取引所グループ「新市場区分」について解説

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2月21日、株式会社日本取引所グループは、東京証券取引所の「新市場区分の概要等について」(骨子)を公表しました。
あわせて、「TOPIX(東証株価指数)等の見直しに関する今後の対応方針」についても同日、公表されています。
今回はこの「新市場区分」について解説していきます。

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ポイント

市場再編の目的として、現状の区分をわかりやすくし投資を活発にする、上場企業の持続的成長と企業価値向上を支え、投資家から支持される市場を提供する、と掲げられています。

  • 現在の4市場から3市場に再編される
  • 一斉移行日は2022年4月
  • 2020年7月以降のIPOは新市場区分に近い枠組みに従う
  • 区分間移行の緩和基準は設けず、移行希望の場合は新規上場と同様の審査が必要
  • 既存の上場企業は一定の枠組み中で市場区分を選択できる
  • 選択先の上場維持基準に適合していない場合でも「経過措置」が適用される
  • 結論、今までとあまり変わり無さそう
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新市場区分について

新市場区分は、「プライム」「スタンダード」「グロース」(いずれも仮称)の3区分が示されており、既存の上場企業は一定の枠組み中で市場区分を選択できます。
それぞれの概要は下記の通りです。

新市場名称(仮称)概要新市場の上場基準現在の市場と新市場の関係
プライム多くの機関投資家が対象
流動性が高い
ガバナンスの水準が高い
【流動性】
株主数 800人以上
流通株式数 20,000単位以上
流通時価総額 100億円以上
売買代金 時価総額250億円以上

【ガバナンス】
流通株式比率35%以上
コーポレートガバナンス・コード全原則(高水準)適用

【経営成績・財政状態】
収益基盤:最近2年間の利益合計が25億円以上
もしくは、売上高100億円以上かつ時価総額1,000億円以上
財政状態:純資産50億円以上
「市場第一部」がプライム、スタンダードを選択可能
スタンダード一定の流動性を持つ
ガバナンスの水準が良好
【流動性】
株主数 400人以上
流通株式数 2,000単位以上
流通時価総額 10億円以上

【ガバナンス】
流通株式比率25%以上
コーポレートガバナンス・コード全原則適用

【経営成績・財政状態】
収益基盤:最近1年間の利益が1億円以上
財政状態:純資産額がプラス
「市場第一部」「市場第二部」「JQスタンダード」がスタンダードを選択可能
グロース高い成長可能性がある
リスク(不確実性)が高い
【流動性】
株主数 150人以上
流通株式数 1,000単位以上
流通時価総額5億円以上

【ガバナンス】
流通株式比率25%以上
コーポレートガバナンス・コード基本原則適用

【事業計画】
事業計画が合理的
高い成長可能性を有している
継続的に情報が開示される見込みがある
上場維持基準として、上場10年経過後の時価総額が40億円以上
「マザーズ」「JQグロース」がグロースを選択可能
※上記以外の市場を選択する場合は、新規上場と同様の審査が必要

ごちゃごちゃしていますが、ようは下記のイメージです。

  • プライム 時価総額上位の企業を集めたもの
  • スタンダード プライムとグロース以外
  • グロース マザーズ・JASDAQの成長企業を集めたもの
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グロース企業にとってはチャンスが増えるかも

素朴な感想ですが、スタンダード市場は、プライムや爆速成長中のグロースの企業によるM&Aの対象になりそうです。
加えて、プライムの上場維持基準で、株主数2,200名から800名に減ったことや、売買代金の観点(1日平均売買代金0.2億円以上)が入ったことは、配当や優待を出すステージにはないグロース企業にとってはオプションが増えたとも言えます。
ベンチャー企業の存在感が高まっている中、爆速成長中のグロース企業にとってはチャンスが増えるかもしれません。

今回の再編の意義は???

さて、市場再編の目的として、現状の区分をわかりやすくし投資を活発にする、上場企業の持続的成長と企業価値向上を支え、投資家から支持される市場を提供する、と掲げられています。

たしかに全体の枠組みが整理されてわかりやすくはなりました。
ただ、「経過措置」という名の東証一部からの降格が無いもので、骨抜きと批判をされても反論はできないでしょう。
上場時だけは厳しく、その後は緩いという、現状の体制のままでの整理には首をかしげます。
2,000社超の東証一部企業は、そのままプライム市場にスライドするでしょう。
今回の再編は誰のための、何のためのものなのか?、疑問に思います。

東京証券取引所は2022年4月の市場再編直後に、現在の東証1部から降格する上場企業を出さない方針だ。降格すれば、信用が低下し、資金調達や人材確保に支障を来しかねない。こうした企業の不安に配慮した形だが、これまで「(現在の枠組みを刷新し)市場の性格を明確にする」(東証幹部)と強調してきた再編の狙いとの乖離(かいり)は大きい。市場関係者からは「改革が骨抜きになる」と懸念する声が上がった。

時事ドットコム:市場改革、骨抜き懸念 1部降格当面見送り―東証

もう一つ付け加えると、ガバナンスの強化が強調されている点も気になります。
比較的最近ですと、ソフトバンクの親子上場や、もう少し前ですと、さが美や東芝の件など、それどうなんだ?と疑問に思う物が多い状況です。
日本社会全体でガバナンスの強化が必要なのは確かにそうだとは思いますし、提示された枠組みに従うしか無いのも確かなのですが、今回の再編には複雑な気持ちを抱えてしまいます。

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