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リモートワーク

「偶然のコミュニケーション」のために本当にオフィスは必要か?~イノベーションを考える~

テレワークが普及し、生産性が向上した、という声が多く出た一方、弊害についても聞かれるようになりました。
しかし、その弊害(イノベーションが生まれにくい、という意見)に科学的根拠はありません。
ここでは、オフィスとイノベーションについて、考えてみます。

やっぱりオフィスって必要だよね

テレワークが普及し、生産性が向上した、という声が多く出た一方、弊害についても聞かれるようになりました。

その一つがイノベーションの阻害。
いわゆる「偶然のコミュニケーション」が無くなることにより、イノベーションが生まれにくい環境が出来てしまった、という声です。

著名な人の声ですと、Appleのティム・クックCEOは「イノベーションは必ずしも計画的に行われるものではない。」とし、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは「在宅勤務は自然発生的なアイデア創発には使えない。」というものがあります。

これに限らず、各所で同様の声が出て、「やっぱりオフィスって必要だよね。」という考えが経営層を中心に見受けられるようになりました。

https://diamond.jp/articles/-/243734

そこに科学的根拠は無い

優秀な方々の発言なので、「やっぱりオフィスって必要だよね。」は正しいのでしょうか?

結論から言うと、そこに科学的根拠はありません。
より正確に言うと、テレワークでもイノベーションが十分に生まれる、という研究もまだ蓄積されていないし、オフィスが無ければイノベーションが生まれない、という研究もまだ蓄積されていない状況です。
ようは、「わからない」というのが今現時点での正しい捉え方でしょう。

一方、厳しい指摘もあります。

いわく、オフィスというものはごく少数の人、特に経営層にとって居心地の良いように設計されている(からそのような発想になるのだ)、というものです。
多くの労働者にとっては、決められた時間と場所でオフィスワークを行うことは、居心地が悪い状況です。
その結果として、長時間労働、燃え尽き症候群、身心の疾患諸々、という悪影響につながっています。

(このような話もあります。)

オフィスが居心地が良いと感じる一部の人にとっては、対面コミュニケーションは望ましい、必要と感じる者でしょうし、その逆はそうではない、ということです。
コミュニケーションを取りたがる人は、どのような環境でも取りたがるし、そうでない人はオフィスでヘッドホン/イヤホンを付けて、声をかけられない様に仕事していますよね?

「偶然のコミュニケーション」によるイノベーション創発は、ごくごく少数の人による偏ったものの可能性があるのです。

(オープンオフィスの生産性については、こちらの記事も参照。)

テレワーク環境でもイノベーションに繋げるには?

オフィスに対する疑念もある中、実際、テレワーク環境でもイノベーションに繋げる考え方やアイデアが登場してきています。

例えば、そもそもとして、イノベーションが生まれやすい、もしくは生まれない、というものは組織風土の問題だ、という考えです。

確かに、これまでオフィスワークが当たり前だった環境が長年続いていますが、イノベーションからはかけ離れた企業が腐るほど存在していたのは、動かしがたい事実と言えます。

https://www.dhbr.net/articles/-/6781

また、せっかくこれだけ技術が発達してきているのだから、それを活用しよう、というアイデアもあります。
具体としては、「仮想オフィス」を設置し、そこでコミュニケーションを取ろう、というものです。
(これらは、ほんの一例です。)

対面だとコミュニケーションが取りづらかった人でも、オンラインだとコミュニケーションが取れる場合があるので、より多くの視点を得ることに繋げることもできるでしょう。
(いわゆる“コミュニケーション能力”的観点のみならず、遠隔地にいる多様な人とコミュニケーションが取りやすくなる、という視点も当然にある。)

https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m005933.html

オフィスに対して否定的意見を書いてきましたが、一概に否定するものではないと考えています。
テレワークが当たり前になると、逆にたまに顔をあわせてのコミュニケーションが新鮮に、楽しく感じるものです。
(ネガティブに捉えると、出社する人が優遇され、テレワークで働く人が冷遇されるリスクも考えられる。)

そして、テレワークには明確なメリット、作業にフォーカスした場合の生産性向上、がありますので、活用しない手はありません。

イノベーション云々については上述のとおり答えのある世界では無いので、目の前の組織・働き方設計としては、うまくハイブリッドさせていくのが良い塩梅では無いかと考えます。

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