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ベンチャー企業に転職したい人へ(メリット・デメリット)

近年は投資環境が充実してきており、ベンチャー企業が増加しています。
あわせてベンチャー企業に就職する、したいと希望する方も増えています。
ここでは、ベンチャー企業に転職することのメリット・デメリットを解説していきます。

ここで言っているベンチャー企業の定義

まず、ここでのベンチャー企業の定義です。

というのも、人によりベンチャー企業の定義が異なるため、明確にしておかないと誤解を招くからです。

ここでは次の4点をベンチャー企業と定義します。

  • 小規模,少人数
  • 自社独自の製品や強みがある
  • 成長意欲が高く拡大を志向している
  • (上場ゴールでない)

小規模、少人数ですが、大企業でも「自社はいつまでもベンチャー精神を有する、ベンチャー企業である!」と語っている光景を見かけます。
このことは決して間違いでは無いのですが、違和感を抱きやすい内容です。

自社独自の製品や強みですが、ベンチャー企業をうたっている企業でも、事実上、他社の下請けや代理店、フランチャイズである場合があります。
これも決して悪いことでは無いのですが、他社の意向の影響を受けやすい点や、どうしても利益構造が良好でなく、成長の難易度が高い場合が多いので、あげています。

成長意欲が高く大企業を目指している、はある意味当然の話です。
上場(IPO)を通過点として置き、さらに成長しミッション・ビジョンを実現して行こう、というマインドを志向していること。
これはベンチャー企業の定義として重要でしょう。
この点は括弧書きした4つ目、(上場ゴールでない)とも通じます。

口では、ミッションやビジョンをうたっていても、実際は上場時の利益、つまりお金持ちになることが一番の目的の創業経営者もいます。
これも、決して悪いことではないのですが、投資家やミッション・ビジョンに共感して入社した社員にはたまったものではありません。
ただ、この点はわかり辛いので、括弧書きにしました。


なお、ベンチャー企業により、忙しいか忙しくないか、給料が高いのか低いのか等々は全く異なります。
全体として、忙しい傾向が強い、給料が低い傾向が強い、という点は指摘できますが、業種やステージなどにより異なるので、一概に言えません。
この点は認識しておいてください。

(メリット)倒産リスクが高いのでは???→心配不要ですよ

それではメリットです。

倒産リスクが高いのでは??? ⇒ 心配不要ですよ

メリットを考える前に、よくある心配事に触れるのが良いでしょう。
よくある心配事は?と言うと、「倒産リスクが高いのでは?」という点でしょう。
実際、ベンチャー企業の経営は波が大きく、体力も弱いので、倒産リスクは高いです。
ただ、この倒産リスクは事実上デメリットにはならず、むしろ心配する必要が無いと言えます。

それでは、心配する必要が無いのはどんな理由からでしょうか?
それが、メリット部分の話になります。

ベンチャー企業のメリット ⇒ 圧倒的に成長しやすい

ベンチャー企業ですが、小規模・少人数であることから、一人がやらなければいけないことが多数存在します。
予算や権限も、早く、若くして握れるチャンスも多数存在します。
制度や仕組みが整っていないので、自分たちで考えて構築していく必要があります。
つまり、個人の成長がどんどんできるのです。
成長できれば、仮に倒産をしたとしても、容易に転職ができるので、事実上倒産リスクを心配する必要が存在しません。

この「成長」がベンチャー企業の最大のメリットです。

若い内に圧倒的な成長ができれば、その後の人生の難易度が激減するので、これは多大なメリットと言えるでしょう。

注意事項 ⇒ 役職勘違いや器用貧乏に気をつけて

ただし、諸々注意や認識は必要です。

まず、ベンチャー企業は少人数であるが故に、早く、しかも若くして役員(執行役員含む)や重要役職につくことが珍しくありません。
しかし、そのタイトルに見合うだけの能力が簡単に見につくか、というと当然そこまで都合が良いわけがなく、転職した際に、望むポジションにつけない、つけたけれど必要な能力が不足している、ということが発生し得ます。

転職時は、ポジションダウンなどが起き得る、むしろその方が良い場合がある、ということは認識しておく方が良いでしょう。

また、一人がやらなければいけないことが多く存在する分、逆に専門性を磨けず、器用貧乏な人材になってしまう場合もあります。
(もちろん、あくまでも会社次第なので、高い専門性を身につけられる、身につけやすいシチュエーションも当然に存在します。)

そのため、自分の得意分野、専門分野は何なのか?は意識していく必要があるでしょう。

補足2点

大企業では成長できないの?

