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クレームやマウンティングばかり!~IRの電話窓口は廃止しよう!~

株式市場にとって非常に厳しいタイミングが来ています。
各上場企業のIR担当者は、日々、電話の問い合わせが鳴り響いているのではないでしょうか?
そして、その内容のほとんどが生産性のないクレームやマウンティングばかりではないでしょうか?
IRの電話問い合わせ窓口は廃止すべきです。

忙しい人向けまとめ

  • IRの電話問い合わせ窓口に来る問い合わせ内容は、クレームやマウンティングばかりで生産性がない
  • 電話問い合わせ窓口を廃止する上場企業も出てきている
  • 問い合わせフォームとQ&Aの充実で、問い合わせの機能は果たせる
  • IR資料の充実を図れば、そもそもとして問い合わせが減る
  • いきなり電話問い合わせ窓口を廃止できない場合でも、録音とその音声アナウンスを導入すれば、クレームやマウンティングは減る
  • 貴重で優秀な社員のリソースを消耗しないためにも電話問い合わせ窓口は廃止した方がよい

IRの電話問い合わせ窓口で起きていること

IRにおける問い合わせ窓口とは

IRとは、インベスター・リレーションズの略で、企業と投資家との関係性構築のための取り組みのことを言います。
一般論としては、このIRにより、会社の経営状態や財務状況、今後の見通しなどが投資家に周知され、企業の株価が適正に評価されることを目的として実施します。

通常、IR活動をしっかりと行っている企業と、あまり行っていない企業では、同種の同じような業績の会社で比較すると、IR活動をしっかりと行っている企業の方が株価が高い、と言われています。
そのため、多くの上場企業は、実態はともかくとして、IR活動に熱心ですよ、投資家のことを重要視していますよ、という姿勢をアピールします。

企業ホームページにおけるIR問い合わせ窓口もその一環で、大体の会社において電話問い合わせ窓口が存在します。
そして、この電話問い合わせ窓口が曲者なのです。
会社の情報を入手したいという投資家からの問い合わせではなく、ほとんどの問い合わせがクレームやマウンティングばかりなのです。

実際は、、、

まず、上場をしている以上、有価証券報告書という、企業の情報が詳細に掲載された資料が公開されます。
また、大体の企業では半期毎(6ヶ月毎)に決算説明会を開催し、あわせて決算説明会資料が公開されます。
IR関連資料だけでなく、企業のホームページでは当然、事業内容を説明しているページや、各種ニュースリリースが読めるようになっています。
上場企業は、非公開会社にくらべて企業活動が大きいこともあり、何かしらメディアに取り上げられる機会も多いです。

つまり、非常に情報があふれています。

加えて、現代社会は前時代的な会社であってもメールは使えるはずで、ほぼほぼ全ての上場企業において、デジタル上でのコミュニケーションで完結する場合がほとんどです。

ようは、今この現代社会、わざわざ電話をかけてくる人は個性的な方が多いのです(言葉をだいぶ濁しました)。

まじめな個人投資家の方で、本当にわからないことや疑問点を、事前調査を踏まえて上で問い合わせてくる方もいらっしゃいます。
懇意にしている機関投資家の方はフランクに電話をかけてくる場合もあります。
しかし、それらは割合としては少数で、実際にはクレーマーや、マウンティング取りのためだけに電話をかけてくる方がほとんどなのです。

「お前の会社の株をかったら損をした。どうしてくれるんだ!」
「あんたみたいな貧乏人に、私のことがわかるわけないわよね。」
「兄ちゃん大変だろ。困ったことがあったら俺に相談しろよ。警察や偉い人とつながっているからな。」
「ホームページなんか見るわけないだろ!今、口でわかるように説明しろ!」

こういった言葉をいただくことは決して珍しくありません。
何時間も罵声と説教をうけ、その日一日がほぼほぼ仕事にならないこともあります。
それが、IRの電話問い合わせ窓口なのです。

中には、真面目に会社のことを考えていただいており、商品や施策のアイデアをお話いただける場合もあります。
しかし、会社の中のことはやはり社員の方が知っているものです。
いただくアイデアやアドバイスは、大体において「検討済み」の内容です。

結論と極論を言ってしまうと、IRの電話問い合わせ窓口は設置するだけ無駄なのです。

懇切丁寧に電話対応をするのが良しとされてきたが、、、

IRの電話問い合わせ窓口では株価はあがらない

極端なことを言ってしまえば、IRの電話問い合わせ窓口では株価はあがりません。
上述の通り、わざわざ電話をかけてくる方は個性的な方が多いです。
こういった方々一人一人に丁寧に対応するのは、限られたリソースの無駄遣いです。

