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ハイブリッド参加型バーチャル株主総会の開催事例

バーチャル株主総会の開催にあたっては、バーチャルオンリー株主総会は会社法的に開催ができず、ハイブリッド型の開催のみが選択肢となります。
ハイブリッド型には、会社法上の出席とならない参加型と、会社法上の出席となる出席型があります。
ここでは、ハイブリッド参加型バーチャル株主総会の開催に関して、株主への案内の方法など、事例を見ていきます。

バーチャル株主総会についての全体像はこちらの記事を、

バーチャルオンリー株主総会の開催がなぜできないのか?はこちらの記事をご参照ください。

㈱ブイキューブの事例

参加型のハイブリッド型バーチャル株主総会を開催した代表企業例は、WEB会議システムの㈱ブイキューブです。
㈱ブイキューブは、12月決算で、2020年3月25日(水)に定時株主総会が開催されました。
当日は、リアル株主総会に約10名、バーチャル参加が約100名という状況になったとのことです。

招集通知上の案内

㈱ブイキューブは2015年より、ライブ配信を行っており、招集通知上で下記のように案内を出していました。

【お願い】
当日ご出席の際は、お手数ながら同封の議決権行使書用紙を会場受付にご提出ください。 当日の模様を、当社の「V-CUBE セミナー」でライブ配信いたします。詳しくは次ページをご参照ください。

【お知らせ】
(略)
(3) 今般の新型コロナウイルスの流行に伴い、当日は、当社役職員及び係員に対し、マスクの着用その他感染拡大予防のための措置を講じる場合がございます。予めご了承のほどお願い申し上げます。

第20期定時株主総会 ライブ配信のご案内

第20期定時株主総会の模様を、当社の「V-CUBE セミナー」でライブ配信いたします。詳細につきましては、当社ウェブサイトIR情報ページをご覧ください。
https://ir.vcube.com/jp/

【ご注意事項】
・会場後方からの撮影とし、可能な範囲において、ご出席株主様の容姿が撮影されないように配慮いたしますが、会場都合等により撮影されてしまう場合がございます。ご出席いただける場合はあらかじめご了承をお願い申しあげます。
・ご使用の機器やネットワーク環境によってはご視聴いただけない場合がございます。 「V-CUBE セミナー」の推奨動作環境ページのご確認をお願い申しあげます。
https://jp.vcube.com/support/requirements/req_seminar.html
・オンデマンド配信では、ご出席株主様の肖像権・プライバシー等に配慮し、ご質問部分は割愛させていただきます。あらかじめご了承をお願い申しあげます。
・当社ウェブサイトやライブ配信、オンデマンド配信をご視聴いただくための通信料につきましては、株主様にてご負担くださいますようお願い申しあげます。
・万一、何らかの事情により配信を行わない場合は、当社ウェブサイトIR情報ページ(https://ir.vcube.com/jp/)にてお知らせいたします。

「㈱ブイキューブ 第20期定時株主総会招集ご通知」より

この招集通知の通り、下記の点に関して端的かつ丁寧に案内が発信されていました。

  • ライブ配信を行う旨
  • 感染拡大の防止措置についての発信
  • 肖像権・プライバシー等に対する配慮と確認
  • 視聴環境に関する案内
  • 視聴にかかる費用負担に関する注意喚起
  • 情報の発信場所

ハイブリッド参加型バーチャル株主総会を開催する上では、円滑に開催するための環境整備、株主のインターネット活用、肖像権等への配慮、が留意事項となりますので、これらに配慮した形になります。

(重要)追加の情報発信

さらに、招集通知とは別にバーチャル株主総会実施に関する案内を出しています。

案内の通り、時代の要請にあわせて試験的導入という位置づけにしています。

ハイブリッド型バーチャル株主総会の実現のためのインフラ提供を目指し、
(中略)
実現に向けた新機能の試験運用を実施することといたしましたので、お知らせいたします。

「㈱ブイキューブ 第20期定時株主総会におけるハイブリッド型バーチャル株主総会の実現に向けた新機能の試験的導入に関するお知らせ」より

この案内の中では、下記のメッセージを発信しています。
質問に関しては、株主の権利である「質問」ではなく、「コメント」という扱いを明確にしています。

  • ライブ配信で株主総会を視聴できる
  • 会社法上の出席とはならない旨の案内
  • 併せて事前に議決権を行使するよう促し
  • チャット機能で「コメント」ができる
  • 「コメント」に対する回答の方針の明確化

会社法上の取扱いに関する注意喚起

会社法上の取扱いに関しては
「本試験運用を通じ本総会に参加いただく株主の皆様は、会社法上、本総会にご出席いただいた株主様(以下「ご出席株主様」といいます。)として扱われるわけではありません。」
と、会社法上出席とならないことを明言しています。

