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睡眠の質と仕事の先延ばし傾向には関係がある模様~先延ばしを直したいなら寝よう~

先延ばし癖に悩んでいる(もしくは開き直っている)方は多いのではないでしょうか。
実は、筆者もそうです。毎日多くのタスクを先延ばしにし積もりに積もらせています。
どうすれば先延ばし癖を直せるでしょうか?
その鍵は睡眠にある可能性があります。

睡眠の質と仕事の先延ばし傾向について調査した研究

アムステルダム大学の研究チームは、タイトルについての調査を行いました。

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2018.02029/full

研究の概要を次のようなものです。

  • 金融・銀行(17%)、政府・教育(13%)、建設(7%)、ヘルスケア(7%)、販売・マーケティング(6%)など、さまざまな業種に勤務する71名の正社員が対象
  • 性別は男性51%、平均年齢は約35歳、平均勤続年数は約13年
  • 参加者にはアンケートを回答してもらった
  • 最初にアンケートを実施した後に、10日間に渡り睡眠の質と先延ばし傾向についてのアンケートを毎日実施(午前・午後の2回)

その結果、睡眠の質と翌日の仕事の先延ばしには負の関係があることが示されました。
その中で、特性として自制心がある人は悪い睡眠の影響を受けづらく、自制心が低い人程、悪い睡眠の影響を受けやすいこともわかりました。

つまり、自制心が低い人ほど、きちんと寝よう、ということです。
(先行研究で、睡眠の質と仕事の先延ばし傾向について負の関係があることはわかっており、この研究ではその知見を深掘りし、どういう特性があるか、という点について解像度をあげたものになります。)
(なお、自制心が高い人でも、睡眠の質が低い場合には先延ばし行動が増加する。あくまでも、個人の自制心の特性により、緩和される、というだけ。)

先延ばし癖は日単位で影響を受ける

大枠の結果は上述の通りなのですが、では、どれ位の時間軸で影響を受けるのか?というと、どうやら日単位のようです。

調査では、ある日の睡眠の質の低さが、翌日の先延ばし行動の増加と関連しており、個人の自制心の問題以上に、睡眠の質が大きく影響していることがわかったのです。

また、睡眠の質を高く保った場合、自制心の高い人と低い人で翌日の先延ばし行動について、その差がかなり埋まったことも示されました。
(これにより併せて睡眠の質が個人の自制心の問題以上に、先延ばし行動に大きく影響している、ということが示された。)

懸念、というか悩み

結論として、きちんと寝よう、という話ではあるのですが、一つ懸念、というか悩みが存在します。

それは、睡眠の質が低下した結果として、「寝る」という行動自体を先延ばしにしてしまう、という点です。
(覚えがあるかと思います。夜中、さっさと寝た方が良いのはわかりきっているのに、ついつい夜更かししてスマホをいじったりしちゃうの。)

研究者たちは、その点についても指摘しており、寝ることを先延ばしにしてしまう理由や原因を解決するための行動をとった方が良いとしています。
例えば、一定の時間を過ぎたら、パソコンやスマートフォンを触れない様に、アクセスをブロックする機能の導入等です。

行動を変えたいならば環境を変えよう、ということですね。

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適度な運動は睡眠不足による悪影響を相殺する可能性がある

現代人にとって、睡眠不足は質の悪い友達のようなものです。
睡眠不足が認知機能の低下や、健康状態の悪化など、様々な悪影響を及ぼす、ということがわかっていたとしても、良質な睡眠を純分にとることは贅沢な世の中です。
そのような中、適度な運動が睡眠不足による悪影響を相殺する可能性が示されました。

運動と睡眠による健康への影響を調べた長期研究

シドニー大学の研究チームは、次のような調査を行いました。

https://bjsm.bmj.com/content/early/2021/05/25/bjsports-2021-104046
  • 380,055人の中年成人を対象に分析を行った
  • 調査では身体活動のレベルと睡眠の状況について調査された
  • 身体活動レベルは世界保健機関(WHO)のガイドライン(※)に基づき、高、中、低、中度から重度の運動無しに分類
  • 睡眠は、総合的な睡眠スコアを用いて、健康、中間、不良に分類
  • これらに基づいて、12種類のパターン別に11年後の疾病状況等について追跡調査を行った

※ WHOのガイドライン

ガイドラインの上限は、週に300分の中強度の運動、または150分の激しい運動、またはその両方。
ガイドラインの下限は、週に150分の中強度の運動、または75分の激しい運動、またはその両方。
中強度の運動とは、通常、数分間継続すればわずかに息が切れる程度のもので、早歩きやゆったりとしたペースでのサイクリングなど。
激しい運動とは、通常、息が切れるほどで、ランニング、水泳、テニス、ネットボール、サッカー、フットサルなどのスポーツのこと。

