カテゴリー
ビジネスと心理学

人間関係の心理/バイアス5選

人間関係は古今東西老若男女問わない共通の悩みです。
良好な人間関係は人の身心、そして人生に大きな影響を与えます。
充足された自尊心や自信、成長、幸福度にもつながりますし、一方でストレスやうつと言ったマイナスにもつながり得ます。
今回は人間関係の心理/バイアスについて5つ程ピックアップします。

第一印象で相手を評価するけれども、それは正確性に欠ける

まず、よく言われる話なのですが、人は第一印象で相手を評価しがちだ、というものです。

多くの研究が、人間の脳は、見知らぬ誰かをみた時に、無意識にその相手の第一印象を決める働きをすることを示しています。
顔のパーツで相手を信頼できるのか否か判断したり、笑顔を見れば親しみやすさを感じたりするのです。

ここでポイントなのが“無意識に”という点です。

じっくりと人の顔を観察した結果として、このような反応が出るのであれば一定の理解ができるのですが、どうやら人が自覚して“顔”という画像を認識するよりも早い時間で脳がオートメーションに第一印象を決めてしまうことが示唆されています。

そして、ここで決まった第一印象が、実際の性格や人の性質と全く相関しないことも示されています。

「第一印象」で相手を評価しがち、ということはよく知られた知見ですが、それがどれだけ自動的に行われるのか、まではあまり知られていないでしょう。
人の脳は、驚くほど無意識無自覚に、オートメーションに第一印象を決め、場合によっては判断を誤らせることを、人は知る必要があります。

相手のことをどう感じるかは、自分の感情に左右されるし、それは相手も一緒

第一印象がオートメーションに決まる、という点は上述の通りですが。
その第一印象が自分自身の感情で歪む可能性については、感覚的に知っている人は知っているでしょうし、知らない人は全くに無自覚でしょう。

人の認識は、インプットを与えられたらアウトプットを出す、というような反応ではなく、脳内で情報を組み立てて生成されていくものです。

これが、いかに相手に対する印象に影響するのかというと、相手のことをどう感じるのかは、自分自身の感情に左右されてしまう、という点が指摘できます。

いくつかの研究では、相手の感情に対する認識が、その時に感じていた自分自身の感情(やその感情に対する認識)の影響を受けていることを示しています。

そしてこの話は相手も一緒なのです。

友達と思った相手は、自分のことを友達と思っていない

次はショッキングな事実です。

ある研究は、友情が相互に両想いである割合は半分以下程度であることを示しました。

約10万人弱を対象にした調査で、相互に相手に対してどのような認識を持っているのかが調べられたのですが、自分自身が相手に対して友情を感じている対象について、相手も同様に自分自身に友情を感じている割合が上述の通りだったのです。

友情とは何なのでしょうね?

(この点について心理学者は補足しており、友情の定義が人によって異なる点がこの結果に影響しているからでは、としています。自分自身の解釈で友人だと思っても、相手の友人の解釈が自分自身のそれとは異なることは容易に想像できます。例:話が盛り上がる相手なのか?それとも、話が盛り上がらなくても退屈しない相手なのか?)

人気がある、と言っても、それが人物に対してなのか、成したことに対してなのかは違う

次は、人からの好意、という多くの人が望むであろうテーマについてです。

大体の人は、人から好かれる、言い換えると人気であることを望むでしょう。
この“人気”ですが、2種類の人気があります。

それは、「人物に対して」なのか「成したことに対して」なのか、というものです。

前者の「人物に対して」は、純粋な性格や行動特性によるものである一方、後者の「成したことに対して」はより俗物的なものです。

この俗物的なものをより具体で述べると、会社の社長で地位がある、であったり、何かしら成功したから金まわりが良い、というようなものです。
何か書籍やYoutubeがヒットし、影響力が大きい、というようなものもそうです。

プラスの影響がある人気は前者の「人物に対して」であり、心身ともに健康的で幸福度も高い傾向があります。
一方、後者の「成したことに対して」の場合、満たされぬ充足感に苦しむことになり、実際にストレスやうつに苦しむ割合が多いことがわかっています。
さらに、その地位から降りた時(例:社長を退任した後の人生)や、お金が無くなった時(例:わかりやすく破産した)、ブームが去った時、これまでちやほやしていた周囲の人物達がすっと離れていくことも指摘できます。

人からの好意については、それがどのような種類によるものなのか、そして自分自身が何を求めるのか。
一考する必要があるでしょう。

思ったほど他人から好かれている

悲しい事実が続いて最後は朗報です。

一般的に人は、自分自身のことを過大評価する生き物です(例:私は平均よりちょっと頭が良い、と大体に人が思っている)。

しかしこれは、人間関係においては適用されない例があります(特に関係性が深くない場合は)。

ある研究では、お互いに初対面の相手について、相手がどのように思っているのか?について調査をしました。
調査は、ペアに簡単な会話をさせた後に、アンケートをとる形式です。
その結果、相手が自分のことをどう評価しているのか?という点数より、相手が実際に評価した点数の方が高い傾向があることが示されたのです。
そして、この傾向は、比較的長期の関係性においても同様に示されました。

つまり人は、人間関係においては、自分自身に対する評価を過小に捉える傾向が存在する可能性があるのです。
(言い換えると、あなたは思っている以上に人から好かれている、ということ。)


人間関係の悩みは人が誕生して以来、ずっと普遍的に持たれているものです。
そして、科学の知見が発達した現在においても、わかっていることはまだ一部です。
それらを踏まえて改めて考えて見ると、言えることが一つだけあります。

あんまし気にすんな。

カテゴリー
ビジネスと心理学

人は難しい問題に直面すると無意識に簡単な問題に置き換え答えを間違える

難しい問題に直面した時、人の思考回路はどのようになるでしょうか?
人は、このような時、無意識に簡単な問題に置き換えて考える傾向があります。
また、その結果として答えを誤ることもしばしばあります。

置換バイアスという機能

表題の通り、人は難しい問題に直面すると無意識に簡単な問題に置き換え、そして答えを間違える傾向があります。
ある心理学の研究チームは次のような実験を行いました。

https://link.springer.com/article/10.3758/s13423-013-0384-5

次のような問題を被験者に解かせ、その自信度を回答してもらう、というものです。

(実験課題)「バットとボール、あわせて1.10ドルの値段です。バットの値段はボールよりも1ドル高い時、ボールの値段はいくらでしょうか?」

この問題はバット=ボール問題と言い、心理学の世界では古典的な問いかけのようです。

一般的な人はこの問題を与えられたとき、正答率は20%程で、解答として10セントと答える傾向があるとのこと。
(正解は5セントです。x + (x + 1) = 1.10 なのだから、x = 0.05となるのは明確であり、少し考えればわかることのはずです。)

人間には置換バイアスというものがあり、難しい問題が目の前にある時、無意識に単純化する思考回路を働かせます。

この古典的な問いかけにより、(難しいとは言っても少し考えればわかる簡単な問題でも)容易に置換バイアスが働くことがわかります。

実験では、248名の学生を対象にし、対照となる課題も与えられました。

(対照課題)「雑誌とバナナ、あわせて2.90ドルの値段です。雑誌の値段は2ドルです。バナナの値段はいくらでしょうか?」

対照となる課題では、「〇〇の値段は■■よりも△ドル高い」という条件がない、より単純な課題となっています。

さらに実験では、グループ別に実験課題と対照課題を入れ替えたり(雑誌とバナナの方に△ドル高い、という条件を入れる)、問題の順番を入れ替えたり(実験が先か、対照が先か)して、設問の影響を排除するよう、設計が行われました。