大企業は、ただのタスクを消化するだけのポジションに配属される場合もありますが、一方でベンチャー企業では到底扱えない規模の金額を動かすポジションにつくこともあるため、成長のベクトルが異なるだけ、という意見は併せて認識しておくと良いかもですね。
更に、大企業では制度や仕組みが整っている場合が多いので、会社のあるべき姿を学ぶことができる、という利点もあります。
その意味で、大企業もベンチャー企業も、別に関係無いよ、という意見も当然正解だと思います。
最終的には本人の意欲次第ですね。

ストックオプションはメリットじゃないの?

ストックオプションによる財産形成の可能性をメリットとしてあげる人もいますが、これはむしろデメリットだと思うので、下記で言及します。

(デメリット)ベンチャー企業に転職してはダメな人

それでは、デメリットに移ります。

デメリットの話をするのには、よりイメージが掴みやすいと考えます。
そのため、「ベンチャー企業に転職してはダメな人」という観点で語ります。

  • メンタル弱い人
  • 承認欲求が強い人
  • 純粋に能力が低い人
  • 福利厚生を重視する人
  • 大企業に最適化された人
  • フラット組織にこだわる人
  • 社会貢献の意識が強すぎる人
  • ストックオプションが目的の人

メンタル弱い人

ベンチャー企業はアップサイドもダウンサイドも、波が大きいです。
そのため、どうしても外部内部両面で振り回されることが珍しくありません。
雰囲気が良い時もあれば、悪い時もあり、またその差が大きいです。
雰囲気が悪い状況、先行きが読めない状況で心を壊す人が決して珍しくありません。

承認欲求が強い人

上述の通り、ベンチャー企業は早く、若くして重要役職につきやすいです。
一方、企業が成長していくと、後からどんどん優秀な人がジョインしてきます。
そうすると、自分より役職が低い人の方が優秀、という状況が発生しやすく、自尊心が傷つく場面も増えてきます。
承認欲求が強い人にとっては、辛い場面が増えるので、要注意です。

純粋に能力が低い人

ベンチャー企業は制度や仕組みが整っておらず、自分たちで考えながら仕事のやり方を構築していかなければなりません。
さらに、やらないことの範囲が広く、単純に「これだけやっていればOK」ということがありません。
自立的に動けない人、単純に能力が低い人にとっては、辛い状況が多数あります。

福利厚生を重視する人

そもそもとして業績が安定していないのですから、福利厚生で弱い場合が多いです。
また、福利厚生の充実をうたっているベンチャー企業でも、実態は消化率が悪く、機能していない場合が多いです(こういう企業でも、福利厚生の一覧として掲げていることがあるので注意です)。
期待と相違してしまう場面が想像できるので、認識しましょう。

給料があがっていくことを期待するのも同様ですね。

大企業に最適化された人

大企業では、ヒトモノカネが潤沢ですし、知名度も高いから仕事をしていて「看板」効果が機能します。
そのため、高額サービスを利用したり、外注企業を使うことができる場合が多いです。
そして、外注企業が、過去の関係性含めて、大企業の言うことを良く聞いてくれます。
このような状況で長く働き、大企業の働き方に最適化されてしまうと、ベンチャー企業で機能しないパターンが発生します。

なお、この点は逆のことも言えて、ベンチャーで活躍できる人が、大企業で活躍できないパターンも珍しくありません。

フラット組織にこだわる人

ベンチャー企業というと、フラット組織をイメージする方が多いかもしれません。
そのため、フラット組織が良いから、という理由でベンチャー企業を志望する方がいます。
ベンチャー企業は確かにフラット組織の場合が多いのですが、あくまでも「多い」というだけであって、あくまでも会社次第です。
実態はワンマン社長が支配をしていて、フラットはフラットでも期待しているものと違う、という場合や、
小さいのに早くも大企業化(官僚的)してしまう場合も決して珍しくないので、認識を改めた方が良いでしょう。

社会貢献の意識が強すぎる人

ベンチャー企業は、経営の波が大きく、危機に陥る場合もあれば、とんでもないチャンスを目の前にする場合もあります。
そのため、企業がベースにしているミッション・ビジョンよりも、まずは生存、まずは業績拡大、ということを指向した方がよい場合が発生し得ます。
ここで、「口ではこう言っているけれど実態はこんななんだよね」と嫌な思いをしてしまう人はベンチャー企業に向いていません。

「会社が大きくないと、社会貢献も何も無いよね」と割り切れる人は問題ないです。

ストックオプションが目的の人

ベンチャー企業はまだ大きくなっていない企業であるが故に、その会社の価値、株式の価値は低いです。
そのため、ストックオプションをもらえると、会社が将来成長し、上場(IPO)を果たせた場合のリターンが莫大なものになる可能性があります。
これは一つメリットなのですが、現実問題として上場(IPO)を成功させられる企業なんて、ほんの一握りです。
大多数は失敗し、リビングデッドとして冴えない状態に陥ったり、どこかに買収されてしまう会社がほとんどです。

