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【今日のフェルミ推定】ペット・テック市場への参入は儲かるか?

アフターコロナにおいては、リモートワーク拡大に伴う巣ごもり消費の影響で、ペット市場が活況になりそうです。
そこで最近、市場が産まれだしたペット・テック市場について、仮に参入した場合の事業規模について考えていきます。

お題:ペット・テック市場に参入した場合の事業規模を求める

こちらの記事で書いた通り、アフターコロナのペット市場は拡大していくものと考えられます。

この前提で考えた時に、仮にペット・テック市場に参入した場合、どれくらいの事業規模になるのかを考えてみます。

試算

さくっと行きます。

ベースとしては世帯数で、そこからどれくらいの人たちが飼育しているのか、今後市場はどれだけ成長が見込めるのか、利用状況はどうか、を考えます。
数式で表現すると、次のようになるでしょう。

事業規模 =
 世帯数 × 世帯飼育率 × 増加予測率 × アプリ使用率 × 課金率 × 月額課金額 × 12ヶ月

数字もはめてみます。

資料としては、一般社団法人ペットフード協会が出している「全国犬猫飼育実態調査」を参考にします。
とりあえず、メジャーな犬・猫に限定しました。
熱帯魚とか、鳥類・ハムスターのようなものまで含めていくとキリが無いですし、ペット・テックをやるにしても対象動物を絞らないと、やりづらいと思いますので。

それぞれ、フェルミ推定らしく数字の仮説をおいてみても良いのですが、まあググれば一発で出る世界の話なので省略します。

参照するのは、上記リンク先資料内にある「全国犬・猫 推計飼育頭数」部分です。

平成30年(2018年)全国犬猫飼育実態調査 結果

私が都心に住んでいるからなのか、あまり実感が無いのですが、結構な人が犬・猫を飼っているのですね。
この数字を計算式にはめてみると、次のようになります。

これは、ペット・テック+ペット・フードを織り交ぜて、単価を高くした設計としました。
イメージとしては、ペットの監視機能付き自動給餌機+ペット・フードで、ペット・フードは、その動物個体に応じて成分をカスタマイズしたものを想定しています。
リンク先にあるような、オーダーメイドサプリメントのようなイメージですね。
(普通にマルチビタミン・ミネラルを飲んでいればいいような気もするのですが、こういうサービスもあるんですね。)

数時間として見てみると、ざっくり約60億円とまあまあな規模感です。

結論

上記は自社利用率が全体の1%前提で、サービス単価も給餌機本体とペット・フード代のみです。

  • 飼育相談や健康管理アドバイスをオプションで組み込み、近隣の動物病院と連携したようなサービスを開発する。
  • 先行者利益をとる形で、ガツっと広告宣伝費投下してマーケット創造とシェア獲得を図る。

そんな形で展開すれば、200億円くらいまでは十分に拡大できそうな気もしますね。

とは言え、べらぼうに規模が大きいわけでも無いので、手ごろなサイズ感まで成長させ、その後はExit(事業売却)をするようなイメージになるでしょうか。
スタートアップ的な組成でやるとよさそうです。

まだプレイヤーは少なく、またこれから一気に拡大していく領域なので、興味のあるベンチャー起業家はチャレンジしてみる価値は十分にありそうですね。

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【今日のフェルミ推定】1,000円カットが普及した今、理容師で儲けられるか?

