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アフターコロナの映画館経営をどう考えるか?

「リアル店舗」系を中心に、多くの企業が新型コロナウイルス感染症拡大の経済的影響を受けています。
映画館経営も同様です。
今回は、アフターコロナの映画業界を如何に捉えるか、考えていきます。

感染症拡大により大打撃

前置きはともかくとして、コロナ影響により、映画館の業績が急激に悪化しています。
休業の影響は大きく、2020年4月は前年比として1桁%の着地となっています。

東洋経済オンライン「東宝、映画館再開でも全く安心できない事情」2020年6月10日より(元出典は東宝)

仮に各種ワクチンや治療薬などが開発され、感染拡大が落ち着いたとしても、多くの企業でリモートワークを導入。
消費の形態変化が維持し続けることは間違いが無いでしょう。

また、言うまでもなく、巣ごもり消費により急速に普及しているNetflixなどのネット動画配信サービスの存在も忘れてはいけません。

つまり、将来的に映画業界、特にリアル店舗としての「映画館」の経営が悪化し続けることは間違いが無いのです。

それでは、アフターコロナの映画館経営を、どのように考えていけば良いでしょうか?

映画館という業態の経済統計

まず、映画館というものの統計データを見ていきます。

映画興行収入の推移ですが、マクロ感としては増加を続けており、2019年は約2,612億円となっています。

一般社団法人日本映画製作者連盟「日本映画産業統計」より作成

一方、映画館数は近年は横ばいとなっています。

2点、注釈があります。

1960年代に映画館数が激減した理由は、テレビの普及です。
映画館に行く理由が無くなったのですね。

もう一つが、統計の取り方が2000年を境に変わっている点です。
1999年以前は、映画館数ですが、2000年以降は「スクリーン数」という指標に変わっています。
2000年のタイミングでポコッと増加しているのは、それが理由ですね。

それでは、2000年以降にフォーカスして数字を見てみます。

マクロ感では横ばいでしたが、年々増加を続けており、2019年は近年最大となる3,583のスクリーン数となっています。

入場者数も見ていきます。

マクロ感では、以下の通り、横ばいです。

2000年以降は、全体としては増加を続けており、2019年は194,910人の着地となっています。

2011年は東日本大震災があったこともより、急激に落ち込みが見られます。
これが震災前の水準に戻るのが2016年なので、回復に5年もの時間を要したことになります。

今回の新型コロナウイルス影響も、楽観的に見て、5年は回復に時間がかかると考えた方が良いでしょう(回復するならば、ですが)。

ここからは、もう少し要素別に見ていくのですが、それにあたり、映画館について分類の話を先にします。

映画館は、「一般館」と「シネコン」という2つの大きなものに大別されます。

詳細は下記表をご確認ください。

上記前提で見てみた時に、「一般館」「シネコン」別にスクリーン数を見ると、次のようになります。

シネコンのスクリーン数は増加を続けていますが、一般館は減少の一途をたどっています。
一般館、特に「ミニシアター」と呼ばれる業態は、顧客層が少ないうえに、ファンも減少を続けているため、非常に厳しい経営環境が続いています。

邦画、洋画別の効果本数は次の通りになりますが、ここ10年で急増しています。
上で収益数は増加しているもののの、この公開本数ほどの増加では無い印象なので、感覚的に「作品数多くないか?」という疑問が出てきます。

ここからは収益効率について見ていきます。

まずは1スクリーン当たりの収益効率です。

この通り、直近2019年は好調な数字を出している物の、2000年代初頭の数字にようやく追いついた、という印象です。
1スクリーンあたりで見ると、効率の悪化感はそこまでありません。

次は公開本数当たりの収益効率です。

この通り、明らかに、公開本数当たり入場者数、公開本数当たり興行収入共に悪化を続けています。

上記の公開本数の推移でも何となくわかるのですが、2000年を「1」とした場合の、邦画別、洋画別の公開本数指数は次の通りになります。

やはり、作品数多すぎやしないか???

供給過剰感が満載です。
近年の映画業界の好調は、公開本数、という「数」で強引に出した数字と言えるかもしれません。

日本だけ特段、映画が見られる、というわけでも無いでしょうし、グローバル展開する前提ならば、本数で稼がなくても良いはずなので、制作している映画の数は、非効率な量になっているのでは?と推測が立ちます。

実際、興行収入は、公開している映画の上位20本で、市場シェアの50%を占有している状況です。
完全なロングテール商法になっています。

映画業界の構造

ここで映画業界の構造の話です。

映画業界には大きく3つのプレイヤーがいます。

制作会社、配給会社、興行会社です。

下記が参考になりますね。

配給会社が中央集権的に、映画作品のコントロールをしている構図になっています。

中央集権的と書くと、一見悪い感じに聞こえます。
実際、収益を半ば独占しているのは確かです。

一方、新作映画のネット配信を遅らせ、映画館供給を優先させる図式は、各シネコンや小規模シアターを守っている構図にもなっており、一概に何が良い悪いは言えません。

この図式は配給会社にとって崩したくない構図のはずで、実際に次のようにコメントを出しています。

配給会社としては多くの利益を生むネット同時配信だが、映画館の運営会社にしてみれば優良コンテンツを独占できないことになる。映画館の需要を食いつぶしかねないため、多くの映画館を持つ東宝のような会社はネット同時配信に消極的にならざるをえないのだ。「配信でFukushima 50が大ヒットして、映画館がいらないということになるのは困る」(前出の関係者)。