株価は、結局の所、企業の将来の可能性に対しての期待感で決まるものです。
IRは、この企業の将来の可能性を「広く」周知することが仕事です。
個人投資家も含めた市場全体に対して、その説明責任を如何に丁寧に果たすのかが重要です。
一個人のクレームやマウンティングに付き合う時間は無いはずです。

クレーム対応、マウンティング対応、この責やストレスをIR担当者に負担させるのは経営者の怠慢でしょう。
事なかれ主義の中で、何となく電話対応を継続するのは思考停止でしょう。

今すぐにでもIRの電話問い合わせ窓口は廃止してしまいましょう。

電話問い合わせ窓口を廃止した事例

実際、世の中では、IRの電話問い合わせ窓口を廃止する事例が増えてきています。
別に私個人の偏った考えと言うわけでは無く、すでに実行している企業が存在するのです。

https://www.sig-c.co.jp/contact/
https://www.zenrin.co.jp/company/ir/support/index.html
https://www.klab.com/jp/ask/

次項からは具体的な対応について考えていきます。

ではどうすれば?

問い合わせフォームとQ&Aページの充実

問い合わせ窓口としては、企業IRページの中に問い合わせフォームを設置しておけばよいです。
大体の企業では既に対応済みでしょう。

電話問い合わせには対応していない旨も併記すると良いです。

そして、来た質問に関しては、IRのQ&Aページにおいて、質問と回答の内容を掲載し、全ての株主、投資家が閲覧できるようにすれば良いのです。
電話問い合わせでは、特定の株主にしか対応できない点を踏まえると、Q&Aページで公表することは公平性も高く、IRの充実という観点でも良く、むしろやらない理由が見当たらないです。

IR資料の充実

加えて、純粋にIR資料の充実化を図りましょう。
有価証券報告書と決算説明会資料は、全てと言ってよい企業で入手性高く公開されています。

それに追加して、四半期毎の業績推移資料をExcelやCSVデータで公表すると良いです。
機関投資家や、きちんと分析する個人投資家は、そういった資料を欲するので事前に用意してしまうのです。
分析資料まで準備すると、機関投資家によるカバーを受けられるかもしれません(彼らは忙しいですから、その仕事を一部代替してしまえばカバー確率があがります)。

会社のPL構造やBS構造など、質問を受けやすく、IR資料をがっつり読み込まなくては理解できない事項を、基礎資料として用意してしまうことも考えられます。
これは、対応している会社が少ないので、好印象を得られやすいです。

決算説明会や株主総会の動画配信も行いましょう。
決算説明会や株主総会は、言ってしまえばぶっつけ本番なので、業績説明動画を別撮して、それを公開するという方法もあります。
決算説明会や株主総会で出た質問に関しては、上記問い合わせフォームで書いたQ&Aページに掲載すれば問題がありません。
むしろ、その場に参加した投資家しかQ&Aを知れない状況より、公平性が高いと言えます。

録音の実施

いきなり電話問い合わせ窓口を廃止できない、という会社も多いでしょう。
その場合、先に音声アナウンスで録音をする旨を伝えるのも有りです。

「この通話は、株主様、投資家の皆様への対応の品質向上のため、録音させていただいております。」

何かクレームを入れたい方は、感情的になられている場合が多いです。
怒りのピーク時間は6秒と言われています。
先に音声アナウンスが流れて時間を少しでも確保することにより、怒りの感情を少しでもおさめる効果があります。

また、「録音するよ」という情報を先に出すと、暴言・罵声を言う方が減ります。
録音されてるとなると、ひるんで無茶苦茶なことを言うのを控えるのでしょう。
変なクレームやマウンティングが全体的に減るのです。

最後に

IRを担当する方は企業によって異なるでしょうが、「これは喋って良い、これは喋ってはダメ。」ということを的確に判断し、正確に投資家の方々に伝達できる担当者は希少ですし、優秀なはずです。

そんな希少で優秀な社員を、クレーマー対応やマウンティング対応で消耗させるのはもったいないです。
電話が突然来れば業務が中断され、集中力も途切れ、またそれが何の生産性もないただのクレームやマウンティングだった場合、後に残るのは消耗感だけです。

