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統計・経済

外食産業前年比(2020年8月)および最近の消費者動向

外食産業前年比の8月は、回復傾向を見せていた7月から再度転落傾向が出た月となりました。
最近の消費者動向と併せて、数字を見ていきます。

外食産業業績推移

まず、売上高前年比推移です。

こちらにある通り、7月までは回復傾向を見せていましたが、8月に入り全体的に減少、転落傾向を見せています。

要因としては客数の減少が大きく、客単価は業種毎に若干の違いはあるものの概ね横ばいです。

特に居酒屋系は客数も客単価も減少傾向にあるので、非常に厳しい状況にあると言えます。

同上
同上

理由としては、新型コロナウイルス感染者数の数字上の増大にあると考えられます(いわゆる”第二波”)。
実態の脅威以上に、心理的な恐怖心や忌避感の他、無難な安全行動を優先する方向に消費者が動いたのでしょう。

消費者の利用動向の変化

利用動向概観

上記の客数推移からも利用頻度が減少した事自体は明確ではあるのですが、アンケート調査によると、下記のような利用頻度の変化があったようです。

ソフトブレーン・フィールド株式会社「コロナでも利用が増加した、外食チェーンの施策をレシートから探る」より

計算してみると各層で下記のようになり、月に2~3回程度以上外食する人全てにおいて利用頻度が減少し、しかし月に1回以下程度は外食利用をする、という人が大幅に増加した形になります(まぁ、当たり前の数字ではありますけれどね)。

月に1回以下:31.7% → 52.4% (165%)

月に2~3回程度:33.8% → 25.9% (77%)

月に1~2回程度:24.3% → 15.0% (62%)

週に3~5回程度:7.8% → 4.9% (63%)

ほぼ毎日:2.5% → 1.8% (72%)

同上

外食利用における変化では、利用回数の変化は上述の通りですが、それ以外ですと、「利用する店舗」「利用時間」「利用人数」「ジャンル」「金額」に大きな変化があった模様です。

飲食業においては数%の変化でも業績に大きな影響を与えるので、上記は全てにおいて外食産業全体にダメージを及ぼしたはずです。

同上

利用シーンの変化では、ランチ帯とディナー帯においてテイクアウト(デリバリー含む)が増えた結果です。

ランチ帯のテイクアウト比率は高いので、如何にランチ帯に最適化したデリバリー対応商品を開発できるか?は今後の外食経営において重要な要素となるでしょう(もちろんディナー帯も)。

デリバリーに関しては、下記2つの記事においても触れているので、参考にしてください。

嗜好(店舗選択ポイント)の変化

店舗の選択ポイントとしては、最近はやはり「ソーシャルディスタンス」や「感染症対策」をポイントとしてあげている消費者が多い模様です。

飲食店利用時の行動を見ても、「ソーシャルディスタンス」や「感染症対策」に気を払っている傾向は同じで、特に女性を中心に、「マスク着用」「他の客との距離」「消毒」が行われています。
(一方、男性の特に20歳代において「特に対策を行っていない」の数字は大きいですね。まぁ、ロジカルに考えたら、当然の行動結果だとは思いますが。)

これらの調査は一定の示唆があり、女性目線で安心”感”がある店舗作りを行えるか?が重要と考えられます。

苦境はいつまで続くのか?

各所で語られてはいますが、ワクチンと治療薬が完成・普及し、終息宣言やそれに準じた発表がされない限り、状況は続くものと考えられます。

NRIの推計では、2021年4月においても、まだ今の低消費水準が続くという事です。

新型コロナウイルスそのものは、実体として”落ち着いた”状況と言え、マスク着用、手洗い・うがい・消毒等の当たり前の衛生対策を行えば、危ない物では無いのですが、如何せん人々の「心理」は難しいものがあります。
感染症より、人の方が恐ろしいのです。

飲食店に限らず、ダメージを受けている事業者は、まだ1年は最低でも続く、という前提で経営の方向性を検討していく必要があるでしょう。

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経営企画

お一人様向けサービスは、外食の復活に良いのでは?

数年前から「お一人様需要」という言葉がにわかに使われるようになり、2019年には「お一人様向け」のサービスが各業種から誕生していました。
コロナ影響により、下火にはなりましたが、ここ数ヶ月盛り上がりの兆しが出ています。
お一人様向けサービスは、特に外食の復活に良いのでは?という事を考えていきます。

Googleトレンド「お一人様」より

お一人様向け外食検索サービス「ソロメシ」

今回、なんでこんな話題を出したのか?と言うと、株式会社ホーン、という会社から「ソロメシ」というサービスがリリースされていたのを見たからです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000037035.html

どんなサービスか?と言うと、「お一人様向け」の飲食店を検索できる、というまぁシンプルなサービスです。

「ソロメシとはおひとりさまの食事に特化したグルメアプリです。1人で食事に行く際に出る「今いる場所から近くのお店を知りたい」「1人で入れるお店を知りたい」「1人でも美味しい物を食べたい」というニーズにお応えします。」

という事ですね。

単価、5,000円以上の高価格帯に絞った「ソロメシプレミアム」というサービスも、併せてリリースされているようです。まだβ版のようですが。

http://premium.solomeshi.jp/

なお、日本国内の単身世帯数は年々増加を続けており、今後も増え続ける事は確実ですので、「お一人様」をターゲットとするのは、マクロ感としては非常に正しいです。
デモグラフィー(人口動態)は、数少ない「外れない」統計データですし。

みずほ情報総研「「単身急増社会」を考える」より

「お一人様」での外食は躊躇する方が多い模様

なお、ソロメシのサービスサイトにも記載がありましたが、「恥ずかしい」等の理由で、「お一人様」での外食は躊躇する方が多いようです。

上記のアンケート調査では、男性では2割強、女性では4割前後の方が、一人で飲食店を利用するのが「恥ずかしい」と回答しています。

(全く、理解できん。というか40代男性、君らはなんだ?ただの独り言です。)

そんな形で、下記のような業態が「一人で入れる飲食店」として回答されています。
(下の方が逆に言うと「一人で入れない飲食店」。)

冒頭で紹介した「ソロメシ」は、飲食店全般をカバー、「ソロメシプレミアム」は下の方の料亭やフレンチ等をカバーしている感じですね。

なお、別のアンケート調査では、フレンチ専門店のような業態が「ひとりで行くことに抵抗感を感じる場所」として上位に位置しているので、マッチ感はあるように思います。

いずれにせよ、まぁまぁな種類の業態に対して、消費者は「一人では行きづらい」と感じているわけです。
「お一人様」向けに特化したサービスは、ニッチになるかもしれませんが、ポテンシャルは感じます。