仮に上場(IPO)が見えているステージのベンチャー企業では、株式の価値が高まっているので、ストックオプションの価値は低いです。
上場(IPO)が成功しても、うま味はほとんどありません。

更に、上場(IPO)が成功しても、ロックアップ期間という、ストックオプションを行使できない期間の存在により、一番高く売れる時期を逃してしまうリスクも高いです。
(上場時が一番高い株価、というベンチャー企業も珍しくありません。)

ストックオプションに期待するのは無意味というか実現性が低いということは、絶対に認識しておいた方が良いでしょう。


以上、ベンチャー企業に転職したい人向けに、メリット・デメリットを解説していきました。

これまでいろいろ書いてきたことを全部ひっくり返してしまうのですが、最終的には会社次第です。

実際に合うか合わないか、うまくいくかいかないかは、本人の努力もそうなのですが、会社側の問題も存在します。
もし、ベンチャー企業に何かしらの憧れがあるのであれば、とりあえず転職してみるのが一番かもしれません。

こちらの記事も参考にしてみると良いでしょう。

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監査役会・監査等委員会

監査役ってなぁに?~雑学あり:監査役の起源~

今回は、株式会社における「監査役」に関して、基礎的な部分を解説していきます。
法律云々や委員会制度に関しては触れず、別の機会に書きます。
今回も監査役の起源に関して、わりかし面白おかしく役に立たない雑学を盛り込んでいます。

監査役とは?そもそも監査って?

「監査」と聞くと、なんとなくはどんなことをするのかはわかりますが、明確なイメージはなかなか掴めないです。
とりあえず、辞書を開いてみます。

委託者(たとえば投資家,株主総会,経営幹部,国会など)から財産の運用権限を委託されている受託者の会計責任が正しく果たされているか,信頼性の程度を確かめるために,申し開きをする受託者と,第三者 (たとえば公認会計士,監査役,内部監査人,会計検査院など) が,事後的に会計をはじめ各種業務の実情を検討し,立証基礎に対する証拠づけの正当性を確認し,その結果を委託者に伝達すること。

ブリタニカ国際大百科事典

うん、よくわからないですね。
もう少し、別の解説も見てみます。

(業務の執行や会計・経営などを)監督し検査すること。また、その人。

大辞林

いきなり、解像度が粗くなりました。
とりあえず、「経営を監督し検査すること」というのはわかりました。

監査役とは、名前の通りで、「経営を監督し検査することを役割とした人」のことをいいます。
具体何をするのかというと、経営の活動、つまりは「取締役が適正にかつ適法に活動をおこなっているか」を監査します。

では、より具体的に、どのようなことを「監督し検査」するのでしょうか?

監査役の権限は次のようになります。

  • 取締役や従業員へ報告を要求し、独自に調査ができる
  • 会計監査を実施できる
  • 取締役会に参加し、発言ができる
  • 株主総会に参加し、報告ができる
  • 取締役の違法行為の阻止するための訴訟ができる
  • 会社-取締役間の訴訟を取り持てる

経営の会議の場、つまりは「取締役会」において、取締役同士が、それぞれの職務遂行状況をチェックし、相互に切磋琢磨しまう関係であるならば良いのですが、やはり人間同士の付き合いです。
どうしてもなれ合いというものが発生してしまいがちです。
そこで、監査役という人たちが、取締役の活動を監査し、「適正かつ適法」に経営を行っているのかを監査することになります。
企業は、自分たちが監査役にどのような役割を期待するか?にあわせて、監査役の権限を定款という、会社にとっての憲法のようなものに記載することができます。

ここであわせて「監査役会」と「会計監査人」に関して簡単に触れます。
監査役会とは、監査役で構成する会社の職務執行を監査する機関のことです。
民主主義の構造である3権分立に例えれば、 国会(立法)が株主総会、政府(行政)が取締役会、裁判所(司法)が監査役会に該当します。
会計監査人とは、同じく会社の機関の一つで、会計監査が主な職務であり権限となります。
これは公認会計士、または監査法人のみが就任することができます。

監査役の一般的な大枠の話は以上で、お堅い法的な話は別の所で触れるかします。
会社法で、設置の要件などなどが詳細に定められているのですが、ここでは踏み込みません。
委員会の話も、ここでは触れません。

