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クイズの解答、そして管理会計上のポイント抽出~管理会計基礎講座⑩~

前回のクイズ、いかがでしょうか?
今回は、クイズの解答と解説と共に、ここから管理会計上のポイント抽出に関して話をしていきます。

前回はこちらです。

クイズの解答

まず、PLを見てみましょう。

ここから言えることは、例えば次のようなことをあげられます。

  • 売上高約5,000億円規模の大企業
  • 原価率が高い(60%超)
  • 「給料・手当」と「業務委託費」を別掲している、ということは「人」が重要?
  • 収益性が高い(安定的な経営をしている)

次はBSです。

ここからは、次のことを言えますね。

  • 現金が約3,000億円規模であり潤沢
  • 受取手形・売掛金の規模が売上高に対して小さい ⇒ BtoCっぽいぞ
  • 棚卸資産の割合が原価率から比較できる金額に近しい ⇒ 物を売っているのは間違いない
  • 建物・構築物の方が機械装置・運搬具より圧倒的に大きい ⇒ 製造業では無さそう???
  • 土地を、それも結構な広さの規模で持っているっぽい
  • 無形固定資産は小さいからデジタルサービスはやっていても規模が小さそう
  • 負債サイドは資産に比較して小さく安定的、自己資本比率も高い

最後にCFです。

ここからは、次の2点を例えばですが、あげられるでしょうか。

  • 有形固定資産、おそらく建物・構築物への投資をガンガンやっている様子
  • キャッシュ・フロー全体像から見て高安定性の大企業

これらを整理すると、この会社の特徴は次のようになります。

  • (ヒントの)日本人ならほぼ知っている
  • BtoC
  • 物販はやっている
  • デジタル・サービスは比率が小さそう
  • 「人」が重要
  • 製造業ではなさそう
  • 建物・構築物のウェイトが圧倒的、投資も積極的
  • 広い土地を持っている
  • 売上高5,000億円規模の大企業で経営も安定的

さぁ、ここまで見てどうでしょうか?

結論を言いますね。

株式会社オリエンタルランド、つまりディズニーランドです。

解答を聞いて、改めて上記の特徴を見てみて下さい。
「なるほど」と思いませんか?

管理会計上のポイント抽出

それでは、会社の名前と会社の特徴をあげられた所で管理会計上の㈱オリエンタルランドはどのような点について重視して見ていけばよいのか、考えてみてみましょう。

売上面について考えてみる

まずは売上面、つまりPL面について考えてみましょう。

最初にビジネスの全体像を考えてみます。
ディズニーランドでは、どのようなサービスを提供していますか?

  • テーマパーク
  • ホテル
  • 物販
  • 飲食

ざっくりとこの4つの事業があるとイメージできます。

この内、テーマパークに絞って深掘り思考してみます。

テーマパークにおける売上高は、ざっくりとですが「客単価 × 客数」で表現できます。

この点は㈱オリエンタルランドの決算説明会資料でも確認できます。

㈱オリエンタルランド 2020年3月期決算説明会資料より

資料上は「入園者数 × ゲスト1人当たり売上高」で表現されていますね。
(ゲスト1人当たり売上高の中に、商品販売収入と飲食販売収入が含まれているので、上であげた4つの事業の内、物販と飲食は、テーマパーク事業としてカウントされているようです。)

つまり、ディズニーランドというビジネスを運営していく上では、如何に1人でも多くのお客様に来場いただくか、そして、如何に1円でも多くお客様にお買い物をしてもらえるか、が重要になるわけです(後はチケット料金の値上げ)。

そして、例えばですが、如何に1円でも多く、の部分に関しては「一回の来園で長く滞在してもらえれば、使うお金も増えるはず」という仮説が考えられます。
そこから、滞在時間、という管理会計上のKPIが候補として考えられます。
実際、㈱オリエンタルランドでは、「平均滞留時間」という指標をトラッキングしているようです。

(ファクトブック本体では、結構な過去から直近年度まで集計されていますが、横尺が長いので、一部だけの貼り付けにしています。)

㈱オリエンタルランド 2020年3月期ファクトブックより

チケット収入に関しては、基本的に据え置きになり、後はお客様との需要と供給の関係で、計画的に値上げをできるか、というようなイメージになるかと思います。
実際、チケット料金に関して、年次別に如何に値上げを行ってきたのか、の推移が示されています。