東宝は「東宝が配給する作品は、最も投資回収率の高い『映画館』という窓口で興行を行うことを前提に製作している。配信を前提とした作品が増える可能性はあるが、(映画館と同時に)同時配信を行う予定はない。」(同社広報)としている。

東洋経済オンライン「東宝、映画館再開でも全く安心できない事情」2020年6月10日より引用

誰にとっても微妙に幸せでない状態

ここまで調査し考えたのが、今の状態は誰にとっても微妙に幸せな状態ではないのでは?という仮説です。

一般顧客を交えて各登場人物の状況を書くと次のようになります。


大手配給会社:自前で映画館を持っているし、配給先との関係もありネットに振り切れない、後ガンガン作ってガンガン配給しないと市場が成長しない

シネコン,各地域の興行館(一般館含む):配給元から映画を供給されないと困るからネットに振り切って欲しくない、しかし最近は配給数が多すぎてコスト嵩むなぁ

ミニシアター:顧客のミニシアター離れ、とはいえ大手配給会社の支配下には入りたくない、がしかし映画館文化は大手も小規模も全体感を持って醸成しないといけない

制作会社:制作しないといけない本数多すぎ、負担多すぎ、実入りも少ない

制作スタッフ:長時間労働、給料安い、でも自分たちが活躍する場は減って欲しくない

一般顧客:見たい新作映画をわざわざ映画館にいかないといけない、ネットでいいのに、じゃあいいやコロナ怖いし作品もたくさんあるし準新作・旧作をNetflixで楽しもう


こういう膠着状態に陥っている業界には、必ずあるものが登場します。

日本の映画業界はゆでガエル状態に、そしてカテゴリーキラーに・・・

このような膠着状態で起きること

それは、カテゴリーキラーの誕生です。

想定できるのが、次の事象です。

「海外の大資本、ないしは大資本から資金供給を受けているベンチャーで、ネット配信専業の配給会社となり、日本の制作会社を事実上の支配下置いていく。」

もしこのような事象が発生すると、制作会社はネット配信専業の配給会社にリソースを割き、従前の配給会社に作品を流さなくなる可能性があります。
グローバル展開をうまくやってくれるのならば、そっちの方が儲かるからです。

そうなると、配給会社は配給する作品が少なくなり、興行会社が上映する作品が絞られてきます。

過去の作品があるとは言え、大手配給会社はゆでガエル状態になっていくでしょう。
シネコンや各地域の興行館は、配給待ちをする立場なので、ゆでガエルどころか、急激に経営が悪化していきます。
ミニシアターは、ある意味変わらずで、これまで通り尻すぼみに業界が縮小していくでしょう。

一方、制作会社は、経営の方針転換は大きく必要なものの、大きな影響は受けない可能性が高いです
むしろ、制作本数あたりの負担が減り、製作スタッフ共々、ハッピーになるかもしれません。

一般顧客にとっては、見たい新作映画がネット配信で即座に見れ、作品も充実し続けるので、こちらもむしろ嬉しいはずです。
たまに、大きな映画館で、臨場感たっぷりに何か見れれば十分に満足できます。
ただし、身近な映画館、は減少するでしょう。

どのような映画館が生き残っていくか?

それでは、どのように対処すれば良いでしょうか?

まず興行会社、つまり映画館が生き残っていく道です。

もう、これはシンプルで、自宅では実現できない価値の提供です。
それも大画面、大音量、という価値提供だけでは不十分で、最新の設備が整った、整えられる所のみが生き残っていくはずです。

例えば、MX4DやTCXなどです。

MX4D(MediaMation MX4D)は、3D映画以上の体験型シアターシステムで、映画のシーンに合わせ、シートが動いたり、数が吹いたりするなど、様々な特殊効果を、映画鑑賞とあわせて体験できます。
TCXは左右の壁から壁まで一面に広がる大型のスクリーンのことで、従来の大画面以上の迫力があり、映画への没入体験を味わえます。

このような、最新のアトラクションを価値提供できる一部の映画館のみが生存を許されるはずです。

(後は精々、個人単位で作品の選別眼に優れた運営者がいる、一部の興行館が「味のある映画館」として細々と生き残っていく程度になるはずです。)

仮に小規模興行会社が生存の道を模索するなら?

少なくとも言える所は、現状で大多数のリアル映画館(興行会社)は消えていくであろうということです。
これは動かしがたいでしょう。

もし、仮に取り組むとしたら、小規模興行会社で連合し大資本を組むことです。
そして、自分たちでネット配信を立ち上げることが考えられます。

高い商品選別眼があって、今まで経営を続けて来れたのだから、その強みを最大限に活かすやり方です。

ただ、誰が鈴をつけて、音頭をとるのか?というと、日本人の気質的に非常に怪しいので、現実的ではないでしょう。
どこまでの事業規模を狙えるのかも不明です。

上述したカテゴリーキラーとなる海外大資本に、商品選別眼を売り込む形で、個人レベルで細々と生き残っていくのが精々となってしまうのでは、とも考えます。

大手配給会社や大手シネコンがとるべき方策

最後に、大手配給会社や大手シネコンがとるべき方策は何でしょうか?

