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生産性・業務効率化

ガムを噛むと認知機能や集中力が高まるという話

一流のスポーツ選手がガムを噛んでいる姿はありふれた光景です。
いわく、集中力が高まるから、ということなのですが、どうやらそれは科学的に正しいようです。
複数の研究により、ガムを噛むことにより、認知機能や集中力が高まることが示されています。

https://www.wired.com/2011/11/the-cognitive-benefits-of-chewing-gum/

ガムと認知機能の関係

セントローレンス大学では、159人の学生を対象に、ガムと認知機能の関係を調べた実験が行われました。

内容は、半分の学生はガム(無糖のものと加糖のもの)を噛むグループ、残り半分は何も与えられない対照群として設定し、難しい論理パズルを解くなどの認知機能を測るものです。

実験の結果、テスト前に5分間ガムを噛んだグループは、対照群と比較してほとんどのテストで有意にテストの結果が優れていたことが示されました。

ガムを噛むと認知機能が向上する

実験では6つのテストが行われ、5つのテストで認知機能の向上が見られ、残り1つの例外は「動物」などの与えられたカテゴリーからできるだけ多くの単語を挙げるように指示された「言語能力」を測るもののみでした。

噛むガムは無糖でも良い

なお、ガムが無糖であるか、加糖であるかは関係がなく、ガムに含まれている糖分が認知機能に与える影響ではないことが示されています。

つまり、ガムが認知機能を向上させる理由は、咀嚼により誘発される覚醒作用だ、ということです。

ただし、効果は20分間のみ

実験では、ガムを噛むことにより向上する認知機能について時間経過の影響も調べられています。

その結果、認知機能の向上はガムを噛んだ後の約20分間に限定されることがわかりました。

20分が経過した後は、ガムを噛んでいない対照群と同じ成績に落ち着いたとのことです。

ガムを噛むのは、大事な仕事や難しい仕事がある直前5分間とし、バシッと集中して物事にあたるのが吉と言えるでしょう。

タスク実行中に水を飲むとパフォーマンスが向上する、という研究もあります。
うまく組み合わせると、高いパフォーマンスを維持し続けられるかもしれません。

他にも集中力の向上やメンタルの安定効果がある

他にもガムを噛むことにより、様々なポジティブな影響があることが報告されています。

例えば、コベントリー大学で行われた研究では、ガムを噛んでいる人は眠気が劇的に減少し、集中力が向上する効果があること。

カーディフ大学で行われた研究では、、明らかに不快で集中力が妨げられる環境に置かれていても、ガムを噛むことによりメンタルが安定すること、が示されました。

ガムをくちゃくちゃ噛んでいる光景は、人によっては不快に感じるかもしれませんが、その効果の程を考えると一概に切って捨てるのはナンセンスと言えるかもしれません。

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仕事と健康,運動

昼寝を頻繁にする人は若くして亡くなる傾向がある模様

睡眠は人の健康に非常に重要なものです。
しかしながら、昼寝を頻繁にする人は、そうでない人よりも若くして亡くなる傾向がある、という研究もあります。
これは因果関係を示すものではなく、疲労や疾病が要因と考えられますが、健康を害するサインであるとは言えます。

睡眠不足は身心に多大な悪影響を与える

睡眠不足が身心に多大な悪影響を与えることは広く一般的に知られており、公衆衛生上の課題であると考えられています。

悪影響とは、身体へのダメージ不安の増大生産性の低下認知症リスクの増大、と言った物があげられます。

他にも、先延ばし行動の増加リスクのある判断をポジティブに歪める、というようなあまり知られていない悪影響も存在します。

そのため日々の睡眠不足を補うため、仮眠、例えば昼寝をする、というような行動が推奨されています。

しかしながら、昼寝を頻繁にする人は若くして亡くなる傾向がある、という研究が存在します。

昼寝を頻繁にする人は若くして亡くなる傾向がある模様

ケンブリッジ大学の研究では、昼間に1時間以上の昼寝を頻繁に取る人は、そうでない人に比べて若くして亡くなる傾向があることが示されています。

https://www.smithsonianmag.com/smart-news/consistently-needing-take-long-mid-day-naps-might-be-indicative-underlying-health-problem-180951071/

