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株主総会の「委任状」回収をクラウド型電子契約でやろう

VCとかが入ったベンチャー企業では、株主総会のに関して委任状を集めるのが一般的です。
この委任状、紙での回収が通常なのですが、非常に面倒。
そこでクラウド型電子契約サービスを活用すると便利になります。

「委任状」のクラウド型電子契約サービスによる回収

結論、株主総会招集通知と委任状をセットにして、クラウド型電子契約サービスで株主(のカウンターパートナー)に送付し、それに対して「承認」をしてもらえればOKです。

登記には、委任状は不要ですし、委任している事が、仮に揉めた場合の証拠として残せれば十分なので、クラウド型電子契約サービスが非常にマッチしているのです。

なお、委任状は紙でも電子でも、両方を選べるようにしておいて、全ての議案に対して賛成の場合はクラウド型電子契約サービスを、一部賛成一部反対のような場合には紙で、と使い分ければ良いです。

その他諸々

代理権限の確認についてはこちらの記事を参照してください。

委任状については、こちらの記事でかなり詳しく解説しているので、併せて参照してください。

他には、参考程度ですが、種類株主総会の省略手続簡素化方法についてはこちらを。

仮に書面決議(みなし決議)でやりたい場合にはこちらを参照してください。

書面決議は、同意書面の全回収が必要で、複数株主がいる場合には現実的ではありませんでした。
クラウド型電子契約サービスですと、書面の全回収が容易なので、書面決議のハードルも大きく下がったと言えます。

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株主総会運営、モンスター株主クレーマー株主対応

いわゆる総会屋という存在がいなくなって久しいですが、ここ十数年は個人の株主を中心に質の低い質問であったり、総会運営を妨害するようなクレームをつける方が大勢います。
株主総会当日、特に後者のクレーマー株主(モンスター株主)が来場されることが想定される場合の対応について考えていきます。

クレーマーは株主では無い

まず、最初に明言します。

クレーマーは、例え株式を保有していたとしても、もう株主ではありません。

粛々と、ご静粛願うか、ご退場いただくか、毅然とした対応していきましょう。
クレーマー株主(モンスター株主)は、その他大多数のまともな個人の株主にとってみれば迷惑な存在ですし、その言い分を丁寧に聞くことは、会社側の貴重なリソースを消耗させるだけです。

場合によっては、「そんなに当社の対応がご不満でしたら、株式を手放していただいて結構です。」とはっきりと伝えましょう。
そして、「当社は、〇〇様には十分に誠実な対応をしてまいりました。当社は、これ以上、〇〇様には対応をいたしません。」と対応しましょう。

ネット上の掲示板やSNS等で書かれることを心配するIR担当者、会社もいらっしゃいますが、心配いりません。
一個人の書き込みで株価が動くことはまずありません。
また、日々、誠実に適法に個人の株主の方に向き合っているのならば、そのような言い分は誰も信じません。

会社として、クレーマー株主(モンスター株主)から従業員を守るためにも、他の株主の公平性を守るためにも、毅然とした対応方針をとりましょう。

ただし、会社側の対応が公正であるかは自問しよう

ただし、上記の記載は、会社側が株主に対して誠実で適法であることが前提です。

上場会社によっては、個人の株主を完全に見下し、まともに対応しない企業も存在します。
IRの問い合わせでぞんざいな対応をしたり、株主優待の送付間違えに対して調べもせずにあしらったりするような企業の存在は、ちらほら耳にします。
(株主優待の送付先を株主名簿の住所一覧とせずに、別に管理していることは決して珍しくなく、事務ミスでアップデートが漏れることは、まあまあ聞く。)

もちろん、靴屋なのに、ピザ注文を代理で受け付けるような、過剰な対応は不要です。
(IRではなくカスタマーサポートであり、また海外事例ですが、実話です。)

確かに、個人の株主からの電話を受け付けてしまうと、十数分、場合によっては数時間、拘束されてしまうような話も、誠に残念ながら非常に多くあります。
株主総会における、個人株主の質問内容も、どう考えたって会社経営全体視点では無い、非常にミクロな現場判断レベルの内容が多いのも事実です。
げんなりしてしまうのは理解できますが、それで株主をぞんざいに扱ってよい理由にはなりません。
(上記のようなことがあるため、上場会社によっては、IRは閑職的扱いで吹き溜まりのような部署扱いされている所もあります。)

誠実にかつ適法に、個人個人への対応ではなく、マスでの対応、を心がけましょう。

株主総会での対応

それでは、マインド面の前置きが長くなりましたが本題です。

会場セッティングや社員株主による席確保について

よくある対応として、株主総会会場の前方、議長席に近い席を、社員株主で陣取り、確保してしまおうという対応があります。

まずこれは、違法であると認識しなければなりません。
というのも、社員株主であろうと、一般の株主であろうと、同一の扱いをしなければならないからです。
実際に、過去の判例を見ると、仮に株主総会が荒れることが想定されるような状況であったとしても、社員株主による席確保は認められない、という判断が出ています。

精々、警備員的役割も担った社員株主を数名、議長席に近いエリアに分散して着席するようにする対応としましょう。

また、もう一つよくある対応としてあげられるのが、議長席エリアに柵やロープを設置するような会場セッティングを行う対応です。
(議長席に詰め寄る個人株主もいるので、その対策として実施する会社が実際にある。)

正直、これも微妙です。
まず、法的に問題がある対応では無いではありません。
ただ、実際にそのよう総会を見るとわかりますが、非常に断絶感があります。
会社として、株主は敵側と捉えています、というメッセージだと感じてしまうので、かえって総会を荒れさせてしまうかもしれません。

素直に、檀上のある会場を選び、自然と接触が難しいようにするのが良いでしょう。

警備員を利用する、場合によっては警察に同席願う

警備員を複数名配置するのは有用です。
制服を着用した警備員がいると、一般の株主にとって、圧迫感を感じる方も一部いらっしゃるでしょうが、大多数は気にしない、また一部は安心する、というような心理感になります。
クレーマー株主(モンスター株主)にとってのみ、牽制になりますので、活用を検討するのが吉です。

また、議長による指示でご退場願う場合、トラブル対応に慣れていない社員が対応するよりも、トラブルに慣れている警備員に依頼する方が、スムーズにことが運びます。

場合によっては警察に同席願うのもありです。
実際私も、特殊株主で有名なKH氏のような方との対応が予想される状況では、警察の方に同席をお願いしました。

議長による采配

最終的には議長の采配が重要になります。
株主総会の議長は、会社法の定めにより、議事進行に関する権利、秩序を保つ権限があります。

そのため、不規則発言を行うなど、株主総会の秩序を乱す株主に対しては、静粛にすることを命じると共に、従わない場合は退場させることが可能です。

動議、不規則発言への対応シナリオについては、こちらの記事も参照ください。

なお、実際に退場等を命じる場合、やり方を間違えると株主の権利を侵害する可能性もありますので、株主総会運営に詳しい弁護士にも同席を願い、事務局席で即時にアドバイスをいただけるような体制を組みましょう。

最後に

個人の株主は、会社を応援してくれる、非常にありがたい存在です。

一方、誠に残念ながら、道理が通じないクレーマー株主(モンスター株主)が存在するのも事実です。

株主総会は、会社として、議長として、そのような残念な方に、いかに本気で相手をせずに会社法が求める取締役の説明義務を果たすのかという、社長としての器を見極める場と言えるかもしれません。

毅然と、かつ確実に対応をしていきましょう。


新型コロナウイルス対応版の株主総会議事進行シナリオについては、こちらの記事も参照ください。

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株主総会当日の議事進行シナリオ(新型コロナウイルス対応版)

本サイトでは、一般的な株主総会議事進行シナリオや動議、不規則発言が発生した場合のイレギュラー対応について示してきました。
今回は、新型コロナウイルスへの対応を含めた、台本案について示していきます。
概ねは一般的な対応で問題は無いのですが、一部、丁寧に説明が必要な個所があります。