議決権の行使に関する注意喚起

そのため、議決権に関して
「『第20期定時株主総会招集ご通知』に記載の方法(事前の議決権行使書面又はインターネット投票による投票)により、必ず事前に議決権を行使いただきますようお願い申し上げます。」
という形で、事前の行使を行うように促しています。

「コメント」の取扱いに関する案内

「コメント」に対しては
「議長その他の当社役員に対し、ご質問(ご出席株主様による質問権の行使としてのご質問と区別して、以下「コメント」といいます。)をいただくことができます。」
とした上で、
「当社の判断において実務上可能な限りのご回答は申し上げる予定であるものの、当社にはご回答を申し上げる会社法上の義務はないものと整理されます。」
とし、義務は無いものの、現実的な範囲内で回答するという会社の方針を明確化しています。

これらの追加の情報発信は、株主に対する丁寧な情報発信と言えますし、また何か問題が起きた際のリスクヘッジともなりますので、ハイブリッド参加型バーチャル株主総会を実施する上での参考となるでしょう。

ハイブリッド参加型バーチャル株主総会に対する所感

ハイブリッド参加型バーチャル株主総会は、ライブ配信とコメントを受け付ける機能さえ充足されているのならば、会社法上、障害がなく開催できるバーチャル株主総会の形式です。

現実の株主総会では、事実上、決議の結果が決まっており、直接経営者たちの声を聞ける、会社-株主間でコミュニケーションをとれる場となっているのが実態です。

となれば、無理に会社法上のリスクをおかしてまで出席型の形式をとる必要性が低いので、参加型はバーチャル株主総会を開催する上での、ローコストかつローリスクの現実的な選択肢と言えるでしょう。

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バーチャルオンリー株主総会(オンラインオンリー株主総会)は開催できるのか?

新型コロナウイルスの影響により、バーチャル株主総会(オンライン株主総会)の関心が高まっています。
ここではバーチャル株主総会(オンラインオンリー株主総会)は開催できるのか否かを見ていきます。

なお、経済産業省より「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」が公開されています。
少々ボリュームがありますが、全体をしっかり理解するには、ガイドも参照ください。

忙しい人向けまとめ

  • バーチャルオンリー型株主総会は開催できない
  • 会社法上はリアルな「場所」が必要
  • 時代の変化に応じた、会社法の改正が求められる
  • ただし、リアル会場を用意すれば「実質的なバーチャルオンリー株主総会」は可能

バーチャル株主総会(オンライン株主総会)とは

まずバーチャル株主総会ですが、これは2種類存在します。

ハイブリッド型とバーチャルオンリー型です。

ハイブリッド型は、リアル株主総会とオンラインでの株主総会参加のどちらかを選択可能な株主総会です。
これはさらに、会社法上の出席とはならず傍聴するだけの「参加型」と会社法上の出席となる「出席型」に分類されます。

一方、バーチャルオンリー型株主総会は、言葉通りで、リアル株主総会を開催せず、オンラインのみで会社法上の要件を満たすことを目指す株主総会です。

簡単にまとめると、下記の図のようにイメージできます。

バーチャルオンリー型株主総会(オンラインオンリー型株主総会)

バーチャルオンリー型は開催できない

上述の通り、バーチャルオンリー型株主総会は、リアル株主総会の開催は無く、インターネット等の手段のみで会社法上の「出席」をする株主総会のことです。

結論を言うと、バーチャルオンリー型株主総会は開催できません。

それは、現行の会社法では解釈が難しいからとなっています。

○松平委員
(略)
そこで、まずこの現行法の解釈を伺いたいんですが、ハイブリッド型とバーチャルオンリー型の株主総会、これは日本ではできるのかどうか、法律上許容されるのかどうか、これを伺いたいと思います。

○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
まず、委員御指摘のハイブリッド型についてでございますが、取締役が実際に開催する株主総会の場所を決定し、これを株主に通知した上で、その場所に来ていない株主等についても、情報伝達の双方向性及び即時性が確保されるような方式によって株主総会に出席することを認めることは、会社法上許容されるものと解されます。したがいまして、実際に開催されている株主総会に株主がオンラインで参加することを許容すること、いわゆる御指摘のハイブリッド型の株主総会を行うことは、会社法上許容され得るものと解されます。

これに対しまして、実際に開催する株主総会の場所がなく、バーチャル空間のみで行う方式での株主総会、いわゆるバーチャルオンリー型の株主総会を許容することができるかどうかにつきましては、会社法上、株主総会の招集に際しては株主総会の場所を定めなければならないとされていることなどに照らしますと、解釈上難しい面があるものと考えております。

