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失敗をした時は素直に落ち込んだ方が反省する、という話

失敗した時の対処方法は、何が正しいでしょうか?冷静に、失敗の原因を振り返り、対策を練ることでしょうか?
もちろん、それは正しいのですが、失敗をしたときは素直に落ち込んだ方が反省する、という研究があります。
人間は失敗をした時に、正当化をしようとするので、感情面に重点を置いた方が良いからです。

失敗を冷静に分析すると正当化が行われる

失敗への対処方法について、非常に興味深い研究があります。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/bdm.2042

この研究では、失敗に対して冷静に、論理的に分析を行うのか、それとも感情的に落ち込むのか、でどちらの方がその後の失敗した事象に対して向き合うのか、が調査されました。

その結果、失敗の原因等を冷静に分析し、対策を練ることよりも、素直に感情的に落ち込んだ方が、反省をし、自己改善を図る傾向があることがわかりました。

人間の認知機能には、失敗をしたことに対して自己正当化をはかり、その後の改善を妨げるバイアスがあるから、とのことです。

失敗への対処は高速PDCA

こちらの記事で、失敗への適切な対処として、うまくいかなかった点を把握し、改善すべき点に焦点をあてること、そして次の挑戦までの期間を極力短くし、PDCAの回数を増やすことが大事であることを書きました。

つまり、冷静に分析をすることがいけない、ということではないのです。

大事なのは、失敗したら素直に落ち込んで、ネガティブな感情を受け止めよう、その上で改めて冷静になり分析をし、再挑戦しよう、ということです。

怒りっぽい人自己愛性向が強い人は、反省をし辛い、という研究もあります。
これは上述の、失敗したことに対する自己正当化と同様の話と考えられます。

感情的に割り切ることが必ずしも正しくはないと認識し、感情的に落ち込むことも重要であると捉えると、失敗への対処スキルが向上すると考えられます。

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【運を高める方法】運の良し悪しは自分自身が作り出している

運を高める方法、というとスピリチュアルな要素があるように感じますが、実は違うことがわかっています。
運の良し悪しは自分自身が作り出している要素が大きいのです。
運を高めるためには4つの姿勢、「偶然のチャンスに気づく能力」、「直観による幸運な決断」、「ポジティブな期待による自己実現の予言」、「不運を幸運に変える強靭な姿勢」があります。

運の良い人と運が悪い人との違いは?

幸運に関する研究を行った心理学者、リチャード・ワイズマンの研究によると、運の良し悪しの大部分は自分自身が作り出している、とされています。

研究では400人以上の様々な年齢やバックボーンを持つ人を対象に、実験とインタビュー、性格診断、知能テスト等が行われ、運の良い人と運の悪い人との違いが分析されました。

実験では被験者に新聞に目を通してもらい、その中に何枚の写真があるのかを数えてもらいました。

その結果、運の良い人はわずか数秒で答えられたのに対し、運の悪い人は平均して約2分かかったということです。
その理由は、新聞の2ページ目に「数えるのをやめてください。この新聞には43枚の写真があります。」というメッセージが書かれており、運の良い人はそれを見つけられ、運の悪い人は見逃してしまう傾向があるからです。

また実験では、(研究者は“お遊びで”といっている)半分の新聞に「数えるのをやめてください。このメッセージを見たと言えば250ドルがもらえます。」と書かれており、こちらについても運の良い人と運の悪い人の違いの傾向は同様でした。

運の悪い人は、写真を探すのに夢中で、幸運を掴むチャンスを逃しているのです。

運の悪い人は緊張感や不安感が強い

性格診断の結果、運の悪い人は運の良い人よりも、緊張感や不安感が強いことがわかりました。
不安感があると予想外のことに気が付く能力が低下する、という別の研究もあります。

その別の実験では、被験者にパソコンの画面中央にあるドットを見てもらいました。
実験では何の前触れもなく画面の端に大きなドットが表示されることがあります。
ほとんどの人は、この大きなドットに気が付くことができます。
しかし、中央のドットを正確に見ることが出来たら報酬がもらえる、という条件を設定すると、3分の1以上の人が大きなドットを見逃してしますのです。

つまり、何かを一生懸命探せば探すほど、他の何かが見えなくなってしまうのです。

これは運についても同様で、運の悪い人は他の何かを探すことに夢中になり、チャンスを逃してしまう、ということです。
研究者はその事例として、理想のパートナーを見つけようとして良い友達を作る機会を逃してしまう、ある種の求人広告を見つけようとして他の種類の仕事を逃してしまう、というものをあげています。