議長就任宣言時の台本案

下記、青網掛け部分が一般的なシナリオとは異なる部分。

議長「株主の皆様おはようございます。
私は、代表取締役の〇〇〇〇でございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
本日はたいへんお忙しいなか(またお足元の悪いなか)、弊社の株主総会にご出席いただきまして誠に有難うございます。

さて、当社では、新型コロナウイルス感染症への対策といたしまして、当社役員およびスタッフはマスクを着用させていただいております。
なお、受付にてマスクを配布しておりますので、株主様もマスクの着用をお願いします。
また、会場入口付近など、複数箇所にアルコール消毒液を設置しておりますので、ご利用ください。
なお、株主様からご質問を頂戴する際も、ご発言が終了するごとに、係の者がマイクの除菌を行いますので、ご了承ください。
また、株主様が一定の間隔をもってご着席いただくよう、株主席の間隔を空けております。

さらに、例年は〇時間ほど、議事進行にお時間をいただいておりますが、感染のリスクを最小限に抑えるため、本日は質問のお時間を〇〇分までとさせていただき、株主総会全体の進行として〇時間を予定しております。
当社IRサイト上では、質問を随時受け付けており、また回答を公開しておりますので、本総会にてご質問をお受けすることができなかった株主様につきましては、IRサイトの質問受付もご活用いただきたく存じます。

以上のような対応をとらせていただいておりますが、円滑な議事進行を行いたいと思いますので、なにとぞご理解、ご協力くださいますようお願い申し上げます。

それでは、定刻となりましたので、私、〇〇より進行をさせていただきます。
〇月末現在、〇,〇〇〇名の株主の皆様からご支持いただいておりますことを、この場を借りまして御礼申し上げます。
定款第〇〇条の定めによりまして、私が議長をつとめさせていただきますのでよろしくお願い申し上げます。」

登壇役員が説明する際、マスクを外す場合の台本案

下記、説明を冒頭で付け加える。

登壇役員「それでは、ただいまから、…についてご説明申し上げますが、株主様のお席と役員席の間隔は十分配慮させていただいておりますので、株主様に聞き取りやすいご説明を行うため、いったんマスクを外させていただきます。」

質問などの受付時の台本案(受け付けるたびにマイクを除菌する場合)

下記、青網掛け部分が一般的なシナリオとは異なる部分。

議長「それではご質問をお受けいたします。

ご質問につきましては、報告事項、決議事項に関する内容でお願い致します。
ご質問いただく際には、まず挙手をしていただき、私から指名させていただきましたら、お近くのマイクスタンドまでお進みいただき、株主番号(入場票などがある場合は、その番号でも可)、お名前をお伝えいただき、要点を簡潔にまとめてお願いいたします。

なおご質問は、冒頭でご説明させていただきましたとおり、〇〇分までとさせていただきます。
お一人でも多くの株主様よりご質問をお受けするため、ご質問はお一人様お一つでお願いいたします。

ご発言が終了しましたら、お席にお戻りくださいますようお願い申し上げます。

また、株主様のご発言が終了するごとに係の者がマイクの除菌をさせていただきますこと、予めご了承ください。」

延会の動議が出た場合の台本案

株主「(感染拡大防止のため、延会についての動議を出す旨の発言)」

議長「ただいまのご発言は、ご意見でしょうか、それとも動議としてご提出でしょうか。」

株主「(動議である旨の明言)」

議長「ただ今、株主様より感染拡大の防止を理由として、延会を求める旨の動議が提出されました。

当社は、お手元にございます招集通知に記載がありますとおり、事前の議決権行使のお願いや、本総会はリアルタイムライブ配信を行うなど、株主様の株主総会参加機会を最大限にもうけております。
また、私が議長就任宣言時にご説明させていただきましたとおり、当社はマスクの着用や、消毒液の使用、座席の配置など、最大限、感染拡大防止のための措置をとっております。
そのため、感染拡大のリスクは最小限に抑えられているものと考えており、このまま議事進行を継続したいと考えております。

このまま議事進行を継続することにご賛成の株主様は、拍手をお願いいたします。」

株主様(拍手)

議長「ありがとうございます。」

(役員着席のままでお辞儀)

議長「過半数のご賛成を頂きましたので、延会を求める旨の動議は否決されたものと認め、このまま議事進行を継続させていただきます。」

株主様(拍手)


株主総会議事進行シナリオ全体についてはこちらの記事も参照ください。


動議や不規則発言が発生した場合については、こちらの記事も参照ください。

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株主総会議事進行シナリオ(一括上程方式)

現在の株主総会は、8割程が一括上程方式で行われています。
時間管理のしやすさなどがありますので、今後、本格的に株主総会を運営していこうという会社は一括上程方式を選択すれば良いでしょう。
ここでは、一括上程方式の株主総会議事進行シナリオについて示していきます。


動議や不規則発言が発生した場合の、イレギュラー対応についてはこちらの記事も参照ください。

議長就任宣言

議長「株主の皆様おはようございます。
私は、代表取締役の〇〇〇〇でございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
本日はたいへんお忙しいなか(またお足元の悪いなか)、弊社の株主総会にご出席いただきまして誠に有難うございます。

定刻となりましたので、私、〇〇より進行をさせていただきます。
〇月末現在、〇,〇〇〇名の株主の皆様からご支持いただいておりますことを、この場を借りまして御礼申し上げます。
定款第〇〇条の定めによりまして、私が議長をつとめさせていただきますのでよろしくお願い申し上げます。」

欠席役員報告(欠席が無い場合は省略)

議長「なお、本日の株主総会には取締役の○○○○氏は、病気の為止むを得ず欠席致しておりますが、なにとぞご了承たまわりますようお願い申し上げます。」

開会宣言

議長「それでは只今より株式会社〇〇〇〇第〇〇期定時株主総会を開会させていただきます。」

発言時期の指定

議長「本株主総会の議事運営につきましては、議長である私の指示に従っていただきますよう、ご出席の皆さまのご理解とご協力をたまわりたく、お願い申し上げます。
それでは、本日の流れについてご説明いたします。

はじめに監査役から監査報告をさせていただきます。

そして報告事項であります第〇〇期事業報告、(連結計算書類ならびに)計算書類の内容について、スライド資料(もしくは説明動画)を使いましてご説明申し上げます。
その後、今後のグループの方向性についても理解いただきたく、各事業取り組み事項として併せてご説明申し上げます。

次に決議事項を上程(じょうてい)させていただきましてその後に、ご質問を皆様から頂戴したいと思います。

最後に、決議事項のご承認をいただき、株主総会を閉会とさせていただきたいと存じます。

議事の秩序を保つため、株主の皆様からの動議を含めた一切のご発言につきましては、監査役の監査報告、報告事項および決議事項の議案の内容説明が終わりましてから、お受けいたしたいと存じますので、よろしくご了承たまわりたいと存じます。

それでは議事を進行させていただきます。」

株主の出席状況の報告

議長「本日の株主総会の目的である事項は、お手もとの招集ご通知〇ページに、記載のとおりでございます。

それでは最初に、本総会の議決権につきましてご報告申し上げます。

本総会において議決権を行使することができる株主様は〇,〇〇〇名、
総議決権の数は、〇〇,〇〇〇個でございます。

本日ご出席の株主様は、事前に議決権行使書をご提出の株主様を含めまして、〇,〇〇〇名、
その議決権の個数は、〇〇,〇〇〇個でございます。

従いまして、本株主総会は、定足数の定めのある議案の決議に必要な定足数を満たしておりますことを、ご報告申し上げます。」

出席状況の説明は不要だが、質問されれば答えなければならない。また、定足数は、採決の時点で必要。そのため、この時点で報告する必要はないが、通常は既に決議に必要な分を満たしているはずなので、ここで両方併せて説明してしまう。

監査役の監査報告

議長「それでは、報告及び議案の審議に先立ちまして、監査役より当社の監査報告をお願いします。
(引き続き、連結計算書類に係る会計監査人および監査役会の監査結果についても監査役から報告をお願いします。)

