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【今日のロジカルシンキング】空間除菌的なアレは効果があるのか?

空間除菌的なアレを身に着ける方や、オフィスに設置してある会社をちらほら見かけます。
ここ最近は特に多いですね。
しかし、この空間除菌的なアレは効果があるのでしょうか?
結論は「効果はない」なのですが、それを科学的な知識ではなく、ロジカルシンキングベースで考えていきます。

繰り返し書きますが、科学的知識は日常生活の中で入手できる範囲内のもので、論理的に整理できるものです。
効果があるという前提で考えた場合と、効果がないという前提で考えた場合で見ていきます。

まず、効果がある前提で考えてみます。

空間除菌的なアレは効果があると考えた場合

空間除菌的なアレは、ようは、あの首から下げているネームプレート状のものや、机においたボトルから消毒成分が出ている、というものです。
一般的に使用されており、しかも首から下げるような人体に極めて近い場所での使用です。
つまり、その殺菌成分は、人体には悪影響を与えないけれども、空気中の細菌やウイルスは消毒できる程度に強力であると考えられます。

人体には悪影響を与えず、消毒効果だけがあるものがあったとして、まああるかもしれないとは思えます。
つまり、空間除菌的なアレから消毒成分が出て、空気中の細菌やウイルスを消毒していく、という流れで、論理構造的には、効果があると考えてもおかしくはありません。

それでは次に、効果が無い前提で考えてみましょう。

空間除菌的なアレが効果がないと考えた場合

感染症というものは、どのように広がっていくでしょうか?
新聞やニュース等で報道されている通り、インフルエンザやコロナをはじめ、風邪に関連するウイルス感染の多くが飛沫感染という形で広がっていくことは一般的に知られています。

言いたいことは、空間除菌的なアレは、咳やくしゃみで飛び散ったしぶき(飛沫)に対して、即時に消毒効果があるのか?という視点です。

ドアノブや電車の取って、身近な手で直接触るありとあらゆるもの。
そういったものに対しても、空間除菌的なアレから出る消毒成分は効果を発揮するのでしょうか?
空間除菌的なアレから蒸発した消毒成分が、しぶき(飛沫)という液体物に対して効果があるとは、ちょっと考えれば無いと推測ができるはずです。
繰り返し書きますが、空気中の細菌やウイルスに対して効果があったとしても、液体内に存在する細菌やウイルスに対して、効果を発揮できるほどのものなのか?と考えれば、疑問が出てくるはずなのです。

確かなことが言えなかったとしても、そして個別の科学的知識に乏しかったとしても、日常的に入手できる情報だけでもって、論理的に考えて、その効果に対して「疑わしい」と考えられるはずです。

これが科学的思考の基礎です。

ロジカルに整理

論理構造での整理

もう少し、論理構造で整理してみます。

効果があると考えた場合

空間除菌製品からは消毒成分がでている
 ⇒ 消毒成分は人体には悪影響を与えず、殺菌やウイルスにだけ消毒効果を発揮する
 ⇒ 故に、空間除菌製品は有効である

効果がないと考えた場合

空間除菌製品ではしぶき(飛沫)に対して有効でない
 ⇒ ウイルス感染の多くがしぶき(飛沫)である
 ⇒ 故に、空間除菌製品は有効でない

検証フェーズ

ここまで来れば、論理構造で整理した仮説に対して、Googleで個別に検索すれば良い段階に入ります。
思考の正しさを検証するのです。

  • 空間除菌における消毒成分は何なのか?
  • その消毒成分はどれくらい強力なのか?
  • 消毒成分は人体に悪影響が無いのか?
  • しぶき(飛沫)に対する消毒効果はあるのか?

それでは、上記2つの論理構造に対して出てくる疑問に関して、実際に見てみましょう。

実際に調べてみると

ここでは別に空間除菌的なアレの確からしさを検証したいわけではなく、あくまでもロジカルシンキングで考えた時に、どう整理できるか?を示したいだけなので、細かい部分ははしょります。

調べてみると答えは簡単です。

消毒成分は「次亜塩素酸」、漂白とかで使う塩素ですね。
多くの人にとってなじみの物です。
確かに消毒効果があり、高濃度の塩素は室内のカビなどを撲滅させたりすることができるなど、強力なものもあります。

浴槽の掃除で使って、気分が悪くなった経験がある方もいるでしょう。
そう、人体に悪影響が出ます。
つまり、確かに消毒効果はあるが、人体にも悪影響をあたえる、人体に悪影響をあたえないレベルの濃度だと消毒効果が小さい、ということがすぐにわかります。

加えて、しぶき(飛沫)に関しても同様で、効果が明らかにない、ということがすぐに調べてわかるはずです。

最後に

検証、というと小難しく感じます。
実際、慣れていないとロジカルに物事を考えるのは、まあまあ大変でしょう。
考えられたとして、論理構造で整理し、示すことができるようにするのも同様に大変です。

しかし、ロジカルシンキングの効用として、自分自身の知識が及ばない領域でも、疑問を整理し、検証するだけのベースを構築できる点を指摘できます。

会社として、空間除菌的なアレを購入している所もあるかと思いますが、ロジカルに考えられれば、科学的な知識が無かったとしても、効果が無いと推測ができ、無駄な経費を使わずに済んだはずです。
人間が知れることには限りがあるので、何も別に空間除菌的なアレに対する知識が無いといけない、とは言っていません。

大事なのは、ある商品やサービスがうたっている、その効果に対する論理構造が納得の行くものなのか、検証できるものなのか、を考えることです。
ロジカルシンキングは身を守るのです。

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【今日のフェルミ推定】インフルエンザの予防接種はコスパが良いか?

今回の「今日のフェルミ推定」はインフルエンザの予防接種のコスパ試算です。
個人の視点と、企業の視点(会社で補助すべきか否か?)のそれぞれで考えてみます。
それでは、見ていきましょう。

(参考)フェルミ推定とは

フェルミ推定をご存じない方は、別で検索いただくか、下記記事も参考にしてみてください。

インフルエンザの予防接種の状況

参考までですが、インフルエンザの予防接種を受ける人は4割超ほどです。

インフルエンザの予防接種に関するアンケート n=2,000 2019年

予防接種を受けない人は、その理由の3番目(事実上2位タイ)に「費用が高い」「費用が高そう」をあげており、27%ほどです。

インフルエンザの予防接種に関するアンケート n=2,000 2019年

お題:インフルエンザの予防接種はコスパが良いか?