この研究では40歳から79歳までのイギリス人男性約1万6千人を対象に、13年間に渡る追跡調査が行われました。

その結果、1日に1時間以上の昼寝をする人、1日に1時間未満しか昼寝をしない弘、まったく昼寝をしない人の3グループに分類され、この内、1日に1時間以上の昼寝をする人は、そうでない人に比べて死亡率が32%も高かったことがわかりました。
死亡要因は様々に存在しますが、心臓病やがん、呼吸器系疾患などが含まれていました。
研究では、性別や社会経済的地位、アルコール、うつ病などの精神疾患などについても考慮されています。

おそらく昼寝そのものが問題ではない

この研究は、因果関係を示すものではなく、あくまでも相関性を示すものです。

そして研究者も、おそらく昼寝そのものが問題なのではなく、疲労や、疲労の原因となる基礎的な健康状態が関連しているのでは、としています。

つまり、日中に過度な疲労を覚え、睡眠を欲する、というような状況は健康を害しているサインである可能性があるのです。

忙しい現代社会において、十分な時間と質の睡眠をとるのは難しいことかもしれません。
しかし、長い時間、眠気を覚えているという人は、身心の疲労の原因を追究し、解消するための取り組みを行った方が長期的な健康のためにも良いと言えるでしょう。

言うは易しですが。

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仕事と健康,運動

睡眠不足は不安を増大させる

睡眠不足がパフォーマンス、つまりは生産性に悪影響を与える、ということは非常に知られています。
また、健康にも様々な悪影響を与えることも同様によく知られています。
加えてメンタルとの関連性もよく語られますが、睡眠不足に陥ると不安が増大する、ということはあまり知られていません。

慢性的な睡眠不足は、不安を増大させる可能性があるのです。

睡眠不足の時に活性化する脳領域と不安を感じた時に活性化する脳領域は同じ

慢性的な睡眠不足に陥ると、生産性が落ちたり、体調が悪くなったりした経験がある人は多いでしょう。
また、もしかしたら、不安な気持ちになった経験がある人もいるかもしれません。

一般的に、不眠症の人は、不安障害を抱えるリスクが多いとされています。
しかし、これは相関性が見られたのみで、臨床的にどのように関係しているのか?は示されてきませんでした。

カリフォルニア大学の研究チームは、睡眠不足の時に活性化する脳領域と不安を感じた時に活性化する脳領域は同じであり、睡眠不足が不安を増大させる可能性について示しました。
たった一晩寝なかっただけで、fMRI検査において、不安を感じた時に示す脳活動パターンが見られたのです。

https://www.researchgate.net/publication/327021316_Sleep_loss_causes_social_withdrawal_and_loneliness

意図的に睡眠不足の状態を作ると不安が増大した

この研究では18人の健康な成人を被験者とし、半分を睡眠不足グループ、半分を対象群となる通常グループにわけて、2晩過ごしてもらいました。
そして、それぞれの夜と朝に被験者の不安レベルが測定されました。

その結果、睡眠不足グループにおいて、翌日の不安レベルが30%上昇することが示されました。
この水準は、臨床的に不安障害と診断される可能性がある水準です。

併せてfMRI検査が行われ、上述の通り、睡眠不足グループにおいて不安を感じた時に示す脳活動パターンが見られました。

睡眠不足により増大した不安は、ぐっすり眠ると解消される

この睡眠不足により誘発された不安は、被験者が一晩しっかりと睡眠をとると、正常なレベルにまで回復したこともわかりました。

研究者は、「十分に休息しているときには、感情をコントロールする脳領域が不安を抑えるが、たった一晩の睡眠不足でも感情を制御するプロセスが発動しなくなる。」としています。

