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広告換算値を追うな!~広報(PR)のKPIの考え方~

PR効果を測定する上で良く話題にあがる指標が広告換算値。
PR関係者は必ず触れる事になる指標ですが、近年は広報(PR)が採用するKPIとしては相応しくない、という意見が多いです。
今回は広告換算値について考えていきます。

こちらの記事も併せて参照ください。

広告換算値とは

広告換算値概要

何かしらのメディア媒体に露出した際に、どれだけのPR効果があったのか?はPR担当者としても、経営者としても知りたいところです。
しかしながら、PR効果というものは、決算書のような具体の数字で出せる類の数字では、当然にありません。

そこで登場したのが広告換算値です。

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、各種WEB・SNSメディア。

このような各種メディア上で取り上げられた際、仮に同様の尺や枠を購入・出稿した場合に、要した広告費の金額をPR効果の代替として用いるのが広告換算値です。
ようは、「何かメディアに取り上げられたぞ。仮に自分達が広告費払ったとしたらこれくらいの費用がかかったはずだぞ。ひゃっはー!」というのが広告換算値ですね。

広告換算値のメリット

まず、上述したようにPR効果というものは大前提として測定しづらい、という性質を持っています。

何かしらの広告を打ったとして、売上高であったり、コンバージョンレートが改善したり、とかとか、具体の成果っぽい指標が存在するわけですが。
これらの指標は、何も広告だけで変化・改善するわけではありませんね。
つまり、広告の直接的な効果を測るのは難しいのです。

また、記事のPVや露出したテレビの視聴率(から換算される視聴者数)を成果として考える方法もあるかと思いますが。
メディア毎に、当然にメディアの価値も異なるわけで、そのPV・流入数を同じ軸で測って良いのか?という問題があります。

その意味で、「仮に同様の尺・枠を購入したとしたら、いくらの広告宣伝費を要したのか?」をPR効果の指標として採用するのは、一定の合理性があるのです。
広告の直接的な効果を測れると共に、その効果を具体の金額で示す事ができますので。

(参考)広告換算値の算出方法概要

参考程度に広告換算値の算出方法について、概要を説明します。

なお、広告換算値のロジックはメディア毎に異なりますし、PR担当者によっても異なるので、共通言語として語るのは微妙に難しかったりします。
(まぁ、PR系の方々で、そのような曖昧性を気にする方も少ないですけれどね。)

新聞・雑誌:媒体毎の広告出稿料金があるので、それをベースに算出。

テレビ:15秒CMの出稿料金(スポットCM料金単価)をベースに算出(放映の時間帯に応じたA帯~C帯というものがあり、またそこから露出時間を考慮して計算する)。

ラジオ:スポットCM料金単価をベースに露出時間を考慮して算出。

WEBメディア:媒体毎にロジックが大きく異なる。PVをベースに、TOP広告の単価で算出していく、というのが基本。統計的な処理を施す場合も多い。

広告換算値の問題

さて、広告換算値にはいくつかの問題があります。

代表的な所としては次のようなものです。

  • 広告単価が入手できないと算出ができない
  • 広告はコンテンツやデザインなど自分達の意志を込められるが、メディアに取り上げられる場合はコントロール不能な場合が多い
  • 特にWEBメディア,SNSの算出のバーチャル性の高さ(ほぼほぼ無意味)

しかし、これらは問題の一部です。

冒頭で書いたのですが、広告換算値は近年は広報(PR)が採用するKPIとしては相応しくない、という意見が多いです。

それは何故か?

結論、広告換算値はあくまでも「換算効果」をバーチャルに示したものに過ぎず、「成果」を測定したものでは無いからです。

つまり、仮説としてのコストに着目したものであって、価値に目が向けられていない。

PRとは「パブリックリレーションズ(Public Relations)」の略です。
パブリックに働きかけて、何かしらの行動変容を起こしてもらい、なんぼの仕事と言えます。

PRの役割は、単純に情報を広く発信する(広報)ことではなく、「外部との関係性構築」にあるのだから、コミュニケーションのアウトカム(成果)を測定した方が良い、もっと言うとアウトカムにも縛られない社会への影響力も考慮した方が良い、という事ですね。