これはもう、タブー(ネット配信)に振り切ることでは無いでしょうか。

全員にとって幸せな解決策があるとは思えません。

もう、リアル映画館は最新の設備が整っている所、整えられる所を残して、もう駄目だと割り切るのです。
そして、素直にネット配信に振り切ります。

リアル映画館は、単純に映画を視聴する、という空間ではなく、上述最新設備で体験できる、アトラクション性をもった空間と位置づけるのです。

多くの出版社、書店が、Amazonの台頭を指を加えて見ていた過去を、よく考えた方が良いでしょう。
ドラスティックな改革は、体力がある内しかできません。


以上、映画業界の今後の姿について、「映画館」を軸に考察してきました。

私は、映画業界は専門ではないので、詳しい方にしてみれば噴飯ものの内容かもしれません。

ただ、多くの業種業界の栄枯盛衰と趨勢を見てきた立場として、マクロ感としてどうなっていくか?は推測ができうると考えています。

繰り返しますが、映画業界は、新型コロナウイルスの感染症拡大による経済影響と、ネット配信サービスの台頭、という2つの大きな波をまともにうけている状態です。
ドラスティックに変化していかなければ、業界全体が外資に飲み込まれていくでしょう。
(私は、グローバル化そのものは否定していないので、このこと自体をネガティブには捉えていません。しかし、当の業界に所属する方々はそうではないでしょう。)

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コロナに強い外食業態とは(5月外食産業前年同月比)

GW以降、新型コロナウイルスの新規感染も落ち着きを見せ始め、5月後半には各地で緊急事態宣言が解除されるなど、正常化方向に舵が切られました。
5月の外食産業も、少しずつですが回復、人が戻りつつあります。
今回は5月外食産業の既存店前年同月比を元に、状況を見ていきます。
感染症拡大に強い業態も明確になってきました。


4月の状況については下記記事をご参照ください。

5月外食産業既存店前年同月比

全体概観

5月既存店前年同月比の数字は下記の通りです。
主要な外食企業大手のデータをピックアップしています。

全体的に回復しており、4月⇒5月での回復ポイントとしては平均10%超となっています。

一部、ポイントがマイナスになっている会社もありますが、
元々コロナ影響が軽微だった吉野家、
誤差の範疇と捉えても差し支えない日高屋、ワタミ系列、という状況です。

5月で大きく回復している業態が2つあります。

寿司業態(約27%の回復)と多業態系(約24%の回復)です。

寿司業態(約27%の回復)

寿司業態が回復した理由は、おそらく「コロナ明け」を祝うようなムードがあったからと考えられます。
寿司というものは、日本人にとって、どちらかというと「ハレ」の食事であり、また家族で行くようなイメージが強いものです。
テイクアウトや宅配にも対応しているものの、ハンバーガーや牛丼業態のような気軽さはありません。

4月、我慢していたその反動からの回復、と捉えられるでしょう。
まだ前年同月比80%前後の着地ですが、反動消費は6月も続くでしょうから、今後の回復が期待できます。

多業態系(約24%の回復)

多業態系は、ランチレストランもあればディナーレストラン/居酒屋もある、多業態展開を行っている企業を分類しています。

こちらも寿司業態同様、「ハレ」要素が強めの業態であり、「コロナ明け」消費が行われたと考えられます。
ただ、4月の前年同月比が40%を切る状態での回復なので、まだ前年同月比約60%という非常に厳しい状態が続いています。

夜の消費次第なので、回復に向けた正念場と言える状況です。

業績回復が遅い業態

コロナ影響を受けていて、回復が遅い業態として、
麺類、コーヒー、ファミリーレストラン、居酒屋が上げられます。

麺類の回復が遅い理由は、お店を見れば何となくわかります。
ソーシャルディスタンスを保つため、席数を半分にしている所が多いからでしょう。
牛丼業態と同様、さくっと食べる業態にしても、提供までの多少時間を要することから、回転率が相対的に低いことも影響していると思われます。

コーヒー業態の回復が遅い理由は、席数制限の影響や、リモートワークの増加が影響していると考えられます。
加えて、今わざわざコーヒーを買いに行かなくても、という心理が働いているのでは、と推測されます。
ドトールとコメダ珈琲で差がありますが、これは、コメダ珈琲の方が、「久しぶりに行きたい」という心理が働きやすそうだ、というのは想像ができます。

ファミリーレストランは、おそらくですが、寿司業態や多業態(ランチレストラン,ディナーレストラン)に先に顧客が流れたのでは、と考えています。
隣の客との距離が離れているお店が多いので、行きやすさはあるはずですが、「晴れ」という観点でいうと弱いのです。
そのため、6月、ファミリーレストラン消費が一定大きな回復を見せるのでは、と推測しています。

居酒屋系は、未だに休業対応を行っているお店が多いですし、そもそもとして長時間居座る業態なので「行きづらいよね」という心理が働くであろうことが想像できます。
6月以降、気温の上昇と共に、ビール消費も増えるので、ここで回復の手を大きく打っていただきたいものです。

感染症耐性が高い業態は?

