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人事・総務

人間よりAI/アルゴリズムの方が優秀な社員を採用できる~AI採用のすすめ~

採用管理を支援するSaaSが登場するなど、採用業務の効率化が進んでいます。
しかし、選考に関しては、従来通り書類選考から面接・評価まで、人が入り自動化されていない会社は珍しくありません。
ここでは人間よりAI/アルゴリズムの方が優秀な社員を採用できる、という話をしていきます。

AI採用が広がっている

AI採用とは、文字通り、採用プロセスの一部にAIを導入し、その採用業務の何かしらを効率化することです。

近年のコンピュータの性能向上やAI技術の発達を背景に、近年急速に拡大が進んでいます。

国内でも、IBMのWatson採用支援システムのi-web書類選考AIツールのPRaiO対話型AI面接サービスのSHaiNなど、いくつかのソリューションが登場しています。

https://www.ibm.com/jp-ja/watson
https://www.humanage.co.jp/service/lp/i-web/
https://praio.jp/
https://shain-ai.jp/

その効能としては、アルゴリズムによる自動化により業務の大幅な削減や、採用判断の公平化などが語られています。

実際、ソフトバンク㈱などが面接評価にAIシステムを導入するなど、大手をはじめ、話題を提供しています。

https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2020/20200525_01/

しかしながら、問題がないというわけではありません。

採用自動化に絡む問題

記憶に新しい問題としては、リクルートキャリアによる「内定辞退率」問題です。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1912/04/news159.html

詳細はここでは触れませんが、個人情報に絡む話であり、トヨタ自動車、京セラ、YKKなどの大企業も含めた、大々的に問題に発展しました。

「内定辞退率」というネガティブな側面にフォーカスしたことも問題が拡大した一因なのでしょうが、アルゴリズム採用の世界に水を差しました。

その他には、AmazonがAI採用を打ち切った、という報道が話題になりました。
理由は、AIによる人材採用システムが機械学習の欠陥により、女性を差別する形になってしまったからです。

https://jp.reuters.com/article/amazon-jobs-ai-analysis-idJPKCN1ML0DN

AIにせよ、他のアルゴリズムにせよ、判断のロジックや学習データ次第では、差別を助長する形になることは、近年知られるようになってきています。

技術発展の過渡期のため致し方がないとは思うのですが、“意外性”もあり、AIによる差別問題は非常に話題になりました。

このようなネガティブな側面があるにしても、AI/アルゴリズム採用は今後も発展し拡大していくと考えられます。
それは、AI/アルゴリズム採用の方が人間が採用するよりも、優秀な社員を採用できるからです。

人間よりAI/アルゴリズムの方が優秀な社員を採用できる

優秀な採用担当者は会社のことを熟知しており、必要なポジションの要件もよく知っています。

多くの応募者を見てきた採用担当者にしてみれば、人を見極め、最適な人を“選別”することが可能なように思うこともあるでしょう。

しかし、それは必ずしも正しいとは言えません。

次の記事で紹介されている研究では、「単純な方程式」により応募者を評価しても、人が評価するよりも25%以上精度が高いことが示されました。

https://hbr.org/2014/05/in-hiring-algorithms-beat-instinct

この研究のポイントは、採用担当者が持っている応募者のデータよりも、単純な方程式にはめる情報の方が圧倒的に少ない点です。

人は多くの情報を認知し、複合的に判断できるが故に、採用/評価に関係のない情報にもとらわれてしまい、精度を下げてしまうからだ、としています。

この研究をベースにアルゴリズムを組み直し、実際どれだけ定着率があがるのか?を調査した研究もあります。

https://www.comstocksmag.com/bloomberg/machines-are-better-humans-hiring-best-employees

この研究で使用されたアルゴリズムでは、応募者を技術的なスキル、正確、認知能力、仕事への適合性など、様々な観点で評価します。
そして、応募者を推奨度という形で「高・中・低」の判断を行います。

その結果、推奨度「高」の応募者は、「中」よりも12日、「低」よりも17日、長く勤務することが示されました。
(実験は、就労期間が短い単純労働を対象に実施されました。)

また、別の実験で、採用担当者の判断で「中」の応募者を採用し、その後、当該応募者の後任(退職したため)として改めて「高」の応募者を採用した所、定着率が約8%向上したことも示されました。

