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仕事と健康,運動

職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる、という話

人は承認を求める生き物で、他者との良好な関係性がないと、心身を適切な状態に保てないものです。
今回紹介する研究によると、職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる、ということが示されています。
どれだけ社会に溶け込んでいるか?が健康リスクに影響を与えるというのです。

職場の状況と健康がどのように関係をするのかが調査された研究

次の記事では、職場の状況と健康がどのように関係をしているのか、を調査した研究が紹介されています。

https://www.apa.org/news/press/releases/2011/05/co-workers

研究では、成人820人を対象都市、1988年から20年間に渡る追跡調査が行われました。

被験者は、金融、保険、公共事業、製造業など、幅広い業界に従事している人たちが対象であり、平均労働時間は8.8時間/日、3分の1が女性で、80%が既婚者で子供がおり、45%が12年以上の正規教育を受けていた人たちでした。

研究では、生活習慣のアンケート、身体測定や血液検査等による健康診断、そして職場の状況についてのアンケートが実施されました。
職場の状況についてのアンケートは、仕事で要求されていること、職場でのコントロールの状況、上司や同僚によるサポートの状況についてが聞かれています。

ここ言う“コントロール”とは、主体性を発揮でき自分のスキルをどのように使うのが最善かを決める機会があった、与えられた仕事をどのように達成するか、仕事の中で何をすべきかを自由に決定できた、という状態について、コントロールがある、としています。

20年間の追跡調査中、53名の被験者が死亡しました。

職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる

上述の調査の結果、職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる、ということが示されました。

職場で、同僚から適切なサポートを受けられる状態にある人は、そうでない人と比較して健康リスクが有意に低かったのです。
この結果は、38歳か43歳までの年齢層で顕著に見られたということです。

ここで言う“適切なサポート”とは、同僚が問題解決に役立ち友好的である状態、のことを示しています。

一方、上司からのサポートについては、健康リスクに影響を与えませんでした。
上から、ではなくて、横のつながりが大切だ、ということなのでしょう。

なお、別の研究によると、男性においては地位や権力が高いと感じていると同様の健康リスクの低減効果があることがわかっています。
逆に女性の場合は、地位や権力、といったパラメータは健康リスクにマイナスの影響があることも示されています。

成功するチームは、メンバー同士が協調しており、またEQが高い

別の研究では、ある種の課題をうまく遂行できるチームは、別の課題についても同じようにうまく遂行できる傾向があること、そのチームの特性として集団的知性(EQ)が高いという特徴があることが示されています。

ここで面白いのが、メンバーにIQが高い人が入っているチームが必ずしも適切に機能するとは限らない、という点です。

高いEQがメンバーの状況を適切に把握し、サポートをする協調関係のベースになることは容易に想像がつきます。
上述の研究とも関連付けられ、適切なサポートがある状況では仕事のストレスが減り、間接的に健康にプラスの影響を与えるのでしょう。

そして、このようなチームを意図的に組成する上において重要な要素として、「行動規範」が存在します。

この成功する「行動規範」としては2つのものがあげられています。

1つ目が「会話のターンテイキング分布の均等性」、つまり、良いチームは、メンバーがほぼ同じ割合で発言していること。
2つ目が「チームの平均的な社会的感受性が高い」こと。

会社や上司は、これらのことを意識すると、チームのパフォーマンスをあげて、またメンバーのウェルネスを向上させることができるはずです。

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運動はエネルギー感、クリエイティビティ、生産性を向上させるという話

運動を行うことによる健康へのポジティブな影響は広く知られています。
また、運動は認知症の改善等、それ以外の様々な事柄にポジティブな影響を与えます。
今回は、運動がエネルギー感(活力)、クリエイティビティ(創造性)、生産性を向上させるという研究を紹介します。

運動がエネルギー感を向上させるという研究

まずは運動がエネルギー感を向上させるという研究です。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18277063/

従前から何かしらの疾患を抱えていたり、原因は不明なれど疲労症候群として診断の基準にあてはまっている人たちを対象とした運動実験により、疲労感が改善することは知られていました。