この研究により、不安が睡眠不足を誘発する、という従来の知見に加えて、睡眠不足が不安を誘発する、という双方向の相互作用がある可能性が示されました。


忙しい現代人は、睡眠不足を削って「生産的」なことに時間を費やしたいと考えがちです(その「生産的」が仕事なのか、趣味のことなのかは問わず)。

しかし長期的に見れば、「生産的」なことよりも、睡眠をしっかり取ることの方がはるかに重要であると言えます。

睡眠不足により、不安サイクルという完全な悪循環に陥るリスクがあるのですから。

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仕事と健康,運動

睡眠不足は身心に悪影響を与えるのみならず肥満や歳をとった時の体力にも悪影響を与える

睡眠不足がパフォーマンス、つまりは生産性に悪影響を与える、ということは非常に知られています。
そして、生産性に悪影響を与えるだけでなく身心にダメージを与え、幸福を感じにくくなってしまうこと、また肥満や歳をとった時の体力にもマイナスの影響を与えることが研究でわかっています。

睡眠不足は身心に悪影響を与える

米・サウスフロリダ大学の研究で、わずか1日だけでも睡眠不足になると身心に悪影響を与える、ということが示されています。

https://academic.oup.com/abm/advance-article-abstract/doi/10.1093/abm/kaab055/6314765?redirectedFrom=fulltext

研究では約2,000人の中年を対象に、8日間の睡眠時間や感情、生活行動等についてデータを収集し、分析がされました。
その結果、睡眠時間が6時間を下回った人において、有意にネガティブな感情(怒り、いらだち、神経質、フラストレーション、神経質等)が増加したことがわかりました。
また、ネガティブな感情のみならず、胃腸や呼吸器等、健康上の悪影響も増加したことがわかりました。

この悪影響は睡眠不足が続くと悪化を続け、3日目でいったん落ち着くものの、6日目で更に悪化する事も示されました。

この悪影響から逃れるためには十分な睡眠が必要である、としています。

睡眠不足は幸福度を下げる

カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究では、睡眠不足がポジティブな出来事からうける幸福な感情が低下し、ネガティブな感情が増加すること、つまりは幸福度が下がることが示されました。

https://doi.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fhea0001033

研究は、約2,000人の中高年を対象に行われ、8日間の睡眠時間、ポジティブもしくはネガティブな出来事、その出来事から感じた感情等についてインタビュー調査が行われました。

その結果、睡眠不足になると、ポジティブな出来事からうける幸福な感情の増加幅が低下すること、逆にネガティブな出来事からうける幸福な感情の減少幅が増加することがわかりました。

一方で、十分な睡眠をとっている被験者は、ポジティブな出来事からうける幸福な感情の増加幅が増加すること、ネガティブな出来事からうける幸福な感情の減少幅が低下することもわかりました。

研究者は、睡眠が与える身心への影響のみならず、人生の幸福にも影響をしていることを指摘しています。

睡眠不足は肥満につながる可能性

さらに、睡眠不足が肥満につながる可能性についても指摘されています。

フランス・国立衛生医学研究所の研究では、睡眠不足が肥満と関連があることが示されています。

https://www.afpbb.com/articles/-/2375648

研究では、睡眠不足の状態になると、食欲抑制ホルモンであるレプチンが体内で18%減少すること、一方で食欲増進ホルモンであるグレリンが28%増加することが示されました。

この睡眠不足が言う睡眠の時間は、1日4時間睡眠を2日間繰り返した場合、とのことですが、現代人の睡眠状況では珍しくないかもしれません。

他の研究でも、睡眠時間が短い人は肥満傾向があることが示されており、肥満と言う観点でも、長期的な身体への悪影響が推測されます。

睡眠不足は将来、介護施設に行くリスクを高める可能性

そして、睡眠不足は将来、介護施設に行くリスクを高める可能性があることが示されました。

この研究では、平均年齢83歳の高齢女性約1,600人を対象に、ウェアラブルデバイスによる3日間の行動データが取得され、そして追跡調査により5年後の介護施設への入居状況が調査されました。

https://cakehealth.com/2865-sleep-disturbance-nursing-homes.html

その結果、睡眠時間が短い女性(夜間に起きている時間が長かった女性)は、有意に介護施設に入居する割合が高かったことが示されました。

この結果は、認知症との関連も考えられるため、睡眠不足と介護施設に行くリスクが直接的に結びついているとは限りません。
また、高齢者が眠らない、ということが周囲の介護者のストレスを増大させ、介護施設に入居させるインセンティブが高まる、という可能性も考えられます。