そして、被験者は解答後に、自分自身の解答に対する自信度を0%(全く確信がない)から100%(完全に自信がある)の間で数字で答えました。

その結果、これまでの研究が示した通り、実験課題に対する正答率は20%程と、置換バイアスが働いていることがわかりました。

自信満々ではない模様

この結果は、これまでの多くの研究が示したものの確認ではあるのですが、興味深いのが自信度についてです。

実験では、実験課題において誤解答を行ったグループの自信度は、実験課題における正解のグループ、対照課題における誤解答・正解両グループより、低いものだったのです。

つまり、複雑な問題において置換バイアスが働いた場合、その誤った解答に対して自信満々ではなく、不安や疑念を抱いている、ということです。
(自分の解答が疑わしい、ということをある程度認識している「幸せな愚か者」ではない、ということ。)

現実における知見の活用

それでは、この知見を現実世界において活用するには、どのように考えれば良いでしょう?

まず、人は物事を単純化して考える傾向がある、という点の認識です。

このこと自体は決して悪いことではありません。
脳のリソースを有効活用し、素早い意思決定を行うにあたって、自分自身が理解しやすいように物事を解釈する機能は重要なものです。
ポイントは、この機能(置換バイアス)が悪さをする可能性がある、という点を知っているか否かです。

知っていれば、「あ、今自分は過度に問題を単純化したぞ。」ということに気が付ける可能性が増します。

次のポイントは、「疑わしいと感じている」点にあります。
つまり、何かしら出した解答に対して、何とも表現しがたい疑念を抱いているのであれば、その疑念は正しい可能性がある、ということです。

この点についても、人にはこのような性質がある、ということを知っていれば、その疑念をキャッチし、思考を正す可能性が増すはずです。

いずれにせよ、「知る」ということが、このような知見を現実において活用するためのポイントと言えるでしょう。

カテゴリー
ビジネスと心理学

衆愚の罠をさけ集合知の力を活用するためには?

たくさんの人の意見や知識を集めて分析すると、そこからより高度な知性を見出すことができるのが集合知の力です。
しかし、集合知は衆愚(烏合の衆と化した大衆による無定見な状態)に陥るリスクも存在します。
衆愚の罠をさけ集合知の力を活用するためにはどうすれば良いのでしょうか?

集合知は互いに影響しあう状況で衆愚に陥りやすい

集合知は、個々人が相互に影響しあう状況では、何かのバイアスがかかり、集合浅慮に陥りやすい、つまりはフェイク/デマを信じやすい状況に陥りやすくなります。

さらに恐ろしいことに、人々は自分が信じたい内容のフェイク/デマを信じるだけでなく、そこから「偽の記憶」までを作り出してしまう点も指摘できます。

一方で認知機能(IQの水準)が高いと、このような影響を受けにくいこともわかっています。
(他にも高齢者である程、衆愚に陥りやすいこと、若くてもITリテラシーが低い場合には同様であることがわかっています。)

つまり、集団の中に、衆愚に陥りやすい人と、陥りにくい人が混在している、ということです。

「集合知」は正しくは「自分に自信がある人の知」

それでは、どのようにすれば集合知の力を活用できるのでしょうか?

スペインのカハール研究所の研究チームは、集合知に含まれるバイアス、つまりは衆愚を除去し、集合知を活用するための研究を行いました。

https://arxiv.org/abs/1406.7578

研究チームは被験者に「スイスとイタリアの国境の長さを推定して下さい。」という課題を与えました。

そして、この課題に取り組んだ被験者には、他の被験者の回答が提示され、再度課題に取り組みます。

ここで、他の被験者の影響を受けにくい人と受けやすい人にわかれます。

この影響を受けにくい人達(独立した考えを持つ人達:言い換えると自分に自信がある人達)の意見を集約すれば適切な集合知になる、と研究者たちは言及しています。

「私たちの結果は、グループの平均値、中央値、幾何平均値のような単純な演算では、グループが良い推定値を出すことはできないかもしれませんが、社会力学における個性を考慮したより複雑な演算を行うことで、より良い集団的知性が得られることを示しています。」

現実に適用するには?

これらの知見を現実の世界で適用・活用するにはどうすれば良いでしょうか?

まず、何かしら人に意見を求める時に、情報を与え過ぎない、という点があげられるかと考えられます。
というのも、相手が他人の意見に影響を受けやすい人なのか、受けにくい人なのか、簡単に判別できるとは限らないからです。

グループディスカッション等を行う際にも、この点は十分な配慮が必要でしょう。
一部の声が大きい人の意見に他の人が左右されていてはグループディスカッションの意味がありません。
ディスカッションを少人数にグループ分けをする、1対1のヒアリングを行う等の工夫が必要です。

また、上述の実験を再現すれば、どの人が人の意見に左右されやすい人なのか、そうでない人なのかの識別が可能です。
これは仮想的にも可能で、グループディスカッションの経過をつぶさに観察していれば、途中で容易に意見を変える人が誰なのかがわかってきます。
(調和のために意見を変えたかのように振舞う人もいるので、その点は留意が必要でしょう。)

上記2つのような手続きを踏めば、他人の意見に影響を受けやすい人、受けにくい人のいずれの影響も回避して、集合知の力を活用できるようになるでしょう。
(書いていて、相当な配慮や観察力が必要であり、困難なことなのだ、ということもわかりました。その意味で冒頭に提示した記事も参考になるでしょう。)

カテゴリー
ビジネスと心理学

楽しいから笑顔になるのか?笑顔だから楽しいのか?

表情フィードバック仮説というものがあります(「表情がフィードバックされて、その表情の感情を引き起こす」という仮説)。
これを受けて、何はともあれ笑おう、笑えば楽しくなる、というアドバイスを見聞きすることがあります。
果たして、これは正しいのでしょうか?

表情フィードバック仮説は正しいのか?

「楽しいから笑う」のではなく「笑うから楽しい」、「悲しいから泣く」のではなく「泣くから悲しい」と言われることがあります。

いわゆる“表情フィードバック仮説”というものです。

実際、これを受けて、メンタルコントロールの方法論として「無理にでも笑顔を作ろう」というアドバイスを見聞きすることがあります。

果たして、これは正しいのでしょうか?

