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統計・経済

2019年10月-12月実質GDP▲6.3%成長率_今後の成長にも懸念

2月17日に四半期別GDP速報が公表されています。
各所で既に取り上げられている話題ではあるのですが、市況環境はIPO進行上、無視はできない要素ですので、こちらでも取り上げていきます。

直近2019年10月-12月期の実質GDP成長率は▲6.3%

内閣府資料より作成(実質季節調整系列)

タイトルの通り、直近期のGDP成長率は▲6.3%です。
これらの要因は、下記の通りで、増税前の駆け込み需要の反動と、その後に続く大型台風、暖冬により民間最終支出消費が大きく落ち込んだ結果となりました(あわせて企業の設備投資も大きく落ちています)。

  • 消費税増税
  • 大型台風
  • 暖冬
  • 12月から発生したコロナウイルスの影響が少なからず

なお、グラフ灰色線が成長率推移なのですが、大きく落ちている箇所がいくつかあります。 代表的な部分を取り上げると、下記が主な要因となります。

  • 2009年1-3月 リーマン・ショック
  • 2011年1-3月 東日本大震災
  • 2014年4-6月 消費税8%への増税

日経平均には盛り込まれていない?

Yahooファイナンスより

様々な心配事はあるのですが、その一つが日経平均です。
日経平均推移を見ていると、2月21日時点で23,386という数字となっており、2019年10月からの推移を見て、23,000~24,000のレンジがキープされています。
過去のSARSの時を考えると、ここしばらくは調整が続きそうです。
調整がどれだけの期間となるか、短期で決着がつけられるか、が注目です。

コロナウイルスの影響も懸念

もう一つの心配事はコロナウイルスの影響です。

インバウンド消費の落ち込みと、中国サプライチェーンの稼働不良による世界経済への影響。
これらがどれだけのインパクトがあるのか、そして影響はどれだけ長引くのか、が懸念されます。
2020年は東京オリンピックも開催されます。

インバウンド消費の落ち込みだけで、第一生命経済研究所試算では▲4,833億円、野村総合研究所試算では▲7,760億円とされています。

ただし、海外渡航が抑制されれば、日本人の海外旅行やインバウンド抑制によるサービス輸出入 の減少という経路を通じても、経済全体への悪影響はさらに大きなものとなる。これらも加味し てSARSの時と同程度の影響が出るケースを試算すると、わが国の名目GDPは▲4,833 億円 程度押し下げられることになる。

第一生命経済研究所「 新型肺炎が日本経済に及ぼす影響 」より

新型肺炎の影響により、2020年の訪日観光客数がこれと同じ割合で減少するとした場合、中国からの訪日観光客数の減少は2020年の日本のGDPを2,650億円押し下げ、訪日観光客数全体では7,760億円押し下げる計算となる。ちなみに後者については、GDPを0.14%押し下げる計算だ。

野村総合研究所「 新型肺炎がインバウンド需要の減少を通じて日本経済に与える影響試算 」より

政府の対応の是非も各所で議論されていますが、それ以上にメディアによる過剰報道が気になります。
政府もメディアも「正しく恐れ、正しく対処する」ことを呼び掛けていただきたいものです。

企業経営側としては、一つ一つやれることをやっていきましょう。

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人事・総務

【企業のコロナウイルス対策】マスクやアルコール消毒液が不足している今、できる事

既知の通り、コロナウイルスの感染拡大の報をうけて、マスクやアルコール消毒液が不足している状況が続いています。
各小売店の棚は品切れ各ECサイト上では非常に高額な価格での販売(転売含む)が行われています。
これらの事態に対して愚痴や評論を行っても意味が無いので、今々現状で企業がとれる対策は何かを考えて見ましょう。

石鹸(ハンドソープ)による手洗いの奨励

流水と石鹸による手洗いを頻回に行いましょう。特に外出した後や咳をした後、口や鼻、目などに触る前には手洗いを徹底しましょう。

東京都感染症情報センター

コロナウイルスは界面活性剤によって不活化(ようは死滅する)します。
界面活性剤、つまり石鹸(せっけん)、ハンドソープ、洗剤です。
これによる手洗いを推奨する事により、感染予防を行うことが可能になります。
このシンプルな方法なら、製造業や小売業のような業種・職種においても容易に対応可能で、かつ効果があります。

問6 新型コロナウイルス感染症はどのように感染するのでしょうか?
~中略~
(2)接触感染
感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手で周りの物に触れるとウイルスが付きます。他者がその物を触るとウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触って粘膜から感染します。
※主な感染場所:電車やバスのつり革、ドアノブ、スイッチなど

厚生労働省「 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け) 」

厚生労働省のQAにもある通り、コロナウイルスの感染源として「接触感染」があげられいます。
ウイルスが付着している何か(つり革、ドアノブ、スイッチなど)を触り、その手で顔(口、鼻、目)を触ることにより、粘膜から感染するということです。
これがマスクは感染予防の効果が薄いと言われる理由です。