㈱オリエンタルランド 2020年3月期ファクトブックより

これらは、ほんの一部ですが、事業の特徴から管理会計上、「こう言う所を見れば良いはずだよね」という点を抽出することができるのです。

施設面について考えてみる

次に施設面、つまりBS面について考えてみましょう。

テーマパークビジネスをやっている以上、いつまでも同じ施設のままではお客様は飽きてしまいます。
施設は常に増やすか、更新するかをしていかなければならないはずですね。
(加えて、BS上、「建物及び付属設備」の科目が非常に大きいウェイトを占めていることを忘れてはいけません。)

実際、次のようにアトラクション数、商品施設数、飲食施設数を指標として持っていることがわかります。

㈱オリエンタルランド 2020年3月期ファクトブックより

そして、投資の計画に関して、次のような計画をもって進行していることもわかります。

㈱オリエンタルランド 2020年3月期決算説明会資料より
㈱オリエンタルランド 2020年3月期決算説明会資料より

実際のビジネスの現場では、開発のマイルストン、開発計画の進捗、投資に対してのリターン(集客効果等)などを設定して管理している事が想像できます。

その他的まとめ

上記のポイント抽出は、ほんの一例です。

ここで言いたいのは、PLやBS、そしてCFから、会社の絵姿をイメージでき、そこから管理会計上、「こう言う所を見れば良いはずだよね」という点を抽出できる、ということです。

この点を踏まえて、決算資料を見てみると、違った見え方があるかもしれません。

決算資料として、決算説明会資料のリンクはこちら。

ファクトブックのリンクはこちらです。

なお、これだけ多額の投資を行うビジネスである以上、財務面の管理も行わなければいけません。
財務面の管理に関しては、どのような面で見ればよいか、考えてみて、その上で上記2つの資料内でどのような指標を持って見ているか、探してみて下さい。


繰り返しますが、財務3表は非常に重要な資料で、PLやBS、そしてCFから、会社の絵姿をイメージでき、そこから管理会計上、「こう言う所を見れば良いはずだよね」という点を抽出することができます。

次回以降は、いくつかのテーマを設定し、テーマ毎に管理会計上の指標やポイントについて見ていきます。
なお、更新は9月以降を予定しています。

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ここでクイズです~管理会計基礎講座⑨~

財務3表の説明とつながりに関して解説してきました。
今回からは管理会計の話に入っていきます。
まず、最初にクイズを出します。ちょっと考えてみて下さい。

前回はこちらです。

この会社は何でしょうか?

財務3表を提示します。
(単位は全て百万円です。なお、会計上の数字は、千円単位、百万円単位など、数字3桁区切りで表記するのが一般的です。)

さて、この会社は何でしょうか?
具体的な会社名(ブランド名でもOK)を当ててみて下さい。

この資料だけで当てるのは、難しいと思うかもしれませんが、実はそれほど難しくありません。

ついでに、会社名をイメージできたら、この会社にとって重要だと思われる管理項目についても考えてみて下さい。

ヒント:
日本人ならほぼ知っている
どんな商品/サービスを提供していそうか、想像してみる
財務3表を良く見る
– 数字を見て会社の規模感を把握してみる
– 数字が大きいのはどこか探してみる
– その勘定科目は何か?そして、そこから何が言えるか?


このクイズは、財務資料を見ていく上で、重要な感性を磨くと共に、管理会計の話をする上での事例となります。
しっかり考えてみて下さい。

次回は、クイズの解説と管理会計の事例を説明します。

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財務3表のつながりを簡単に~管理会計基礎講座⑧~

貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、キャッシュ・フロー計算書(CS/CF)。
これらは関連性があり、数字上のつながりもあります。
今回は、この財務3表のつながりを簡単に解説していきます。

前回はこちらです。

大枠としての数字のつながり

何度か掲載している財務3表の図に、ここでも登場してもらいます。

既に覚えていらっしゃるかと思いますが、財務3表は次を示す機能があります。

貸借対照表(BS):どこからお金を調達し、そのお金を何に使っているか?

損益計算書(PL):お金を活用し事業を行った結果として、どれだけ売上と利益を出したのか?

