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ウィスキーの紙製ボトルは浸透するか?

ジョニー・ウォーカーが紙製ボトルを2021年から導入すると発表しました。
かつて、サントリーがトリスで行い、気が付いたら消えていた紙製ボトル。
現在はニッカが細々と取り組んでいる程度。
果たして、ウィスキーの紙製ボトルは浸透するのでしょうか?

ジョニー・ウォーカー、紙製ボトルを2021年から導入

元の記事はこちらです。

https://www.bbc.com/japanese/53399753

紙製ボトルは、下記の仕様のようです。

  • リサイクル可能なパルプを使用
  • ボトル内側にはコート剤が塗布される
  • プラスチック・コーティングは行わないので、そのままリサイクル可能

紙製ボトルのイメージの悪さ

紙製ボトルはイメージが悪い

サントリーは2005年、「トリスウイスキー」のブラックとレッドで、紙パックの商品を販売した過去があります。

焼酎や清酒では紙パックが一般的になっているので、家庭用市場で気軽に購入してもらえるように、との意図でした。

一方、酸素透過による劣化や香りの変質などを心配する意見があります。
また、ビンだからこその風流、カッコ良さもあり、雰囲気から感じる味の劣化も懸念されます。

ようはイメージが悪いのです。

結局、トリスの紙パックは今は姿を見ず、ブラック・ニッカで細々と使用されているのを見る程度です。

技術的にはクリアしているので印象の問題

じゃあ、本当に味の劣化や香りの変質がクリティカルな問題になるのか?というとそうではないです。

アルコール飲料の紙パックによる封入は1970年代にはある程度、問題がクリアされており、ポリ-紙-アルミホイルを複合的に使用し、品質を維持したパッケージの開発に成功しています。
ウイスキーに関しても、上記トリスの時代で既に紙パックで十分に保存できるだけの技術が開発されています。

今回はコート剤の付与なので、レガシー技術となっている紙パックとは異なる仕様ですが、マスターブレンダーがGoサインを出すのだから、劣化・変質問題はクリアしていると考えて良いでしょう。

ようは、印象の問題です。
ブラインドテストをしたら、絶対に区別がつかないと思います。)

紙製ボトルは浸透するか?

では、紙製ボトルは浸透するのでしょうか?

これは難しい話で、やはり上述の「印象の問題」をクリアしなければならないでしょう。
味はどうしても「印象」に引っ張られるので、ここは如何にポジティブ・イメージを広く浸透させられるか。
ブランド所有者の「ディアジオ」のPR手腕にかかっています。

ただ、世の中の圧力としては、既に環境方向に舵が切られています。
加えて、酒卸による空瓶回収システムの崩壊も指摘できます。
更に印象の問題。

今回のボトルデザインは非常に優れています(紙“パック”では無い)。

ベクトルとしてはエコに向かっているわけですので、きっかけ一つで一気に普及する可能性は、十分にあると考えられます。
インフラの問題はあるでしょうし、現実問題として情緒の話もあるので、普及価格帯の紙ボトル、高級価格帯のビンボトル、と棲み分けが行われると良いですね。

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経営企画

アフターコロナとESG投資~上辺だけの取り組みは通用しない~

近年、ESG投資に対して注目が集まるようになってきました。
環境、社会、ガバナンスは、企業の持続可能性を測る要素だと考えられているからです。
このESGですが、アフターコロナの世界では、その捉えられ方が変わると推測されます。
それはなぜでしょうか?

忙しい人向けまとめ

  • ESGとは、E(環境)、S(社会)、G(企業統治)のことを指し、ESGに取り組む企業に対する投資、つまりESG投資には近年注目が集まっている
  • ESGに取り組む企業は高い持続可能性を持つと考えられている
  • 現代社会は、上辺だけの社会貢献をするグリーンウォッシング企業などが揶揄され、晒される時代になっている
  • 新型コロナウイルスの影響により、従来の環境への取り組みだけでなく、「人」、つまりはS(社会)への取り組みや、リモートワークへの移行といったG(企業統治)への取り組みが、企業によってコントラストがわかれ明確になった
  • 社会が急変している時代、ESGへの取り組みは、単なる「社会貢献」の意味合いではなく、企業の変化への柔軟な対応力を示すものになっている

ESG投資にお金が集まっている

利益だけを追求し、社会を顧みない会社を世間はどのように評価するでしょうか?
人は感情の生き物ですので、そのような会社は快く思われないでしょう。
長期的には、会社の経営にさえ影響が出てくる可能性があります。

反対に、社会に対して貢献意識のある企業は、社会から評価され、高い持続可能性を持つ、と考えられています。

ESG投資とは、このような社会に対して貢献意識のある企業に対して行う投資のことです。
Eとは環境(Environment)、Sは社会(Social)、Gは企業統治(Governance)のことを指します。
この内、特に環境保全に対する取り組みが長らく注目されてきました。

近年、金融市場において、ESG投資に対する注目度が高くなっており、世界中の投資家からお金が集まっている状況になっています。

ESG投資にお金が集まっている。

代表的な所としては、GPIFです。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、世界有数の運用資産を保有する団体で、このGPIFもESG投資へのシフトを明確にしています。

その他の世界中の投資家からもお金が集まっており、また実際にその投資パフォーマンスは、TOPIXなどと比較して、高い結果を発揮しています。
リンク先のページで詳細なグラフを含めて記載がありますので、参考にしてみてください。

一方、ESG投資にお金が集まりやすい、という点から上辺だけの環境保全への取り組みなどを行っている企業も存在します。

上辺だけのESGが通用しなくなってきている

グリーンウォッシング、SDGsウォッシングとは

多くの企業が環境保全や、後進国や難病に苦しむ方々への寄付などの取り組みをPRしています。
しかし実際の所として、どれだけ本気になって、取り組んでいるでしょうか?
「やっていますよ」アピールに終わっている企業が多いのではないでしょうか?

