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【今日のロジカルシンキング】農薬は身体に悪いか?

いつ頃からからはもうわからないですが、健康は高い関心を持って語られます。
そして健康な食材、安心な食材、という観点で「無農薬野菜」「有機野菜」というワードも頻繁にみかけます。
今日は、じゃあ「農薬」って身体に悪いの?という話を考えてみたいと思います。

切り口としては、農薬に対する専門的な知識、化学や医学に関する専門的な話抜きで、一般的に周知性が高いであろう情報のみで考えます。

なお、結論から言えば「農薬の有無を気にする必要は無い」になるのですが、これは別に、全ての農薬が完全に安全だから、ノーガード戦法でいいよ、という話では当然にありません。
我々の知らない所で、多くの研究者や役所の方々が、安全な農薬を開発し、安全な使用量や接種して問題が無いラインを定めてくれているからこその話であることは留意ください。

それでは本題に入っていきましょう。

お題

まずはこちらの記事を読んでみて下さい。

有機食品を食べると体内に残留する農薬の量が大幅に減ることが、最新の研究で改めて明らかになった。
農薬は、政府の決めた使用量が守られていても、日常的に摂取すると内臓機能や胎児・子どもの発育に予期せぬ影響を及ぼす恐れがあると指摘する専門家は少なくない。
そのため、農薬の摂取や蓄積をどうすれば防げるか世界的に関心が高まっている。
(中略)
食事を有機に切り替えると体内の農薬を劇的に減らすことができることを示した研究は、日本でも最近、報告されている。
(中略)
有機食品は世界的に需要が伸びており、とりわけ新型コロナウイルスの感染拡大以降は、消費者の健康意識や食に対する安全志向の高まりで、先進国を中心に人気が急速に高まっている。
ただ、日本ではまだ認知度が低く供給も限られているため、他の先進国と比べると消費者は手に入れにくいのが現状だ。

猪瀬聖氏「有機食品に農薬排出効果、研究報告相次ぐ」より

なるほど。

有機野菜を食すことにより、発がん性が疑われる物質の接種量・体内残留量を減らせる、という話です。

これだけ聞くと、恐ろしい話だ、有機野菜を食べなければ、と思うかもしれません。

それではここで、表題「農薬は身体に悪いか?」について考えてみましょう。

縛りとしては冒頭にも書いたように、農薬に対する専門的な知識、化学や医学に関する専門的な話抜きで、一般的に周知性が高いであろう情報のみで考えます。

農薬の有無を気にする必要は無い

まず、大前提として農薬の知識を軽くインプットしてみましょう。
農薬の専門知識の話では無く、歴史のお勉強です。
Wikipediaでググって見ると、次の記載があります。

化学合成農薬の登場

20世紀前半までは農薬の中心は天然物や無機物であったが、第二次世界大戦後になると本格的に化学合成農薬が利用されるようになる。

DDTと殺虫剤
1938年、ガイギー社のパウル・ヘルマン・ミュラーは、合成染料の防虫効果の研究からDDTに殺虫活性があることを発見、農業・防疫に応用された。
(中略)
いずれも高い殺虫効果があり、またたく間に先進国を中心に世界へ広がっていった。
(中略)

環境運動と農薬批判
1962年にレイチェル・カーソンが『沈黙の春』を発表し環境運動が世界的な関心を集めてからは、農薬の過剰な使用に批判が起こるようになった。
日本でも水俣病などの公害が社会問題となるなか1974年には有吉佐和子の小説『複合汚染』が発表され、農薬と化学肥料の危険性が訴えられた。
(中略)

残留農薬
毒性・残留試験などに基づいて各農薬・農産物ごとに許される最大残留濃度が決められ、これをクリアするように農薬の使用法が定められた上で登録され使用が可能になる。
残留農薬基準については、2006年5月より「残留農薬等に関するポジティブリスト制度」がスタートし、従来よりも残留農薬に対する規制が強化された。

食品に対する残留農薬は食品及び農薬ごとに一日摂取許容量(ADI)を基準に残留基準が定められており、基準を超えた農薬が検出された場合は流通が禁止される。

Wikipedia「農薬」より

これらをまとめると、次の知見が得られます。

  • 化学農薬は1940年前後で開発が活発化し、使われるようになった
  • 1970年前後で農薬に対する、健康懸念が高まり、各種規制・ルールの策定につながった
  • 現在は、残留濃度や一日摂取許容量が定められている

つまり、化学農薬が誕生してから約80年、各種規制・ルールが制定されてから約50年の月日が流れているのが現在、ということです。

そして現実問題として、農薬による死亡事故としては、下記のように推移しています。
(これは、「農薬 健康被害 件数」で検索。)

リスクマン「なぜ農薬を使うの? : 農薬の誕生」より(大元資料は農林水産省資料)

その他、諸々検索してみても、農薬による健康被害に関して「実験レベルのエビデンス」はあるものの、人体影響としては「懸念」レベルの話であり、具体として明確な健康被害が出ているか?というと、そのような話はヒットすることはありませんでした。
(もしかしたらあるのかもしれませんが、「悪魔の証明」という話もあり。)

それでは別観点で見てみましょう。
「寿命」です。

日本人の平均寿命は戦後、爆発的に伸びており、それこそ化学農薬が誕生した1940年頃から比較すれば+30歳、農薬に対する諸々の規制が強化された1970年頃から比較すれば+10歳以上の増加が見られます。

健康寿命も同様です。

あまり古い資料がないのですが、ここ十数年だけでも+1歳以上も健康寿命が延びています。

医療技術の発達等々と、農薬による健康被害の関係で、医療技術の発達等々の方がウェイトが大きいだけの可能性がありますが、上記の情報や資料を見る限りは、農薬による健康被害を気にする必要は無いように思います。

帰納法・演繹法的に考えると、入り口としては次のようなロジックで「健康に良くないのではないか?」と懸念されているわけですが。

これは次のように否定され、「農薬の有無を気にする必要は無い」と結論付けられるわけです。


以上、農薬は身体に悪いか?について、一般的に簡単に入手できる情報で考えてみました。

なお、現実問題として、生産されている農薬の内訳として、安全性の高い「普通物」の比率は劇的に伸びています。

農業工業会「農薬は安全?」より

加えて、単位ha当たりの農薬使用量も年々減ってきています。

なお、このグラフを見ると、日本の農薬使用量が他国に比較して劇的に多いようにも見えますが、これも理由があります。
日本は国土面積が狭いから、耕地面積当たりの作付を限界まで上げないといけないんですね。
ようは「狭いところにぎゅうぎゅう詰めで生産されている」状態なのです。

こういった事も、実はちょっと詳しく調べれば、すぐにわかる事です。

何かしらの主張を見聞きした際、ちょっとだけでも良いので、調べる時間を使っても良いように思いますね。
手許にはスマートフォンという便利なツールがあるはずなのですから。

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【今日のロジカルシンキング】WEBサービスの売上をあげるには?