冒頭提示した「広報(PR)のKPIの考え方 」においても触れたバルセロナ原則ですが、このバルセロナ原則においても広告換算値はPRにおいて有効では無いとされています。

バルセロナ原則2.0「7つの原則」

  1. ゴールの設定と効果測定はコミュニケーションとPRにとって重要である。
  2. アウトプットだけの測定よりも、むしろコミュニケーションのアウトカムを測定することが推奨される。
  3. 組織のパフォーマンスへの効果は測定可能であり、可能な限り測定すべきである。
  4. 量と質を測定・評価すべきである。
  5. 広告換算値はコミュニケーションの価値ではない。
  6. ソーシャルメディアは他のメディアチャネルとともに測定可能であり、測定すべきである。
  7. 測定および評価は、透明性があり、一貫性があり、有効なものであるべきである。

以上、広告換算値と、広告換算値が現代のPR(広報)のKPIとして如何に相応しく無いか、について見てきました。

広告換算値は、リーチ、という観点では決して的外れな指標では無いので、今後も活用され続けていく事は確かでしょう。
しかし重要なのは、何のためのPR活動なのか?という点にあります。
つまり、目的とゴールの明確化ですね。

PRのKPI設定と測定は非常に難しいものがありますが、設定した目的と明確化したゴールに沿って、取り組んできた施策の検証と効果測定を自社なりに模索するのが本質的な形と言えるでしょう。

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経営企画

サブスクリプションの管理会計~演習問題解答解説~

今回は、「サブスクリプションの管理会計~演習問題~」の解答および解説になります。

演習問題はこちらになります。

解答解説①

「サブスクリプション・ビジネス」の理解について、最も正確で無いものを1つ選択してください。

  1. サブスクリプションとは、定期購入の意味である
  2. サブスクリプションビジネスにおいて、顧客の体験価値を高める事は重要である
  3. 良い製品を作りさえすれば、サブスクリプションビジネスは成功する
  4. 企業にとって、毎月の費用がわかりやすく、また変動費化できる点もBtoBサブスクリプションサービス導入の動機になっている
  5. 正確で無いものは一つもない

正解は「3.良い製品を作りさえすれば、サブスクリプションビジネスは成功する」です。

良い製品でなければ成功確度が下がるのは確かですが、良い製品であれば成功するか?と考えれば、別にサブスクリプション・ビジネスに限らす、そうではない事がわかります。

サブスクリプション・ビジネスにおいて、最も大事なのは「顧客の成功:カスタマーサクセス」を通じた顧客との関係性構築にあります。

そのため、良い製品であることは前提としつつ、カスタマーサクセスにつながる様々な活動(オンボーディングやサポート、各種コンサルティング等)に取り組んでいく事が必要です。

別の観点で言うと、「良い製品を作れば成功する(売れる)」という考えは今の時代、大前提として非常に危険です。
この発想(プロダクト・アウトの発想)により、日本企業の多くが諸外国に追い抜かれ、現状、遅れをとっている状況に陥っています。

解答解説②

「THE MODEL」の理解について、最も正確なものを1つ選択してください。

  1. THE MODELはどのようなサブスクリプションビジネスにおいても適用できる万能性の高い手法である
  2. THE MODELロールにおいては、各部署が自部署KPIの最大化を図れば、ビジネスは成功する
  3. カスタマーサクセスの至上目的は解約率(チャーンレート)を下げる事である
  4. マーケティングは、大量にリードを確保し、次工程に渡す事が重要である
  5. 正確な理解は一つもない

正解は「5.正確な理解は一つもない」です。

THE MODELロールは、主にSMB(スモールビジネス)において有効性の高い、また再現性の高い手法です。
つまりエンタープライズ(大企業)向けサービスにおいては適合性が大きく下がります。
また、サブスクリプション・ビジネスと一口に言っても様々なサービスが存在しており、例えSMB向けであったとしても、一様にTHE MODELロールが通用するとは限りません。
あくまでも、自社にとって最適な手法にカスタマイズ、模索することが必要です。

自部署KPIの追求はある側面において重要ではありますが、それだけではいけません。
質の悪いリードを大量に渡されてもセールス部門は困りますね。
部分最適化に陥らないよう、あくまでも全社単位での最適化、KPIの最適化が必要です。