幸運な人は、不幸な人よりもリラックスしており、自分が探しているものだけでなく、他の別の何かを見つけることができる、ということです。

運の良い人はチャンスを作っている

他にも、運の良い人は、自分の人生に変化を与えるための努力をしている、ということにも言及されています。

研究者があげた事例としては次のような物があります。

ある幸運な人は、重要な決断をする前に、通勤ルートを常に変えている。
パーティーに行くと同じタイプの人とばかりは話す傾向がある、ある幸運な人は、パーティーに行く時に服の色を決めて、同じ色の服を着ている人と話すようにしている。

運の良い人は、普段と異なる行動を取る事によって、人生における新しいチャンスを得る可能性、その機会を増やしている、ということです。

不運に対する心構え

また、運の良い人は、何かしら運が悪いできごとがあったとしても、それに対する捉え方が運の悪い人とは異なります。

運の良い人は、何か運が悪いできごとがあったなら、「もっと悪いことが起きていたかもしれない。それを考えたらラッキーだった。」と考えるとのことです。
こういった思考の習慣が、自分自身や自分の人生について、長く良い気分でいられ、そして将来への期待感が高まり、幸運な人生を続けられる可能性を高めていくのです。

これは「反事実的思考」と呼ばれるものです。

オリンピックで銀メダルと銅メダルを取った人、どちらの方が幸福を感じるのか?というと銅メダルの人の方が幸福を感じる傾向があるそうです。
その理由として、銀メダルの人は「あとちょっと成績が良ければ金メダルだった。悔しい。」と考えるのに対して、銅メダルの人は「あとちょっと成績が悪ければメダルを取れなかったかもしれない。良かった。」と考えるそうです。

これらの話をまとめて、研究者は幸運を作り出すための4つの基本原理として、「偶然のチャンスに気づく能力」、「直観による幸運な決断」、「ポジティブな期待による自己実現の予言」、「不運を幸運に変える強靭な姿勢」を挙げています。

研究者は幸運は科学的に作り出せる、運を良くする能力は磨ける、と主張し、実際に「幸運の学校」を運営し実績を出しているとのこと。

言うは易し系かもしれませんが、思考も癖の集合体ですので、運を良くするための思考を習慣化する努力を続けてみるのは良いかもしれません。

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三つ子の魂百までは誤りで、人の性格は変わり続ける

三つ子の魂百まで、と言われるように人の性格は一般的には変わらないと言われていますが、これは誤りで、近年の研究では人の性格は変わり続けることがわかっています。
特に、20歳~40歳の間において変化は顕著で、理由としては社会からの期待値の変化が要因として大きく、年齢と共に落ち着きや自信が増していきます。

60年もたてば別人と言って良いほど性格が変わる

イギリス心理学会は、次のような研究を行いました。

  • 1950年に14歳の男女1,208人に性格診断のアンケート調査を行った
  • 性格診断では、自信、粘り強さ、落ち着き、オリジナリティ、誠実性、学習意欲の6要素が診断された
  • 63年後、当時の被験者の内174人がアンケート調査に参加
  • 被験者の家族や友人など周囲の人からの評価アンケートも実施

この調査の結果、14歳の時点と77歳の時点では、別人と言って良いほど性格が変わることがわかりました。
14歳の時のアンケート結果と77歳のアンケート結果では、重複する部分がほぼなかったのです。

年齢と共に落ち着きや自信が増していく

この種の調査は様々な形で各所で行われていて、例えば次の研究ではより大規模な調査が行われています。

https://doi.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fpspp0000210
  • 1960年に高校生44万人を対象にビッグファイブ性格診断が実施された
  • ビッグファイブ性格診断は、開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症的傾向が診断される
  • 50年後、当時の被験者の内1,952人がアンケート調査に参加

