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頭しか使っていなかったとしても身体は疲れているという話

デスクワーク中心の仕事をしていて、頭しか使っていなかったとしても、身体がだるい、疲れた、という感覚を持った経験がある人は珍しくないでしょう。
その感覚、経験は実際に正しく、どうやら、頭の疲労は身体にも疲労を与えるようです。
英国ケント大学で行われた研究は、頭が疲れた被験者は身体的持久力が低下していることを示しました。

頭の疲労と身体の疲労の研究

英国ケント大学において、頭の疲労と身体の疲労の関係を調べる研究が行われました。

https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/japplphysiol.91324.2008

16人の被験者を対象に、90分間の認知タスクを行うグループ、もしくは90分間のドキュメンタリー番組の視聴を行うグループ(対照群)にわけて、その後の持久力を測定する調査が行われました。
持久力の測定には自転車が用いられました。

その結果、認知タスクを行い精神的に疲労したグループ(頭の疲労)において、対照群に比較して持久力が約85%にまで低下していたことが示されました。

この際、心肺機能や筋力などには影響がないことが示されました。
つまり、頭が疲労すると、なぜか身体も疲労していたということです。

アンケートにおいて、認知タスクを行ったグループは、持久力測定において、運動中の“努力感”が有意に高かったことも示されています。

このことは、頭の疲労が「頑張ろう」とする気力に影響を及ぼし、身体的な疲労感を覚える、ということを意味します。

疲れた帰ってきた日に、何もする気力がわかないのは必然、ということです。

早め早めの休憩を

別の研究では、たまりにたまった疲労は簡単に抜けないことが示されています。

研究では、95人の労働者を対象に、5日間の勤務中にとられた休憩について、その特徴が調べられました。

その結果、シフトの早い時間帯に休憩をとった場合、エネルギー回復の効率が高く、その後の仕事のパフォーマンスが高くなることが示されました。

また、効率の良い休憩により得られた仕事に向かうエネルギーは、健康面の改善、精神的疲労の軽減、仕事満足度の向上、シチズンシップの向上(組織のメンバーを支援しようという行動)等のプラスの影響を及ぼすことがわかりました。

なお、休憩の時間と頻度について、頻繁な短い休憩 > 頻繁でない長い休憩 > 頻繁でない短い休憩 の順でエネルギー回復の効率が変わることも示されました。

可能な限り、疲れた、と感じる前に早めに休憩を、そして休憩の頻度をあげることが重要です。

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仕事中、適度にネットサーフィンをする方が生産性を高く保てる、という話

仕事中にネットサーフィンをするのは“サボり”であるとみられるのが一般的です。
しかしながら、人の集中力には限界があり、業務時間中全てを集中して仕事をするのは不可能です。
ある研究によると、適度にネットサーフィンをする方が生産性が高い、という結果が示されました。

適度にサボることが生産性に与える影響を調べる実験

次の記事で、適度にサボることが生産性に与える影響について調べた実験が紹介されています。

https://www.wsj.com/articles/SB10001424053111904070604576518261775512294

研究では96人の学生を被験者に、休憩グループ、ネットサーフィングループ、対照グループに分けて簡単な課題を行わせる実験を行いました。

課題は20分間、サンプルテキストの中にある「e」の文字をできるだけ多く強調表示にするというものです。

20分の課題後、10分間、別のアクションが差し込まれます。
休憩グループはネットサーフィン以外の好きなことを、ネットサーフィングループはネットサーフィンを、対照グループは別の簡単な課題を行ってもらい時間を過ごしてもらいました。