今世の中には、膨大な数のWEBサービスが存在し、各社、しのぎを削っている状況です。
どのサービス提供会社も、如何に売上をあげるか?に苦心しています。
今回は、WEBサービスの売上をあげるためのフレームワークについて考えていきます。

WEBサービスと一口に言っても多くの種類があるため、「WEBメディア」を想定してみましょう。

お題

「WEBメディア」の売上をあげる考え方を整理する。

前提

  • 無料記事は無く、有料記事のみのWEBメディア(毎月課金のイメージ)
  • 収入源は有料ユーザーからの収入のみとする
  • 広告収入は無いものとする(単純化のため今回の検証から外す)

それでは考えてみて下さい。

検討

売上を因数分解してみる

さて、売上をあげるための方法ですが、前提として売上の構成要素を因数分解してみましょう。

飲食店でしたら「客数 × 客単価」ですが、WEBメディアでしたらどうでしょう?

WEBメディアでも基本は一緒ですね。

売上増につながる要素は、ユーザー数か客単価であり、このどちらか、もしくは両方を増加させる必要があります。
基本的にはこの2つの大枠の切り口から考えていくことになります。

なお、この場合、客単価をあげるにしても一定の限界があることは深く検討せずとも想像がつくかと思います。
値段をあげればユーザーが減るであろう、ということも同時に想像がつきますね。

ですので、一番の優先順位としての方向性は、ユーザー数を増加させること、を仮説として設定できるはずです。

ユーザー数の増加の考え方

それでは、ユーザー数を増やす考え方です。

ユーザー数増は更に分解してみます。

様々な観点や考え方は想定できますが、今回はアンゾフの成長マトリクスをベースに考えてみます。

アンゾフの成長マトリクスについてはご存知でしょうか?
簡単に言うと、市場と製品について、それらが既存の物なのか、それとも新規の物なのかでマトリクスをつくり、自分たちの商品/サービスの方向性・戦略を検討していきましょう、というものです。

今回の事例であてはめて見ると、次のようになります。

ユーザー数増でいうと、既存商品での「他サービスからの乗換獲得(類似サービス利用者の獲得)」か、「新規ユーザー獲得(この種のサービスを利用していない潜在顧客の獲得)」です。

これらをマーケティングの4Pの観点で見てみましょう。
4Pは下記の4つの観点について整理し、マーケティング戦略を立案していくためのフレームワークですね。

  • Product(プロダクト:製品)
  • Price(プライス:価格)
  • Place(プレイス:流通)
  • Promotion(プロモーション:販売促進)

一例ですが、このようにツリーを作ることができます。

後はこれをベースに具体を肉付けしていきます。

Product:商品力の向上では、純粋に媒体としての質をあげる、ジャンル内でニッチな記事も書きマニアックな層にも訴求する、といった方向性が考えられます。
Price:価格は、ここでは「客単価」の項目と被るので省略しますが、基本的には上げていくのは限界がある前提となります(もちろん、検討の価値はあります)。
Promotion:販促活動は、伝統的な販売方法ですね。アナログな広告もあればWEB広告もあり、適切にCPA・CACが最適になる広告媒体を選んでいく形になります。
Place:販売チャネルも、広告と同様、適切な販売媒体を考えていきましょう、という事になります。自社サイトは当然ですが、例えばBtoB向けに営業を行うとか、大学の学生向けに学割付きで申し込み窓口を設置するとか、も考えられます。

どのようなWEBメディアを提供しているのか?にもよりますが、自社の状況や性質にあわせて検討していく流れになります。

客単価増の考え方

それでは客単価増の考え方です。
上述アンゾフの成長マトリクスも踏まえて考えると、客単価増は次のように分解できます。

何度か書いているように、単純なサービス単価増は困難です。
単価をあげれば、基本的には有料ユーザーは増えにくくなります。
競合が一切以内独占市場であり、また例えばApple社のような絶大なブランド力を持っているのなら別ですが、WEBサービスの世界では、そうそう簡単に価格決定権をグリップできるものではありません。

可能性はありますが、単純なサービス単価増は難しい、というのが一つの結論でしょう。

ではどうするか?と言うと、提供サービス数増、つまりOptionとして別コンテンツを制作していく、といった方策が考えられます(あくまでも一例です)。
上述したProduct部分で、ニッチな記事を書きマニアックな層にも訴求する、と書きましたが、例えばこれを別の有料Optionをつけていく、といったことが考えられるわけです。

この話も、当然ですが簡単ではありません。

自社WEBメディアの顧客はどのような人たちなのか?をよくよく分析し(性別や年齢層、職業や収入等々の情報から消費行動を詳細に分析する)、適切に顧客に訴求していくことが必要になります。

また、何となく感じるかと思いますが、ユーザー数増施策と客単価増施策は、個別単独で機能するものでなく、連動していくものと考えられます。

全体像の中で考えていくのが良いでしょう。


以上、WEBメディアを想定して、売上をあげるためのフレームワークについて考えてきました。

この考えの枠は他の考えやフレームワークを組み合わせれば、いくらでも切り口が存在するはずです。

また、有料記事だけでなく無料記事も存在している場合は、有料化率の考え方や、
広告収入もある場合は、広告収入についての検討も必要になります。

とは言え、複雑性は増すものの、要素の因数分解と、フレームワークに沿った整理、という基本の流れは変わりません。

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本質とは何か?~本質論を簡単に解釈してみる~

ビジネスにおいて「本質は何か?」「本質を見抜くように」的なことを言われる、言うシーンがあります。
ただ、この本質。
内容自体はシンプルなのですが、意外に難しい考え方で、実用的か?というとそうでもありません。
ここでは、この本質とは何か?について、少しでも実用的になるよう、簡単に解釈してみました。

本質とやらを簡単に解釈してみる

本質、という意味をネットや辞書等で検索してみると、色々な意味合いが出てきてカオスなのですが、とりあえず大枠では次のように書かれています。

ある物事における重要な事

つまり、それの本質は何か?的な問いがあった場合、これは「重要なポイントは何かな?」という意味というわけですね。

ビジネスシーン的な使われ方としては、とりあえず納得できるかと思います。

じゃあ、これで「本質を見抜くように」なんて、いきなり言われてできるようになりますか?