ここまで見てきて、感染症耐性に強い業態に関する仮説が見えてきました。

キーワードは「お一人様消費」「テイクアウト」「宅配」「短時間」そして「ハレ要素」です。

「お一人様消費」「テイクアウト」「宅配」「短時間」

「お一人様消費」「テイクアウト」「宅配」「短時間」はわかりやすいと思います。

感染リスクを考えた時に、これらのキーワードに対応した業態は、利用のしやすさが容易に想像できます。
合致しているハンバーガー、牛丼、中華の各業態は、今回の新型コロナウイルス影響を最小限に抑えたか、もしくは逆に数字を伸ばしています。

麺類業態は「お一人様消費」「短時間」に合致するのですが、席が元々密集している店づくりが多い事や、時間が立つと”のびる”ためテイクアウトや宅配を頼みづらい、という点が指摘できます。

コーヒー業態も、満たす要素はありますが、上述の通り、こういう状況でわざわざ行かないであろう事、リモートワーク移行の増加が影響していると考えられます。

「ハレ要素」

この「ハレ要素」は、影響からの回復の強さです。

停滞した雰囲気の中、ようやく外で食事ができる、という中、どういうお店に行くのかを想像すると、やはり少々良いもの、普段の生活では食べないもの、が選択肢にあがると考えられます。

その意味で、寿司屋、ランチレストラン、ディナーレストランは正に「ハレ要素」があります。

もしかしたら、ハンバーガー業態や牛丼業態なども、期間限定のプレミアム商品を投下したら数字が伸びるかもしれませんね。


以上、5月外食産業既存店前年同月比の数字を見てきました。

外食産業で前年比が10%を割る、という状況は店舗存続に関わる異常事態であり、回復傾向が見られるものの、まだまだ予断を許しません。

とはいえ、少しずつ数字が戻っている、人が街に戻っている、という状況は喜ばしく思います。
感染症のリスクは当然にあるにせよ、それは普通の風邪も、インフルエンザも同様です。
withコロナと呼ばれているように、共存していく前提で経済の立て直しに取り組んで行きたいものです。

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統計・経済

ホームセンター 販売額統計(2020年4月)

経産省「商業動態統計」にて、2020年4月のホームセンターの販売額統計が更新されました。
DIY用品や園芸用品など、外出自粛の影響を受けたものと思われる伸びが目立つ着地になっています。
一方、カー用品、アウトドア用品、オフィス用品は大きくマイナスしています。

ホームセンターの販売額概観

販売額全体としては、2,985億円と、前年同月比+4%の着地になっています。

ホームセンター販売額全体 経産省「商業動態統計」より

ドラッグストアなどと同じく、大きく2つのスパイクがあります。
1つが消費税増税前の駆け込み需要で、もう一つがコロナ影響です。
コロナ影響とは、1月に起きた品薄報道に関連した、買占騒動によるものです。

グラフは掲載していませんが、店舗数は約4,360店舗で、ここ数年で若干微増も概ね横ばいとなっています。
前年比割れを起こしている月もあるので(消費税増税前の駆け込み需要反動を除いても)、日本におけるホームセンター需要としては、概ね現在のサイズ感と言えるでしょう。

商品種別の販売状況

商品種別で見てみると、ホームセンターの売上はDIY用具・素材と家庭用品・日用品が、大きく占めていることがわかります。

ホームセンター販売額 商品種別 経産省「商業動態統計」より

2020年4月は園芸・エクステリアも大きく伸びています。
これは、毎年4月5月は園芸・エクステリアの分野が伸びているので、例年のことと言えばそうなのですが、例年以上の伸びを示しており、コロナ影響を受けた、外出自粛による家庭消費の増加が大きく反映されていると考えられます。
(毎年4月5月は、季節的に園芸に向いていること、新年度にあわせて生活も新しくなり自宅を整える需要が伸びることなどが影響し、毎年伸びる。夏は暑く、冬は寒いし園芸に向いていない季節なので消費が落ち込む。)

ホームセンター販売額前年同月比 商品種別 経産省「商業動態統計」より

前年同月比ベースで見てみると、DIY用具・素材、家庭用品・日用品、電気、園芸・エクステリア、ペット用品、その他商品で、+5%~+10%あたりの伸び幅となっています。

WEB会議の浸透でインテリア消費が伸びるかと思ったのですが、+0.3%という結果であり、それほどの伸びがありませんでした。
これは、少し予想外の結果です。

大きく落ち込んでいるのがカー用品・アウトドア用品、オフィス用品類です。
外出自粛、リモートワーク移行の拡大が大きく影響しているのでしょう。

地域別の状況

都道府県別に見ると、マイナスしているのは東京のみで▲24.0%となっています。

都道府県別ホームセンター販売額前年比 経産省「商業動態統計」より

それ以外の地域は軒並みプラスの着地になっています。
大阪もマイナスになっておかしくはない、とは考えていましたが、大阪で働いている方は、居住地も大阪の場合が多いので、リモートワーク移行の影響を受けにくいことは指摘できます。

リモートワーク移行が固定化し、郊外や地方の居住を望む方が増えれば、東京のホームセンター需要は継続して落ち込むことが考えられます。
東京以外のエリアでは、むしろこの機会を活用する形で、DIYや園芸などの実用趣味を啓もう拡大する方向でマーケティングをすると良いかもしれません。

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統計・経済

ドラッグストア 販売額統計(2020年4月)

