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統計・経済

コンビニエンスストア販売額統計(2020年8月)

経産省「商業動態統計」の8月分が更新されています。
数字のアップデートと、消費者動向について、解説していきます。

出典元はこちらです。

直近でコンビニ各社別についても書いているので参考まで。

業績推移

販売額全体は回復傾向にあります。
1兆340億円の販売額です。

外食産業とは異なり、第2波の影響は受けていない模様です。

指数ベースなら、むしろ成長している位ですね。
2015=100で、季節調整済指数で104.4となっています。

日配食品:(ファストフード含め)お弁当、おにぎり、サンドイッチ、消費期限設定されている生鮮食品など
加工食品:飲料、カップ麺、お菓子などの賞味期限設定がされているもの、冷凍ものなど
非食品:食品以外の雑貨、雑誌、ゲームなどの商品
サービス:コピー、宅配便、チケット、プリペイドカードなど

カテゴリー別では、サービスを除く全てのカテゴリーで回復傾向を見せていましたが、8月に入り、非食品の数字が落ち始めています。

買い溜めは、もう不要だよね、という消費者心理が出たものと考えられます。

前年比ベースでは、まだ100%を切る水準にとどまっています。

指数ベースではサービスを除き100を超える水準が続いています。

地域別(8月)ですが、今まで東京、大阪、京都といった、都市圏や観光地の減少率が大きかったのですが、8月に入り、石川、沖縄、山形といった、これまで出てこなかった地域がトップに来ています。

これは、ビジネス都市圏で緊急事態宣言明け後、人が戻った影響が出ていると考えるのが良いでしょう。

6月分と比較してみるとわかりやすいです。

消費者動向の変化

消費者動向ですが、従前立てていた仮説「一回の買い物で済ませよう」説ですが、正しかったことがデータでわかりました。
(まぁ、当たり前っちゃ当たり前なんですけれどね。)

コロナ前とコロナ後で利用回数がどのように変化したか?の調査では、明らかに利用回数の減少傾向が見られます。

ソフトブレーン・フィールド株式会社「80万枚の購入レシートから 買い物行動のニューノーマルを検証」より

また、レシートデータからも同じことが家、平均購入単価および平均購入点数は4月に大きく増加しています。
20%増なので、ものすごい増加幅ですね。

ソフトブレーン・フィールド株式会社「80万枚の購入レシートから 買い物行動のニューノーマルを検証」より

買う商品カテゴリーに関しても、4月は日持ちのする食品類を中心に購入が増え、逆に生鮮系は減少しています。
(6月は一定、回復している。)

ソフトブレーン・フィールド株式会社「80万枚の購入レシートから 買い物行動のニューノーマルを検証」より

肌感覚としてそうだろう、と推測していた事が、このようにデータでも示されました。

消費者の行動心理を読んでいく知見が深まると言えるでしょう。

苦境はいつまで続くのか?

回復傾向は続いていますが、まだ前年比は割ったままです。

各所で語られてはいますが、ワクチンと治療薬が完成・普及し、終息宣言やそれに準じた発表がされない限り、状況は続くものと考えられます。

NRIの推計では、2021年4月においても、まだ今の低消費水準が続くという事です。

新型コロナウイルスそのものは、実体として”落ち着いた”状況と言え、マスク着用、手洗い・うがい・消毒等の当たり前の衛生対策を行えば、危ない物では無いのですが、如何せん人々の「心理」は難しいものがあります。
感染症より、人の方が恐ろしいのです。

また、ビジネス都市圏を中心に各地でリモートワーク移行も進んでいます。

まだまだ、今の厳しい経営環境は続く、という前提で考えていく必要があるでしょう。

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経営企画

コンビニの売上が6ヶ月連続で前年比マイナスだそうです

日本フランチャイズチェーン協会にて主要コンビニの業績が公表されており、それにあわせていくつかのメディアが、6ヶ月連続で前年比マイナスとの報道を行っていました。
今回は、コンビニ業界で起きている事を概観していきます。