それでは〇〇監査役お願いします。」

監査役「私は、常勤監査役の〇〇でございます。

私ども監査役は、それぞれ監査を行い、監査役会において監査の方法および結果を報告し、協議いたしましたので、その結果を私からご報告申し上げます。

・・・略・・・

以上で監査報告を終わります。」

(監査役一同着席のまま礼)

計算書類・連結計算書類の説明

議長「報告ありがとうございました。

それではまず、報告事項であります第〇〇期事業報告・(連結計算書類ならびに)計算書類の内容についてご報告申し上げます。
おてもとの召集ご通知〇ページから〇〇ページに記載の内容でございますが、その概略につきまして、スライド資料(もしくは説明動画)を使いましてご報告申し上げます。

・・・略・・・

続きまして、〇〇〇〇年度の各事業取り組み内容についてご報告申し上げます。

・・・略・・・

以上をもちまして、第〇〇期事業報告、(連結計算書類及び)計算書類につきましてご報告を終わらせていただきます。」

全決議事項の説明

議長「それでは、引き続き決議事項のご説明に移らせていただきます。
お手もとの招集ご通知〇〇ページから〇〇ページに記載の決議事項の議案の内容をご説明申し上げます。

始めに、第〇号議案「剰余金処分の件」を上程いたします。
議案の内容につきましてはお手もとの招集ご通知〇〇ページに記載のとおりであります。

・・・略・・・を財源として1株あたり〇〇円の配当を実施したいと存じます。

次に第2号議案「取締役〇名選任の件」を上程いたします。

議案の内容につきましてはお手もとの招集ご通知〇〇ページから〇〇ページに記載のとおりであります。
なお本総会で選任されることを前提として、いずれの候補者からも取締役に就任する旨、事前に承諾を得ております。

取締役候補者は私、〇〇〇〇、〇〇〇〇、〇〇〇〇、・・・略・・・
社外取締役の〇〇〇〇氏、〇〇〇〇氏、・・・略・・・の〇名でございます。

〇〇〇〇氏、・・・略・・・は、東京証券取引所の定めに基づく独立役員の要件を満たしており、独立役員として届け出る予定であります。

また、〇〇〇〇氏、・・・略・・・が取締役に就任された場合には、当社は〇氏との間で会社法第427条第1項の規定に基づき、同法第423条第1項の損害賠償責任を限定する契約を締結する予定であります。
当該契約に基づく損害賠償責任の限度額は、会社法第425条第1項に定める最低限度額とする予定であります。

次に第3号議案「監査役〇名選任の件」を上程いたします。
議案の内容につきましてはお手もとの招集ご通知〇〇ページに記載のとおりであります。

監査役候補者は〇〇〇〇氏、〇〇〇〇氏、・・・略・・・の〇名でございます。

本議案が原案どおり承認され、〇〇〇〇氏、〇〇〇〇氏、・・・略・・・が監査役に就任された場合には、当社は〇氏との間で会社法第427条第1項の規定に基づき、同法第423条第1項の損害賠償責任を限定する契約を締結する予定であります。
当該契約に基づく損害賠償責任の限度額は、会社法第425条第1項に定める最低限度額とする予定であります。

・・・以下、繰り返し・・・略・・・

以上で、各上程議案のご説明を終わらせていただきます。

それでは、報告事項および決議事項に関し、質問状を頂いておりますので、これにつき○○取締役および〇〇監査役からお答え致します。

それでは、○○取締役からどうぞ。」

回答担当役員「取締役の○○です。
議長の指名により〇〇〇〇〇〇〇〇に対するご質問につき、私よりご回答をさせて頂きます。

・・・略・・・

以上ご説明申し上げました。」

議長「引き続き、〇〇監査役からお答え致します。」

監査役「・・・略・・・」

議長「以上書面によるご質問に対する、ご説明を終わらせて頂きます。」

一括審議方法によることの了承

議長「それでは、この後の進行方法ですが、円滑な議事進行をはかるため、先ほどご説明いたしました報告事項、そして第〇号議案から第〇号議案まで〇つの決議事項に関するご質問・ご発言をお受けし、最後に、決議事項につき、採決を取らせていただきたいと存じます。

この方法につきまして、ご賛成の株主様は拍手をお願いします。」

株主「賛成」(拍手)

議長「ありがとうございます。」

(役員着席のままでお辞儀)

議長「過半数の賛成をいただきましたのでこの方式で執り行わせていただきたいと存じます。」

質疑応答

議長「それではご質問をお受けいたします。

ご質問につきましては、報告事項、決議事項に関する内容でお願い致します。
ご質問いただく際には、まず挙手をしていただき、私から指名させていただきましたら、株主番号(入場票などがある場合は、その番号でも可)、お名前をお伝えいただき、要点を簡潔にまとめてお願いいたします。
なおご質問はお一人様お一つでお願いいたします。

(複数会場を用意している場合)恐れ入りますが第〇会場におられます株主様でご質問のある方はお手数ですが第〇会場までご足労願います。
誘導係の方は、ご質問をされる株主様を第〇会場まで誘導願います。

質問審議を終了しました後は、ご発言はお受けできませんので、ご発言を希望される株主様はすべてこの機会にお申し出頂きますようお願い申し上げます。

それではご質問を承ります。

ご質問はございませんでしょうか。」

株主「質問・・・略・・・」

議長「(質問を受ける。あくまで報告事項、決議事項の内容に関すること)」

報告事項、決議事項に関する以外のご質問を受けた後

議長「ここでは報告事項、決議事項に関する内容のご質問をどうかよろしくお願いいたします。」

株主様を指名する場合

議長「(例)〇区画の赤色のシャツの株主様お願いします。」

※右手で手のひらを上に向けて指名する。
(指でさしたり、ペンで指すのはNG)

ご質問に議長が返答する場合

議長「ご質問ありがとうございます。
どうぞ、お席におかけください。

ただいまのご質問は○○○○○○○○○○○○○○○○(質問内容を復唱)と承りました。
それでは私よりご返答させていただきます。

○○につきましては・・・・となっております。

以上でございます。」

質問を復唱する、以上と終わりをはっきりとすること

ご質問に別の役員が返答する場合

議長「ご質問ありがとうございます。

ただいまのご質問は○○と承りました。

それではただいまの質問について担当取締役の○○よりご返答させていただきます。」

回答担当役員「取締役の○○でございます。
ご質問ありがとうございます。

さきほどご質問いただきました(質問内容を復唱する)につきましてご返答させていただきます。

○○につきましては・・・・となっております。

以上でございます。」

※必ず、名前を名乗る、質問を復唱する、以上と終わりをはっきりとすること

回答が終わったら次の質問に移る

議長「それでは次の発言を承ります。ご発言はございませんでしょうか。」

一定以上、回答を終えたら

(事務局からの合図をもって)

議長「たくさんのご質問ありがとうございます。
十分審議を尽くしたと思いますので、大変恐縮ではございますが、ご質問は後お二人までとさせていただきたいと思います。」

・・・略・・・

議長「さまざまなご発言、ご質問ありがとうございました。
それでは、十分に審議を尽くしたと考えますので、これをもって審議を打ち切り、決議事項の採決に移らせていただきたいと思いますが、賛成の株主さまは拍手をお願いいたします。」

株主「賛成」(拍手)

議長「ありがとうございます。」

(役員着席のままでお辞儀)

議長「賛成過半数と認めます。」

採決

議長「それでは、第〇号議案 剰余金処分の件の採決をいたします。

本案にご賛成の株主様は拍手をお願いいたします。」

株主「賛成」(拍手)

議長「ありがとうございます。」

(役員着席のままでお辞儀)

議長「事前に提出いただいております議決権行使書を含め、過半数の賛成により、本案は原案どおり承認可決されました。」(定款に記載されている評決数は要確認)

議長「次に、第〇号議案 取締役〇名選任の件の採決をいたします。

本案にご賛成の株主様は拍手をお願いいたします。」

株主「賛成」(拍手)

議長「ありがとうございます。」

(役員着席のままでお辞儀)

議長「事前に提出いただいております議決権行使書を含め、過半数の賛成により、本案は原案どおり承認可決されました。」
(定款に記載されている評決数は要確認)