第197回国会法務委員会第2号(平成30年11月13日(火曜日))

会社法の記載

根拠条文的には会社法の298条1項1号にある、「株主総会の日時及び場所」の記載です。
ようは、会社法的に「場所」が必要であり、バーチャルオンリー型は場所が存在しない形になるため、解釈上の困難がある、ということです。

(株主総会の招集の決定)
第二百九十八条 取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主総会の日時及び場所
(以下略)

会社法

リアルな場所が必要

ようは、リアルに参加ができる「場所」が無ければならず、バーチャル株主総会を開催する場合は、リアルに参加できる場所を何かしら用意して、選択できるようにしなければならないのです。

(会社法に規定される「場所」は仮想現実を設定できる旨の判断が出ていない。
オンラインに対応できない方のために、リアルな「場所」での権利行使の機会確保が必要になる、という考えなのでしょう。)

本質的には、会社側と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されているならば、リアルだろうがオンラインだろうが、変わりは無いはずです。

時代は変化していますので、早々に会社法の改正が求められます。
(声をあげていきましょう。)

(追記)実質的なバーチャルオンリー株主総会

経済産業省の「株主総会運営に係るQ&A」で示された見解では、下記の通りとなっています。

設定した会場に株主が出席していなくても、株主総会を開催することは可能

株主総会運営に係るQ&A 2020年4月2日

つまり、リアル株主総会の場所を用意すれば、そこに株主が参加していなくても、株主総会は開催したことにできる、ということです。
ハイブリッド出席型の形式をとりつつ、会場出席者がいないのであれば、「実質的なバーチャルオンリー株主総会」になり、法的に問題がありません。

インターネット参加ができない人もいるであろう前提の元、リアル会場は用意しつつ、この「実質的なバーチャルオンリー株主総会」を目指すのが良いと考えられます。

補足

なお、株主全員の同意がある場合は、株主総会自体を開かず「みなし決議」という形式をとることも可能です。
上場企業では事実上不可能な方法なので、中小企業、ベンチャー企業向けの選択肢ですね。

(株主総会の決議の省略) 第三百十九条 取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。

会社法

バーチャル株主総会を現実的に開催しようとする場合は、ハイブリッド型となります。
バーチャル株主総会(オンライン株主総会)全体について要約した記事は下記にありますので、併せてご参考に。

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バーチャル株主総会(オンライン株主総会)の考え方整理(経産省資料の要約)

経済産業省より「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」が公開されています。
コンパクトにまとまってはいるものの、言い回しとかが小難しく、ごちゃっているので整理しました。
バーチャル株主総会(オンライン株主総会)を検討する際のベースとなるので、ご参考に。

元資料はこちらです。

なお、下記については、Excelの表でもまとめてあり(サムネイル画像の物)、こちらからダウンロードできます。

リアル株主総会

物理的に開催される一般的な株主総会。
会社法上の出席となる。

株主総会には、決議の取消事由(法第831条1項)があるため、慎重に運営されてきた、これまでの実績・判例、つまり「あるべき実務」がある。
リアル株主総会は、一般的に認められている「あるべき実務」と言え、リスクが少ない。

ハイブリッド型バーチャル株主総会の種類について

リアル株主総会とインターネット等の手段によりリモートで参加・出席することの、両方が選択できる株主総会。

参加型と出席型がある。

参加型は会社法上の出席とはならない。
出席型が会社法上の出席となる。

ざっくりとまとめると下記のようになります。

以下、「ハイブリッド型」は省略し、参加型は「参加型バーチャル株主総会」、出席型は「出席型バーチャル株主総会」と表記。

参加型バーチャル株主総会(会社法上は出席とならない)

概要

リアル株主総会の開催に加え、リモート開催を行う。
会社法上の「出席」とはせず、審議等を確認・傍聴することができる。

ポイント:コメントの取扱い

  • コメントの受け付け

    当日のコメント受け付けの他、事前にコメントを受け付け、一括回答する形など、工夫が可能。
  • リアル株主総会の開催中に紹介・回答

    コメント等について、リアル出席株主からの質疑を優先しつつ、可能な範囲で紹介、回答する。
  • 株主総会終了後に紹介・回答

    株主総会終了後に、株主懇談会等の場を活用することが考えられる。
  • 後日HPで紹介・回答

    後日、会社のHP等で動画公開と共に、紹介、回答する。

メリット

  • 遠方株主の傍聴が可能
  • 複数の株主総会を傍聴可能
  • 株主重視の姿勢をアピール
  • 透明性の向上
  • 情報開示の充実

留意事項

  • 円滑な参加に向けた環境整備が必要
  • 株主がインターネット等を活用可能であることが前提
  • 肖像権等への配慮が必要(株主への限定配信の場合には、問題が生じにくい。)

