「視座を高める」だけで良いのか?~3つの目を持て~

生産性・業務効率化

ベンチャー界隈で生息していると、たびたび耳にするのが「視座」という言葉です。
一般的には、視座は高い方が良いと言われますが、それは本当でしょうか?
ここであえて疑問を提示し、本当の意味で有益な「視座」を得るための考え方を検討します。

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忙しい人向けまとめ

視座について

  • 視座とは「物事を見る姿勢や立場」のことで、一般的には「高い」方が良いとされる
  • 「視座が高い」と、問題を発見でき、選択肢を多く持て、ゴールに至る効率があがる
  • ただ、「視座が高い」だけでは不足があり、「鳥の目」「蟻の目」「魚の目」の3つの目を併せ持つ必要がある

3つの目について

  • 鳥の目 : 大局的に見る
  • 蟻の目 : 現場から見る
  • 魚の目 : トレンド変化に着目
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視座とは?

辞書的には「物事を見る姿勢や立場」という意味の視座ですが、その言葉通り、物の捉え方・問題意識って人によって違うよね、という前提から考えられます。

良く語られる例えで言うと、ビルの入り口に立っている人では遠くは見通せませんが、ビルの屋上に立っていれば遠くを見通せる、ゴールへの最短距離を俯瞰して見える、と語られたりします。

別の例えで言うと、直近の新型ウイルス騒動において、普通の人たちは「怖い」「マスクが買えない」「学校が休みになって育児が大変」と考えますが、これが企業経営者でしたら「今後の業績の見通し」「会社としての対応方針」「銀行や株主との調整」などについて考えます。

これは下記のイメージで考えれば、ポジション的にも表現しやすく、立場が変われば、物の見え方は大きく異なってくるよね、というのがわかりやすいと思います。

視座 役 職

↑高 社 長
|  部 長
|  課 長
|  係 長
↓低 平社員

つまり、ビジネス的観点での「視座」の使い方では「高い」ことが良しとされています。

しかし、それは本当でしょうか?
視座が高いことが、本当に良いことなのでしょうか?

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視座が高いことは実際に良い

視座が高いと、より上位レイヤーの立場にたって問題を捉えることができます。
自分個人のことではなく、事業や会社の立場にたって、やるべきことを策定し実行できるのです。
広く遠くを見ているので、発生しうるであろう問題を予期できる場合もあり、また成果をだすまでのプロセスも複数立案でき、成果を出す、ゴールにたどり着くまでの効率が爆あがりします。

逆に視座が低いと、自分中心に物事を考えてしまいます。
仕事が忙しければ愚痴を言い、まわりの人のことを考えずに、自分自身だけの領域で部分最適化を実行します。
誰かが休む(病欠だったり、産休だったり、色々な理由が考えられる)と「自分の負担が増える」と不満を見せ、チームの雰囲気を悪くし、自分が休みたい状況において休みづらくする、自分の首を絞めてしまう状況を作る場合もあります。

これだけ見ると、確かに視座は高い方が良いように見えます。
実際、視座は高い方が良いです。

これは何も仕事の話だけでなくプライベートにおいても同じで、会社で出世したくない、と考えている人も、視座は高い方が良いことが多くあります。
ゴールにたどり着くまでの効率が爆あがりするのは、自分自身の自己実現に対しても言えるからです。

自分が持っている知識や経験、置かれた環境、自分自身がやりたいこと、人生の幸せ。
そういったことを高い視座で俯瞰して見れれば、現在地点からゴールまでの距離を、最短に縮め、自己実現を果たせる可能性があがるのです。

ただし、、、「高い」だけの視座は危険

とある大学生A君がいます。
A君はボランティア活動に熱心で、若いのにビジネス書をたくさん読み、起業家などが主催するセミナーなどにも足を運ぶ、勉強家です。
将来は起業をし、世の中を良くしたいと考えています。
しかし、まわりの意識が低い、「視座が低い」人たちを見下す傾向があり、友達は少ないです。

とあるベンチャー起業家Bさんがいます。
若くして起業し、世の中を良くしたいと思い、壮大なミッション・ビジョンを掲げ、ごくごく少人数の創業メンバーと共に頑張り、何とか今までに無いサービスをローンチしました。
セールスのミーティングでBさんがいつも言うのは「それはミッション・ビジョンに照らし合わせて、どうなんだっけ?」。
顧客はまだついていません。