経産省「商業動態統計」にて、2020年4月のドラッグストアの販売額統計が更新されました。
その他業界とは異なり、大きく数字を伸ばしています。
また、地域のインフラとしても機能している面が見えてきました。

ドラッグストアの販売額概観

2020年4月のドラッグストアの商品販売額は6,161億円と前年同月比+10.4%の着地となりました。

ドラッグストア販売額全体 経産省「商業動態統計」より

グラフを見るとわかるように2回のスパイクがあります。

2019年9月は、消費税増税前の駆け込み需要による販売の伸びです。
前年同月比L21.8%なので、ものすごい数字ですね。

2回目のスパイクは2020年2月で、前年同月比+19.1%となっています。
この要因を先に書くと(商品別で見た方がわかりやすい)、買占め騒動の影響によるものと推測されます。

なお、店舗数別で見ると、ドラッグストアの店舗数は年々増加を続けていることがわかります。

ドラッグストア店舗数 経産省「商業動態統計」より

販売額が全体として伸びている要因として、店舗数の伸びも指摘できるでしょう。
数字の伸び幅からして、ドラッグストアが地域のインフラとして機能していること、また、まだまだ需要がありそうだということが感じ取れます。

商品種別の販売状況

商品種別に見ると、明暗が分かれることがわかります。

まずは販売額の推移です。

ドラッグストア販売額 商品種別 経産省「商業動態統計」より

食品と家庭用消耗品(トイレタリーやペット用品含む)がドラッグストアの販売額におけるボリュームが大きいことがわかります。
従来、スーパーが流通を担っていた商品なので、この点からも地域のインフラとして機能しているということを支持できます。

食品の伸びは、リモートワーク移行、外出自粛の影響により家庭内消費の増加によるものでしょう。

ドラッグストア販売額前年同月比 商品種別 経産省「商業動態統計」より

前年同月比で見ると、2月のスパイクの要因がわかります(推測がつく)。

衛生用品類(介護用品、ベビー用品)の伸びが顕著で、おそらく買占め騒動の影響によるものと考えられます。
他の商品類も概ね伸びているので、「せっかく来店(もしくは並んだ)したのならば、他のも買っていこう」「他の商品も品薄になってしまうかもしれない」という心理が働き、全体的に数字が伸びた結果になったのでしょう。

(衛生用品類のスパイクは2020年1月だが、衛生用品類はボリュームそのものは小さいです。
買占め騒動による品薄報道が広がり、それを受けて2月に不安に駆られた消費者が殺到し、幅広く様々な商品を購入していったものと考えられます。
また、2月はまだリモートワーク移行の影響も少なく、化粧品類のマイナス幅が小さいこともスパイクを大きくしている要因でしょう。)

面白い、と言っては不謹慎なのですが、かなり社会と人々の動きが反映されたグラフになっています。

地域別の状況

都道府県別に見てみると次のようになります。

都道府県別ドラッグストア販売額前年比 経産省「商業動態統計」より

大阪や東京は、リモートワーク移行の影響を受けているのか、マイナスの着地になっています。
東京の幅が小さいのは、マスクを探して来店した顧客が、(マスクが買えなかったとしても)他の商品も買っていったからなのでは、と推測されます。

大阪では、目的のものが無いのならば、素直にお店を出るという、地域毎の消費者心理が働いているものと思われます。

沖縄の動きはよくわかりません。
2019年まで、沖縄ではドラッグストアの出店ラッシュが続いていましたから、その反動減でしょうか?
この点は、わかったら追記していきます。


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統計・経済

家電大型専門店 販売額統計(2020年4月)

経産省「商業動態統計」にて、2020年4月の家電大型専門店の販売額統計が更新されました。
その他業界における販売額が落ち込んだのと同様、大きく前年比マイナスの着地になっており、消費税増税前の駆け込み需要反動からの回復に水をかける形になりました。
一方、パソコンの売上は好調となっています。

家電大型専門店の販売額概観

2020年4月の家電大型専門店の商品販売額は3,073億円と前年同月比▲9.0%の着地となりました。

家電大型専門店販売額全体 経産省「商業動態統計」より

2019年10月に消費税増税があったことは記憶に新しいかと思いますが、この前に駆け込み需要による販売の伸びがありました。
これの影響により、2019年10月以降、駆け込み需要反動によるマイナスが続いており、緩やかに回復を続けている状況でした。

新型コロナウイルスの影響は、この回復に水をかけた形になります。

商品種別の販売状況

商品種別に見ると、軒並みマイナスではあるのですが、情報家電、つまりパソコン機器に関しては大きなプラス(+23.5%)となりました。

家電大型専門店販売額 商品種別 経産省「商業動態統計」より
家電大型専門店販売額前年同月比 商品種別 経産省「商業動態統計」より

これは、若い方を中心にパソコンを所有していない比率が増えている中、リモートワークの拡大によるPC需要の増が大きく影響しているのでは無いかと考えられます。

パソコンに関する意識調査 株式会社プラネット2019年調査より

20代の男性のPC所有率はデスクトップが約26%、ノートPCが約52%、女性ではデスクトップが約9%、ノートPCが約35%となっています。
これが年齢層があがるにつれて、上昇していくのですが、個人のパソコンを所有していない方が結構な比率で存在することがわかります。