具体的な運用

ID・パスワード等による株主確認を行い、配信される中継動画を傍聴。
ID・パスワード等の通知方法は、招集通知に記載するか、同封するかなど。
中継動画等を公開するなら、ID・パスワード等による株主の本人確認は必要がない。

質問・動議

会社法上の「出席」ではないため、質問や動議はできないが、参加者から受け付けたコメント等を取り上げることは可能。

議決権の行使

バーチャル出席株主は、当日の決議に参加できないため、事前に招集通知等で事前行使を促すことが必要。

出席型バーチャル株主総会(会社法上の出席となる)

概要

リアル株主総会の開催に加え、会社法上の「出席」となるリモート開催を行う。

「開催場所と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されている」ことを前提に、出席型による開催が許容。
会社側の通信障害について対策が必要。
株主が容易にアクセスできるための情報提供等も必要。

株主側の問題に起因する不具合については、交通機関の障害等と同様、総会決議の瑕疵とはならない。

ポイント

  • 前提となる環境整備(通信障害についての考え方)、経済合理的な範囲において導入可能なサイバーセキュリティ対策
  • バーチャル株主総会にアクセスするために必要となる環境(通信速度、OSやアプリケーション等)や、アクセスするための手順についての通知、通信障害リスクの告知
  • 株主総会の出席と事前の議決権行使の効力の関係
  • 質問・動議の取り扱い

メリット

参加型のメリットに加え、

  • 出席機会の拡大
  • 複数の株主総会に出席することが容易
  • 質疑等を踏まえた議決権の行使が可能
  • 株主総会における議論(対話)が深まる
  • 議決権行使の活性化

留意事項

参加型の留意事項に加え、

  • 議事の恣意的な運用可能性
  • 出席型の要件を満たす環境整備
  • どのような場合に決議取消事由にあたるかについての経験則の不足
  • 濫用的な質問が増加
  • 事前行使インセンティブが低下し、当日の議決権行使もされず、議決権行使率が下がる可能性

具体的な運用

1)本人確認:バーチャル出席株主の本人確認は、事前通知する固有のID・パスワード等で実施。

2)代理人:代理人の出席はリアル株主総会に限るとすることも、妥当な判断。事前通知が必要。
代理人を受け付けるならば、リアル株主総会と同様、定款をベースとし、委任者から委任状・委任者の本人確認書類を受領し、代理人による委任者の議決権行使を可能とする必要がある。

3)なりすまし対策:二段階認証やID・パスワードの記載面を再貼付不可なシールで覆う等の工夫が考えられる。

4)株主総会の出席と事前の議決権行使の効力の関係:審議中、ログイン時点では事前の議決権行使の効力を取り消さずに維持する。
採決のタイミングで新たな議決権行使があった場合に限り、事前の議決権行使の効力を破棄する。
ログインしたものの、採決に出席しなかった場合には、事前の議決権行使の効力が維持。
議決権行使判断の変更意思がない株主のために、出席型ログイン画面の他に、参加(傍聴)型のライブ配信等を準備するといった工夫も考えられる。

5)招集通知の場所の案内:「株主総会の(中略)場所」の記載に当たっては、法施行規則72条3項1号の規定を準用し、リアル株主総会の開催場所と共に、サイトアドレスを明記し、参加マニュアルを明記すればよいものと考えられる。

6)お土産の取扱い:お土産は、リアル出席へのお礼であり、バーチャル出席株主にお土産を配布せずとも不公平ではない。

質問・動議

【質問】

  • 質問回数や文字数、送信期限(質疑終了予定時刻より早く設定)、質問を取り上げる際の考え方(個人情報の取扱いなど含め)ついて、運営ルールを定め、招集通知やweb上で通知する 。
  • バーチャル出席株主は、所定のフォームを使用し、会社側は運営ルールに従い取り扱う。
    後日、回答できなかった質問の公開などが考えられる。

【動議】

事前通知を前提に、

  • 動議の提出:動議提出はリアル出席株主からのみ受け付ける。
  • 動議の採決:バーチャル出席株主は、実質的動議は棄権、手続的動議は欠席として取扱う。
  • 仮にシステム的に動議の提出・採決が可能な場合:濫用した場合は、取り上げないことが許容。
    濫用の程度によっては、リアル株主総会同様、退場権限が議長にある(通信を強制的に切る)。