1,000円カットが普及し、どこでも気軽に髪を整えられるようになりました。
ユーザーの一人としては、非常にありがたい話です。
しかし、本当に儲かる商売なのか?、彼ら彼女らの生活は大丈夫なのか?を、片隅で心配します。
そこで今回は、理容師のお給料はどこまで上げられるのか?を考えていきます。

お題:理容師になったとして、どこまでお給料をもらえるのか試算する

条件は次の通りです。

  • 1,000円カット業態
  • カット時間は10分
  • 都心駅近立地
  • 10坪以内の小規模店舗
  • 3席稼働
  • 営業時間は10時~20時
  • とりあえず年末年始以外は無休前提

それでは、考えてみて下さい。

試算

これまで、居酒屋やコーヒー店を例に、事業計画を作ってみました。
今回も、事業計画ベースで考えてみます。

居酒屋とコーヒー店の例は次の記事を参照ください。

売上高の検証

売上高は如何に回転させるか?がポイントです。

営業日数、営業時間、席数、店舗稼働率、そして客単価のパラメータを設定すれば数字を作れます。
稼働率は75%位としました。
朝一や昼間、夕方は混みあって順番待ちの一方、それ以外の時間帯は空いている場合が多いので、1日全体としてはこれ位かな、という設定です。

フェルミ推定では、あっているかあっていないかは、さして問題ではなく、まずは前提を置いて考える方が重要なので、これで良いのです。

数字をあてはめて考えると、次のようになります。

人件費の検証

人件費は、想定される稼働状況から、必要な人数を逆算することで計算できます。

カット時間を10分とし、それを売上高検証から算出できる店舗総稼働時間を導き出し、そこから人の稼働率をあてはめて必要な人数を出していきます。

朝礼や資料作成などの雑務があるでしょうから、カットにあてられる時間としては稼働率90%。
その90%の内、実際にお客様が来店しカットする実稼働率は75%と起きました。

そして、人件費です。
人件費はざっくり1人あたり300,000円とします。
会社を経営していると、従業員の年金や保険料などを一部負担しなければならず、加えて諸々の管理費もかかるので、+15%を加算して考えます。
トータル、人件費は1人あたり345,000円/月となります。

人を雇うって、額面以上のお金がかかるんですよ。

これらのパラメータをあてはめて見ると、次のようになります。

賃借料、その他費用の検証

賃借料、つまり家賃ですね。
駅近のどこかのテナント立地を想定すると、30,000円/坪位かな、と思います。
10坪とすると、ざっくり300,000円/月ですね。

その他費用は考えるとキリがないので、その他費用比率を10%、本部費比率を15%とします。
チェーン展開していると、本部費がかかるんですよ。
会社を大きくしていくための必要経費ですね。

損益計算書

最後に、上記全ての情報を統合して損益計算書を作ってみます。

営業利益率が14%超と、大きい印象がありますが、効率的運営を考えると、これ位は目指したいものではあります。
賃借料やその他費用がもうちょっと大きい気はしますが、全体感としては、まあこんなもんなのかな、という印象ですね。

実際の数値感

実際の数字を見ようとQBハウスのIR資料を漁っていましたが、パッとはそれっぽい資料が出てきませんでした。

リサーチ会社が出している資料があったので、そちらを参考にします。

みていると、パラメータとしては下記のような比率になるようです。

  • 人件費率:53.0%
  • 賃借料:13.6%
  • その他費用率:10.8%
  • 本部比率:約14.6%

本部比率だけ「約」なのは、記載がなく、一方全体の営業利益率が約8%だったので、そこから逆算をしました。

こうしてみると、概ね一致していますが、賃借料は乖離があるようです。
日本不動産研究所が出している賃料指標をみると、都心立地でも坪単価30,000円位だったので、試算ベースでは大外れでは無かったようですが、少なくともQBハウスはもっと坪単価の高い好立地を使っているのか、それとも想定よりも面積が広い店舗にしているか、なのでしょう。

結論

さて、ここまで見てわかる通り、一月当たりの営業利益は50万円ちょっとです。
ここまで到達したとしても、実際には株主への配当や新規店舗への投資などにお金を回すのが企業経営です。
一人が望める給料向上額は、精々2万円~3万円程度でしょう。

上記の試算ですと、年収は360万円ほどで仮に望めたとしても、精々が400万円ほどです。
別資料の理容師の平均年収が300万円ほどなので、これでも優れている試算になります。