あなたは、インフルエンザの予防接種を受けようか否かを迷っている状況です。

今までかかったことがあるない関係なく、とりあえず時間的にも金銭的にも問題が無いとします。

つまり、純粋にインフルエンザの予防接種を受けるためにかかるコストと、万が一かかった時に失う時間との比較で考えてみて下さい。

試算

それでは、試算していきます。

感染率の推測と、かかってしまった場合に失う時間の見積もりがポイントでしょう。
感染率はざっくり10%、失う時間は3日×16時間の合計48時間とします。
時間価値は日本人の平均給与から逆算して2,000円を設定します(これは他の推定でも使用している)。

計算式は次の通りになります。

インフルエンザに感染した場合の損失
 = 感染率 × 失う時間 × 時間価値
 = 10% × 48時間(3日×16時間) × 2,000円
 = 9,600円

予防接種にかかる費用は、直接の費用だけが注目されますが、当然、受診にかかる時間についても加算すべきでしょう。
計算式は次の通りになります。

予防接種にかかる費用
 = 直接の費用 + 受診にかかる時間 × 時間価値
 = 4,000円 + 2時間 × 2,000円
 = 8,000円

比較すると、9,600円 > 8,000円なので、インフルエンザにかかってしまった場合の損失の方が大きい、つまり予防接種をした方がよい、と考えられます。
少なくとも損はしなさそうですので、感染して苦しむ際の苦痛損失を考慮すると、むしろ安いと言ってよいのではないでしょうか。

なお、実際の感染率は約9.7%のようです。
これは、厚生労働省の資料を元に、「人口 ÷ 患者数」の計算式で算出しています。
加えて、実際の直接費用は3,631円とのことです。

補足すると、単純に感染率で考えるのではなく、実際には感染率と発症率で考えなければ正確性に欠けます。
感染率に関しては、国立感染症研究所の資料ではざっくり30%ほど、発症率は日本臨床内科医会の資料ではざっくり40%ほどとなっています。
つまり、30%×40%で、上記で言う「感染率」で換算すると約12%となり、少なくともフェルミ推定で考えるベースの数字としては納得感のある数値と言えます。

見方を変えてみる:企業は予防接種の補助をすべきか?

上記の試算は難易度が低かったと思います。
これでは面白くないですね。

見方を変えて、企業の総務・人事の担当者の立場で考えてみましょう。
会社で、予防接種の補助をすべきか否かです。

結論を言うと、予防接種費用の補助はコスパが良いのでやった方が良い、です。

予防接種の効果には「有効率」という考え方があります。
こちらはここで解説すると長くなってしまうので、別で検索ください。
ようは、予防接種をしても、必ずしも効果があるわけではない、ということです。

この有効率の考え方と、上述の感染率、発症率を含めて、従業員数100人の企業でシミュレーションをしてみます。
会社内での接種率ごとに、発症者数が下記の表のように変化していきます。

前提

  • 社員数 100人
  • 有効率 70.0% 諸研究より
  • 感染率 30.0% 国立感染症研究所より
  • 発症率 40.0% 日本臨床内科医会より

これをベースに費用対効果を算出します。

接種率目標を70%とすると、約5人、発症者を減らせる計算になります。
補助額を3,631円で設定します。
感染した場合、従業員を1週間休ませなければいけないので、5営業日分の労働力ロスです。

会社補助負担額
 = 100人 × 70% × 3,631円
 = 254,170円

労働力ロス額
 = 5.1人 × 8時間 × 5営業日 × 人件費単価2,000円
 = 408,000円

シミュレーションの結果、明らかに会社で予防接種の負担額を補助した方が良い、ということになります。

労働力ロスが発生したとしても、休ませている間は給料が発生しないから、いる人で何とかカバーすれば実額損失は無い、という考えでも良いのですが。
現代の企業経営者に対する目線で考えれば、明らかなブラック思考ですよね。

とりあえず、個人レベルでも、企業レベルでも、インフルエンザの予防接種はコスパが良い、ということでまとめさせていただきます。

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【今日のフェルミ推定】ヒゲ脱毛は時間節約につながりコスパが良いか?

毎朝ヒゲを剃り、スーツを身にまとい出勤する。
どうしても仕事の関係で、そのような生活をしている方が大勢いるでしょう。
ヒゲ剃りは面倒です。
いっそのこと脱毛をしてしまえば?と思ったことがある人もいるでしょう。
今日は、このヒゲ脱毛に関して、コスパが良いか否かを試算してみます。

(参考)フェルミ推定とは

フェルミ推定をご存じない方は、別で検索いただくか、下記記事も参考にしてみてください。

お題:ヒゲ脱毛は時間節約の観点でコスパが良いか?

会社はリモートワークをやらない、ヒゲも剃らなければいけない。
あなたはそんなサラリーマンだとします。

ヒゲは濃く、毎日のことで手馴れてはいるけれども、最低でも5分はかかってしまう。

そんなある日、永久脱毛の広告を見ました。
お値段は、全部で20万円です。

そのような前提です。
さて、ヒゲ脱毛は時間節約の観点でコスパが良いでしょうか?