議決権の行使

バーチャル出席株主による、総会当日の議決権行使ができるよう、システムを整える必要がある。
事前に議決権行使を行った場合の、当日バーチャル出席については、「株主総会の出席と事前の議決権行使の効力の関係」を留意する必要がある。

臨時報告書には、事前行使分、当日出席大株主分で可決要件を満たし、決議が成立したならば、バーチャル出席株主含めて、集計しなくてもよい(理由の開示でよい)。

バーチャルオンリー型株主総会

リアル株主総会の開催は無し(オンラインのみ)。
インターネット等の手段のみで会社法上の「出席」をする株主総会。

現行の会社法では解釈が難しく、バーチャルオンリー型株主総会は開催できない。

「・・・実際に開催する株主総会の場所がなく、バーチャル空間のみで行う方式での株主総会、いわゆるバーチャルオンリー型の株主総会を許容するかどうかにつきましては、会社法上、株主総会の招集に際しては株主総会の場所を定めなければならないとされていることなどに照らしますと、解釈上難しい面があるものと考えております」

(第197回国会法務委員会第2号 平成30年11月13日 小野瀬厚政府参考人 法務省民事局長(当時))

所感

現状、バーチャルオンリー型株主総会は開催が不可能です。

出席型バーチャル株主総会も世の中的に知見がたまっておらず、加えて追加コストを会社側が負担せねばならない状況です。
そのような中、株主総会の成立可否に関するリスクだけを背負う形になってしまいます。

会社法の改正が進むまで、現実的にはリアル株主総会となり、やるにしても精々が参加型のバーチャル株主総会になるでしょう。

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取締役会

社外取締役の任期を短縮したい場合の実務的手順

ベンチャー企業も大きくなってくると、社外取締役を選任するようなステージがいつかは訪れます。
その際、候補者の方が適切に役目を果たしてくれるのか不安に思うのは社長ならば当然でしょう。
ここでは、社外取締役の任期を、社内取締役より短く設定し、適切な方なのか否かについてリスクを下げる方法について解説していきます。

大枠の流れ

① 定款を変更する

② 株主総会招集通知上で、社外取締役候補者の任期を明記する

③ 株主総会議事録上、選任された社外取締役の任期を明記し、登記する

定款変更内容

まずは定款の変更です。

取締役の任期に関して、会社法上では、「(取締役の任期)第三百三十二条 取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。」と記載があります。

つまり下記の通り定款を変更すれば、社外取締役の任期を柔軟に変更できることが可能になります。

定款変更後の実務としては、株主総会にて、普通決議での任期付き選任を行う形になります。

(取締役の任期)
第〇〇条
取締役の任期は選任後2年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会の終結時までとする。ただし、株主総会の決議によって社外取締役の任期は短縮することができる。

招集通知の記載例

それでは、招集通知の記載に関して、具体的に示していきます。
定款変更が既にされているという前提のもの(通常の記載例)と、定款変更と同時に選任を行う場合でわけます。

通常の記載例

第〇号議案 取締役〇名選任並びに社外取締役の任期決定の件

企業の活性化及び一層の業績向上を期すため、社外取締役〇名の選任をお願いするものであります。

なお、社外取締役の任期を1年として上程するものであります。

取締役候補者は次のとおりであります。

定款の変更と同時に行う場合の記載例

第〇号議案 取締役〇名選任並びに社外取締役の任期決定の件

企業の活性化及び一層の業績向上を期すため、社外取締役〇名の選任をお願いするものであります。

なお、第□号議案が承認可決され社外取締役の任期が株主総会の決議によることとなることを条件として、社外取締役の任期を1年として上程するものであります。

取締役候補者は次のとおりであります。

株主総会議事録の記載例

株主総会後は議事録の作成です。
任期については、認識相違を生みやすいので、少々くどいくらいに確認をする方が良いでしょう。

こちらも、選任のみの場合と、定款変更と同時に行う場合で記載例を示します。
定款変更と同時に行う場合では、1文を追加すれば問題はありません。

なお、新任の取締役については、実印と印鑑証明書が必要になりますので、事前に取得依頼を出しておきましょう。
現実的に大きな問題は考えづらいですが、期限内の登記対応ができない原因の1つに、必うような書類が揃わない、というのはあるある話ですので。

通常の記載例

第〇号議案 取締役〇名選任並びに社外取締役の任期決定の件

議長は、企業の活性化及び一層の業績向上を期すため、下記取締役〇名を社外取締役として選任の必要がある旨を述べた。社外取締役の任期は、選任後1年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会終結時までとしたい旨を述べた。その賛否を諮ったところ、満場一致をもってこれに賛成した。

