なぜフェイクニュースやデマは拡がってしまうのか?~知能指数と相関がある模様~

ビジネスと心理学

フェイク/デマは、初期の発信者がごく少数であっても、現代社会の構造上、非常に早く、しかも多数の集団行動をゆがめやすくしています。
ここではフェイク/デマが拡散する理由と、個人での防衛策を、多数の論文を元に解説します。
どうやら、認知機能、つまり知能検査のスコアと相関があるようです。

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なぜフェイク/デマは信じられてしまうのか?

あることを「どこで」知ったのかは覚えていないが、「どこかで」知ったことは覚えているという現象を「錯誤帰属」と言います。
いわゆる広告(CM)も錯誤帰属を利用しており、繰り返し広告を見ることにより、「見覚えがある」という状況を作り出せ、購買行動につながる効果があります。
フェイク/デマも一緒で、こちらの記事(豪モナッシュ大学)では、フェイク/デマを何度も繰り返しインプットしてしまうことにより、信じてしまう可能性が高くなる傾向があるとしています。

人は、物事の正確性より、自分自身が信じたい内容を重視して記憶してしまう脳のメカニズムになっており、それがフェイク/デマと重なった際には、記憶が強く残るのです。
さらに、あとになってそれがフェイク/デマだという情報をインプットしても、その誤った記憶は訂正されないままになる傾向があるとしています。

これは認知能力、つまりは知能検査のスコアが低い人ほど、この傾向があるとのこと。
こちらの研究(アイルランド・コーク大学、アメリカ・カリフォルニア大学による合同研究)では、知能検査のスコアが高い人ほど、ニュースの真偽や、自分自身の偏見について疑問を抱きやすい傾向があることを示しています。

また、集団のメンバーが相互に影響しあう状況では、集合知が集合浅慮(愚かな集合知)に陥ってしまう点も指摘できます。
集合知は、意見をもった個人の、その意見を多数集めると正しい結論に近くなる、という考え方です。
こちらの記事(マサチューセッツ工科大学)では、個々人が相互に影響しあう状況では、何かのバイアスがかかり、集合浅慮に陥りやすい、つまりはフェイク/デマを信じやすい状況に陥りやすくなることを示しています。
(認知機能が高い人は、集合知の影響を受けにくく、バイアスがかかりにくいことが、併せて示されている。)

さらに恐ろしいことに、人々は自分が信じたい内容のフェイク/デマを信じるだけでなく、そこから「偽の記憶」までを作り出してしまうことが、こちらの研究(アイルランド・コーク大学、アメリカ・カリフォルニア大学による合同研究)で示されています。

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年齢による差についてはあまりわかっていない

年齢層による、フェイク/デマの影響はあまりわかっていません。
とりあえず高齢層ほど、フェイク/デマの拡散に関与してしまう傾向はあるそうですが、シンプルにITリテラシーの問題である可能性が高そうです。

こちらの研究(ニューヨーク大学・プリンストン大学)では、高齢層ほど教育水準や性別、人種、収入などに関係なく、フェイク/デマを拡散しやすいという結果を発表しています。
研究者は、これはITリテラシーの問題では、と推測しています。

一方、こちらの調査(イギリス情報通信庁)では、若年層では、検索結果が検索したかった情報なのか、単純に人気がある検索結果なのか、広告なのかの区別がついていない傾向があることを示しており、若いからITリテラシーが必ずしも高齢層より高いわけではないことがわかっています。

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個人でできる防衛策

フェイク/デマは集団だからこそ発生します。
阻止することは難しく、一人ひとりが自己防衛していくことが、現状、一個人でできることです。
それでは、個人で出来る防衛策は何でしょうか?
答えはシンプルで、上述の通り、認知機能が高い人ほどフェイク/デマの影響を受けにくいことがわかっているため、この認知機能を高めればよいのです。
具体的には、下記のとおりです。

1)情報のレベルは何かを確認する豪モナッシュ大学

見聞きした情報が、どのレベル感なのかを確認すると良いでしょう。
具体的には、その情報が単純に「事実」だけを伝えたものなのか、推測や意見・感想が混じった「主観」なのか、それとも誰かが言っていることを伝達している「伝聞」なのかの識別です。
情報の質としては、「伝聞」が一番低いことはイメージしやすいでしょう。

