ブルーライトは結局、悪いのか?影響ないのか?

生産性・業務効率化

目をはじめ身体に悪影響を与えると言われているブルーライト。
日本では2012年頃から話題に多くあがるようになり、この2020年に入ってもトレンドが収まる兆しを見せません。
今回は、このブルーライトの実際に切り込んでみます。

Googleトレンド(日本、2004-現在、全てのカテゴリ、ウェブ検索)より

なお、「ブルーライトとは?」の基本的な部分は一番下に(参考)として掲載しているので、ご存じ無い方はそちらからご確認ください。

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サマリー~少なくとも目への悪影響は気にしなくてよい、就寝前には電子機器を使わないのは睡眠の質のため吉~

結論を一言で表現すると、「気にするな、ただし就寝前には電子機器を使わないようにしよう」です。
下記記事をまとめると、影響度合に関しては次のようになります。

  • ブルーライトの悪影響は多数言われているが、少なくとも目に与える影響は限定的(失明するとは言えない)
  • 日中、ブルーライトカット機能を持つ液晶フィルターやスマートフォンを使うことの意味は無い
  • ブルーライトそのものより、光の輝度の強さや黄色光の方が睡眠に与える悪影響が強い可能性がある
  • 就寝前には電子機器を使わないのが現時点では吉と言える

ブルーライトに関しては、まだまだ研究の歴史が浅く、ここ20年ほどです(特に、スマートフォンが普及しはじめたここ10年ほどの蓄積しかない)。
各種論文を横断してレビューする限り、あるとされている悪影響については、それぞれ下記が現時点で言えることではないでしょうか。

  • 網膜へのダメージは限定的(無いと言ってもよい)
  • 目の疲れ,痛みはある(が紙の書類仕事を長時間しても同様のことは起きる)
  • 睡眠障害は現時点では否定する要素が少ない
  • 肥満は研究が少なく意見表明ができない(そもそも夜中に人工光を浴びるような不摂生な生活が問題なのでは)
  • 癌(がん)は研究が少なく意見表明ができない(体積の小さい昆虫や微生物の遺伝子変異が言及されているだけで、体積の大きい人への悪影響が大きいとは思えない)
  • 精神状態は睡眠障害や目の疲労と連動して起きる可能性はある(つまり直接的な影響は少ないのでは)
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悪い(悪影響がある)とする主張

日本では冒頭にも書きましたが2012年頃から、身体に悪影響を与えるという文脈で、話題に多くあがるようになりました。
そして、この頃に、日本で初めてのブルーライトカット機能を持つiPhone用液晶保護フィルムがSoftBankから発売されています。

では、具体的にどんな悪影響があると主張されているのでしょうか?

こちらの記事(実験当時、心理学を専攻していた学生による予備研究:2013年5月に発表)では、就寝2時間前に電子機器を操作している人は、操作していない人に比べてストレスレベルが高くなる、とされています。
実験は、SNS広告経由のオンライン調査で行われ、18歳から73歳までの500人が参加、参加者には若い女性やヒスパニックの方が多かったとの事で、母集団としては偏りがあるかもしれないと注釈があります。

こちらの記事(ハーバード大学医学大学院)では、就寝前、紙の書籍と電子書籍を読んだ場合の睡眠の質を比較しています。
実験では、電子書籍を読むと、血中のメラトニン量が減少し、眠るのに時間がかかったのみならず、翌日への疲労が残った、とのことです。
実験は、12人が参加、2週間にわたり、同じ被験者で紙の書籍を読む週と、電子書籍を読む週にわけて実施しています。
なお、バックライトのないタイプのKindleなどは、悪影響が無いようです。

こちらのリリース(東北大学大学院農学研究科)では、昆虫にブルーライトを照射した結果、対象の昆虫が死亡した、という実験が公表されています。
その殺虫効果はヒトの目に対する傷害メカニズムに似ていると推測されており、光が内部組織に吸収され、活性酸素が生じ、細胞や組織が傷害を受け死亡すると推測されています。

こちらの論文(米トレド大学)では、網膜における信号伝達物質である「レチナール」がブルーライトによって、光受容体細胞にとって有害な化学物質に変容するとしています。
この有害な化学物質が、失明の原因である黄斑変性症を引き起こすメカニズムでは無いか?と主張されています。
なお、研究では併せて、ビタミンE由来のα-トコフェロールという物質が、網膜の細胞死を防ぐ可能性についても示唆しています。

