KPI設定・運用の間違い,失敗パターン10

経営企画

KPI設定は重要で、非常に多くの会社が実際にKPIを設定し、その運用と改善に取り組んでいます。
しかし同時に、多くのKPI設定・運用の間違いや失敗も目にします。
今回は、KPI設定・運用のよくある間違いパターンを10個紹介します。

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KPIが多すぎ問題

よくあるKPI設定の間違いパターンの1つが、KPI多すぎ問題です。

KPIの設定自体は、非常に重要でやった方が当然に良いのですが、多すぎると弊害が出てきます。

まず、マネジメントするのが大変です。
適切に測定し、日々のトラッキングを行っていく。
これはマネージャーのみならず、メンバーにとっても結構なマネジメント・コストがかかるので、部門運営コストが高くなります。

また、メンバーにとっても、追いかけなければいけないKPIが増えると、労力の増大もそうですし、業務の柔軟性の低下などが起きます。
そもそもとして、スキル水準が低いメンバーの場合、複数のKPIを同時に追いかける事が不可能な場合もあります。

部署としてどれだけのKPIを追いかけ、管理ができるのか。
重要なKPIに絞る事が肝要です。

可能であれば、「これさえ追いかければ良い!」というKPIに絞る、つまり1つのKPI設定に絞るのが最高です。

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KPI測定しにくい問題

KPIの測定が難しい場合も、よくある失敗例です。

例えば、コールセンターを設置したとして、平均通話時間や、平均応答速度を測定したいとします。

これは、指標の計算などはシンプルでわかりやすいのですが、人力で測定しようとすると、ほぼほぼ無理ゲーになります。
コールセンター用の専用システムを導入する事が、KPI管理上、必須になってきます。
人力の場合、100%間違えますし、その測定コストだけで専用システム費用を賄える場合もあります。

他には、例えば人事部門として、部下との面談時間を各部門マネージャーにKPIとして課したとします。
こちらも、高い確率で虚偽報告が入ります。

このような、測定に困難性が伴うKPIは、むしろ設定しない方が良いです。

設定をするのならば、測定が簡単なものにしましょう。
上記例の場合、単純に対応件数に絞るとか、面談シートの提出率にするとかが、簡易かつ、KPIの水準をあげていくためのステップアップにつながるため、入り口の工夫としては考えられます。

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KPI達成が難しすぎ問題

最近の、経営者やマネージャーがしっかり勉強している会社だと、あまり見なくなってきたのですが、それでもまだまだあるのが、達成するの無理じゃねKPIの存在です。

わかりやすい例ですと、明らかに達成が困難な営業目標の設定ですね。

これは、マネージャー含めて従業員のモチベーションを明らかに下げますし、不正につながる場合もあります。
(達成困難な目標を背景に、不正が起きた、というのは全く珍しくなく、あちらこちらで飽きる程聞きます。)

他には、食品業界における事故発生率0%、toCビジネスにおけるクレーム発生率0%などの、100%達成不可能なKPI設定などもあげられます。

取り組みのコストが無制限にかかってしまいますし、1件でも発生した段階でKPI達成が失敗、という状態になるので(従業員に、KPI達成しなくて良いんだね、という誤ったメッセージを送ることになる)、「マインドセット」としては0件達成を目標にするのは良いですが、KPI設定として、この種のものを設定するのは絶対に避けなければいけません。

この種の派生形として、KPI設定の段階で、前年の120%で行こう、的に根拠なく数字の上乗せが来るパターンがあります。
「昨年度は、年間で一人100件の成約がとれたから、今年は120件の成約を取りに行こう。月当たり2件程度増やせば良いだけだから簡単だよね!」的な。
この考えでKPIを設定していくと、いつか絶対に破綻が起きる事は、重々承知してください。

KGIにつながらない問題

これもまた、よくあるパターンです。

ようは、そのKPIを達成したとして、業績の向上につながらない、というパターンですね。

営業部門において、架電件数をKPIに設定したとします(そもそも、行動指標である架電件数をKPIに設定するのが良いのかは、脇に置く)。

この場合、架電件数“だけ”は達成して、実際の成約には結びつかない、というパターンは全く珍しい話ではありません。

他には、マーケティング部門における見込顧客数(リード数)の獲得もです。
質の悪いリードを渡されても、営業部門が疲弊するだけ、というのはよくある光景です。
(リード獲得を成功報酬として、広告宣伝費投資行った結果として、業者が質の悪いリードを大量に持ってくる、という事もありますね。)