「お一人様」向けにサービスのカスタマイズはした方が良い

ここでポイントだと筆者が考えるのが、「お一人様」向けにサービスをカスタマイズする事です。

こういう場面で、飲食店がやりがちなのが「ただ単純に1人分の料理を用意すること」だったりします。
ようは、複数人に提供していた従来の料理について、シンプルに1人分を用意するだけにカスタマイズを留めてしまうのですね。

これまた別のアンケート調査になるのですが、下記のような点に関して、一人で行動する事に対するネガティブ感を感じているようです。

例えば、ソロメシプレミアムをベースに考えてみると、まずサービス自体で、一番上に来ている「おひとりさまでは入りにくいお店・場所がある」を何とかクリアできるかもしれません。

しかし、2番目以下は工夫が必要そうです。

2番目の「感想を言う相手がいない」に関しては、SNSでアップしやすいように、料理の提供時に「写真をとりますか?」といったお声がけをしてみる、料理の感想に対してコミュニケーションをとってみる、といった工夫が考えられます。

他にも、食べ方に関する丁寧な説明、何か仕切りや死角になるようなスペースで人の目を遮る、少量多種類の料理を提供する、といった形で、一人でも極力最大限に堪能できるような工夫を考えて、サービスのカスタマイズに取り組むのが良いのでは無いでしょうか。

一人行動が好きな人も存外多い

なお、これまでは「一人で飲食店に行くのを躊躇する」人を前提に話をしてきましたが、世の中には当然に一人行動が好きな人も大勢います。

Grapps「【アンケート】一人で外食できる? お一人様事情を調査!」より

単純に「お一人様」が苦手だ、という方の事を想定するだけでなく、「お一人様」が好きだ、という人に対して、楽しみを最大化するような工夫も同時に考えていくのが良いでしょう。


なんにせよ、直近の市況は外食産業にとって冬の時代です。
しかも、それはしばらく続きます。

ありとあらゆる方法、切り口で、顧客に来てもらう方法について考え、工夫を凝らしてくことが必須と言えます。

「お一人様」は、感染リスク的な意味では、非常に合致している利用方法ですし、改めて「お一人様」向けサービスを取り入れていくことは、外食の復活の一助になるかもしれません。

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経営企画

新潮の言う通りコロワイドは債務超過なのか?

少し古い話題なのですが、新潮社が記事(著者は細野祐二氏)にてコロワイドは債務超過なのでは無いか?と掲載し、コロワイドとバチバチやっていました。
今回は、コロワイドは本当に、新潮の言う通り債務超過なのか否かを考えてみます。

新潮社とコロワイドのやりとり経緯

新潮社は、大戸屋VSコロワイドとのやり取りに関連して、いくつかの切り口でコロワイドを批判する記事を掲載していました。

新潮社 VS コロワイド

その内の一つが「コロワイド、大戸屋プロキシーファイトに敗れて…前門の虎と後門の狼」(2020年7月6日)です。
記事の中では、ざっくり下記の通りを指摘しています。

  • コロワイドはM&Aをベースに成長し、700億円を超える「のれん」の他、200億円近い”疑似資産”を計上している
  • 「のれん」の評価(減損テスト)は適正ではなく、「のれん」の減損想定分を考慮するとコロワイドは債務超過状態になる(関連して監査法人の交代を行っている事を指摘)
  • 大戸屋株式についても、多額の「のれん」を計上するので、実質債務超過は膨らむ

一見、それっぽい内容となっており、会計に明るくない人なら、「そんな状態なのか、、、、、」とネガティブに受け止めてしまうかもしれません。

それに対して、コロワイドは自社IRにて反論(2020年7月6日)を行っています。
反論の内容は、下記のようなものです。

  • 新潮社は複数回に渡りコロワイドを誹謗中傷する記事を掲載している
  • 「のれん」の減損テストはIFRSベースの会計基準に則って行われており、記事の内容は「IFRSはもとより一般的会計知識を著しく欠く、全くもって虚偽のもの」
  • あずさ監査法人とは円満に監査契約を終了している
  • 記事筆者の細野氏は、「会計士界のレジェンド」と呼ばれているが、2004年に有価証券報告書虚偽記載事件により、最終的に執行猶予付き懲役刑が確定し、公認会計士登録が抹消されている

新潮社(細野氏)側は上記に対しても、再反論「コロワイドの反論に反論する…のれんと監査法人の変更について」(2020年7月17日)を行っています。
内容としては、ざっくり「コロワイド側の主張は、適切な根拠に基づいておらず、監査基準に基づく合理的な推論を自らの意に沿わないとして抑圧するのは、言論の自由を保障する日本国憲法違反であり、上場会社としてあってはならない。」という物です。

やり取りに関して、どちらに総合的な適正性があるかはここでは論じませんが、新潮社(細野氏)側の言い分は言いがかりに近いものがあるようには感じます。

(参考)議論の是非に関する補足

例えば、新潮記事では、下記のようにコロワイドを批判しています。

=====
「のれんの減損テストは、回収可能額としての公正価値と使用価値のいずれか高い金額と、対象事業に関する資産帳簿価額を比較し、帳簿価額が回収可能額を上回る場合に、のれんの減損を認識する」と言うばかりで、公正価値算定の基礎となった事業計画の内容を開示しない。これでは減損テストで使用した公正価値の妥当性を検証的に判断することはできない。自らは根拠を示すことなく、根拠の全てを示す論述を論難することはできない。
=====

ただ、会計基準に則って、会計処理を行うのは当然です。
また公正価値算定の基礎となった事業計画の内容自体を開示しないのも、上場企業であっても一般的であり、これを持って「自らは根拠を示すことなく」と批判するのは、流石に言い過ぎのように思います。

なお、他記事でもコロワイド側を擁護するものが出ています。

「著者も、デイリー新潮の記事に掲載されている、のれんの超過収益力を認めることができないとする「根拠」について、一般の会計基準に照らした会計処理から納得し難いと考える。
(中略)
投資家が独自の指標で企業価値を算定するのであれば構わないが、監査法人はこのような手法で減損テストは行わない。したがってROEが低いからのれんの超過収益力が認められないと判断することは、あまりに乱暴な判断だといわざるを得ない。」
ITmedia「減損テストから見る、コロワイドが新潮にブチ切れた理由(後編)」より