適度な運動は睡眠不足による悪影響を相殺する可能性がある

11年後の長期追跡調査の結果、非常に興味深いことが判明しました。

(追跡調査の段階では、15,503人の参加者が亡くなり、そのうち4,095人が心臓病で、9,064人ががんで亡くなりました。)

結果、健康的な睡眠をとっている人に比べて、睡眠不足の人は、早死にするリスクが23%、心臓病で亡くなるリスクが39%、がんで亡くなるリスクが13%高くなることが示されました。
また、運動量との比較では、心臓病やがんで死亡するリスクが高かったのは、睡眠状況が不良で、WHOの身体活動レベルのガイドラインを満たしていない人たちでした。

一方、睡眠不足であったとしても、ガイドラインを満たす身体活動を行っている人は、睡眠不足でガイドラインを満たしていない人に比べて、心臓病やがんで死亡するリスクはそれほど高くはない、という結果が示されました。

つまり、WHOガイドラインの下限値を満たす身体活動レベルであれば、睡眠不足による健康被害の悪影響を、一定程度軽減、または解消できることがわかったのです。

WHOガイドラインの下限値を満たす身体活動レベル:週に150分の中強度の運動、または75分の激しい運動、またはその両方

注意点、もしくは懸念

この研究の問題は、観察研究であるが故に、あくまでも相関性が示されただけ、という点にあります。
メカニズムもわかっていませんし、因果関係も示されています。

つまり、運動できるだけの、そもそもの気力、体力、健康がある人が運動をしているだけで、実は関係が無い、という可能性がゼロではないのです。

とは言え、各種の研究により、運動が健康にプラスの影響を与えることは一定わかっている話ですので、上述の話には、高い水準で信ぴょう性があると考えられます。

運動がメンタルに対してもプラスの影響を与えることも、同様の観察研究で示されているので、心身ともに健康的な生活を送りたいのであれば、適度な運動は必須と言って良いでしょう。

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睡眠の質を改善する入浴の温度とタイミング

忙しい働く人にとって、睡眠は貴重な時間です。
しかしながら、日中の慌ただしさや日々のストレスで中々寝付けない、という人も珍しくはありません。
ここでは、睡眠の質を改善する方法について、「入浴」の観点で解説します。

先に結論

就寝前に次の条件で入浴をすると、睡眠の質が改善するそうです。

  • 就寝時刻の1~2時間前
  • 約40~42.5度

具体的な効果としては、実際に眠りに入るまでの時間(入眠までの時間)が約36%(約10分間)早くなる、つまり寝付きの改善効果があるとのことです。
これは、お風呂につかるのでもシャワーでもよく、身体を十分に温めることが重要とのこと。

具体的な研究内容

今回の研究はかなり精度が高いものです。
米テキサス大学が行ったメタアナリシスで、先行研究5,000件超の研究を再検討、分析が行われました。

メタアナリシスとは、複数の研究結果を統合的に検討、分析を行う研究方法で、その証拠(科学的根拠、エビデンス)としての強さは、非常に高い方法に分類されます。
当サイトの記事についても、このメタアナリシスの手法を参考に、複数の研究や報告を横断的にレビューした上で執筆し、極力質の高い情報となるように努めています。
なお、メタアナリシスはあくまでも過去の複数の研究を統合的に分析する手法なので、新たな技術や観点でもって行われた最新の研究を組み込めば、異なる結論となることは多々ありえます。
つまり、メタアナリシスだからと言って、必ずしも科学的に「完全に」証明されたとは言い切れないことは留意ください。

さて、今回の研究は、5,322件の研究(入眠、目覚め、睡眠時間、睡眠の質など)について検討が行われました。
その結果、就寝1~2時間前、約40~42.5度の入浴(PBH)により、入眠までの時間が10分間改善される、という報告が示されました。
これはあくまでも統計的な分析によるものであり、より最適なタイミングや時間、効果のメカニズムなどは、追加の調査が必要とのことです。

これまでの知見からは、身体をあたため、血行を良くすることにより血液が循環し、皮膚から熱が放出される、つまり結論として体温が低下することにより、身体が「眠るモード」に移行しやすくなるのでは、と推測されます。

寝る前の具体的な行動

こちらの記事では、ブルーライト、より正確に言うと就寝前の強い光そのものが睡眠の質を下げる点について記載しています。

こちらの記事では、「皿洗い」にリラックス効果がある点について記載しています。

こういった知見を踏まえると、夕食後、「皿洗い」などの家事を終え、睡眠前の1~2時間前に「入浴」し、その後寝るまでは輝度(光の強さ)を落とした照明環境でリラックス(読書など)をするのが、睡眠の質を改善する方法と言えるでしょう。

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