この論文では、診断基準には達していないけれども原因不明な疲労感を訴える人たちを対象とした運動実験です。

実験では座り仕事の多い若年層36名の被験者を対象に、6週間の運動実験を実施し、エネルギー感(活力)と疲労感の気分について自己申告によるスコアが取得されました。
実験では中強度の運動群、低強度の運動群、運動を行わない対象群に分けられました。
6週間の間、週3回、合計18回運動を行うためのトレーニングルームを訪れてもらい、有酸素トレーニングを実施されました。

結果、運動トレーニングの結果は、エネルギー感が中強度でも低強度でも向上していたことがわかりました。
また、エネルギー感と疲労感は、それぞれ独立して変化することもわかりました。

運動がクリエイティビティを向上させるという研究

次はクリエイティビティ(創造性)に運動が与える影響の研究です。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1332529/

こちらの実験では63名の被験者を対象に、運動(エアロビクス)を実施する群と、ビデオ鑑賞(ニュートラル群)を行う群に分けて、クリエイティビティを測るテストが実施されました。
(クリエイティビティを測るテストでは、トーランステスト、というものが実施された。)

結果、運動後にはポジティブな気分が大きく有意に増加し、一方対照群ではポジティブな気分が有意に減少したことが示されました。
クリエイティビティについては、いずれの条件でも向上したとのことで、運動により気分とクリエイティビティがそれぞれお独立して改善されることがわかりました。

いずれにせよ、運動によりクリエイティビティ(創造性)が向上するのです。

運動が生産性を向上させるという研究

最後は生産性の向上の研究です。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21785369/

177人の被験者を対象に、週の労働時間を2.5時間短縮し運動を行う群、同様の短縮条件で運動を行わない群、何も介入しない対照群の3つのグループに分けて、実験が行われました。
生産性については自己申告により測定されました。

その結果、週の労働時間を2.5時間短縮し運動を行った群について、自己評価生産性が向上、つまりは仕事量の増加、仕事のしやすさの向上が行われ、また病気欠勤の減少が確認されました。

つまり、労働時間を短くし運動を行う時間を確保することにより、より高いレベルの生産性を得られる、ということです。


結論として、運動はエネルギー感、クリエイティビティ、生産性を向上させるのです。

仕事をよりエネルギッシュに効率的にこなしたい、仕事関係なく日々を楽しみたい、という人にとって、運動を行わない理由は無いでしょう。

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健康のための1日の歩数は1万歩ではなく1日7,000歩から長生きにつながる

健康のためにウォーキングは様々なところで推奨されており、歩数の基準として「1日1万歩」が標準的な数字として頻繁に取り上げられます。
最近の研究では、1万歩以上は健康効果としては横ばいになることがわかっています。
また、必ずしも1万歩を歩く必要はなく、7,000歩からでも高い健康効果が得られることも分かっています。

ウォーキングの歩数と死亡率の関係を調べた研究

ウォーキングと言えば、多くの人が思い浮かべる数字として「1日1万歩」があげられるでしょう。
長年、この1万歩は、健康増進のための基準として用いられてきました。
実際科学的にも、歩数を増やすことが健康増進につながる証拠が多く提示されています。

わかりやすい基準は、人々に対して覚えやすくし、習慣づけをする上で重要であり、便利なものです。

しかし、研究により結果や分析にバラつきがあり、解釈等も微妙にことなります。

次に紹介する論文では、比較的大規模にウォーキングの歩数と死亡率の関係を調べた研究が実施されています。

https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2783711

米マサチューセッツ大学運動学部にて、米国の4つの都市から集められた2,000人以上の中年(平均45歳)の男女(黒人・白人両方を含む)を対象にした研究が行われました。

研究は2005年に開始され、2018年まで定期的な追跡調査が行われました。
2018年時点で72人がなくなっています。

被験者は加速度計を装着し、起きている間の1日の歩数と歩幅が測定されました。

健康効果は1日7,000歩以上が基準で1万歩

この研究の分析の結果、1日の歩数が約7,000歩の人は、歩数が少ない人に比べて死亡するリスクが50%~70%も低いことがわかりました。
この結果は、黒人と白人の中高年男女で同じものでした。