一方、下記の指摘も新潮社側は行っています。

=====
会社は連結株主持分250億円をはるかに上回る718億円もの「のれん」を資産として計上しているのだから、もとよりその資産性には強い根拠が求められることは言うまでもない。巨額ののれんを計上する上場企業が強い社会的批判の目にさらされるのは当然のことであり、それを《IAS第36号に則り「のれん」の減損テストを実施しています》というだけではお話にならない。
=====

これに関しては確かに一理ある部分はあります。

下記参考画像の通り、コロワイドの自己資本に対するのれんの金額比率は尋常じゃなく高く、その資産性や計算の合理性に対して、他社以上に丁寧に説明することは、IR的観点で必要なようには思います。

IFRSの肝は、比較可能性にもありますが、「自社にとって開示しなければいけない本質的な論点」の開示についてもあるはずです。
会計ルール・開示基準に記載されていないから、と言って、説明が基準内のものに留まっている事に関して、一定の批判をうけるのは致し方無い面はあります。

(参考画像)「のれん」の比率が高い居酒屋企業ランキング

もう少しシンプルに考えてみる

とりあえず、現状としてコロワイドが開示している資料は監査法人の適正意見をもって開示されているものであり、真に正しいかはともかくとして、ルールに則っているものと判断するのが適切です。

ここで会計処理の適正性等々に関して論じても致し方が無いと思うので、別の観点でシンプルに考えてみます。

日本基準だったとしたら「のれん」影響はどうなっていた?

まずは、コロワイドののれんの金額と、その内訳です。
(出典は㈱コロワイドの2020年3月期有価証券報告書からです。)

この通り、700億円超の「のれん」が計上されています。

さて、コロワイドは前段でも触れていましたが「IFRS(国際会計基準)」を適用しています。
このIFRSベースでは、のれんは償却をせず、その”価値”を算定し計上している金額との差額を損益処理する手続きが行われます(何度か触れている「減損テスト」とかですね)。

小難しいことは省略しますが、ようは、毎期一定額ずつ償却する日本基準に対して減損判断をするIFRSという違いがあります(これでも小難しいですけれどね。。。)。
で、この話の何がよく問題になるかというと、IFRSを適用し、減損に該当しないだけの業績が上がり続けているならば、日本基準より利益が高く見える(償却されないので)、逆に業績が傾いた時に一気に減損も入りダブルパンチを受ける、という点です。

ここがシンプルに考えるポイントです。

仮に、コロワイドが日本基準を採用していて、毎期「のれん償却額」を計上していたら、どのような業績になるでしょう?
(超厳密には、このシミュレーションも詮無いことなのですが、まぁ頭の体操だと思ってください。)

コロワイドがIFRSに移行したのが2017年3月期からで、開示資料としては2015年4月1日以降のものが、IFRSベースの数字になっています。

2016年3月期以前の有価証券報告書を見る限り、のれんの償却年数は20年を設定していたようです。

この20年をベースに考えると、ざっくり毎期の償却額は約3,500百万円(35億円)です。

過去5年間、56億円から100億円の事業利益が計上されていましたが、これがざっくり35億円ずつ小さくなる、という事がわかります。
事業利益ベースですと赤字では無いものの、黒字幅が大きく減少、事業利益率は0.9%~2.7%という状況になるとシミュレーションされます。
(当期純利益に関しては、税効果分があるので35億円ダイレクトにはヒットしない事に留意。)

経常利益ベースで考えると?

次に経常利益ベースで考えてみましょう。
営業利益もそうですが、経常利益で会社業績を見るのは一般的ですからね。

まずはPL全体像です。

ここで注目していただきたいのが金融収益と金融費用です。

営業外収益と営業外費用は、日本基準だと特別項目に入るものも混じっているのと(減損損失とか)、金額感、ニアリーイコールなので、金融部分に絞って考えます。

金融収益は銀行預金の利息や、他法人への貸付によるもので、
金融費用は銀行借入や社債、そしてリース(使用権資産)の支払利息です。

期によって計上額が異なるのですが、少なくとも2019年3月期は約13億円、2020年3月期は約42億円の利益アンダーインパクトがあることがわかります。

つまり、上記のれん分を含めて、2020年3月期は約21億円の経常赤字を計上していた(2019年3月期は約36億円の経常利益)、とシミュレーションできることになります。


繰り返しますが、コロワイドはIFRS適用会社なので、日本基準に換算してどうのこうの、というのは詮無いことではあります。
ですので上記の論考に対しては、別に是非を問いたいものでは無い、という事はご承知おきください。

いずれにせよ、コロナ影響もあり非常に厳しい経営環境にある事、そして大戸屋株式の買収に伴う「減損予備軍」のれんの多額の計上に関しては、事実ではあります。

今後、どのように経営を舵とっていくのか、継続して見ていきましょう。

最後、微妙に忘れていましたが、35億円×5年分で、約170億円がバーチャルなのれん償却額です。
2021年3月期第1四半期報告書ベースですと「親会社の所有に帰属する持分合計」は約200億円、資本合計が約325億円なので、ざっくりシミュレーションベースでも債務超過とは、まだ言えない感じです。
(ただし、2021年3月期も通期赤字の場合は税効果の話や、話題にあがっていた「のれん」の評価の話もあるので、一気に債務超過に転落するリスクは、結構高いとは感じています。)

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経営企画

新しい飲食店の形(アイデア)を考えてみる

飲食業界、特に居酒屋業界は相変わらず非常に厳しい経営環境に置かれています。
まだ数字は出揃ってはいないですが、2020年8月は既存店前年比40%~50%の会社が多い雰囲気です。
今回は、withコロナ時代の新しい業態イメージについてアイデアを考えてみます。

居酒屋業界は相変わらず異常に厳しい

まだ、2020年8月の既存店売上高前年比の数字は出揃っていないのですが、主要な所として、ワタミは36.4%、チムニーは33.1%、鳥貴族は59.1%と、相変わらず厳しい状況が続いています。

他業態も全体的に、8月は7月より落ち込んでいる所が多く、飲食業界全体のダメージは中々回復する兆しが見えません。

このような状況が続いているのは、飲食事業は一種の箱ものビジネスであり、中々変化対応をさせるのが難しい、という点が指摘できます。

一度設計した席配置は、什器の入れ替えをしないといじれない場合も多いですし、価格感も業態毎にある程度イメージを持たれてしまっているため、一度設定した価格はそう簡単にいじれません(いじると顧客数が大きく変動する)。