こちらの記事でも、ふわっと書きはしたのですが、それが重要な事なのか否かという思考方法って、結構、判断が難しく、実用的でありません。

そこで、少しでも簡単に本質論を利用できるような解釈にトライしてみました。

目の前にある事において、自分にとって最大のメリットを取れる手段

これでも、やっぱり小難しいので、解説していきます。

まず「目の前」とした理由

例えば、「人生の本質は何か?」という問いがあったとします。

これに返せるのが、「幸せになる事」という回答で、そして内容的には、まあまあ納得の行くものだと思います。

では、この「人生の本質 ⇒ 幸せになる事」という答えが出たとして、今目の前の生活で、自分自身がやるべき事が何か、示されたりするでしょうか?
そんなわけないですよね。

具体の行動に落とし込めなければ、どれだけ高尚な思考をしたとしても意味が無いです。

それよりかは、比較的短期の事象において考えた方が、実用性は高いのではないか?と考えています。

実用レベルになるまで、即物的に、短期的に考える方が良いでしょう。

自分の葬儀で、どのようにおくられたいか?
数年後にどうなっていたいか?

という本質的問いを定期的に考えるのは良い事だと思います。
ただ、この種の問いは、どちらかと言うと価値観軸の明確化の話であって、本質論としての思考か?というと違うような気がしますし、日常のものすごいスピードで時間が流れていく中でやるものでは無いと考えます。

頭でっかちも程ほどに、という事ですね。

次に「自分にとって最大のメリット」部分

2つのたとえ話で考えていきます。

ドリルと穴の話

マーケティングの小噺としては、ドリルと穴の話が有名ですね。

ここでも改めて考えてみましょう。

あなたは工具店の店員で、たまたま店頭にドリルの在庫が無い状態で、お客様が「ドリルが欲しい」と言ってきました。
このお客様の本質的な要望としては「物を置く棚を取り付けるための穴をあけたい」だとします。

これに対する対応は、ざっくり次の3つ考えられます。

  1. 無いと言ってお引き取り願う
  2. 近隣店を探して紹介する
  3. 代替手段を提案する(強力な接着剤をセールスする、訪問して取り付ける等)

ビジネス的に意識が高い方ならば、3)代替手段を提案する、が最も良いと考えるでしょう。

これには私も異論が無いのですが、もう少し考えてみて下さい。

仮にあなたが、面倒な事をしたくない、仕事は生活費を稼ぐだけの手段、という価値観でしたら、おそらく最適は1)無いと言ってお引き取り願う、でしょう。
これは別に良し悪しの話では無くて、あくまでも価値観軸の話です。
無いです、と言ってお客様が来てくれない方が、(長期的に働く場が無くなりそうな気はするのですが)楽して給料を貰えて良いはずです。

もう一つ別のペルソナを考えてみましょう。
例えば、企業は社会貢献のためにあり、利益が出ているのならば少しでも世の中に還元すべきだ、と考えていたとしましょう。
この貢献精神が高い価値感なら、2)近隣店を探して紹介する、の選択肢は、働いている本人にとって満足度が高いはずです。
店の利益にはつながりませんが、働いている本人にとっては気にもなりません。
(顧客がロイヤルカスタマーになって、再来店した的な美談も多々ありますが、そうそううまい話が転がりこんでくるとは限りません。)

このようにビジネスにおける利益という価値軸において物事を考えると、3)代替手段を提案する、が最適解となるのが一般的ですが、価値軸を変えると判断結果がこうも変わるのです。

このように考えれば、本質論は実用性が増すはずです。
シンプルに「自分にとってのメリット」を考えれば良いからです。

なお、あなたが経営者や上司である場合、従業員にいくら「本質で考えろ」と叱咤しても意味が無いことがわかるかと思います。
上記の話は、意識・無意識はともかく、人が自然にとっている思考のはずだからです。
見方が変わると、本質論で考えたアウトプットが変わるから、無理に「会社の利益」的な方向に誘導しようとしても、思考が停止してしまうはずです。
店の業績の分ボーナスが出る、という制度を入れような、マネジメントの仕方から考えた方が良いでしょう。

そもそも、その「本質」とやらは、コントロール可能なのか?

もう一つ指摘しなければいけない点があります。

売れない営業がいたとします。
上司は、次のように問いかけます。

どうして、売れないんだろうな?その本質的な問題は何だ?

さあ、困りました。

確かに、営業の方のケイパビリティ的な物、純粋なセールスの力が劣っているからからかもしれません。

しかし、他の問題の可能性があります。

  1. そもそもとして商品がイケていない
  2. 上司が設定した目標が高すぎたり、上司の方針がイケていない
  3. 会社の評判が悪く、風評的に顧客が離れている

これらは可能性として考えられることの、ほんの一部分を仮に出しただけですが、実際、このような状況にあることは珍しくないのでは?

1)の場合は商品デザインから入り込む、2)の場合は上司と徹底的に話し合う、3)の場合も商品の良い点をしっかり顧客に説明する、等々のやり方は当然にあるでしょう。
ただ、マイナスの状態から戦っている事には変わりなく、またそのマイナスポイントが自分自身の責によらない、コントロール不能な領域だ、という点は間違いなく指摘できます。

ようは、本質論の話をしたとして、出てきた本質とやら、それは解決可能なものなのか?という問題が出てくるのです。

そのため、上記のシチュエーションの場合、「できる限りの努力はしつつ、タイミングを計って転職。」がその営業の方にとっての、本質的な選択と言えるでしょう。

本質話が実用性に欠ける点は、上記の通り、コントロール不能な要素が出てきてしまうから、なのですね。

つまり、本質的思考を簡単に実用性高く利用しようと思うならば、「自分にとって最大のメリット」で考える方が簡単なのです。

最後に

これまで書いてきた内容は、自分勝手な内容に聞こえてくるかもしれません。

断っておくと、今回のテーマは「本質論を実用性高く簡単に使う」です。

仕事のレベルがあがって、視座が高まり、視野が広がると今回のこの解釈でも、公の利益につながるアクションをとれるはずです。

目の前にある事において、自分にとって最大のメリットを取れる手段

世の中の成功事例や各種HowToは、言うは易しな話ばっかりです。
少しでも、実用性を高くできるよう、簡単に、そして俗っぽく解釈するのはおすすめだったりします。
参考にして見て下さい。

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【今日のロジカルシンキング】レジ袋有料化は本当に環境問題の解決につながるのか?