この種のパターンが起きる要因として、経営者やマネージャーのKPIに対する理解が浅いという事もよくあるのですが、一番の要因は、自社の成功要因、つまりKFS(Key Factor for Success:もしくはKSFと言う場合も)がわかっていない場合です。

どのようなアクションや、どういう傾向の数字が出ていれば、自社の業績貢献につながるのか。
これがわかっていなければ、そもそもKPIの設定がしようが無いのですね。

何よりもまず、自社の業績貢献につながる要因は何なのか、これを明確化する事が重要です(仮説でも良いんですよ!経営は永遠の仮説検証です)。

この種の派生形として、KPIが時代や状況の変化に対応していない、というパターンもあります。
例えば、先進的な商品/サービスを開発し、顧客を独占的に確保しているステージでは、新規顧客獲得数は重要なKPIだったでしょう。
しかし、競合がどんどん誕生しているようなステージになると、解約率や顧客満足度のような指標を重要KPIとして検討していく事も必要です。もしかしたら、再契約率が重要かもしれません。
時代、顧客、会社を取り巻く環境、そういったものを良く観察し、分析を行い続ける事が肝要だ、という事ですね。

視野狭い問題

視野が狭い、目先の利益しか考えていない。

こういうのは、一個人にあたはまる話だけでなく、会社組織にもよくあてはまります。
このパターンの上記「KGIにつながらない問題」との違いは、こちらはKGIへの貢献度が高いKPIを設定していても、同時にKGIにマイナス影響がある要素があり、それが目に見えていない、という状況ですね。

例えば、事業部門で売上に関係する指標を最重要として設定し、売上を伸ばしたとします。
しかし、顧客フォローが不十分で、顧客離れが増加していったとしたら、いつかは売上増より売上減の方が大きくなるでしょう。

他には、KPIの達成のために人員を増やしたとして、効率は全く改善していない、というような光景もよく目にします。

蟻の目、鷹の目、魚の目、と言いますが、フォーカスする範囲を狭くしたり広げたり、場合によってはフォーカスするのを変えたりしながら、本当に今の状態が正しいのか?を考える事が必要です。

丸投げ問題

KPIって重要だよね!と言い、その設定や管理をマネージャーに丸投げする経営者。
もしくはマネージャーがメンバーに丸投げする事も。

当たり前ですが、そんな事をやっていて、KPI運用がうまくいくわけがありません。

トップ自らが、KPI運用を成功させる姿勢を見せ、そして行動に移す事が重要です。

  • 会社として目指すべき方向性やポリシーを明確化する(ポリシー)
  • 定期的なKPIトラッキングの会議を設定する(PDCA)
  • 適切な予算を各部署に割り当てる(予算)

このような、ポリシー、PDCA、予算の3点セットを会社として、きちんと提供するようにしましょう。
これが経営ができるKPI運用のための具体の姿勢と行動です。

本気度が低かったり、予算が適切でない場合。
KPIを経営側が見れるようになるのが非常に遅くなる事が珍しくありません。
正確で無いことも多くなります。
事実上の遅行指標になってしまったKPIは、変化の早い今の時代、役立たずとしか言いようがありません。
やるなら本気で、やれる範囲内でリアルタイムに、正確にとれるKPI運用を考えましょう。

KPI押し付け問題

上記「丸投げ問題」とは逆のパターンです。

関係者間で合意を取らずに、経営者や経営企画などが押し付けたKPI。
これは達成確度が著しく低下します。

実際に業務を行う担当部門とその責任者をはじめ、関係者間で明確にKPIに対する合意を取っておく必要があります。

また、KPIに対する認識に相違がある場合も珍しくないので(KPI自体の定義や測定方法、達成のスケジュール感や温度感)、その辺りも曖昧にせずに明確にすり合わせた方が良いでしょう。

とは言え、現場の声を聞きすぎて、成長を鈍化させる、という事がおきては本末転倒です。

「会社の目標として、大枠でこれだけの成長を行う必要がある。そのために各部署に割り振るKGIはこうだ。このKGIを達成するための具体のKPIとKAIを検討し、ぶつけてきて欲しい。」