(スマートフォンで事足りるから、という言い分はわかるのですが、情報閲覧性を考えると、圧倒的にパソコンの方が優れているのに、と考えてしまいます。
後、スマートフォンも持っていない人が1割~2割いらっしゃるようで、どのような生活を送っているのかが気になります。)

他の商品を見て見ると、カメラの落ち込みが激しく、前年同月比▲69.2%の着地となっています。

外出自粛の影響もそうなのですが、元々カメラ領域はスマートフォンにその市場を奪われ続けていたので、非常に厳しい環境にあると言えます。
カメラという商品の、存在意義、価値を改めて再定義しないと、カメラ市場の未来は無いのでは?と考えてしまいます。

地域別の状況

まずは大まかなエリア別の状況です。

エリア別家電大型専門店販売額 および 販売額減少率(2020年4月) 経産省「商業動態統計」より

どのエリアも軒並みマイナスなのですが、中国・四国・東北といったエリアは減少幅が小さい状況となっています。

都道府県別では次のようになります。

都道府県別家電大型専門店販売額前年比 経産省「商業動態統計」より

コンビニの時のような、関東圏における特徴的なものはあまり見当たらない状況です。

不思議なのは栃木の動きです。

大体の都道府県においてマイナスになっているにも関わらず、栃木県だけが+19.6%と突出した伸びになっています。

理由が全くわかりません。
これは、わかり次第、追記をしていきます。


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統計・経済

コンビニエンスストア販売額統計(2020年4月)

経産省「商業動態統計」が更新され、コンビニエンスストアの4月の状況が見えてきました。
前年比は大きくマイナスするも、2015年指標ベースでは微減と、ここ5年のコンビニの影響度拡大が見て取れます。
また、東京都それ以外の地域の対比も大きく出ており、ビジネスインフラなのか、地域インフラなのかの差も明確になっています。

コンビニ業態の前年比

こちらの記事で、コンビニ業態の売上高前年比は▲10.8%、客数前年比は▲19.3%、客単価前年比は+10.5%という数値を示していました。

客数に関しては、売上が見込める都市部はリモートワークに移行する企業も多く、客数減に大きな影響が出ると予想し、客単価に関しては「一つのお店で完結させよう」という購買行動につながっていると推測を立てました。

今回は、これらの情報のアップデートとなります。

指数ベースで見ると大きな影響がない

まず、全体概観です。

コンビニ商品販売額全体 経産省「商業動態統計」より

コンビニ商品の販売額は8,914億円と、前年比▲10.7%とという着地です。
小売店でマイナス10%は、激震が走るレベルの落ち込みです。

一方、2015年を100とした時の指数としては▲0.05ポイントの99.5という着地であり、季節調整後の指数で見ると、そこまでの落ち込みではありません。

この5年で、どれだけコンビニエンスストアという業態が、日本社会全体で拡大し、影響力を及ぼしてきたのかが見て取れます。
なお、店舗数はここ数年、5万6千台で推移しているため、1店舗あたりの売上高があがり続けている状況だったと言えます。

商品別の販売指標

まず用語を簡単に。

  • 日配食品:(ファストフード含め)お弁当、おにぎり、サンドイッチ、消費期限設定されている生鮮食品など
  • 加工食品:飲料、カップ麺、お菓子などの賞味期限設定がされているもの、冷凍ものなど
  • 非食品:食品以外の雑貨、雑誌、ゲームなどの商品
  • サービス:コピー、宅配便、チケット、プリペイドカードなど

ちなみに、これらの内訳は地域や立地、店長の方針などにもよるのですが、概ね下記のような構成になります。

  • 日配食品:40%
  • 加工食品:25%
  • 非食品:30%
  • サービス:5%

さて、商品別の販売額推移を見ると次のようになります。
20年1月以降、全体的に数字が落ちているように見えるのですが、コンビニ業界では1月2月はこういう動きをするので普通の数字で、問題は3月4月です。

コンビニ商品販売額 商品別内訳 経産省「商業動態統計」より

前年比の推移で内訳を見ると、概ね2020年2月までは波を打ちつつも安定的に推移をしていました。
これが2020年3月以降は新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込み、4月は消費期限が設定されている日配食品に関しては▲12.8%、加工食品・非食品は約▲8%、サービス売上に至っては▲22.2%という着地になりました。

日配食品が大きく落ち込んだ理由は、上述のリモートワークの影響を受けた落ち込み、加工食品と非食品の落ち込みが緩やかなのは、「一つのお店で完結させよう」が影響していると考えられます。

コンビニ商品販売額 商品別前年比 経産省「商業動態統計」より

指数別で見ると、日配食品が▲1.1ポイント、サービスが▲10.8ポイントで、加工食品と非食品はプラスです。

コンビニ商品販売額 商品別指数推移(2015=100) 経産省「商業動態統計」より

地域別の状況

地域別の販売額減少率は次の通りです(2020年4月単月)。

都道府県別の販売額と販売減少率 経産省「商業動態統計」より

まず京都の▲15.8%ですが、よくわかりませんが、おそらく観光客からの売上減が大きく影響しているものと推測されます。

東京(▲15.7%)と大阪(▲14.2%)はわかりやすい数字です。

どちらもビジネス圏として存在感の大きい地域ですので、各企業がリモートワークに移行した影響が出たものと推測されます。

それ以外の地域は多少の差はあれど、極端に特徴的なものはあまり見えませんが、関東エリアは特殊です。

茨城、千葉、埼玉、神奈川の東京を取り巻くエリアは落ち込み幅が小さく、▲6%~▲8%の範囲に収まっています。
これは、東京でリモートワーク対応をした方々が、各々の居住地域での消費を行った影響が出ているものと推測されます。