その結果、前に紹介した研究と同様の結果が示されました。

この研究では、年齢と共に落ち着きや自信、リーダーシップ、外向性、良心さ、という性格要素が高くなることがわかりました。

一般的に言われる、人間としての成熟、というものが研究により証明された形になります。

性格の変化は20歳から40歳に顕著だが他の年齢でも変化は起きる

性格の変化は、非常に緩やかであり、また周囲の人間も同様に緩やかに性格が変わっていくこともあり、気が付きづらいものです。

しかし、次の研究では、性格の変化が若年成人期である20歳から40歳に顕著であることが示されました。

https://journals.sagepub.com/doi/10.1111/j.1467-8721.2008.00543.x

若年成人期に顕著な性格変化が見られるものの、どの年齢でも変化が起きることも併せて示されています。

なお、この研究でも、上2つの研究と同様に年齢と共に、自信、自制心、情緒の安定性、人としての温かさ、という性格要素が高まることが示されています。

性格の変化は、ライフステージの変化と共に、周囲の期待値も変化していき、それにより起きるものだ、と考えられています。

逆に言うと、何歳になっても幼稚な精神のままでは非常にみっともない、と言えますね。

こちらの記事も参考に(仕事が忙しくてストレス過多だと正確が悪くなる)。

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MBAは役に立たないのか?優秀な人材を活用する姿勢が日本企業には必要

持家か賃貸か?程ではないにせよ、長く議論がされている話題に「MBAは役に立つのか?」というものがあります。
そして、理論を振りかざすだけで実務には役に立たない等々の理由で否定的に見られることが多いです。
この現状を改めてレビューしてみましょう。

以前にこちらの記事で自分自身の体験を元に同様のテーマで書いたのですが、今回は外部の記事を参照していきます。

MBAに対する賛否

こちらの日経ビジネスの記事では、MBAに対してその賛否を過去の記事を元に紹介しています。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00081/090300242/

簡単にまとめると、次のようになります。

  • 否定:一般的なMBAでは科学的根拠は得られるが経験は得られない
  • 否定:典型的なMBAは実務から切り離されている
  • 否定:MBAの論文は学問的に評価されず、結果として教科書がアップデートされていない
  • 肯定:立ち止まって体系的に経営学を学ぶことができる、直接仕事とは関係のないことも学ぶ必要がある
  • 肯定:MBAにより理不尽に耐える精神力が見について、優秀な人材の牙を抜いた企業は今現在、右往左往している
  • 肯定:ものの考え方が身につき実際の経営に役立った

ざっくりと言うと、理論先行で経験が追い付いていないのはよろしくない、ということなのでしょう。

海外では断定的に肯定されている

一方で、こちらの記事では借金する価値がある、と断定しています。

https://jp.wsj.com/articles/a-graduate-degree-that-pays-off-the-m-b-a–11635400426

その論拠はMBAっぽいもので、MBAプログラム修了後の年収増加を考えると、2年後にはMBAにかかった負債(ローン)を所得が上回る、というものです。

確かに筆者も、MBAに要した費用は2年程度で上昇した収入でカバーしてしまいました。

企業側から見た時にMBAホルダーは使いづらいのかもしれませんが、MBAホルダー側から見れば関係がない、ということなのでしょう。
(筆者のMBA同期も、大体の人が収入が増加した、と言っています。また転職をした人が非常に多いです。)

やはり国内だとMBAホルダーは否定的に捉えられがち

しかし、やはり国内だとMBAホルダーは否定的に捉えられがちのようです。

例えばこちらの記事では「MBA取得者の多くは、経営者に向かない」としています。

https://president.jp/articles/-/50911

その理由は次のようなものです。

「知識はある。知識は力の源泉だから、彼らは一定の役には立つし、弁も立つ。しかし人の心には通じていないことが多い。あまりにも多い。人が喜んで働くように働きかけるのがリーダーだから、人の心に通じていないようでは、経営者にはなれない。」

確かに一理あります。

「こうすれば高効率にもっとうまくやれる。」としても人は簡単には納得しないし動きません。

その意味で、冒頭の賛否の記事でもありましたが「経験」の重要性を再認識できます。

しかしながら、この主張を額面通りに受け止めるのは非常によろしくありません。

海外トップ企業のCEOの約31%はMBAホルダー

文部科学省が出している資料に次のようなデータがあります。

米国の上場企業の管理職等の約4割はMBAホルダーなのに対して、日本の企業の役員等は、大学院修了者が1割以下だというのです。

また、世界トップ500社のCEOの約31%はMBAホルダーなのです。


これらのことを考えると、日本と言う国が全体としてMBAホルダーを有効活用できていないだけなのでは?と考えるのが自然なように思います。

優秀な活用すべき人材を活用できていない日本企業の現状はどうなっているでしょう?
日本の経済状況はどうでしょう?