6ヶ月連続の前年比マイナス報道

報道の内容は次の通りです。

日本フランチャイズチェーン協会が23日発表した8月の主要コンビニ7社の既存店売上高は、前年同月比5.5%減の9059億円だった。
(中略)
売上高、来店客数ともに6カ月連続で前年同月を下回った。

共同通信「コンビニ売上高5.5%減」より

これを見て、なるほど、コンビニ業界も大変なんだな、と受け止めるのは、まぁその通りだとは思います。

ネットの中には、24時間営業問題、フードロス問題、プラゴミ問題で逆風が吹いていた中でのコロナ影響だから、そもそもを見直さないと、と厳しい意見も出ていました。

この意見は一部の正しさはありつつ、もう少し数字を分解して考えてみた方が良いでしょう。

コンビニの苦境は観光客減とリモートワーク影響

こちらの記事でも解説したのですが、基本的にコンビニの苦境は「観光客減」と「リモートワーク影響」が大きいです。

下図の通り、主要な観光地域、そしてビジネス都市において前年比マイナスが大きくでています。

ようは、観光客に支えられていた消費はコロナ影響により観光客が激減している事、ビジネス都市においてはリモートワークに移行した企業が相対的に多いであろう都市から労働者の姿が減った事、が影響しているわけです。

緊急事態宣言が明けた6月以降は、従前の勤務形態に戻った会社も多いのか、各地で消費が回復しつつあった、というのがこれまでの状況です。

(7月以降の数字は、9月末に8月分までが更新されるので、それを持って数字を集計して記事をあげます。)

コンビニという事業運営、そしてその経営母体に対するモラル的云々は、まぁあまり関係が無いと言って良いでしょう。

コンビニ別に見てみる

コンビニ別に状況を見てみると、実は明暗がはっきりと分かれます。

下記はコンビニ各社が公表している業績資料を元に作成したグラフです。

各社公表資料より作成

セブンイレブン、スリーエフは今回のコロナ影響下においても影響を最小限に抑えて踏みとどまっています。

一方、ローソン、ファミリーマート、ポプラは著しいマイナス影響を受けている状況です。

規模の影響もあるのかと思いましたが、どうやらそうではなさそうです。

おそらく、どの領域の商品に力を入れているのか?が大きく影響しているのでは無いかと考えられます。

非食品、つまり食品類以外の商品については、各社とも取り組みの切り口は異なれど、一様に商品を取り揃えていますが、食品類は違います。

今回のコロナ影響下においては、日持ちのしない日配食品より、日持ちのする加工食品の方が、売上の下げ幅が小さいことがわかっています。

セブンイレブンは、日配食品より、加工食品が強い印象です。
(特に、パックのお惣菜類は非常に美味ですし、消費者から受け入れられるのがよくわかります。)

ファミリーマートも、「お母さん食堂」と言ったパックのお惣菜類はあるものの、店内調理品が多いのも特徴です(コンビニ内におけるファーストフード)。
ローソンも同様で、店内調理が多く、今回のコロナ影響下においてはマイナスに働いたものと考えられます。
(さらにローソンは、各種PB商品のデザイン改悪もあり、お惣菜類のマイナス影響は大きいものと思われます。)

ミニストップも店内調理を強く押していますね。
ポプラは全体の中途半端感がそもそも良くないものと思われます。
スリーエフの堅調は謎なのですが、地域毎のカスタマイズは他コンビニよりも柔軟に行われている印象なので、その柔軟性がコロナ影響下を最小限に抑えた可能性があります。


いずれにせよ、コンビニ業界の苦境は、しばらくは継続するものと考えられます。
特に、都心部、観光地のコンビに影響は地獄でしょう。

状況が改善されるのを座して待っていては、衰退するのみです。

如何に新たな価値を提案できるか?その魅力をPRできるか?
コンビニ各社の知恵の見せ所でしょう。

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統計・経済

コンビニエンスストア販売額統計(2020年6月)