結論、好きでなければやり続けられる仕事ではない、と考えられます。
(現役の理容師の方々、好きでやっている方々を貶めようという意図は一切無いので留意ください。)

仮にやるとしたら、自分自身がオーナーとなって、店舗収益の配分をとるか(自分が株主となるわけなので)、複数店舗経営するか、になるでしょう。

別の観点で考えた時に、客単価をあげる、という選択肢も考えられます。
実際、QBハウスは1,000カットでは既に無くなっていますね。
その場合でも精々が1割2割の上昇幅なので、インパクトは小さいです。
理容師業界全体で、もっと客単価をあげても、自分で髪を切り出す人がではじめるので(アタッチメント付きのバリカンだと、髪型にこだわらなければ簡単に切れる)、限界があります。

やはり、しっかり儲けようと思うならば、自分自身が経営者になる、という選択肢しか無いのでしょう。

(参考)試算資料

試算に使用した資料はこちらになります。
ご興味のある方は、DLしてお使いください。

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【今日のフェルミ推定】居酒屋の事業計画を作ってみよう

前回に引き続き、飲食店系で事業計画を考えてみます。
今回は居酒屋の事業計画です。
こちらも脱サラ・独立開業の定番ですね。

なお、前回のコーヒー店はこちらになります。

お題:居酒屋の事業計画を作ってみよう

条件としては、次の通りです。

  • 池袋、新宿、渋谷のような週末も人が来るビジネスエリア
  • 駅からは10分以上離れた場所
  • 60席くらいの中規模店舗
  • 古いビルの地下店舗、もしくは2階以上の空中店舗
  • 営業は夜のみ

それでは、考えてみて下さい。

試算:週末と繁閑が重要

飲食店の売上高の構成要素

コーヒー店でも示した通り、飲食店における売上高の構成要素は次の通りです。

売上赤 = 客数 × 客単価

まずは、これが基本になります。

週末

次に考えるのが週末です。
週末とは、金曜日と土曜日、加えて祝休日が続く場合の休日中日も該当します。
こういった日は、他の日に比べて多くのお客様が来店する傾向があります。

そのため、シミュレーション上は週末日数をカウントし、別に計算する必要があります。

繁閑

更に考えるのが繁閑です。

飲食店の売上は年を通して一定ではなく、波があります。
12月は忘年会、3・4月は歓送迎会で盛り上がるのはイメージがつきやすいでしょう。

逆に2月や6月など、ほとんど客の入りが無いのも、何となくは伝わるかと思います。

こういった、繁閑を月単位で考えていく必要があります。

事業計画を考えてみる

上記をもとに作成した年間の事業計画は、例えば次のようになります。

これは当然、一つのシミュレーションなので、提供する商品の内容や単価設定、立地・客層に応じて大きく変動していきます。

結構、ボリューミーな印象を受けるかもしれません。
図もちっちゃいですね。
しかし、これでも事業計画策定上のミニマムな粗々なものです。

全体を通して見えること

一番右端の数字を見て下さい。

3.4%とあります。

これは年間の営業利益率です。
飲食店の営業利益率は、大体1桁%台半ば前後なので、どこの飲食店もおおむねこんな感じでしょう。
まあまあ普通の飲食店ですね。

ようは、非常に厳しい、ということです。

仮に、うまく営業していても、何かの外部要因によってお客様が前年より数%減ってしまったらどうなるでしょうか?
他にも、食品原価があがったり、お客様が暴れて店舗備品が壊れた修繕費用がかかったり(当該、客は逃げるなり、弁償しなかったり、訴訟するにも手間とお金がかかるし。)、そんなマイナス要因が一発、二発来たら、あっという間に赤字です。

次の図を見て下さい。

これは居酒屋業界の5F(ファイブ・フォース)分析です。
なんで、このような業界なのかというと、上記の図の通り、居酒屋は参入障壁が低く、また業界内競争・業界外競争も激しく、加えて全体として交渉力が低い、という点が指摘できるからです。

