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サーキットブレーカーとは~新型ウイルス騒動はIPOにも影響~

サーキットブレーカー、ここ最近、よく聞くけど、、、

新型ウイルスの影響は世界経済に猛威を振るっており、世界的にリセッションが懸念されています。

3月9日に米ニューヨーク市場において15分間、3月12日に再発動、そして3月18日に主要株価指数「S&P500」が7%下落したため、取引を15分間停止する3度目のサーキットブレーカーが発動されました。
2週間以内で3度も発動する、異常事態に陥っています。
3月19日にはアジア株式市場が下落、フィリピン、インドネシア、韓国の各マーケットでサーキットブレーカーが発動しました。
アジアでも次々と取引の一次停止が起きています。
フィリピンではフィリピン証券取引所で15分間取引が中断、総合株価指数(.PSI)が24%下落、
インドネシアではジャカルタ総合指数が5%下げた後、6営業日で4回目のサーキットブレーカーが発動、
韓国では韓国総合株価指数(KOSPI)が8%以上の大暴落が起き、KOSPIとKOSDAQの両マーケットで20分間のサーキットブレーカーが発動されました。

(参考)リセッションとは

景気の後退局面のことを言います。

景気は拡張と後退を交互に繰り返しますが、拡張から後退に入るタイミング(景気の山と言う)と、そして後退期の底(景気の谷)の間、つまり景気が低迷し後退していく期間のことです。

多くの金融関係者が、新型ウイルスがリセッションの引き金を引いた、と発言しています。

それでは、サーキットブレーカーとは

「サーキットブレーカー」とは、先物市場やオプション市場などで相場が想定外の急激な変動を見せた場合、取引所によって行われる、取引の一時中断措置のことです。
相場の保険的な性格をもつ制度で、取引に参加するプレイヤーを安心させる効果があると共に、冷静な判断を促しマーケットの過熱感を鎮めるために行われます。

取引を一時中断(5分から15分位の冷却時間)した後、制限値幅を一定程度拡大し、中断は解除され取引が再開されます。
それでも価格の変動が激しい場合は、段階的に制限値幅が拡大されていきます。

取引が完全に中断するのではなく、一部の取引が中断される場合のサーキットブレーカーのことは「サイドカー」と言います。

付け加えると、価格の異常な変動を防ぐために、1日に変動する価格の範囲に制限を与える「値幅制限」もサーキットブレーカーの一つなのですが、各メディアにおけるサーキットブレーカーの用語の使われ方としては「取引の一時中断」のことになります。
値幅制限における、上限まで価格が上昇し取引が動かなくなることを「ストップ高」、逆に下限まで落ちた場合のことを「ストップ安」と言います。
先物市場がサーキットブレーカーによって一時中断しても、個別株は動き続けます。

サーキットブレーカーの制度は、米国の1987年におきたブラックマンデーをきっかけにニューヨーク証券取引所で取り入れられました。
東京証券取引所と大阪証券取引所では1994年から、東京工業品取引所では2009年から導入されました。

発動事例としては、2001年におきたアメリカ同時多発テロ、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、そして最近では2016年のイギリスのEU離脱における混乱で、日経平均株価が急落した際に日経平均先物(大阪取引所)でサーキットブレーカーが発動しました。

IPOにも影響

マーケットの乱高下(今回の場合は暴落の方向性)は投資家に不安を招きます。
それはIPOにも大きく影響を与えます。

直近のIPOにおいて初値が公開価格を下回るケースが相次ぎ、IPOを中止する企業も出始めている状況です。
3月18日にIPOをよていしていたファストフィットネスジャパンをはじめ、既に3月に入ってから6社が新規上場を見送っています。
予定通りIPOを行った企業においても、公開価格を上回る水準で取引がなされているのはわずか1社のみです(執筆時点)。
これは当然、日本に限らずのことで、アメリカや中国をはじめ、世界中でIPOを中止する企業が相次いでいます。