東京一極集中がこれまでどれだけ起きていたのか、が読み取れる数字と言えます。


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統計・経済

従業員の不足感の‟解消”としわ寄せ

帝国データバンクより、企業の人手不足感が急激に低下、というリリースが出ていました。
景気が急激に後退しているので当然なのですが、そのしわ寄せは社会的に弱い立場の人たちが受けます。

従業員の過不足感

帝国データバンクの調査によると、2018年、2019年(いずれも4月)は‟不足”が正社員では約50%、非正社員では約32%、一方‟過剰”が正社員では約8%、非正社員では約6%という数字でした。
これが、この2020年4月には正社員では、‟不足”が約50% ⇒ 31%、‟過剰”が約8% ⇒ 21.9%、
非正社員では、‟不足”が約32% ⇒ 16.6%、‟過剰”が約6% ⇒ 21.6%、と急激に人材ニーズが落ち込んだ形になっています。

‟過剰”となっている業種としては、旅館・ホテル、飲食店、娯楽サービス、などをはじめとした最終消費系の業種のみならず、広告や製造業など、様々な業種があがっています。

詳細は、リンク先リリースページをご確認ください。

労働力統計

そのような状況下、実際に就業者数の変化を見てみると、数字上は過不足感の変化ほどの悪化は見受けられません。

新型コロナウイルスの影響を受け始める2019年11月(ちょうど半年前)を基準に置いてみると、2020年4月は0.98と、2ポイントの悪化という着地です。

就業者数推移 総務省統計局「労働力調査」より

ただ、これの内訳を見てみると、主に20代30代の若者が影響を受けていることがわかります。

‟男性”で見ると、15歳~24歳が0.93と7ポイントの悪化、25歳~34歳、35歳~44歳が098と2ポイントの悪化です。

年齢層別就業者数推移(男性) 総務省統計局「労働力調査」より

‟女性”で見ると、15歳~24歳は0.95、25歳~34歳はあまり影響を受けなかったものの、35歳~44歳が0.94という結果になっています。

年齢層別就業者数推移(女性) 総務省統計局「労働力調査」より

雇用種別で見ると顕著で、正規雇用はむしろ若干の増加も、非正規雇用は0.92と急激に落ち込んでいます。
4月は新卒の方や、中途でも新しく就職する方も多いので、正規雇用が多少は上昇するのはわかるのですが、非正規雇用の落ち込み方は、非常に激しいと言えます。

雇用種別雇用者数推移 総務省統計局「労働力調査」より

つまり、主に20代30代の若者、女性、非正規雇用といった、社会的に弱い立場の人たちに、しわ寄せがいっている状況と言えます。

業績が悪化すれば、人件費をはじめとしたコストカットをするのは当然であり、また日本は正社員を解雇しづらい法律のため、非正規雇用の方が調整弁になってしまうのも当たり前と言えば当たり前です。
会社が倒産してしまっては、元も子もないので、体力に限界がある会社が辛い判断をするのも当然ではあります。

また、非正規雇用という立場は弱いものだと以前からわかっていたはずですし、自己責任と言う言葉も存在します。

しかし、あまり必要があったとは思えない判断で今の経済縮小が起きていると思うと、非常にやるせない思いがあります。


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統計・経済

日本の若者はもっと怒って良い

6月2日、新型コロナウイルスの感染再拡大の兆候が見られるとして、東京都では「東京アラート」なる独自の警戒情報を発信しました。
これに関して、素朴に若者はもっと怒って良い、と感じました。

統計的な事実

人の命を統計的な、数字的観点で見るのは如何なものか、という意見があるのは承知しており、しかし定量的な数字を用いないと何も語れないのも一方では事実なので示します。
各所でも示されているので、比較的周知の事実だとは思うのですが。

事実として、年齢別の死亡率、重症化率を見た時、20代、30代の方は、ほぼほぼ問題が起きません。
40代、50代も重症率は高まっていくので注意は必要ですが、本当に警戒をしなければならないのは60代以上の方が中心です。

新型コロナウイルス感染症の国内発生動向より

何を語ろうが、まずはこれが事実です。
なお、このグラフの動きは、通常のインフルエンザや風邪でも同様です。
(人命を軽んじるような話は一切していないので留意ください。)

経済をこれ以上悪化させるのか

経済が悪化すれば、仕事を失う人が増え、仕事を失う人が増えると、自ら人生の幕を閉じられる方の人数も増えます。
これも統計的な事実です。
幸い2020年4月は、リモートワークや社会活動の自粛による影響がプラスに働きましたが、今後どうなるかが懸念される状況です。

既に現実として、生活に密着する衣食住をはじめ、リアルに経済の悪化が顕著になっています。

そうでなくても、この約30年、経済は緩やかに悪化を続けており、人々の所得は減少を続けています。
年収400万円未満の方が、この約20数年で15%以上増加している。)