しかし、睡眠不足が身心に悪影響を与える、ということを考えると、長期的な身体機能や認知機能の低下を招き、介護施設に行くリスクを高める可能性は十分にあると言えます。


現代人は、睡眠を十分にとれる環境の確保が難しいのは確かなことでしょう。

しかし、これだけの悪影響があることを踏まえれば、如何に睡眠時間を確保するのか?は重大な検討事項であるのは間違いがないでしょう。

自分自身の人生を大事にするのであれば、良質な睡眠を十分な時間、取れるよう、最大限の工夫をすべきと言えます。

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生産性・業務効率化

睡眠不足は仕事の効率、つまりはパフォーマンスを低下させる

良く知られた話ではありますが、睡眠不足は仕事の効率を下げます。
一方で、週末に寝だめして睡眠不足分を補おう、という考えもありますが、こちらについて効果がない、ということはあまり知られていません。
今回は睡眠不足がパフォーマンスに与える影響について見ていきます。

睡眠不足は酔っているのと同じレベルでパフォーマンスが低下する

睡眠不足は仕事の効率、つまりはパフォーマンスを低下させる悪影響があります。

このパフォーマンスの低下は、一部の研究によると、ビールを1,2本空けた、ほろ酔いと同じレベルとされています。

https://www.forbes.com/sites/kellyclay/2013/09/04/didnt-get-enough-sleep-you-might-as-well-be-drunk/?sh=657e6bb010e2

睡眠不足分を、カフェインによる覚醒効果でカバーしようという考えが一般的ですが、生産性向上効果は限定的です。
単純作業の効率は確かに回復しますが、複雑な思考を要するタスクの効率は全く回復しないことがわかっています。

お酒を飲んで仕事をしてはいけない、というのは社会の常識となっていますが、睡眠不足にならざるを得ない位に仕事が多いのは何故なんでしょうね???

なお、仕事の効率だけでなく、もちろん勉強の効率も下げます。
社会人だけでなく、学生にとっても睡眠不足は大敵、ということです。

https://www.bbc.com/future/article/20180815-why-sleep-should-be-every-students-priority

16分程度の睡眠不足でもパフォーマンスは低下する

では、どれくらい睡眠時間が短いと、パフォーマンスの低下がおきるのでしょうか?

この答えは次の論文で研究がされており、その時間は16分程度からパフォーマンスの低下が起き始める、とされています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30905693/

研究では、IT系企業に勤める会社員130人を対象に行われ、睡眠時間とパフォーマンスの関係についてアンケート調査が行われました。
その結果、平均して睡眠時間が16分短くなるとパフォーマンスの低下が起きる、ということがアンケートの回答から示されました。

対象人数も少ないことと、アンケートによる自己申告によるものなので16分という時間の正確性については、まだまだ疑問があるものの、わずかな時間でも睡眠時間が短くなると悪影響を受ける、ということはわかります。

週末に寝だめしても睡眠不足によるダメージは回復できない

睡眠不足に対して、週末に寝だめして解消しよう、とする人が大勢います。

しかし、その効果ははっきりと言ってありません。

こちらで紹介されている研究で、寝だめによる認知機能回復効果について検証が行われています。

https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2003652/Lack-sleep-Weekend-lie-doesnt-work-days-just-6-hours-sleep.html

そして、結論として、寝だめの効果をはっきりと否定しています。

眠気だけは確かに解消されますが、それによる認知機能回復は期待できない、ということです。
カフェインによる覚醒効果の話と一緒ですね。

この話は実は非常に恐ろしく、脳神経に物理的にダメージを与える、という研究もあります。

https://www.pennmedicine.org/news/news-releases/2014/march/penn-medicine-researchers-show