東京証券取引所は、新型ウイルスの影響で一時的に業績が悪化している場合には、審査場でもそれを勘案するという、収益性の判断を柔軟にする方針を発表しています。
あわせて、上場承認とならなかった場合において、再審査料を免除することも決定しています。
この東京証券取引所の特別措置は非常に良いものだとは思うのですが、企業の事業計画に与える影響をフォローしきることはできません。

景気自体も後退し、消費が落ち込む中、企業経営上、厳しい状況の会社も多いでしょう。
その中でのIPO中止は、企業の資金計画に大きなインパクトをもたらします。
新型ウイルスによる影響は、ここから半年は最低でも続くと予想でき、IPOの数が回復するのも半年はかかるでしょう。

この期間、如何に業績を維持し、資金を確保していくか、ジャンプアップのための力を溜めるか、正念場です。

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IPOにおける広報の役割~前半~

IPO(新規株式上場)は、ベンチャー企業経営者や、そこで働く人達にとって夢の一つであり、より広く大きく社会に貢献する、未来に羽ばたくための大事な通過点の一つです。
ここでは、IPOにおける広報が果たす役割について、ベンチャー企業のPRもしくはIR(Investor Relations:投資家向け広報)の担当者向けに、IPOにおける広報・IRの役割について解説していきます。

長くなってしまうので、前半後半にわけて解説し、前半は大枠の考え方と実際のToDo的な話の一部を、後半はToDo的な話の続きと戦略よりの話を書いていきます。
IPO準備の全体像は別の場所で書いていきたいと思います。

IPOにおける広報・IRの役割大枠

全ての企業は、非公開企業、つまりクローズドな世界で限られた株主のみで構成された状態で、この世に誕生します。
この企業の株式を公開することにより、広く世の中の人たちが経営に参画できる状態にすることを新規公開、IPO(Initial(最初の)Public(公での)Offering(売り物))と言います。
IPOの目的は大きく3つほどあげられます。

  • 知名度の向上
  • 信頼度の向上
  • 多額の資金の調達

成長志向のベンチャー企業にとって、この3つ目の「多額の資金の調達」がポイントで、IPOをする企業の株式を投資家たちが購入することにより、投資家は企業への経営の参画ができる状態になり、そして企業は事業運営のための多額の資金を調達することができます。
企業にとっては、この多額の資金を活用することにより、事業を大きくステップアップさせ、次のステージへの成長段階に羽ばたかせることができるわけです。
(戦略的に多額の資金を要せず、知名度の向上や信頼度の向上を主目的としてIPOを実施する会社も実際は多い。

さて、IPOをするまでは企業の情報を外部に発信することはマーケティングやブランディング以外の側面では基本ありません。
しかし、IPO後は情報の発信のあり方が大きく変わります。
企業の業績の情報や企業組織の体制をはじめ、どのような事業をどのような戦略でもって取り組んで行くのかという事業計画の情報などなどなどなどを事細かに発信する必要がでてきます。
それがマストで守らなければならないルールだからです。
企業をクローズドな世界からオープン(Public)にしていくにあたり、企業と社会(投資家)との接点を作る(情報を発信していく)、ここにIPOにおける広報の重大な役割があります。

IPOにより自社が「社会の公器」として「社会の眼」にさらされるということは、コンプライアンスを遵守した経営を行うということはもちろんのこと、自社が「社会に必要な事業を行う」ということを、事業をもって示すということです。
広報担当者の市場への発表内容により、資本構成や株価が変化し、場合によっては経営に直結することも出てきます。

IPOにおける広報・IRの役割は、IPO後の会社経営自体につながる仕事をしているのです。
広報・IRに携わる方は、是非「IPOによって自社が社会にどのようなインパクトを与えられるのか」を意識した広報活動を心がける必要があるでしょう。