よって、議長は次の通り選任することに可決された旨を宣した。

取締役 〇〇○○(新任)

※ 取締役 〇〇〇〇については、▲月◇日に承諾予定である旨が説明されると共に、社外取締役としての選任であることが確認され、その任期は1年となる旨が確認された。

定款変更と同時に行う場合の記載例

社外取締役の任期は、前号議案での定款変更を受け、選任後選任後1年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会終結時までとしたい旨を述べた。

以上です。

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取締役会

取締役会議事録・株主総会議事録の電子化~リモート対応にあわせたハンコ廃止はどこまでできるか~

全員がWEB会議参加の取締役会が増えてきました。
あわせて出る悩みが「議事録の押印」、つまりハンコです。
今回は議事録の電子化、つまりハンコ廃止はどこまでできるのかを解説していきます。
結論、社内文章としての保存と、登記申請用の議事録で対応が異なります。

役員全員がWEB会議参加の場合の取締役会招集通知・議事録の書き方に関しては、こちらの記事を参照ください。

忙しい人向けまとめ

  • 社内文書として保存する場合と登記・申請等で行政機関等に提出する場合で考え方が異なる
  • 取締役会議事録の場合は、技術用件を満たしたサービスを利用すれば電子化対応は可能
  • 株主総会議事録の場合は、そもそもとしてハンコがマストでない(真正の担保のために実印押印が一般的)
  • 登記を要する場合は、難点が多く、書類の電子化対応が現実的でないため、運用でカバーした方がよい
  • 電子化対応を行う場合、定款の定めで「電子署名」に対応していることが必要

社内文章としての保存の場合(登記が必要ない場合)

社内文章としての保存の場合も、取締役会議事録と株主総会議事録で取扱いが変わってきます。

取締役会議事録の場合(登記が必要ない場合)

まず、前提の確認からです。

取締役会議事録を電子化する場合は電子署名が必要

取締役会の場合、その議事録は書面でも電磁的記録(以下、「電子データ」と表現)でも作成可能とされています(正確には、どちらかで作成しなければならない)。

会社法

第三百七十一条 取締役会設置会社は、取締役会の日(前条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた日を含む。)から十年間、第三百六十九条第三項の議事録又は前条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその本店に備え置かなければならない。

(略)
会社法施行規則

第百一条 法第三百六十九条第三項の規定による取締役会の議事録の作成については、この条の定めるところによる。

2 取締役会の議事録は、書面又は電磁的記録をもって作成しなければならない。

(略)

そして、ご存知でしょうが、この取締役会議事録には出席取締役・監査役(以下、「出席役員」と表現)が署名または記名押印することとされています。
もしくは、署名または記名押印に代わる措置を取らなければならない、とされています。

会社法

第三百六十九条 (略)

3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。

(略)

4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

この「代わる措置」が電子署名です。
つまり、取締役会議事録を電子化した場合は、署名または記名押印に代えて電子署名をすることが必要となります。

会社法施行規則

第二百二十五条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置は、電子署名とする。

(略)

六 法第三百六十九条第四項(法第四百九十条第五項において準用する場合を含む。)

電子署名の要件

電子署名の要件は次の2つです。

  • 本人性の確認:署名を行った者が本人、つまり出席役員であることを確認できる
  • 署名の改変・改ざん防止:署名が改変や改ざんされていないことを確認できる
会社法施行規則

第二百二十五条 (略)

2 前項に規定する「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。

一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。

二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
電子署名及び認証業務に関する法律

第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。

一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。

二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

そして、この電子署名の要件2つを満たすためには、技術的要件を満たす必要があります。
逆にいうと、技術的要件を満たした方法であれば、取締役会議事録の電子化が可能となります。

電子署名及び認証業務に関する法律

第二条 (略)

3 この法律において「特定認証業務」とは、電子署名のうち、その方式に応じて本人だけが行うことができるものとして主務省令で定める基準に適合するものについて行われる認証業務をいう。
電子署名及び認証業務に関する法律施行規則

第二条 法第二条第三項の主務省令で定める基準は、電子署名の安全性が次のいずれかの有する困難性に基づくものであることとする。

一 ほぼ同じ大きさの二つの素数の積である二千四十八ビット以上の整数の素因数分解

二 大きさ二千四十八ビット以上の有限体の乗法群における離散対数の計算

三 楕円曲線上の点がなす大きさ二百二十四ビット以上の群における離散対数の計算

四 前三号に掲げるものに相当する困難性を有するものとして主務大臣が認めるもの

その他の要件

その他、取締役会議事録の電子化のために、以下の要件を満たす必要があります。

  • 電子データの見読性の確保:モニターで鮮明に表示され、読むことができる
  • 紙かモニター表示のみ:インターネットを経由した方法は不可
  • 紙同様10年の保存が必要:電子署名に加えてタイムスタンプが必要
  • バックアップ:データの消失を避けるためのバックアップ保存が必要