寝だめするよりも平日にちょっとでも良いので昼寝を

結論として言えるのが、寝だめをするよりも、ほんのわずかな時間でも良いので日中に昼寝をしましょう、ということです。

こちらのまとめでは効率的な休憩のとり方について記事をまとめています。

忙しい現代人は、短い休憩でもとることが難しい方が多いでしょうが、効率的な休憩のとり方を知れば、多少でも生産性をあげることができるはずです。

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生産性・業務効率化

「寝てないアピール」がプラシーボ効果で本当に寝不足と同じ悪影響を受ける可能性

「寝てないアピール」がダサい、ということは大分周知されてきています。
一方で、「寝てないアピール」がプラシーボ効果で本当に寝不足と同じ悪影響を受ける可能性についてはほぼ知られていません。
プラシーボ睡眠、プラシーボ寝不足の悪影響について見ていきます。

プラシーボ睡眠のポジティブな効果

睡眠不足はパフォーマンスに多大な悪影響を与えます。

それのみならず、リスク判断を歪める可能性や、認知症等のリスクの向上など、様々なデメリットが睡眠不足にはあり、この悪影響はカフェインの覚醒効果ではカバーできない、ということもわかってきています。

しかし、もしかしたら「よくネタ」と思いこむことがパフォーマンスへの悪影響を緩和できるかもしれません。

こちらの記事では「プラシーボ睡眠」について紹介しています。

https://www.theatlantic.com/health/archive/2014/01/study-believing-you-ve-slept-well-even-if-you-havent-improves-performance/283305/

プラシーボ睡眠の研究概要

研究では、学生達に前日夜の睡眠の質について10段階評価で報告してもらいました。

その後、研究者は学生達に実験の背景を説明するために、睡眠が認知機能に及ぼす影響について簡単なレクチャーを実施しました。
そのレクチャーでは、「成人は通常、睡眠時間の20〜25%をレム睡眠に費やしており、レム睡眠が少ないと学習テストの成績が低下する傾向があること、また、レム睡眠の割合が25%以上の人は、学習テストの成績が良くなる。」という虚偽の説明がされました。

また、脈拍、心拍数、脳波の周波数を測定する機器に接続され、「これらの機器により、前日夜にどれだけのレム睡眠をとったのかを把握することができる。」という、これまた虚偽の説明がされました。

そして、被験者一人一人に、16.2%または28.7%のレム睡眠をとったと伝えました。
(実際には脳波しか測定していないし、どれだけのレム睡眠をとったのかの計算もされていない。)

このような心理的なコントロールを受けた後、被験者は聴覚的注意力と処理速度を測定するテストを受けました。
(実験は2回行われ、実験の偏りをコントロールしながら、同じ条件の実験が繰り返された。)

プラシーボ睡眠、もしくはプラシーボ寝不足によりパフォーマンスが変わる

上述の実験の結果、レム睡眠が平均以上であると言われた被験者はテストのパフォーマンスが高いことが示されました。
また、レム睡眠が平均以下であると言われた被験者は、テストのパフォーマンスが低いことが示されました。

この結果は、被験者が自己申告した睡眠の質にフォーカス(自己申告による偏りを排除)をしても同様の結果が得られました。

つまり、実際の睡眠の質に関する自己申告よりも、研究者から与えられた「嘘の情報」に大きな影響を受け、パフォーマンスが変化したのです。

まとめると、「寝てないアピール」はプラシーボ効果で本当に寝不足と同じ悪影響を受ける可能性があるということです。

自分がどれだけ疲れているのか、口にすることはパフォーマンスに悪影響を与える可能性があることを考えると、「よく寝た」「元気だ」と口にする方が良いと言えるでしょう。
「寝てないアピール」は、マウンティングとしても効果がありませんしね。

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生産性・業務効率化

睡眠とパフォーマンスのTipsまとめ

睡眠とパフォーマンスのTipsに関する記事のまとめになります。

睡眠の質を高める

睡眠とパフォーマンス

睡眠と健康

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仕事と健康,運動

【若い内からの認知症予防】睡眠と認知症リスクの関係

運動と認知症リスクの関係は比較的よく知られています。
一方で、睡眠と認知症リスクの関係は、あまり知られていないのではないでしょうか。
ここでは、睡眠と認知症リスクの関係について科学的知見を見ていきます。