コスパ試算

これまでは市場規模や事業規模を推定してきました。
つまりマクロな試算ですね。

これを応用して、ちょっとしたことの投資判断に役に立たないか?考えてみます。

ようは、生涯の中でヒゲ剃りにかかる時間から換算される金額的価値と、永久脱毛にかかる費用との比較になります。

計算式は次のようになるでしょう。

生涯の中でヒゲ剃りにかかる金額的価値
 = 1回あたりのヒゲ剃りにかかる時間 × 年間あたりヒゲ剃りの回数 × 現役で働く期間(年数) × 時間価値

ヒゲ剃りにかかる時間を5分、1年に働く労働日数を260日、現役でいるであろう残り期間を30年、時給換算の時間価値を2,000円として、上記式にあてはめてみます。

生涯の中でヒゲ剃りにかかる金額的価値
 = ヒゲ剃りの時間5分/回 × 年間260回 × 30年 × 時給換算2,000円
 = 130万円

結構な金額です。
永久脱毛のコスト20万円と比較しても圧倒的な差があります。
永久脱毛という投資にかかる回収期間も5年程度で済みます。

投資回収期間
 = ヒゲ脱毛のコスト200,000円 ÷ ヒゲ剃りの時間価値(43,333円/年) = 約5年

結論

数字上は圧倒的に明らかな結果となりました。

ヒゲに対する憧れとかが無いのならば、早々にヒゲ脱毛をした方がよいでしょう。
平日の朝の5分を確実に確保ができます。
実際は5分以上の時間がかかるものなので、時間節約には間違いなく有用です。

これは一種の価値観や好みも混じってくる話ではあるので、万人におすすめするものではありません。
しかし、過去の時間を買い戻すことはできません。
将来の時間を買う、という観点で若い内に、早々に永久脱毛という投資をするのは、十分に価値のある検討だと言える
でしょう。

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【今日のフェルミ推定】人工肉(培養肉)への参入は儲かるか?市場規模は?

環境志向・健康志向の高まりと、科学技術の発展を背景に、培養肉による代替食品(人工肉)が開発されはじめています。
この培養肉市場への参入は有りなのか無しなのか?
フェルミ推定をベースに考えていきましょう。

(参考)フェルミ推定とは?

フェルミ推定については、下記の記事も参照し、イメージを掴んでいただければと思います。

お題:代替食品(培養肉)市場はどれだけのサイズ感を見込めるか?

生理的な拒否感が大きそうな培養肉ですが、アメリカを中心に欧米では一定のマーケットができはじめています。
食肉の生産コストは高く、また環境負荷も大きいため、日本もいずれは培養肉が一般的になる時が来るでしょう。

では、仮にあなたが食品メーカーに務めていて、最新技術に関連するポジションについていたとします。
培養肉市場に参入するでしょうか?

とりあえず、生理的なものは脇においておいて、市場規模だけで考えてみましょう。

フェルミ推定

まず、培養肉が普及しはじめた段階と普及した段階で考えた時、そしてその中間で考えます。
アーリー、ミドル、レイターですね。

アーリー期

アーリー期は、本当にごくごく一部の極めて関心が高い層が、高い値段を払って購入・消費するようなイメージになるでしょう。
計算式は次の通りになります。

アーリー期の市場規模
 = 人口 × 健康や健康志向に極めて関心が高い層 × 培養肉への関心も高い層 × 購入単価/日 × 消費ペース

それぞれ仮でパラメータを当ててみると、下記の通り、125億円がざっくり見込めます。
テストマーケティングとしては、十分すぎるほどのサイズ感と言えます。
週1消費ではなく、月1消費としても約29億円ですので、初期の市場形成段階としては良い数字でしょう。

アーリー期の市場規模
 = 人口1.2億人 × 関心度極めて高い率1% × 培養肉高関心率20% × 1,000円/日 × 52日(週に1回消費)
 = 約125億円

ミドル期

ミドル期では、値段が下がり、そこまで関心が高くない層も買うような想定になると思われます。
関心無し層、中間層、高関心層の3パターンで分けて考え、それぞれざっくりとパラメータをはめてみます。
すると、市場規模としては約677億円となり、マーケットとしては大企業でも狙うに値する数字感になってきました。

ミドル期の市場規模
① 人口 × 健康や環境志向への関心度0%(60%) × 培養肉関心率(0%) × 0円 × 0日 = 0円


②人口 × 健康や環境志向への関心度50%(39%) × 培養肉関心率(5%) × 300円 × 52日 = 約365億円


③人口 × 健康や環境志向への関心度100%(1%) × 培養肉関心率(20%) × 500円 × 260日 = 約312億円


① + ② + ③ = 約677億円

レイター期

レイター期になると、市場のあり方が大きく変わると推測されます。
具体的には、加工食品や、ひき肉などに、培養肉がまざるような状況です。

この場合、食肉市場全体のうち、単価の安い培養肉が〇〇%の割合で構成される、というようなイメージ感になると考えられます。
まずは食肉市場の規模を考えます。

食肉市場規模
 = 人口 × 1日あたりの肉消費額 × 365日
 = 1.2億人 × 100円 × 365日
 = 4兆3,800億円

そして、培養肉が最終的に30%混ざるような構成で考えます。
(現在でも、植物性タンパク質が食肉加工品に当たり前のように含まれているので、これくらいはいくだろうと推測。)

そうすると、下記の通り約1.3兆円の市場規模が想定されます。
結構な数字です。

レイター期の市場規模
 = 食肉市場規模 × 培養肉添加割合
 = 4兆3,800億円 × 30%
 = 1兆3,140億円

実際の数値をはめてみる

まずリンク先資料の通り、現時点での世界の培養肉市場1,200億円と推計されているようです。

欧米を中心としたアーリー期と言えるので、仮に日本で培養肉を販売した場合、10%位まではアーリー期でも取れるであろうと考えた場合、125億円という推計は、かなり良い線いっているのではないでしょうか。

ミドル期も同様の話で、培養肉の市場は年間約8%で成長していくことを踏まえると、時間はかかるにせよ約677億円は到達しそうです。
普及に伴う価格の低下と、味・品質の向上、イメージ感の改善次第で、普及スピードはあがるでしょう。

なお、食肉市場の2020年時点の市場規模は約3兆円とのことです。
推測の4兆3,800億円からは、まあまあ外れてしまいましたが、それでもレイター期の割合を30%とした場合、市場規模が約1兆円ですので、結構なサイズ感です。

最後に

培養肉の普及の努力は、特に生理的な嫌悪感の払拭を中心に大変なものになるでしょう。

しかし、ここまで見てきた通り、その市場規模はかなりのサイズ感が見込めます。
仮に10数年後、5社程度の主要プレイヤーで培養肉市場を競うような状況になっていたとしても、その事業規模は2,000億円ほどを見込めます。

大企業でも、2,000億円の売上高は相当なものです。

結論、現時点でこの先未来を見越して、培養肉の開発は参入する価値あり、と考えられます。

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【今日のフェルミ推定】ウーバーイーツ配達員向けアプリ開発は儲かるか?