議長「それではここで、選任されました取締役の紹介をさせていただきます。
まず私、〇〇でございます。よろしくお願いいたします。」

(取締役、起立)

取締役「〇〇です。宜しくお願いいたします。」

(取締役、着席)

(以下順に自己紹介、省略しても良いが、自己紹介した方が丁寧ではある)

議長「以上選任されました取締役〇名でございます。
宜しくお願いいたします。」

(取締役着席のままでお辞儀)

・・・以下、決議の数だけ繰り返し・・・略・・・

閉会宣言

議長「以上を持ちまして、本総会の目的事項は、すべて終了いたしました。」

(取締役、監査役、事務局一同起立)

議長「皆様のご協力により、滞りなくご審議いただきましたことを厚く御礼申し上げますとともに、引き続き変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

以上をもちまして〇〇〇〇株式会社第〇〇期定時株主総会は閉会となりました。

本日はお忙しい中(またお足下の悪い中)、ご出席たまわりまして、誠にありがとうございました。」

(一同礼、退席)

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株主総会議事進行におけるイレギュラー対応シナリオ(動議、不規則発言等)

株主総会議事がスムーズに進行できれば良いのですが、業績や社会状況に応じて必ずしもスムーズに終わらないこともあります。
株主総会議事進行のシナリオは多くありますが、動議や不規則発言が発生した場合のイレギュラー対応について、シナリオを示します。

当たり前ですが、会社側は適法に、公正に、公平に議事進行を行っていることが前提です。


株主総会の議事進行シナリオ(一括上程方式)については、こちらの記事も参照ください。
今の株主総会は、8割強が一括上程方式で進行されています。

基本方針

まず基本方針として、何かしらの対応を要する時はすべて事務局に確認することに注意しましょう。
弁護士の同席をいただいている場合が多いかと思いますが、手続きに瑕疵が無いよう、進行しなければなりません。

また、動議か意見かが不明な場合も多いのが実際です。
そのため、基本的には、なるべく意見とするように誘導することを方針としましょう。

動議か意見か不明な発言の場合①(なるべく意見とするように誘導)

議長「ただいまのご発言は、ご意見ということでよろしいでしょうか?」

動議か意見か不明な発言の場合②(動議の趣旨である可能性が高い場合)

議長「ただいまのご発言は、ご意見でしょうか、それとも動議としてご提出でしょうか。」

質疑中に動議が提出された場合

議長「ただいま、株主様より、・・・という議案修正の動議が提出されました。つきましては、後ほど、原案の採決の際におはかりさせていただきます。」

修正動議が提出された場合には修正動議が提出された場合のシナリオ

修正動議が提出された場合のシナリオ:会社原案を先にはかる

第〇号議案採決(修正動議あり)

議長「それでは「第〇号議案 〇〇〇〇〇の件」を採決します。先ほど、・・・するように議案修正の動議が提出されております。議長といたしましては、「第〇号議案 〇〇〇〇〇の件」について、原案である会社提案から先におはかりいたしたいと存じますが、この方法につき、ご賛成の株主さまは拍手をお願いします。」

株主様(拍手)

議長「ありがとうございます。」

(役員着席のままでお辞儀)

議長「過半数のご賛成を頂きましたので、原案から先におはかりいたします。それでは原案につきまして、ご賛成の株主様は、拍手をお願いします。」

株主様(拍手)

議長「ありがとうございます。」

(役員着席のままでお辞儀)

議長「事前に提出いただいております議決権行使書を含め、過半数の賛成により、本案は原案どおり承認可決されました。従いまして、先ほどの修正提案は否決されたものと取扱わせていただきます。

手続的動議への対応シナリオ:粛々と進行する

株主様「株主番号○○番の○○です。ただ今までの議長の議事運営は、公平さを欠いているので、議長不信任の動議を提出します。」

議長「ただ今、株主様より議長不信任動議が提出されました。私は、定款の定めにより議長を務め、その責を全うすべく公正に議事を運営しており、ご指摘のようなことは無いものと考えており、このまま議長をつとめさせていただきたいと考えております。
私がこのまま議長をつとめることにご賛成の株主様は、拍手をお願いいたします。」

株主様(拍手)

議長「ありがとうございます。」

(役員着席のままでお辞儀)

議長「過半数のご賛成を頂きましたので、議長不信任の動議は否決されたものと認め、私がこのまま議長をつとめさせていただきます。」

株主様(拍手)

不規則発言への対応シナリオ:指示をし従わなければ退場いただく

質問時間以外の発言の場合

議長「議事進行の妨げとなりますので、ご発言はお控えいただきますようお願いします。」

(上記の説明をしても静かにならない場合)

議長「○○色の服を着ている男性(女性)の株主様。会の進行の妨げになりますのでご静粛に願います。ご静粛にしていただけない場合はご退場いただくこともございますのでご了承ください。」

(上記の説明をしても静かにならない場合、議長指示に従わないときが発生してから退場手順までの対応に移行)

議長「失礼いたしました。それでは議事を進めさせていただきます。」

株主様に大きな声で騒いでいる方がいる場合の対応

議長「大変恐縮ではございますが、こちらで指名させていただいた方以外のご発言はお控えいただけますでしょうか」

(上記の説明をしても静かにならない場合)

議長「○○色の服を着ている男性(女性)の株主様。会の進行の妨げになりますのでご静粛に願います。ご静粛にしていただけない場合はご退場いただくこともございますのでご了承ください。」

(上記の説明をしても静かにならない場合、議長指示に従わないときが発生してから退場手順までの対応に移行)

議長「失礼いたしました。それでは議事を進めさせていただきます。」

議長指示に従わない状況が発生してから退場手順までの対応

議長の対応フロー

下記行間は、該当株主が議長の指示に従わず、不規則発言を継続した場合を想定しています。

議長「議長の指示に従ってください。」

議長「ご静粛にお願いします。」

議長「議長の指示に従わないときは、退場願う場合もあります。」

議長「再三警告しましたが、これ以上指示に従わない場合は退場していただきます。」

(議長一度事務局の席に相談に行く)

議長「前から○列目の、○色のシャツの方、さきほどご注意させていただきましたとおり、会の進行の妨げになりますのでご退場いただきます。」(周囲にわかるように、特定する)

議長「会場係は○色のシャツの方を会場の外へ案内してください。」

議長が退場指示を出した場合の事務局の対応フロー

議長から、株主のご案内の指示が出たら、下記の手順で退場していただきます。

  1. 事務局から会場警備担当者に退場決定の連絡を行なう
  2. 会場警備担当者から警備員に依頼を出し株主様を会場出口へ誘導(弁護士や法務担当などへ連絡)
  3. 会場警備担当者と警備員は該当株主様にお帰りいただく
  4. (警察を呼んでいる場合は)弁護士や法務担当は同時に会場内に着席をしている警察へも会場出口に移動していただく
  5. 対応困難になった場合は警察へ対応を依頼する(弁護士や法務担当判断)
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株主総会

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するための株主総会運営

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会も難しい。
とは言え、延期もできない、継続会もやりたくない。
これから株主総会を控える会社では、このような悩みを持っているのではないでしょうか。
ここでは、感染拡大を防止するための株主総会運営に関して解説していきます。

招集通知、HPなどで来場を控えるよう呼びかける

まず第一に、シンプルに来場を控えるように呼びかけましょう。

6月株主総会の会社は、まだ招集通知を印刷していないか、まだ印刷途中では無いかと思います。
印刷していないのであれば、招集通知に来場を控える旨を記載しましょう。
既に印刷しているけれども、ペラ1枚、同封が可能ならば、上記旨を記載したペーパーを印刷し、送付するようにしましょう。

加えて、IRのHPや、ニュースリリースなどで、株主に来場を控えることを呼びかけましょう。

会場を設定しつつも、感染拡大防止のため、来場を控えることを呼びかけることは、経産省からも容認されています。
その際には、事前の丁寧な周知が求められていますので、上記の通り対応しましょう。