会社の成長にあわせて、経営の機関設計も変わってくる

ここからは、ベンチャー企業の視点で監査役について考えていきます。

会社は、創業者が想いを込めて事業を立ち上げ、つまりは起業をします。
ここにスタートアップ・ベンチャー起業が誕生しました。
どんどん成長していくスタートアップは、会社の成長ステージにあわせて、経営のあり方を変えていく必要があります。
ここでする話は、取締役会などの構成についての話で、この種の話を「機関設計」と呼びます。

取締役というものは、株式会社を運営して行く上で必須で設置をしなければなりません。
会社法という法律で、そのように定められているのです。
ですので、スタートアップの場合、創業者が「社長」であり「(代表)取締役」であり「メンバー」でもある、一人会社である場合が往々にしてあるわけです。

このステージの機関設計は、「取締役のみ」という状況です。
ここから会社が成長していき、世間的には「アーリー」というステージに入ってくると、事業運営や投資のために、まあまあ多額のお金を調達するようになります。
ベンチャーキャピタル(VC)というような人たちからお金を調達、借りるのではなく出資していただくようになると、今までは取締役のみであった機関設計に変化が出てきます。
具体的には、「取締役会」の設置と、「監査役」の選任です。

このステージの機関設計は、「取締役会 + 監査役」という状況です。
この時期になると、一定、IPOが視野に入ってきて、組織としてコンプライアンスを重視しなければいけないようになります。
ようは、組織としてしっかりとやっていきましょう、というステージです。
ここからもっと成長し、IPOがリアルに射程範囲に入ってくると、ここからさらに期間設計の変化がおきます。
具体的には、「監査役会」の設置、ないしは「会計監査人」の選任、あるいはその両方です。

このステージの機関設計は、「取締役会 + 監査役会」もしくは「取締役会 + 監査役 + 会計監査人」、場合によっては「取締役会 + 監査役会 + 会計監査人」という状況です。
最終的に上場する段階では最後の、「取締役会 + 監査役会 + 会計監査人」という状態になっている必要があります。
多くの株主からお金を預かり、会社を経営していくためには、経営の体制を厳密に整えないといけない、という至極当たり前な理由からです。

ようは、株主に対しても、従業員に対しても、社会に対しても、与える影響が大きくなり責任が重くなる、加えて更に会社を成長させていくために、会社の成長ステージにあわせて、会社の機関設計もグレードアップしていかないといけない、ということですね。

監査役をどう活用するか?

監査役という立場は微妙に難しく、なかなか、その重大な機能を有効活用できている会社は少ないです。
創業者というものは大なり小なり、エゴが強いもので、今まで自分の力で会社を大きくしてきた、という自負もあるため、たとえ年上の経験豊富な方からであっても、なかなかその助言を受け入れるのは難しいものです。
また、急激に成長している企業が、同じく急激に変化していく機関設計を、適切に御することも、まあまあ難しいものです。

必要だから、という理由で、形式的に、数合わせとして友人や知人などに就任してもらうパターンも多く、そうなると当然にその本質的な役割を期待することは難しくなってきます。
形式的に機関を整えることが決して悪いとは思いませんが、それで全く外部の株主やお金を貸してくれる銀行が、どこまで納得するでしょうか?
また、これから会社をどんどん成長させて行こうとする組織が、管理サイドの重大な機能をぞんざいに扱って、本当にどこまで会社を成長させられるでしょうか?

経営者に立場からすると、とやかく言われるのは嫌なものですが、外部の異なる立場・専門性を活かして、監査役を自社の成長をドライブさせるために、大いに活用すべきでしょう。
自社の事業領域に関連のある企業のOBOGに、監査役として就任してもらうパターンが多いのも、こういった点を期待していることがあげられます。
その際、一定の財産を保有しているか、別に収入源があって、あくまでも企業のミッションやビジョンに共感してくれたからこそ協力してくれる、という方を選任するのが一番幸せな結果を生みやすいです。

というのも、監査役とはいえ、企業から報酬をもらう以上、なかなか経営者に対して厳しいことを言うのが憚られる、というのは決しておかしな話ではないからです。
最悪なパターンとしてあげられるのが、報酬をもらっている以上、仕事をしている体を装うため、経営者には厳しいことは言わないが、現場や外部に厳しいことを言う、という状況です。
現場や外部のコンサルが、様々な提案をしても、監査役がそれっぽい助言でもって実行を阻み、結果論として会社の成長を阻害している、その先の運命としてリビングデッドになってしまった、という会社は現実に存在します。
(そのような害はなくても、成果を出さないおじいちゃん監査役で、ただの懇親会要員としてしか機能しない、しかしながら影響力はあるため誘いは断れず、みんなの貴重な時間と体力とお金を浪費する、という光景も珍しくない。)