なお、歩く速度(歩数強度)は死亡率には影響しないこともわかりました。

一方で、1万歩以上歩いたとしても死亡率のさらなる低減にはつながらない、という結果も示されました。

このグラフの縦軸は対数であることに注意して見てください。

歩数が増えるごとに死亡率は低減していき、概ね7,000歩から効率は低下、1万歩からはほぼ横ばい、という結果になっています。

歩数が増えれば健康増進の効果があることは従前から知られていましたが、この研究により1つの基準値として7,000歩という数字が新たに提案された形です。
1万歩を達成できなかったとしても、悔やむ必要は全くない、ということがわかります。

短い時間でも良いので歩こう

ウォーキングは認知症予防にもなる、という研究もあります。

その基準は1週間で12Kmです。

高齢者を基準に1Km2,000歩と考えた場合、必要な1日の歩数は約3,500歩です。

上述の図では、短い歩数でも、歩けば歩くほど健康増進効果が高まっていくことが示されています。

短い時間でも良いので、歩く習慣を身につけると良いでしょう。

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冷たいシャワーを浴びるとメンタルヘルスの改善につながる可能性

冷たいシャワーを浴びることによる健康増進の効果や、認知機能向上の効果が知られています。
その他にもメンタルヘルスの改善についても報告をする研究があります。
霊長類が数百万年の進化の過程で経験してきた体温の一時的な変化(寒中水泳など)などの生理的なストレス要因を欠いた生活が脳の機能不全を引き起こしている可能性がある、とのことです。

冷たいシャワーを浴びることにより何故、心身にプラスの影響が出るのか?

冷たいシャワーを浴びると様々なポジティブな効果があります。

例えば、健康増進の効果であったり、認知機能の向上効果であったり、です。

それではなぜ、冷たいシャワーを浴びると心身にプラスの影響が出るのでしょうか?

ホルモンの観点では次のような説明があります。

人は冷たいシャワーを浴びると交感神経系が刺激され活性化します。
それにより、ノルアドレナリンというホルモンが放出され、これにより心拍数や血圧の上昇が起き、血流の改善につながり健康増進効果が出る、ということです。
脳内でもノルアドレナリンのシナプス放出が増加することが知られています。

他にも、新陳代謝の活発化により、健康や認識機能へのポジティブな影響が出る、という説明もあります。

次の研究では進化学的な観点で、この問いへの仮設を検証しています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17993252/

その仮説とは、霊長類が数百万年の進化の過程で経験してきた体温の一時的な変化(寒中水泳など)などの生理的なストレス要因を欠いた生活をしており、このような「熱運動」の不足が脳の機能不全を引き起こしているのではないか、というものです。

他にも、人によりこの状態がより顕著に出る遺伝的な構造を持っている場合も有り得る、としています。

つまり、現代社会の自然から受けるストレスが減少し、それがかえって脳にとってのストレスになっている可能性がある、ということです。

冷たいシャワーを浴びるとメンタルヘルスが改善する可能性の実験

上述の実験では、1日1~2回、冷水シャワー(20℃、2~3分、その前に5分間の段階的適応を行い、ショックを和らげる)を浴びることを数週間から数か月間実施し、メンタルヘルスに与える影響を見ています。

そして、実験の結果として、冷たいシャワーにより抑うつ症状を緩和することが示されました。

なお研究者は、仮設の検証のためには、より幅広い分野での厳密な研究が必要である、としています。

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冷たいシャワーを浴びると病気になるリスクが減る可能性

暖かいお風呂に入ることの効能は様々に知られており、認知症の予防や、睡眠の質の改善など、多岐にわたります。
一方で、冷たいシャワーを浴びることによる健康効果もあるようで、病気になるリスクが減る可能性も報告されています。
ある研究では、温かいシャワーを浴びた後に冷たいシャワーを浴びると、病欠率が29%減少したそうです。