カスタマーサクセスの至上目的はカスタマーサクセスです(まぁ、人によって考え方は違うかもですが)。
解約率(チャーンレート)の低減は、詰まる所、カスタマーサクセスの結果として生じる現象です。
チャーンレート低減は重要ですが、ここは決して目的ではありません。

上述した通り、質の悪いリードを大量に渡されてもセールス部門は困ります。
質の良いリード(商談設定率や契約確度の高いリード、さらに言うと長期的に取引してくれそうなリード)を確保し、次工程に渡していく事が求められます。
もっとも上流工程にいるため、全体感を持って、全体施策の最適化を行う役目も一側面としてはあります。

解答解説③

MRRの定義は?正しいものを1つ選択してください。

  1. 年間定額収益
  2. 月間定額収益
  3. 平均顧客単価
  4. 顧客生涯収益
  5. どれも正しくない

正解は、「2.月間定額収益」ですね。

MRRはMonthly Recurring Revenue:月次収益,月間定額収益の略です。

用語略語の意味をしっかりと理解し覚えていきましょう。

解答解説④

リードを獲得するためのコスト、CPA/CPLに関係する会計科目として適切で無いものは?最も正確で無いものを1つ選択してください。

  1. 売上原価
  2. 人件費
  3. 広告宣伝費
  4. システム利用料
  5. 正確な勘定科目は一つもない

正解は「1.売上原価」です。

CPL(リードを確保するのに必要な費用)ですが、まず代表格としては「広告宣伝費」があります。
SNS/WEBマーケティングを中心に、雑誌や展示会等々、様々な広告手法により認知度を高めリードを確保していきます。

そして、それらの活動を行うにあたって人やシステムが必要であり「人件費」「システム利用料」といった費用がかかってきます。

売上原価は、実際に成約(契約)がとれた後、実際にサービスを提供していく段階になって計上されていく費用科目ですね。

解答解説⑤

Payback Periodsの理解について、正しいものを選んで下さい。

  1. 大きい方が良い
  2. 小さい方が良い
  3. 数字の適切な目安はものにより異なるので、良い悪いはない

正解は「2.小さい方が良い」です。

Payback PeriodsはCACを回収できるまでに必要な期間です。
当たり前ですが、コストをかければかけるほど顧客を獲得するのが容易となり、またかけたコスト(投資)の回収は困難になります。
つまり、Payback Periodが短ければ短いほど、投資回収は容易である事、逆に長ければ長いほど困難になります。

解答解説⑥

Churn Rateの理解について、正しく無いものを1つ選択してください。

  1. 初期導入のお手伝い(オンボーディングやトレーニング)は重要なアクションである
  2. 旧来のコールセンター(カスタマーサポート)も、チャーンレート低減のための重要な役割である
  3. チャーンレートを下げるために、契約やサービス画面の設計で、解約し辛いものにする
  4. チャーンレートは0以下にできる
  5. 正しく無いものは一つもない

正解は「3.チャーンレートを下げるために、契約やサービス画面の設計で、解約し辛いものにする」です。

大前提として。
もし、「チャーンレートを下げるために、解約し辛いようにしてしまおう!」という発想をしているのであれば、早々にその考えを改めた方が良いでしょう。

自分自身の事を考えてみればわかると思うのですが、もう解約したい、というサービスがあったとして、どうやったら解約できるのか、サービスの管理画面やHPを見てもよくわからない。
わかったとしても、その方法がコールセンター(しかも、平日日中しか受け付けていない)への架電での依頼だとしたら、非常に面倒でイライラしませんか?
酷い場合だと、解約専用の電話番号が海外で、言葉がうまく通じず、一向に解約できない、というサービスも存在します。

普通に考えたら、このような目にあったら、そのもう解約しようとしているサービスに対して、憎悪の念を抱く、とわかるはずです。
解約し辛いようにする、という発想は非常に浅ましいものなので、早々に改めましょう。

なお、チャーンレートの中でのネット・チャーンは0以下にすることができ、この状況を「ネガティブ・チャーン」と言います。
KPI解説も参考にしてください。

解答解説⑦

LTV/CAC(ユニットエコノミクス)の理解について、正しいものを選んで下さい。

  1. 大きい方が良い
  2. 小さい方が良い
  3. 数字の適切な目安はものにより異なるので、良い悪いはない

正解は「1.大きい方が良い」です。

ユニットエコノミクスは事業の経済性(収益性)を経済ユニット単位で示したものです。

まず、LTVは、一顧客が、取引期間を通じて企業にもたらす利益の総額でしたね。
そのため大きければ大きい方が良く、またCACはようはコストなので小さければ小さい方が良いです。