MBAホルダーに限らず、優秀な人材を活用しようという姿勢が日本には必要なように考えます。

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勉強の効率を高める方法まとめ

「勉強の効率を高める方法」のまとめになります。

勉強の効率を高める方法

補足

補足的番外編

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優しいと出世できない?嫌なやつほど出世しやすい?出世に必要な性格とは

世の中には驚くような嫌な性格をしている権力者(組織において出世している人)がいます。
そのような方が目立つが故に。優しいと出世できない、嫌なやつほど出世しやすい、というようにも感じてしまいます。
実際の所、出世に必要な性格はどのようなものなのでしょうか?

嫌なやつが出世しやすい、ということはなさそう

けんか腰で冷たく、利己的な行動をとる傾向がある人。

“嫌なやつ”をカリフォルニア大学の研究者は定義づけをし、出世との関連性について調査を行いました。

https://www.pnas.org/content/117/37/22780

“嫌なやつ”が出世すると、組織にとって多くのマイナスの影響を与えることは想像に難くありません。
そして現実に、世の中には驚くような嫌なやつが出世をし、権力を握っています。
果たして嫌な性格と出世には関連性があるのでしょうか?

結論から言うと、嫌な性格が出世にプラスの影響を与えることはありません。

研究では、数百名の大学生・MBA生を対象に行われました。
学生たちはまず、ビッグファイブと呼ばれる性格診断テストを受けました。
そして約14年後に、彼らのキャリアを追跡し、どれだけの権力を得たのか(出世を果たしたのか)を調査しました。

その結果、嫌な性格が出世にプラスの影響もマイナスの影響も与えない、ニュートラルだということが示されました。
この結果は、性別や民族、組織文化などの様々な変数を考慮しても同様でした。
転職回数や勤続年数、組織の規模なども関係がありませんでした。
(“優しい性格”でも同様のようです。)

研究者達は別の調査も併せて行っており、権力を獲得する(出世をする)ための行動と正確との関連性について、調べました。

その行動は次の4つです。

  • 「支配的行動」(恐怖や脅迫を用いる)
  • 「政治的行動」(影響力のある人と同盟を結ぶ)
  • 「共同体的行動」(人を助ける)
  • 「有能な行動」(仕事が得意なこと)

その結果、“嫌なやつ”は「支配的行動」と取る一方、「共同体的行動」についてはあまり取らない傾向があることがわかりました。
つまり、「支配的行動」による出世のプラス影響を獲得する一方、協調行動を取らないことによるマイナス影響も同時に抱え、相殺されてしまうのではないか、ということです。

(なお、この結果は一見喜ばしい様に見えますが悲報でもあります。何故ならば、優しい性格であろうと嫌な性格であろうと、同様に出世する、ということでもあるからです。「組織は、気が合う人と同じ割合で、気の合わない人を出世させる。」「嫌なやつも、いいやつと同じくらいの割合でトップに立つ。」)

それでは出世に有利な性格は?

それでは、出世に有利な性格は何なのでしょうか?

調査では、たった一つ、「外向性」のみが出世と明確に関連していたことを示しています。

もう一度、出世のために必要な4つの行動を見てみましょう。

  • 「支配的行動」(恐怖や脅迫を用いる)
  • 「政治的行動」(影響力のある人と同盟を結ぶ)
  • 「共同体的行動」(人を助ける)
  • 「有能な行動」(仕事が得意なこと)

いずれも「外向性」が大きく影響しそうな内容であり、この結果は非常に納得感があります。
(有能な行動は、内向的なものも多分に含むであろうことは含みおきたい。)

(外向性を身につけろ、と言って身につくような簡単な話ではないでしょうが)もし、権力を握ることを志向するならば、上記4つの行動と外向性について意識して仕事に取り組むのが良いと言えるでしょう。

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外国語学習は何歳からはじめても遅くない

一般的に、言語学習は早くはじめるほうが学習効率は高いと考えられています。
つまり、大人になってからの言語学習は難しい、という考えなのですが、果たしてこれは正しいのでしょうか?
今回は、外国語学習は何歳からはじめても遅くない、ということを示唆した研究を紹介します。

大規模な言語学習の統計研究

MITの研究チームが669,498人を対象とした大規模な言語学習の統計研究を行いました。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0010027718300994