となると、考えなければいけないのは、入り口から「柔軟に変更対応ができる店舗づくり」になると考えられます。

色々とアイデア出しをしてみましょう。

柔軟に変更対応ができる店舗づくり

二業態イメージ(二毛作スタイル)

古典的な方法として思いつくのが二業態イメージ(二毛作スタイル)があります。

これは、例えば昼はカフェ、夜はバーというスタイルがあげられます。

代表的なお店としては「PRONT(プロント)」がありますね。

https://www.pronto.co.jp/index.html

これは流行り廃りがあり、時代や、また経営者により、負担だけが増えてうまくいかないぞ、いやいや意外に利益出るよ、と様々な意見が存在します。

理論的には、朝のカフェ、昼は軽食ランチ、午後はカフェ、夜はバー、と大きく4サイクル、ランチ帯と夜の時間帯はさらに2回転くらいはできるので、1日で6回転が期待できる業態になります。

他には、居酒屋業態でも、昼はランチ、夜は居酒屋、というスタイルが考えられます。

一昔前までのノウハウでは、昼に来た顧客は、夜に来店しない、という話があり、実際、数字としてそうなっていたので(筆者経験値)、避ける店舗オーナーは沢山いました。
しかし、今の状況を考えると、ランチ営業をした方が良いと考えられます。

なお、よく、二毛作スタイルは体力的につらい、というデメリットが語られる時がありますが、そもそもとして長時間の肉体労働を辛い、と思うようであれば、根本的に飲食店経営はおすすめできないので、参入しない方が良いと思います。

コワーキングスペース

飲食店ではアイドルタイム、ようはお客様が来ず、開店休業状態になっている時間帯というものが、しばしばあります。

その時間帯を有効活用しよう、お客様に来てもらおう、という発想の1つがコワーキングスペース化です。

この発想も昔から色々あったのですが、多くの飲食店、特に居酒屋においていくつかの問題がありました。
それは次のような点です。

  • コンセントが各席に無い(工事が大変)
  • 地下や古いビルの場合、携帯の電波が届かない(WiFiを店舗内に用意しないといけない)
  • 席が狭く、作業スペースに向いていない(什器入れ替えや、固定席は工事が必要)

ですので、入り口(店舗設計段階)として、コワーキングスペース対応していくことが必要です。

箱(店舗)自体が、コワーキングスペースに対応したもので設計できていたら、後は最近は下記のようなサービスも登場しています。
コワーキングスペース事業にも、容易に参入ができるのです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000055584.html

お客様が入り始めて、オペレーションが大変になる時間帯になったら、席が埋まっている、と管理サイト上で実行すれば良いので、柔軟性高く対応が可能です。

店舗内複合業態

これは発想自体は古いのに、実行している店舗が少ないのが実際です。

言葉だと説明が難しいので、イメージを提示します。

写真は品川にある「品川魚介センター」という業態の写真です。

これ、写真だとわかりづらいのですが、左側、奥川、右側でそれぞれ別のお店になっています。
一つの箱の中に、複数の業態が入っているのですね。

店舗内イメージは下記のような形になります。

このように、1つの箱の中に複数の業態を入れて、顧客のニーズにあわせて入れ替えを実施できるようなイメージで店づくりを行うと、柔軟性が増すと考えます。

オペレーションコストは高くつきそうですが、厨房設計や席配置の検討により、通常型店舗と同等レベルのオペレーションコストで運営できそうな気はします。

仮想複合業態

これは、例えばウーバーイーツ上での出店について指しています。

下記はウーバーイーツのトップ画面に表示されていたもののサンプルです。

ウーバーイーツサイトより

このように、1つの画面に複数の店舗が表示されているのですが。
これを見て、思いませんか?

自分のお店を複数開店して、複数を画面上に表示させたら注文率があがるのでは?と。

これが可能なのがバーチャル店舗の強みです。

レストラン拠点に関しては、配送専門店でも店舗型でも問題はありません。
また、同じ屋号で複数店舗の出店が可能です。
屋号が同じで複数店舗の出店が可能ということは、クラウドレストランには追い風です。
要するに、キッチンだけ用意すれば、同じキッチンを共有することで複数店舗(ブランド)出店が実現するのです。

「メリットだらけのUBEREATS(ウーバーイーツ)出店解説します。」より

上述の二毛作型や、複数業態型においても、親和性が高く、お店の回転率を底上げできることが期待できます。

そもそもとして、今の時代、宅配に対応していない業態は辛いので、前提として、このような仮想複合業態を考慮するのは、当然に有りでしょう。
売れなかったら、入れ替えれば良いですし(業態転換は、バーチャル上だと異常なまでに容易)。

細かい設計について

後は、細かい諸々の設計は考慮した方が良いでしょう。

例えば調理についてです。

サイゼリアキッチンモデル

サイゼリアでは「包丁が無い」ことで有名です(実際にはあるのですが、使用場面がほとんどない)。パックされた材料を盛り付けて、所定の最終工程を行うだけ、という工程になっています。

人を集めるのが大変な時代ですので、オペレーションコストを極力最小化するのはマストでしょう。

セントラル・キッチンがあれば比較的容易に対応ができますし、セントラル・キッチンが無くても実行は可能です。

新橋にある「烏森百薬」という業態があるのですが、ここは「お取り寄せ」で商品を構成しており、店内では焼く等の最終工程を実行するだけにしています。

https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13225528/

似たような事をやっている業態は他にもあるのですが、ようはサイゼリアモデルを、セントラル・キッチンを持てない小さい会社でも実行できる、という事ですね。
(サイゼリアモデルは、厳密には違うのですが、とりあえず、最終工程だけをやれば良い、店内調理は無いよ、というものを指しています。)

カフェ業態をやる場合はコーヒーマシン、バー業態でもビールサーバーをお客様が操作できるようにすれば、オペレーションコストを更に削れます。

ダイナミックプライシング

飲食店の悩みの一つが、一日の中でも繁閑差が大きい事です。

これへの対応策の一つがダイナミックプライシングです。

ダイナミックプライシングとは、簡単に言うと、繁閑に応じて値付けを変えますよ、というものです。
混んでいる時は高いし、空いている時は安い、ということですね。

これを飲食店でも導入してしまおう、という発想です。

これは実は、個店レベルでは対応している、賢い店主をチラホラ見かけます。

具体的には、常連客とLINE等々のSNSでつながって、来店客が少ない時に、「今なら〇〇が安いですよ。」と発信して、来店してもらっているお店があるのです。
(キャバクラとかでも、あるらしいですね。似たようなのが。まず行かないので、聞いただけの話ですが。)

