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【若い内からの認知症予防】コーヒーと認知症リスクの関係

運動と認知症リスクの関係は比較的よく知られています。
一方で、コーヒーと認知症リスクの関係は、あまり知られていないのではないでしょうか。
コーヒーは身体に良い、飲み過ぎは身体に悪い等、様々な話がありますが科学的にはどのような知見が示唆されているのでしょうか?

カフェイン摂取は認知症リスクを下げる

まず、こちらの研究です。

https://www.sciencedaily.com/releases/2017/03/170307130903.htm

マウスベースの実験室内の研究ですが、カフェインが認知症を予防する効果のある酵素の生産量を上昇させる効果があることを示しています。
研究では、認知症を予防する効果のある酵素が既に特定されている前提で、その酵素の生産量を上昇させる化合物は何なのかの調査が行われた結果として示されたものです。
また、特定の実験条件下に置かれたマウスにカフェインを投与すると、記憶力の改善という結果も出ました。

他にも、数千人~数十万人を対象にした大規模な調査で、コーヒーの摂取量が多い人は健康的に長生きできる傾向があること(長寿効果)、心疾患神経疾患、糖尿病などの疾病にかかりにくいことや、自殺率の低減(死亡リスクの低減)といった効果があることが、いくつかの研究で示されています。

https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2686145
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCHEARTFAILURE.119.006799
https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCULATIONAHA.115.017341

つまり、これらのことから、コーヒー(カフェイン)は身体に良い、と明確に言えます。

飲み過ぎはよろしくないようだ

もちろんネガティブな面もあります。

リンク先の研究(外部PDF)では20歳から90歳までの約4万4千人を対象に、コーヒーの消費量やその他諸々の生活習慣(食事、運動、飲酒、喫煙等々)と死亡原因について調査が行われました。
追跡調査は、約32年に渡って行われています。

その結果、1日4杯以上のコーヒーを飲んでいた人は、それより少ない量のコーヒーを飲んでいた群より圧倒的に死亡率が高いことが示されました(平均1.5倍から2倍程度の死亡リスク)。

別の研究では(37歳~73歳の1万7千人を対象に行われた)、1日6杯以上のコーヒーを飲む人は、それ以外の群に比べて認知症リスクが約53%高まることが示されました。

https://www.unisa.edu.au/media-centre/Releases/2021/excess-coffee-a-bitter-brew-for-brain-health/

つまり、過度なコーヒー(カフェイン)の摂取は身体に悪い、ということです。

適切な量は?

それでは、適切なコーヒーの摂取量はどの程度でしょうか?

平均的なコーヒーのカフェイン含有量は約50mg~100mgです。

上述の研究を踏まえると、これが1日1・2本程度がベストであり、多くても3本以内が望ましいと考えられます。
(いくつかの医療団体が示すカフェイン摂取量の上限も大体400mg/1日としている。)

最近多いエナジードリンクの類ですが、次のようなカフェイン含有量となっています。

  • モンスターエナジー:142mg
  • レッドブル(250ml):80mg
  • リポビタンD:50mg

例えば、朝に1杯、昼に1杯、午後に眠気覚ましにモンスターエナジーを1本飲んだ場合、これで上限近くに達します。


コーヒーの覚醒効果による生産性向上効果はよく知られていますが、単純作業に限定される、という知見もあります。
(つまり、コーヒーを飲んて脳が覚醒したかのように感じても、実際の認知機能は低下したままで、高度な作業の生産性は向上しない。

加えて、プラシーボ効果でも覚醒効果はある、という知見もあります。
コーヒーの香りをかぐだけでも覚醒効果があるようだ!

これらを踏まえると、コーヒーは1日1・2杯程度に抑える、エナジードリンクを飲みたいのであればその日はコーヒーは飲まない、というのが現時点の総合的な知見では良いように思います。

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生産性・業務効率化

カフェインによって生産性は本当にあがるのか?~タスクの種類による~

仕事に忙しい方にとってカフェインは友と言えるでしょう。
眠気を覚まし生産性をあげるため、朝やランチ後、業務が遅くなった夜にコーヒーを飲む方は珍しくないはずです。
しかし果たして、カフェインによって生産性は本当にあがるのでしょうか?

カフェインによる生産性向上効果はタスクの種類による、という話

カフェインの覚醒効果について、疑いを持つ人はほとんどいないでしょう。

実際、コーヒーの香りを嗅ぐだけで覚醒効果が出る、という研究がある位、人々の生活とカフェインは密接に結びついています。

また、多くの研究がカフェインによる生産性向上効果について支持をする結論を出しています。

しかしながら、タスクの種類によるカフェインの生産性向上効果について研究された実験は少ないのが実際です。

ミシガン州立大学の研究チームは、この点について研究を行いました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34014758/

研究では276人の参加者を対象に、次の変数を与えて生産性について測定しました。
(プレースキーピングとは、プレースキーピングとは、複数の手順を重ねる必要があるタスクを完遂させる能力のことです。)

  • 単純タスクと複雑なタスク(プレースキーピングタスク)
  • 徹夜か睡眠をとるか
  • カフェイン錠剤を摂取するかプラセボ錠剤を摂取するか

その結果、全ての睡眠不足の参加者について、単純タスクであろうが複雑なタスクであろうが、パフォーマンスの低下が起きることが示されました。

また、カフェイン錠剤は単純タスクについては生産性向上効果を示すものの、複雑なタスクについては生産性向上効果をほとんど示さないことがわかりました。

つまり、カフェインは単純タスクにのみ効果があり、複雑なタスクについては意味がない可能性があるわけです。

現実の仕事において

一般的に14時を過ぎたらカフェインは摂取しない方が良い、と言われますが、この助言は守った方が良いと言えます。

というのも複雑なタスクについてカフェインの効果が無いのであれば、午後の遅い時間以降にカフェインを摂取して仕事を頑張るより、仕事を切り上げてきちんとした睡眠をとって翌日にリカバリーした方が効率が良いと考えられるからです。

また、仕事が忙しい、複雑なタスクが多い方程、カフェインに頼らず、きちんとした睡眠をとることを心がけた方が良いことがわかります。

実際に眠気は覚めたとしてもパフォーマンス自体は落ちている、ということを認識し、自分自身を労わることを考えるのが吉と言えます。

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