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リモートワーク時代の福利厚生制度リモートワーク時代の福利厚生制度

ビフォーコロナ・アフターコロナにおいて、決してマジョリティでは無いにせよ、働き方が劇的に変わった会社も多いのでは無いでしょうか。
ここでは、リモートワーク時代において、適用できる福利厚生制度は何か、について考えていきます。
並べて見ると、結構な種類が存在します。

リモートワークに対応する福利厚生制度

福利厚生制度の分類

リモートワークに対応する福利厚生制度を考える上で、まず、大枠の分類を考えました。
下記の8つです。

住宅・通勤 : 家賃やローンなどの住宅にかかる費用の補助
健康・医療 : 健康診断などの健康や医療に関連する費用の補助
家族・育児・介護 : ベビーシッターを雇う費用の補助など家族に関連する支援
レクリエーション : 会社主催,社員主催の各種懇親会の費用の補助
慶弔・災害 : 慶弔関連の見舞金や休暇など
報酬・財産形成 : 勤続手当や会社の株式に関連する福利厚生
業務環境整備 : PC機器の購入など、業務環境を整備するのににかかる費用の補助
キャリア補助・成長 : 業務に関連する書籍の購入やWEBセミナーへの参加費用補助

これらは更に、金銭補助・非金銭、挑戦意欲の醸成、安心感の醸成で区分できます。

上記に従い、リモートワークに対応する福利厚生制度を列挙したのが次の表になります。

リモートワークに対応する福利厚生制度

項目 内容 金銭 挑戦 安心
住宅・通勤 住宅手当  
  引越手当  
         
健康・医療 食費補助  
  予防接種  
  衛生用品購入費補助(マスク等)  
  健康診断アドオン補助  
  フィットネス補助  
  生命保険費用補助  
  産業医面談    
         
家族・育児・介護 介護・育児費用補助(シッター利用費など)  
  リフレッシュ休暇    
  ファミリーデイ(任意休暇)    
  男性向け産休制度    
         
レクリエーション 歓送迎会補助(WEB)  
  懇親会補助(WEB)  
         
慶弔・災害 慶事祝金  
  弔慰金  
  慶弔休暇      
         
報酬・財産形成 持株会制度  
  勤続手当  
  退職金  
  401K等補助  
  ストック・オプション  
  定期インセンティブ  
         
業務環境整備 PC機器購入補助  
  通信機器費用補助(月々の通信費など)  
  オフィス家具購入補助  
  オフィス用品購入補助  
         
キャリア補助・成長 資格取得費・維持費補助  
  書籍購入費補助  
  セミナー参加費補助  
  新規事業チャレンジ費用補助  

この通り、結構な数の制度をあげることができ、しかも従来から存在した福利厚生制度がそのまま適用できるものがほとんどです。

リモートワークに対応する福利厚生制度として特有のものと言えば、業務環境整備にかかるものでしょうか。
PC機器や通信環境、オフィス家具、オフィス用品は、これまでは当然に会社側が用意し、従業員に貸与していました。

セキュリティの問題など、クリアしなければいけないものが一部あるにせよ、中小企業において出来る対応に限界がある中、業務環境整備にかかる費用を補助するのは検討する価値があると言えるでしょう。

財源(予算)はどうするか?

財源(予算)はどうするか?

それでは、財源(予算)の手当については、どのように考えれば良いでしょうか?

これはシンプルに、これまで適用していた福利厚生制度の予算をあてる方法もあります。
また、通勤手当を削減できること、オフィス縮小やリモート増加に伴う家賃の節約、オフィス用品の節約で対応するコストを充当することができます。

コスト削減分を福利厚生制度にあてるメリット

この点は、良くも悪くも、の話なので、重要ポイントではありつつも、最後の項としました。

リモートワークに対応することにより、通勤手当、家賃、水道光熱費、オフィス用品費などが削減できます。

これら、削減したコストを従業員に還元する形になるわけですが、給与に充当せず、福利厚生制度に充当するメリットは何でしょうか?

これは、給与は一度上げてしまうと、簡単には減らせないからです。
現在の労働基準法は従業員にとって有利な法律となっており、就業規則・給与規程の従業員にとって不利益になる改定は難しいのです。

一方、福利厚生制度は会社側が任意に設定する制度ですので、柔軟に改廃が可能です。
(仮に、就業規則などで明文化してしまった場合はこの限りでは無いので、あくまでも会社の運用ルールとする位置づけが良い。)
そのため、仮に業績が悪化した場合などに、柔軟に一時中断の措置が取れるのです。

これらは、会社側に一方的に有利な対応に見えるかもしれませんが、会社が傾いては、従業員の生活を守るという意味で、元も子も無いので、労使双方にとってニュートラルな対応と言えます。
見方次第で、評価も変わる話ですので、冒頭の通り「良くも悪くも」と書きました。

また、あまり効果の出なかった福利厚生制度を柔軟に改廃できるのもポイントです。
会社毎に、最適な福利厚生は異なるので、どこかの会社で良かったからと言って、自分たちの会社で効果が出るとは限りません。
そのため、柔軟に改廃できる、福利厚生制度にコスト削減分を充当するのは意味が高いのです。


以上、リモートワーク時代の福利厚生制度について考えてきました。

最後に書きました、会社毎に最適な福利厚生制度は異なる、というのがある意味最大のポイントかな、と考えています。

一発で自社に最適な福利厚生制度を導入することは不可能です。
会社のステージや状況によりも異なります。
導入しては効果を見て改廃し、を繰り返し、柔軟に最適解を模索するのが良いでしょう。

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フェルミ推定・ロジカルシンキング

【今日のフェルミ推定】インフルエンザの予防接種はコスパが良いか?