常連客と直接つながり、来店してくれたら安くする、というような上記図の②のやり方は当然に有りです。
チェーン展開を考えるなら、専用アプリを用意して③の方式でポイントバックするのが、スムーズなように思いますね。

内装イメージ

お店を持つ、というのは外食マンにとって、非常に重みのある事です。

メニューもそうですし、店内内装外装についても非常に凝る方が決して珍しくありません。

それ自体は全く悪く無いのですが、じゃあ柔軟性が高いか?というと全くもってそうではありません。
仮に業態転換をしたい場合は、お金をかけての改装を行う事になります。

柔軟性を高く持つには、普遍性の高いデザインにしておくことが重要です。
例えば次のようなイメージです。

  • 壁はコンクリ打ちっぱなしそのまま
    天井は配管等を黒く塗り、基本むき出しにする
    照明は色と明るさを変えられるLEDで
    什器は、特定の国や文化の色が出ないような汎用性の高い物
    固定ソファやカウンター席のような、変更に工事が必要ものは極力控える

インテリアや看板・のれんで店舗イメージを演出し、それ以外はベースいじらなくても良いような形にすると、業態転換が容易になります。

作り込みや世界観の構築、という観点ですと、非常に弱くはなってしまいますが、変化対応力は抜群に高くなります。

顧客とのつながり

お客様が常連客になっていただける割合って、どれくらいかご存知ですか?

結論、1,000人のお客様の内、2年後も来店してくれるのは2人だけです。

これは、リアル店舗ですと、顧客との接点が、最初の来店1回に限定される事も大きいと考えられます。

専用アプリだったりSNSなりで、つながることができるならば、関係性構築、ありていに言えばCRMが可能となります。
今の時代風に言えば、カスタマーサクセスにつなげることができるわけです。

この数字を抑えた上で、如何にお客様とつながりを持つか、という点は非常に重要でしょう。

リアルな再来店動機の形成の仕方ですと、例えば池袋のうなぎ名店「かぶと」では、初回時には養殖のうなぎしか食べられませんが、2回目以降は天然物を食べられる、というような商品提供で再来店動機を醸成していたりしますね。


色々とアイデアを出してみたのですが、意外にいけそうな感じがしてきました。

1つの箱の中に複数の業態をリアルでもバーチャルでも持ち、店内飲食・宅配に両対応する。
朝・午後はカフェ業態兼コワーキングスペース、昼はランチ、夜はバー・居酒屋。
ダイナミックプライシングを専用アプリ上で実行し、また調理や配膳工程を大きくカットしたオペレーションを組み、来店コントロールとコストカットを思いっきり行う。

結構、面白そうなお店を作れるかもですね。
やりたくなってきました。

最後に言いたい事を一つだけ。
飲食店をはじめる方は「料理が好き」とか「一国一城の主になりたい」とかあると主のですが。
そういう発想は、とりあえず捨て去るのが良いと思いますね。

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統計・経済

GoToイートは外食産業にとって福音となるか?

GoToイートキャンペーンの報道が頻繁に出てくるようになりました。
新型コロナウイルス影響により、困窮している飲食店、漁業関係者にとっての補助になると期待されています。
果たしてGoToイートキャンペーンは、本当に効果があるのでしょうか?

GoToイートキャンペーン

GoToイートキャンペーンについては、色んなサイトで情報が出ているので詳細は省きます。

内容としては大きく2つで、飲食店で使用できる食事券と、オンライン飲食予約によって付与されるポイントです。

上記資料は農林水産省のGoToイートキャンペーンの解説サイトからです。

なお、下記の通り、特設サイトもオープンしているようで、着々と準備が進められているようです。

https://gotoeat.maff.go.jp/index.html

このキャンペーンについて、効果があるのかを考えます。

ここでは、物事の進め方プロセス的なものや、感染拡大的な要素は考慮せずに、純粋に経済規模的にうまくいくか否かに絞って考えます。

結論:予算が小さすぎて厳しい

予算が小さすぎる

もう、タイトルに書いてしまっているのですが、結論としては厳しいと考えています。

予算ですが、食事券が767億円、オンライン飲食予約が767億円と、合計1,534億円の金額が積まれています。

一方、外食産業はどれくらいのダメージをうけているのか?という話ですが。

ファストフード系を除き、一時期は前年比50%前後か、事業所によっては0%に近い数字になっている所がありました。
これは現在でも一定継続しており、特に居酒屋系やディナーレストラン系は前年比50%前後の苦境に置かれています。

上記については、下記記事もご参照ください(8月分は別にまとめます)。

上記の通り前年比が厳しいです、という話の中でこれを金額ベースで考えます。

一般社団法人日本フードサービス協会「外食産業市場規模推計の推移」より

飲食店の市場規模は、約19兆円5千億円です(黄色網掛部分)。

今回、特にダメージが大きいのが「料飲主体部門」で、こちらは約5兆円の市場規模です。
この領域は、コロナ影響を受けている約半年の期間、売上が激減、軽くても半分に落ちている状況です。

ざっくりと電卓をはじくだけで、約1.2兆円のトップライン(売上)の減少影響を受けています。

合計1,534億円では到底足りません。

(今回のキャンペーンは、従来から飲食利用していた人の方が率先して利用するであろう事が想定される。キャンペーンを契機に、飲食店利用を控えていた人が、利用するようにならないといけないが、その効果があるかというと限定的と考えられる。
仮に、1,534億円全部が飲料主体飲食店で使われ、しかも利用者全員がこれまで飲食店利用を控えていた消費者、という仮定に仮定を重ねて、ようやく1兆円の経済規模に到達する。)

飲食業倒産が最多になるかも

東京商工リサーチの調べでは、飲食業の倒産が通年で最多を更新する勢いだ、としています。

東京商工リサーチ「「飲食業の倒産状況」調査(2020年1-8月)」より

GoToイートキャンペーンが恙なく進行し、予算満額で使用されたとしても、冬は感染症拡大の季節でもあります。

単発利用で終わり、また消費が冷え込むのでは無いかと予想します。


消費者心理として応援ムードになり、利用が再開する。
継続した景気振興策が出てくる。
早々にワクチン等の開発と普及が進み、不安心理が払拭される。

こういった事がある程度重なって起きない限り、飲食店には淘汰の時代となるでしょう。
時代の変化に対応しつつ、真に顧客にとって望まれる価値提供を行えない事業者から撤退を余儀なくされていくでしょう。

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7億円赤字の鳥貴族、経営は大丈夫なのか?