ウーバーイーツの配達員を見かけることが、すっかり一般的になってきました。
配達員の仕事は、1件あたりの単価が低く、収益的に非常に厳しいと聞きます。
それでは、ウーバーイーツの配達員を支援するアプリ開発はどうでしょうか?
ウーバーイーツ配達員向けアプリ開発は儲かるか?を考えていきます。

(参考)フェルミ推定

フェルミ推定とは、実際に調べることが困難な数字や、感覚的に予測するすることが難しい数字を、論理的に算出する作業のことです。
大きい(または小さい)数字を、要素別に因数分解し、推測可能な(または既に知っている)情報の組み合わせにします。

有名なフェルミ推定例題としては「日本にある電柱の数は何本か?」というものがあります。

日本の国土は40万㎢であり、2割が都市、8割が地方とし、都市部は50m間隔に電柱が立っていると推測。
地方部は200m間隔に電柱が立っているとした場合。
都市部は50m×50mで2,500㎡に1本の電柱があり、地方部は40,000㎡に1本の電柱がある計算になります。
この例題の場合、日本の電柱の本数は、4,000万本と推定されます。
(実際の電柱の本数は3,600万本)

(40万㎢ × 20% ÷ 2,500㎡) + (40万㎢ × 80% ÷ 40,000㎡) = 4,000万本

フェルミ推定では、数字があっているあっていないは大した問題ではなく、その推論の過程が重要になります。

お題:ウーバーイーツ配達員向けアプリ開発の事業規模を求めよ

町の中を走っているウーバーイーツ配達員を見て、あなたは思いました。

「大変そうだなぁ。彼らを支援するようなアプリを開発できたら、彼らも助かって、自分も儲けられるかも。どうだろう?」

ウーバーイーツ配達員向けアプリを開発した場合、どれだけの事業規模を見込めるでしょうか?
イメージとしては、自転車に取り付けて、ナビゲーションや効率的な配送ルートを指示してくれる、一々ウーバーイーツの管理画面と別アプリをがちゃがちゃしなくても一連の操作がスムーズにできるスマートフォン・タブレットアプリです。

ビジネス向けアプリになるので、月額課金制のサブスクリプション型のサービスとなるでしょう。

フェルミ推定

まず一番最初に考えなければいけないのがウーバーイーツ配達員の人数です。
次に、アプリの使用率で、加えてそこから課金率月額課金額を推測します。

事業規模は下記の計算式で求められるはずです。

ウーバーイーツ配達員向けアプリ事業規模
 = ウーバーイーツ配達員人数 × アプリ使用率 × 課金率 × 月額課金額 × 12ヶ月

ここで一番推測がしづらいのがウーバーイーツ配達員の人数です。
東京、大阪、名古屋など、都市部に限定して存在し、主要な駅に5人ずつ程度、配達員がいると仮定します。
その他のパラメータをざっくり過程で置いて考えると、次のようになります。

ウーバーイーツ配達員向けアプリ事業規模
 = 配達員5,000人 × アプリ使用率30% × 課金率50% × 課金額300円/月 × 12ヶ月
 = 270万円/年

結構、小さいですね。

もう少し、市場を大きく捉えられないか?

ウーバーイーツ配達員の実際の人数に関して、統計的な資料は見当たりませんでした。
それでも大きな問題はありません。
年額売上高が270万円というのは小さすぎるので、想定に根本的な誤りがあり10倍の規模だったとしても、少なくとも法人で取り組むサイズ感でないのは明確だからです。

ここでは視点を変えて、「もう少しスケールさせられる方法は無いか?」を考えてみます。

まず、食事の配達を考えた時に、「出前館」という大手の存在が浮かびます。
ウーバーイーツに限定せず、食事宅配を考える方々向けのアプリを考えるのです。

また、リンク先の記事を見ると、何人もの配達員を束ねてグループで活動している団体も存在するとのこと。
グループ単位で活動している配達員向けアプリも考えられます。
この場合、サブスクリプション型モデルでいうならば、上位プランを設定できるでしょう。

もう少し事業の範囲を広く考えるならば、既存のお弁当宅配業者向けの、最適配送ルートの自動案内のアプリなども考えられます。

一応、ここでは、上記2つでパラメータを再検討してみます。
出前館のような別の配達サービス込みで配達員を10,000人と仮定します。

配達員向けアプリ事業規模
①個人単位での配達想定
 = 配達員7,000人 × アプリ使用率30% × 課金率50% × 課金額300円/月 × 12ヶ月
 = 378万円/年 
②グループ管理機能有り
 = 配達員3,000人 × アプリ使用率50% × 課金率100% × 課金額500円/月 × 12ヶ月
 = 900万円/年 


① + ② = 1,278万円/年

これでも、事業規模は小さいと言わざるをえません。
ただでさえ配送単価が低いこのビジネスで、そこまで有料課金額を増やせるとは思えません。
(更に10倍の値段でも使いたくなるような神アプリが開発できるなら別ですが。)
配達員の人数が仮に10倍の10万人だったとしても、ようやく年間1億円の売上高です。

まとめ

こうしてみた時に、ウーバーイーツの配達員向けアプリ開発は、法人レベルでは割に合わないと結論付けられます。

まず大前提として、出前館などの別の配達サービスにも対応できることが必要です。
加えて、課金額を増やせる、上記プランの設計も必須です。
それでも、小規模事業者の売上高レベルです。

仮に取り組むとしたら、ウーバーイーツの配達員が複数人所属するグループで、他の配達員やグループでも使えるようなアプリを開発し、業務効率化も図るし、自分たちの収益の足しにもするようなイメージでしょう。
これでしたら、かなり現実味を帯びてきます。

配達のノウハウや困りごとをよく知っている配達員当事者がアプリ開発に取り組むのは、一考の価値があるかもしれません。
食事配達の市場規模は年々増加していくと考えられるので、先駆的に開発できれば、結構な収益基盤になるでしょう。

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【今日のフェルミ推定】スマートスピーカーのアプリ(スキル)開発は儲かるか?