一定、会社としての姿勢は示しつつ、その中で各部署で自立して設定し動けるようなコミュニケーションを取る事が必要です。

なお、よく聞く話として、自分達で決めた事ならば、反発が少なく達成に向けて自主的に行動しやすい、とありますが、これ間違いです。
状況が悪くなり、達成が困難になると、結局「元々達成が困難なKPIだった」とか「状況が変わったので、KPIをリセットして考える」とかなります。
必要なのは「合意」と「達成に向けた働きかけ」です。
色々なエクスキューズ(言い訳)が出てきた時、「では、達成するためには何が必要で、どのような行動にでるべきであろうか?」というコミュニケーションを取っていく事が重要です。

コントロール不能問題

「KPI達成が難しすぎ問題」にも近しいのですが、こちらは、そもそもとしてコントロール不能案件を指しています。

例えば、チェーン経営している飲食店で、コスト削減をしよう、というような話が起きたとします。
この時、お店側にできる事と言えば、極力少ない人員でお店を運営する事や、食材のロスが起きないような管理や調理技術の向上、水や電気の節約、といった事に絞られます。
会社が、メニューや各種備品・消耗品の仕様を決めていて、お店側に決定権が無い場合や、店舗減価償却費や家賃のような、そもそもとして削減がほぼ不可能なものは、削減不可能、つまりコントロール不能と言えます。

このようなコントロール不能な領域まで含めてKPIに設定すると、目標自体が曖昧になりますし、KPI達成のための行動もバラけたりします。

あくまでもコントロール可能な領域に限定してKPIを設定する事が必須です。

人口動態(商圏内の人口)や、感染症関連での顧客動向、競合の動向、各種固定費、権限外の事象、予算的に不可能なもの。
こういったものが、コントロール不能なものです。

他には、例えばメンバーの力量含めて成熟した営業部門があったとします。
売上は、商談数×成約率×価格で決まりますが(この内、価格はコントロール不能性が高い)、仮に商談数や成約率が、理論・現実的にほぼほぼ限界値に達していたとしたら、これ以上のKPI向上はコントロール不能と言えます(類似の「KPI達成が難しすぎ問題」は、できるっちゃできるけれど難しいよね、という話)。

このような状況にある組織の場合、そもそもとして別のアプローチを探る必要があります。

給料あがらない問題

これもまぁ、よくあるパターンです。

KPIをどれだけ達成しても、自分達の給料に反映されない。
そうなると、シンプルにモチベーションがあがりませんね。

目標を達成したのであれば、何かしらの追加報酬が発生する、という仕組みは一定必要です。
(やり過ぎは良くないです。既得権益化すると、報酬によるモチベーション向上施策は効果を発揮しなくなります。)

会社の業績やトータルの予算的に、そう給料単価をあげる事が難しいという状況もあるでしょう。
この場合でも、ストックオプションによる人参ぶら下げや(そんなに効果無いよね、とはよく聞きますが)、日々のチームマネジメントの中での達成意欲の醸成など、別の切り口でのモチベーション向上は工夫した方が良いでしょう。

場合によっては、未達成における罰(叱責等)を設定する事も必要です。
(退職率の向上等のデメリットは起きますが。)

後のこと考えていない問題

やれると思っていて、蓋をあけてみたら実際は達成困難だった。
期中で環境が激変し、KPI管理も何もなくなった。
等々、想定していた通りに物事が推移しないのが経営の現実です。

適切なリスクヘッジ策を事前に準備しておければベストです。

それが難しい場合は、緊急事態体制に移行する事を決めておいて、迅速に次善策を練れるような取り決めをしておきましょう。
(CFOなのかCEOなのか、最終責任者を決めておくのも重要です。)

例えば、変動費性・コントロール可能性が高い費用項目・投資項目を明確化しておいた企業は、今回の新型コロナウイルス影響下において、迅速なコストコントロールを実行できています。


以上、「KPI設定・運用の間違い,失敗パターン10」を見ていきました。

これらは、言われればそうだよね、というような話ばかりなのですが、現実として発生してしまうものです。

定期的に、自分達の状況がどうなのか、振り替える癖を身に着けておくと良いですね。

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