ではどうするべきか?が手洗いの奨励です。
自宅を出る時、職場についた時、外出する際と戻った時、帰宅した時、等々、各タイミングで手洗いをすることにより、手に付着している(かもしれない)ウイルスを取り除くことができます。
これは簡単にできること(のはず)なので、社内に発信し啓もうしていくよう取り組みましょう。

手洗いの方法のレクチャー動画もあります。

次亜塩素酸水を代替として使用する

アルコール消毒剤は品薄で、極めて高額でしか入手ができませんが、次亜塩素水による代替が可能です。

こちらとかこちらから入手が可能です。
この情報も少しずつ浸透しているようで、しばらく時間が経過すると入手性が下がるかもしれません(モラルの低い買占めは決して奨励していないので、誤解が無きよう)。

商品によって濃度が異なるので、商品の説明とこちらを見て、適切な濃度に希釈して使用しましょう。
スプレーボトルを別に購入しておくと良いです。
なお、塩素が飛ぶ関係で効果が下がります。
作り置きはせず、その日のうちに使用するであろう量のみを用意しましょう。
(後、漂白作用には注意しましょう。)

リモートワークの導入、リアル(会議や営業、セミナーなど)のオンライン化を進める

感染源への接触が問題ですので、リモートワークの導入、リアル部分、つまり会議や営業、セミナーなどのイベントのオンライン化を進めましょう、という話です。
こちらは主にオフィスワークをはじめ、必ずしも会社に出勤しなくても良い職種に限定されますが、感染可能性を減らすのは公衆衛生の考え方にも適合しているので、可能であれば取り組んだ方が良いでしょう。

例えばGMO社は早々にリモートワークの導入を決定し、こちらにあるようなまとめサイトを公開しています。
Sansan社は時差勤務、オフラインイベントの開催自粛、オンライン化の推奨を公表しています。
完全リモートワークが難しかったとしても時差勤務と組み合わせれば、ハードルが下がるのでは無いでしょうか?

また、営業は例えばベルフェイスのようなサービスによりオンライン化が、
会議やセミナーはV-CUBEのようなサービスでオンライン化が可能です。
これらの回し者では無く、一例としてあげさせていただきました。
他にも検索すればいくらでも出てくるので、調べてみて下さい。
Slackのようなコミュニケーションツールを導入していれば、気軽に電話会議もできます。

まとめ

以上、今でもできる、今(の時代)だからこそできる対応でした。

手洗い奨励はハードル低くできる対応ですが、影響力のある人から発信すると良いでしょう。
リモートワークや仕事のオンライン化は、現場サイドからの提案はできはするものの、最終的には意思決定者、つまり経営者の意思にかかっています。
私も立場上、多くの経営者にお会いしますが、人により反応は様々です(早々に対応に取り組む経営者もいらっしゃれば、コロナウイルスによるリスクは無いと考える方もいらっしゃいます)。

実際、リスクの観点で言えば何かが起きる可能性は低いとは考えています。
ただ、その何かが起きた時に失うものが非常に大きいのも確かだと考えています(会社のブランドや信用、売上、場合によっては人命)。
何が正しかったかは未来にならないとわかりませんが、取り組めることには取り組んでいった方が良いと、私は考えています。

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生産性・業務効率化

リモートワークの生産性に関する各種記事の横断レビュー(プロコン、メリットデメリット)

デジタル文化の浸透に伴いリモートワークが進む兆しが見える中、最近のコロナウイルスの影響により、リモートワークの話題が急激に増えました。

GoogleTrends「リモートワーク」「日本」「過去90日間」「すべてのカテゴリ」「ウェブ検索」

リモートワークに関しては各所で議論がされていますが、ここでは改めて主に生産性のプロコン(メリットデメリット)を整理をしてみます。
導入時の注意点等々他の論点は、ここではおおむね言及しません。

サマリー:「とりあえずやってみては?」

  • リモートワークが企業の生産性向上につながるか否かは、結論「わからない」。
  • 企業にとってはブランド価値の向上やコスト削減をはじめメリットがある反面、マネジメントコストの増大やリモートワークのための仕組みの構築など、一定飲み込まなければいけない負担がある。
  • 個人にとっては自由度の観点をはじめ、明確にわかりやすいメリットがある反面、確かな成果を示さなければいけないという負担感がある(パフォーマンスが高い人にとってはメリット)

企業にとってのメリット

リモートワークが先行して浸透したアメリカを中心に、生産性が実際に向上し、離職率も低下した、という報告がでています。アンケートベースでの自己申告ではあるのですが、生産性向上が報告された研究が多数でている状況です。
働く人のニーズとしても、自由度高く働きたい、という声があり、人材難の昨今においては、採用施策として取り入れる事も考えられます。加えて、コロナウイルス問題への対応について、(実際の所は不明ですが)リモートワークを迅速に取り入れている企業に対して「ホワイト企業」であるという評価も出始めています。採用面だけでなく、ブランド面においても企業経営者・管理部門は検討を行った方が良いでしょう。
そして、当たり前ではあるのですが、働く場所が分散すれば、オフィス投資やオフィスにおける福利厚生、移動交通費の抑制、つまりコスト削減につなげられます。トップライン(売上高)が下がっている、伸び悩んでいる、利益率を向上させたい、という企業にとっては、この面においても要検討事項です。