温かいシャワーを浴びた後に冷たいシャワーを浴びる実験

オランダで行われた実験では、18歳から65歳までの3,018人の被験者が参加しました。

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0161749

実験では、30日間連続で30秒、60秒、90秒の(温→冷)シャワーを浴びる群と対照群に無作為に(1:1:1)割り当てられ、その後、介入群は60日間、自分の判断で冷たいシャワーを浴びることとなりました。

実験での評価項目は、何かしらの病気にかかる日数と、それによる病欠日数であり、副次的にODL(生活の質)、仕事の生産性、不安、温熱感等が測定されました。

実験は、介入群の79%が一連のフローを完了しました。

冷たいシャワーは病気のリスクを低減させる可能性

上述の実験の結果、対照群と比較して、(温水-冷水)シャワー効果により病気欠勤が29%も減少したことが示されました。

参加者はいずれも重度の併存疾患がなく、他の疾患の影響の可能性が低いこともあり、冷たいシャワーの健康効果が確認された形になります。

冷たいシャワーを浴びる時間は30秒・60秒・90秒の3段階で設定されていましたが、冷たいシャワーを浴びる時間は実験結果に影響しませんでした。

仕事の生産性にも直接的な影響を与えていませんが、病欠が減る、という形で間接的に生産性を高めています。

冷水シャワーが具体的にどのような機序でもって健康効果をもたらすのか、またプラシーボ効果でない可能性が排除できていないことなどがありますが、健康にプラスの効果があることが実験で明確に示されました。

なお、この実験に参加した被験者のうち、約91%が冷水シャワーを「続ける」と答えているそうです。

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劇場や美術館などに行く芸術に楽しむ人は長期的な死亡リスクが低い模様

イギリスの50代以上の7,000人以上を対象とした、余暇の使い方の調査で、美術館、博物館、コーンサートなどに定期的に行く人は寿命が長い傾向があることがわかっています。
あくまでも相関性が強い話であり、因果関係を説明したものではないのですが、芸術活動が精神的・肉体的な健康を増進させる可能性があります。

月に一度は劇場や美術館に行くと早死にのリスクが抑えられる

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームは、50歳以上の約7,000人を対象に、12年間に渡る追跡調査を行いました。

https://www.dailymail.co.uk/health/article-7802547/Want-live-longer-theatre-trip-month-cuts-risk-death-30.html

研究では2004年から2005年に開始され、オペラ鑑賞を含む芸術活動の頻度が測定されました。

参加者は平均12年間に渡り追跡調査され、6,710人の参加者の内、3分の1にあたる2,001人が死亡しました。

その結果、数ヶ月に1度、何かしらの芸術活動を行う被験者は、研究終了時までの死亡率が約14%低かったこと、また美術館や劇場、アートギャラリーなどを月1回以上の頻度で訪れている被験者は死亡率が約31%低いことが示されました。

メンタル面での改善や身体活動の促進を考慮しても関連性がある模様

この話は観察研究であり、定期的に劇場に足を運ぶことが健康リスクの低減につながる直接の証明であることの説明はできません。

また、美術館等に足を運ぶことがメンタル面での改善や身体活動の促進につながることも考えられます。

しかし研究者たちは分析の結果として、メンタル面での改善や身体活動の促進を考慮しても、芸術活動と健康の関連性が残っていると説明しています。


この種の研究は非常に少なく更なる研究が望まれるものではあります。
芸術活動という比較的容易に取り組めることで健康上の利点を得られるのであれば、それは非常に素晴らしいことと言えます。

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【若い内からの認知症予防】テレビを長時間見る習慣がある人は認知症リスクが高い

何かしらの趣味を持っている人は認知症にかかるリスクが低いことが一般的に知られています。
しかし、この趣味にはテレビ視聴のようなものは含まれません。
テレビを長時間見る習慣がある人は、そうでない人に比べて認知症リスクが高いのです。