飲食店は居酒屋に限らず、3年で7割、10年で9割が廃業します。

飲食店の世界でうまくやっていきたいのであれば、うまくいかない前提で、入り口から精緻にシミュレーションし、マーケティングも顧客調査から確実に行い、加えて流行の変化なども敏感にとらえて即座に対応する、ということが必要です。
カンマ何%の積み上げにより、ようやく利益が出る世界。
それが飲食業界です。

私は、数ある業界の中で、飲食店がもっとも難易度が高いと考えています。
だからこそ面白いと思うし、好きなんですけれどね。

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【今日のフェルミ推定】コーヒー店の事業計画を作ってみよう

脱サラ・独立開業を、一度は夢見た、もしくは目標としている人は多いのではないでしょうか。
ここでは、独立開業で参入しやすい飲食店業態、コーヒー店をサンプルに、事業計画の基礎を作ってみましょう。
コーヒー店を開業したら、どれくらいの売上を見込めるのでしょうか?

お題:コーヒー店を開業したら、どれくらいの売上が見込めるか?

条件としては、次の通りです。

  • 半住宅街、半ビジネス街のエリア
  • 駅から歩いて3分~5分ほどのまあまあ人通りがある路面店
  • 15坪~25坪程度で、席数も20席未満の小規模な店舗
  • 業態は夕方まではコーヒー店で軽食も提供、夜はバー形式

それでは、考えてみて下さい。

試算:事業計画では条件を細かく設定しないといけない

飲食店の売上高の構成要素

飲食店において売上高の構成要素は何か?
それは次の公式であらわせます。

売上高 = 客数 × 客単価

これをベースに、条件を細かくわけて考えていきます。
具体的には時間帯と、平日・土日祝日の区分、繁閑についてです。

コーヒー店がどのように営業しているかをまずは想像してみてください。

時間帯

まずは時間帯で考えます。

朝の少数ながら朝食需要とテイクアウトのコーヒー。
昼はランチ需要とテイクアウトのコーヒー。
午後はちらほらとスイーツ需要と、仕事スペースを探すビジネスマン利用。
そして夜はバー需要。

それぞれ利用形態に併せて、利用人数や客単価が異なってくるでしょう。

平日・土日祝日の区分

同様に、平日・土日祝日の区分についても考えます。

半ビジネス街というエリアだと、土日祝日の朝と昼は、基本的に客の入りを期待できません。
場合によっては、終日、全く入らない日もあってもおかしくないでしょう。

事業計画を考える上では、これらも見込まなければいけません。

繁閑

繁閑もそうで、飲食店というものは、1年を通して同じような売上高で推移するものではありません。

冬はホットコーヒー、夏はアイスコーヒー需要があるでしょうが、それ以外の月ではあまりコーヒーの販売が伸びない可能性があります。
逆に季節要因を利用するという観点ならば、コーヒーギフトを用意すれば、12月の売上の足しになるかもしれません。

バーも同様で、2月や8月のような時期は基本的に厳しい数字になるはずです。
季節要因で考えるならば、12月はギフト需要同様、バー業態の売上も伸びるでしょう。
カップル向けに雰囲気を整えてあげると効果的でしょうね。

事業計画(売上計画)を考えてみる

これらの要因のパラメータをそれぞれ設定し事業計画(売上計画)を計算すると、例えば次のようになります。

上記は、提供する商品の内容や単価設定、立地・客層に応じて大きく変動していきます。

結構複雑に見えるかもしれませんが、ビジネスをやる上では最低限、このレベルでシミュレーションをしなければなりません。
これでも、最初期に検討する、本当に粗々なものです。
変数がいくつかあるので、その条件設定を見誤れば、せっかく意気込んで独立開業したにもかかわらず、失敗で終わりかねません。