環境配慮をしているように装い、上辺だけの環境訴求をしていることをグリーンウォッシングと言います。
そして、そのような企業をグリーンウォッシング企業と揶揄して表現をします。
同様に、SDGsへの上辺だけの取り組みのことはSDGsウォッシングと呼ばれています。

世の中には、CSR報告書などに関係のない自然の写真を掲載して、エコなイメージをアピールしたりする企業や、表面上取り組んでいる体裁を保つために無意味にリサイクル素材を活用したりする企業が非常に多く存在します。
酷い企業になると、環境保全への取り組みは効果・実効性共にあること確かに実践していても、従業員には低賃金・長時間労働の環境下で、まるで奴隷のように扱う企業も存在します。

ひと昔前は、このような会社の存在が表に出ることはありませんでした。

SNSの発達に、上辺だけの欺瞞的な会社が晒されやすくなっている

Twitter、Facebookをはじめとし、SNSが急速に発展しました。
それにより、上記のような企業がインターネット上で晒されるようになりました。

  • 世界的ハンバーガーチェーン店が、ロゴの色を緑基調のものに変えて、環境アピールをする
  • 自動車会社の販売するエコカーが、全然エコでないことが暴露される
  • 環境に優しいとされたおむつ製品が、実際は化学素材ばかりであることが広まる

このような情報が世界中で一瞬にして流布してしまうようになりました。

また、グリーンインデックス、というグリーンウォッシングを評価するような指標も出ています。
もう、上辺だけのESGが通用しない時代になったのです。

そして、このESGへの取り組みが新型コロナウイルスの影響により、更に変化を迫られる状況になっています。

E(環境)だけでなく、S(社会)やG(企業統治)がなぜ注目されるのか?

ESGへの取り組みは何故重要なのでしょうか?
これは冒頭に記載した通り、企業の持続可能性が高いと考えられているからです。

株式市場、そして企業は社会や環境問題から切り離されたものではありません。
非常に密接な関係性があり、企業は社会の変化の影響を強く受けます。

新型コロナウイルスも、企業に変化を突き付けるものでした。

G(企業統治)が優れた会社は新型コロナウイルス騒動に柔軟に対応ができている

新型コロナウイルスの影響で、世界的にリモートワークが一般的になってきました。
これにいち早く対応するには、業務のIT化が必須です。

今の世の中は、工場や病院、物流関連のようなところでも無ければ、そのほとんどの仕事が遠隔で対応できるはずです。
リモートワークに対応できているか否かで、企業の業務効率化に対する姿勢が明らかになりました。

また、BCP(事業継続計画)の観点においても、ガバナンスに対する姿勢が見えるようになりました。
災害などを見越して、遠隔で対応できるように準備をしていた企業は、今回の騒動でスムーズにリモートワークに切り替えられたはずです。

人財という言葉

「人」に対する姿勢もそうです。
従業員の雇用や補償に誠意をもって向き合う企業と、そうでない企業のコントラストがわかれました。

シンプルな話なのですが、「人」を人財として捉え、手厚く遇すると優秀な人が集まりやすくなります。
優秀な人が集まりやすくなれば、当然に業績貢献に結びつき、それは企業価値の向上につながります。

今回の新型コロナウイルス騒動で「人」に対して、淡白な姿勢を示した企業は、今後「あそこはそういう会社なんだ」という目で見られるでしょう。

ウォッシングが明らかになりやすい時代、上辺だけの取り組みは、それ自体がリスクだということを認識すべきでしょう。
そして、ESGのS(社会)とG(企業統治)が注目される中、ソーシャルウォッシング、ガバナンスウォッシングも明らかにされていくでしょう。

ESGへの取り組みは必須、できる所からやっていこう

気候変動は、これから激しくなり、人類の生存に対して物理的な脅威を伴ってくるようになります。
AIやIoTをはじめ、技術はこれからも急速に進歩していきます。
後進国・新興国の急激な経済発展にあわせて、経済格差を是正する圧力が高まり、同時に社会不安も大きくなって来るでしょう。
社会は恐ろしいスピードで激変しています。

なんちゃって環境対策だけをやっていては、もう駄目な時代になっています。
形だけの上辺ではない、実を伴ったESGへの取り組みが、これからの時代求められています。

もっと的確に表現するならば、ESGへの取り組みは必須です。
社会が激変していく中で、ESGへの取り組みは、変化への対応力のバロメーターと言えるからです。

とは言え、全ての企業が十分な取り組みができるとは限りません。
できる所からやっていけば良いと思います。
未来を見据えた、確実な一歩、成長への意欲こそが大事です。

(追記)こういうさりげないアピールがちょうどよい

このような、多くの人に愛されている商品と絡めてアピールすると、いやらしさがなく企業イメージの向上につながるのでしょうね。
ヤマザキは、リンク先の資料のような取り組みを行っているけれども、こんなん出されても読みたくないですし。

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