つまり、LTV/CACは大きければ大きい方が良い、という事になります。

数値の目安としては、経験則でしか無いのですが、「ユニットエコノミクス > 3」が望ましいとされています。


演習問題の⑧と⑨は自由回答方式なので、別に明確な答えが存在するものではありません。
(そのため、解説的なものは省略します。)

ポイント的なものをあえて解説するのならば、「自社のビジネスを良くするために、どうしていくか?」という、視点が必要、という事です。

日々忙しいと目の前のタスクに埋もれがちです。
日々のタスクは重要ではあるのですが、こういう何かを考えるタイミングでは、もっとマクロ的な視点で「どうあるべきか?」を考え、テキストとしてまとめるのが良いでしょう。

最終的にタスクに落とし込む段階では「どうあるべきか?(何をやるべきか?)」「自分達(もしくは自分自身個人)がやれることは何か?」「自分達(もしくは自分自身個人)がやりたいことは何か?」が極力重なっている領域にフォーカスしていくことが重要です。

自社の課題を整理した上で、マクロ的にどうしていけばよいか?につなげ、最終的に個人レベルのタスクに落とし込めれば、この種の演習としては満点と言えるでしょう。

演習問題⑧
自社のビジネス(サブスクリプション系と想定する)において、あなたがTHE MODELにおける一連のKPIを「最適化」に取り組むとしたら、どのような事に取り組みますか?(自由回答方式)

演習問題⑨
自社のビジネス(サブスクリプション系と想定する)において、カスタマーサクセスの観点で問題だと思う事は何ですか?(自由回答方式)

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経営企画

サブスクリプションの管理会計~演習問題~

サブスクリプションの管理会計に対する理解度確認用の演習問題です。
解答および解説は次回に行います。

演習問題①

「サブスクリプション・ビジネス」の理解について、最も正確で無いものを1つ選択してください。

  1. サブスクリプションとは、定期購入の意味である
  2. サブスクリプションビジネスにおいて、顧客の体験価値を高める事は重要である
  3. 良い製品を作りさえすれば、サブスクリプションビジネスは成功する
  4. 企業にとって、毎月の費用がわかりやすく、また変動費化できる点もBtoBサブスクリプションサービス導入の動機になっている
  5. 正確で無いものは一つもない

演習問題②

「THE MODEL」の理解について、最も正確なものを1つ選択してください。

  1. THE MODELはどのようなサブスクリプションビジネスにおいても適用できる万能性の高い手法である
  2. THE MODELロールにおいては、各部署が自部署KPIの最大化を図れば、ビジネスは成功する
  3. カスタマーサクセスの至上目的は解約率(チャーンレート)を下げる事である
  4. マーケティングは、大量にリードを確保し、次工程に渡す事が重要である
  5. 正確な理解は一つもない

演習問題③

MRRの定義は?正しいものを1つ選択してください。

  1. 年間定額収益
  2. 月間定額収益
  3. 平均顧客単価
  4. 顧客生涯収益
  5. どれも正しくない

演習問題④

リードを獲得するためのコスト、CPA/CPLに関係する会計科目として適切で無いものは?最も正確で無いものを1つ選択してください。

  1. 売上原価
  2. 人件費
  3. 広告宣伝費
  4. システム利用料
  5. 正確な勘定科目は一つもない

演習問題⑤

Payback Periodsの理解について、正しいものを選んで下さい。

  1. 大きい方が良い
  2. 小さい方が良い
  3. 数字の適切な目安はものにより異なるので、良い悪いはない

演習問題⑥

Churn Rateの理解について、正しく無いものを1つ選択してください。

  1. 初期導入のお手伝い(オンボーディングやトレーニング)は重要なアクションである
  2. 旧来のコールセンター(カスタマーサポート)も、チャーンレート低減のための重要な役割である
  3. チャーンレートを下げるために、契約やサービス画面の設計で、解約し辛いものにする
  4. チャーンレートは0以下にできる
  5. 正しく無いものは一つもない