AmazonのAlexaや、GoogleのNestなど、スマートスピーカーが少しずつ増えてきました。
スマートスピーカーでは「スキル」と言うアプリが存在します。
このアプリ(スキル)開発は儲かるのか否か?
これを考えていきます。

(参考)フェルミ推定

フェルミ推定とは、実際に調べることが困難な数字や、感覚的に予測するすることが難しい数字を、論理的に算出する作業のことです。
大きい(または小さい)数字を、要素別に因数分解し、推測可能な(または既に知っている)情報の組み合わせにします。

有名なフェルミ推定例題としては「日本にある電柱の数は何本か?」というものがあります。

日本の国土は40万㎢であり、2割が都市、8割が地方とし、都市部は50m間隔に電柱が立っていると推測。
地方部は200m間隔に電柱が立っているとした場合。
都市部は50m×50mで2,500㎡に1本の電柱があり、地方部は40,000㎡に1本の電柱がある計算になります。
この例題の場合、日本の電柱の本数は、4,000万本と推定されます。
(実際の電柱の本数は3,600万本)

日本の電柱の本数
 = (40万㎢ × 20% ÷ 2,500㎡) + (40万㎢ × 80% ÷ 40,000㎡)
 = 4,000万本

フェルミ推定では、数字があっているあっていないは大した問題ではなく、その推論の過程が重要になります。

お題:スマートスピーカーのアプリ(スキル)の市場規模を求めよ

スマートフォンやタブレットのアプリ市場は完全なレッドオーシャン状態に陥っています。
市場規模は十分な大きさですが、大企業から個人まで、様々なプレイヤーがしのぎを削っている世界です。

あたなは、そのような状況を見て、スマートスピーカーのアプリ(スキル)市場ならば、まだ普及率が低い段階なので、アプリ(スキル)開発に食い込めるのでは?と考えました。

それでは、スマートスピーカーのアプリ(スキル)の市場規模を求め、そこにチャレンジする価値があるか否かを考えていきましょう。

フェルミ推定

まず考えなければいけないのが、スマートスピーカーを使っている人が一体全体どれだけいるのか?です。
つまりスマートスピーカーの普及率がどれくらいか?の推測になります。

次に、マネタイズしなければいけないわけですから、スマートスピーカーを使っている人の中で、いったい全体どれだけの人が課金をしてくれるのか?を推測します。
その上で、じゃあ課金をしてくれるのならば、いくらなら課金をしてくれるのか?が問題になります。

これで、まずお題であるスマートスピーカーのアプリ(スキル)の市場規模全体を推測できます。
計算式は下記の通りになります。

スマートスピーカーのアプリ(スキル)の市場規模
 = 日本の人口 × 日本のスマートスピーカー普及率 × 平均課金率 × 平均課金額

これを踏まえて、じゃあ自分たちが参入した時に、儲かるか否かを考えます。

まずは、そうはいっても同じようなことを考える人が大勢出てくるであろうから、シェアとしてはどれだけとれるのか?仮でよいので設定します。

スマートスピーカーらしく、例えば、多様で高音質な環境音を流すアプリ(スキル)を想定して考えてみると、計算式は次のように設定できるはずです。

想定最大事業規模
 = 市場規模 × シェア率

市場規模に関して、概算で数字をあてはめて見ます。

市場規模
 = 人口1億2千万人 × 普及率5% × 平均課金率10% × 平均課金額300円/月 ×12ヶ月
 = 21億6千万円/年

この約22億円がアプリ(スキル)市場における、顧客の財布の金額になります。
これにシェア率をあてはめてみます。
様々なアプリ(スキル)が出てくると想定され、課金しやすい領域はプレイヤーが集まりやすいだろうことも想定し、かつまだ先駆者なので一定市場をとれると考え、トータル顧客の財布の内0.1%をとる目標を設定します(ざっくりでいいんです)。

事業規模
 = 市場規模21億6千万円 × シェア0.1%
 = 216万円/年

年間あたり216万円の売上をとれるかもしれない、とざっくり推測することができました。
まあまあ優秀な開発者が一個人でとれる数字としては、十分に良い数字ですし、感覚値的にも、まあそんなもんだろうな、という印象です。

実際の数値をはめてみる

それでは、実際に個別の数字を調べて、あてはめてみましょう。

スマートスピーカーの所有率5.9%

スマートスピーカーの有料アプリ利用率はデータが無かったのでスマートフォンアプリへの課金率(22.2%)を参考に、ざっくり半分の11.1%を設定。

課金をする人の課金額は月当たり約1,100円(加重平均)。

これらの数字をあてはめると、市場規模は下記の通り計算されます。

市場規模
 = 人口1億2千万人 × 普及率5.9% × 平均課金率11.1% × 平均課金額1,100円/月
 = 103億7千万円/年

イメージしているよりかは、市場規模は大きいかもしれません。
ただ、スマートフォンアプリへの課金との食い合いになる印象もあるので、実際は「推測」項の約21億円/年の方がしっくりはきます。

まとめ

こうしてみた時に、スマートスピーカーのアプリ(スキル)市場で稼ぐのは、あまり現実的ではないと結論付けられます。

仮に本当に年間216万円の売上をとれたとしても、法人でやるような事業サイズとは言えないでしょう。
ブランディングやPR活動の一環としてやるのでなければ、取り組み意味があるとは思えません。

スマートスピーカーの普及率が増えていくと考えた場合でも、プレイヤーも増えるので、相対的にシェア率は減るでしょう。
アプリ(スキル)開発ができる一個人が、趣味の延長で開発するような市場サイズ感です。

仮に儲けようとしたいのであるならば、最初から世界の数字を狙う前提が欲しいです。
アプリ(スキル)開発ができる、各国語での翻訳のプロデュースができる、開発したいアプリ(スキル)そのものへの知識がある。
これらが全部揃っている前提で、ようやく億円単位のサイズが目線に入ってくる。
そんなレベルです。