賛否両論の中、レジ袋有料化がはじまっています。
今回は、環境問題や環境税的な物への是非とか、そういう話では無く、思考トレーニングとしてレジ袋有料化は本当に環境問題の解決につながるのか?を考えていきます。

繰り返しますが、個別の科学的正しさを追求する話では無く、ロジカルシンキング的観点で、大枠としてそれは問題なのか否かを捉える、イシューの話です。
ですので、ここでは当該施策に賛成とか反対とかの意見を述べるものではありません。

お題:レジ袋有料化は本当に環境問題の解決につながるのか?

まずは、「レジ袋有料化の意義」として主張されているものの整理です。

諸々のニュースや政府報道、各種環境を意識した組織・団体が主張するレジ袋有料化の意義は次のような形でまとめられます。

  • 二酸化炭素排出の削減
  • ゴミの削減(マイクロプラスチックとか海洋汚染等々の低減)
  • 国民の環境保護への意識の向上

それでは、上記の意義について、科学や環境の専門的知識を使わずに、判断を行ってみましょう。
使用する資料も、大枠を掴むという観点ですので、パッとググって調べらる範囲に留めます。

二酸化炭素排出の削減

この種の話は個別各論で話すと解決が困難になるので、大枠で考えるのが一番です。

で、レジ袋、もっと言うとプラスチック製品ですが、これが石油(原油)から作られている事は、日本の義務教育課程を終えた人ならば、誰でも知っています(そのはず)。

とすると、石油(原油)の内、どれくらいの割合、プラスチック製品の製造に使用されるのか?を考えるのが、よさそうです。

それで「石油 レジ袋 内訳」でGoogle検索したのがこちらです。

一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックは石油をどれくらい消費している?」より

当該サイトは、環境活動への推進寄りであり、更に情報がレジ袋有料化の話の前のものなので、色としては問題無いものかと思います。

その資料で、プラスチック製品の製造で使用される石油の量が2.7%、レジ袋は更にその中の一部なので、全体のインパクトは小さいことが、直感的にわかります。

ゴミの削減

次はゴミの削減に効果があるのか?です。

この点に関しては、資料云々より、日常生活の風景を思い出すのが早いでしょう。

一般的な買い物後の風景です。
消費するものもありますが、パッと見、レジ袋よりも他のプラスチック製品の方が圧倒的に多いという感覚はありますね。

一応、簡単に資料にもあたってみましょう。
「プラスチック製品 レジ袋 内訳」で検索してきたものがこちらです。

毎日新聞「スーパーやコンビニのレジ袋廃止 どうしたら法制化できるのか(2019年6月12日)」より

940万トンの内の20万トンとのことで、レジ袋はプラスチックゴミ全体の2%程度です。

20万トンという数字だけを見ると、とんでも無い数字に見えますが、全体としては本当に微々たるものです。
(上記、二酸化炭素の話になると、2.7%の2%なので、全体の0.06%と、本当に無視しても良い位の数字です。)

マイクロプラスチックと海洋汚染

次にマイクロプラスチックと海洋汚染についてです。

マイクロプラスチック云々生物濃縮云々については、ここで細かく語っても仕方ないので、端的に健康被害があるのか?という話に絞ります。
WHO云々の話もしません。

ロジカルシンキングの観点で考えると、どのような切り口が良いでしょうか?

ここでは、「プラスチック 使用量 推移」で検索してみます。

一般社団法人産業環境管理協会内資料より

プラスチック製品が世界的に本格的に使われるようになったのが1980年~1990年、そこから現在までで30年超の時間が経過しています。
では、マイクロプラスチックに起因する健康被害が現実に起きているのか?というと話は聞きません。
他の公害と比べて考えると、健康被害はほとんど無いと言って良いのでは?と考えるのが自然でしょう。
(もちろん、科学的に、健康被害が実はあったんだ、ということが後々証明される可能性は当然にあります。)

次に、海洋汚染について考えてみますが、これは「プラスチック製品 レジ袋 内訳」で出てきた別の資料で検討ができます。

NIKKEI STYLE「レジ袋有料化、なぜ急に? 海洋プラごみ対策後追い」より

あくまでも漂着ベースなので、これを本当に全体像と言って良いかは不明ですが、少なくとも漂着ベースで0.3%しかポリ袋ゴミは発生していないので、海洋全体でも極々一部と考えて差し支えないでしょう。
つまり、レジ袋を削減しても、海洋ゴミの削減、海洋汚染の低減にはつながらないのです。
(後、そもそもとして、漂着してくるゴミが、日本の物なのか問題は、たびたび話題に出ますね。)

国民の環境保護への意識の向上

この点は、まあそうなのかもね、という気はします。

これについて検討する方法は何かあるであろうか?と考えた時に、素直に常識で考えるのが良いと思いました。

つまり、「ポイ捨てをする人」、「分別がいい加減な人が、今さら「レジ袋有料化」を行ったところで、環境保護への取り組みに熱心になるであろうか?という点です。
積極的にレジ袋を使用せず、エコバッグに切り替える層は、最初から高いモラルを持っている人たちであると、想像ができるはずです(偏見かもしれないですけどね)。

この見方だけで、一定結論が出てしまうように思えます。


以上、レジ袋有料化は本当に環境問題の解決につながるのか?について、ロジカルシンキングの観点で考えてみました。

専門的知識を用いず、表面的に検索できる事象だけど、本件に関して一定の結論を出せるだけの情報を得られ、思考の整理ができたかと思います。

(なお、改めて繰り返しますが、別にここでは反対をしたいとかそういう趣旨の内容の話はしていません。ちょっと論理的に考えれば掲げている意義に対して効果が無いことは明確だよね、ということを示したにすぎません。
また趣旨としても、あくまでも、ロジカルシンキングを活用すると、別に専門的知識が無くてもここまで考えられますよ、ということを言いたいにすぎません。)

この思考の流れを一言で表現するなら「森を見る、全体像を把握しよう」という風になるでしょう。

ビジネスの現場での思考も一緒で、個別各論で考えだすと時間がかかったり、思考が迷走しがちです。
全体像を把握し、大枠としてどうだ?と考えるのは、ロジカルシンキングの基礎です。
ビジネスに限らず、生活の多くの場面でも応用できる思考法なので、是非、活用してみて下さい。

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フェルミ推定・ロジカルシンキング

【今日のロジカルシンキング】納豆と生卵の食べ合わせは相性が悪い?