結論から言うと「わからない」なのですが、現時点では懐疑的な証拠の方が多いようです。

内向的な性格の人は無理に外向的に振舞おうとしない方が良い、という知見

例えば、こちらの記事では、内向的な性格の人は無理に外向的に振舞おうとしない方が良い、という内容の知見について記載をしました。

一般的に外向的であることは良しとされており、また、外向的に振舞うことによりポジティブな感情を高め、また幸福感も高める、とされています。

一方、性格(気質)別にこの知見が検証されていませんでした。

研究の結果、外向的な気質の人は、外向的に振舞うことにより、確かに従来確認されていた通りの結果が出たものの(ポジティブな感情を高め、幸福感も高まった)、内向的な性格(気質)の人の場合は逆で、却ってネガティブな感情を高めてしまう、という結論が示されました。

この知見を踏まえると、「無理にでも笑顔を作ろう」というアドバイスがどこまで適切か疑わしくなります。

大規模なメタ研究では

もちろん、この領域における大規模なメタ研究も行われています。

https://psycnet.apa.org/record/2019-19412-001

研究者たちは、138の研究から得られた286の結果についてメタ分析を行いました。

その結果、表情フィードバック仮説のポジティブ効果は統計的に有意ではあるが、その効果は非常に小さい、ということがわかりました。

つまり、「楽しいから笑う」のではなく「笑うから楽しい」、「悲しいから泣く」のではなく「泣くから悲しい」は正しくはありつつも、その効果は限定的だ、ということです。

ただ気になる点として、上述の気質と態度の研究のような観点での知見が少ないことが指摘できます。

別の研究では、いわゆる「感情労働」を行っている労働者はストレス地が高く、飲酒量が多い、という知見もあります。
(感情労働とは、感情が労働内容の不可欠な要素であり、かつ適切・不適切な感情がルール化されている労働のこと。肉体や頭脳だけでなく「感情の抑制や鈍麻、緊張、忍耐などが絶対的に必要」である労働を意味する。 )

https://psycnet.apa.org/record/2019-11105-001

この点を踏まえると、本来感じていない表情を無理して装うことは、メンタルに負担をかけて、疲弊してしまう可能性を払拭できません。

もちろん仕事で必要であるならば、表情を装う場面は多々あるでしょう。
しかし、長期的な身心の健康を考えた時に、必要もないのに無理して表情を装うことは避けた方が良いと言えるでしょう。

これらの知見は、組織を設計する経営者や人事部門の方たちも認識しておいた良いと言える内容です。

カテゴリー
ビジネスと心理学

内向的な性格な人は無理に外向的に振舞おうとしない方が良い

一般的に外向的であることは良しとされています。
また、多くの心理学的研究により、外向的な行動はポジティブな感情を高め、幸福感を抱くことにつながるという知見が示されています。
しかし、これは全ての人に当てはまるとは限りません。
内向的な性格な人は無理に外向的に振舞おうとしない方が良いのです。

外向的に振舞うことは良しとされているが

上述の通り、社会一般的に外向的であることは良しとされ、多くの場面で高い評価をうけがちです。
外向的に振舞うことはポジティブな感情(PA)を高め、幸福感(ウェルビーイング)にもつながります。

また、出世にプラスの影響がある性格として「外向性」が唯一のものである、という研究もあります。

これだけ聞くと、外向的に振舞うことは良いことばかりのように見えますが、実際には見えないコストが隠れています。

外向的に振舞うことのコスト

複数大学の研究者は、外向的に振舞うことのコストと便益について調査を行いました。
良しとされている外向的行動についてのコストがこれまで研究されてこなかったからです。

https://www.researchgate.net/publication/327119699_Costs_and_Benefits_of_Acting_Extraverted_A_Randomized_Controlled_Trial

研究では147名の参加者に対して一週間に渡り「外向的に振舞うこと」を指示したグループと対象群にわけて、ウェルビーイング等に与える影響について調査しました。
この研究のポイントは、外向性・内向性という気質的な要因について深掘りした点です。

調査では、その場および事後的な振り返りで、ポジティブな感情(PA)、ネガティブな感情(NA)、疲労感等、ウェルビーイングの評価が行われました。

その結果、外向的な性格な人は、「外向的に振舞うこと」によりPAが増加し、”自分自身が本物であるという感情”にもプラスの影響を与えるという従来示されていた知見の確認がされました。
一方、内向的な性格の人は、PAの増加が弱く、NAと疲労感が増加し、“本物の感情”にマイナスの影響が出ていました。

つまり、内向的な性格の人が無理に外向的に振舞うとネガティブな感情を抱き、また疲れてしまうのです。


もし、自身が内向的な性格だ、外向的に振舞うと疲れる、という自覚があるならば、無理に外向的に振舞うようなことは避けた方が良い、ということは明確です。
周囲から得られるアドバイスについて、「人による」ということを意識し、自分にあった方法を適切に取り入れていくことが望ましいと考えられます。

また、人の性格が「外向的」or「内向的」とキレイに分かれるわけではなく、誰しもが外向的な部分と内向的な部分を持ち合わせています。
そのことを踏まえると、自分自身が無理なくできる範囲での外向性の発揮からはじめるのも、コミュニケーションの訓練の意味も含め良いと考えられます。
同じ気質をもった人たちの中で、外向的に振舞うようにすることも良いでしょう。

外向的に振舞うことのメリット自体は明確なので、うまく享受したいものです。

カテゴリー
ビジネスと心理学

“交渉”は後々の関係性に悪影響を及ぼす可能性がある

仕事でも生活でも。
人は日常的に何かしらの“交渉”を行っています。
この“交渉”ですが、取扱いを間違えると後々の関係性に悪影響を及ぼす可能性があります。

“交渉”後、仕事のパフォーマンスが下がるという実験

ペンシルベニア大学の研究チームは、“交渉”とその後の仕事におけるパフォーマンスの関係について、複数の実験を行いました。

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3039256

代表的なものとして、参加者(被験者)を2つのグループ、賃金に関する交渉を行ったグループと行わなかったグループにわけて、その後のパフォーマンスについて調べた物があります。
(雇用者と労働者は、報酬の取り扱いにおいて、基本的には対立関係が潜在的にある。賃金が少なければ雇用者の取り分は多くなるし、その逆もまた然り。)
実験では、純粋に交渉のプロセス自体がパフォーマンスに与える影響を見るために、交渉を行おうが、行うまいが、賃金は変わらない、という設定がなされました。
(なお、複数の実験で、トータル1,200人が参加した。)

果たして、結果はどうだったでしょうか?

賃金交渉を行わなかったグループより、行ったグループの方が仕事のパフォーマンスが低い、という結果が示されました。

この結果については、賃金交渉、というプロセスを挟んだ結果、雇用者と労働者の間にある潜在的な対立関係が、顕在化したのが要因、と考えられます。

つまり、表題の通り、“交渉”は後々の関係性に悪影響を及ぼし、パフォーマンスも低下させる可能性があるのです。

それでは、どのように対処すれば良いのでしょうか?
3つの方針が考えられます。

Win-Winに持っていく

上述の話はよくよく考えれば、感覚的にわかることのはずです。

交渉というものはとかく「パイの取り分を多く」することが勝利条件とされがちです。

しかし、自分の利益“だけ”が多い状態で、相手が納得すると思うでしょうか?