この論文では、18歳までに言語学習(ここでは英語)をはじめれば、それ以降に始めた場合に比べて、その言語の習得が容易になる、ということを示しています。

これだけを見ると、やはり言語学習は早くはじめるほうが学習効率は高いということを支持しているように受け取れるのですが、それは早計です。

確かに、早く始めた方が言語学習にとって有利な事は明らかです。

赤:ネイティブ、オレンジ:10歳以下、グリーン:11歳以上20歳以下、青:21歳以上

しかし、きちんとデータを見れば、成人してからの言語学習者であっても、十分にネイティブ水準に到達し得ることもわかります。

こちらのグラフは20歳以降に学習を開始した人の上位25%を抽出して、その習熟度を学習年数に応じて推移で示したものです。
0.9のバーがネイティブ水準を示すもので、学習から8年~10年程で、このラインを超えることがわかります。

これは、いつの時点からはじめても同様の結果が見られます。

繰り返しますが、もちろん早くはじめるに越したことはないのですが、何歳からはじめたとしても、習熟度の推移に大きな違いは見られないのです。
(しかも最初の数年は同じように早く習熟することがわかる。特に最初の1年程度でも0.8の水準に到達している。)

赤:ネイティブ、オレンジ:10歳以下、グリーン:11歳以上20歳以下、青:21歳以上

また、どの言語が母語であったとしても傾向は変わらないことも示されています。

バイリンガル全体と5つの言語群の学習傾向を比較した図:ほぼ同じ形状を示しており、母語が何であれ、習熟度について大きな差がなく学習できることがわかる

では何故、大人になると学習効率が悪いと考えられているのか?

それでは、何故、大人になると言語学習の効率が悪くなると考えられているのでしょうか?

研究でも18歳が一つのラインと敷かれていることが示唆されていますが、それはどのような要因なのでしょうか?

キーは学習時間にあると考えられます。

この種の研究の欠点は、年齢と学習期間については統計的に検討がされるものの、総学習時間についてはわからないことがほとんどです。

ようは、18歳という年齢は多くの場合、社会的な転換点を迎える影響が大きいのでは?ということです。

就職をして仕事で忙しくなる人もいるでしょうし、大学で専門的な領域の学習をする人もいるでしょう。

そうなれば、トータルとしての学習時間は若年層よりも少なくなったとしてもおかしくはありません。
この点については、論文の中でも指摘されています。

つまり、きちんと正しく努力を積み重ねたのであれば、何歳であろうが新しい言語を習得することは可能と言えるのです。

もちろん、全ての学習者が等しく新しい言語を習得できるとは限りませんが、意欲のある人にとっては励みとなる研究です。

最初の20%の時間で80%の成果も獲得できることも考えれば、「外国語学習は何歳からはじめても遅くない」のは間違いないです。


こちらも記事も参考にしてください。

こちらの記事では、紙とペンによる手書きの有用性について解説しています。

こちらの記事では、休憩の有用性について解説しています。

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人は自分のための意思決定より、他人のための意思決定の方がクリエイティブになれる

クリエイティブになりたい、と願うビジネスパーソンは多いでしょう。
そのために、他人のための意思決定なのか?という観点はヒントになるかもしれません。
人は、何か問題が起きた時、自分のための解決ではなく、他人のため、という視点で考えるとクリエイティブになれる可能性があるようです。

古典的な問い:塔に閉じ込められた囚人

複数大学のチームは、4つの実験を通じて、他人のための意思決定が、自分自身のための意思決定よりもクリエイティブな解決策を生み出すか否かを調べました(Decisions for Others Are More Creative Than Decisions for the Self)。

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0146167211398362

4つの研究では、他者のための決断が自己のための決断よりも創造的な解決策を生み出すかどうか、また、「解釈レベル(心理的距離と人々の思考が抽象的、または具体的であるか、関係を説明する尺度)」がこの関係を説明するかどうかを調べました。
研究1では、参加者は、自分が書く物語のために宇宙人を描いたり、他人が書く物語のために宇宙人を描いたりして、構造化された想像力の課題を行いました。
予想通り、他人のために宇宙人を描いた方が、より創造的な宇宙人が描かれました。
研究2aおよび2bでは、解釈レベル(心理的距離)を変数として操作した実験を行いました。
参加者は、親しい他者や自分自身のためよりも、遠い他者のために創造的なアイデアを生み出す傾向が強いことが示されました。
最後に、研究3では、古典的な洞察の問題を調べました。
他人のために決断する参加者は、問題を解決する可能性が高いことが示され、さらに、この結果は心理的距離によって媒介されました。
これらの結果は、以下のことを示しています。
人は自分のためよりも他人のために創造的になることを示し、自他の意思決定の違いを明らかにしました。