2)情報源を確認する豪モナッシュ大学

見聞きした情報の発信は、パブリック性の高い情報メディアからの発信でしょうか?
また、複数の情報メディアから、同様の発信が行われているでしょうか?
SNSなどの限られた情報源しかない場合は、その真偽を疑う必要があります。
非常に拡散されている情報であったとしても、それが上記の「伝聞」である場合は、それは「限られた情報源」であり、情報の質は低いと言えます。

3)誰がそのフェイク/デマで利益を得るのかを想像する豪モナッシュ大学

特定の政治団体や、企業など、それによって誰かが利益を得ることはないでしょうか?
例えば情報が下記のような点に該当する場合は、その真偽を疑う必要があります。

  • 選挙に影響を与えていないか
  • 人種や性別など、特定の人々への中傷していないか
  • 広告収入(クリックベイト)などを目的としていないか

実際に、フェイク/デマを発信しているボットの発信内容は、特定の政治団体に有利な内容になっているという主張もあります(Inverse:海外のメディア)。
(ただし、この情報もどこまで真なのかは、疑うべきなのは留意。)

4)むやみに感情に訴えかけるものがないか確認するウェスタンシドニー大学、クイーンズランド工科大学

センセーショナルな見出しの記事ほどクリックされやすく、読まれやすいことは既知の事実です。

  • 見聞きした情報は、センセーショナルな見出しになっていないでしょうか?
  • 感情的で誰かの人間性を否定するような言葉を使っていないでしょうか?
  • 衝撃的な画像や過度に加工された画像を使っていないでしょうか?

こういった点に該当する場合は、その真偽を疑う必要があります。

5)バイアスを受けやすい人からは距離を置くスペイン・カハール研究所

自分自身の意見や考えをもっている人は、自分の賢さに自信があるので集合知を無視する傾向にあります。
つまり、バイアスにかかりにくい点が指摘されています。
しかし、バイアスを受けやすい人は集合知の影響を受けやすいので、会議など、集合知の重要性が高まる場面においては、残念ではありますが、メンバーから外す方がよいでしょう。
自分の意見を強くもった人たちによる結論を出したあとに、より精度を高めるための調査やトライアルなどを実施すると、より正解に近づきやすくなります。

(参考)現代社会の情報の拡散について補足

Twitterアカウント全体の内、わずか6%のボットから、フェイク/デマの疑いが強い「信頼性の低いコンテンツ」の31%が発信・拡散されていたという研究があります(米インディアナ大学)。
情報の拡散初期段階では、ボットから情報が発信され、拡散がはじまるとインフルエンサーを介して世の中に広く拡散されていたとのことです。

実際に、直近発生している騒動に関しても、誤情報を拡散するボットが登場し、混乱を招いているいるという報道があります(Inverse:海外のメディア)。

初期の情報はボットから拡散されることはそうだとして、なぜ人が後期の拡散に加担してしまうのでしょうか?
これは「目新しさへの欲求」が要因だとされており、真実の情報より、フェイク/デマの方が20倍もの速度で、人の手によって拡散することが、こちらの研究で示されています(米マサチューセッツ工科大学)。
このため、ボットの封じ込めもそうなのですが、情報の真偽についてわかりやすく表記する「ラベリング」が求められています。

また、SNS上での拡散は、「怒り」の感情については、非常に拡散されやすい傾向があることが示唆されています(中国・北京航空航天大学:学生による調査)。

この理由としては、シンプルに脳がそのような構造になっているから、というのが一つの指摘です。
こちらの研究(カナダ・ラヴァル大学)では、新規情報にふれるとドーパミンが増加する、としており、これは自分自身にとってプラスとなる「報酬の可能性」を予測するためです。
太古の時代から人は、食料の獲得、もしくは危機からの回避のため、新規の情報に対しては敏感に、感情的に反応していました。
それが生存に有利だったからです。
そのため、キャッチ―なフェイク/デマや感情に訴えかける情報は記憶に残りやすく、人々に影響を与えやすいのです。

感情は人を幸福にも不幸にもするもので、それらは決して否定するものではありませんが、この現代社会、理性をもって行動していきたいものです。

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