慢性的に短い睡眠が続くと認知症リスクが高まる

短い睡眠と認知症のリスクについて長期的に調査された研究を紹介します。

https://www.nature.com/articles/s41467-021-22354-2

こちらの研究では7,959名の被験者を対象に約25年間に渡る追跡調査が行われました。

研究では、被験者の自己申告や、腕に装着するタイプの計測機器(加速度計)によるデータも活用され、分析が行われました。

その結果、睡眠時間が6時間より少ない人は、睡眠時間が7時間前後の人よりも認知症リスクが高いことが示されました。
このリスクは50歳~60歳の時に、慢性的に短い睡眠をとっている場合に出てくるようです(約30%、認知症リスクが高まるとのこと)。

慢性的に短い睡眠は、人の認知能力を著しく低下させることがわかっています。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2785092/

また、睡眠不足はリスク判断を歪める、という示唆もあります。
ですので、長期的な認知症リスクだけでなく、目の前の生活の充実度の観点からも、可能な限り睡眠をとった方が良いと言えます。

質の高い睡眠は認知症の原因物質を除去する

上述の研究は、相関関係を示したのみで因果関係について示したものではありません。

実際、この研究では質の高い睡眠(ノンレム睡眠)がアルツハイマー型認知症の原因物質を減少させることを示しています。

https://www.science.org/doi/abs/10.1126/science.aax5440

もしかしたら単純な睡眠時間の問題ではなく、質の高い睡眠の時間が問題である可能性があります。

睡眠の質は先延ばし行動とも関係している、という知見もあります。

睡眠の質を高めるテクニックは各所で紹介されていますので、参考にしてみると良いでしょう。

睡眠の質を高めるためにも、適度な運動を心がけることも重要でしょう。

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生産性・業務効率化

カフェインによって生産性は本当にあがるのか?~タスクの種類による~

仕事に忙しい方にとってカフェインは友と言えるでしょう。
眠気を覚まし生産性をあげるため、朝やランチ後、業務が遅くなった夜にコーヒーを飲む方は珍しくないはずです。
しかし果たして、カフェインによって生産性は本当にあがるのでしょうか?

カフェインによる生産性向上効果はタスクの種類による、という話

カフェインの覚醒効果について、疑いを持つ人はほとんどいないでしょう。

実際、コーヒーの香りを嗅ぐだけで覚醒効果が出る、という研究がある位、人々の生活とカフェインは密接に結びついています。

また、多くの研究がカフェインによる生産性向上効果について支持をする結論を出しています。

しかしながら、タスクの種類によるカフェインの生産性向上効果について研究された実験は少ないのが実際です。

ミシガン州立大学の研究チームは、この点について研究を行いました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34014758/

研究では276人の参加者を対象に、次の変数を与えて生産性について測定しました。
(プレースキーピングとは、プレースキーピングとは、複数の手順を重ねる必要があるタスクを完遂させる能力のことです。)

  • 単純タスクと複雑なタスク(プレースキーピングタスク)
  • 徹夜か睡眠をとるか
  • カフェイン錠剤を摂取するかプラセボ錠剤を摂取するか

その結果、全ての睡眠不足の参加者について、単純タスクであろうが複雑なタスクであろうが、パフォーマンスの低下が起きることが示されました。

また、カフェイン錠剤は単純タスクについては生産性向上効果を示すものの、複雑なタスクについては生産性向上効果をほとんど示さないことがわかりました。

つまり、カフェインは単純タスクにのみ効果があり、複雑なタスクについては意味がない可能性があるわけです。

現実の仕事において

一般的に14時を過ぎたらカフェインは摂取しない方が良い、と言われますが、この助言は守った方が良いと言えます。

というのも複雑なタスクについてカフェインの効果が無いのであれば、午後の遅い時間以降にカフェインを摂取して仕事を頑張るより、仕事を切り上げてきちんとした睡眠をとって翌日にリカバリーした方が効率が良いと考えられるからです。