誤解をしていたら非常に危険なのですが、交渉を行い、契約を締結したと、さぁ仕事に取り掛かろう!という時、一方的に損を被った相手方は交渉のプロセスについて、印象強く記憶するはずです。
冷静に考えたら、一方的に損を被った相手方が、その後の仕事で手を抜くリスクは高まるのは自明なはずです。
手を抜かなくても、別の契約相手を探され、早々に打ち切りされるかもしれません。

(例:一般的な高い買い物で、商品を自宅に送ってくれるとします。このシチュエーションで価格交渉で優位に立ったとして、店員さんが丁寧に対応してくれるかどうか。後回しにされるかもしれませんし、梱包が他より雑になるかもしれません。これは通常のビジネスにおいても同様なはずです。)

つまり、第一において、いわゆる「Win-Winな関係」というものを構築しないと、巡り巡って悪影響を受ける可能性があるのです。

そもそも交渉を行わない

研究者は、そもそも交渉を行わない、という選択肢も考えられるとしています。

これは一般的に言われているコミュニケーションとは逆の提案です。

ようは、避けられる交渉ならば避けることによって、関係性の悪化も回避しよう、という戦略です。

現実的には、交渉を避けること自体による関係性の悪化も考えられるので、使いどころは難しいようにも思いますが、一つのオプションとして持っておくのは良いでしょう。

ラポール形成を行う

また研究者は、ラポール形成の重要性についても触れています。

ラポールとは、端的に言うと相手との信頼関係のことです。

ラポールとはカウンセリングやセラピーといった心理療法の世界で、基本とされるクライアントとの関係性のことで、一言でいえば信頼関係のことです。フランス語で「架け橋」を意味する言葉です。
架け橋ができていないと人の動きや物流などに支障が出るように、このラポール形成ができていないと、カウンセリングやセラピー、またコーチングなどのどんなテクニックも機能しないと言われます。
このことは心理療法の世界だけでなく、セールスや交渉、プレゼンといったビジネスの世界はもちろん、家庭やプライベート、また教育の分野でもラポールという言葉は使われるようになりました。
ラポールとは、相手との良好な関係性のことですが、安心感、好感、そして信頼性といったいろいろな意味合いを持つ言葉です。大切なことは、あなたのコミュニケーションの目的を成し遂げるためにふさわしい関係であることを理解してください。

Life&Mind「ラポール形成の決定版!プロが教える信頼関係を生み出す秘訣」より

上述の「Win-Winに持っていく」とも共通する要素もありますが、交渉のプロセスの中で、根本的な共通の利益を見出だすことは重要でしょう。
また、世間話や一緒に食事をするなどして、親密な関係を構築し、協力しやすい関係も構築することは重要と考えられます。

これらを通じてラポール形成が図れたならば、交渉は成功と言えるでしょう。


この研究の重要な点は、交渉は一つの単独事象でもないですし、交渉が終わったからそれで万事解決、というものではない、という所にあります。
あくまでも、その後の関係性や仕事をしていく上でのはじまりに過ぎない、という認識を持つことが必要でしょう。

改めて、交渉とは「パイの取り分を多く」することではない、と認識し、相互に利益があり、信頼関係が構築された状態を目指すことが必要です。

カテゴリー
ビジネスと心理学

エコーチェンバー組織は成功しない~多様な意見を聞き、ファクトベースで思考しよう~

多様な意見や情報が飛び交う現代社会。
明らかに間違っている考えなのにも関わらず、その考えに固執し、反対意見を受け入れず排除しようとするエコーチェンバー現象を多く見かけます。
ここでは、エコーチェンバー現象とそれに陥らないためのポイントを解説します。

忙しい人向けまとめ

  • 同種の意見が飛び交う閉鎖的コミュニティに身を置いていると、他の意見を認めず、排除するエコーチェンバー現象が起きやすくなる
  • エコーチェンバー現象に陥ると、明らかに間違った考えを信じたり、周囲に害をまき散らしたりする
  • 会社がエコーチェンバー組織になってしまうと異なる意見が出なくなり、倒産、最悪の場合リビングデッド化する
  • エコーチェンバー現象に陥らないためには、人の話を聞く、ファクトベースで考える、自分は間違っているという前提立つ、この3つのポイントが重要
  • ただし、「軸」はブラさないようにしなければいけない

エコーチェンバー現象とは

コミュニティというものは、えてして同種の人が集まりやすいものです。

この同種の者同士で集まったコミュニティ内では、同じような意見が飛び交いやすいものです。
当然、自分自身の意見も肯定されやすい環境にあります。
このような環境にいると、自分自身の意見や主義主張・思想信念が正しいと思い、他の意見を認めず、排除するようになっていきます。
この現象をエコーチェンバー現象といいます。

残響音が鳴る共鳴室の様子と、閉じられたコミュニティ内で同じ意見が飛び交う様子が似ているところから、名付けられた現象です。
SNSの発達と共に提唱されました。

自分自身の意見や主義主張・思想信念が正しいと思い、他の意見を認めず、排除するようになる。

この言葉を見ると、非常に恐ろしいと感じませんか?
実際にこの状態になると、実害を伴う被害がまき散らされます。

新型コロナウイルス騒動と経営の現場の2つの事例で、エコーチェンバー現象により起きる問題を考えていきます。

(エコーチェンバー現象から至る「バックファイア効果」について、こちらの記事も参照。)

新型コロナウイルス騒動における言説

新型コロナウイルス騒動において、いくつかの対立する意見が飛び交っています。

PCR検査の全数実施の是非や、外出自粛に関して過剰対応と考えるか否かなどです。

この内、PCR検査の全数実施だけを例にとって考えると、次の記事でも書いた通り、PCR検査自体が100%の精度の検査方法では無いため、全数検査は意味が無いことは冷静に考えれば明らかです。

(ここでは詳細に触れませんが)また、そもそもとして臨床検査技師の人数や、検査機器や試料の数に限りがあり、リソースの観点で全数検査ができないことも明らかです。
同様に、簡易キットを用いての全数検査を主張する人も出てきていますが、精度が落ちるため、意味の無さに拍車がかかることも明らかです。
仮に全検査リソースを新型コロナウイルスの検査に振って全数検査を実施したとしたら、他の医療リソースがなくなり、それにより実害を被る別の病気の方もリアルに出てきます。
どのようにロジックを構築しようとも、PCR検査の全数実施はやらない方が良いのは明らかなのに、主張を取り下げる所か、むしろ主張を強める人たちが存在します。

現代はインターネットを用いて、様々な意見や考えを聞き、情報を収集し、自分の意見をアップデートすることが可能です。
しかし、一度エコーチェンバー現象に陥ってしまうと、確かなエビデンスでもって構築されたロジックを見ても、否定的な意見、攻撃的な意見が飛び交い、捏造としか見えなくなり、敵対的立場として受け入れなくなったりします。
自分たちのことを正義と思っているので、反対意見を述べる人を悪の使者のように見えてしまうのです。

社会的インパクトがある事象において、エコーチェンバー現象が起きると、非常に大きな混乱を招いてしまうのです。
これは、会社のようなコミュニティでも同様です。

経営の現場における問題

会社も一つの閉じられたコミュニティです。
そのため、エコーチェンバー現象に陥りやすい環境が整っています。

創業社長という生き物はえてして自我が強いものです。
プライドが高い人が多いですし、またビジネスを自分で立ち上げるだけの優秀さを持ち合わせている場合も多いです。
つまり、あまり人の意見を聞かない、という傾向があります。
(私も、自分のビジネスを経営している立場なので、自戒を込めて。)

フラット組織であったり、意見が広く交わされるような、一見風通しの良い組織であったとしても、よくよく見てみると同じような意見しか飛び交っていない、社長に対して反対意見を言おうものなら遠回しに排除される、というような会社はあちらこちらに存在します。
幹部社員が離反する要因は、大体において意見の不一致です。
このような状態になった組織のことを、私はエコーチェンバー組織と呼んでいます。