株主総会議事録の場合(登記が必要ない場合)

次に株主総会議事録の場合です。

株主総会議事録はそもそもとして押印が義務ではない

知らない人も多いと思いますが、株主総会議事録には押印義務がありません。
つまり、株主総会議事録の電子化にあたって、電子署名に対応しなければならない義務がないです。

会社法

第三百十八条 株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。

(略)

4 株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。

(略)

二 第一項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

ただし、、、真正担保

ただ、作成した議事録の真正を担保するために、会社代表印、つまり実印を押印するのが一般的でしょう。
後々のトラブルを回避するためにも、押印対応しておいた方がよいでしょう。

つまり、株主総会議事録の電子化対応の場合も、取締役会議事録の電子化対応に準じた対応が望ましいと考えられます。

ついでに、株主から閲覧または謄写の請求があった場合には対応が必要となりますので、これについても取締役会議事録の電子化対応に準じた対応が必要です。

電子契約サービス

それでは、具体的にどのように取締役会議事録・株主総会議事録の電子化対応を行うか、です。
今は、電子契約サービスが充実しています。
安くて使い勝手の良いサービスがたくさんありますので、任意に選定すれば良いでしょう。
ここでは1社だけ紹介します。

GMO agreeは安くて使い勝手がよく、電子署名の技術的要件を満たしたサービスです。
また、GMO熊谷社長は、先般のIT大臣の発言をうけて、積極的にハンコを廃止していく旨のコメントを出しています。
今後のサービス向上にも期待できますし、無料期間も設定されたようですので、これを機に導入検討をするのは有りでしょう。

登記・申請等で行政機関等に提出する場合

(2020年6月18日追記)

ついに念願が叶い、クラウドサインが登記対応となりました。
そのため、本記事の本項は古い内容となります。

詳細は下記記事をご参照ください。


一方、登記のために役所に書類を提出する場合は難点が多くあります。
結論、あまり実用的で無いので、運用でのカバーが良いです。

登記・申請等で行政機関等に提出する場合

登記申請の際、取締役会議事録・株主総会議事録・就任承諾書・委任状などの書類を添付して法務局に申請することが必要です。
これらの書類には、実印による記名押印が必要です。
そのため、実印による記名押印に代わる電子署名が必要となります。

商業登記規則

第六十一条 定款の定め又は裁判所の許可がなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなる申請については、申請書に、定款又は裁判所の許可書を添付しなければならない。

(略)

4 設立(合併及び組織変更による設立を除く。)の登記の申請書には、設立時取締役が就任を承諾したことを証する書面の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。取締役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書に添付すべき取締役が就任を承諾したことを証する書面の印鑑についても、同様とする。

しかも、その電子署名(代表印/実印)に用いる電子証明書は「電子認証登記所登記官が発行した電子証明書に限る」となっています。
(役員の場合は、認定認証業者が発行している電子証明書による電子署名、もしくは、マイナンバーカードに内蔵されている電子証明書による電子署名。)
つまり、認定認証業者が発行している電子証明書だけで登記ができないのです。

商業登記法

第十九条の二 登記の申請書に添付すべき定款、議事録若しくは最終の貸借対照表が電磁的記録で作られているとき、又は登記の申請書に添付すべき書面につきその作成に代えて電磁的記録の作成がされているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を記録した電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を当該申請書に添付しなければならない。
商業登記規則

第三十六条 法第十九条の二の法務省令で定める電磁的記録は、第三十三条の六第四項第一号に該当する構造の電磁的記録媒体でなければならない。

2 前項の電磁的記録には、法務大臣の指定する方式に従い、法第十九条の二に規定する情報を記録しなければならない。

3 前項の情報は、法務大臣の指定する方式に従い、当該情報の作成者(認証を要するものについては、作成者及び認証者。次項において同じ。)が第三十三条の四に定める措置を講じたものでなければならない。

4 第一項の電磁的記録には、当該電磁的記録に記録された次の各号に掲げる情報の区分に応じ、当該情報の作成者が前項の措置を講じたものであることを確認するために必要な事項を証する情報であつてそれぞれ当該各号に定めるものを、法務大臣の指定する方式に従い、記録しなければならない。