その後、再度10分間、文字を強調表示するタスクを再開してもらいます。

ネットサーフィンを行うと生産性が高くなる

上述の実験の結果、他の2つのグループより、ネットサーフィングループの方が、タスクの生産性が有意に高く、精神的な疲労感や退屈感も少ない、ということが示されました。

つまり、ネットサーフィンは、何かしら個人的な別のことをして休憩時間を過ごしたり、全く休まずに働き続けるより、高いリフレッシュ効果がある、ということです。

適度にサボることを推奨した方が良い

別の様々な研究において、これまで行っていたこととは別の何かを行うと生産性が回復する、という結果が支持されています。

上述の研究は、これらの事実を支持するものと言えるでしょう。

とりあえず言えることは、仕事中にネットサーフィンを行うことは必ずしも悪いことではない、ということです。

むしろ本業に差し支えなければ、推奨する位の方がパフォーマンスを高く保つ可能性があります。

日本人は真面目が過ぎるきらいがありますので、適度にサボる、ということを覚えると良いでしょう。

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休憩の効果、効果的な休憩のとり方まとめ

「休憩の効果、効果的な休憩のとり方」のまとめになります。

休憩の効果、効果的な休憩のとり方まとめ

番外編

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学習は量も大事だけれども質も大事というシンプルな話

著名なマルコム・グラッドウェル氏が提唱した1万時間の法則については、知っている人も多いでしょう。
また、この1万時間の法則が実は間違いである、という話も同様に知られるようになってきました。
今回は、学習は量も大事だけれども質も大事というシンプルな話についてです。

1万時間の法則の間違い

1万時間の法則とは「どんな分野でも、だいたい一万時間程度継続してそれに取り組んだ人は、その分野のエキスパートになるという経験則」のことです。

科学的研究をベースに提唱されたために、あたかも科学的事実かのように広まりましたが、近年は誤りである、という研究が明確に出ています。

https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0956797614535810

プリンストン大学が行った88の研究のメタ分析では、様々な分野でのパフォーマンスの差に練習が占める割合はわずか12%であることを示しています。

そして、その差は分野により大きく異なり、例えば次のような結果が示されています。

  • ゲーム:26%
  • 音楽:21%
  • スポーツ:18%
  • 教育分野:4%
  • 多くの様々な職業:わずか1%

1万時間の法則が適用されるのは、その領域が変化をしない安定した構造になっており、練習の要素が大きいウェイトを占めている分野に限られる、としています。
(例えばクラシック音楽やチェスなどの、ルールの変化が起きず、クローズな世界。)

ここでポイントなのは、練習の量が意味がない、という話ではなく、他にも重要な要素があるはずだ、という点です。

では、その重要な要素は何か?というのが練習の質です。

質の高い練習(学習)のための知見

当サイトでは、質の高い練習(学習)のための知見について、いくつかの記事を掲載しています。

是非、これらも参考にしてください。

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【生産性向上】休憩中は大体のことは何でもしていて良い

休憩中、ゲームをしている人、動画を見ている人、本を読んでいる人。
様々に自由な時間を過ごしているでしょうが、そのような別の何かを行っていると、果たしてそれは休憩になるのでしょうか?答えは「休憩になる」です。
今回は、様々な休憩のとり方が生産性に与える影響について見ていきます。

様々な休憩がタスク遂行上の生産性に与える影響

複数大学の研究チームが、鉄道のオペレーターを模して、様々な休憩がタスク遂行上の生産性に与える影響について実験を行いました。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/acp.3334

実験は、87名の大学生に対して、休憩を取らせない、ゲームをする、何もせず座る、音楽を聴く、動画を見る、というような様々な休憩のとり方でグループ分けをし、鉄道を制御するオペレーターを模したシミュレーションタスクを行わせました。
20分間のタスク遂行の間で、休憩が5分間、挟まれました。

この結果、どのような休憩のとり方であれ、休憩を取らないよりも高い生産性を出すことが示されました。

ゲームをする、というような一見休憩にならないようなことでも、タスクから離れることにより、パフォーマンスを高く保つことができるということです(パフォーマンスの低下を抑制できる、という方が正しいか)。

「異なる刺激」に休憩の効果があるようだ

別の研究では、「異なるタスクを行うだけでも休憩になる」「40秒間、緑を眺めるだけでも休憩になる」ということが示されています。

これらの知見を踏まえると、「異なる刺激」を脳に与えることが、休憩の効果を示す、と言えます。

忙しい現代人ですが、タスクを切り替えていく、異なる種類の仕事を挟んでいく、というようなアクションを取ることで、高い生産性を維持できると考えられます。

なるべく早く、しっかりと休むことも忘れない様に

なお、なるべく早く、しっかりと休むことも忘れない様にすることが重要と考えられます。

こちらの記事では、休憩はなるべく早く、できれば午前中に取る方が望ましい、ということを書いています。
理由としては、蓄積された疲労は、ちょっとやそっとの休憩では簡単に癒せないから、です。