個人にとってのメリット

出社すれば、良くも悪くも、多くの人と接することになります。対人コミュニケーションが苦にならない人にとっては大きなメリットにはならないでしょうが、苦手としている人や、自分自身の仕事に集中したい人にとって、自分自身の好きな場所で一人で働けるのは大きなメリットになるでしょう。
子育てや介護などの事情がある人にとっても、制約を大きく取り払えます。
この制約は時間面においても言え、朝早くから働いて、夜はビジネススクールで勉強する、というような時間の自由度の向上を得られるメリットがあります。
おまけではあるのですが、服装・身だしなみに気をつかわなくても良くなる、というメリットもあります。特に女性にとっては、お化粧という社会的な文化や圧力の観点から、そのメリットをより大きく感じる人も多いでしょう。

企業にとってのデメリット

生産性について、上述の通り「あがった」という報告もある反面、効果が無かった、下がった、もしくはあがったけれども一過性であり元に戻った、という報告もあります。
また、イノベーティブな局面、例えばソフトウェア開発や、アイデア発想においては、普段のちょっとしたコミュニケーションから産まれるブレークスルー効果が指摘されており、リモートワークの効率の悪さを言及する声もあります。
実際、米ヤフーや米IBMはリモートワークを廃止しています。
ただ、これらがリモートワークのデメリット部分(生産的で無いという意見)かは不明で、リモートワークを導入するにあたり、コミュニケーションの方法や、今までの紙のフロー、対面でおこなっていた業務等々をどう解決するのか?という仕組み面の構築がどこまで進んでいたのか、どこまで進めればよいのか、を検証する必要はあるでしょう。
また、リモートワーク自体の歴史が短いこともあり、人の面においても十分なノウハウが蓄積されていません。経験値がマネジメントする側、される側双方で少ないため、具体部分でのHowがわからず、マネジメントコストが高くつくであろうことも指摘できます。

個人にとってのデメリット

個人にとってのデメリットは、上述のマネジメントコストの部分にも関連する要素があるのですが、成果のアピールのしづらさ(評価のしづらさ)があげられます。
もっとストレートに言うと、明確に成果を示すことができないパフォーマンスが高くない人にとっては、非常にやりづらい部分が発生するでしょう。
今までは会社にいて、長く働く「頑張っている」アピールをすることによって、一定求められる成果はだしつつも、意欲面でもアピールをしやすかった、という現実があったと考えられます。
現実に、リモートワークを導入した場合、明確に成果をアピールするために働きすぎる傾向があることが指摘されています。

筆者の所感

これらを整理すると、リモートワークの良し悪しは、結論「わからない」となると言えます。
また、こちらでも指摘されていますが、現状の報告や研究における不備がある点も見逃せません。

  • 生産性が定義されていない(アンケートによる自己申告が多い)
  • 研究の蓄積が十分でない
  • リモートワークに対してバイアスがかかっている

3つめの「バイアス」に関しては、非常に示唆に富む意見だと感じます。

そのバイアスというのは、「リモートワーカーは自らリモートで働くことを選択しているため、その結果を証明しようと無意識的に熱心に働いてしまう」というものです。結果的に生産性が高まれば良いのではないかと思う方もいるかもしれません。しかし、確かに現在においては生産性が高まっていますが、それは今現在リモートワークをしている人が少数派であるため、リモートワーカーは自らがある種の特権的な立場にいると感じ、それがモチベーションとなって熱心に働いているからかもしれません。
そのため、今後、リモートで働く人が増えていくなかで人々の生産性がどのように変化するのかということを検討するには、やはりこれまでの研究では頼りないと言わざるを得ないでしょう。

チームハッカーズ:オフィスワークとリモートワーク、どちらのほうが生産的なのか?

筆者は、リモートワークに対しては賛成であり、生産性が向上する、という立場ではあるのですが、一個人の話では無く、マクロ的な是非については、上記引用にもある通り、まだまだ研究と検証が必要であると考えています。現状では、企業にとっても、個人にとっても、わかりやすいメリットがあるのと同時に、わかりやすいデメリットが存在するという点しか言えません。
組織の仕組みや文化、そこで働く人の属性にも左右される要素が大きいのも確かでしょう。

これらを踏まえて意見をまとめると、「とりあえずやってみては?」と考えます。
生産性が実際にあがるかもしれませんし、仮に下がったとしてもそれは実際に下がったのでは無く、元々低かった生産性が見える化しただけかもしれません。
トライアンドエラーは組織も人も成長させるでしょうから、失敗しても良いから、まずはやってみるという姿勢の方が、物事を吉に進めるのでは、というのが最終的な結論です。

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