上場前に広報・IRが準備しておくこと

大枠の考え方に続いて、ここからは実際に取り組んで行かなければならないことを順番に解説していきます。

  • 認知度向上のためのPR実施
  • 目論見書の作成
  • IRサイトの作成
  • 上場セレモニーの準備

なお、長くなってしまうので今回はここで切り、下記を後半で書いていきます。

  • プレスリリースの準備
  • ロードショー用資料の作成
  • 役員のメディアトレーニング
  • 決算説明会の準備
  • その他

認知度向上のためのPR実施

IPOを成功させるには、顧客や取引先のみならず、今まで関係性のなかった一般の人々(個人投資家)や機関投資家(大口投資家)に、自社のことを知ってもらう必要があります。
なお、ここで言っている「成功」とは、上場承認をうけてIPOができることではなく、IPOを行うための自社にとっての目的を達成することを指しています。

企業やブランドの認知度向上のためのPRは早めに準備し、実施していきましょう。
マザーズ市場(そしておそらくグロース市場も)の年間取引額のうち、約6割は国内個人投資家であり、この国内個人投資家へのブランド訴求はおろそかにはできません。
機関投資家に対しても同様で、事業戦略の前提となる企業のミッション・ビジョンを正確に理解してもらうことは、自社の戦略ストーリーの理解にもつながるため、IPO上有利に働きます。

IPO時の広報・IRの担当者構成は、経営企画領域の担当者と、広報・マーケティング領域の担当者が連携してチームを組成する形がおおいですが、この認知度向上のためのPR実施は、主に後者の広報・マーケティング領域の担当者の仕事となるでしょう。
PR会社と契約してプレスリリース配信の体制を整備したり、ブランディング・コンサルを活用してコーポレート・アイデンティティの刷新、記者懇親会や勉強会の開催などを行うことが考えられます。

目論見書の作成

目論見書(もくろみしょ)とは、IPO時の需要申告(ブックビルディング)、もしくは購入申し込みをする投資家に対して交付される書類のことです。
企業の概要や募集・売出をする株式の条件などが記載されており、投資家にとって投資判断を行うための重要な情報源となります。

新規上場時に有価証券届出書という書類を作成するのですが、この有価証券届出書を抜粋する形で目論見書は作成されます。
具体的に事例を見た方がイメージがつきやすいでしょう。

事例の通り、目論見書には本文の内容を要約し、図表等を用いて説明するダイジェスト部分があります。
ここは会社のイメージをグラフィカルに伝えられる、ダイレクトに印象が伝わってしまう部分になるので、経営企画領域の担当者、広報・マーケティング領域の担当者、デザイン・クレイティブ領域に明るい社内外のメンバーが連携して作成するのがよいでしょう。
(事例として出したライフネット生命保険㈱の目論見書からは、お堅いイメージが伝わってきますね。)

なお、目論見書は電子交付のみならず、印刷して交付する必要もあるため、印刷のための期間も考慮してスケジュールを組む必要があります。
さらに加えて、目論見書(有価証券届出書も)は未確定の部分がある段階で作成を行う必要があり、実際にブックビルディング方式で募集・売り出し条件が確定し、募集価格・発行価格が確定した段階で訂正目論見書(訂正届出書)を作成、提出を行う必要があります。
この部分は、完全に経営企画領域の担当者がスケジュールを組み、プロジェクト・マネジメントを行っていく形になります。

IRサイトの作成

IRサイトは目論見書と同様、投資家と自社とをつなぐ大事なツールとなります。
特に、個人投資家にとっては、IRサイトは重要な情報源となるため、個人を意識したIRサイトの充実が効果的な施策となります。
個人投資家の多くは事業面でのプロでは無いため、何をやっているのか?将来どうなるのか?についての「わかりやすさ」が重要となります。

上場当日にIRサイトをオープンできるよう、予め準備しておく必要があります。
なお、情報漏洩や改ざん防止などのセキュリティ上の観点から、証券会社や印刷会社のサービスを使うケースが多いです。

IRサイトの良い事例としては、個人投資家に理解してもらうために、わかりやすいコンテンツを多数掲載しているシスメックスパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスなどがあげられます。
また、個人投資家のレベルにあわせて資料を提示できるよう、わかりやすい難易度表記があるオリエンタルランドも特徴的です。