より正確に表現するならば、飲食店は3年以内に7割が廃業します。
それくらい厳しい世界なのです。

業績全体としてはどうなるだろう

今度は、上で作った売上計画を元に損益計算書を簡単にシミュレーションしてみます。
損益計算書とは、事業における通信簿(成績表)みたいなものです。

損益計算書を考えるにあたり、費用の構成要素も考えなければなりません。
飲食店においては、FLR(フード:原価率、レイバー:人件費率、レント:家賃・減価償却費率)という3つの費用が大きな構成要素として存在します。

飲食店における原価率は20%~30%位で、コーヒーの原価率は25%位、フードやお酒も提供するなら平均で30%位になるでしょう。
人件費率と家賃・減価償却費率も20%~30%で設定されるのが一般的です。
(減価償却費とは、内装や機器類の費用を月単位で按分したものです。)
加えて、その他の諸経費として10%程度がかかります。

これらを組み込んで損益計算書を作ってみると、例えば次のようになります。
(借入金は500万円で期限一括の利率2%としました。)

これを見て、どう感じましたか?

独立開業は覚悟が必要だね

オーナーの取り分

独立開業をするからには、やはり「お金持ちになりたい!」という気持ちが大なり小なりあるのではないでしょうか?

仮にオーナーであるあなたが一人で営業していても得られるお金は、人件費部分の約472万円と純利益の約125万円です。
合計で600万円にも届きません。
営業を少しでも楽しようと、アルバイトを雇えば、オーナーの取り分はもっと減ります。
小さなコーヒー店を1店舗開業するならば、安全性・安定性含め、どこかの会社で正社員として働いていた方が、割が良いかもしれません。
儲けようと思うならば、何店舗かお店を出して、人を使いながら、うまく切り盛りする必要があるでしょう。

実際のお金の動きに関しても注意が必要です。
借入の返済分も含めて考えれば、手元に残る会社としてのお金は1年で100万円~200万円です。
精々が1月分の売上高です。
今現在のコロナの影響を考えてみて下さい。
外出自粛が続いたらどうなるでしょう?
これまで汗水流して、何年もかけて稼いだお金が、たったの数ヶ月で溶けて消えてしまう
のです。

独立開業には、かなりの覚悟が必要

ここまで見て考えれば、独立開業にはかなりの覚悟が無ければやれない、ということがわかるでしょう。
そして、やりたいことが好きでないと続けられない、ということも何となくわかるかと思います。
中途半端な覚悟ならば、絶対にやらない方が良いでしょう。

しかし逆に考えれば、覚悟さえあるならば、うまくやれるとも考えられます。
どういうことか?と言うと、まわりのお店の多くは、何かしらのチェーン店で、そこで働いている人たちは雇われている人たちです。
つまり、ライバルのほとんどは、中途半端な覚悟しか持っていない人たちのはずです(当然、正社員として働いていても、本気で取り組んでいて優秀な人はいますが)。

「そんな人たちに、私が負けるはずがない!」
飲食店は結局のところ、店長の力量で業績が決まりますので、本気で事業に取り組めるのであれば、勝算は十分に見込めるはずです。
(実際、チェーン店で働いていたトップクラスの店長が独立開業して、他のお店を押しのけて大繁盛しているケースは多いですね。)

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経営企画

緊急事態宣言解除後の経済シナリオを考えてみる~アフターコロナの経済~

新型コロナウイルスの新規感染者数も幸いのことに、減少に転じてきました。
2020年5月6日に緊急事態が解除されるか延長されるかが注目されています。
ここで、5月6日後、経済がどのように動いていくか、そのシナリオを考えてみます。