一個人のためのIRではなく、株式市場全体のためのIRであるべきです。
効率的に、株式市場全体に対して敬意をもって丁寧に対応さえすれば、IRの対応としては100点です。
今すぐにでもIRの電話問い合わせ窓口は廃止してしまいましょう。

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IPOにおける広報の役割~前半~

IPO(新規株式上場)は、ベンチャー企業経営者や、そこで働く人達にとって夢の一つであり、より広く大きく社会に貢献する、未来に羽ばたくための大事な通過点の一つです。
ここでは、IPOにおける広報が果たす役割について、ベンチャー企業のPRもしくはIR(Investor Relations:投資家向け広報)の担当者向けに、IPOにおける広報・IRの役割について解説していきます。

長くなってしまうので、前半後半にわけて解説し、前半は大枠の考え方と実際のToDo的な話の一部を、後半はToDo的な話の続きと戦略よりの話を書いていきます。
IPO準備の全体像は別の場所で書いていきたいと思います。

IPOにおける広報・IRの役割大枠

全ての企業は、非公開企業、つまりクローズドな世界で限られた株主のみで構成された状態で、この世に誕生します。
この企業の株式を公開することにより、広く世の中の人たちが経営に参画できる状態にすることを新規公開、IPO(Initial(最初の)Public(公での)Offering(売り物))と言います。
IPOの目的は大きく3つほどあげられます。

  • 知名度の向上
  • 信頼度の向上
  • 多額の資金の調達

成長志向のベンチャー企業にとって、この3つ目の「多額の資金の調達」がポイントで、IPOをする企業の株式を投資家たちが購入することにより、投資家は企業への経営の参画ができる状態になり、そして企業は事業運営のための多額の資金を調達することができます。
企業にとっては、この多額の資金を活用することにより、事業を大きくステップアップさせ、次のステージへの成長段階に羽ばたかせることができるわけです。
(戦略的に多額の資金を要せず、知名度の向上や信頼度の向上を主目的としてIPOを実施する会社も実際は多い。

さて、IPOをするまでは企業の情報を外部に発信することはマーケティングやブランディング以外の側面では基本ありません。
しかし、IPO後は情報の発信のあり方が大きく変わります。
企業の業績の情報や企業組織の体制をはじめ、どのような事業をどのような戦略でもって取り組んで行くのかという事業計画の情報などなどなどなどを事細かに発信する必要がでてきます。
それがマストで守らなければならないルールだからです。
企業をクローズドな世界からオープン(Public)にしていくにあたり、企業と社会(投資家)との接点を作る(情報を発信していく)、ここにIPOにおける広報の重大な役割があります。

IPOにより自社が「社会の公器」として「社会の眼」にさらされるということは、コンプライアンスを遵守した経営を行うということはもちろんのこと、自社が「社会に必要な事業を行う」ということを、事業をもって示すということです。
広報担当者の市場への発表内容により、資本構成や株価が変化し、場合によっては経営に直結することも出てきます。

IPOにおける広報・IRの役割は、IPO後の会社経営自体につながる仕事をしているのです。
広報・IRに携わる方は、是非「IPOによって自社が社会にどのようなインパクトを与えられるのか」を意識した広報活動を心がける必要があるでしょう。

上場前に広報・IRが準備しておくこと

大枠の考え方に続いて、ここからは実際に取り組んで行かなければならないことを順番に解説していきます。

  • 認知度向上のためのPR実施
  • 目論見書の作成
  • IRサイトの作成
  • 上場セレモニーの準備

なお、長くなってしまうので今回はここで切り、下記を後半で書いていきます。

  • プレスリリースの準備
  • ロードショー用資料の作成
  • 役員のメディアトレーニング
  • 決算説明会の準備
  • その他

認知度向上のためのPR実施

IPOを成功させるには、顧客や取引先のみならず、今まで関係性のなかった一般の人々(個人投資家)や機関投資家(大口投資家)に、自社のことを知ってもらう必要があります。
なお、ここで言っている「成功」とは、上場承認をうけてIPOができることではなく、IPOを行うための自社にとっての目的を達成することを指しています。

企業やブランドの認知度向上のためのPRは早めに準備し、実施していきましょう。
マザーズ市場(そしておそらくグロース市場も)の年間取引額のうち、約6割は国内個人投資家であり、この国内個人投資家へのブランド訴求はおろそかにはできません。
機関投資家に対しても同様で、事業戦略の前提となる企業のミッション・ビジョンを正確に理解してもらうことは、自社の戦略ストーリーの理解にもつながるため、IPO上有利に働きます。