演習問題⑦

LTV/CAC(ユニットエコノミクス)の理解について、正しいものを選んで下さい。

  1. 大きい方が良い
  2. 小さい方が良い
  3. 数字の適切な目安はものにより異なるので、良い悪いはない

演習問題⑧

自社のビジネス(サブスクリプション系と想定する)において、あなたがTHE MODELにおける一連のKPIを「最適化」に取り組むとしたら、どのような事に取り組みますか?(自由回答方式)

演習問題⑨

自社のビジネス(サブスクリプション系と想定する)において、カスタマーサクセスの観点で問題だと思う事は何ですか?(自由回答方式)


解答および解説は次回に行います。

上記演習問題利用したい場合は自由にご利用ください。
カスタマイズもご自由に行ってください。

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営業

インサイドセールスにおいて行動量が大事な理由

インサイドセールスには様々なKPIを設定し得ます。
そのような中、どのような組織においても共通的に設定できるKPIが1つあります。
それが行動量です。
今回は、インサイドセールスにおける行動量について補足します。

インサイドセールスについては、こちらの記事も参照してください。

インサイドセールスのKPI

インサイドセールスの基本的KPIは有効商談化率です。

この有効商談化率を高めるためのナーチャリング手法やクオリフィケーションの考え方に基づいて、細かいKPIを会社毎に設計していく形になります。

オウンドメディア/SNSであれば、流入数やそこからのコンバージョン・レート
メルマガであれば、開封率クリック率
ホワイトペーパーDLであれば、DL率(コンバージョン・レート)。
セミナー/ウェビナーであれば、フォロー架電の継続率

こういったものです。

とは言え、一つ、確実に設定できる共通的なKPIがあります。

それは、行動量です。

インサイドセールスの役割は、大量のリードに対して、ナーチャリングなりクオリフィケーションなりで、マーケティングに戻したり、クロージング担当にパスしたりする事です。
このプロセスに必要な重要な事は、圧倒的な行動量です。

この行動量を施策毎に最大化・最適化していく事は、どのような形でインサイドセールス体制を構築しようが、避けてはいけない目標となります。

リードにコンタクトできる時間、という制約

さて、上記はインサイドセールスについて解説した記事の再掲となります。

もう一つ、別の観点で行動量が大切な理由を説明します。

「THE MODEL」からの抜粋です。

そもそもインサイドセールスの仕事は時間が限定される。
リードにコンタクトするのに、早朝や深夜に連絡するわけにはいかないからだ。

常識的な範囲としては朝9時から夕方6時位までと考えるべきだろう。
そのうち昼食の時間を避けるとすると、1日8時間、週5日と言う時間的制約の中で最大限の成果を出さなければならない。
営業であれば、件数を負わずとも金額の大きな商談を受注することでカバーできるが、インサイドセールスはそうはいかない。
金額をコントロールするのは営業なので、数を重視するしかない。
一見あたりにかける時間を30分と仮定すると、1週間で8時間× 5日× 2の80コマをどう使うかというタイムマネジメントの勝負になる。

つまりどれだけ業務効率を上げられるかが成果に直結するのがインサイドセールスなのだ。  

福田康隆著「THE MODEL」(P95)より

こちらにある通り、仮に無制限に時間を使えるとしたとしても、見込顧客、リードはそうではありません。

常識的な範囲内として、平日日中のお昼時を除く、8時時間の範囲内がコンタクト可能な時間です。

つまり、このコンタクト可能な時間を最大限に活用する必要があるのです。

インサイドセールス人員を管理監督する人員を1名設置し(マネージャー職が相当するであろう、営業企画機能を別に設けるか、このマネージャー職が行うかも要検討)、その管理監督者の元、インサイドセールス・メンバー全員が、ただひたすらにリードにコンタクトをとる。

こういった体制を如何に構築できるか、が重要です。


① そもそもとして行動量がパフォーマンス向上につながるのがインサイドセールスのKPIの特徴
② リードの時間的制約がある以上、その範囲内で行動量を最大化する必要がある