あくまでも、あくまでも、監査役を企業価値を高めるための重要な存在として活用できるか?
この観点で選任し、(良い意味で)存分に使い倒すのが、結論、みんなにとって幸せな結果につながるでしょう。

(おまけ)監査役の起源

東インド会社というものをご存じでしょうか?
近代株式会社の起源といわれる、歴史上、最初の株式会社です。
監査役の起源もこのあたりにさかのぼり、ロンドン東インド会社が設立された1600年からプラス21年が経過したのち、監査に関する体系的なルールが定められました。

当時は、一航海ごとに決算を締める慣習があり、そのためPL(損益計算書)という概念がなく、BS(貸借対照表)ベースでの決算報告が行われていました。
しかも単式簿記です。
その決算報告に対して、「会計担当役が会社の諸勘定を取り扱い収集するに際して、遵守して処理しなければならない指示と方法」と呼ばれるルールがあり、その中で、会計担当役、監査担当役、理事会監査役、と呼ばれる職務と監査の方法が示されていました。

なお、複式簿記の導入と、資本評価が行われたのは、そこから更に年月がたった1664年です。
加えて、大きく監査担当役職務が改訂されたのが1666年です。
こんな話をしているのは、ここら辺の変化が現代社会の監査のあり方と似ていて面白いと感じているからです。

というのも、1621年に制定された監査のルールと、1666年に改訂された監査のルールを比較すると、後者の監査役の業務は増えているにも関わらず、権限は一切増えていない、ようは負担だけが増えた状態だからで、これは現代社会の無駄に監査の工数が増え、現場負担が積み上げっている現状とかぶって見えるのです。
航海のノウハウが発展し、一航海で取り扱うビジネス規模が大きくなり、監査の重要性が増した、という点と、現代社会の取り扱うお金の規模が大きくなり社会に与えるインパクトも大きくなり、云々、という点ともかぶっており、陳腐な言葉ではあるのですが、歴史は繰り返すものだなぁ、としみじみと思う次第です。

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IPO・バリュエーション

ベンチャー企業が求める資質「カオス耐性」とは?

ベンチャー界隈に生息していると「カオス耐性」とう言葉をちらほら聞きます。
語呂感から何となく言わんとしていることはわかるレベルの意味合いの「カオス耐性」ですが、ベンチャー企業が求める資質として頻繁に取り上げられています。
ここではこの「カオス耐性」について整理してみることにします。

「カオス耐性」はベンチャー企業から求められている

ベンチャー企業は、顧客基盤も組織体制も整っていない、人もお金も無い無いだらけの組織である場合がほとんどです。
つまり「カオスな状態」にあります。
そのため、世の中のチャレンジをしている企業や経営者は、自分たちの会社が成長していくために必要な人材として「カオス耐性」の高い人を求めています。
これは私が勝手に言っているのではなく、たとえばここや、ここここなど、複数の事例で語られています。

また、中には下記のような求人要件を見ることもあります。

必要スキル
【必須】
・コンサルティングファーム(戦略、会計、リスク、業務コンサル等)にてマネジメントのご経験がある方
・事業会社等にて新規事業立ち上げのご経験かつマネジメントのご経験がある方
【歓迎】
・海外交渉レベルの英語力
カオス耐性のある方

つまり「カオス耐性」を持っている方は、ベンチャー適正が高い(はずだ)ということです。
では、この「カオス耐性」とは何でしょうか?
もう少し具体的に言語化を行っていきます。

カオス耐性とは具体的になにか?

各所で語られている「カオス耐性」や私自身の経験・考え方をまとめると、下記のように言語化できると考えました。

成果(もしくは成長)に対して貪欲であること
①圧倒的な成果を出す
②過去の事例に囚われない
③成果に天井を設けない
自発的にかつ主体的に動けること
④仕事を積極的に奪う
⑤良い質問をする
⑥不満は具体的に解決・改善する
会社のことを自分事化できること
⑦仕事に対して責任を持つ(仕事が終わるまで仕事を終えない)
⑧自分で稼ぐマインドを持つ
⑨社長(創業者)はスーパーマンでは無いと知る

一つ一つ具体的に見ていきます。

①圧倒的な成果を出す

ベンチャーという言葉ですが冒険(アドベンチャー)という意味を持っています。未知なる世界への冒険ですね。
顧客基盤は大体において脆弱ですし、社内の体制も大体において整っていません。
非常に多くの領域において「0(ゼロ)」から始め無ければいけません。