上場セレモニーの準備

上場日当日には、証券取引所において、上場セレモニーが実施されます。
取引所内にはスタジオが併設されており、動画の撮影・配信をはじめ、初値決定の瞬間を見るなどのイベントがあります。
なお、上場セレモニーには人数制限があるため、社員数が多い企業では全員で祝うことができません。

言葉では表現しづらい所も多々あるので、こちらこちらを見るのが良いでしょう。
他にも「上場セレモニー」でGoogle検索をすると、多数、IPOを達成した企業の様子を見ることができます。

動画の撮影・配信については、こちらを見るとイメージがつきやすいでしょう。

上場セレモニーでは、上場認証式や記念撮影の後、東証内にある「鐘」を打ち鳴らします。
この際、鐘は「五穀豊穣」にちなみ、5回打つことができます。
創業者が1人で5回、その後主要なメンバー5人ずつで4回で、最大21人が参加することができます。

この上場セレモニーの準備として、当日の流れの確認やスケジュール組み、参加メンバーの確定、撮影する内容(社長の話の構成)の決定、などがあります。
後半の方で説明しますが、「しゃべって良いこと、悪いこと」がありますので、社長をはじめ役員・幹部に対するメディアトレーニングが効いてくる段階になります。

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取引所グループ「新市場区分」について解説

2月21日、株式会社日本取引所グループは、東京証券取引所の「新市場区分の概要等について」(骨子)を公表しました。
あわせて、「TOPIX(東証株価指数)等の見直しに関する今後の対応方針」についても同日、公表されています。
今回はこの「新市場区分」について解説していきます。

ポイント

市場再編の目的として、現状の区分をわかりやすくし投資を活発にする、上場企業の持続的成長と企業価値向上を支え、投資家から支持される市場を提供する、と掲げられています。

  • 現在の4市場から3市場に再編される
  • 一斉移行日は2022年4月
  • 2020年7月以降のIPOは新市場区分に近い枠組みに従う
  • 区分間移行の緩和基準は設けず、移行希望の場合は新規上場と同様の審査が必要
  • 既存の上場企業は一定の枠組み中で市場区分を選択できる
  • 選択先の上場維持基準に適合していない場合でも「経過措置」が適用される
  • 結論、今までとあまり変わり無さそう

新市場区分について

新市場区分は、「プライム」「スタンダード」「グロース」(いずれも仮称)の3区分が示されており、既存の上場企業は一定の枠組み中で市場区分を選択できます。
それぞれの概要は下記の通りです。

新市場名称(仮称)概要新市場の上場基準現在の市場と新市場の関係
プライム多くの機関投資家が対象
流動性が高い
ガバナンスの水準が高い
【流動性】
株主数 800人以上
流通株式数 20,000単位以上
流通時価総額 100億円以上
売買代金 時価総額250億円以上

【ガバナンス】
流通株式比率35%以上
コーポレートガバナンス・コード全原則(高水準)適用

【経営成績・財政状態】
収益基盤:最近2年間の利益合計が25億円以上
もしくは、売上高100億円以上かつ時価総額1,000億円以上
財政状態:純資産50億円以上
「市場第一部」がプライム、スタンダードを選択可能
スタンダード一定の流動性を持つ
ガバナンスの水準が良好
【流動性】
株主数 400人以上
流通株式数 2,000単位以上
流通時価総額 10億円以上

【ガバナンス】
流通株式比率25%以上
コーポレートガバナンス・コード全原則適用

【経営成績・財政状態】
収益基盤:最近1年間の利益が1億円以上
財政状態:純資産額がプラス
「市場第一部」「市場第二部」「JQスタンダード」がスタンダードを選択可能
グロース高い成長可能性がある
リスク(不確実性)が高い
【流動性】
株主数 150人以上
流通株式数 1,000単位以上
流通時価総額5億円以上