IPO時の広報・IRの担当者構成は、経営企画領域の担当者と、広報・マーケティング領域の担当者が連携してチームを組成する形がおおいですが、この認知度向上のためのPR実施は、主に後者の広報・マーケティング領域の担当者の仕事となるでしょう。
PR会社と契約してプレスリリース配信の体制を整備したり、ブランディング・コンサルを活用してコーポレート・アイデンティティの刷新、記者懇親会や勉強会の開催などを行うことが考えられます。

目論見書の作成

目論見書(もくろみしょ)とは、IPO時の需要申告(ブックビルディング)、もしくは購入申し込みをする投資家に対して交付される書類のことです。
企業の概要や募集・売出をする株式の条件などが記載されており、投資家にとって投資判断を行うための重要な情報源となります。

新規上場時に有価証券届出書という書類を作成するのですが、この有価証券届出書を抜粋する形で目論見書は作成されます。
具体的に事例を見た方がイメージがつきやすいでしょう。

事例の通り、目論見書には本文の内容を要約し、図表等を用いて説明するダイジェスト部分があります。
ここは会社のイメージをグラフィカルに伝えられる、ダイレクトに印象が伝わってしまう部分になるので、経営企画領域の担当者、広報・マーケティング領域の担当者、デザイン・クレイティブ領域に明るい社内外のメンバーが連携して作成するのがよいでしょう。
(事例として出したライフネット生命保険㈱の目論見書からは、お堅いイメージが伝わってきますね。)

なお、目論見書は電子交付のみならず、印刷して交付する必要もあるため、印刷のための期間も考慮してスケジュールを組む必要があります。
さらに加えて、目論見書(有価証券届出書も)は未確定の部分がある段階で作成を行う必要があり、実際にブックビルディング方式で募集・売り出し条件が確定し、募集価格・発行価格が確定した段階で訂正目論見書(訂正届出書)を作成、提出を行う必要があります。
この部分は、完全に経営企画領域の担当者がスケジュールを組み、プロジェクト・マネジメントを行っていく形になります。

IRサイトの作成

IRサイトは目論見書と同様、投資家と自社とをつなぐ大事なツールとなります。
特に、個人投資家にとっては、IRサイトは重要な情報源となるため、個人を意識したIRサイトの充実が効果的な施策となります。
個人投資家の多くは事業面でのプロでは無いため、何をやっているのか?将来どうなるのか?についての「わかりやすさ」が重要となります。

上場当日にIRサイトをオープンできるよう、予め準備しておく必要があります。
なお、情報漏洩や改ざん防止などのセキュリティ上の観点から、証券会社や印刷会社のサービスを使うケースが多いです。

IRサイトの良い事例としては、個人投資家に理解してもらうために、わかりやすいコンテンツを多数掲載しているシスメックスパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスなどがあげられます。
また、個人投資家のレベルにあわせて資料を提示できるよう、わかりやすい難易度表記があるオリエンタルランドも特徴的です。

上場セレモニーの準備

上場日当日には、証券取引所において、上場セレモニーが実施されます。
取引所内にはスタジオが併設されており、動画の撮影・配信をはじめ、初値決定の瞬間を見るなどのイベントがあります。
なお、上場セレモニーには人数制限があるため、社員数が多い企業では全員で祝うことができません。

言葉では表現しづらい所も多々あるので、こちらこちらを見るのが良いでしょう。
他にも「上場セレモニー」でGoogle検索をすると、多数、IPOを達成した企業の様子を見ることができます。

動画の撮影・配信については、こちらを見るとイメージがつきやすいでしょう。

上場セレモニーでは、上場認証式や記念撮影の後、東証内にある「鐘」を打ち鳴らします。
この際、鐘は「五穀豊穣」にちなみ、5回打つことができます。
創業者が1人で5回、その後主要なメンバー5人ずつで4回で、最大21人が参加することができます。

この上場セレモニーの準備として、当日の流れの確認やスケジュール組み、参加メンバーの確定、撮影する内容(社長の話の構成)の決定、などがあります。
後半の方で説明しますが、「しゃべって良いこと、悪いこと」がありますので、社長をはじめ役員・幹部に対するメディアトレーニングが効いてくる段階になります。

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freeeとX-Smartが2020年3月よりAPI連携、具体何が良くなるの?

クラウド会計システム「freee」と宝印刷㈱のディスクロージャー支援システム(開示書類作成システム)「X-Smart.Advance/Basic」が2020年3月よりAPI連携を開始するようです。
freee使用の会社は、X-SmartにCSVファイルで出力したデータを読み込む、ないしは手動でデータを入力する作業をしていましたが、これが省力化されるようです。
これによって、何が具体的に良くなるのでしょうか?