経産省「商業動態統計」の6月分が更新されています。
前回の4月分から2ヶ月が経過し、どのように状況が推移しているのか、見ていきます。
全体的にかなり回復傾向が見られますが、未だ途上です。

前回(2020年4月)はこちらです。

指数ベースでは回復

まず、全体概観です。

コンビニ商品販売額全体 経産省「商業動態統計」より

コンビニ商品の販売額全体は9,596億円、前年比▲5.1%という着地になっています。
指数ベース(2015年=100)では105.6と、一定の回復が見られます。

▲5%は、小売店レベルで考えれば、まだまだ大きいマイナスですので、回復が見られるとは言え、途上と言えるでしょう。

なお、6月はリモートワークから従来出社に戻した企業もいるであろう状態の数値と見られ、今後、継続してリモートワーク推進が社会全体で進んでいくことを考えると、厳しい市場環境が継続する可能性はあります。

商品別の販売指標

それでは、商品別に推移を見ていきましょう。

区分は下記の通りです。

日配食品:(ファストフード含め)お弁当、おにぎり、サンドイッチ、消費期限設定されている生鮮食品など
加工食品:飲料、カップ麺、お菓子などの賞味期限設定がされているもの、冷凍ものなど
非食品:食品以外の雑貨、雑誌、ゲームなどの商品
サービス:コピー、宅配便、チケット、プリペイドカードなど

コンビニ商品別販売額推移 経産省「商業動態統計」より

このグラフの通り、サービス以外の区分で数字が改善しています。

コンビニ商品別販売額前年比推移 経産省「商業動態統計」より

前年比ベースで見ても、非食品は前年比を上回る状態、日配食品・加工食品も約▲5%前後までは回復してきています。

サービス売上が落ちている理由として、チケット売上など外部要因も大きい点もあげられるので、しばらくは回復の見通しは立たないでしょう。
全体の影響は小さいので、成りに任せるのが良いでしょう。

コンビニ商品別販売額指数推移 経産省「商業動態統計」より

なお、販売指数で見ると、サービスを除き、全て100を上回っている状況です。

地域別の状況

最後に地域別の状況です。

まずは前回の2020年4月単月の図表。

コンビニ商品販売額および前年比,地域別の状況 経産省「商業動態統計」より

次に2020年6月単月の図表です。

コンビニ商品販売額および前年比,地域別の状況 経産省「商業動態統計」より

全体傾向として、観光地、そしてリモートワーク移行が多いであろうエリアの落ち込みが大きい状況には変化がありません。

落ち込み幅自体は、大きく改善しています(縮尺は良く見て下さい)。

東京・大阪のような、主要なビジネスエリアは、一度リモートワークに振り切って完全移行した企業が、そうそう簡単に従来型出勤に戻すとは思えないので、今の状況(約▲10%)が固定化する可能性が考えられます。
▲10%は小売店としては、甚大な影響ですので、ビジネスエリアを中心に、廃業するコンビニが続出したとしても全く不思議では無いでしょう。
(前述している通り、6月は従来型出勤に戻った企業もある前提の数字なので、一定、withコロナ時代のスタンダードの数字に近い状況と思われます。)

各種報道を見ていると、コンビニ・ユーザー自体の傾向や消費動向が変わっているとの事。
消費者のニーズにマッチした柔軟な変化対応ができる所が生き残り、パイを占有する状況になるでしょう。

当該資料のまとめは、また2か月後位にアップデートする予定です。

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統計・経済

コンビニエンスストア販売額統計(2020年4月)

経産省「商業動態統計」が更新され、コンビニエンスストアの4月の状況が見えてきました。
前年比は大きくマイナスするも、2015年指標ベースでは微減と、ここ5年のコンビニの影響度拡大が見て取れます。
また、東京都それ以外の地域の対比も大きく出ており、ビジネスインフラなのか、地域インフラなのかの差も明確になっています。

