バーチャルオンリー株主総会(オンラインオンリー株主総会)は開催できるのか?

株主総会

新型コロナウイルスの影響により、バーチャル株主総会(オンライン株主総会)の関心が高まっています。
ここではバーチャル株主総会(オンラインオンリー株主総会)は開催できるのか否かを見ていきます。

なお、経済産業省より「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」が公開されています。
少々ボリュームがありますが、全体をしっかり理解するには、ガイドも参照ください。

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忙しい人向けまとめ

  • バーチャルオンリー型株主総会は開催できない
  • 会社法上はリアルな「場所」が必要
  • 時代の変化に応じた、会社法の改正が求められる
  • ただし、リアル会場を用意すれば「実質的なバーチャルオンリー株主総会」は可能
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バーチャル株主総会(オンライン株主総会)とは

まずバーチャル株主総会ですが、これは2種類存在します。

ハイブリッド型とバーチャルオンリー型です。

ハイブリッド型は、リアル株主総会とオンラインでの株主総会参加のどちらかを選択可能な株主総会です。
これはさらに、会社法上の出席とはならず傍聴するだけの「参加型」と会社法上の出席となる「出席型」に分類されます。

一方、バーチャルオンリー型株主総会は、言葉通りで、リアル株主総会を開催せず、オンラインのみで会社法上の要件を満たすことを目指す株主総会です。

簡単にまとめると、下記の図のようにイメージできます。

リアル株主総会

一般的な株主総会

バーチャル株主総会(ハイブリッド型)	

参加型
リアル参加とバーチャル参加を選択できる
傍聴のみの会社法上は「出席」とならない

出席型
リアル参加とバーチャル参加を選択できる
当日の議決権行使等が可能で、会社法上の「出席」となる

バーチャルオンリー型株主総会
バーチャル参加のみの株主総会
総会形式	会社法上の出席	議決権行使	質問・動議	コメント	映像	形態
ハイブリッド出席型	〇	〇	〇	〇	〇	出席
ハイブリッド参加型	×	×	×	〇	〇	参加
映像配信(ライブ)	×	×	×	×	〇	傍聴
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バーチャルオンリー型株主総会(オンラインオンリー型株主総会)

バーチャルオンリー型は開催できない

上述の通り、バーチャルオンリー型株主総会は、リアル株主総会の開催は無く、インターネット等の手段のみで会社法上の「出席」をする株主総会のことです。

結論を言うと、バーチャルオンリー型株主総会は開催できません。

それは、現行の会社法では解釈が難しいからとなっています。

○松平委員
(略)
そこで、まずこの現行法の解釈を伺いたいんですが、ハイブリッド型とバーチャルオンリー型の株主総会、これは日本ではできるのかどうか、法律上許容されるのかどうか、これを伺いたいと思います。

○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
まず、委員御指摘のハイブリッド型についてでございますが、取締役が実際に開催する株主総会の場所を決定し、これを株主に通知した上で、その場所に来ていない株主等についても、情報伝達の双方向性及び即時性が確保されるような方式によって株主総会に出席することを認めることは、会社法上許容されるものと解されます。したがいまして、実際に開催されている株主総会に株主がオンラインで参加することを許容すること、いわゆる御指摘のハイブリッド型の株主総会を行うことは、会社法上許容され得るものと解されます。

これに対しまして、実際に開催する株主総会の場所がなく、バーチャル空間のみで行う方式での株主総会、いわゆるバーチャルオンリー型の株主総会を許容することができるかどうかにつきましては、会社法上、株主総会の招集に際しては株主総会の場所を定めなければならないとされていることなどに照らしますと、解釈上難しい面があるものと考えております。

第197回国会法務委員会第2号(平成30年11月13日(火曜日))

会社法の記載

根拠条文的には会社法の298条1項1号にある、「株主総会の日時及び場所」の記載です。
ようは、会社法的に「場所」が必要であり、バーチャルオンリー型は場所が存在しない形になるため、解釈上の困難がある、ということです。

(株主総会の招集の決定)
第二百九十八条 取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主総会の日時及び場所
(以下略)

会社法

リアルな場所が必要

ようは、リアルに参加ができる「場所」が無ければならず、バーチャル株主総会を開催する場合は、リアルに参加できる場所を何かしら用意して、選択できるようにしなければならないのです。

(会社法に規定される「場所」は仮想現実を設定できる旨の判断が出ていない。
オンラインに対応できない方のために、リアルな「場所」での権利行使の機会確保が必要になる、という考えなのでしょう。)

本質的には、会社側と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されているならば、リアルだろうがオンラインだろうが、変わりは無いはずです。

時代は変化していますので、早々に会社法の改正が求められます。
(声をあげていきましょう。)

(追記)実質的なバーチャルオンリー株主総会

経済産業省の「株主総会運営に係るQ&A」で示された見解では、下記の通りとなっています。

設定した会場に株主が出席していなくても、株主総会を開催することは可能

株主総会運営に係るQ&A 2020年4月2日

つまり、リアル株主総会の場所を用意すれば、そこに株主が参加していなくても、株主総会は開催したことにできる、ということです。
ハイブリッド出席型の形式をとりつつ、会場出席者がいないのであれば、「実質的なバーチャルオンリー株主総会」になり、法的に問題がありません。

インターネット参加ができない人もいるであろう前提の元、リアル会場は用意しつつ、この「実質的なバーチャルオンリー株主総会」を目指すのが良いと考えられます。

補足

なお、株主全員の同意がある場合は、株主総会自体を開かず「みなし決議」という形式をとることも可能です。
上場企業では事実上不可能な方法なので、中小企業、ベンチャー企業向けの選択肢ですね。

(株主総会の決議の省略) 第三百十九条 取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。

会社法

バーチャル株主総会を現実的に開催しようとする場合は、ハイブリッド型となります。
バーチャル株主総会(オンライン株主総会)全体について要約した記事は下記にありますので、併せてご参考に。

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