会場規模を縮小し、事前登録制や入場制限を設ける

次に、会場の規模を縮小します。

例年と同規模の会場を用意していても、ソーシャルディスタンスを保つための席配置をとると、入場可能人数は半分から3分の1位に減ります。
併せて、空気がこもらないよう、サーキュレーターを設置するなど、換気にも努めるのも3密を無くすことにもつながり有効です。
例年よりも、入場可能人数が減ることを、招集通知やHPで周知しましょう。

その上で、事前登録制や入場制限を設けることも併せて周知します。

このことも、株主の平等性を保つこと、参加機会を不公正に奪わないことを前提に、経産省から容認されています。

なお、ソーシャルディスタンスを保つための会場面積の計算方法は次の記事を参照ください。

発熱や咳などの症状がある株主の入場を断る

体調がすぐれない株主の方の入場を断ることも対応しましょう。

入り口にサーモグラフィーを設置、また医師も会場に同席いただくように対応します。
(産業医に事前に打診、そうでなければ近隣の医師と契約)

一定以上の熱がある株主の方は、医師の問診を受けるよう誘導します。
(5月6月ですと、外が熱いことも想定されるので、37.5度以上が目安)
その上で、新型コロナウイルスの感染疑いがある場合は、入場を断りましょう。

株主の安全を守るため、これらの措置は可能であり、かつ適正と言えます。
もちろん、このことも事前に招集通知やHPで周知します。

当たり前ですが、消毒液やマスクなどは会場に準備しておきましょう。
スタッフもマスク着用です。
(ごくまれに、スタッフがマスク着用していると、何故か怒り出す方がでてきますが、当然、断固拒否です。)

株主総会の時間を短縮することを明言する

総会の時間も短縮しましょう。

従前、事業報告で30分や1時間といった、丁寧な説明の時間を設ける会社は多かったかと思います。
ただ、事前のIR資料の公表などで対応すれば、一定、これらの説明はカット・短縮できるはずです。

また、事前のコメント受付を行い、それらに対してHP上で回答することを対応していれば、わざわざ当日来場して質問を行おうとする株主も、来場を控える十分な理由になるはずです。

例年に比べて総会時間を短くすることと、資料の共有、コメントの事前受付に対して、招集通知やHPで当然に周知しましょう。

お土産の廃止する

更に念押しでお土産の廃止も断行しましょう。

複雑な気持ちではありますが、お土産が目当てで来場される株主の方は多数存在します。
お土産を廃止するだけで、来場抑制効果を期待できます。

もちろん、クレームなども想定されますが、株主の安全を保つこと、そして本質的な質疑が行われる株主総会を運営するためにも、お土産の廃止は十分に検討に値するはずです。

詳細はこちらの記事を参照ください。

当日、延会を望む動議が出たらどうする?

総会当日、感染拡大防止のために延会の動議がでることも想定されます。
(なぜ会場に来た?という疑問を抱いても、何も解決しません。)

この場合、通常の手続的動議と同様、粛々と否決するのが基本方針となります。

ただ、それですと株主からの反発も当然に受けるでしょう。
ですので、延会を実施しない理由、今回で完結させる旨を丁寧にする必要があります。

理由としては、下記の理由をあげれば十分であると考えられます。

  • 純粋に手続き増、つまりコスト増になり、会社にとっても株主にとっても望ましくない
  • 事前の資料共有、コメントの受付と回答対応を行っており、全ての株主に公正かつ公平にコミュニケーションをとっていること
  • 仮に延会の理由が感染拡大であるならば、いつに延会を実施するのが最適なのか不透明であること

そのために取り組むべきこと

そして、上記のことを行う上で大切なことがあります。
既に記載をしている部分もありますが。

  • 事前のIR資料の充実
  • リアルタイムライブ配信を用意する
  • コメントの事前受付と、質問・コメントに対する回答の公開

いくつかの会社のIR資料(決算説明会資料など)を見ていると、数字だけや図表だけで、そのスライドで何を具体的に言いたいのかが記載されていない場合が多いです。
そのため、当日口頭での補足が必要、という状況が多いかと思います。

ただ、プレゼンテーションの基本は、ワンスライドワンメッセージです。
スライドごとに、明確に「伝えたいこと」を文章で端的に記載しましょう。

仮に株主総会に参加しなかったり、配信動画を視聴しなくても、資料さえ見れば、当日どのような発表があったのかがわかるようにするのです。

技術的にも、コスト的にも、もう難しくない時代ですので、ライブ配信には対応すべきでしょう。
(録画配信でないと、編集できないため、配信したくない、という喋り下手な社長もいらっしゃるでしょうが、そのような方が社長であることは、別の意味で問題です。)

また、現在の日本の株主総会の意義は、良くも悪くも質疑応答にあります。
そのため、事前の質問受付を行い、それに対する回答と併せてHP上で公開すれば、株主総会の意義を概ねデジタル上で実現できます。
(解決できないのは、感情面だけで、これはやっかいなのですが、、、。)

日本の株式会社の多くが、決議をとるまでもなく、その決議の結果が決まっている場合がほとんどです。
これは良い悪いの話ではなく、現実としてそうなっている、という話です。
であるならば、それに対応した株主総会の運営を行うのが、論理的には正しいと言えます。

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株主総会

株主総会のお土産を廃止しよう

株主総会にとって「お土産」は悪名高い代物で、大体の共通認識はとれるかと思います。
昨今の情勢に照らし合わせて、廃止・中止をする企業も増えています。
非常にタイミングが良いので、株主総会のお土産を廃止し、本質的な質疑が行われる株主総会を目指しませんか?
ここでは、株主総会のお土産について解説します。

忙しい人向けまとめ

  • 株主総会のお土産を廃止する企業が増えている
  • 以前から、お土産問題は悪名高いものだった
  • 機関投資家にとっても、バーチャル参加する株主にとっても不公平な存在
  • お土産の廃止により、来場自粛を促す効果がある
  • それでも参加する株主は、会社に興味をもっている方のはずなので、そのような方々とあるべき関係構築を図るのが望ましい

お土産を廃止する所が増えている

以前より、株主総会における「お土産」は、企業側担当者たちにとって、悪名高いものでした。
というのも、お土産を受け取るだけ受け取った後、さっさと帰り、株主総会には参加しないという株主が大勢いるからです。
中には株主総会をはしごし、複数の会社のお土産を受け取る方や、一度お土産を受け取ったにも関わらず、総会の終わり頃を見計らって、もう一度お土産を受け取ろうとする方もいらっしゃいます。
(拒否をすると大騒ぎをする酷い方もいらっしゃるので、渡してしまう会社もあり、更に問題を根深くします。「どこどこの会社はくれた。」「去年はもらえた。」云々)

そのようなこともあり、近年はお土産を廃止する企業が増えてきていました。

2020年も、新型コロナウイルス拡大の影響を受け、3月は株式会社ワイヤレスゲート、5月はイオンディライト株式会社、6月はスターゼン株式会社などが、廃止や中止を表明しています。
他にも、大塚HD、タカキュー、松屋、ベルク、しまむら、トライステージ、カネ美、ラピーヌ、JTなども、廃止や中止の対応をとっています。

お土産の問題

機関投資家にとっての不公平

お土産の問題は、上述の「さっさと帰る株主」の他に、機関投資家にとってメリットが全く無い、という点も以前から指摘されていました。
そのため、お土産を廃止し、配当などを重視する姿勢をとる企業が増えていたのです。

通信費の負担という新たな不公平

新しい意味での不公平感も存在します。
従前、お土産は、わざわざ株主総会にお越しいただいたことに対するお礼、足代の意味が含まれていました。
それでは、バーチャル株主総会や、単純に配信された動画を視聴する場合を考えるとどうでしょうか?
その通信代の負担の意味合いで、お土産を来場株主に渡すこと自体に不公平感が産まれてしまうのです。
(このロジックも本質的とは思えないのですが、このように考えることは可能。)

そもそも、お土産は必須ではない

そもそもとして、お土産は必須ではありません。

お土産は、法律の要請は一切なく、あくまでも会社が任意で実施するものでした。
つまり、お土産を廃止・中止したとしても法的な問題は一切、発生しないのです。

時代の変化にあわせた対応を

上述の通り、株主総会の「お土産」は多くの微妙な問題を抱えています。
(ぶっちゃけこんなことで議論をしたくないくらい、どうでもいい問題です。お土産の受け取りだけをしても往復2時間とかかかるから、時間コストを考えたら絶対に損なのに、人生軸での費用対効果を考えないのだろうか?)