先日、とある方による、とあるインフルエンサーへのコメントで「生卵×納豆は栄養相殺なNGな食べ合わせ(以下略)」というものを見かけました。
結論、大げさな話で気にする必要は無いのですが、ネット上では様々な情報があふれており、真偽がわかりづらいです。
今回は、栄養学とかその種の知識抜きに、ロジカルシンキングで判断する方法を考えてみます。

お題:納豆と生卵の食べ合わせは相性が悪い、をロジカルシンキングで反証する

なんでそんな話になるのかよくわからないのですが、

納豆と生卵の食べ合わせは相性が悪い。
なぜならば、卵白に含まれるタンパク質「アビジン」は、
納豆に含まれるビタミン「ビオチン」と結合し、吸収を阻害するから。
「ビオチン」は皮膚や髪の毛の健康を保ったり、身体の酵素の働きを助けるので、
ビオチン不足になると、色々な健康被害がでる。

と言われています。
まあ、この話自体は、論理的に筋が通っています。
テレビなどで偉い風の先生が(おそらく、全体文脈を見るとそんな主張をしていないのでしょうが)、そのように解説をすると、信じてしまう人も出てくるでしょう。

今回は、この話を、専門的な栄養学等々の知識抜きで、
あくまでもロジカルシンキングの観点で反証してみます。

この種の話は、納豆と生卵の食べ合わせに限らず、色んな場面で出てくるので、応用が利くと思います。

ロジックの流れ

この話はそんなに難しく無いです。

まず、常識的な感覚をもって世の中を見渡した時に、「納豆と生卵の食べ合わせ」による健康被害を見聞きしたか?がポイントです。
聞かないですよね?

じゃあ、レアリティの話なのか、単純に話が出回っていないのかどうか、ということで全体の母数を考えます。

ようは、納豆と生卵の食べ合わせで頻繁に食事をされる方が世の中にどれくらいいるのか?という話です。

納豆を頻繁に食べる人の割合 × 生卵を頻繁に食べる人の割合 × 日本の人口

ですね。

別にフェルミ推定でやっても良いのですが、ここでは省略し、資料に頼ります(ググればすぐに出てきます)。

納豆の資料はこちら。
卵の資料はこちら。

資料の数字、納豆を頻繁に食べる人(毎日を含む、2~3日に1回以上)が36.6%、卵料理を頻繁に食べる人(毎日を含む、週に3~4回程度以上)が71.6%です。

全国納豆協同組合連合会「納豆に関する踏査」調査結果報告書 2017.6 より
キュービー㈱ たまご白書2019 より

で、生卵の喫食データは無いのですが、「好きな卵料理」で「卵かけごはん」が5位にランクインしているので、超ざっくり10人に1人とパラメータ設定を置きます。

キュービー㈱ たまご白書2019 より

数字をあてはめて見ると、下記の通り約3百万人が該当することがわかります。

納豆を頻繁に食べる人の割合 × 生卵を頻繁に食べる人の割合 × 日本の人口
= 36.6% ×71.6% × 0.1 × 1億2千万人
= 約3,100,000人

考えて見てもください。

3百万人もの人間が健康被害にあうような食べ合わせがあるのならば、もっと世の中的に話題になっているはずですし、厚生労働省とかが警告を出すはずです。
健康被害が仮にあるにしても、影響は小さいか、もっと対象母数が小さいか、のどちらかか両方になるはずです。

つまり、「気にする必要が無い」と言えるわけです。

好きなように食べなよ。

まとめ

今回の話は、「〇〇は良くない!(定性)」という話に対して、「じゃあ、どれくらいの人に影響があるの?(定量)」という流れて切ってみました。

定性情報を定量情報で検討してみる、というビジネスでもよくある思考ですね。

ちなみに医療の話でいうと、卵白の過剰摂取による健康被害は実際にあって、「卵白障害」と言われています。
この話を仮にしっていたら、「卵白障害 患者数」で検索してみる方法もあります。
まあ、数字が出てこないから「あぁ、大したこと無いんだな」とすぐに気づくのですが。

ちなみに話をもう一つ付け加えると、諸々の研究論文を眺めていると、卵を10個以上、毎日摂取するのを数ヶ月から数年間続けると、卵白障害が起きるらしいです。

さらに付け加えると、この話は「卵白×他ビオチンが含まれている食材」の対立軸になるので、潜在患者数は約8百万人と上の数字以上に増加します。
なおさら気にする必要が無いことがわかりますね。

話の中身は違っていても、この種の話は多く溢れています。
ビジネスの現場でもそうです。

定性情報は定量情報に置き換えてみる。

この基本的な思考の流れだけで、大体のことは、大元の知識抜きでも解決できたりします。

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【今日のフェルミ推定】ペット・テック市場への参入は儲かるか?

アフターコロナにおいては、リモートワーク拡大に伴う巣ごもり消費の影響で、ペット市場が活況になりそうです。
そこで最近、市場が産まれだしたペット・テック市場について、仮に参入した場合の事業規模について考えていきます。

お題:ペット・テック市場に参入した場合の事業規模を求める

こちらの記事で書いた通り、アフターコロナのペット市場は拡大していくものと考えられます。

この前提で考えた時に、仮にペット・テック市場に参入した場合、どれくらいの事業規模になるのかを考えてみます。

試算

さくっと行きます。

ベースとしては世帯数で、そこからどれくらいの人たちが飼育しているのか、今後市場はどれだけ成長が見込めるのか、利用状況はどうか、を考えます。
数式で表現すると、次のようになるでしょう。

事業規模 =
 世帯数 × 世帯飼育率 × 増加予測率 × アプリ使用率 × 課金率 × 月額課金額 × 12ヶ月

数字もはめてみます。

資料としては、一般社団法人ペットフード協会が出している「全国犬猫飼育実態調査」を参考にします。
とりあえず、メジャーな犬・猫に限定しました。
熱帯魚とか、鳥類・ハムスターのようなものまで含めていくとキリが無いですし、ペット・テックをやるにしても対象動物を絞らないと、やりづらいと思いますので。

それぞれ、フェルミ推定らしく数字の仮説をおいてみても良いのですが、まあググれば一発で出る世界の話なので省略します。

参照するのは、上記リンク先資料内にある「全国犬・猫 推計飼育頭数」部分です。

平成30年(2018年)全国犬猫飼育実態調査 結果

私が都心に住んでいるからなのか、あまり実感が無いのですが、結構な人が犬・猫を飼っているのですね。
この数字を計算式にはめてみると、次のようになります。

これは、ペット・テック+ペット・フードを織り交ぜて、単価を高くした設計としました。
イメージとしては、ペットの監視機能付き自動給餌機+ペット・フードで、ペット・フードは、その動物個体に応じて成分をカスタマイズしたものを想定しています。
リンク先にあるような、オーダーメイドサプリメントのようなイメージですね。
(普通にマルチビタミン・ミネラルを飲んでいればいいような気もするのですが、こういうサービスもあるんですね。)