つまり、人が判断するよりも、アルゴリズムが判断する方が、少なくとも定着率という観点では精度が高い、ということです。

また、データの数が少ないため十分な検証がなされていないものの、生産性の観点でも、人よりアルゴリズムの方が精度が高いことも示唆されています。


これらの通り、採用の世界においては、すでに人よりもコンピュータの方が優秀になりつつあります。
経験豊富な採用担当者が“過信”をしてしまうのは、長期的に見てネガティブであると考えた方が良いでしょう。

ただ、「長期的に見て」という点がポイントです。

例えばAIを採用するならば、大量のデータを学習させる必要があり、AI採用が適切に機能するまでに一定の時間を要します。
AIではないアルゴリズム採用の場合も、自社に適合するよう、様々にチューニングと検証を繰り返す必要があります。

この壁を超えない限り、人の方がまだまだ使える、という状況のままになってしまいます。

さて、この状況をどのように捉えるか?

経営者や採用担当者は一考する必要があると言えます。

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マネジメント・リーダーシップ

「たまたま」により起きる弊害~人事評価を如何に考えるか?~

運も実力の内、という言葉があるにはありますが、世の中において成功するか否かの要素に「運」のウェイトが大きいと、一部で言われています。
この点に関しては、一定の研究もされており、「運」もしくは「たまたま」により起きる弊害が指摘されています。

評価にバイアスがかかりパフォーマンスの認識が誤った例

UTSビジネススクールの研究チームは、サッカーにおけるパフォーマンスと評価について調査を行いました。

https://direct.mit.edu/rest/article/101/4/658/58562/Fooled-by-Performance-Randomness-Overrewarding

ヨーロッパのサッカーリーグの試合における1万本以上のゴールポストに当たった、シュートを含むデータの分析が行われました。

分析の結果、ポストに当たった後、得点をした選手、しなかった選手のその後のパフォーマンスを調査した所、選手のパフォーマンスには大きな違いが無かったことが示されました。

しかし、偶然にゴールを決めた選手は、運悪くゴールを決められなかった選手に比較して、その後の試合で活躍をする機会が増えていることも示されました。
また、偶然のゴールであったとしても、試合の結果を左右するものである場合や、新進気鋭の選手である場合に、より高く評価されることがわかりました(評価はジャーナリストやファンからの評価も含みます)。

つまり、「たまたま」成果を出せば、パフォーマンスは同じであっても、高く評価され、また成果を出す機会が与えられる、ということです。

研究チームは、統計的に判断できるスポーツの領域でも、このような評価バイアスが起きているのだから、客観的な評価が難しいビジネスの領域でも評価バイアスが起きているであろう、と指摘しています。

現実における人事評価にて留意すべき点

上述の通り、「たまたま」成果を出して評価されるとなれば、組織における歪みが生じる恐れがあります。

もちろん結果/成果は重要なものですが、評価に偏りがあると、報酬や昇進の機会に非効率性や不公平性が生じ得ます。
それは組織にとって、潜在的なコストとなっていくでしょう。

スキルが無くても、たまたま周囲のサポートが手厚かったり、本当に運が良かっただけの人物が昇進し、スキルも才能もある人物が認められない、というような事態も起き得ます。

組織やマネージャーは、人のパフォーマンスを評価する際に、結果/成果のみならず、プロセスや努力についても考慮する必要があるでしょう。


嘘か誠かは不明ですが。

野村證券が「入社後に成長するのは、どういう人材か」を知るため、「支店長に就任した人の共通点」について、数億円の費用をかけてコンサルタント会社に調査を依頼したそうです。
その結果、入社後に伸びる人に共通しているのは、卒業した大学の偏差値や、両親の学歴・職種、家庭の裕福さとは関係なく、『入社して最初に出会った先輩や上司が優秀だったこと』と分かったとのこと。
つまり、企業としては、応募者の中から優秀な人材を選び出すためにお金をかけるより、受け入れる側の教育のほうが重要という示唆が得られます。
(一部のTwitterの投稿より。)

「運」「たまたま」で判断が歪み、組織に悪影響を残さないようにしたいものです(言うは易しですが)。

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