【ガバナンス】
流通株式比率25%以上
コーポレートガバナンス・コード基本原則適用

【事業計画】
事業計画が合理的
高い成長可能性を有している
継続的に情報が開示される見込みがある
上場維持基準として、上場10年経過後の時価総額が40億円以上
「マザーズ」「JQグロース」がグロースを選択可能
※上記以外の市場を選択する場合は、新規上場と同様の審査が必要

ごちゃごちゃしていますが、ようは下記のイメージです。

  • プライム 時価総額上位の企業を集めたもの
  • スタンダード プライムとグロース以外
  • グロース マザーズ・JASDAQの成長企業を集めたもの

グロース企業にとってはチャンスが増えるかも

素朴な感想ですが、スタンダード市場は、プライムや爆速成長中のグロースの企業によるM&Aの対象になりそうです。
加えて、プライムの上場維持基準で、株主数2,200名から800名に減ったことや、売買代金の観点(1日平均売買代金0.2億円以上)が入ったことは、配当や優待を出すステージにはないグロース企業にとってはオプションが増えたとも言えます。
ベンチャー企業の存在感が高まっている中、爆速成長中のグロース企業にとってはチャンスが増えるかもしれません。

今回の再編の意義は???

さて、市場再編の目的として、現状の区分をわかりやすくし投資を活発にする、上場企業の持続的成長と企業価値向上を支え、投資家から支持される市場を提供する、と掲げられています。

たしかに全体の枠組みが整理されてわかりやすくはなりました。
ただ、「経過措置」という名の東証一部からの降格が無いもので、骨抜きと批判をされても反論はできないでしょう。
上場時だけは厳しく、その後は緩いという、現状の体制のままでの整理には首をかしげます。
2,000社超の東証一部企業は、そのままプライム市場にスライドするでしょう。
今回の再編は誰のための、何のためのものなのか?、疑問に思います。

東京証券取引所は2022年4月の市場再編直後に、現在の東証1部から降格する上場企業を出さない方針だ。降格すれば、信用が低下し、資金調達や人材確保に支障を来しかねない。こうした企業の不安に配慮した形だが、これまで「(現在の枠組みを刷新し)市場の性格を明確にする」(東証幹部)と強調してきた再編の狙いとの乖離(かいり)は大きい。市場関係者からは「改革が骨抜きになる」と懸念する声が上がった。

時事ドットコム:市場改革、骨抜き懸念 1部降格当面見送り―東証

もう一つ付け加えると、ガバナンスの強化が強調されている点も気になります。
比較的最近ですと、ソフトバンクの親子上場や、もう少し前ですと、さが美や東芝の件など、それどうなんだ?と疑問に思う物が多い状況です。
日本社会全体でガバナンスの強化が必要なのは確かにそうだとは思いますし、提示された枠組みに従うしか無いのも確かなのですが、今回の再編には複雑な気持ちを抱えてしまいます。

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IPO・バリュエーション

レンティオ株式会社が総額10億円の資金調達、バリュエーションを推測してみました。

家電のレンタルサービスを手掛けるレンティオ株式会社が、本日2月25日に総額10億円の資金調達を行ったというプレスリリースを出しました。
事業内容等々はこちらに詳しいので、大きく割愛し、概要部分だけプレスリリースより引用します。
ここでは、バリュエーションを予測し、その上でレンティオ社のIPOのできあがりを考えてみます。

【Rentioとは】
カメラや家電、ベビー用品を買わずに使えるレンタルサービス。
商材はカメラや家電を中心に1,500種類以上、1万点以上の在庫を取り扱い。
一度は使ってみたいと思うような一眼レフ、キッチン家電、掃除家電なども幅広くレンタルが可能。
【レンティオ株式会社について】
本社  : 〒140-0014 東京都品川区大井4-6-1 サクラビル3F(受付4F)
代表者 : 代表取締役 三輪 謙二朗
設立  : 2015年4月6日
事業内容: カメラ、家電製品を中心にレンタル及び販売する
      イーコマース事業、情報サイトの運営など
URL   : https://www.rentio.co.jp/
■取扱商品の一例
カメラ :一眼レフ、アクションカメラ、防水カメラ、インスタントカメラ、他
一般家電:掃除ロボット、高圧洗浄機、キッチン家電、他
事務家電:プロジェクター、ドキュメントスキャナー、他
その他 :ロボット、ドローン、他