時代は変化しておりますので、昨今の情勢を踏まえて廃止、もしくは中止をするという選択を検討した方が良いでしょう。

感染拡大の防止対策アピールにもつながる

上述の不公平感の解消だけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大の防止対策アピールにもつながります。

過去の実例により、お土産を廃止すると、来場する株主が減少することは確かです。
会社によっては、激減し、半分くらいになる事例もあります。

廃止や中止は、来場自粛効果が高いと見込まれますし、またタイミングも良いです。
反発が少なく、廃止・中止をできる機会ですので、逃さない手はないでしょう。

廃止や中止の場合は通知・公表が必要

ただし、タイミング的に良い、といってもクレームが寄せられる可能性はあります。

お土産の廃止や中止を決断した場合は、招集通知や同封する書類内に、その旨を記載し、通知するようにしないと不味いでしょう。
またあわせて、HPなどでお土産の廃止・中止の公表も、早々に実施した方が良いでしょう。

お土産に固執する方々の気持ちは共感できないものの、一定数存在することは確かであり、理解ができます。
株主総会当日に、苦情対応等で混乱しても仕方が無いので、きちんと周知することが望ましいです。

本質的な質疑が行われる株主総会に

お土産がない、という中で株主総会に参加していただける株主は、本当の意味で会社に興味をもっていただけている可能性が高いです。
そのような株主の方に参加いただき、本質的な質疑を行えれば、会社の経営にも資するでしょう。

あるべき株主との関係性構築を図るためにも、お土産という微妙な存在は廃止するのが望ましい。
そのように考えます。

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株主総会

株主総会、経産省により来場禁止容認-はされてないよね。

日経新聞より、経産省が株主総会の来場禁止を容認する、という内容の報道を出していました。
結論、来場禁止は容認されていません。
あくまでも、もろもろ手を尽くした結果として会場に株主が出席をしていなかったとしても致し方ないよね、という内容です。
詳細を見ていきましょう。

経産省が来場禁止を容認?

日経新聞の記事を読み、驚愕をした方も多いかもしれません。
経産省が、株主総会について、株主の来場を禁止することも容認する、という報道を出したからです。

下記が、報道の冒頭部分です。

新型コロナウイルスの感染拡大で企業決算のとりまとめが遅れていることを受け株主総会に株主の来場を禁止することができるとの指針を経済産業省がまとめた。

2020/05/12 日本経済新聞「株主総会「来場禁止」も容認、経産省が指針、ネット上で出席扱い。」

経産省の指針では

それでは、実際に経済産業省のQAを見てみましょう。

Q2.会場に入場できる株主の人数を制限することや会場に株主が出席していない状態で株主総会を開催することは可能ですか。

(A)可能です。
 Q1のように株主に来場を控えるよう呼びかけることに加えて、新型コロナウイルスの感染拡大防止に必要な対応をとるために、やむを得ないと判断される場合には、合理的な範囲内において、自社会議室を活用するなど、例年より会場の規模を縮小することや、会場に入場できる株主の人数を制限することも、可能と考えます。
 現下の状況においては、その結果として、設定した会場に株主が出席していなくても、株主総会を開催することは可能と考えます。この場合、書面や電磁的方法による事前の議決権行使を認めることなどにより、決議の成立に必要な要件を満たすことができます。
 なお、株主等の健康を守り、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために株主の来場なく開催することがやむを得ないと判断した場合には、その旨を招集通知や自社サイト等において記載し、株主に対して理解を求めることが考えられます。

経済産業省「株主総会運営に係るQ&A」

これを見ると、ようは下記のことを言っています。

  • 会場規模の縮小や人数制限は致し方ない
  • 事前の議決権行使を認めるなどが前提で、結果論として、会場に株主がいなくとも株主総会は成立する
  • 株主の来場が無い開催を行う場合は、株主の理解を求める

つまり、会社側の判断で一方的に来場禁止をすることは容認されてはいないのです。
「来場禁止ができる」ではなく、「もろもろ手を尽くした結果として来場禁止という形になるなら仕方がない」という理解の方が正しいでしょう。

報道を真に受け来場禁止措置をとるのは危険

有名なチッソ株主総会事件では、想定以上の株主が来場し、結果論として入場制限がなされました。
そして、議決権行使について、会社からの配慮が無かったため、総会決議には瑕疵があると判決が出ています。
確かに会社側(議長)には株主の権利を制限する権限が存在します。
しかし、株主側にも平等原則や、違法行為差止請求権、提訴権が認められています。

昨今の新型コロナウイルスによる混乱は、一種の非常事態であるとはいえ、一方的に来場禁止措置をとることは株主の権利を侵害していることになり、多大なリーガルリスクを抱えることになります。

下記のような対応を丁寧に行い、その結果として会場出席者がいなかった、という状態とするのがベターでしょう。

  • 事前の議決権行使を可能とし、促す
  • 感染リスクに対して十分なアナウンスの上で、事前の議決権行使と来場自粛を求める
  • 会場の席数に制限があり、入場制限を設けることもある、とアナウンスする
  • 体温測定を行い、熱のある株主は入場禁止措置をとることをアナウンスする
  • ライブ配信や事前の質問(コメント)受付など、当日リアル株主総会に出席しなくとも良い環境を整備する
  • とりあげられなかったコメントに対して、後日回答を約束する
  • ガイアックスの事例を参照に、会場には議長や他役員は出席しないこととする措置も考えられる

来場自粛の促しに関しては、既に多くの会社の事例があるので、それを参考にすると良いでしょう。

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株主総会

リアル株主総会とソーシャルディスタンス【必要な面積の計算方法】

6月の株主総会スケジュールが集まりました。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響をうけて、6月後半に集中、大変な混雑が懸念されます。
ここでは、リアル株主総会において、ソーシャルディスタンスの考えから、どれだけの広さ(面積)の会場を用意すればよいのかを検討していきます。

ソーシャルディスタンス「2m」の根拠

周知の通り、新型コロナウイルスの感染拡大防止戦略としてソーシャルディスタンス(社会的距離)という考え方がとられています。
つまり、人と人との距離を2m置こう、というものです。

まず、この2mの根拠です。

飛沫感染は2m離れると感染しないとされている。オープンエアでは,2mまで到達する前に,種々の大きさのaerosol(エアロゾル,微小な空気中で浮遊できる粒子)は乾燥する。60~100μmの大きな粒子でさえ,乾燥して飛沫核になり,インフルエンザウイルスを含む多くのウイルスは乾燥して感染性を失う。したがって,コロナウイルスはインフルエンザ同様,エアロゾルが乾燥する距離である2m離れたら感染しないと思われる。しかし,湿気のある密室では空中に浮遊するエアロゾル中のウイルスは乾燥を免れるため,驚くことに,秒単位から1分ではなく,数分から30分程度,感染性を保持する。

緊急寄稿(1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察(白木公康)

こちらにある通り、エアロゾル、吐く息に含まれるウイルス滴は2mまでに乾燥し、感染力を失うので、2mの距離を置いておけば感染を防げる、ということです。

なお、オープンエア環境では、という限定付きなので、屋内の場合は換気をよくする、湿度を低く保ちエアロゾルが乾燥しやすいようにする、という対応が必要です。

計算の考え方

会場の広さ(面積)を計算する方法として2つの計算が考えられます。

  • 円の面積の計算方式
  • 等間隔で席を配置していく方式

円の面積の計算方式(最小面積)

円の面積の計算方式では、人と人との距離を2mおく前提から、一人一人が半径1mの円を個人スペースとして確保する考えになります。

イメージとしては下記の図の通りです。

つまり、計算式としては、

必要面積 = 人数×3.14

となります。

ただしこの式で計算できる面積は、ミニマムサイズで詰め込む形になります。

等間隔で席を配置していく方式(適正面積)