ようは、非常に倒産するリスクが高いです。

そのため、何にも優先して、顧客を獲得すること、事業運営に必要な資金をかき集めることが必要になってきます。
知名度0の会社が、この必要なことをやるにあたって、圧倒的な成果を出すことが必要です。
大企業に勤めている社員が出すよりも多くの成果です。

また、この成果を出すにあたって、世の中の動き、特に競合の動きには目を光らせなければいけません。
成果というものは絶対性もありつつ、相対性もあるからです。

もうこの世の中、100%完全に「今までに無い新しいビジネス」なんてものは存在しません(解釈にもよりますが)。
つまり、必ず競合がいる、ということです。
自分たちにとって120%の成果を出せたとしても、競合が140%の成果をだしたら、相対的に85%の成果になってしまいます。
競合が140%を成果を出したのならば、自分たちはそれ以上の成果を出していくことが必要です。

②過去の事例に囚われない

これは主に2つの観点があります。
1つは世の中の変化は速すぎるし、今やっていることが正しいとは限らない、という点です。
もう1つは前の所属組織のやり方や世の中の常識が、今の組織で正しいとは限らない、という点です。

ベンチャー企業は新しいことにチャレンジをしているので、当然にそのやり方も日々模索しながらになります。
一度こうだ!と決めたことをやり切るのは大事なのですが、朝令暮改も同時に大事になってきます。
それは冒頭にも書いた通り、世の中の変化が速すぎること、一度こうだと決めたことが正しいとは限らないからです。

そして、別の組織のベストプラクティスですが、それが今の組織にも適合するかどうか。
これはやってみなければわからない点があるので、とりあえずトライしてみるのは良いのですが、固執するのは非常に危険です。
ベストプラクティス、というのは人数規模や業種などに限らず、内部要因・外部要因含め、様々な環境要因によって成り立っている場合がほぼ全てです。
そのため、以前の組織のやり方が、今いる組織にとって良いとは限りません。

常識ですが、これは言うまでも無いかもしれません。
新しいことをやる、というのはつまりは非常識なことをやる、ということです。
常識に染まっていては、新しいものは生み出せません。
良い意味での非常識は推奨していきましょう。
ただし勘違いしてはいけないのは、この社会に生きる人間や働く上での常識、というものは当然に持っておくべきです。
ここで言っている良い非常識の意味をなんとなくでもわからない人は、ベンチャー適正が無いので、素直に会社を去りましょう。

③成果に天井を設けない

ベンチャー企業はありとあらゆるリソースが限られています。
そのため、あなたの成果や成長の限界が、会社組織の限界値となります。
つまり、自分自身のだした成果や成長に対して、決して満足をしてはいけない、ということです。
常に高い理想をもって、昨日より今日、今日より明日、というマインドでより高い成果を、より高い水準への成長を目指しましょう。

大企業はリソースもあり仕組みも整っており、商品力・知名度・ブランド力も非常に高いものを持っています。
そしてベンチャー企業は、大企業が持っているものを持っていません。
当たり前に想定できる水準の成果、成長では到底大企業には太刀打ちできません。
大企業が今まで提供してきた既存のサービスに対する期待値を上回る、圧倒的な成果を出し、成長し続ければ、いつかは自分たちが大企業に成長できるはずです。

大企業も最初は0からスタートしたベンチャー企業だったはずです。
そのベンチャー企業には、常に高い水準で成果を出し成長し続けた、「誰か」がいたからこそ、今の大企業が存在するはずです。
この「誰か」にあなたがなるのです。

これは一見難しいように見えますが、言うほど難しくは無いと考えています。
性格の悪い書き方に読めてしまうかもしれませんが、ちょっと考えてみて下さい。
大企業に勤めている人たちがどんな人たちか?



そう、普通の人たちです。

あなたも普通の人ですが、大企業に勤めている人も普通の人たちです。
では、勝負をわけるのは何でしょうか?
それは掲げるミッション・ビジョンに対する強い想いであり、圧倒的な成果を望む気持ちであり、常に成長したいという貪欲な姿勢だと考えます。
あなたの想いと行動が本物であるのならば、たとえ無い無いづくしのベンチャー企業であったとしても、大企業と対等に渡り合えるはずです。

④仕事を積極的に奪う

ベンチャー組織はリソースが限られているのにも関わらず、やらなければいけないことが膨大にあります。
経営者や先輩社員たちは当然にそのやるべきことに忙殺されています。
大体の場合において、新しいメンバーに手とり足とり、仕事を教えている余裕は無いでしょう。
もし、言われたこと、与えられたことしかやれない指示待ちの姿勢であるならば、すぐに改善するか、会社を去りましょう。