数時間として見てみると、ざっくり約60億円とまあまあな規模感です。

結論

上記は自社利用率が全体の1%前提で、サービス単価も給餌機本体とペット・フード代のみです。

  • 飼育相談や健康管理アドバイスをオプションで組み込み、近隣の動物病院と連携したようなサービスを開発する。
  • 先行者利益をとる形で、ガツっと広告宣伝費投下してマーケット創造とシェア獲得を図る。

そんな形で展開すれば、200億円くらいまでは十分に拡大できそうな気もしますね。

とは言え、べらぼうに規模が大きいわけでも無いので、手ごろなサイズ感まで成長させ、その後はExit(事業売却)をするようなイメージになるでしょうか。
スタートアップ的な組成でやるとよさそうです。

まだプレイヤーは少なく、またこれから一気に拡大していく領域なので、興味のあるベンチャー起業家はチャレンジしてみる価値は十分にありそうですね。

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【今日のフェルミ推定】スイーツ制作キット・サブスクリプションはチャンスになるか?

洋菓子店の明暗がわかれているようです。
都心の百貨店は売上が減る仲、EC売上や、各地域の個人店は横ばい、ないしは売上が増えている所があるようです。
一方、個人の消費者では、自宅でお菓子を作る機会が増えている模様です。
今回は、個人向けにスイーツ制作キットを販売した場合の市場規模について考えていきます。

お題:スイーツ制作キット・サブスクリプションの市場規模を求める

今回の条件は、次の2つ位でしょうか。

  • ケーキミックスに加え、レシピ冊子、器具類が毎月届くサービス
  • 先駆者の立場として、市場シェアを一気に取る想定

なお、海外ですと、リンク先のようなサービスがあるので、荒唐無稽な話では無いですね。

それでは考えてみて下さい。

試算:既存のデータから逆算していく

今回はある程度、ベースとなるデータから市場規模を逆算して行こうと思います。
スイーツ制作キットですので、自宅でのお菓子制作に興味のある、ライトユーザーが対象になると想定されます。
混ぜて焼けばできる系の商材から、利用者数を考えてみます。
つまり、「プレミックス」のデータを参照します。

プレミックス市場全体の売上高はおおむね160億円です。

このプレミックス市場の内、ホットケーキ、パン、ケーキ、焼き菓子系と言った、スイーツ系プレミックスの比率は約45%です。

KSP-POS マーケットトレンドオープンレポート

つまりスイーツ系のプレミックスの市場は約72億円と考えられます。

この約72億円から、サブスクリプション・モデルで毎月販売するモデルでサービス提供をした場合の利用率想定を設定し、そこから利用人数を計算してみます。
利用率想定は1%、プレミックスの値段想定は300円とします。

これは、正しい間違っている、はさして問題ではないので、とりあえず適当におけばOKです。

利用人数としては、想定20,000人の方が利用するイメージになりました。

ここから、先駆者の立場としてどれだけシェアをとるのか(市場を創造するのか)、そしてその他の材料やレシピ、料理キットなどを付け加えて、その付加価値分の値段の上乗せをするのか、を考えてみます。

MAXシェア想定は20%、値段の上乗せ分は1,700円、つまり販売額は2,000円/月とします。

4,000IDをとる前提で、年額約1億円の売上と算出されました。

結論:小規模法人がチャレンジするのは面白いかも

事業規模として、約1億円の売上高では小さいと言わざるをえません。

利用回数を月1ではなく、月2のプランを用意したり、材料の質や種類などを増やすなどしたプレミアムプランを用意したとしても、精々が2億円ほどでしょう。

売上がそのまま利益にはならず、材料費だけでなく、マーケティングコストもかかるので、利益としては微々たるものになるはずです。
それならば、既存商品(焼き菓子などの賞味期限の長いもの)をベースに、ECでの販売を行う方が、やりやすいと言えるでしょう(実際、EC販売に流れているわけで)。

逆に言うならば、地域で2,3店舗展開しているサイズ感の洋菓子店が、この1億円を取りに行く、というのは面白いかもしれませんね。
Twitter、Youtubeなどの媒体と交えてやれば、まあまあいけるかもしれませんね。

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【今日のフェルミ推定】1,000円カットが普及した今、理容師で儲けられるか?

1,000円カットが普及し、どこでも気軽に髪を整えられるようになりました。
ユーザーの一人としては、非常にありがたい話です。
しかし、本当に儲かる商売なのか?、彼ら彼女らの生活は大丈夫なのか?を、片隅で心配します。
そこで今回は、理容師のお給料はどこまで上げられるのか?を考えていきます。

お題:理容師になったとして、どこまでお給料をもらえるのか試算する

条件は次の通りです。

  • 1,000円カット業態
  • カット時間は10分
  • 都心駅近立地
  • 10坪以内の小規模店舗
  • 3席稼働
  • 営業時間は10時~20時
  • とりあえず年末年始以外は無休前提

それでは、考えてみて下さい。

試算

これまで、居酒屋やコーヒー店を例に、事業計画を作ってみました。
今回も、事業計画ベースで考えてみます。

居酒屋とコーヒー店の例は次の記事を参照ください。

売上高の検証

売上高は如何に回転させるか?がポイントです。

営業日数、営業時間、席数、店舗稼働率、そして客単価のパラメータを設定すれば数字を作れます。
稼働率は75%位としました。
朝一や昼間、夕方は混みあって順番待ちの一方、それ以外の時間帯は空いている場合が多いので、1日全体としてはこれ位かな、という設定です。

フェルミ推定では、あっているかあっていないかは、さして問題ではなく、まずは前提を置いて考える方が重要なので、これで良いのです。

数字をあてはめて考えると、次のようになります。

人件費の検証

人件費は、想定される稼働状況から、必要な人数を逆算することで計算できます。

カット時間を10分とし、それを売上高検証から算出できる店舗総稼働時間を導き出し、そこから人の稼働率をあてはめて必要な人数を出していきます。

朝礼や資料作成などの雑務があるでしょうから、カットにあてられる時間としては稼働率90%。
その90%の内、実際にお客様が来店しカットする実稼働率は75%と起きました。

そして、人件費です。
人件費はざっくり1人あたり300,000円とします。
会社を経営していると、従業員の年金や保険料などを一部負担しなければならず、加えて諸々の管理費もかかるので、+15%を加算して考えます。
トータル、人件費は1人あたり345,000円/月となります。

