カテゴリー
生産性・業務効率化

クリエイティブな仕事をしている時に音楽を聴くとパフォーマンスが下がる

音楽を聴きながら仕事をするのが好きな人は多いでしょう。
そして、クリエイティブティが向上するか?と尋ねると賛否両論はあるでしょうが、「高まる」と答える人も多いでしょう。
この音楽がクリエイティビティを向上させる、という一般的な見方に対して、研究者たちは逆の効果がある、としています。

音楽を聴きながらクリエイティブな作業を行うと、パフォーマンスが下がることが示されているのです。

音楽がクリエイティビティに与える影響の研究

音楽を聴きながらの仕事については賛否両論があるでしょう。

セントラル・ランカシャー大学、スウェーデンのゲーヴル大学、ランカスター大学の心理学者たちは、音楽がクリエイティビティに与える影響について研究を行いました。
つまりは、賛否両論がある音楽とクリエイティビティの関係について、一定の答え(示唆)を出そう、という取り組みです。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/acp.3532

被験者は全員が英語を母国語とし、視力や聴力等には障害はありませんでした。

研究は3つの実験で構成され、クリエイティビティを測定するために、一般的に用いられる課題に取り組んでもらいました。
課題は、3つの単語を提示し、その3つの単語と関連する1つの単語を見つけ出し、またそれらを組み合わせて共通の単語やフレーズを作る、というものです。

そして実験では、静かな環境条件と、次の3つの条件で行われました。

  1. (英語圏の人にスペイン語の歌詞の音楽など)外国語(聞きなれない)の歌詞が入ったBGM
  2. 歌詞(ボーカル)のないインストゥルメンタル音楽
  3. 被験者が理解できる身近な親しみやすい歌詞の音楽

また、3回目の実験では、「図書館の雑音」という条件で実験を行いました。
この条件では、意味不明の遠方からの話し声、コピー機の音、タイピングの音、紙のざわめきなどの環境音が参加者に流れました。

クリエイティブな仕事をしている時に音楽を聴くとパフォーマンスが下がる

実験の結果、音楽を聴きながら課題に取り組んだ場合、音楽のない静かな環境に比べて、クリエイティビティのパフォーマンスが著しく低下することが示されました。

そして、被験者が「気分が乗ってスムーズにこなせた。」と答えた場合であっても、パフォーマンスが低下していることもわかりました。
つまり親しみやすい音楽により気分が高揚したり、ポジティブな感情を抱いたとしても、実際にはクリエイティビティは低下するのです。

研究者たちは、これは音楽が言語的作業記憶(ワーキングメモリ)を混乱させるためではないか、と考えています。
一方で図書館の騒音ではパフォーマンスが低下しないことも示されており、図書館という安定したノイズ環境である「定常状態」では、その影響はクリティカルではないため、としています。

つまり、音楽のような状態変化が起きる騒音が作業記憶を妨げる可能性がある、ということです。

結論として、音楽を聴きながら仕事をする、という一般的に見られる習慣に疑義が投げかけられた、と言えます。
クリエイティブなパフォーマンスは明確に下がるのです。

なお、別の研究では、ホワイトノイズによる生産性向上効果にも疑義が投げかけられており、ノイジィな環境自体が仕事をする上では好ましくない、と考えるのが良いかもしれません。

ただし、音楽を聴くことによるメンタルヘルスと生産性の関連については不明である点には留意が必要です。

カテゴリー
仕事と健康,運動

【若い内からの認知症予防】騒音と認知症リスクの関係

運動と認知症リスクの関係は比較的よく知られています。
一方で、騒音と認知症リスクの関係は、あまり知られていないのではないでしょうか。
ここでは、騒音と認知症リスクの関係について科学的知見を見ていきます。

慢性的に騒音にさらされると認知症リスクが高まる

こちらの研究では、交通騒音と認知症の関係について、大規模な調査が行われました。

https://www.bmj.com/content/374/bmj.n1954

研究では、60歳以上の被験者約938,994人を対象に行われ、幹線道路や鉄道等の交通騒音にさらされやすいエリアか、そうでないエリアか、という形で居住環境を観点に分析が行われました。

その結果、慢性的に騒音にさらされやすいエリアに住んでいる人は、そうでない人に比べて認知症になるリスクが高い傾向があることが示されました。

数値できには、騒音環境が40db未満の人と比較し、50dbの人は認知症リスク(アルツハイマー型認知症)にかかるリスクが約24%、55dbの人は約27%高いことがわかりました。

(騒音レベルとしては、40dbは閑静な住宅地や小鳥の鳴き声レベルであり、50dbは家庭用のクーラーの室外機、静かな書店や事務所、55dbは役所の窓口が目安です。)

研究者達は、この研究を通じて、公衆衛生的に認定されている認知症の内、10%超が交通騒音起因であると推定しており、その影響の大きさについて主張しています。

日常生活の騒音は睡眠不足にも影響しますし、その他の疾患、例えば神経症の発症リスクが高まることも知られており、人々が意識・認識している以上に騒音のネガティブな影響は甚大である可能性があります。

https://ehjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12940-020-0565-4

一方で適度な騒音は生産性をあげるという話も

一方で、適度な騒音、例えばホワイトノイズは(限定的ではあるが)生産性をあげる、という知見もあります。
(もちろん、長時間はよくない。

また、日常生活の中で、常に騒音を回避することは不可能です。

仕事もそうですし、音に関しても、オン・オフをつけて、耳を休ませる時間を設けるのが良いのでしょう。

こちらで紹介されている研究では、静かな時間を2時間程とると脳が成長しやすくなる、としています。

https://nautil.us/issue/16/nothingness/this-is-your-brain-on-silence

昔からある耳栓や、近年、商品数が増えているノイズキャンセリング型のヘッドホン・イヤホンは、本テーマにおいても意義があるかもしれません。

科学的には不明な点が多いのは確かですが、耳栓・ノイズキャンセリング製品等を活用し、意図的に静寂な時間の確保に努めることはプラスである可能性が高いです。
少なくとも、生産性向上の観点でプラスであり、損はしないでしょう。

モバイルバージョンを終了