ベンチャー企業においては、自分がやるべきことは自分自身で決める姿勢が大事です。
そしてリソースは限られているので、適切に優先順位をつけて、抜け漏れないようにToDoを自分で管理し、効率的なやり方を自分自身で模索できる能力も必要です。
つまり、「自発的」にかつ「主体的」に動く、ということです。
これらは、あなたの価値を示すものになるでしょう。

難しく聞こえるかもしれませんが、これも思うほど難しくないはずです。
経営者や先輩社員は多種多様な仕事に忙殺されていて、誰かが自分の仕事を奪ってくれるのを、心待ちにしているはずです。
そして、経営者や先輩社員が抱えている仕事は、必ずしも彼ら彼女らが得意ではない仕事が含まれているはずです。
その組織に採用された、ということは何かしらの強みや得意な領域があるからこそだと思います。
その自分自身の強みや得意な領域で、経営者や先輩社員が抱えている仕事を奪ってしまえばいいのです。
非常に喜ばれるでしょう。

⑤良い質問をする

自発的にかつ主体的に動き、経営者や先輩社員の仕事を奪うのは大事ですが、奪い方には注意が必要です。
引継の話です。
忙殺されている人から仕事をとるにせよ、何かしらの引継は必要です。
この際、具体のHowを相手に求めてはいけません。
相手にしてみれば、その具体のHowを説明して引き継いでいる時間があるのならば、自分でやった方が速いからです。

中には懇切丁寧に具体のHow説明してくれて、寄り添ってくれる方もいるかもしれませんが、それに期待してはいけません。
ベンチャー企業に勤めている方々は若い方が多く、大体の場合においてマネジメント経験や人を教育してきた経験が乏しいことが多いです。
ですので、愚かな質問(具体のHow)を投げかけると、冷たく扱われてしまうでしょう。

経営者や先輩社員から聞くのは、大枠の考え方や方針にとどめ、その後は過去の資料や成果物を自分自身でしっかり読み込み、「どうあるべきか?どうしたいか?そしてそれらのためにどうすればよいか?」を自分の頭で考えましょう。

その上で、この自分の頭で考えた「どうあるべきか?どうしたいか?そしてそれらのためにどうすればよいか?」を経営者や先輩社員にぶつければよいのです。
これは良い質問ですので、きっと良い壁打ち相手になってくれるはずです。
高い評価ももらえるでしょう。

⑥不満は具体的に解決・改善する

基本的に不満を持っていない人はいないと思います。
そして、ベンチャー組織のような所ですと、人より不満を多く持ってしまう場面も多いでしょう。
それは決して悪いことではありません。
不満は発明や改善の母だからです。

ようは、その不満を不満のまま終わらせるのでは無く、具体的なものとして言語化して、解決するなり、改善するなり、逆に無視をするなりをするべきだ、ということです。
文句を言うのは別に悪いことでは無いですが、生産性は無いです。
もう一度書きますが、不満があるのならば積極的に、解決するなり、改善するなり、スルーするなり、をしましょう。

ベンチャー組織は至らないことが大勢あるはずで、それは仕方が無いことです。
この点を「宝の山」と見えなければ、良い悪いでは無くアンフィットですので、会社を去るべきでしょう。

もう一点付け加えると、ベンチャー企業の経営者(創業者)は大なり小なり変な人です。
変な人でなければ、わざわざ新しいことをやろうとなんてしないでしょう。
また、経営者というものは非常に忙しいです。
つまり、大体において経営者の考えていることなんて簡単には理解できないですし、経営者も社員に理解してもらえるようコミュニケーションを取ることが難しいです。
ですので、もし、経営者の考えていることがわからなくなったり、方針が納得できないものだったら、積極的に聞くべきでしょう。
経営者という生き物は、大なり小なり自分のやっていることや考えていることを他者に知ってもらいたいので、聞けば忙しい中でも時間を作ってくれるはずです。
もし、そういうことに真剣で無い経営者でしたら、素直に会社を去るのも選択肢でしょう。

⑦仕事に対して責任を持つ(仕事が終わるまで仕事を終えない)

ベンチャー企業の従業員数は、大体において少数です。
そのため、一人が担当する範囲や業務量は、大企業に比較して、相対的にインパクトが大きいです。

何を言いたいのかというと、何かしらの都合で仕事を休んだり、定時に帰りたい・オンオフを切り替えて土日は仕事のことを考えたくないというマインドを持ったりすると、会社に与える影響が大きくなります。