この2点の理由から、インサイドセールスにおいて、行動量が最も大事であると言えます。

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経営企画

KPI設定・運用の間違い,失敗パターン10

KPI設定は重要で、非常に多くの会社が実際にKPIを設定し、その運用と改善に取り組んでいます。
しかし同時に、多くのKPI設定・運用の間違いや失敗も目にします。
今回は、KPI設定・運用のよくある間違いパターンを10個紹介します。

KPIが多すぎ問題

よくあるKPI設定の間違いパターンの1つが、KPI多すぎ問題です。

KPIの設定自体は、非常に重要でやった方が当然に良いのですが、多すぎると弊害が出てきます。

まず、マネジメントするのが大変です。
適切に測定し、日々のトラッキングを行っていく。
これはマネージャーのみならず、メンバーにとっても結構なマネジメント・コストがかかるので、部門運営コストが高くなります。

また、メンバーにとっても、追いかけなければいけないKPIが増えると、労力の増大もそうですし、業務の柔軟性の低下などが起きます。
そもそもとして、スキル水準が低いメンバーの場合、複数のKPIを同時に追いかける事が不可能な場合もあります。

部署としてどれだけのKPIを追いかけ、管理ができるのか。
重要なKPIに絞る事が肝要です。

可能であれば、「これさえ追いかければ良い!」というKPIに絞る、つまり1つのKPI設定に絞るのが最高です。

KPI測定しにくい問題

KPIの測定が難しい場合も、よくある失敗例です。

例えば、コールセンターを設置したとして、平均通話時間や、平均応答速度を測定したいとします。

これは、指標の計算などはシンプルでわかりやすいのですが、人力で測定しようとすると、ほぼほぼ無理ゲーになります。
コールセンター用の専用システムを導入する事が、KPI管理上、必須になってきます。
人力の場合、100%間違えますし、その測定コストだけで専用システム費用を賄える場合もあります。

他には、例えば人事部門として、部下との面談時間を各部門マネージャーにKPIとして課したとします。
こちらも、高い確率で虚偽報告が入ります。

このような、測定に困難性が伴うKPIは、むしろ設定しない方が良いです。

設定をするのならば、測定が簡単なものにしましょう。
上記例の場合、単純に対応件数に絞るとか、面談シートの提出率にするとかが、簡易かつ、KPIの水準をあげていくためのステップアップにつながるため、入り口の工夫としては考えられます。

KPI達成が難しすぎ問題

最近の、経営者やマネージャーがしっかり勉強している会社だと、あまり見なくなってきたのですが、それでもまだまだあるのが、達成するの無理じゃねKPIの存在です。

わかりやすい例ですと、明らかに達成が困難な営業目標の設定ですね。

これは、マネージャー含めて従業員のモチベーションを明らかに下げますし、不正につながる場合もあります。
(達成困難な目標を背景に、不正が起きた、というのは全く珍しくなく、あちらこちらで飽きる程聞きます。)

他には、食品業界における事故発生率0%、toCビジネスにおけるクレーム発生率0%などの、100%達成不可能なKPI設定などもあげられます。

取り組みのコストが無制限にかかってしまいますし、1件でも発生した段階でKPI達成が失敗、という状態になるので(従業員に、KPI達成しなくて良いんだね、という誤ったメッセージを送ることになる)、「マインドセット」としては0件達成を目標にするのは良いですが、KPI設定として、この種のものを設定するのは絶対に避けなければいけません。

この種の派生形として、KPI設定の段階で、前年の120%で行こう、的に根拠なく数字の上乗せが来るパターンがあります。
「昨年度は、年間で一人100件の成約がとれたから、今年は120件の成約を取りに行こう。月当たり2件程度増やせば良いだけだから簡単だよね!」的な。
この考えでKPIを設定していくと、いつか絶対に破綻が起きる事は、重々承知してください。

KGIにつながらない問題

これもまた、よくあるパターンです。

ようは、そのKPIを達成したとして、業績の向上につながらない、というパターンですね。

営業部門において、架電件数をKPIに設定したとします(そもそも、行動指標である架電件数をKPIに設定するのが良いのかは、脇に置く)。

この場合、架電件数“だけ”は達成して、実際の成約には結びつかない、というパターンは全く珍しい話ではありません。

他には、マーケティング部門における見込顧客数(リード数)の獲得もです。
質の悪いリードを渡されても、営業部門が疲弊するだけ、というのはよくある光景です。
(リード獲得を成功報酬として、広告宣伝費投資行った結果として、業者が質の悪いリードを大量に持ってくる、という事もありますね。)