とある大企業社長C氏がいます。
誰しもが知っている多店舗展開をしている会社です。
いわゆる「ブラック」企業として。
C氏は店舗を効率よく運営する手法として、「ワンオペ」という人件費を最小化できる方法を考え実行しました。
会社の業績は爆あがりしました。
短期的には。
ある時、時流の流れか、社会から叩かれ、従業員は去り、きれいな形のある店舗が大量に営業できない状況に陥りました。
当然、業績も急下降です。

これらは、若干の編集は加えているものの、どれも実在の人物を参考にした例です。

物事を高い視点で見て、社会を良くしよう、会社の業績を良くしよう、と思うのは結構なことなのですが、それだけではダメなのです。

A君に足りないのは(不足だらけなのですが)、結局の所、本人の実務経験であったり、そのどうしようもないコンプレックスに向き合わない精神です。

Bさんに足りないのは、いいから足を動かして顧客をとる、という圧倒的な行動力です。
どんなに崇高な志を持っていたとしても、吹けば消えてしまうような会社では何の説得力も影響力もありません。

C氏に足りないのは、時流を読む力であったり、現場を見ない、もっとストレートに言えと経営者としての能力不足です。
きっと、部課長としては優秀だったのかもしれません。
(人は、無能になるまで出世を続ける、と言いますしね。ピーターの法則。)

それでは、視座が高いだけではダメなのならば、何が必要なのでしょうか?

鳥の目、虫の目、魚の目

答えはケースバイケースで人によって違うものなので、一概には言えません。
しかし、別の観点を提示することはできます。

それは、「鳥の目」「蟻の目」「魚の目」の3つの目です。
(「魚の目」は「うおのめ」と呼びますね。)

鳥の目とは、鳥のように上から俯瞰して物事の全体感を掴む、ようは「マクロの視点」です。
上述していた、「高い視座」に近いものがありますが、微妙に違います。

蟻の目とは、蟻のように小さな目で、目の前にある物事の状況を見る、ようは「ミクロの視点」です。
「低い視座」に近いと思ってしまう人がいるかもしれませんが、全然違います。

魚の目とは、「潮の流れを読む」、つまり時代や市場の流れ、トレンドの変化に着目する視点です。
「魚眼レンズ」からイメージして、世の中を今までに無い切り口から見る場合に使うたとえとして、言及されることもあります(こっちを超音波視覚的な感じから、コウモリの目、と言ったりする人もいますね)。

上であげた、A君、Bさん、C氏に、この3つの目があったらどうでしょうか?
A君が、鳥の目、自分を客観的に見る視点を持てば、態度を改め、応援し協力する人をたくさん得られるかもしれません。
Bさんが、蟻の目、ひたすら足を動かし、汗をかき、顧客を獲得する貪欲な動き方をすれば、マーケットの声をたくさん拾え、サービスのブラッシュアップにつなげられると共に、実際に顧客を獲得できるようになるかもしれません。
C氏が、魚の目、時代の変化を掴み、これまでの現場経験を振り返り、今必要なことを再度考え直せば、もしかしたら業績悪化を防ぐことができたかもしれません。

この「鳥の目」「蟻の目」「魚の目」の3つの目は、「視点」の話であり、「高い低い」の話はしていません。
「視座は高い方がよいが、それだけではダメで、この3つの目を併せ持つことが重要だよ」というのが私の提案です。

最後に

以上、「視座が高い」ことだけでは不足があり、「鳥の目」「蟻の目」「魚の目」の3つの目を併せ持つことが必要という、「視座の高さ」に関する私の提起でした。

最後に、視座の高さだけでは不足があるよ、と言いつつ、視座を高めるトレーニング方法を一つ紹介します。

私が卒業したビジネス・スクールでは、「もしあなたが、〇〇〇の社長だったら、どうしていくか?」というケーススタディを、約100本こなす課題が与えられます。
過去のケーススタディではなく、今実際に課題を抱えている企業を題材に、未来どうしていくか?をひたすら取り組むのです(「リアルタイム・オンライン・ケーススタディ(RTOCS)」と呼ばれていました)。
学生は2年間に渡り毎週毎週、他の講義の課題もある中、ハードシンキング、ハードシングスをすることになります。

お手軽に取り組めるトレーニング方法なので(全然お手軽じゃない)、興味がある方はやってみてください。

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