以上の通り、スマートスピーカーのアプリ(スキル)市場は、稼ぐのには向いていない市場と推測されます。

フェルミ推定は、このように、見当がつかない数字を推測するのに便利な考え方です。
数字が正しいか正しくないかは重要ではなく、推論の過程と、そこから導き出される、ざっくりとした数時感が重要です。
新規事業を考える経営者や企画業務の方、一個人で稼いでいくフリーランスの方には必須性の高いスキルと言えます。

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ゼロリスク症候群から脱却しよう~大事なのは定量思考~

世の中には、リスクを過剰に評価するあまり、判断をあやまる人が大勢います。
その結果論として多大な損失を被るという事例も多くあります。
ここではゼロリスク症候群に脱却の方法とあわせて解説していきます。

ゼロリスク症候群とは

ここで言うリスクとは、一定程度、危険が発生する確率が予測できるリスクや、危険の発生確率が読めない不確実性も含み、まとめてリスクと呼ぶことにします。

リスクは怖いです。
損をするのは誰しもが嫌がりますから、当然の話です。
そのため、リスクを低減するための活動は当たり前に行われます。

リスクがおきる可能性を100%から10%に減らすエネルギーと、10%から1%、1%から0%に減らすエネルギーをそれぞれ比較すると、どうなるでしょうか。
当然、下記のように、リスクを減らそうとすればするほど、必要なエネルギー、つまりコストが高くなります。

1%から0% > 10%から1% > 100%から10%

あくまでも理性で物事を考えれば、どこかで割り切って考え、意思決定を下す必要があります。
しかし、人間という生き物は不思議なもので、コストを度外視してゼロリスクを求める傾向があります。
リスクの絶対値、つまり期待値を見ず、小さなリスクの割合を更に減らすことを求める傾向があるのです。
特に、1%から0%の領域にこだわる点が指摘できます。

リソースが無限にあり、コストをいくらでもかけられるのであれば、リスクは0%に近い方が良いでしょう。
しかし、現実社会で0%のリスクなど存在しませんし、求めても意味がありません。
それでも人間は0%のリスクにこだわってしまうのです。

それにより、チャレンジをしないことにより幸せな人生を送れなかったり、既存事業だけにしか投資しない会社が衰退したり、エネルギー政策においてポートフォリオを誤り環境負荷を高めたり、感染症において対策を誤り間接的被害を広げたりするのです。
つまり、0%のリスクにこだわることは社会に対して多大なコストをかけてしまうのです。

この、本来の目的を忘れて、手段が目的化してしまい、0%のリスクにこだわることを「ゼロリスク症候群」と呼びます。
リスクは正しく認識し、対処する必要があります。

どういう要素に人はリスクを感じるのか?

そもそもとして人は、どのような要素や状況に対してリスクを感じるのでしょうか?
『「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書)』という書籍の中で解説されていた研究内容によると、人々はリスクを感じる10の認知因子があるということです。

10のリスク認知因子事例
(1)恐怖心恐怖により発生確率が低いことに対してリスクを過剰評価する
(2)制御可能性自分でコントロールできないことのリスクを過剰評価する
(3)自然か人工か添加物が含まれた食品を怖がり、自然の食べ物を好む
(4)選択可能性選択肢が少なかったり選べないとリスクを過剰評価する
(5)子どもの関与子どもなど自分の親族が関与するとリスクを過剰評価する
(6)新しいリスク新型コロナウイルスなどの新しい脅威を過剰評価する
(7)意識と関心メディアによる報道などによりリスク評価を誤る
(8)自分に起こるか自分が損失をうけるリスクを過剰評価する
(9)リスクとベネフィットリターンがあるリスクはリスクを過少評価する
(10)信頼リスクの説明をする人に対する信頼が低いとリスクを過剰評価する
10のリスク認知因子

直近の新型コロナウイルス騒動に照らし合わせて考えると、非常に当てはまります。

  • 恐怖心:感染し、最悪死に至る確率を考えると、その確率は非常に低い
  • 制御可能性・選択可能性:どうしてもリモートワークができない場合に感染リスクを制御しづらい
  • 新しいリスク:正に該当
  • 意識と感心:メディアにより繰り返し繰り返し報道されている
  • 自分に起こるか:自分が感染し、多大な健康被害をうける可能性がある
  • 信頼:名だたる大企業が率先してリモートワークに対応するなどしている

この通り、10のリスク認知因子の多くに当てはまっているのです。
インフルエンザなどでは多くの人がリスクを過小評価している点を考慮すると、「意識と感心」、つまりメディアに大きな原因があることが推測されます。

このように、どのような要素や状況に対して人がリスクを感じるのかがわかれば対策のしようがあります。

定性思考から定量思考へ

上述、10のリスク認知因子別に、どのようにリスクに対して考えていくかをまとめました。

恐怖心

リスクの発生確率を定量的に把握し、冷静に見極めましょう。

飛行機が墜落することを怖がる人がいたとしましょう。
行機が墜落する確率は0.0009%と言われています。
一方、自動車関連の交通事故に遭遇する確率は1年で0.5%程とされています。
飛行機を怖がるより、日常的に交通安全に気を配るべきです。

雷にうたれることを怖がる人がいたとしましょう。
生涯のうち、雷にうたれる確率は0.0000001%です。
心配しても仕方がありません。

制御可能性、選択可能性

リスクをコントロール下に置くか、選択肢を増やすか、気にしないと素直に割り切りましょう。

アンコントローラブルな事象は世の中たくさんあります。
アンコントローラブルなことに気を取られても意味がありません。
この領域はあくまでも、どれだけのリスクがあるのか、定量的把握するにとどめて、あとは割り切りましょう。

それ以上に、リスクを自身のコントロール下におき低減活動を図れたり、選択肢を増やし、よりリスクが少ない方法をとれる領域にフォーカスすべきです。

自然か人工か

天然の物は安全で人工物は危険、という考えは捨てましょう。

これは特に食品やエネルギー問題で顕著です。
天然の植物にも毒を持つものは多くありますし、肉や魚介類には寄生虫がいる場合や、純粋に食中毒リスクもあります。
うま味成分を、「グルタミン酸ナトリウム」と聞いたら、突然拒否反応を示す人もいますが、これはただの無知、化学アレルギーです。