鳥貴族が2014年の上場以来最大となる7億6千万円の赤字を計上したとの報が出ていました。
飲食店はコロナ影響を大きく受けている業界の1つです。
鳥貴族の経営は大丈夫なのでしょうか?

鳥貴族7億円の赤字報道

まずは報道を見てみましょう。

鳥貴族が11日発表した2020年7月期の単独決算は、最終損益が7億6300万円の赤字(前の期は2億8600万円の赤字)だった。新型コロナウイルスの感染拡大で4月初旬から約1カ月半、直営全店が休業したことに加え、自治体による営業時間の短縮要請などが響いた。店舗の臨時休業による損失や収益性低下に伴う減損などで約27億円の特別損失を計上した。

日本経済新聞 2020年9月11日 「鳥貴族が7億円の赤字、20年7月期最終 コロナで不振」より

なるほど、飲食店の例に漏れず、コロナ影響による大損害を被っていた、という事ですね。

なお、2014年の上場以来の最大の赤字幅でもあります。

果たして鳥貴族の経営は大丈夫なのでしょうか?

直近の決算短信を見てみる

鳥貴族は9月11日時点で2020年7月期の決算短信を公表しています(リンク先は同社IR)。

これをベースに数字を見てみましょう。

まずは、PL概要です。

売上高は前期比▲23.2%の275億円、経常利益は同▲16.5%の9億円、そして最終損益が報道の通り7億6千万円の赤字となっています。

このような状況でも(7月決算なのでコロナ影響を2月から7月まで、約半年まともに受けている)、しっかり営業利益・経常利益を出しているのは凄いですね。

赤字の原因はほぼほぼ特別損失によります。

休業損失が約19億円、おそらく撤退するであろう店舗の減損損失が8億円と、ここで合計約27億円の特別損失を出しており、これが最終損益にヒットした形です。

それでは現預金残高は、というと次の通りになります。

87億円の現預金を確保しており、十分な額が存在します。

財務CFが約50億円あり、この内65億円が新規の長期借入となっており、有利子負債は増大しつつも、当面の資金は問題無い事がわかります。

このように自己資本比率も、まだ28.4%と決して高い数字では無いものの、飲食店の平均ライン前後の数字を維持しています。

コロナ影響を早々に脱し、元の成長軌道に乗せられれば、鳥貴族の経営は問題が無いと言えるでしょう。


鳥貴族のコロナ影響については、次の記事も参照ください。

成長軌道に改めて乗せられるか?

実は鳥貴族はある懸念が存在していました。

https://business.nikkei.com/atcl/report/15/278209/012400183/

上記の記事(外部サイト)にもあるように、そうは言っても格安業態であるが故に利益率が高くなく(営業利益率3%台)、値上げを実施しています。

それにより、2018年7月期と2019年7月期は既存店前年比割れを起こしています。
(これは値上げ影響だけでなく、店舗急拡大の影響もある。)

鳥貴族既存店前年比年度推移

幸い、元々の顧客支持が高かったこともあり、上場時の水準(2014年7月期)から比較すると、まだ既存店売上高の売上指標は100を超えています(コロナ影響は除く)。

鳥貴族は、withコロナ環境においても、比較的相性が良い業態ではあり、他居酒屋に比較して回復が早い方でした。
まだ回復途上ですし、8月は第二波の影響か再び下落してしまっているものの、優位な状況にはあります。

既存店前年比割れは飲食店経営における宿命のような物です。

withコロナ環境において、顧客に支持される価値提供を続けられるか否か。

これが今後の鳥貴族の成長にかかっているでしょう(鳥貴族に関わらず、の話ではあるんですけれどね)。

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鳥貴族の回復が他居酒屋より早い理由

当サイトでも触れていますが、外食産業が新型コロナウイルス影響は甚大なものです。
特に、居酒屋系業態のダメージは著しく、直近2020年7月でも前年比50%前後の所が多いです。
一方、鳥貴族は回復が早く、既に前年比約77%にまで回復しています。
そのポイントは何なのでしょうか?

~参考~

居酒屋売上高前年比

まず、居酒屋3社の既存店売上高前年比推移をご覧ください。

この3社は例ですが、他の会社も概ね3月~5月は大きく落ち込んで、6月7月で少しずつ回復している、という推移です。

その中で、鳥貴族の回復は著しく、2020年7月では76.8%の着地となりました。
これは、非常に凄い事だと感じます。
(それでもまだ76.8%なのですが。。。)


参考までに、居酒屋、ディナー系レストランを含む多業態系の会社の既存店売上高前年比推移も示しておきます。
やはり、多業態系はリスクヘッジの観点では良いのですね。

鳥貴族は顧客満足度が高い

鳥貴族は元々、顧客からの支持が強い会社でした。

こちらは「居酒屋チェーンの総合満足度評価」です(2020年8月公表)。

こちらは「低価格が魅力的な居酒屋チェーンランキング」です。

FNN gooオンライン調査 「1位は均一価格にこだわった「鳥貴族」! gooランキングが「低価格が魅力的な居酒屋チェーンランキング」を発表」より

このように、複数のアンケート調査で高評価を得ているのが鳥貴族です。

(なお、別に回し者では無いです。)

付け加えると、㈱鳥貴族は、早々に全店休業を行うなど、誠実性の高い対応を行っています。
(臨時休業対応は、結局、緊急事態宣言が明けるまで継続されました。)

㈱鳥貴族 リリースより

何が支持されている?

それでは、どのような点が顧客から支持されているのでしょうか?

前述のアンケート調査の本文を引用してみましょう。(強調は筆者)

1位には、創業以来「均一価格」にこだわり、焼き鳥はもちろんドリンクも含めて298円(税抜)で食べられる「鳥貴族」が輝きました。
2017年に「280円均一」から「298円均一」へと値上げが行われましたが、国産鶏肉を使用した大ぶりな焼き鳥やつくね、手羽先がお財布に優しい価格で食べられるのは居酒屋好きには何ともうれしいですよね。
すぐに出てくる「スピードメニュー」の枝豆やキャベツもとことん品質にこだわるなど、手抜きをしないところに人気の秘密がありそうです。

低価格が魅力的な居酒屋チェーンランキング

なるほど、低価格、均一価格、加えて国産鶏肉を使用、という所がポイントなのだそうです。
確かに、コロナ不況の今、お財布に優しい、明瞭会計なのは消費者心理的にありがたいでしょう。