社長含め残っている構成要員が優秀な人たちだったら良いのですが、そうそう都合のよい環境は整っていません。
同じような意見しか持っていない平凡な人たち同士の組織が待ち受ける運命は、衰退、果ては倒産、最悪リビングデッド化です。

起業の本質的な目的はミッション・ビジョンにあるはずで、決して個人の成功やプライドの充足では無いはずです。
(個人の成功やプライドの充足からはじめても全く構わないのですが、事業の成長と共に、自分自身の心も成長させていきたいですよね。)
エコーチェンバー組織は、会社が目指すべき本来のあるべき姿を見失ってしまっているのです。

エコーチェンバー現象に陥らないためには

エコーチェンバー現象に陥らないためのポイントは3つです。

  • 広く多くの意見を聞き、他者の異なる意見を尊重する
  • ファクトベースで考える(データを重視する)
  • 自分は間違っているかもしれない、という考えを持つ

広く多くの意見を聞き、他者の異なる意見を尊重する

まずシンプルに、人の意見に耳を傾けましょう。
それが間違っているとか正しいとかはいったん脇において、ニュートラルにまずは話を聞きましょう。

会議においては、誰かにあえて反対意見を述べる役割を与える、という方法もあります。

その上で、ある意見に関する対立軸がある場合は、それぞれにおいて論理構造を整理すると良いでしょう。
ロジック構造が破綻している場合、意見の怪しさが浮かび上がってきます。
冷静に相手の感情を逆なでないように、ロジックの破綻を指摘し、議論を活性化しましょう。

SNSなどにおいては、フォローする人たちに偏りが無いように意識すると良いでしょう。
むしろ、自分の考えとは反対の意見を述べる人たちをフォローする方が自然とバランスがとりやすくなります。

所属するコミュニティも増やした方が良いです。
今勤めている会社しかコミュニティが無い状況であったとしたら非常に危険です。
これは難しく考える必要はなく、例えば通っているスポーツジムのコミュニティであったり、以前に勤めていた会社OBOGのコミュニティであったりと、様々に可能性があります。
私の場合は上記の例に加え、ビジネススクール時代のコミュニティや、ベンチャー企業関連のコミュニティに所属したりと広く考えを聞ける環境を作っています(これらのコミュニティの場合、マッチョイムズに偏る傾向がありますが)。

ファクトベースで考える(データを重視する)

次に大事なのがファクトベース、つまり事実やデータに基づく考えです。
PCR検査の例ですと、精度の問題や検査リソースの問題などが事実でありデータです。

ある意見に関して対立軸がある場合に、双方共にロジック構造がしっかりしていたとしましょう。
この場合次に検証するのがファクトです。
ロジック構造がしっかりしていたとしても、そのロジックを支えるファクトに欠陥がある場合にはロジックが成立しなくなります。

なお、この場合、ファクトに欠陥があるため「それは違うよ!」と攻撃的に言ってはいけません。
あくまでも議論を活性化させる前提で、ファクトの欠陥を指摘するべきです。
それでも相手が感情的に主張を繰り返したりした場合は、もう相手にする必要は無いでしょう。

自分自身のロジックに対しても同様で、ファクトに欠陥があったり、それを他者から指摘された場合、それを感情的にならず素直に受け止め、再度、ファクトの収集やロジックの再構築を行いましょう。

自分は間違っているかもしれない、という考えを持つ

最後に大事なのは「自分は間違っているかもしれない」という考えです。

本ブログでは、いくつかバイアスに関して紹介してきました。
エコーチェンバー現象に限らず、自分自身が様々なバイアスの悪影響を受けている、という前提に立つのです。

人間はバイアスの生き物であり、完全にバイアスから脱却することは不可能です。
どんなに賢くて人格的に優れていて、多数の実績を残している人であったとしても、無理なのです。
例えば、「社会貢献は大事であり、尊いことだ」という一見もっともらしい意見も、結局はバイアスに縛られています。
ようは、縛られていても問題がないバイアスと、悪影響を及ぼすバイアスがある、ということです。

バイアスがある前提で自己を客観視できていれば、自分自身が本来志したものはブレないはずです。
この自分自身が本来志したもののことを「軸」と呼びます。

この「軸」を中心におき、達成したミッション・ビジョンの実現のためにどうすれば良いか?という流れで「自分は間違っているかもしれない」と考えれば、エコーチェンバー組織には陥らず、ミッション・ビジョンの実現可能性が高まっていくでしょう。

カテゴリー
ビジネスと心理学

反論・批判を受け入れない人~バックファイア効果から見る経営判断と新型コロナウイルス~

世の中の言説は、正しい情報や明らかに誤った情報が入り乱れています。
特に、ここ1,2ヶ月では、社会的インパクトが大きい事象について、明らかに誤った言説がされ、それに対して強い反論がされていますが、誤った言説が正される気配は見えません。
反論や批判を受け入れない現象を「バックファイア効果」と言い、経営の意思決定においても悪影響を与えている光景を多々見受けます。
今回は、このバックファイア効果について解説していきます。

忙しい人向けまとめ

  • 人は反論・批判を受けると、それを否定して、もともとの考えを強め心理的反応があり、この現象をバックファイア効果と言う
  • バックファイア効果により、社会や経営の現場で、反論が受け入れられず、本来正しいはずのことが行われない状況が多々見受けられる
  • バックファイア効果は科学的には証明されきってはいないが、人生における感覚値と一致する
  • 感情に触れる領域での反論や批判はバックファイア効果が起きやすい可能性がある
  • バックファイア効果が出やすい人と、出にくい人がいて、これは遺伝子によって決まっている可能性がある
  • 反論や批判が目的ではなく、行動変容が目的ならば、言い方、表現には気をつけた方がよい

バックファイア効果とは

「お前は間違っている!」
こう言われた時、あなたはどう感じるでしょうか?

「なんだとう!間違っているのはお前だ!」
カチンときて、頭に血がのぼり、こう反論したくなりませんか?

このような、自分にとって、信じたくない情報、都合の悪い証拠、反論、批判に直面すると、それを否定して、もともと持っていた考えや信念、主義主張をより強めてしまう現象を「バックファイア効果」と言います。

米ダートマス大学が行った、イラク戦争に関連する情報の受け入れ方に関する実験において、大量破壊兵器の存在を否定する情報をえた人が、大量破壊兵器を事前に廃棄したから、という考えを強めたという現象から、提唱されている心理学的効果になります。

この現象は実際の経営の意思決定の現場や、新型コロナウイルスに関連する言説においても多く見られます。

新型コロナウイルスから考えるバックファイア効果

まず、新型コロナウイルスに関連するバックファイア効果を考えていきます。

まず、新型コロナウイルスの脅威度ですが、当ブログにて繰り返し主張している通り、十分な脅威はあれど、風邪やインフルエンザと比較した時の相対的な脅威度は低い、というのが数字から見る実態と考えられます。