また、安全なものであっても摂りすぎれば健康被害を起こす場合があります。
大事なのは、どれだけ摂らねばならないのか、どれ以上は摂ってはいけないのかを定量的に把握することです。

子どもの関与

気持ちはわかりますが冷静になりましょう。

私も人の親なので、重々理解はできるのですが、大事なのは定量的な情報です。
感情に左右されて、判断を誤るのは愚かです。

新しいリスク

確率が読める部分にフォーカスして対処し、読めない部分は素直に割り切りましょう。

確率が読める部分に関しては、冷静のその確率を定量的に把握し、そこにフォーカスしましょう。
確率が読めない部分は、気にしても仕方が無いので、素直に割り切りましょう。
制御可能性、選択可能性と同様の考えです。

意識と関心

メディアの報道や流行は偏っていると認識しましょう。

繰り返し報道されている、人々が盛んに言っている内容であっても、それが真実であったり、本当に重要なこととは限りません。
常に偏っている、間違っている、という前提にたって、溢れる情報に接するようにしましょう。

自分に起こるか

むしろ積極的にリスクテイクをすべきです。

特にビジネス領域に関して言えることですが、虎穴に入らずんば虎子を得ず、です。
チャレンジなしに成長や成功はありえません。
とれるリスクは積極的にとり、リターンの獲得を狙うべきです。

リスクとベネフィット

リスクとリターンのバランスを冷静に、定量的に把握しましょう。

ベネフィット、つまり利益に目がくらみリスク判断を誤ることが無いようにする必要があります。
どれだけのリスクがあって、それに対してどれだけのリターンが得られるのか。
このバランスを評価したうえで、リスクテイクするのか否かを意思決定するようにしましょう。

信頼

誰が言ったか、ではなく、何を言ったか、で判断するようにしましょう。

自分が信頼する人であっても間違える可能性があります。
何を言ったか、が重要です。
何とか博士とか、有名な芸能人とかの言っている事も基本的に疑ってかかる必要があります。
リスクに対する説明が、一個人の経験や推測によらず、あくまでも事実に基づいた定量的なものなのかが重要です。

定量思考を身に着けよう

これまで書いてきた通り、リスクというものは0%にはできません。
繰り返し書いてきましたが、大事なのはリスクを定量的に把握することです。

何がどれだけ危険なのか?
リスクを下げる、もしくはリスクを一定のラインに維持するには、どれだけのエネルギー、つまりコストを投下する必要があるのか?

ゼロリスク症候群に陥っている人は、どうしてもリスクはある、ということにこだわってきますが、そこを気にしても仕方がありません。
感情的にリスクを忌避するのではなく、正しくリスクを評価し、とれるリスクはとりリターンを得ていくべきです。

繰り返しますが、大事なのはリスクを定量的に把握すること、つまり定量思考です。

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なぜ外出自粛をしない高齢者に「若者はダメだ」と言われるのか?~素敵に年をとるために~

社会が不安に陥っている中、その不安が世代間のいがみあいに飛び火しています。
テレビをはじめとしたメディアは「若者が外出自粛をしない」と報道し、一方、データは「高齢者こそ外出自粛をしない」ことが明確に示されています。
この現象を、古今東西で言われている「最近の若者はダメだ」と絡めて解説すると共に、どうすれば素敵な尊敬される年の取り方ができるのか考えていきます。

忙しい人向けまとめ

  • メディアでは外出自粛を行わない若者に対して批判する報道があふれている
  • 事実は、若者より高齢者の方が外出自粛を行わない行動をとっている
  • つまり、若者の方が模範的な行動をとっている
  • 高齢者には、自己評価が高いと他者評価が低くなる、という心理的な効果がある
  • さらに、記憶に対しても、自分たちに都合が良いようにバイアスがかかる
  • そうならないためには、心理的な効果があることを知る、事実を元に考える、視点を広くもつ、といった努力が必要

ここ最近のメディアの報道

まず最初に、ここ最近のメディアの報道をピックアップします。

そのうえで「若い元気な方々がウイルスを持っているか全然わからないままに、ライブハウスなどの密閉した空間に、密集し、密接に寄り合うという3つの条件が重なると感染が広がる傾向がある」と述べ、特に若者に対し、不要不急の外出を控えるよう呼びかけました。

NHK 「特に若者は控えて」東京都 不要不急の外出自粛を呼びかけ(2020年3月28日)

テレビ離れをしている若者にとって新型コロナウイルスはどこか他人事のようだった。都立学校の多くは5月のゴールデンウイーク明けまで休校措置が延期となり、都内大学の多くも同様の対応だという。多くの若者が不要不急の外出を止める気配はない。

文春オンライン コロナもかまわず渋谷・原宿に溢れる若者たち「バイトがないから」「春休みが超長くて」「免疫あるし」(2020年4月3日)

都内の大学に通うハルカさん(20、仮名)はそう言って、「結局死なないし」と笑う。3月中、大学は春休みシーズンだ。友人同士でオールでカラオケをしたり、シーシャ(水タバコ)バーに集まることもよくあるという。「シーシャって一台を数人で共有しますし、モロ濃厚接触」だが、気にする人はいないそうだ。

ビジネスインサイダー コロナ危機に大学生からは「飽きた」。“自粛疲れ”若者との意識格差どう埋める?(2020年3月25日)

女優の本田翼が4日、自身のYouTubeチャンネル『ほんだのばいく』で「3分半、私に下さい。」というタイトルの動画をアップロードし、特に若者に向けて新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた声かけを行った。本田は「今なら空いているから行こうとか、そういう気持ちで外に出ているのを聞いてがくぜんとしました」と軽はずみな気持ちで外出している人々の状況に驚きの様子を見せた。

ハフィントンポスト 本田翼さん、外出する若者に「がくぜんとした」 新型コロナ感染拡大防止に向けて声かける(2020年4月5日)

加えて、巣鴨の商店街の様子をうつした報道では、70代の男性が次のように語っていました。
「若者だけ家にいてくれるとありがたいと思うよ。だって若者いなきゃ感染しないんだから。」