1時間弱の仕事 ⇒ 短い時間で完了できる別のタスク ⇒ 1時間弱の仕事 ⇒ 午前休憩 ⇒ 1時間弱の仕事 ⇒ 短い時間で完了できる別のタスク ⇒ 午後休憩 ⇒ 残りの仕事。

このような形で1日のスケジュールを組めると良いのではないでしょうか。

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【生産性向上】異なるタスクを行うだけでも休憩になる

40秒間、緑を眺めるだけでも休憩効果がある、という研究があります。
朗報ではあるのですが、ぼーっとしている姿そのものがNGな職場もあるでしょう。
そういった会社での短い休憩に関して、別のアプローチがあります。
それは異なるタスクを行うこと、です。

異なるタスクを行うと集中力が回復する

こちらの記事で、40秒間、緑を眺めすだけでも一定の休憩効果がある、という内容のことを書きました。

推測の中で、異なるタスクを行うだけでも一定の休憩効果があるのでは?とも書きましたが、この点に関する研究もなされています。

イリノイ大学の研究チームは、短時間の極短い“精神的な”休憩が集中力の低下を防ぐ(回復を行う)効果があることを示しています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21211793/

人の集中力は、ある一つのフォーカスすべき課題に対して、長時間にわたってその集中力を維持できないという認知システムになっています。

研究では、タスク(フォーカスすべき課題)の切り替えを行うことにより、集中力の低下を防げるのではないか?という仮説の元、事件が行われました。
タスクの内容は、数字を記憶してもらい、そのまま視覚的に集中力を要する課題を遂行する、というものです。

実験では、課題の遂行が長時間に渡ると集中力が低下することを示していますが、同時に、課題の合間に数字を思い出すように指示を与えると(フォーカスすべき課題の切り替えを行うと)、集中力の低下を防げることがわかったのです。

つまり、異なるタスクを行うと集中力が回復する、一定の休憩効果がある、ということです。

(刺激的で楽しい仕事でも、長く続けているとだらけるでしょ?という話のようです。)

スケジュール設定においてこれは重要ではないか?

プログラミング・エンジニアや、クリエイティブ系職種の方が「作業日」というような形で、終日、もしくはまとまった時間、作業に集中する日を設ける場合をよく見かけますが、もしかしたらこれは良いことではない可能性があります。

(諸説ありますが)人間の集中力は45分程度だ、という話をよく聞きます。

この前提に立つと、45分程度の作業の後、別のタスクを挟んでいく方が集中力維持の観点では望ましいかもしれません。

集中力に関するいくつかの知見も踏まえると、定期的に短い休憩を挟む、定期的に異なるタスクも挟む、疲れ切らない内に休憩を入れる。
そういったことが重要なようです。

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【生産性向上】40秒、緑を眺めるだけでも休憩になる

忙しい現代人。まとまった休憩をとる時間がない方は、多いのではないでしょうか。
そんな方に朗報があります。
(本当に朗報か否かは疑問がありますが)どうやら、ちょっとした休憩、それこそ40秒の休憩でも緑を眺めるとリフレッシュ効果があるようです。

マイクロブレーク(短い時間)の役割

こちらの記事で、休憩は可能な限り早い時間帯、つまりは午前中に取るのが望ましい、という話をしました。
理由は簡単で、こびりついた汚れが簡単にとれないように、一定ラインを超えた疲労は、1時間程度の休憩ではとれないので、疲労が蓄積されていない午前中に休憩をとった方が、生産性維持のためには良い、というものです。

一方で、忙しい現代人が午前中に果たして休憩がとれるのか?と言うと、現実問題として難しい方が多いのではないでしょうか。
それのみならず、そもそもまとまった休憩をとることすら難しい方も多いのではないでしょうか。

メルボルン大学の研究チームは、マイクロブレーク(短い時間)の役割について研究を行いました。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0272494415000328

研究の内容は、被験者に対してグループ分けをし、短い休憩をとってもらい、生産性がどれだけ維持されるのか?という点について調査が行われました。

グループ分けでは、大学生150名を対象に、2種類の風景を見せる形で行われました。
1つがコンクリートの街の風景で、もう1つが緑が多い街の風景です。

被験者は、生産性のベースラインを把握するためにタスクを遂行後、40秒間、風景を眺め、続いてタスクを再開しました。

その結果、緑が多い街の風景を眺めるグループは、コンクリートの街の風景を眺めたグループより、有意にタスクのエラーが少ないことが示されました。

ちょっとした休憩(マイクロブレーク)でも、きちんと条件を整えれば生産性の維持(低下の抑制)が可能、ということです。

ちょっと窓辺に立つだけで良い

こちらの記事では、短い休憩を頻繁に挟むと、学習の効率が上がる、という話をしました。
理由は、脳に蓄積された情報を処理する余裕を確保できるためであろうとされています。