上述研究3の「古典的な洞察」とは、次のような問いを指しています。

「ある囚人が塔から脱出しようとしていた。
彼は独房の中で、安全に地上にたどり着ける長さの半分のロープを見つけた。
囚人が安全に塔から脱出するには、どのようにすればよいだろうか?」

(答え:ロープを半分に割き結べば、塔の長さになるので、安全に脱出できる。)

研究3だけフォーカスすると、137人の大学生が、追加の単位と引き換えに研究に参加することになりました。
この研究では、半分の参加者は、自分が塔にいることを創造して問題を解くように指示され、残りの半分は塔にいる誰かの代わりに問題を解くように指示されました。
また、解釈レベル(心理的距離)を測定するために、自分自身が塔とどのくらい離れていると感じているか?を7段階で答えてもらいました。

結果、圧倒的に「自分のため」より「他人のため」に問題に取り組む方が、答えに辿り着けることが示されたのです。

「他人のため」の方がより良く生きられる?

この研究は、人々は、物事や対象人物との心理的距離(空間的・時間的・社会的)があると感じる時、それらについて抽象的に考えることと関連していると考えられます。
(身近になるほど、具体的に考える。)

それが故に(抽象的に考えるが故に)、よりクリエイティブな思考が生まれる傾向にあるのでは?というのが論理的な推測です。

もちろん、世の中においては、具体的な発想が重要である場面も非常に多いことは確かです。
「具体と抽象」と言われるように、どちらも重要な観点だ、と捉えるのが適切でしょう。


なお、人は「他人の幸福を願うと自分自身の幸福度も上がる」ことが示されています。

https://link.springer.com/article/10.1007/s10902-019-00100-2

論理的解釈は色々あるとして、「他人のため」の方がより良く生きられる、という示唆は、それはそれで素敵ではないでしょうか。

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ポジティブな感情は加齢による記憶力の低下を防ぐ

歳をとると身心共に衰え、記憶力が低下することは必然です。
しかし、どうやらポジティブな感情は加齢による記憶力の低下を防ぐ効果があるようです。
何歳になっても元気に楽しく働きたい、そのような方にとっては朗報かもしれません。

感情と加齢に伴う記憶力の変化との関係

ノースウェスタン大学の研究チームは、感情と加齢に伴う記憶力の変化との関係について次のような調査を行いました。

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0956797620953883

研究チームは、1995年から1996年、2004年から2006年、2013年から2014年の3つの期間に実施された全国調査に参加した米国の中高年者991人のデータを分析しました。

参加者は、過去30日間に経験したさまざまなポジティブな感情について、それぞれの評価で報告しました。
最後の2回の評価では、参加者は記憶力のテストも行いました。
これらのテストは、単語を提示した直後と15分後に再び思い出すというものでした。

そして研究チームは、年齢、性別、学歴、うつ病、ネガティブな感情、外向性といった要素を考慮した上で、ポジティブな感情と記憶力の低下との関連性について調査を行いました。

この調査により、加齢に伴い記憶力が低下していく、という基本的な事実の確認と共に、ポジティブな感情のレベルが高い人は、約10年の間に記憶力の低下が緩やかだったことが示されました。

ポジティブな感情とは、熱意、気配り、誇り、積極性、楽観性、明るさなどのことです。

ポジティブな感情は加齢による記憶力の低下を防ぐ可能性がある、という示唆を得られたのです。

人は何歳になっても成長できる、という研究も

記憶力の低下と併せて、物覚えが悪くなった、と感じる高齢者の方は珍しくないでしょう。

この感覚は正しいもので、事実、新しい何かを学習する能力は、若い人に比較して衰えているのは確かです。

しかしながら、多くの研究が、人は何歳になっても成長できる、という考えを支持しています。

ポジティブな感情により記憶力の低下を防ぐことが一定できるならば、楽しんで新しい物事を学び、熱意をもってチャレンジを続けていけば、非常に良い老後を迎えられるのではないでしょうか。