このように、若者が如何に外出自粛をしないか、最近の若者はダメだ、という論調で報道されています。

それでは、客観的な事実を次に示します。

外出自粛をしないのは高齢者~これは事実です~

ここで示すデータは、東京都にて大規模な外出自粛が要請された3月27日~29日に行われたアンケート調査を集計したものです。
クロス・マーケティング社が行った調査で、2,500名の20歳~69歳の男女を対象にWeb上で行われました。

調査項目は、商業施設への買い物といった必要性の高い外出から、家族との外食、スポーツをする、といった不要不急性の高い項目に続き、友人付き合いからテーマパークや遊園地に行くまでの明らかに不要不急な8項目で調査が行われました。
次のグラフは、明らかに不要不急な外出8項目の年代別平均値になります。

クロス・マーケティングの調査よりMirizeRocketが作成

このグラフの通り、20代30代の若者と、それに加えて40代の中年層も明らかに外出を控えていることがわかります。
不要不急な外出を行った20代~40代は約14%です。

一方、不要不急な外出を行った50代は約20%、60代は約28%と、若者・中年層に比べて非常に多い数字が出ています。
特に、高齢男性が外出自粛を行わない傾向があり、加えて60代になると男女関係なく外出自粛をしない傾向が出ています。
その数、60代の約3人に1人が不要不急の外出をしているのです。

それでは、数字としては明らかに若者の方が高齢層より、外出自粛を行う模範的行動を行っているにも関わらず、「最近の若者はダメだ」と言われてしまうのでしょうか?

なぜ、「最近の若者はダメだ」と言われるのか?

免責~高齢層批判やメディア批判をしたいわけではない~

ここでは、別に世代間闘争をあおりたいわけでも、高齢層を批判したいわけでも無いことはご承知おきください。
あくまでも、「なぜ、このような現象が発生してしまうのか?」を知り、その理由・原因を自分自身のあり方に反映させ、自分自身の人生をより良くしていくことを目的としています。
客観的な事実から、どうしてもメディアや高齢層に対する批判的論調になりやすくなってしまうのは致し方ないのですが、それは決して主旨ではありません。

加えて、テレビや雑誌のようなメディアの購買層は主に高齢層に偏るため、どうしても顧客の意向を汲んだものにならざるを得ないのは、商業的にそうなので、それも致し方ないと考えています。
ですので、「なぜ、このような現象が発生してしまうのか?」に対する解として、メディアのあり方に言及することも行いません。
あえて一点だけ触れると、メディアのあり方を踏まえて、しっかりと情報リテラシーを高めて、自己防衛をしていこう、という点だけです。

若者は高齢層よりモラルが高い

まず、事実の再確認ですが、上述の通り若者は高齢層よりも外出自粛を行う、といった、都の要請に対して従順で、かつ模範的な行動をとっています。

若者が高齢層よりモラルが高く、模範的な行動をとるのは日本の若者に限らず海外でも同様です。
今回の騒動とは別の調査にはなりますが、アメリカで行われた1万人以上を対象とした大規模調査では、性行動や飲酒・喫煙、非行行為などが、昔の若者より、今の若者の方が明らかに少ない、という調査結果が出ています。

これは、非行性の高い行為に限らず、読書のような模範的行為も同様です。
最近の若者は本を読まない、活字を読めない、と良く批判されますが、調査結果からは、30歳未満の若者は中高年層よりも本を読んでいることが示されています。

明らかに今現代の若者は、非行性の高い行動をとらず、模範的行動をとっているのです。
つまり、若者のモラルは高いのです。

高齢者には若者をダメだと思う心理的効果がある

カリフォルニア大学の調査が非常に興味深いです。
調査の結果から、「自己評価の高さ」が「若者評価の低さ」につながっていることが示されました。

のべ約4,000人の高齢者に対して行われた実験で、まず「自己評価」が行われました。
その後、「若者に対する評価」を行う、というものです。
この結果、「自己評価の高い」高齢者は、若者に対して低い評価を行っていました。

また、「読書を楽しんでいた」という高齢者は、「若者は本を読まない」と評価する傾向が強く、加えて「自分たちの世代はみんな本を読んでいた」と認識する(記憶している)傾向が極めて強いことが示されました。
つまり、記憶に対して明らかに誤ったバイアスがかかっているのです。

また、IQテストを絡めた調査も行われました。
IQテストでは、その結果は無視され、被験者にランダムでスコアが提示されました。
その結果、ランダムで「低い結果」が出た高齢者は、若者を低く評価しない傾向が出ており、逆に実際のスコアに関係なくランダムで「高い結果」が出た高齢者は、若者を低く評価する傾向が出ていました。

つまり、自己評価が高いと他者評価が低くなる、という心理的な効果があるのです。
さらにその心理的な効果には、記憶に対するバイアスも加わってしまうのです。

若い人たちが知るべきこと

私は幸いにも、素敵で尊敬できる高齢者の知り合いが多くいます。
若者を尊重し、あくまでも実力や実績を元に正当に評価するような方々です。
(それ以上に、そうでない高齢者も多く見てきましたが。)

この方々には、(全くゼロではないでしょうが)上述のような心理的な効果が見られません。
つまり、自分自身の努力により、心理的効果から身を守り、バイアスに縛られないことが可能になるはずなのです。

そのために必要なこととして、まずは自己評価が高いと他者評価が低くなる、さらに記憶に対してもバイアスがかかる、という事実を知りましょう。
事実を知っていれば、望ましくない行動を自分自身がとってしまった時に、反省をすることができる(はず)です。

また、常に事実をベースに考えることが重要でしょう。
客観的な事実をもって考えれば、そうそう判断を間違えることはないはずです。
現実に、事実ベース(ファクトベースとも言う)で行動できていない人が多く、世の中で混乱が起きています。
そのような行動を自分自身がとらないようにするために、事実ベースでの思考を身につけましょう。

視点を広く持つ事も重要です。
視座を高く持つだけだと、低い立場の人たちを見下しがちです。
立場や視点が、人によって全く異なる、ということを常に認識していれば、視座や立場の高低で人を判断しないはずです。

人は必ず年をとります。
そうであるならば、素敵で尊敬される老人になりたいものです。
努力でそうなれるならば、努力をするしかないでしょう。

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