人を雇うって、額面以上のお金がかかるんですよ。

これらのパラメータをあてはめて見ると、次のようになります。

賃借料、その他費用の検証

賃借料、つまり家賃ですね。
駅近のどこかのテナント立地を想定すると、30,000円/坪位かな、と思います。
10坪とすると、ざっくり300,000円/月ですね。

その他費用は考えるとキリがないので、その他費用比率を10%、本部費比率を15%とします。
チェーン展開していると、本部費がかかるんですよ。
会社を大きくしていくための必要経費ですね。

損益計算書

最後に、上記全ての情報を統合して損益計算書を作ってみます。

営業利益率が14%超と、大きい印象がありますが、効率的運営を考えると、これ位は目指したいものではあります。
賃借料やその他費用がもうちょっと大きい気はしますが、全体感としては、まあこんなもんなのかな、という印象ですね。

実際の数値感

実際の数字を見ようとQBハウスのIR資料を漁っていましたが、パッとはそれっぽい資料が出てきませんでした。

リサーチ会社が出している資料があったので、そちらを参考にします。

みていると、パラメータとしては下記のような比率になるようです。

  • 人件費率:53.0%
  • 賃借料:13.6%
  • その他費用率:10.8%
  • 本部比率:約14.6%

本部比率だけ「約」なのは、記載がなく、一方全体の営業利益率が約8%だったので、そこから逆算をしました。

こうしてみると、概ね一致していますが、賃借料は乖離があるようです。
日本不動産研究所が出している賃料指標をみると、都心立地でも坪単価30,000円位だったので、試算ベースでは大外れでは無かったようですが、少なくともQBハウスはもっと坪単価の高い好立地を使っているのか、それとも想定よりも面積が広い店舗にしているか、なのでしょう。

結論

さて、ここまで見てわかる通り、一月当たりの営業利益は50万円ちょっとです。
ここまで到達したとしても、実際には株主への配当や新規店舗への投資などにお金を回すのが企業経営です。
一人が望める給料向上額は、精々2万円~3万円程度でしょう。

上記の試算ですと、年収は360万円ほどで仮に望めたとしても、精々が400万円ほどです。
別資料の理容師の平均年収が300万円ほどなので、これでも優れている試算になります。

結論、好きでなければやり続けられる仕事ではない、と考えられます。
(現役の理容師の方々、好きでやっている方々を貶めようという意図は一切無いので留意ください。)

仮にやるとしたら、自分自身がオーナーとなって、店舗収益の配分をとるか(自分が株主となるわけなので)、複数店舗経営するか、になるでしょう。

別の観点で考えた時に、客単価をあげる、という選択肢も考えられます。
実際、QBハウスは1,000カットでは既に無くなっていますね。
その場合でも精々が1割2割の上昇幅なので、インパクトは小さいです。
理容師業界全体で、もっと客単価をあげても、自分で髪を切り出す人がではじめるので(アタッチメント付きのバリカンだと、髪型にこだわらなければ簡単に切れる)、限界があります。

やはり、しっかり儲けようと思うならば、自分自身が経営者になる、という選択肢しか無いのでしょう。

(参考)試算資料

試算に使用した資料はこちらになります。
ご興味のある方は、DLしてお使いください。

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【今日のフェルミ推定】居酒屋の事業計画を作ってみよう

前回に引き続き、飲食店系で事業計画を考えてみます。
今回は居酒屋の事業計画です。
こちらも脱サラ・独立開業の定番ですね。

なお、前回のコーヒー店はこちらになります。

お題:居酒屋の事業計画を作ってみよう

条件としては、次の通りです。

  • 池袋、新宿、渋谷のような週末も人が来るビジネスエリア
  • 駅からは10分以上離れた場所
  • 60席くらいの中規模店舗
  • 古いビルの地下店舗、もしくは2階以上の空中店舗
  • 営業は夜のみ

それでは、考えてみて下さい。

試算:週末と繁閑が重要

飲食店の売上高の構成要素

コーヒー店でも示した通り、飲食店における売上高の構成要素は次の通りです。

売上赤 = 客数 × 客単価

まずは、これが基本になります。

週末

次に考えるのが週末です。
週末とは、金曜日と土曜日、加えて祝休日が続く場合の休日中日も該当します。
こういった日は、他の日に比べて多くのお客様が来店する傾向があります。

そのため、シミュレーション上は週末日数をカウントし、別に計算する必要があります。

繁閑

更に考えるのが繁閑です。

飲食店の売上は年を通して一定ではなく、波があります。
12月は忘年会、3・4月は歓送迎会で盛り上がるのはイメージがつきやすいでしょう。

逆に2月や6月など、ほとんど客の入りが無いのも、何となくは伝わるかと思います。

こういった、繁閑を月単位で考えていく必要があります。

事業計画を考えてみる

上記をもとに作成した年間の事業計画は、例えば次のようになります。

これは当然、一つのシミュレーションなので、提供する商品の内容や単価設定、立地・客層に応じて大きく変動していきます。

結構、ボリューミーな印象を受けるかもしれません。
図もちっちゃいですね。
しかし、これでも事業計画策定上のミニマムな粗々なものです。

全体を通して見えること

一番右端の数字を見て下さい。

3.4%とあります。

これは年間の営業利益率です。
飲食店の営業利益率は、大体1桁%台半ば前後なので、どこの飲食店もおおむねこんな感じでしょう。
まあまあ普通の飲食店ですね。

ようは、非常に厳しい、ということです。

仮に、うまく営業していても、何かの外部要因によってお客様が前年より数%減ってしまったらどうなるでしょうか?
他にも、食品原価があがったり、お客様が暴れて店舗備品が壊れた修繕費用がかかったり(当該、客は逃げるなり、弁償しなかったり、訴訟するにも手間とお金がかかるし。)、そんなマイナス要因が一発、二発来たら、あっという間に赤字です。

次の図を見て下さい。

これは居酒屋業界の5F(ファイブ・フォース)分析です。
なんで、このような業界なのかというと、上記の図の通り、居酒屋は参入障壁が低く、また業界内競争・業界外競争も激しく、加えて全体として交渉力が低い、という点が指摘できるからです。

飲食店は居酒屋に限らず、3年で7割、10年で9割が廃業します。

飲食店の世界でうまくやっていきたいのであれば、うまくいかない前提で、入り口から精緻にシミュレーションし、マーケティングも顧客調査から確実に行い、加えて流行の変化なども敏感にとらえて即座に対応する、ということが必要です。
カンマ何%の積み上げにより、ようやく利益が出る世界。
それが飲食業界です。

私は、数ある業界の中で、飲食店がもっとも難易度が高いと考えています。
だからこそ面白いと思うし、好きなんですけれどね。

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【今日のフェルミ推定】コーヒー店の事業計画を作ってみよう

脱サラ・独立開業を、一度は夢見た、もしくは目標としている人は多いのではないでしょうか。
ここでは、独立開業で参入しやすい飲食店業態、コーヒー店をサンプルに、事業計画の基礎を作ってみましょう。
コーヒー店を開業したら、どれくらいの売上を見込めるのでしょうか?

