷静に考えて欲しいのですが、「リモート対応が可能だから淡路島に移転しよう」という話ならば、各従業員は東京近郊からリモート勤務でも良く無いか?と思いますよね。
あくまでも文面が正ならば、なのですが「退職という選択肢も可能な強制移住」としか読めないのです。

ようは、新手のリストラ策なのでは無いか?という疑念があるわけです。
(もしそうだとしたら、パブリックカンパニーがとる施策とは、少なくとも私は思えないのです。)

転勤有総合職の内勤社員に対して、淡路島への異動を命じ、これを受け入れられない場合は、減給前提の地域限定職に切り替えるという選択肢を受け入れることになる、それが嫌なら退職、ということが考えられます。

普通に、東京にいたい人は、リモートで良くないですかね、と思いませんか?
東京含む近郊でのリモート勤務さえ担保されているのならば、批判を行う要素が一気に減り(創業社長ご自身の出生地に対する思い入れは除き)、応援できる部分が残るのですが。。。

さらに付け加えると、パソナは仁風林という「迎賓館」を所有しており、各界の著名人を接待し話題になった件もあります。
ロビイング活動自体は悪い話では無いのですが、どのような意思決定を行い、どのようにお金を使っているのか?をネガティブな方向に疑われたとしても、あまり納得性のある弁解はできないでしょう。
ロビイング活動の結果として特定の大企業が、税金によって利益をあげる、という構造がどこまで受け入れられるでしょうか?
実際、接待問題や、持続化給付金受給問題で、批判をされています。

また、パソナ社は非正規雇用の増加を促している、という指摘もあります。
ここでは正規雇用・非正規雇用の話題に関する是非には触れませんが。
私自身も考えはニュートラルですし。


繰り返し書きますが。
パブリックカンパニーは、会社(株主)の利益のみならず、地域をはじめとし、社会に対する貢献を求められます。
その意味で、地域創生につながる意思決定を行われることは、決して悪い話ではありません。
(しかも、おそらく、移転に伴い補助金が出るはず。というかそれが目的?)

しかし上述のような状況ですと、ネガティブな形で穿ってモノを見られてもおかしくありません。

実際はそうでは無い、本当に働く人たちの事を考えた上での意思決定だ、という形で、良い意味で期待を裏切って欲しいものです。
この度の決断自体は物凄い事であり、リーダーシップという観点では見習うべき点も当然にあります。
蓋を開けてみたら、社会にとって良い方向に動いていた、という結論に終わる事を期待します。

例え上場企業でも、意思決定が特定個人の意思を強く組んだものになるのは決して珍しい話ではありません。
その意味で、一番の論点は従業員の納得性と、強制でない合意です。
今の居住地における(特にリモートワークで)勤務の選択、仮に断ったとしても待遇やキャリア等に影響させないという確約。
そういったものがあれば問題性が小さい、応援できる部分のある内容と言えます。
(諸々の是非は株主が判断することですからね。)

今回の報道は、社会の公器とは何か?パブリックカンパニーに求められていることは何か?について改めて考えさせられました。

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