所得別年次推移 平成30年国民生活基礎調査より

若者はもっと怒って良い

経済活動の自粛、外出自粛によって被害を被るのは主に若者です。
主に過去の貯蓄や年金で生計を立てている高齢者は感染症から救われます。
しかし、ただでさえ社会負担が大きい若者が一方的に経済的なダメージを被ることになります。
(当然に高齢者の健康を守ることは必要なことです。
高齢者をないがしろにするような話は一切していないことに留意ください。)

各所でも言われている通り、年齢別の対応を行えば良いでしょう。

  • 20代30代 : 通常通りに経済活動を行う
  • 40代50代 : 各人の健康状態を鑑みて選択的な経済活動の自粛を行う
  • 60代以上 : 積極的に経済活動の自粛、外出自粛を行う

加えて、高齢者の方と同居している方や、基礎疾患がある人にも注意が払えるようにさえすれば良いはずです。

これ以上、社会を混乱させて誰が得をするのでしょうか?
再度、警戒を促すことが必要にせよ、やり方があるはずです。

若者はもっと怒って良い、と考えます。

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統計・経済

【経済統計・景気動向】新型コロナウイルスによる景気・経済への影響(2020年2月~4月)

新型コロナウイルス影響による経済統計・景気動向について、2020年2月~4月までの状況を整理しました。
消費支出に大きな落ち込みがあるものの、全体感としては、まだ数値には表れていない条項です。
今後の動向が多いに懸念されます。

忙しい人向けまとめ

いずれも、2020年2月~4月の統計・景気指標になります。
以下、「現時点」は2020年2月~4月頃を指します。

  • 景気動向指数では大きな影響が出ていない
  • いわゆる「不要不急」な消費支出は大きく落ちている
  • 失業率には変化がないが、有効求人倍率が低下し、就労環境の悪化が出始めている
  • 企業倒産件数はまだ増えていない、金融資産の現金化や借入の増加でしのいでいるのでは
  • 日経平均は2年半ぶりに20,000円を下回っている(2ヶ月連続)

景気動向指数では大きな影響が出ていない

現時点では、景気動向指数、各種産業活動指数に大きな影響は出ていません。

景気動向・産業指数

ここ数ヶ月の全体的な落ち込みは、新型コロナウイルスの影響ではなく、米中貿易戦争や消費税増税の影響によるところが大きいです。
先行指数は91.7、一致指数は95.5です。

いわゆる「不要不急」な消費支出は大きく落ちている

消費統計は、特に2020年3月で影響が見えます。

消費統計

消費支出は消費税増税の影響から抜け出し、前年比トントン位で着地(▲0.3%)。
小売業販売額は、おそらく飲食店をはじめとしてマイナスがある一方、家庭での消費は増えたでしょうから概ね相殺されて▲4.6%の着地です。

一方、百貨店売上高は▲33.4%と激減、旅行取扱高も▲18.9%となっています。
百貨店のテナント引き揚げやそれによる箱の業績悪化、旅行関連業種の倒産が懸念されます。

新車販売台数

同様、新車販売も大きく落ち込んでおり、昨年対比▲28.7%となっています。
直近4月の販売台数と過去1年間の販売台数平均で比較すると▲35.7%となり、2020年4月は過去にないレベルの減少となります。

全体として、いわゆる「不要不急」な消費支出が大きく落ちている、という状況です。

失業率には変化がないが、有効求人倍率が低下し、就労環境の悪化が出始めている

労働統計としては、まだ現時点では大きな変化がありません。

労働統計

この表の通り、常用雇用者指数は2%前後を維持しており、完全失業率も若干の増加の兆しが見えるものの2020年3月で2.5%の着地となっています。

有効求人倍率

一方、有効求人倍率は落ち込みが激しくなっています。
米中貿易戦争や消費税増税の前後から落ち込みが始まっているのですが、2020年3月で1.39倍と、2020年4月から2019年6月までの期間1.6倍を超えていたことを考えると、かなりの急落です。
今後の動向が懸念されます。

所定外労働時間

参考程度ですが、所定外労働時間は20ヶ月連続で減少を続けています。
労働環境そのもので見た場合には、改善が進んでいる状況です。

企業倒産件数はまだ増えていない、金融資産の現金化や借入の増加でしのいでいるのでは

企業倒産件数は、まだ大きな増加は見られません。

企業倒産件数とM3増加率

2020年3月は740件の着地となりました。
過去1年間の平均が713件なので、増加傾向は見られますが、まだこれからということなのでしょう。

併せてM3増加率を見た時に、2020年3月で2.7%となっており、過去1年間と比較して+0.6%となっています。
金融資産の現金化、銀行借入の増加により、現状は倒産を防いでいる、なんとかしのいでいる、という状況と考えられます。

今後、影響が長期化すれば、急激に倒産件数が増加していくことは間違い無いので、今後の動向が懸念されます。

日経平均は2年半ぶりに20,000円を下回っている(2ヶ月連続)

日経平均は当然ですが、落ち込みを見せています。

日経平均、上場株価時価総額

2年半ぶりに20,000円を下回る状況が続いており(2ヶ月連続)、あわせて上場企業時価総額も低下しています。
マネーサプライの状況によっては大暴落もありうるので、こちらも併せてウォッチしていく必要があります。

(参考)資料の一覧と出典元

各グラフの元データは下記になります(Excelデータ)。

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