これは何も滅私奉公をせよとか、昨今の働き方改革に逆行する動きをせよとか、そのようなことを言っているわけではありません。
ベンチャーというものは不安定なものなので、大口の受注が突然はいったり、逆に重要顧客の解約などがはいったりします。
土日や深夜にトラブルが発生して、緊急対応をしなければならない状況も、限られたリソースの中で発生したりするでしょう。
当たり前ですが、ベンチャー企業で突然に発生した何かをスルーし続けると、倒産します。
ですので、ベンチャー企業でがっつり働いている人たちは、土日も関係なく夜遅くまで働いているのです。

休むなら休む、早く帰るなら早く帰るで、何かが発生したとしても大丈夫な体制や仕組みを構築する必要があります。
しかし、大体においてそれは難しいです。

最近は、大企業と変わらない、場合によっては大企業より労働環境が良好なベンチャー企業も増えては来ていますが、そこに期待をしない方が良いでしょう。
休みたい、早く帰りたい、という考えを持っている人は、能力不足だとか悪だとか言っているわけではなく、単純にアンフィットなだけですので、それが可能な大企業(希望とフィットする企業)に行くべきです。

⑧自分で稼ぐマインドを持つ

何度も書きますが、ベンチャー企業はリソースが限られています。
顧客基盤も不安定なので、売上も大企業に比較すれば、吹けば飛ぶものでしょう。
「誰かがやってくれる」的なマインドは極めて危険であり、組織にとって有害です。
自分で自分の食い扶持を稼ぐ位の気持ちが欲しいです。

これは何も、セールス担当で無い人間も案件をとってこい、という話ではありません。
各人に任せられた、もしくは自分自身の信念に基づいてやるべきだ!と思ったことを、やり切りましょう、高い水準で完遂しましょう、ということです。

アニメの話なのですが、好きな言葉があります。

「我々の間には、チームプレーなどという都合のよい言い訳は存在せん。有るとすればスタンドプレーから生じる、チームワークだけだ。」

攻殻機動隊 S.A.C. 公安9課 荒巻大輔のセリフ

これこそがベンチャー企業が求めるハイパフォーマンス集団のマインドであると考えます。

そしてもう1点。
会社は出資者(株主)によって、その存在が成り立っています。
つまり、誰かがお金を払っているのです。
この誰かは、創業者であったり、シードステージの時に支援するエンジェル投資家、ある程度母体ができてきた時に出資してくれるベンチャーキャピタル(VC)、シナジー効果を求める事業会社などです。
会社はストレートに言えば、出資者(株主)のものです。
社員や顧客のものではありません。
(勘違いが無いように補足すると、会社は社員・顧客・社会などの取り巻く全ての人たちのものである、というマインドを持つのは大事です。)
出資者(株主)の期待に応える責務が企業にはあります。
もしあなたが、より高い次元での仕事を望むのであるならば、この点も意識する必要があるでしょう。

⑨社長(創業者)はスーパーマンでは無いと知る

日本のベンチャーエコノミクスの成長は著しく、非常に若い方たちが果敢にチャレンジをするようになりました。
ベンチャー企業の経営者には、20代30代の方も大勢いらっしゃいます。
中には、どこかの企業に就職することなく、大学などなどを卒業後、起業している方もいらっしゃいます。
そのチャレンジ精神は非常に尊敬に値します。

ここで大事なのは、彼らも普通の人たちである、という点です。
これは彼らを卑下するような話ではありません。
普通の人が、「こういう世の中を実現したい!」という熱い想いをもって、リスクを承知の上でチャレンジをする。
この想いに共感した、同じく普通の人たちが集ってベンチャー企業ができあがります。
ここに(組織運営上の関係は別として)上下関係は無いはずです。
同じ想いを持つ同士として、共に戦っていきたい、という考えを持つのが良いでしょう。

そして、経営者は決して万能な存在ではありません。
わからないことだらけでしょうし、日々悩み、会社の行く末がどうなるか不安で一杯なはずです。
当たり前なのですが、20代30代の若者がどんなに努力していたって、その知識や経験がどこの誰よりも優れているということがあるはずがありません。
だからこそあなたがいるのです。
あなたの強みや得意なことの何か一部は、経営者より優れている所があるはずです。
その強みや得意なことでもって会社に貢献し、自分の想いを叶え、ミッション・ビジョンを実現していく、これこそがアドベンチャー(冒険)だと、私は考えます。

最後に

さて、これまで「カオス耐性」を良しとする前提で書いてきましたが、これは一つの価値観です。
一人ひとり異なる価値観を持っているはずで、喜びのありかた、幸せのありかたは異なるはずです。
もし、「カオス耐性」をもっているのならばチャレンジをすることは、あなたに幸せをもたらすでしょう。
逆に、憧れだけでベンチャー企業に飛び込むのならば、それはきっと双方にとって不幸な結果につながるはずです。
このテキストが誰かにとっての指針になれば幸いです。

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