等間隔で席を配置していく方式では、下記の図の通り席を配置し、必要面積を計算する考えになります。

計算式としては、出席人数をxとした場合、下記の通りとなります。

必要面積 = 4x + 8√x + 4

この式で計算できる面積でも、結構な必要面積になります。

必要な面積一覧

必要な面積一覧

上述した計算式で出席人数ごとに必要な面積を計算した一覧を示します。
あわせて、一般的な会場の広さも示します。

この通り、ソーシャルディスタンスを保った会場の広さを確保しようとすると、結構な必要面積が必要になります。

まとめ

上述の通りの面積を確保しようとすると、あまり現実的ではない広さの会場を用意する必要が出てきます。
おそらく既に会場の確保は済んでおり、また新たな会場の確保の余裕も無いはずです。

これから6月開催の株主総会について、招集通知の印刷が一斉にはじまると思いますが、会社としての方針を明確に株主に示した方が良いでしょう。

つまり、事前の議決権行使を丁寧にお願いした上で、来場自粛の促しや来場禁止のアナウンスの検討です。
実際の感染リスクとは別に、感染拡大防止策をとらないことや、仮に感染者が出た場合の、レピュテーションリスクを恐れた方が良いです。

(参考)東証の資料

東証の資料では、6月25日(木)と26日(金)で過半数の企業が開催、集中する形になります。
第4週の開催は、2018年は67.4%、2019年は70.0%とのことなので、2020年の82.4%はかなりの集中です。

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株主総会

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会の開催事例(予定含む)

バーチャル株主総会において、会社法上の出席となる形式がハイブリッド出席型となります。
参加型は、要件が厳しく、コスト上の問題や事例が少ないという意味で会社法的リスクも存在します。
ここでは、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会の開催に関して、株主への案内の方法など、事例を見ていきます。

富士ソフト㈱とパイプドHD㈱(予定)の2社について、具体を掘り下げていきます。

バーチャル株主総会についての全体像はこちらの記事を、

バーチャルオンリー株主総会の開催がなぜできないのか?はこちらの記事を、

会社法上の出席とはならない参加型に関しては、こちらの記事をご参照ください。

ポイント

  • 会社法上の取扱いを明言する
  • ID・パスワード方式による専用システムへのログインと本人確認を行う
  • 参加環境は多様な方法が選択可能で、システムは一つで完結するものが望ましい
  • 代理人は認めない
  • 事前の議決権行使と当日の議決権行使の関係を明確化する
  • 質問のポリシーを定める(濫用時の途絶を含めて)
  • 動議は認めない、加えて扱いを明確化する
  • 免責事項を明言する

富士ソフト㈱の事例

概要

システム開発会社の富士ソフト㈱は2020年3月13日(金)に、出席型のハイブリッド型バーチャル株主総会を開催しました。
リアル株主総会への参加が約160名、バーチャル株主総会への参加が約10名とのこと。
おそらく招集通知上の修正は対応できなかったのでしょう。
招集通知と同封する形で「インターネット出席に関する株主通知事項」という案内を出しています。

招集通知上では、インターネットによる議決権行使の場合の案内欄末尾に
「インターネットによる議決権行使に際しては、同封のリーフレット記載の「インターネットによる議決権行使のご案内」もご確認ください。」
と一文を付しています。

バーチャル株主総会の案内について

バーチャル株主総会の案内については、冒頭で新型コロナウイルス対策について触れた後に、インターネット出席について
「(略)
感染予防の対策をいたします。
また今回、インターネット等の手段を用いて株主総会に「出席」いただく、「インターネット出席」の方法を導入することといたしました。」

と案内を出しています。

会社法上の取扱いの案内

会社法上の取扱いは、
「開催日当日に実際に株主総会の会場にお越しいただいてご出席いただく場合と同様、会社法上、株主総会に「出席」したものと取り扱われます。」
と、明確に会社法上の出席となる旨を記載しています。
※ 括弧書きは削除

ハイブリッド型バーチャル株主総会にしても、参加型なのか、出席型なのかが、人によってはわかりづらい場合もあるでしょうから、明確にどちらなのかを記載するのが良いのでしょう。

ID・パスワードについて

ID・パスワードは、バーチャル株主総会への出席を希望する株主様に限定する形で、
「必要な ID とパスワードは、インターネット出席を希望する旨のお申込みをいただいたのちに当社から改めてご案内させていただきます。」
と案内を出しています。

問い合わせベースでのID・パスワード発行は煩雑なので、最初からインターネットによる議決権行使と同じID・パスワードが利用できるような方式に変わっていくものと考えられます。

参加環境について

参加環境は複雑と言いますか、めんどくさい感じです。

「インターネット出席いただくためには、株主の皆様におかれて、少なくとも以下の環境を整えていただく必要がございます。」
と案内を出した上で、

  • 映像視聴はWindowsパソコンからのみ対応
  • 資料の閲覧や議決権の行使には「iPad」のみ対応
  • 質問は電話のみ受け付け

と制限が多い形となっています。
結論、バーチャル株主総会への出席人数が少なかったのも、頷けます。

この事例は技術的にはハードルが低いものの、今後この方式を採用する企業は少ないか、いたとしても「形だけ整えました」という感じになるのでは、と考えます。

本人確認について

本人確認は、シンプルにID・パスワードによる認証です。
「ご案内する ID とパスワードを用いて当社ホームページ、アプリケーション等にログインいただく方法で、株主様の本人確認を実施させていただきます。」

この方式、つまりID・パスワードによる本人確認は、今後のスタンダードになっていくでしょう。
出席環境が整ってきたら、二段階認証方式などが採用されていくのでしょうね。

代理人について

代理人の出席は、
「株主様本人のみに限定させていただき、代理人等による参加はご遠慮いただきますようお願いいたします(代理人等による出席をご希望される株主様は、会社法及び定款等の定めに従い、会場出席いただきますようお願いいたします。)。」
と明確に認めない方針を打ち出しています。

この方式も、今後のスタンダードになっていくでしょう。

議決権行使の取扱い

議決権行使に関しては、
「開催日当日、インターネット出席の方法で定時株主総会にご出席いただいた時点で、事前の議決権行使の効力は破棄するものといたします。
(中略)
また、事前に議決権行使いただいたうえで、定時株主総会にインターネット出席いただいたものの、採決に参加せず、議決権の行使がなされなかった場合には、会場出席株主様と同様、棄権として取り扱うことといたします。
(中略)
事前に行った議決権行使の効力を維持しつつ、株主総会の議事進行の様子をご覧いただきたい場合には、インターネット出席のためのシステムにログインすることなく、ライブ配信のみをご利用ください。」

としています。

整理すると、下記の通りです。

  • インターネットで議決権行使を行ったら、それが優先される
  • 事前行使をし、インターネット出席した場合は、事前行使分が無効になり、棄権扱いになる
  • 事前行使して、変更意思が無い場合は、傍聴のみとするよう案内している

経産省のガイドでは、会社法上の解釈の中で、上記の取扱いとしているので、今後、会社法の改正があれば、この整理は変更が入る可能性があります。
むしろ、面倒ですし、本質的な意味合いは無いので、改正して欲しいですね。

質問について

質問は、
「固定電話又は携帯電話から会場にいる当社のオペレーターにお電話をいただき、議長の許可を得て質問をすることができます。」
と、電話のみであることを明言しています。

質問に対する方針や、質問権濫用への対応については、
「説明することが不適当な質問に対しては、質問を取り上げず、ご回答しないものといたします。
(略)
濫用的な質問であると議長が判断した場合には、当社から当該インターネット出席株主様との通話を強制的に途絶させていただく場合がございます。」

とし、不適切な質問には回答しないこと、質問権濫用は通話を切ることを明言しています。

会社のスタンスに応じて、ここの方針・記載は変わってくるのでしょうが、今の世の中の流れ的に、毅然と対応する方向性がスタンダードになっていくのではないでしょうか。

動議について

動議は、
「動議につきましては、(略)インターネット出席株主様からの提出は受け付けないこととさせていただきます。
(略)
動議の採決につきましても
(略)
インターネット出席株主様は棄権又は欠席と取り扱うこととさせていただきます。
(略)
希望される株主様におかれましては、会場出席の方法で定時株主総会にご出席いただきますようお願い申し上げます。」