この種のパターンが起きる要因として、経営者やマネージャーのKPIに対する理解が浅いという事もよくあるのですが、一番の要因は、自社の成功要因、つまりKFS(Key Factor for Success:もしくはKSFと言う場合も)がわかっていない場合です。

どのようなアクションや、どういう傾向の数字が出ていれば、自社の業績貢献につながるのか。
これがわかっていなければ、そもそもKPIの設定がしようが無いのですね。

何よりもまず、自社の業績貢献につながる要因は何なのか、これを明確化する事が重要です(仮説でも良いんですよ!経営は永遠の仮説検証です)。

この種の派生形として、KPIが時代や状況の変化に対応していない、というパターンもあります。
例えば、先進的な商品/サービスを開発し、顧客を独占的に確保しているステージでは、新規顧客獲得数は重要なKPIだったでしょう。
しかし、競合がどんどん誕生しているようなステージになると、解約率や顧客満足度のような指標を重要KPIとして検討していく事も必要です。もしかしたら、再契約率が重要かもしれません。
時代、顧客、会社を取り巻く環境、そういったものを良く観察し、分析を行い続ける事が肝要だ、という事ですね。

視野狭い問題

視野が狭い、目先の利益しか考えていない。

こういうのは、一個人にあたはまる話だけでなく、会社組織にもよくあてはまります。
このパターンの上記「KGIにつながらない問題」との違いは、こちらはKGIへの貢献度が高いKPIを設定していても、同時にKGIにマイナス影響がある要素があり、それが目に見えていない、という状況ですね。

例えば、事業部門で売上に関係する指標を最重要として設定し、売上を伸ばしたとします。
しかし、顧客フォローが不十分で、顧客離れが増加していったとしたら、いつかは売上増より売上減の方が大きくなるでしょう。

他には、KPIの達成のために人員を増やしたとして、効率は全く改善していない、というような光景もよく目にします。

蟻の目、鷹の目、魚の目、と言いますが、フォーカスする範囲を狭くしたり広げたり、場合によってはフォーカスするのを変えたりしながら、本当に今の状態が正しいのか?を考える事が必要です。

丸投げ問題

KPIって重要だよね!と言い、その設定や管理をマネージャーに丸投げする経営者。
もしくはマネージャーがメンバーに丸投げする事も。

当たり前ですが、そんな事をやっていて、KPI運用がうまくいくわけがありません。

トップ自らが、KPI運用を成功させる姿勢を見せ、そして行動に移す事が重要です。

  • 会社として目指すべき方向性やポリシーを明確化する(ポリシー)
  • 定期的なKPIトラッキングの会議を設定する(PDCA)
  • 適切な予算を各部署に割り当てる(予算)

このような、ポリシー、PDCA、予算の3点セットを会社として、きちんと提供するようにしましょう。
これが経営ができるKPI運用のための具体の姿勢と行動です。

本気度が低かったり、予算が適切でない場合。
KPIを経営側が見れるようになるのが非常に遅くなる事が珍しくありません。
正確で無いことも多くなります。
事実上の遅行指標になってしまったKPIは、変化の早い今の時代、役立たずとしか言いようがありません。
やるなら本気で、やれる範囲内でリアルタイムに、正確にとれるKPI運用を考えましょう。

KPI押し付け問題

上記「丸投げ問題」とは逆のパターンです。

関係者間で合意を取らずに、経営者や経営企画などが押し付けたKPI。
これは達成確度が著しく低下します。

実際に業務を行う担当部門とその責任者をはじめ、関係者間で明確にKPIに対する合意を取っておく必要があります。

また、KPIに対する認識に相違がある場合も珍しくないので(KPI自体の定義や測定方法、達成のスケジュール感や温度感)、その辺りも曖昧にせずに明確にすり合わせた方が良いでしょう。

とは言え、現場の声を聞きすぎて、成長を鈍化させる、という事がおきては本末転倒です。

「会社の目標として、大枠でこれだけの成長を行う必要がある。そのために各部署に割り振るKGIはこうだ。このKGIを達成するための具体のKPIとKAIを検討し、ぶつけてきて欲しい。」