お題:コーヒー店を開業したら、どれくらいの売上が見込めるか?

条件としては、次の通りです。

  • 半住宅街、半ビジネス街のエリア
  • 駅から歩いて3分~5分ほどのまあまあ人通りがある路面店
  • 15坪~25坪程度で、席数も20席未満の小規模な店舗
  • 業態は夕方まではコーヒー店で軽食も提供、夜はバー形式

それでは、考えてみて下さい。

試算:事業計画では条件を細かく設定しないといけない

飲食店の売上高の構成要素

飲食店において売上高の構成要素は何か?
それは次の公式であらわせます。

売上高 = 客数 × 客単価

これをベースに、条件を細かくわけて考えていきます。
具体的には時間帯と、平日・土日祝日の区分、繁閑についてです。

コーヒー店がどのように営業しているかをまずは想像してみてください。

時間帯

まずは時間帯で考えます。

朝の少数ながら朝食需要とテイクアウトのコーヒー。
昼はランチ需要とテイクアウトのコーヒー。
午後はちらほらとスイーツ需要と、仕事スペースを探すビジネスマン利用。
そして夜はバー需要。

それぞれ利用形態に併せて、利用人数や客単価が異なってくるでしょう。

平日・土日祝日の区分

同様に、平日・土日祝日の区分についても考えます。

半ビジネス街というエリアだと、土日祝日の朝と昼は、基本的に客の入りを期待できません。
場合によっては、終日、全く入らない日もあってもおかしくないでしょう。

事業計画を考える上では、これらも見込まなければいけません。

繁閑

繁閑もそうで、飲食店というものは、1年を通して同じような売上高で推移するものではありません。

冬はホットコーヒー、夏はアイスコーヒー需要があるでしょうが、それ以外の月ではあまりコーヒーの販売が伸びない可能性があります。
逆に季節要因を利用するという観点ならば、コーヒーギフトを用意すれば、12月の売上の足しになるかもしれません。

バーも同様で、2月や8月のような時期は基本的に厳しい数字になるはずです。
季節要因で考えるならば、12月はギフト需要同様、バー業態の売上も伸びるでしょう。
カップル向けに雰囲気を整えてあげると効果的でしょうね。

事業計画(売上計画)を考えてみる

これらの要因のパラメータをそれぞれ設定し事業計画(売上計画)を計算すると、例えば次のようになります。

上記は、提供する商品の内容や単価設定、立地・客層に応じて大きく変動していきます。

結構複雑に見えるかもしれませんが、ビジネスをやる上では最低限、このレベルでシミュレーションをしなければなりません。
これでも、最初期に検討する、本当に粗々なものです。
変数がいくつかあるので、その条件設定を見誤れば、せっかく意気込んで独立開業したにもかかわらず、失敗で終わりかねません。

より正確に表現するならば、飲食店は3年以内に7割が廃業します。
それくらい厳しい世界なのです。

業績全体としてはどうなるだろう

今度は、上で作った売上計画を元に損益計算書を簡単にシミュレーションしてみます。
損益計算書とは、事業における通信簿(成績表)みたいなものです。

損益計算書を考えるにあたり、費用の構成要素も考えなければなりません。
飲食店においては、FLR(フード:原価率、レイバー:人件費率、レント:家賃・減価償却費率)という3つの費用が大きな構成要素として存在します。

飲食店における原価率は20%~30%位で、コーヒーの原価率は25%位、フードやお酒も提供するなら平均で30%位になるでしょう。
人件費率と家賃・減価償却費率も20%~30%で設定されるのが一般的です。
(減価償却費とは、内装や機器類の費用を月単位で按分したものです。)
加えて、その他の諸経費として10%程度がかかります。

これらを組み込んで損益計算書を作ってみると、例えば次のようになります。
(借入金は500万円で期限一括の利率2%としました。)

これを見て、どう感じましたか?

独立開業は覚悟が必要だね

オーナーの取り分

独立開業をするからには、やはり「お金持ちになりたい!」という気持ちが大なり小なりあるのではないでしょうか?

仮にオーナーであるあなたが一人で営業していても得られるお金は、人件費部分の約472万円と純利益の約125万円です。
合計で600万円にも届きません。
営業を少しでも楽しようと、アルバイトを雇えば、オーナーの取り分はもっと減ります。
小さなコーヒー店を1店舗開業するならば、安全性・安定性含め、どこかの会社で正社員として働いていた方が、割が良いかもしれません。
儲けようと思うならば、何店舗かお店を出して、人を使いながら、うまく切り盛りする必要があるでしょう。

実際のお金の動きに関しても注意が必要です。
借入の返済分も含めて考えれば、手元に残る会社としてのお金は1年で100万円~200万円です。
精々が1月分の売上高です。
今現在のコロナの影響を考えてみて下さい。
外出自粛が続いたらどうなるでしょう?
これまで汗水流して、何年もかけて稼いだお金が、たったの数ヶ月で溶けて消えてしまう
のです。

独立開業には、かなりの覚悟が必要

ここまで見て考えれば、独立開業にはかなりの覚悟が無ければやれない、ということがわかるでしょう。
そして、やりたいことが好きでないと続けられない、ということも何となくわかるかと思います。
中途半端な覚悟ならば、絶対にやらない方が良いでしょう。

しかし逆に考えれば、覚悟さえあるならば、うまくやれるとも考えられます。
どういうことか?と言うと、まわりのお店の多くは、何かしらのチェーン店で、そこで働いている人たちは雇われている人たちです。
つまり、ライバルのほとんどは、中途半端な覚悟しか持っていない人たちのはずです(当然、正社員として働いていても、本気で取り組んでいて優秀な人はいますが)。

「そんな人たちに、私が負けるはずがない!」
飲食店は結局のところ、店長の力量で業績が決まりますので、本気で事業に取り組めるのであれば、勝算は十分に見込めるはずです。
(実際、チェーン店で働いていたトップクラスの店長が独立開業して、他のお店を押しのけて大繁盛しているケースは多いですね。)

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