別の記事では「コスパ最強」というようなタイトルもつけられています。

さらに別の記事では、店舗で肉をカットし、手打ちで串を準備している様子も掲載されています。

NHK 鳥貴族 “驚き”で逆風に立ち向かう より

さらに付け加えると、「串モノ」という点もあげられると考えられます。
普通の居酒屋では、料理が一つの皿に盛り付けられており、取り分けて食べるのが一般的です。
一方、串料理は取り分けが必要ないので、ウイルス感染のリスクが低いことが指摘できます。

これらをまとめると、次の3点がポイントかと考えられます。

  • 低価格で298円均一でコロナ不況でも財布に優しい
  • 高品質で高コスパ(国産鶏肉を手打ち)
  • 串単位で食べられるので感染リスクも低い(とりわけ不要)

ようは、長年、真面目に営業をされてきており、元々支持されていると。
そのような状況で、時世にあった商品をたまたまだけれども提供できている、という点が今回の回復の早さにつながっているものと考えられます。


2020年8月24日の日経新聞記事(外食の客足、復活の3条件 全国1万店データ分析)によると、下記の3条件が客足が戻るのが早いということです。
確かに鳥貴族は、ビジネス街だけでなく住宅街にも展開していますし、少人数対応していますね。
(原則、ランチは実施していないようですが。)

  • ランチ
    住宅街立地
    少人数

一方、店舗休業を小出しにしたりしてきたチムニーは、むしろ直近の数字の方が落ちています(冒頭のグラフをご参照ください)。
(なお、チムニーは、過去に株式市場を混乱させた案件があったりします。)

悪く言うのは忍びないのですが、経営における誠実性が数字に表れた結果なのだと、両社を眺めていて感じます。

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統計・経済

外食産業回復状況~2020年7月期前年比~

2020年7月期時点、外食産業のコロナ影響の回復状況を見ていきます。
回復が進んでいるものの、その速度は鈍化しています。
ディナーレストラン、パブ/居酒屋系は依然として▲50%あたりの数字です。

なお、現時点で数字が各社出そろっていないため、主要な会社の平均としています。
(そのため、集計の項目も若干異なっています。)

2020年6月の集計は次の通りです。

回復状況のグローピング

2020年7月時点での回復状況をグルーピングすると下記のようになります。

A ファーストフード-洋風 ⇒ A
B ファミレス-焼き肉 ⇒ A
BC ファーストフード-和風 ⇒ A
B ファーストフード-寿司系 ⇒ B
B ファミレス-中華 ⇒ B
C ファーストフード-麺類 ⇒ BC
C ファミレス-洋風 ⇒ BC
C ファミレス-和風 ⇒ BC
C 喫茶 ⇒ BC
C ディナーレストラン ⇒ C
D パブ/居酒屋-合計 ⇒ C

Aグループ:ほぼほぼコロナ影響を受けなかったか、100%水準に回復した
Bグループ:概ね数字が戻っているものの、未だ▲10%前後の回復状況
Cグループ:回復途上にあり▲40%~▲60%の状況
Dグループ:産業として危機的・壊滅的状況にある(▲40%ライン)

売上高前年比

ハンバーガー系は安定して数字を出しています。
前回は回復途上だった焼肉系と和ファストフード、つまり牛丼系が100%水準に回復しました。

一方、寿司業態、中華系は回復が足踏みしています。
寿司業態は、緊急事態宣言開け後のハレ消費で一時的に伸びたものの、それが落ち着いた分の影響が出ているのでしょう。
中華系は、お一人様消費含めた行きやすさがある一方、とは言えの中で(新型コロナウイルス影響を考えると)家族等の集団で行きづらい業態と考えられます。
そのため、これまで来ていたお客様の層のまま変化が無かった、と言えるでしょう。

ファミレス系(和・洋共に)と麺系、そして喫茶系は、少しずつですが回復はしています。
ただ、それでも80%(前年比▲20%)前後に留まっており、回復の速度が鈍化しています。

最後、ディナーレストラン系、居酒屋/パブ系。
こちらも、少しずつ回復はしているものの、それでも50%(前年比▲50%)の状況で、相変わらず、絶望的なまでの厳しい環境に置かれています。
会社別に見ると、例えば鳥貴族はもう少しで80%にまで回復するので、会社・業態にもよるのですが、それでもまだまだ厳しい状況です。

客数前年比

客単価は概ね元の状況に戻っているので、売上高が下がっているのは客数の影響が大きい、という話は先月もしました。

各業態、本当に少しずつですが、回復をはじめています。

その中で、7月は焼肉が大きく回復しています。
6月に寿司系業態が大きく回復しており、これは上述の通り、緊急事態宣言開け後のハレ消費の影響が大きく、一方7月は落ち込んでいます。
ハレ消費が7月は焼肉業態に流れたもの、と考えるのが、一定自然でしょう。

客単価前年比

客単価の推移も提示しておきます。

なお、縮尺が売上高、客数の資料とは変えている(見やすさのため)のでご留意ください。

特徴的なのは寿司系業態です。
客単価が大幅に上がっています。
客数的には6月のハレ消費から落ち着きを見せた一方、7月は多くのお金を使う層が利用した形です。


2020年8月24日の日経新聞記事(外食の客足、復活の3条件 全国1万店データ分析)によると、下記の3条件が客足が戻るのが早いということです。

  • ランチ
  • 住宅街立地
  • 少人数

居酒屋業態では、ランチ営業を行うと夜に来店しなくなる、という特徴があるのですが、一定、ランチ営業を考えていった方が良いのでしょう。
加えて、大皿料理に関しては小分けでの提供や、一人用メニューの拡充などに対応していく必要が出来るでしょう。
立地に関しては、如何ともしがたいでしょうが。。。


8月が中旬となりました。

本来であれば、お盆消費で地方の外食売上高が伸びる時期です。
これが大きく望めない状況のため、8月がどのような数字になるのか不安を覚えています。

加えて、Dグループのディナーレストラン、居酒屋/パブ系の地獄のような状況が継続している点。
もういい加減、一事業所、一個人で何とかできるラインを超えています。

数字は継続して見ていきます。

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経営企画

居酒屋文化、消滅の危機

東京都をはじめ、各自治体より飲食店等への時短営業要請が出ています。
これは、いよいよパブ/居酒屋等の夜に渡ってサービスを提供する業態へのトドメとなる可能性があります。
冷静に状況を判断し、経済を回すべきでしょう。

なお、筆者は居酒屋文化を愛する人間であり、その意味で(極力、排除するよう努めてはいますが)ポジション・トークも入っている可能性があることは、公平性の観点で付しておきます。