とし、バーチャル株主総会出席の場合は受け付けず、動議を行いたい、採決に加わりたい、と希望する場合はリアル株主総会への出席を行うよう案内しています。

これは、コミュニケーションの即時性・双方向性の質が向上したら、もしかしたら変わるかもしれませんが、会社的にあまりメリットは無いので、上記の方向性がスタンダードになる可能性が高いです。

お土産について

お土産は、
「インターネット出席株主様に対して、お土産をお渡しすることはできませんので、併せてご注意ください。」
バーチャル株主総会では配布無しが明言されています。

これは、株主の属性によってはトラブルになりえますが、この方向性を世の中のスタンダードとして欲しいですね。
お土産にこだわる株主が一定数存在しますが、時間コストを考えたら、どう考えたって釣り合わないので、正直不思議です。

免責・インターネット参加する場合のリスクの案内

免責・リスクに関する説明は、手厚くされています。

「もっとも、システム等の都合上、会場出席株主様と完全に同じ取扱いをさせていただくことは難しい点、ご了承ください。
また、インターネット出席の方法は、(i) システム及び通信環境の影響を鑑み、日本国内に在所する株主様のみを対象に実施すること、(ii) 提供できるシステムの言語は日本語に限定させていただくこと、いずれもご了承ください。
(略)通信障害が発生する可能性がございます。当社としては、このような通信障害によってインターネット出席株主様の皆様が被った不利益に関しては、一切責任を負いかねます。
なお、インターネット出席に際して必要な通信・通話のための機器類及び利用料等一切の費用については、株主様のご負担とさせていただきますのでご了承ください。
(略)
想定外の不利益が生じる可能性も踏まえて、会場出席の方法で定時株主総会にご出席いただくか、インターネット出席の方法で定時株主総会にご出席いただくかをご判断くださいますようお願い申し上げます。」

このように、大前提として、リアル株主総会への出席者とは同じ扱いができない点を明言し、その上で、下記について案内を出しています。

  • 日本国在所に限定
  • 言語は日本語に限定
  • 通信生涯が起きうること、とその損害の責任は負わないこと
  • 各種費用負担は株主様が負うこと
  • リスクを承知の上で、リアルかバーチャルかを選択すること

パイプドHD㈱の事例

バーチャル株主総会の案内について

パイプドHD㈱は2020年5月27日(水)開催なので、現時点では「予定」となります。
招集通知上で全ての案内を出しています。
パイプドHD㈱の案内は、富士ソフト㈱の案内に比較して、かなりあっさりとしたものになっています。

可能な限り、書面(郵送)またはインターネットによる方法での議決権行使をお願い申しあげます。
(中略)
本株主総会はハイブリッド出席型バーチャル株主総会として実施しますので、当日、インターネット上で出席し、議決権を行使することもできます。

「パイプドHD㈱ 第5回定時株主総会招集ご通知」より

ID・パスワードについて

富士ソフト㈱と同様ID・パスワード方式ですが、
「議決権行使サイトにアクセスし、同封の議決権行使書用紙に表示された「ログインID」及び「パスワード」でログインしてください。」
と、議決権行使書に記載のあるものを利用する形になっています。

これは一番しっくりくる方法です。
今後のスタンダードになっていくでしょう。

代理人について

代理人は「代理人によるバーチャル出席はお受けいたしません。」と富士ソフト㈱と同じ扱いです。

議決権行使の取扱い

議決権行使は、
「議決権を行使された後、採決において議長が締め切る時まで、再度議決権を行使し直すことができますが、この場合、最後の議決権行使を有効な行使としてお取扱いいたします。」
と、繰り返し行使できる旨の記載がありますが、事前行使との関係が示されておりません。

リスクが高いのではと感じます。
事例がどれだけ積みあがるかにもよりますが、流石にここまであっさりとするのは問題があるでしょう。

富士ソフト㈱の記載が良いと考えます。

質問について

質問は、インターネットによる事前の議決権行使における「コメント」と同じ扱いにする旨を記載しつつ、シンプルに
「いただいた質問は、株主総会事務局が取りまとめ、議長より回答いたします。」
と、回答する旨を記載しています。

動議について

動議は、富士ソフト㈱と同様、
「バーチャル出席される株主様の動議については、取り上げることが困難なため、お受けいたしません。
当日ご来場の株主様から動議提案がされ採決が必要になった場合、バーチャル出席されている株主様は賛否の表明ができません。事前に議決権行使書用紙の郵送またはインターネットにより議決権を行使し当日ご出席されない株主様と同じお取扱いとなります。」

としています。

会社側からすれば、動議を取り上げるメリットはあまりありません。

免責・インターネット参加する場合のリスクの案内

免責、出席環境については、インターネットによる事前の議決権行使における環境と同じ扱いにしています。

免責事項なのに、
「(略)
通信障害や通信遅延が発生する可能性があります。このような通信障害により株主様に生じた不利益に関して、一切責任を負いかねます。バーチャル出席される株主様におかれましては、可能な限り、事前に議決権行使を済ませた上で、バーチャル出席くださいますようお願い申しあげます。
(略)
また、不測の事態が生じた場合には、当社として適切な措置を講じることがあるほか、株主様におきましては、リアル株主総会への出席と比較して、制約事項や想定外の不利益が生じる可能性がございます。」

と、あっさりとした記載にしています。

パイプドHD㈱の記載例は全体的にかなりあっさりしており、事例が積みあがっていない現状では、不安に思うほどです。
ベースとしては富士ソフト㈱の方針に倣いつつ、使用するツール的には視聴環境から質問・議決権行使まで、一つのシステムで完結できるようなもので実施するのが良いでしょう。

㈱ガイアックスの運営事例-Zoom使用

㈱ガイアックスは3月27日、ハイブリッド出席型のバーチャル株主総会を実施しています。

使用ツールはZoomで、議長をはじめとする取締役・執行役の全員がオンライン参加をする形式です。

運営方法としては、下記の流れです。

  • バーチャル株主総会の参加希望株主に対して、専用の案内窓口をを通知
  • 専用案内窓口にて本人確認(株主番号、氏名住所)を実施
  • 本人確認と併せて、Zoomのカメラやマイクをオンにするなどの注意事項を伝達
  • メールアドレスを確認し、ZoomURLを送付
  • 総会本番では、順番に株主番号を確認し、出席番号を付与
  • 質疑はカメラ前で挙手
  • 議案・採決はカメラ前で拍手

かなりアナログな運営フローですが、確かにハイブリッド出席型の要件を満たしてはいるので、一つの方法として参考にはできます。

ただし、これは株主数が少ないことが前提です。
バーチャル参加が10名程とのことですので、この人数だからこそできる運営と言えます。
現実的な選択肢としては、難しいと言えるでしょう。

(参考)具体的なソリューション

現在、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会を運営するためのソリューション(システム)としては、下記のようなものがあります。

なお、富士ソフト㈱は上述の通り、視聴環境と質問環境が分離されているので、選択肢としては厳しいものがあるのでは、と考えられます。
その意味で、実績のあるサービスは現状存在しない状況です。

(補足)実質的なバーチャルオンリー株主総会

バーチャルオンリー株主総会を開催したい場合は、経済産業省の「株主総会運営に係るQ&A」で示されている下記の見解が参考になります。

設定した会場に株主が出席していなくても、株主総会を開催することは可能

株主総会運営に係るQ&A 2020年4月2日

つまり、リアル株主総会の場所を用意すれば、そこに株主が参加していなくても、株主総会は開催したことにできる、ということです。
ハイブリッド出席型の形式をとりつつ、会場出席者がいないのであれば、「実質的なバーチャルオンリー株主総会」になり、法的に問題がありません。

バーチャルオンリー株主総会は会社法的に開催できないのですが、この「実質的なバーチャルオンリー株主総会」を目指すことは可能です。

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