今回の「今日のフェルミ推定」はインフルエンザの予防接種のコスパ試算です。
個人の視点と、企業の視点(会社で補助すべきか否か?)のそれぞれで考えてみます。
それでは、見ていきましょう。

(参考)フェルミ推定とは

フェルミ推定をご存じない方は、別で検索いただくか、下記記事も参考にしてみてください。

インフルエンザの予防接種の状況

参考までですが、インフルエンザの予防接種を受ける人は4割超ほどです。

インフルエンザの予防接種に関するアンケート n=2,000 2019年

予防接種を受けない人は、その理由の3番目(事実上2位タイ)に「費用が高い」「費用が高そう」をあげており、27%ほどです。

インフルエンザの予防接種に関するアンケート n=2,000 2019年

お題:インフルエンザの予防接種はコスパが良いか?

あなたは、インフルエンザの予防接種を受けようか否かを迷っている状況です。

今までかかったことがあるない関係なく、とりあえず時間的にも金銭的にも問題が無いとします。

つまり、純粋にインフルエンザの予防接種を受けるためにかかるコストと、万が一かかった時に失う時間との比較で考えてみて下さい。

試算

それでは、試算していきます。

感染率の推測と、かかってしまった場合に失う時間の見積もりがポイントでしょう。
感染率はざっくり10%、失う時間は3日×16時間の合計48時間とします。
時間価値は日本人の平均給与から逆算して2,000円を設定します(これは他の推定でも使用している)。

計算式は次の通りになります。

インフルエンザに感染した場合の損失
 = 感染率 × 失う時間 × 時間価値
 = 10% × 48時間(3日×16時間) × 2,000円
 = 9,600円

予防接種にかかる費用は、直接の費用だけが注目されますが、当然、受診にかかる時間についても加算すべきでしょう。
計算式は次の通りになります。

予防接種にかかる費用
 = 直接の費用 + 受診にかかる時間 × 時間価値
 = 4,000円 + 2時間 × 2,000円
 = 8,000円

比較すると、9,600円 > 8,000円なので、インフルエンザにかかってしまった場合の損失の方が大きい、つまり予防接種をした方がよい、と考えられます。
少なくとも損はしなさそうですので、感染して苦しむ際の苦痛損失を考慮すると、むしろ安いと言ってよいのではないでしょうか。

なお、実際の感染率は約9.7%のようです。
これは、厚生労働省の資料を元に、「人口 ÷ 患者数」の計算式で算出しています。
加えて、実際の直接費用は3,631円とのことです。

補足すると、単純に感染率で考えるのではなく、実際には感染率と発症率で考えなければ正確性に欠けます。
感染率に関しては、国立感染症研究所の資料ではざっくり30%ほど、発症率は日本臨床内科医会の資料ではざっくり40%ほどとなっています。
つまり、30%×40%で、上記で言う「感染率」で換算すると約12%となり、少なくともフェルミ推定で考えるベースの数字としては納得感のある数値と言えます。

見方を変えてみる:企業は予防接種の補助をすべきか?

上記の試算は難易度が低かったと思います。
これでは面白くないですね。

見方を変えて、企業の総務・人事の担当者の立場で考えてみましょう。
会社で、予防接種の補助をすべきか否かです。

結論を言うと、予防接種費用の補助はコスパが良いのでやった方が良い、です。

予防接種の効果には「有効率」という考え方があります。
こちらはここで解説すると長くなってしまうので、別で検索ください。
ようは、予防接種をしても、必ずしも効果があるわけではない、ということです。

この有効率の考え方と、上述の感染率、発症率を含めて、従業員数100人の企業でシミュレーションをしてみます。
会社内での接種率ごとに、発症者数が下記の表のように変化していきます。

前提

  • 社員数 100人
  • 有効率 70.0% 諸研究より
  • 感染率 30.0% 国立感染症研究所より
  • 発症率 40.0% 日本臨床内科医会より

これをベースに費用対効果を算出します。

接種率目標を70%とすると、約5人、発症者を減らせる計算になります。
補助額を3,631円で設定します。
感染した場合、従業員を1週間休ませなければいけないので、5営業日分の労働力ロスです。

会社補助負担額
 = 100人 × 70% × 3,631円
 = 254,170円

労働力ロス額
 = 5.1人 × 8時間 × 5営業日 × 人件費単価2,000円
 = 408,000円

シミュレーションの結果、明らかに会社で予防接種の負担額を補助した方が良い、ということになります。

労働力ロスが発生したとしても、休ませている間は給料が発生しないから、いる人で何とかカバーすれば実額損失は無い、という考えでも良いのですが。
現代の企業経営者に対する目線で考えれば、明らかなブラック思考ですよね。

とりあえず、個人レベルでも、企業レベルでも、インフルエンザの予防接種はコスパが良い、ということでまとめさせていただきます。

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