ディスクロージャー支援システムの連携これまで

宝印刷㈱は以前より他社会計システムとの連携を進めており、㈱TKCの連結会計システム「eCA-DRIVER」や、㈱ビジネストラストの連結会計システム「BTrex 連結会計」、ISIDの「STRAVIS」、そして連結会計システムの大御所、㈱ディーバの「DivaSystem」との連携が可能でした。
今回はこれに、「freee」が加わるようです。

競合である㈱プロネクサスの「PRONEXUS WORKS」も、上記「eCA-DRIVER」「BTrex 連結会計」「STRAVIS」「DivaSystem」との連携が可能ですが、宝印刷㈱が一歩先んじる形となってようです。
とは言え、ディスクロージャー支援システムの進化は、両者が競い合って開発を続けており、㈱プロネクサスのクラウド会計システム連携は、(おそらく)時間の問題でしょう。
(ただし、「PRONEXUS WORKS」は未だに「Internet Explorer」にしか対応していないなど、全般的に宝印刷㈱に遅れている印象があるのは留意。)

省力化については若干疑問

なお、これによってどれだけの省力化が図れるのか?は疑問です。

従来、手動でExcelファイルを介して行っていた連携作業が大幅に削減されることによりお客様の業務効率性を飛躍的に高めると共に、ミス発生リスクとなる手作業・Excelの排除による内部統制面の強化も期待できる機能となっております。

IPO準備企業や上場企業の開示書類作成業務を自動で効率化 -freee、宝印刷と会計データAPI連携を開始-

ここの部分は確かにそうだとは思うのですが、出力したCSVファイルを所定のフォーマットにはめて開示システムに読み込ませる、ここの部分の作業は(所定のフォーマットが作りこまれていれば)10分程度で終えられます。
そのため、本連携は既にディスクロージャー体制を作りこんでしまった企業には、ほとんど刺さらないものなのでは、と考えます。
また、開示書類の作成業務で大変なのは、会計システムと開示システムの繋ぎこみのメンテナンスで、これは四半期と年度末で開示科目が異なること、その時々の業績の状況で開示しなければならない開示科目が変更になることが原因です。
ここの部分のメンテナンスのやりやすさが、どこまでカバーされているのか?が重要かと考えます。
繋ぎこみ部分のフォーマットを作りこむと、このメンテナンスはExcel上でやるのがイージーかつリーズナブルで、かつ可視化も簡単なため、古の開示戦士にしてみると却って使いづらいシステムになる可能性があります。
つまり「省力化」だけにフォーカスすると、そこまでのアップデートにはならない、というのが私の意見です。

では、どういう企業にとって有用なの?

別の観点で見てみます。
「freee」を使用している会社はベンチャー企業が多いでしょう。
そしてベンチャー企業にはディスクロージャー領域で知見が豊富な社員がいる例は稀でしょう。
宝印刷㈱は自社グループで開示支援のコンサルティング部隊も抱えているため、繋ぎこみ部分の初期コンサルと、メンテナンスもセットで提供し業容を拡大。
IPOした直後のベンチャー企業にとっては、社内リソースも経験値も限られた状態の中で、(お金はかかるけれど)イージーに開示業務が対応ができる、という便益を享受できる。
このような絵姿が見えてきます。

なお、「freee」の競合である、クラウド会計システムのマネーフォワードもIPO準備企業向けの「マネーフォワード クラウド会計Plus」を提供開始しています。

「マネーフォワード クラウド会計Plus」は、IPO準備・中堅企業向けに特化した会計ソフトで、仕訳承認機能や仕訳更新履歴機能などの内部統制機能を搭載している。今年の秋には、電子承認をはじめとする内部統制を保ちながら、領収書などの証憑を本サービスに添付することで、Web上で証憑確認などの監査手続きを行うことが可能になる。料金は、月額29,800円(税抜)から。料金はアカウント数に応じて変わる。

マネーフォワード、IPO準備・中堅企業向けのクラウド会計ソフトをリリース

「マネーフォワード クラウド会計Plus」でも開示システムとの連携が進み、またクラウド上で動く連結会計システムが増えれば、アナログな領域が多く、古の開示戦士の手でしか改善が進まなかった開示業務の効率化が一気に進むかもしれません。
この領域・業界での更なる進化に期待です。

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