ここから、もしかしたら業務遂行上の生産性という観点でもマイクロブレーク(短い休憩)は効果があるのではないか、と考えていましたが、どうやらその考えは正しいようです。

(もしかしたら人の目は気になるかもしれませんが)まとまった休憩をとるのが難しい方は、定期的に窓辺に立ち、1分間だけでも良いので外の風景を眺めるだけでも良いでしょう(外の風景が明媚であれば、ですが)。

管理監督者も、自分たちのチームの生産性向上を望むのであれば、ちょっとした休憩を推奨するのは良いと言えます。

そして、推測なのですが、「緑の風景」というのは、「非日常」のことを指しているのではないか?とも考えられます。
普段見ない画像、例えば芸術作品や知らない町の画像でも、ぼーっと眺めるだけでも休憩の効果はあるのではないでしょうか。

忙しい方だからこそ、色々な休憩のとり方について、自分自身を被験者として実験してみるのは良いかもしれません。

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休憩はどのタイミングで取るのが適切なのか?

ごく平均的な労働者は12時を過ぎたあたりで1時間弱の休憩を取るのが一般的でしょう。
当たり前すぎて、このことに違和感を持たない方も多いのではないでしょうか。
ある研究によると、休憩はなるべく早いタイミングでとった方が効率が良いことが示されています。

よりよい休憩のタイミングは?

ベイラー大学の研究チームは、どのタイミングで休憩をとるのがより高い効率で仕事に向かうエネルギーを回復させるのか?について調査を行いました。

https://content.apa.org/record/2015-36861-001

研究では、95人の労働者を対象に、5日間の勤務中にとられた休憩について、その特徴が調べられました。

その結果、シフトの早い時間帯に休憩をとった場合、エネルギー回復の効率が高く、その後の仕事のパフォーマンスが高くなることが示されました。

また、効率の良い休憩により得られた仕事に向かうエネルギーは、健康面の改善、精神的疲労の軽減、仕事満足度の向上、シチズンシップの向上(組織のメンバーを支援しようという行動)等のプラスの影響を及ぼすことがわかりました。

なお、休憩の時間と頻度について、頻繁な短い休憩 > 頻繁でない長い休憩 > 頻繁でない短い休憩 の順でエネルギー回復の効率が変わることも示されました。

固定概念を打破すべき

冒頭に書いた通り、ごく平均的な労働者は12時を過ぎたあたりで1時間弱の休憩を取るのが一般的でしょう。
これは、繰り返しますが、あまりにも当たり前すぎて、疑問を持っていない方も多いのではないでしょうか。
場合によっては、混雑するお昼の時間帯を割けて、午後になってから休憩をとる方もいらっしゃるでしょう。

上述の研究は、可能な限り早い時間帯(午前)に休憩をとった方がエネルギー回復の効率が高いことが示されています。

研究者は、午後に入った段階ですでに労働者の脳は疲労しきっており、ちょっとやそっとの休憩では十分なエネルギー回復が図れず、元の生産性を取り戻せないのでは、と推測しています。

より高い生産性を望むならば、可能な限り早い時間帯の休憩を取り入れてみてはいかがでしょうか。

頻繁な休憩もおすすめ

なお、こちらの記事でも提示したのですが、短い休憩を頻繁に挟むことは学習効率を高めることもわかっています。
(この事例では、本当に頻度の高い、「頻繁な短い休憩」なのですが。)

上述の研究でも、頻繁な短い休憩は望ましいことが示唆されています。

これらのことを踏まえると、脳は使えば使うだけ疲労(もしくは情報)が蓄積していき、疲労回復のために要する休憩が長くなるのではないでしょうか(もしくは、脳に蓄積された情報を処理する時間が長くなる)。

時間帯をわけて短い休憩を頻繁に取ることは、もしかしたらより良いエネルギー回復効率をもたらすかもしれません。

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