コンビニ業態の前年比

こちらの記事で、コンビニ業態の売上高前年比は▲10.8%、客数前年比は▲19.3%、客単価前年比は+10.5%という数値を示していました。

客数に関しては、売上が見込める都市部はリモートワークに移行する企業も多く、客数減に大きな影響が出ると予想し、客単価に関しては「一つのお店で完結させよう」という購買行動につながっていると推測を立てました。

今回は、これらの情報のアップデートとなります。

指数ベースで見ると大きな影響がない

まず、全体概観です。

コンビニ商品販売額全体 経産省「商業動態統計」より

コンビニ商品の販売額は8,914億円と、前年比▲10.7%とという着地です。
小売店でマイナス10%は、激震が走るレベルの落ち込みです。

一方、2015年を100とした時の指数としては▲0.05ポイントの99.5という着地であり、季節調整後の指数で見ると、そこまでの落ち込みではありません。

この5年で、どれだけコンビニエンスストアという業態が、日本社会全体で拡大し、影響力を及ぼしてきたのかが見て取れます。
なお、店舗数はここ数年、5万6千台で推移しているため、1店舗あたりの売上高があがり続けている状況だったと言えます。

商品別の販売指標

まず用語を簡単に。

  • 日配食品:(ファストフード含め)お弁当、おにぎり、サンドイッチ、消費期限設定されている生鮮食品など
  • 加工食品:飲料、カップ麺、お菓子などの賞味期限設定がされているもの、冷凍ものなど
  • 非食品:食品以外の雑貨、雑誌、ゲームなどの商品
  • サービス:コピー、宅配便、チケット、プリペイドカードなど

ちなみに、これらの内訳は地域や立地、店長の方針などにもよるのですが、概ね下記のような構成になります。

  • 日配食品:40%
  • 加工食品:25%
  • 非食品:30%
  • サービス:5%

さて、商品別の販売額推移を見ると次のようになります。
20年1月以降、全体的に数字が落ちているように見えるのですが、コンビニ業界では1月2月はこういう動きをするので普通の数字で、問題は3月4月です。

コンビニ商品販売額 商品別内訳 経産省「商業動態統計」より

前年比の推移で内訳を見ると、概ね2020年2月までは波を打ちつつも安定的に推移をしていました。
これが2020年3月以降は新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込み、4月は消費期限が設定されている日配食品に関しては▲12.8%、加工食品・非食品は約▲8%、サービス売上に至っては▲22.2%という着地になりました。

日配食品が大きく落ち込んだ理由は、上述のリモートワークの影響を受けた落ち込み、加工食品と非食品の落ち込みが緩やかなのは、「一つのお店で完結させよう」が影響していると考えられます。

コンビニ商品販売額 商品別前年比 経産省「商業動態統計」より

指数別で見ると、日配食品が▲1.1ポイント、サービスが▲10.8ポイントで、加工食品と非食品はプラスです。

コンビニ商品販売額 商品別指数推移(2015=100) 経産省「商業動態統計」より

地域別の状況

地域別の販売額減少率は次の通りです(2020年4月単月)。

都道府県別の販売額と販売減少率 経産省「商業動態統計」より

まず京都の▲15.8%ですが、よくわかりませんが、おそらく観光客からの売上減が大きく影響しているものと推測されます。

東京(▲15.7%)と大阪(▲14.2%)はわかりやすい数字です。

どちらもビジネス圏として存在感の大きい地域ですので、各企業がリモートワークに移行した影響が出たものと推測されます。

それ以外の地域は多少の差はあれど、極端に特徴的なものはあまり見えませんが、関東エリアは特殊です。

茨城、千葉、埼玉、神奈川の東京を取り巻くエリアは落ち込み幅が小さく、▲6%~▲8%の範囲に収まっています。
これは、東京でリモートワーク対応をした方々が、各々の居住地域での消費を行った影響が出ているものと推測されます。

東京一極集中がこれまでどれだけ起きていたのか、が読み取れる数字と言えます。


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