東京都知事による時短営業要請

新型コロナウイルス影響が続いていることをうけ、飲食店等に午後10時までの時短営業要請が出されています。

協力要請に従う事業所には20万円の協力金が支払われます。
(とてもじゃないがこれでなんとかなる金額とは言えない。)

https://this.kiji.is/662983734531048545

この要請は、居酒屋等の業態に対してトドメとなる、飲食文化崩壊の危機につながると考えています。

居酒屋業態の業績状況

こちらの記事でも示していますので、参考にしてください。

パブ/居酒屋業態の売上高前年比は、4月5月からのどん底からは脱しつつはありますが、2020年6月で売上高前年比40%の状況です。

一般社団法人日本フードサービス協会資料より作成

3月から起算して、7月も入れれば5ヶ月。

どんなに健全な経営を続けてきたお店でも、いよいよ体力の限界が来るでしょう。
また、なんとか続けられる事業所でも、気力の限界があります。

飲食店というビジネスは、早い時間から仕込みをし、遅くまで営業をする、という体力的にも厳しい商売であり、なんで続けられるのか?と言うと、お客様の存在です。
お客様が来て、お店をある種一緒に盛り立ててくれるから、好きで、頑張って、続けられる商売なんです。

東京商工リサーチのまとめでは、休廃業・解散企業の数が急激に伸びており、5万件をこえるのでは?と言われています。

東京都の時短営業要請は、業績的な面もそうですし、気力的な面でも、居酒屋業態に対するトドメとなる可能性があるわけです。

冷静に考えるべきでは?

不安に思う人も当然にいらっしゃるでしょう。
それを責めることはできません。

しかし、国や地方自治体の姿勢、そしてマスコミの報道のあり方には疑問を覚えます。

こちらの記事でもまとめましたが、陽性者数が増えているのは、単純に検査数が増えているからです。
重症者数は増えていません。

しかし、こちらの記事でも書きましたが、若者への感染影響は極めて軽微で、一方で経済的ダメージは一方的に負います(年金ももらえないですしね)。

最新の感染統計を見ても、警戒はすべきだとは思う一方、過剰な心配は不要としか思えません。
一貫して、過剰な心配は不要、と当ブログでは書いてきましたが、状況が推移しても、この意見に反する情報が出てきません。

https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/

年齢階級別に必要な対策は異なることは、数字から明らかなはずです。
不安を煽るような対策の打ち方、報道の出し方は、政治に関わる方達・報道に関わる方達共に、いい加減に改めていただきたいものです。

正しく怖がり、そして経済を回しましょう。

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統計・経済

外食産業回復状況~2020年6月期前年比~

2020年6月期時点、外食産業のコロナ影響の回復状況を見ていきます。
中華、寿司系、焼き肉は数字が戻りつつあるも、まだ▲10%前後の売上高。
回復途上にあるのが和風ファストフード(丼もの系)、麺類、ファミレス、喫茶、ディナーレストラン。
居酒屋/パブ系は未だ厳しい状況にあります。

資料出典は一般社団法人日本フードサービス協会です。

回復状況のグローピング

2020年6月時点での回復状況をグルーピングすると下記のようになります。

A ファーストフード-洋風
B ファーストフード-寿司系
B ファミレス-中華
B ファミレス-焼き肉
BC ファーストフード-和風
C ファーストフード-麺類
C ファミレス-洋風
C ファミレス-和風
C ディナーレストラン
C 喫茶
D パブ/居酒屋-合計

Aグループ:ほぼほぼコロナ影響を受けなかった
Bグループ:概ね数字が戻っているものの、未だ▲10%前後の回復状況
Cグループ:回復途上にあり▲40%~▲60%の状況
Dグループ:産業として危機的・壊滅的状況にある(▲40%ライン)

売上高前年比

Aグループの洋風ファストフード、つまりハンバーガー等は、コロナ影響に強く耐えていたものの、6月は数字が落ち込みました。
緊急事態宣言明け後、他業態に顧客が流れたのが要因でしょう。

Bグループの寿司系、中華、焼き肉系は、ようやく▲10%前後まで数字が回復してきました。
寿司や焼き肉は、ハレ要素があるので、緊急事態宣言明け後の解放ムードのなかで消費が回復したのでしょう。
中華は、お一人様需要に対応しやすい業態であり、ハンバーガーや丼もの系でルーチンをまわしていた顧客が流れたものと考えられます。

和風ファストフード、つまり丼もの系等は、元々、数字の落ち込みが激しくなかった業態なのですが、今一つ数字が回復しません。
そのためBとCの中間、という位置づけにしています。
安定して利用されてはいるものの、ビフォーコロナのような活況には戻らない可能性が高くなってきました。
▲10%前提で事業設計をしていった方が良い業態と考えられます。

Cグループは回復途上ですが、急激に数字が戻りつつあります。
7月の数字公表に期待です。
ラーメン系、ファミレス、ディナーレストラン、喫茶系です。
ただ、ビジネスエリアで展開しているラーメン系、ディナーレストラン、喫茶系は7月も回復は厳しいでしょうし、今後数字が戻るイメージが描けません。
早々に事業戦略の見直しを図った方が良いでしょう。

居酒屋/パブ系は非常に厳しい状態です。
ものすごく大きなくくりで、夜の街、としてネガティブな見方もされてしまっています。
ビジネスエリア展開しているお店も多く、産業として危機的状況にあると言えます。
お店そのもののバリューが無い所から、順々に消滅していき、最悪、従来の半分ほどまでお店が減る可能性があります。

客単価前年比

客数の前に客単価の推移を見ましょう。

この通り、概ね数字が正常化されつつあります。
ハンバーガー系は未だ好調ですが、こちらも数字が元に戻りつつあります。

消費者心理として、客単価に関しては、一定の落ち着きが見えたと言って良いでしょう。

客数前年比

上記の通り、客単価は概ね正常化しつつあります。

つまり、売上高に影響を与えている要素は客数です。

こうして見ると、Aグループのハンバーガー系も客数という観点では中々厳しい戦いをしていることがわかります。

客単価で稼ぐ方法にも限界があるでしょうから、今後、各社とも継続して厳しい生存競争環境に晒されることとなります。

ここが如何に回復するか?が外食産業の運命の分かれ道です。


7月も間もなく終わります。

この先1,2週間で主要な会社の数字は出てきます。

Cグループ、Dグループは、そろそろ限界に達する事業所がマジョリティになってくるはずです。
7月の数字の状況、注視が必要です。

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