ベストシナリオ、ノーマルシナリオ、ワーストシナリオの3ケースです。
ベストシナリオで推移すると良いのですが、あまり期待はできそうにありません。

なお、こちらの記事にもある通り、感染そのものはこのGW明け頃には一定の落ち着きを見せるものと推測しています。

ベストシナリオ

ベストシナリオの起点としては、緊急事態宣言が5月6日に全面的とは言わないにせよ、大部分が解除されることにあるでしょう。
感染も一定程度の落ち着きを見せ始めます。

世の中的には、解除されたからすぐに元の生活に戻る、というようなことは無いでしょう。
リモートワークに移行した企業も、何となく安全が確認されるまでリモートワークを継続する、という選択を取るケースがまあまあな数出てくると思われます。
つまり、今の外出ムードの状況をずるずると続けながら、少しずつ状況が改善していくような動きになると推測されます。

2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の時は、半年くらい、影響が継続したことを踏まえると、2020年の秋口までは、景気が落ち込んだ状況が続きます。
日本では、例年より多くの倒産企業数、経済的死者数(自殺者数)が発生します。

これがベストシナリオです。

ノーマルシナリオ

ノーマルシナリオでは、緊急事態宣言が5月6日に一部解除されるものの、全体としては延長という判断に落ち着く、というものです。
場合によっては、一部を除き概ね解除されるものの、継続して外出自粛・リモートワーク推奨が出される、というケースも考えられます。

延長の可能性が大きそうですけどね。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言が5月6日に期限を迎える中、自民党の世耕参院幹事長は国民生活や企業への影響を考え、宣言の延長について今週中にも判断すべきという考えを示しました。

TBSnews 自民・世耕参院幹事長、緊急事態宣言の延長“今週中に判断を” 2020年4月28日

日本医師会の釜萢敏常任理事は28日に開いた記者会見で、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う政府の緊急事態宣言について、5月6日を期限として解除することは「難しい」と述べた。特定の都道府県だけ解除すると他の地域からの「人の移動を引き起こすことが懸念される」と指摘し、全国で延長する可能性が高いとの見方も示した。

日本経済新聞 緊急事態宣言の解除「難しい」 日医、全国延長言及 2020年4月28日

この場合も、一定程度は外出する人が増えるものの、元の生活に戻る、ということは無いでしょう。
巣ごもり消費が継続して好調に推移するでしょう。
リモートワークを導入した企業の多くは、そのまま継続するでしょう。

飲食店をはじめ、多くのリアル店舗が根をあげ始めます。
なんとか、4月を乗り切ったリアル店舗も、5月6月、、、と苦境が続き、この先半年で爆発的に倒産数が増加します。
あわせて、経済的死者数(自殺者数)も大幅に増加するでしょう。
場合によっては、新型コロナウイルスによる死者数よりも多くなる可能性もあります。

そして更に追い打ちをかけるように、2020年冬頃から再度、新型コロナウイルスの感染者が増え始めます。
1918年にはじまったスペイン風邪では、3回の波があり、結局のところ収束まで3年がかかりました。
本当の意味での第2波が訪れるのです。
(感染をして回復しても、必ずしも抗体を獲得できるわけではない。加えて、そもそもとして感染者数が少なく、集団免疫効果が少ないので、高い確率で第2波が来ると想定される。)

再び外出自粛の風潮、場合によっては緊急事態宣言も出て、何とか2020年を乗り切った企業に大ダメージを与えます。
当然、2021年のオリンピックの開催も現実的で無くなってきます。
少なくとも、強行しても期待する経済効果を生むことはないでしょう。

なお、既に開催の可能性について、否定的な意見が出ています。

AP通信は10日(日本時間11日)、「組織委員会の事務総長、2021年の五輪開催さえも疑わしいと示唆」の見出しで報道。9日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の武藤事務総長は、新型コロナウイルス流行の影響で東京五輪のさらなる延期や中止を想定する必要性について問われ、「いつ終息するのかは誰も明確に言えない」と語った。