PCR検査の全数実施についても同様で、全数検査は明らかな不合理なのに、未だに全数検査を主張する人はいなくなりません。

脅威度は相対的に低い事や、全数検査は明らかな不合理な点は、私に限らず多くの冷静かつ論理的で合理的な方々が解説し、発信しています。
それにも関わらず、脅威を主張する人、全数検査を訴える人はいなくなりません。

これはバックファイア効果が働いているからです。

なお、今現在、急激に感染者が拡大している現状でこういった言説をする私にもバックファイア効果が作用してしまっている可能性は存在し、これは留意が必要です。

経営の意思決定から考えるバックファイア効果

次に経営の意思決定の現場においても考えていきます。

社長や声の大きい幹部が「〇〇をやるぞ!」と言ったとします。
〇〇はあなたのお好みで、あてはめてください。

これに対して、論理的な人が「〇〇は、これこれこういう理由でやめた方がいいです。」と言ったとします。
無視・スルーされ、当初の掛け声どおり〇〇が実施される光景が目に浮かびませんか?
最悪、叱責をうけ、その論理的な人の居場所が会社の中で無くなる可能性もあります。

もちろん、これはその会社のカルチャーや、中の人たちの性格にもよるでしょう。
ただ、多くの人が、「反論をした結果として受け入れてもらえなかった」という経験をしたことがあるはずです。

バックファイア効果が働いてしまっているからです。

言い方、表現には気をつけよう

バックファイア効果は科学的には証明されていないが感覚値とは一致する

なお、バックファイア効果は、まだ心理学的に証明されきった現象ではありません。

まず、バックファイア効果ですが、上記のイラク戦争に関連する実験の他、米ダートマス大学では減税に関する論争についても実験をしており、また英エクスター大学のワクチン接種に関する実験や、米マサチューセッツ大学で行われた環境負荷に関するこちらの実験などで、その効果が主張されています。

一方、オハイオ州立大学で行われた、バックファイア効果に関するメタ検証や、52に及ぶバックファイア効果に関する実験でバックファイア効果に関して、疑問を呈する主張がでています。

つまり、繰り返しになりますが、バックファイア効果自体はまだ科学的には証明されきっていないのです。
それでは、何故、日常の中の感覚値で、バックファイア効果は確かに存在するな、と感じるのでしょうか?

これは私の仮説になるのですが、感情に触れる領域での反論や批判において、バックファイア効果が出るのでは?という仮説です。
また、バックファイア効果が出やすい人と、出にくい人がいるのでは?という仮説もあります。

感情に触れる領域での反論や批判はバックファイア効果がおきやすい

まず、感情に触れる領域での反論や批判においてバックファイア効果が出やすい、という仮説の説明です。

上述の英エクスター大学のワクチン接種の実験や、米マサチューセッツ大学での環境負荷に関する実験は、環境負荷に触れやすい設問だったと感じます。
というのも、「ワクチン接種は危ないから子供に打たせない、子どもは私が守る」と考えている親に対して、「ワクチン接種をしないと子どもが危ないですよ、ワクチンを子どもに打たせないことは一種の虐待ですよ」と伝えたら、感情的な反論がきて当然だと思いませんか?

環境負荷も同様です。
「環境に負荷を与える生活をすると、地球に優しくないですよ、次の世代の子どもたちに負担を背負わせますよ」と言われたら、「いや、中国や後進国が悪い。自分は何も悪くない。」と受け止められて、かえってエコな生活から遠ざかる可能性があります。

バックファイア効果が出やすい人がいる

次に、バックファイア効果が出やすい人と、出にくい人がいるのでは?という仮説の説明です。

米カリフォルニア大学の研究によると、特定の遺伝子をもった人は、リベラルな思想を持ちやすいことが発見されています。
別の研究では、米バージニア工科大学で行われた、不快な画像に対する反応実験において、リベラルや保守といった政治思想と脳の反応、ひいては遺伝子に特徴があることが示されています。

これらの研究から特定の遺伝子の有無によって、反論・批判の受け入れやすさに差がでるという可能性が考えられます。
反論・批判を、高年になって精神が成熟し、物事を受け入れやすくなる人は確かにいますが、幼少期から他者の反論・批判を受け入れて自分の成長に活かす人もいます。
逆に、何歳になっても頑固で、むしろ歳を取れば取るほど悪化する人もいます。

バックファイア効果が出やすい人と出にくい人がいる、という前提で考える方が現時点では良いように思えます。

言い方、表現には気をつけよう

最後にまとめると、何か反論や批判をしたい時はストレートに物を言うのではなく、相手のことを肯定した上で、ソフトに物事を伝えると良いであろう、というコミュニケーションの話に帰結します。

反論や批判が目的ならば良いのですが、本来の目的は社会や相手の行動変容のはずです。
行動変容を促す、相手が受け入れやすいようにコミュニケーションを取ることは、バックファイア効果を考えると、その重要性を感じます。

逆に、大して重要じゃない内容で、あえて反論・批判をストレートにぶつけて、相手の反応を見る、相手がどういうタイプの人間なのかを測る、というのも有効と考えられます。
こういったことを計算高く行う人間は嫌われがちですが、コミュニケーションにおいて、相手との距離を測るのは常なので、一つのツールとして持っておくことは、人生のどこかで役に立つかもしれません。

カテゴリー
ビジネスと心理学

確証バイアスの一種「共変錯誤」から考える経営の意思決定とPCR検査

ここ1,2ヶ月の世の中の報道や意見を見ていると、確証バイアスの一種である「共変錯誤」に陥っている人を大勢見かけます。
大勢に影響を与えないことならば良いのですが、社会的インパクトを与える事象での共変錯誤は重大な実害をまき散らします。
今回は経営の意思決定においても見られる共変錯誤について解説していきます。

忙しい人向けまとめ

  • 「自分が求める情報ばかりを収集すること」を確証バイアスと言い、確証バイアスは人間の思考の性質である
  • 「共に変化するものの間の関係を誤ること」を共変錯誤と言い、共変錯誤は確証バイアスの一種である
  • 共変錯誤の例としては「PCR検査の全数検査」主張があげられ、ウイルス検査で「感染していないが陽性とでる方や、逆に感染しているのに陰性とでる方が発生する」という事実に目を向けずに意見を述べる方が見受けられる
  • 共変錯誤は経営の意思決定の場面でも多く見られ、自分がやりたいことを支持する情報にばかり目を向ける経営者は実際に多い
  • 共変錯誤から脱するには、メリット・デメリットの検証や、「自分の考えは間違っている」という前提に一度立つことが重要

共変錯誤とは~確証バイアスの一種~

確証バイアスとは

確証バイアスを一言で表現すると、「自分が求める情報ばかりを収集すること」です。

人は、自分の考えが正しいのか、それとも間違っているのかを考える時に、自分の考えが正しいことを証明する情報、つまり証拠ばかりを探してしまう傾向があります。
間違っているという情報、つまり反証には目を向けない傾向があるのです。

そのため、「自分の考えは正しい」という気持ちに固執しやすくなってしまうのです。

なお、私は周囲の人間から「否定的な意見が多い」という言葉を投げかけられたことがありますが、これは私の確証バイアスに対する防衛機構です。
何か物事を考える時に、自動的に「自分の考えは間違っている可能性がある」という思考回路を作動させ、反証を求めるようにしています。
これはもう完全に習慣化された思考の癖で、思考の正確性を担保するための機能なので、ご容赦ください。