一定、会社としての姿勢は示しつつ、その中で各部署で自立して設定し動けるようなコミュニケーションを取る事が必要です。

なお、よく聞く話として、自分達で決めた事ならば、反発が少なく達成に向けて自主的に行動しやすい、とありますが、これ間違いです。
状況が悪くなり、達成が困難になると、結局「元々達成が困難なKPIだった」とか「状況が変わったので、KPIをリセットして考える」とかなります。
必要なのは「合意」と「達成に向けた働きかけ」です。
色々なエクスキューズ(言い訳)が出てきた時、「では、達成するためには何が必要で、どのような行動にでるべきであろうか?」というコミュニケーションを取っていく事が重要です。

コントロール不能問題

「KPI達成が難しすぎ問題」にも近しいのですが、こちらは、そもそもとしてコントロール不能案件を指しています。

例えば、チェーン経営している飲食店で、コスト削減をしよう、というような話が起きたとします。
この時、お店側にできる事と言えば、極力少ない人員でお店を運営する事や、食材のロスが起きないような管理や調理技術の向上、水や電気の節約、といった事に絞られます。
会社が、メニューや各種備品・消耗品の仕様を決めていて、お店側に決定権が無い場合や、店舗減価償却費や家賃のような、そもそもとして削減がほぼ不可能なものは、削減不可能、つまりコントロール不能と言えます。

このようなコントロール不能な領域まで含めてKPIに設定すると、目標自体が曖昧になりますし、KPI達成のための行動もバラけたりします。

あくまでもコントロール可能な領域に限定してKPIを設定する事が必須です。

人口動態(商圏内の人口)や、感染症関連での顧客動向、競合の動向、各種固定費、権限外の事象、予算的に不可能なもの。
こういったものが、コントロール不能なものです。

他には、例えばメンバーの力量含めて成熟した営業部門があったとします。
売上は、商談数×成約率×価格で決まりますが(この内、価格はコントロール不能性が高い)、仮に商談数や成約率が、理論・現実的にほぼほぼ限界値に達していたとしたら、これ以上のKPI向上はコントロール不能と言えます(類似の「KPI達成が難しすぎ問題」は、できるっちゃできるけれど難しいよね、という話)。

このような状況にある組織の場合、そもそもとして別のアプローチを探る必要があります。

給料あがらない問題

これもまぁ、よくあるパターンです。

KPIをどれだけ達成しても、自分達の給料に反映されない。
そうなると、シンプルにモチベーションがあがりませんね。

目標を達成したのであれば、何かしらの追加報酬が発生する、という仕組みは一定必要です。
(やり過ぎは良くないです。既得権益化すると、報酬によるモチベーション向上施策は効果を発揮しなくなります。)

会社の業績やトータルの予算的に、そう給料単価をあげる事が難しいという状況もあるでしょう。
この場合でも、ストックオプションによる人参ぶら下げや(そんなに効果無いよね、とはよく聞きますが)、日々のチームマネジメントの中での達成意欲の醸成など、別の切り口でのモチベーション向上は工夫した方が良いでしょう。

場合によっては、未達成における罰(叱責等)を設定する事も必要です。
(退職率の向上等のデメリットは起きますが。)

後のこと考えていない問題

やれると思っていて、蓋をあけてみたら実際は達成困難だった。
期中で環境が激変し、KPI管理も何もなくなった。
等々、想定していた通りに物事が推移しないのが経営の現実です。

適切なリスクヘッジ策を事前に準備しておければベストです。

それが難しい場合は、緊急事態体制に移行する事を決めておいて、迅速に次善策を練れるような取り決めをしておきましょう。
(CFOなのかCEOなのか、最終責任者を決めておくのも重要です。)

例えば、変動費性・コントロール可能性が高い費用項目・投資項目を明確化しておいた企業は、今回の新型コロナウイルス影響下において、迅速なコストコントロールを実行できています。


以上、「KPI設定・運用の間違い,失敗パターン10」を見ていきました。

これらは、言われればそうだよね、というような話ばかりなのですが、現実として発生してしまうものです。

定期的に、自分達の状況がどうなのか、振り替える癖を身に着けておくと良いですね。

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