こちらの記事(複数研究者)では、夜間の就寝中に人工光を浴びることにより、女性の体重増加や肥満リスクの拡大につながる可能性があると示唆されています。
実験は、アメリカ全土の35歳から74までの約4万4,000人の女性で、アンケート形式での調査で行われています。
なお、相関性が見つかっただけで、因果関係が判明したわけでは無いことは、あわせて注釈があります。

こちらの論文(オレゴン州立大学)では、ブルーライトを長く照射されたショウジョウバエ(科学実験によく使われる昆虫)は、照射されていないショウジョウバエに比較して、運動障害、網膜細胞の損傷、脳神経の変性など、加齢の症状が早くあらわれ、寿命も短くなった、としています。
また、盲目のショウジョウバエに対しても同様の結果が見られ、必ずしもブルーライトを目で見なくとも悪影響はある、としています。

これらの記事や論文や、世界中の記事、論文の一部ですが、非常に多くの研究で「悪影響がある」ことが指摘されています。

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影響ないとする主張

一方、アメリカ眼科学会(AAO)は、これまでの研究などを総括したうえで、「ブルーライトは視力に影響するとは言えない」と声明を出しています。

  • 実験上の結果と、実際に人の目で起きることが一緒であるとは限らない
  • 各種研究で使用されている細胞は、網膜細胞由来ではない
  • 各種研究で使用している光は、実際の人の目が受容する光の条件とは異なっている
  • 実験において変性レチナールの悪影響を受けた細胞膜細胞は人の目には存在しない
  • そもそもとして、レチナールそのものが、変性しようがしまいかに関わらず、いくつかの細胞にとって毒性がある
  • 実験においてブルーライトを照射された細胞は、人体内であればブルーライトに暴露されない

つまり、目そのものへの悪影響は考えづらい、という主張です。

一方、睡眠に対する悪影響に関しては、エビデンスが多くあり、こちらに関しては否定するものでは無いともしています。
また、電子機器を長時間見ることにより、まばたきの回数の減少や、異なる距離への焦点があわせづらくなることもある、ともしています。

ただ、後者の話に関しては当たり前の話なのですが、紙の書類仕事や読書などに熱中すれば、同様の現象がおきるので、電子機器が一方的に悪いとするのは乱暴でしょう。
何にしても、過度は良くない、ということでしょう。

また、最近の研究(マンチェスター大学,2019年10月)では、ブルーライトは言われているほど睡眠を妨げる効果はない、むしろ黄色光の方が睡眠に与える悪影響が多い、ことを示唆しています。
マウスに照明の輝度や色を自由に変更できる照明を用いて光を照射した結果、光の色合いよりも輝度の強さの方が影響度合いが大きいこと、また、ブルーライトを含む青色光よりも、黄色系統の光の方が影響度合いが大きいことがわかったとのことです。
つまり、現状普及しているブルーライトカットのフィルターや、パソコンやスマートフォンに搭載されているカット機能には、意味が無い可能性が高い、ということです。
研究者は「就寝前にスマートフォンなどを使わない、という対策の方が良い」としています。

(参考)ブルーライトとは?

そもそものブルーライトとは?については「ブルーライト研究会」の解説を拝借します。

ブルーライトは、ヒトの目で見ることのできる光の中でも強いエネルギーをもっており、身体に悪影響を与えるとされています。
このブルーライトは、近年、急速に普及したパソコンやスマートフォンのディスプレイの光にも、多く含まれています。
ブルーライトが身体に与える具体的な悪影響としては、「網膜へのダメージ」「目の疲れ」「目の痛み」「睡眠障害」「肥満」「癌(がん)」「精神状態」があるとされています。

ブルーライトとは
ブルーライトとは

波長が380~500nm(ナノメートル)の青色光のこと。ヒトの目で見ることのできる光=可視光線の中でも、もっとも波長が短く、強いエネルギーを持っており、角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで到達します。パソコンやスマートフォンなどのLEDディスプレイやLED照明には、このブルーライトが多く含まれています。
(中略)
デジタルディスプレイから発せられるブルーライトは、眼や身体に大きな負担をかけると言われており、厚生労働省のガイドラインでも「1時間のVDT(デジタルディスプレイ機器)作業を行った際には、15分程度の休憩を取る」ことが推奨されています。

ブルーライト研究会「ブルーライトとは」より

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