人は加齢と共にリスクを避ける傾向が強まりますが、そのことを自覚していれば、チャレンジ意欲の維持も不可能ではないはずです。

学ぼうという姿勢を持ち続けること、新しいことにチャレンジし続けること、そしてそれらを楽しんで取り組むこと。

重要なマインドとして意識していきたいものです。

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何歳になっても人は成長できるし成功できる

年齢を重ねると共に衰えを感じ、また学ぶ能力も減衰していくと感じる人は多いでしょう。
事実、身体は間違えなく衰えていきますし、意欲も脳生理学的に低下し、意思決定も保守的になっていくことが示されています。
しかし、近年の知見では、何歳になっても人は成長できるし成功できる、ということも示されています。

テック領域での知見

よく、ソフトウェア開発の領域において、年配のプログラマーは急速に変化する技術においてついていけず、スキルが比較的若いプログラマーに劣っている、と言われます。

これは果たして本当なのでしょうか?

ある研究では、この考えに否定的です。

https://people.engr.ncsu.edu/ermurph3/papers/msr13.pdf

ノースカロライナ州立大学が行った研究によると、年配のプログラマーは若いプログラマーと比較して、同等かそれ以上のスキルを持っていることが示されました。

研究者たちは、StackOverflowというサイトに登録されている8万人以上のプログラマーのプロフィールを調べました。
StackOverflowは、ユーザーがプログラミングに関する質問をしたり答えたりできるオンラインコミュニティです。
このサイトでは、ユーザーが他のユーザーの質問や回答の有用性を評価することもできます。
良い質問や良い回答をしていると評価されたユーザーにはポイントが与えられ、それが “レピュテーション・スコア “として反映されます。
レピュテーションスコアが高ければ高いほど、そのユーザーはプログラミングの問題をしっかりと理解していると考えられます。

この研究では、ユーザーの年齢とレピュテーションスコアの関係、ユーザーが質問したり回答したりしたテーマの数、近年の新しい技術に関する知識、について調査が行われました。

その結果、レピュテーション・スコアによるユーザーの評判は40代までは上昇することが示されました(それ以上の年齢については十分なデータが取れなかった)。
また、テーマの数も30代から50代前半にかけて、カバーしている領域が着実に広がっていることも示されました。
新しい技術については、若いプログラマーと比較して同等の知識を有していることがわかり、決して、新しい知見に対するキャッチアップ能力が劣っていないことが示されました。

つまり、年齢と共にプログラマーとしての総合的な能力は上昇し続ける、ということです。

おそらく、適切に学ぶ能力と意欲の問題と考えられます。

科学研究領域での知見

次は、科学研究領域から得られた知見です。

https://www.nber.org/system/files/working_papers/w19866/w19866.pdf

ノースウェスタン大学の研究チームは、科学や技術的領域において貢献した人たちの、成功した時期の年齢について調査を行いました。

その結果、20世紀以降にノーベル賞を受賞した受賞者の貢献・年齢についてグラフで表すと次のようなものになることがわかりました。

30代後半から40代において、グラフが大きくなっています。

同様のグラフを、1935年以前、1935年より先から1965年以前、1965年より先で分解すると、次のように、時代と共に成功をする年齢が後ろ倒しになっていくことが示されました。

また、いずれのグラフからも、比率として小さいものの、50代60代になっても成功をしている方がいらっしゃることがわかります。

年齢と共に後進の育成に注力していく傾向があるであろうこと、純粋なバイアスの影響もあるであろうことを踏まえると、科学研究領域での知見においても、何歳になっても人は成長できるし成功できると考えることができるはずです。

脳生理学的な知見

上述2つの研究は、年齢と実態についてのものでした。

研究は脳生理学的なものもあり、最近の研究によると、何歳になっても脳の一部領域は成長することが示されています。

https://hbr.org/2010/02/brain-functions-that-improve-w

人の脳は、語彙力や機能的推論など、様々な分野において、20代の頃よりも機能しているようです。
物事の要点を掴む能力や、対人関係の判断能力、様々な“何か”が信頼できるか否かを判別する能力等、多くの能力が磨かれていく、とのこと。

確かに、年齢と共に、脳の処理速度や新しいことをスムーズに覚える能力、短期的な記憶力の低下など、様々な衰えは確かにあります。

しかしながら、衰える能力がある一方、磨かれる能力もあるのだ、という知見は全ての人にとって励みになると考えられます。


歳を重ねることにより衰えるものは何か?逆に磨かれるものは何なのか?
これらを適切に把握し、また下記記事のようなリスク回避傾向等についても認識すれば、何歳になっても成長できるし、挑戦し成功を掴むことができる可能性も高まるはずです。

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