また、仕事が忙しい、複雑なタスクが多い方程、カフェインに頼らず、きちんとした睡眠をとることを心がけた方が良いことがわかります。

実際に眠気は覚めたとしてもパフォーマンス自体は落ちている、ということを認識し、自分自身を労わることを考えるのが吉と言えます。

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生産性・業務効率化

コーヒーは、香りを嗅ぐだけでも、コーヒーのことを考えるだけでも覚醒効果がある模様

コーヒーを友にする仕事好き人間は多いでしょう。
コーヒーには様々なプラスの効果、例えば覚醒効果だけでなく疾病予防や体力増強などの効果があります。
どうやらこの効果、実際に飲まなくても、香りを嗅いだり、コーヒーのことを考えるだけでも恩恵を受けられるようです。

コーヒーの香りを嗅ぐだけでも効果がある

複数大学の研究チームは、コーヒーの香りを嗅ぐことによる覚醒効果について実験を行いました。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0272494418302615

実験は簡単なもので、114人を対象に2つのグループに分け、GMATによる数学のテストを受験してもらいました。
あるグループはコーヒーに似た香りが漂う部屋で受験をし、別のグループは香りのない部屋での受験となりました。

結果は、コーヒーの香りが漂う部屋で受験をしたグループの方が、スコアが有意に高いことが示されました。

つまり、コーヒーの香りによるプラシーボ効果があったのです。

この研究は別の調査も行われており、実験に参加していない208人を対象に香りに対するイメージについてヒアリングを行ったところ、コーヒーの香りがする部屋では、香りがない場合や花の香りがする部屋よりも、生理的な刺激を感じる、と回答していました。
つまり、香りのイメージと得られる効果が脳内で結びついた可能性があります。
その意味で、コーヒー以外にも、紅茶や日本茶にも覚醒効果があるとイメージを持っている人の場合、コーヒーの香りでなくても同様の効果が得られる可能性があります。
もちろん、コーヒーに対する覚醒効果のイメージがない場合には、プラシーボ効果がない可能性があります。
この示唆による懸念は、いわゆる“デカフェ”のコーヒーですが、プラシーボ効果により覚醒してしまい、折角の“デカフェ”が意味をなさない可能性もある、という点が指摘できます。)

そして、コーヒーのことを考えるだけでも覚醒効果がある

別の複数大学の研究チームは、コーヒーに対する想起と覚醒効果について調査を行いました。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1053810018303350

複数の調査が行われているのですが、例えばコーヒーのことを考えた場合に、自己申告または心拍数が向上、つまりは生理的な覚醒度があがることが示されました。

これは、紅茶のことを考えたり思い出したりする場合に比べて、コーヒーの方が覚醒効果が高いことから、抱いているイメージ、心理的な早期が生理的に作用することを示唆しています。
(紅茶にもカフェインが多く含まれており、コーヒーと同様に覚醒効果があるのですが、一般的には頭をスッキリさせるならばコーヒー、紅茶にはそのような効果がない、とイメージされている。)

また、文化圏による差も出るようです。
コーヒー文化圏の出身者には上述の効果があるものの、そうではない主にアジア圏の被験者には、コーヒーを想起することによる覚醒効果は弱い、ないしは見られないことも示されました。

上の段落のメモで、紅茶や日本茶にも覚醒効果があるとイメージを持っている人の場合~~~、と記載しましたが、この研究により、「覚醒効果に対するイメージ」が影響することがわかります。
つまり、紅茶や日本茶に対して覚醒効果のイメージを強く抱いているならば、コーヒーに限らなくてもプラシーボ効果があると考えられます。
同様に、“デカフェ”に対する懸念が強まったとも言えます。


これらの研究は、人の身体は心理的な影響を強く受ける、ということを示しています。

コーヒーによる覚醒効果を高めたい場合、その覚醒効果をイメージしながら飲むと、より効果が高まるかもしれません。
そしてそれはコーヒーに限らず、紅茶や日本茶などの、同様にカフェインが多く含まれている飲料でも同じな可能性があります。

また、“デカフェ”に対する懸念もそうです。
夜、ぐっすりと寝たいならば“デカフェ”であっても避けた方が良いかもしれません。

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