趣味を持っている人は認知症にかかるリスクが低い

ミネソタ州のメイヨーククリニックの研究チームにより、読書をしたり、編み物をしたり、コンピューターゲームをしたりするような趣味に没頭すると、認知症のリスクが低下し、発症を遅らせることができることが示されました。

研究では、70歳から89歳の軽度の認知症を持つ約200人を対象に、認知障害がないグループと比較する形で調査が行われました。

調査では、被験者に過去1年以内の日常生活について尋ねると共に、50歳から65歳までの間に、どれだけ精神的に活発であったのかがヒアリングされました。

その結果、読書や編み物、ゲームなどの趣味に没頭していた人は、認知症のリスクが約40%減少することが示されました。

その後の人生についても、同様の活動により、30%~50%、認知症リスクが減少することもわかりました。

ただし、テレビ視聴は認知症リスクを高める

しかし、上述で言う“趣味”にはテレビ視聴は含まないようです。

むしろ、長時間テレビの前にいる習慣がある人は、認知症リスクを高める可能性があります。

テレビの視聴時間が1日7時間未満か、それ以上かのグループでは、前者の方が認知症にかかるリスクが50%も低いことが示されています。

おそらく、受け身で情報を受け取るだけのテレビでは脳が刺激されないのでしょう。

脳を使う習慣を身に着ける

研究者たちは、認知機能を鍛えることで、将来の認知症リスクを低減させることができるとしています。

もちろん、この研究は被験者の記憶に頼ったものであり、不確実性ははらみます。
しかし、脳を使う習慣があれば、衰えも遅らせられるであろう、と考えることが不合理とは思えません。

何かしらの新しいスキルを身につけたり、新しい言語を学んだり楽器を習ったり、パズルを解いたりするなど、脳を鍛える、チャレンジをすることは楽しいだけでなく、良好な老後を過ごすことにつながり得ると考えて良いでしょう。

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昼寝を頻繁にする人は若くして亡くなる傾向がある模様

睡眠は人の健康に非常に重要なものです。
しかしながら、昼寝を頻繁にする人は、そうでない人よりも若くして亡くなる傾向がある、という研究もあります。
これは因果関係を示すものではなく、疲労や疾病が要因と考えられますが、健康を害するサインであるとは言えます。

睡眠不足は身心に多大な悪影響を与える

睡眠不足が身心に多大な悪影響を与えることは広く一般的に知られており、公衆衛生上の課題であると考えられています。

悪影響とは、身体へのダメージ不安の増大生産性の低下認知症リスクの増大、と言った物があげられます。

他にも、先延ばし行動の増加リスクのある判断をポジティブに歪める、というようなあまり知られていない悪影響も存在します。

そのため日々の睡眠不足を補うため、仮眠、例えば昼寝をする、というような行動が推奨されています。

しかしながら、昼寝を頻繁にする人は若くして亡くなる傾向がある、という研究が存在します。

昼寝を頻繁にする人は若くして亡くなる傾向がある模様

ケンブリッジ大学の研究では、昼間に1時間以上の昼寝を頻繁に取る人は、そうでない人に比べて若くして亡くなる傾向があることが示されています。

https://www.smithsonianmag.com/smart-news/consistently-needing-take-long-mid-day-naps-might-be-indicative-underlying-health-problem-180951071/

この研究では40歳から79歳までのイギリス人男性約1万6千人を対象に、13年間に渡る追跡調査が行われました。

その結果、1日に1時間以上の昼寝をする人、1日に1時間未満しか昼寝をしない弘、まったく昼寝をしない人の3グループに分類され、この内、1日に1時間以上の昼寝をする人は、そうでない人に比べて死亡率が32%も高かったことがわかりました。
死亡要因は様々に存在しますが、心臓病やがん、呼吸器系疾患などが含まれていました。
研究では、性別や社会経済的地位、アルコール、うつ病などの精神疾患などについても考慮されています。