一 委任による代理人の権限を証する情報 次に掲げる電子証明書のいずれか
イ 第三十三条の八第二項(他の省令において準用する場合を含む。)に規定する電子証明書
ロ 電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号)第三条第一項の規定により作成された署名用電子証明書
ハ 氏名、住所、出生の年月日その他の事項により当該措置を講じた者を確認することができるものとして法務大臣の指定する電子証明書

二 前号に規定する情報以外の情報 次に掲げる電子証明書のいずれか
イ 前号イ、ロ又はハに掲げる電子証明書
ロ 指定公証人の行う電磁的記録に関する事務に関する省令(平成十三年法務省令第二十四号)第三条第一項に規定する指定公証人電子証明書
ハ その他法務大臣の指定する電子証明書

5 前項の場合において、当該作成者が印鑑の提出をした者であるときは、当該電磁的記録に記録すべき電子証明書は、同項第一号イに掲げる電子証明書に限るものとする。ただし、第三十三条の三各号に掲げる事項がある場合は、この限りでない。

6 第二項から第四項までの指定は、告示してしなければならない。

7 前条第三項の規定は、第一項の電磁的記録媒体に準用する。

(なお、認定認証業者としてはリンク先のような事業者が対応していますが。)

難点が多く実用的でない

つまり、登記に対応できる取締役会議事録・株主総会議事録の電子化にあたっては、満たさなければいけない要件が多く、実用的でないのです。

まず、よっぽどの大企業でなければ、登記をしなければならないような事象が限られます。
そのために、役員全員に認定認証業者が発行する電子証明書を発行するのか?という悩みがでます。
役員がITまわりに苦手な場合、わざわざ設定のためのフォローが必要になります。
社外役員の場合は、その手間はもっと増えます。
パソコンですので、突然壊れて使えなくなることも十分に考えられます。
当然、イニシャルコストだけでなく、月額のランニングコストがかかります。

これだけの負担感があるので、現状の制度やサービスの中では、登記要件に充足する電子化対応は難しいと言えます。
実際、多くの会社が、登記については従来通りのハンコ対応を行っている状況です。

運用でカバーが無難

これまでみてきた通り、登記書類の電子化対応は実務上、現実的と言えません。

となると、運用でのカバーが無難と考えられます。

具体的には、登記が必要な案件に関しては、登記を要しない議案の取締役会や株主総会とはわけて対応するのです。
登記が必要な案件は、どこか特定の時期に集中させて、まとめて対応すれば、書類の回覧負担が減ります。
発生した時だけは面倒ですが、要登記事項自体を減らしてしまえば良いのです。

ついでに定款も注意が必要

ここまで、取締役会議事録・株主総会議事録の電子化対応について解説してきました。
実は、もう1点確認が必要です。
それは、会社の定款にどう定められているか?の確認です。

電子化対応を視野に入れているのならば、どこかの総会のタイミングで定款変更をかけておくのが無難でしょうね。

取締役会の議事録に関する定款の定め

A:取締役会における議事の経過の要領及びその結果並びにその他法令に定める事項は、議事録に記載または記録し、出席した取締役及び監査役がこれに記名押印する。

B:取締役会における議事の経過の要領及びその結果並びにその他法令に定める事項は、議事録に記載または記録し、出席した取締役及び監査役がこれに記名押印または電子署名する。

パターンAの場合、記載通り、出席役員のハンコ対応が必要です。
パターンBの場合、電子署名に対応しているならば、ハンコを廃止することができます。

株主総会の議事録に関する定款の定め

A:株主総会議事録については、法令で定めるところによりその経過の要領及びその結果等を記載又は記録し、議長及び出席した取締役がこれに記名押印又は電子署名を行う。

B:株主総会における議事の経過の要領およびその結果ならびにその他法令に定める事項については、これを議事録に記載または記録する。

パターンAの場合、記載通り会社実印と出席取締役のハンコが必要です。
パターンBの場合、登記を要しない議案であれば、ハンコは必須ではない形になります。

最後に

これまで書いてきたことは、IPOを視野にいれていない中小企業にとっては、おそらく重要性の低い話でしょう。
おそらく、議事録自体を整備していないでしょうから。

しかし、IPOを目指す場合は別です。
IPO進行上、議事録の整備は論点の一つとなるため、避けては通れない話になります。
書類の電子化は要件を満たしてさえいえれば審査上の問題はありませんの、どうせなら最初から電子化前提で管理体制を構築するのが良いのではないでしょうか。

その際は、オンライン上に機密情報を保存する形になりますので、セキュリティ面だけ十分な注意を払いましょう。

取締役会議事録・株主総会議事録の電子化は、登記という観点を除けば、リーズナブルに対応可能です。
管理体制の整備自体が業績向上に直接的に寄与するものではありませんので、効率的に進めたいものです。

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