共変錯誤とは

それでは共変錯誤という小難しそうな言葉の解説に移ります。

錯誤とは誤りのことです。
つまり共変錯誤とは、「共に変化するものの間の関係を誤ること」を意味します。

これは事例を交えながらの方がわかりやすいと思いますので、昨今話題に上がっているPCR検査を例に共変錯誤を考えていきます。

PCR検査から考える共変錯誤

PCR検査とは、微量のDNA(もしくはRNA検体)検体を高感度で検出する方法です。
新型コロナウイルスのような病原体の有無を調べることができ、昨今、非常に話題にあがっています。
文脈としては、「全数検査をしろ」であったり「PCR検査に重きを置くのは意味がない」であったりです。

さて、PCR検査は高感度の検査技法ではありますが、100%の感度があるわけではありません。
確定的なことは不明なのですが、新型コロナウイルスの検査においては70%位の感度、とされているようです。
(また、特異度、というパラメータもあるのですが、小難しさが増すので省略します。)
そのため新型コロナウイルスには感染していないが陽性とでる方や、逆に感染しているのに陰性とでる方が発生します。
この状況を図式で示すと次のようになります。
(PCR検査を感度70%・特異度99%、感染者総数を5千人とし、10万人を対象に検査した場合)

この図を見ればわかる通り、PCR検査を行うと、1,500人の感染しているのに陰性と出た方、逆に950人の感染していないのに陽性と出た方、つまりエラーが発生するのです。
こういった事実を見ずに「PCR検査の全数実施をしよう」とジャッジする、つまり共に変化するものの間の関係を誤ってジャッジしてしまうことを共変錯誤と呼びます。
PCR検査に対して、確証バイアスにとらわれてしまっているのですね。

なお、メディアの報道を見ていると、「そうならば、複数回実施すればよいのでは?例えば一人の検査対象者に10検体とって、まとめて検査すれば。」というコメンテーターがいらっしゃいました。
一見もっともらしく聞こえます。
確かに、感染の確率が高い検査対象者に絞って複数回検査を行えば、確度高く検査を行うことができます。
しかし、検査対象者全体に対して、複数回の検査を行うとどうなるか。
上の図の比率で、検査のたびに感染していないが陽性とでる方や、逆に感染しているのに陰性とでる方が発生します。
一回一回の検査は、独立した事象なので、複数回検査をまとめて行うと、もう何が何だかわからない状態になってしまいます。

(どうでも良いですが、私は理系出身でPCR検査は演習でやったことがあるので、こんな世間的にマイナーなはずの用語が広く知れ渡るような状況をなんとも言えない感情で見ています。)

経営の意思決定から考える共変錯誤

共変錯誤は経営の現場における意思決定においても見受けられます。

ビジネスにおいては他社の成功事例を参考にして、自社に取り入れる、ということがよくあります。
この成功事例導入において、非常に多くの共変錯誤が見受けられます。
どういうことでしょうか。

例えば、「急成長しているベンチャー企業ではフラット組織を採用している(意思決定の速度が速いから)」という事例を考えてみます。

とあるベンチャー企業経営者は、急成長している5社を参考とし、自社に有用な施策を取り入れようと考えました。
その5社はいずれもフラット組織を採用していました。
フラット組織は一般的に、意思決定の速度が速いから、急成長を志向するベンチャー企業に向いている、と言われています。
では、この会社でフラット組織を採用したら、本当に急成長できるのでしょうか?

PCR検査の時と同様に、図で考えてみます。

もし仮に、組織形態と成長速度に関係が無かったとしたら、上のような図になるはずです。
でも、この経営者は、たまたまフラット組織を採用して急成長している5社を参考にしてしまったのです。
より正確に言うと、この経営者の場合はフラット組織を採用したくて確証バイアスにとらわれてしまったのです。
そのため、世の中には会社がたくさんあるにも関わらず、フラット組織を採用して急成長している会社の情報を(無意識で)選択して収集してしまった
のです。
もう少し冷静に考えれば、フラット組織のデメリットや、階層組織でも成功している事例に目を向けられたはずですが、完全な共変錯誤を起こしてしまっていたため、確証バイアスから逃げられなかったのです。

なお、組織形態と成長速度には、実際に大して関係が無いです。

こういった共変錯誤は別に組織形態に限らず、様々な場面で起きています。
1on1やOKRの採用であったり、洒落乙なオフィスだったり、他諸々のベンチャー界隈で流行っている様々な施策が大体そうです。
経営者がエゴで、自分がやりたいことをやっている、というパターンを非常に多く見受けられます。

見たくないものにも目を向けよう

共変錯誤から脱する方法はシンプルで、ある選択を考えた場合に、相対する別の選択も検証することです。

上のフラット組織の採用の例ですと図の通りで、フラット組織=階層組織、成長速度高=成長速度低、というような図式で検証するのです。
縦軸横軸をどう置くかは状況によりきりなのですが、1つの軸を成功・失敗軸、もしくはメリット・デメリット軸でおいて、もう1つの軸を検証対象軸として置くのが一般的でしょう。

上述した思考法、確証バイアスに対する防衛機構も有効です。
何か物事を考える時に、自動的に「自分の考えは間違っている可能性がある」という思考回路を作動させ、反証を求めるようにするのです。
つまり、見たくないものにも目を向ける癖を身に着ける、ということですね。

これはもしかしたらネガティブなマインドのように受け止められるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。
あくまでも自分の人生や、会社の経営を成功させる、ポジティブなマインドが前提にあって、あえてネガティブな方向で検証を行う、成功確率を高めるプロセスなのです。

カテゴリー
ビジネスと心理学

改めて考える正常性バイアス~新型コロナウイルスはどこまで脅威か?~

新型コロナウイルスの拡大にあわせて「正常性バイアス」という言葉が広がっています。
どうも「軽視しすぎている」ということらしいです。
ここでは、正常性バイアスについて解説すると共に、より怖がるべきものがあるのでは?という話を書いていきます。

なお、ここ数日は新型コロナウイルスに関連して記事を書いていますが、当ブログでは医療系のブログを志向しているのではなく、あくまでもビジネス系のブログを志向しています。
それでは、なぜ新型コロナウイルスに関連した記事を書くのかというと、経済への影響度合いが極めて高いからです。
世の中に対して、早く経済が回復し正常化するために、冷静でかつ正しい情報を発信することが重要と考え、微力ながら現在の方針としています。

忙しい人向けまとめ

  • 正常性バイアスは、ネガティブな出来事を軽視したり無視したりするなど過小評価すること
  • 正常性バイアスは悪い事ではなく、人間の防衛機構の一種
  • 不都合な状況で正常性バイアスが働くと、最悪の事態に陥るリスクがある
  • 新型コロナウイルスは脅威だが、やはり人々は過剰反応をしている
  • 人々はただの風邪やインフルエンザに対して正常性バイアスがかかっている
  • 日常的に感染症に対する対策をしていれば、新型コロナウイルスは怖くないはず
  • 経営の現場でも正常性バイアスが見られ、クレームや事故、ハラスメント、過度なコスト感覚などで経営危機のリスクを高めている
  • 今の状況を教訓に、正常性バイアスに対して理解すると共に再考をすると良い

「正常性バイアス」とは?