おそらく昼寝そのものが問題ではない

この研究は、因果関係を示すものではなく、あくまでも相関性を示すものです。

そして研究者も、おそらく昼寝そのものが問題なのではなく、疲労や、疲労の原因となる基礎的な健康状態が関連しているのでは、としています。

つまり、日中に過度な疲労を覚え、睡眠を欲する、というような状況は健康を害しているサインである可能性があるのです。

忙しい現代社会において、十分な時間と質の睡眠をとるのは難しいことかもしれません。
しかし、長い時間、眠気を覚えているという人は、身心の疲労の原因を追究し、解消するための取り組みを行った方が長期的な健康のためにも良いと言えるでしょう。

言うは易しですが。

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睡眠不足は不安を増大させる

睡眠不足がパフォーマンス、つまりは生産性に悪影響を与える、ということは非常に知られています。
また、健康にも様々な悪影響を与えることも同様によく知られています。
加えてメンタルとの関連性もよく語られますが、睡眠不足に陥ると不安が増大する、ということはあまり知られていません。

慢性的な睡眠不足は、不安を増大させる可能性があるのです。

睡眠不足の時に活性化する脳領域と不安を感じた時に活性化する脳領域は同じ

慢性的な睡眠不足に陥ると、生産性が落ちたり、体調が悪くなったりした経験がある人は多いでしょう。
また、もしかしたら、不安な気持ちになった経験がある人もいるかもしれません。

一般的に、不眠症の人は、不安障害を抱えるリスクが多いとされています。
しかし、これは相関性が見られたのみで、臨床的にどのように関係しているのか?は示されてきませんでした。

カリフォルニア大学の研究チームは、睡眠不足の時に活性化する脳領域と不安を感じた時に活性化する脳領域は同じであり、睡眠不足が不安を増大させる可能性について示しました。
たった一晩寝なかっただけで、fMRI検査において、不安を感じた時に示す脳活動パターンが見られたのです。

https://www.researchgate.net/publication/327021316_Sleep_loss_causes_social_withdrawal_and_loneliness

意図的に睡眠不足の状態を作ると不安が増大した

この研究では18人の健康な成人を被験者とし、半分を睡眠不足グループ、半分を対象群となる通常グループにわけて、2晩過ごしてもらいました。
そして、それぞれの夜と朝に被験者の不安レベルが測定されました。

その結果、睡眠不足グループにおいて、翌日の不安レベルが30%上昇することが示されました。
この水準は、臨床的に不安障害と診断される可能性がある水準です。

併せてfMRI検査が行われ、上述の通り、睡眠不足グループにおいて不安を感じた時に示す脳活動パターンが見られました。

睡眠不足により増大した不安は、ぐっすり眠ると解消される

この睡眠不足により誘発された不安は、被験者が一晩しっかりと睡眠をとると、正常なレベルにまで回復したこともわかりました。

研究者は、「十分に休息しているときには、感情をコントロールする脳領域が不安を抑えるが、たった一晩の睡眠不足でも感情を制御するプロセスが発動しなくなる。」としています。

この研究により、不安が睡眠不足を誘発する、という従来の知見に加えて、睡眠不足が不安を誘発する、という双方向の相互作用がある可能性が示されました。


忙しい現代人は、睡眠不足を削って「生産的」なことに時間を費やしたいと考えがちです(その「生産的」が仕事なのか、趣味のことなのかは問わず)。

しかし長期的に見れば、「生産的」なことよりも、睡眠をしっかり取ることの方がはるかに重要であると言えます。

睡眠不足により、不安サイクルという完全な悪循環に陥るリスクがあるのですから。

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睡眠不足は身心に悪影響を与えるのみならず肥満や歳をとった時の体力にも悪影響を与える

睡眠不足がパフォーマンス、つまりは生産性に悪影響を与える、ということは非常に知られています。
そして、生産性に悪影響を与えるだけでなく身心にダメージを与え、幸福を感じにくくなってしまうこと、また肥満や歳をとった時の体力にもマイナスの影響を与えることが研究でわかっています。