レンティオ株式会社プレスリリースより

予測バリュエーション

登記簿謄本を取得し、これをベースにバリュエーションを予測しました。
あくまでも登記簿謄本から得られる公開情報のみをベースとしているため、正確性については担保できないことはご了承ください。

前提条件として、いくつか仮定を置いています。
過去にC種を二回出していること、前回のD種から間が空いていないこと、から今回の調達は前回D種とほぼほぼ同条件と推測しています。
リリースでは、デットとあわせて総額10億円とのこと。
決算公告では2019年8月期で赤字であり、おそらく事業計画上もしばらくは赤字が続くであろうことから、デットの比率が5割を超える事は無いと推測できます。
5割~1割がデットとし、間をとって3割でざっくり仮定、エクイティでの調達を7億円とおきます。
決算公告の数字から、調達額の半分を資本準備金に振っているため、資本金の増加額の2倍を調達額と設定します。

レンティオ株式会社2019年8月期決算公告

これらの仮定をもとに作成したのが下記の表です。
発行している種類株にあわせて各ステージ(シリーズ)としています。

調達時期ステージ発行株式種類株数発行済株式総数資本金の額(千円)調達額(千円)株価 (円)バリュエーション(千円)
創業普通株式30,00030,000
AA種優先株式5,30035,30015,500
2016/10/31BB種優先株式6,81242,11273,402115,80417,000715,904
2018/7/17CC種優先株式2,15944,271123,38099,95546,2972,049,615
2019/1/25CC種優先株式4,75149,022233,358219,95746,2972,269,572
2019/11/10DD種優先株式5,01654,038433,346399,97679,7404,308,990
2020/2/25DD種優先株式8,80062,838584,214701,71279,7405,010,702

ポストマネー50億円が今回のバリュエーションと推測されます。
前回のD種での調達とあわせて、実質的にはシリーズDで11億円の調達、と言えるかと思います。
余談ですが、レンティオ社の経営者は、どんどんCashを溶かしていく積極性と、刻んで調達を進める慎重性の両面を持っている性格のようです。

IPO時のできあがり予想

現在のステージがシリーズDで11億円の調達が走ったわけですので、そろそろIPOのレンジに入った印象です。
公告の数字と今回の調達額から考えると、後1回くらい調達をはさみ、最短で1年、現実的には3年を目標、という感じでしょうか。
レイターステージですので割引率を20%、IPO時のディスカウントを20%として計算すると、下記のようなイメージになるかと思います。
PERは仮置きで30としました。

  • 上場までの年数 3年
  • 割引率 20%
  • 上場時予想当期純利益 333百万円(欠損考慮せず)
  • 上場時予想PER 30
  • 上場時予想株主価値 10,000百万円
  • IPOディスカウント後株主価値 8,000百万円
  • PostMoney 5,000百万円

PERをどう置くかにもよるのですが、レンタルということで金融業的に捉えられると非常に厳しいです。
サービス業の中で類似会社を抽出し、上場時予想PER30あたりでできあがりのバリュエーションを考えられると良い印象です。
申請期の経常500百万円を狙えば良いので、もっと伸びてもおかしくは無いと考えます。
割引率を30%にすると株主価値が約150億円となるので、そこは目線として置いても良いでしょう。

(参考)投資家一覧

(今回引受)
グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)(前回からの追加投資)
W ventures(前回からの追加投資)
SMBCベンチャーキャピタル
コンビ

(既存投資家)
ANRI
有安伸宏(個人)
坂本達夫(個人)
East Ventures
メルカリ
アドウェイズ

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