自分にとって予期しない出来事に直面したり、都合の悪い情報を目耳にしたとき、どのような反応を示すでしょうか?
正常性バイアスにかかっていると、上記のようなシチュエーションの際、「ありえない」という先入観や偏見が働き、その予期しない出来事や都合の悪い情報を無視したり過小評価したりします。
つまり、予期しない出来事や都合の悪い情報を「正常な範囲内のこと」と認識するのです。

この文章だけ読むと、良くないことのように見えてしまうかもしれませんが、これは人間の防衛機構の一種となります。

何かネガティブなことがあるたびに、いちいち反応していては、脳のリソースが消耗しています。
精神的に疲れ、場合によっては鬱などになってしまうかもしれません。
つまり、正常性バイアスはネガティブなこと、つまりストレスに対しての防衛機構であり、精神の安定を図る心の作用なのです。

しかし、この正常性バイアスが、それこそ不都合な状況で働いてしまうと問題が発生します。

例えば、災害時です。
災害時に、「大したことない」と判断し、避難が遅れたらどうなるでしょうか?
結果論でしか語れない事ですが、場合によってはパニックを起こし、我先にと逃げ出した方が生存確率は高いかもしれません。
つまり正常性バイアスが非常時にはマイナスに働き最悪な事態を招く場合もあるのです。
矜持の問題ですが、それでも私はパニックを起こしたいとは思いませんけどね。

さて、それではこの正常性バイアスと新型コロナウイルスについて、どのような言説が出ているでしょうか。

感染症と正常性バイアス

メディア報道や各種ブログ記事を見ていると、「日本人は正常性バイアスにとらわれている。新型コロナウイルスを軽視しすぎている。」という言説を多々見かけます。
この言説の内、「日本人は正常性バイアスのとらわれている。」という部分に関してはアグリーできます。
どういうことでしょうか。

感染症は指数的に拡大する

まず、そもそもとして感染症というものがどのように拡大していくかを考えます。

厚生労働省「人口動態統計」より

この図表は、月別のインフルエンザの死亡者数推移です。
この図表の通り、感染症というものは、指数的に拡大する性質をもっています。
そのため、日々の報道で「感染者数が最多」「爆発的に拡大」とされていますが、感染症というものは、そもそも論として報道されているような動きをするものなのです。
なお、インフルエンザの感染者数推移は次の通りで、100万人~200万人となります。

感染症・予防接種ナビ「【感染症ニュース】インフルエンザ 推定患者数は約144,000人と5週連続して減少 全国の学校の休校の影響により流行は収束傾向となると予想」(2020年3月4日)より

一方、新型コロナウイルスの患者数(感染者数では無いことに留意)は4月10日現在で約3,500名(死亡者数は88名)となっています。
拡大の推移を見ている限り、ちょうど爆発的に急拡大していく右肩あがりのふもと部分にいると考えられます。
そしてそれでも、まだ例年のインフルエンザの推移よりは脅威度が低いのです。
なお、インフルエンザは予防接種が普及しており、治療薬も確立していることを併せて言及します。

あくまでも私の感覚で述べるならば、人々は新型コロナウイルスに対して過剰に反応しており、ただの風邪やインフルエンザに対して正常性バイアスがかかっている、と感じるのです。

免責

誤解の無いように述べると、私は脅威度が低いから良い、もっとストレートに言うと人命を軽視したいわけではありません。
感染拡大が抑制できているのも、政府や医療関係者の多大なる努力の成果であることは認識しています。
また、意識が高まったことによる、人々の行動の変容の結果も、一定影響していることも推測しています。
私の主張としては、「新型コロナウイルスは全く怖くない」ではなく、「警戒の設定が過剰」「より怖がるべきものがある」です。

正常性バイアスにとらわれるな~ただの風邪やインフルエンザをもっと怖がれ~

上述の通り、インフルエンザの感染者数は100万人から200万人と、膨大な数にのぼります。
そして、こちらの記事でも書いている通り、肺炎による死者数は10万人と非常に大きな人数です。

繰り返し主張をすると、肺炎につながりうるただの風邪やインフルエンザを、人々はもっと怖がるべきなのです。
そして、私が見る限り、例年、このただの風邪やインフルエンザに対して、怖がっている人を目立って見かけません。
新型コロナウイルスの脅威をわかっているのであれば、普段日常から、ごくごく身近にある感染症により警戒をすべきなのです。

政府の初期行動に関しては言いたいことは諸々あるにせよ、アンコントローラブルな要素が大きいので脇に置きます。
個人で必要なことは決まっています。

  • 外出後の手洗いうがい
  • 公共施設や商業施設に設置されている消毒液の使用
  • 感染症が拡大しやすい時期のマスクの着用と使用したマスクの廃棄
  • 逆に感染症が拡大しづらい時期での感染症を気にしない生活(過度な衛生対応はかえって免疫力を低下させる)
  • 免疫力向上のための適度な運動
  • 免疫力向上のための栄養バランスのとれた食事
  • (インフルエンザに限定して)予防接種

こういった当たり前の行動をどれだけの人がとっているのでしょうか?
身近な脅威に対して正常性バイアスが働いていませんか?

そして、正常性バイアスは感染症だけでなく、経営での現場でも起きています。

正常性バイアスは経営にも悪影響を及ぼす

事業を起こし、会社を経営している方は、非常に頭の良い方が多いです。
(もちろん、微妙な方も大勢いるのですが、相対的に賢く尊敬できる人が多いよね、ということ。)
そんな頭の良い方たちでも正常性バイアスにとらわれている場合を多々見受けられます。

クレームや事故を過小評価していないでしょうか。
1つのクレームを軽く扱った結果、SNS上で急拡散し、工場の一時閉鎖にまで陥った食品メーカーがありました。
作業環境が危ない状況を放置した結果、従業員が死亡する事故が発生し、廃業に追い込まれた事業所もありました。

社内で起きているハラスメントを放置していないでしょうか。
いわゆる「ブラック」という言葉が一般化し、企業内のハラスメントも急拡大するようになりました。
訴訟をうける企業や関連するニュースは珍しくない社会になりました。
先日も、とある有名企業の人事課長によるハラスメント問題がSNSを中心に急拡大していました。

災害や犯罪になんて早々巻き込まれない、コスト増になると思って、保険未加入という状況になっていないでしょうか。
個人情報を取り扱っているのに、漏洩保険に入らず、一回の個人情報流出事故で倒産になった企業がありました。
新設した社屋が火災に巻き込まれ、保険に入っておらず多大な損害をうけた企業がありました。

トータルコストを減らせるからと言って、固定費を増やしていないでしょうか。
固定費が増えれば売上が減少した時に、赤字のリスクが大幅に高まります。
今回の新型コロナウイルス騒動においても、固定費が高い、製造業や飲食業の多くが危機的状況に陥っています。

リスク管理や経営管理は、経営におけるディフェンスの性格が強いものになりますが、これを軽視することは正常性バイアスにとらわれている可能性があると理解するべきでしょう。

怖れるべきものを怖れる、怖れなくても良いものを怖れないようにするために、改めて今の状況を教訓に正常性バイアスについて再考をするのが良いでしょう。

モバイルバージョンを終了