睡眠不足は身心に悪影響を与える

米・サウスフロリダ大学の研究で、わずか1日だけでも睡眠不足になると身心に悪影響を与える、ということが示されています。

https://academic.oup.com/abm/advance-article-abstract/doi/10.1093/abm/kaab055/6314765?redirectedFrom=fulltext

研究では約2,000人の中年を対象に、8日間の睡眠時間や感情、生活行動等についてデータを収集し、分析がされました。
その結果、睡眠時間が6時間を下回った人において、有意にネガティブな感情(怒り、いらだち、神経質、フラストレーション、神経質等)が増加したことがわかりました。
また、ネガティブな感情のみならず、胃腸や呼吸器等、健康上の悪影響も増加したことがわかりました。

この悪影響は睡眠不足が続くと悪化を続け、3日目でいったん落ち着くものの、6日目で更に悪化する事も示されました。

この悪影響から逃れるためには十分な睡眠が必要である、としています。

睡眠不足は幸福度を下げる

カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究では、睡眠不足がポジティブな出来事からうける幸福な感情が低下し、ネガティブな感情が増加すること、つまりは幸福度が下がることが示されました。

https://doi.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fhea0001033

研究は、約2,000人の中高年を対象に行われ、8日間の睡眠時間、ポジティブもしくはネガティブな出来事、その出来事から感じた感情等についてインタビュー調査が行われました。

その結果、睡眠不足になると、ポジティブな出来事からうける幸福な感情の増加幅が低下すること、逆にネガティブな出来事からうける幸福な感情の減少幅が増加することがわかりました。

一方で、十分な睡眠をとっている被験者は、ポジティブな出来事からうける幸福な感情の増加幅が増加すること、ネガティブな出来事からうける幸福な感情の減少幅が低下することもわかりました。

研究者は、睡眠が与える身心への影響のみならず、人生の幸福にも影響をしていることを指摘しています。

睡眠不足は肥満につながる可能性

さらに、睡眠不足が肥満につながる可能性についても指摘されています。

フランス・国立衛生医学研究所の研究では、睡眠不足が肥満と関連があることが示されています。

https://www.afpbb.com/articles/-/2375648

研究では、睡眠不足の状態になると、食欲抑制ホルモンであるレプチンが体内で18%減少すること、一方で食欲増進ホルモンであるグレリンが28%増加することが示されました。

この睡眠不足が言う睡眠の時間は、1日4時間睡眠を2日間繰り返した場合、とのことですが、現代人の睡眠状況では珍しくないかもしれません。

他の研究でも、睡眠時間が短い人は肥満傾向があることが示されており、肥満と言う観点でも、長期的な身体への悪影響が推測されます。

睡眠不足は将来、介護施設に行くリスクを高める可能性

そして、睡眠不足は将来、介護施設に行くリスクを高める可能性があることが示されました。

この研究では、平均年齢83歳の高齢女性約1,600人を対象に、ウェアラブルデバイスによる3日間の行動データが取得され、そして追跡調査により5年後の介護施設への入居状況が調査されました。

https://cakehealth.com/2865-sleep-disturbance-nursing-homes.html

その結果、睡眠時間が短い女性(夜間に起きている時間が長かった女性)は、有意に介護施設に入居する割合が高かったことが示されました。

この結果は、認知症との関連も考えられるため、睡眠不足と介護施設に行くリスクが直接的に結びついているとは限りません。
また、高齢者が眠らない、ということが周囲の介護者のストレスを増大させ、介護施設に入居させるインセンティブが高まる、という可能性も考えられます。

しかし、睡眠不足が身心に悪影響を与える、ということを考えると、長期的な身体機能や認知機能の低下を招き、介護施設に行くリスクを高める可能性は十分にあると言えます。


現代人は、睡眠を十分にとれる環境の確保が難しいのは確かなことでしょう。

しかし、これだけの悪影響があることを踏まえれば、如何に睡眠時間を確保するのか?は重大な検討事項であるのは間違いがないでしょう。

自分自身の人生を大事にするのであれば、良質な睡眠を十分な時間、取れるよう、最大限の工夫をすべきと言えます。

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