中日スポーツ 「組織委事務総長が2021年の五輪開催は保証できないと語る」米メディアが報道 2020年4月11日

この頃には、有効な治療薬や、ワクチンの開発に目途が立つ可能性もあるので、感染症そのものへの脅威は2021年で落ち着くと、一定の期待が持てます。

2021年一杯まで経済不況が続き、事態がようやく収束します。
非常に多くの倒産数・破産者数と経済的死者数(自殺者数)が発生し、感染症から来る間接的な影響がまき散らせます。
数字を見ず感情的に怖がる人たちと、統計的・科学的に物事を見て感染症そのものよりも経済的ダメージの方が大きいとわかっている人たちの間で、埋めがたい溝も生まれるでしょう。

これがノーマルシナリオです。
可能性として高いと考えているため、少なくともノーマルシナリオ前提で企業の経営者・経営企画担当者は事業計画を見ておいた方が良いです。
直近でIPOを考えているベンチャー企業も2021年はきついでしょう。
2022年にまで伸ばす前提で考えた方が良いです。

ワーストシナリオ

上述した通り、1918年のスペイン風邪のように、感染拡大が3回発生します。
新型コロナウイルスの感染影響が3年ほど続くのです。
日本においては1918年の第1波よりも、1919年1920年の第2波第3波の方が死者数が大きいという結果になりました。

2020年の外出自粛に辟易とした人々が油断し、2021年の再拡大時には普段通りの生活を続けます。
開発が追い付いたという治療薬やワクチンが、想定よりも効果を発揮しません。
感染症による直接的な死者が2020年よりも多く発生します。

世界的にも同様の動きが発生し、各国で社会不安が継続します。
経済も落ち込み、各国が景気刺激策を乱発します。
具体的には貨幣乱造が考えられ、これによりインフレが世界的に発生します。
アメリカをはじめ、欧米の経済が大幅に落ち込むでしょう。
1929年の世界恐慌を上回る、第二次世界恐慌への突入です。
(景気刺激は必要ですが、やりすぎるとかえって経済にダメージを与えます。)

また、北朝鮮の情勢も不安です。
最悪、北朝鮮の核がロシアないしは中国経由で中東やアフリカ地域に流れることも予想されます。
そうすると起きるのが、欧州・中東あたりでのテロリズムの頻発や、紛争・戦争の発生です。
世界的には経済が落ち込むものの、軍事需要の発生により中国が経済的に台頭します。
アメリカに代わり、中国が世界の経済リーダーになっていく可能性があります。
このワーストシナリオの中でも最悪ルートを辿った場合、第三次世界大戦が勃発する可能性も否定できません。

なお、常々不安視されていた通り、日本ではハイパーインフレが発生します。
日本の経済圏はズタボロになり、倒産企業・破産者の爆発的増加と、感染症による直接死者数を大幅に上回る経済的死者数(自殺者数)が出てしまうでしょう。

これがワーストシナリオです。

(追記)金正恩氏の動向が不透明でしたが、その姿を各種報道の通り見せたようです。
何が真実で、何が誤りなのか、得られる情報からは判断がつかないですが、報道が真実ならば、各流出のリスクは下がったと見て良いでしょう。

ワーストを想定して準備をしよう

流石にワーストシナリオに突入する、ということは起きないものと信じたいです。
しかし、経営者は楽観的に見ていてはいけません。
ワーストシナリオが起きる前提で、できる対策は打っておいた方が良いでしょう。

  • 早々にリストラ策を実行し、事業体をスリムにする
  • 業務のIT化を進め、外出自粛が長期化、もしくは再度発生した場合でも業務継続ができるようにする
  • 固定費を抑制し、売上減少への対応力を高める
  • 金利スワップなどリスクヘッジに対応、金利の大幅増加に備える
  • 既存プレイヤーが凋落し、新規ビジネスのチャンスが増える、時代の変化に注視する

感染自体が落ち着いたとしても、100%間違いなく、経済影響は長引きます。
長期戦前提で、この先1年2年を乗り切りましょう。

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