キャッシュ・フロー計算書(CF):お金の動きを、営業、投資、財務の観点で表現

ようは、大枠として図表のようなつながりがあります。

損益計算書(PL)で表現されている営業の結果として発生するお金の動きは、キャッシュ・フロー計算書(CF)の営業キャッシュ・フローに集計されていき、

貸借対照表(BS)の左側、つまり、調達したお金を何に使ったのか?は、キャッシュ・フロー計算書(CF)の投資キャッシュ・フローに集計、

貸借対照表(BS)の右側、つまり、どこからお金を調達したのか?は、キャッシュ・フロー計算書(CF)の財務キャッシュ・フローに集計されていきます。

正確には違うのですが、ざっくり大枠として、こういうもんだ、という認識を持ってください。

キャッシュ・フロー計算書(CF)は正確には次のように集計される。

営業キャッシュ・フローは、損益計算書(PL)の税引前当期純利益からはじまり、減価償却費をはじめ、特別損失の内、実際のキャッシュの動きが発生しないものを調整し、その上で、貸借対照表(BS)の内、営業に関わる債権債務の増減から集計される。

投資キャッシュ・フローは、主に貸借対照表(BS)の固定資産、そして投資その他の資産の増減から集計される。

財務キャッシュ・フローは、主に貸借対照表(BS)の有利子負債と資本の増減から集計される。

財務3表の4つのつながり

次に、もう1つの観点で、重要な4つのつながりについて示します。

つながりとは「A」から「D」の4つのつながりです。
順番ずつ見ていきます。

「A」で示している通り、損益計算書(PL)の当期純利益は、貸借対照表(BS)の右側「純資産の部」にある、繰越利益剰余金に集計されていきます。
ある期の期首に1億円の繰越利益剰余金があったとして、そのある期に1.5憶円の利益を出したとしたら、期末の繰越利益剰余金は2.5億円となります(配当がある場合は、配当分、繰越利益剰余金が減ります)。

「B」は貸借対照表(BS)の基本的な話で、左側と右側の数字は必ず一致します。
一致させなければいけません。
これを「バランス」と言います(BSの略は、バランス・シート、でしたね)。

「C」は貸借対照表(BS)とキャッシュ・フロー計算書(PL)のつながりで、BSの現預金の金額と、CFの期末残高の数字は必ず一致します。
一致させなければいけません。

「D」は損益計算書(PL)とキャッシュ・フロー計算書(CF)のつながりです。
上述補足の通り、営業キャッシュ・フローは、損益計算書(PL)の税引前当期純利益からはじまり、各種調整項目とBSの増減が集計されていきます。
ようは、PLの税引前当期純利益の金額と、CFの営業キャッシュ・フローの税引前当期純利益の金額は必ず一致します。
一致させなければいけません。


とりあえず、一通り財務3表の基礎を話せました。
結構、重いですね。

これらの話も、最初はややこしく感じられるかもしれません。
しかし、会計を理解していく上では、基本的な内容になりますので、頑張ってください。

次回からは、管理会計本編に入っていきます。
まずはイントロとして、どこかの事業会社決算資料をサンプルに、会社として抑えなければいけない数字があるよね、という所から見ていきたいと思います。

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会社のお金の動きを示すキャッシュ・フロー計算書~管理会計基礎講座⑦~

貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)と続き、最後はキャッシュ・フロー計算書(CF)です。
キャッシュ・フロー計算書(CF)は、貸借対照表(BS)以上に馴染みが薄い言葉だと思いますが、会社のお金の動きを示す重要な会計資料になります。

なお、キャッシュ・フロー計算書は、CSとも略され、どちらかというとCSの方が正式ですが、ここではCFと略しています。

前回はこちらです。

財務3表の最後、キャッシュ・フロー計算書(CF)

これまで、貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)について話をしてきました。

財務3表の最後はキャッシュ・フロー計算書(CF)です。

キャッシュ・フロー計算書(CF)は、会社のお金、つまり現預金の動きを示す決算資料になります。

それぞれの項目の意味を見ていきましょう。

なお、キャッシュ・フロー計算書において、作り方の話とかをしだすとカオス・オブ・カオスになるので、構造と用語の意味を簡単に抑えれば問題ありません。

ただ、損益計算書(PL)で話題に出した、減価償却費については理解をしておかないと、いけません。

キャッシュ・フロー計算書(CF)の構造

キャッシュ・フロー計算書(CF)のサンプルを見てみましょう。
日本公認会計士協会が提供している資料です。

このように、3つの構造があることがわかります。

  1. 営業活動によるキャッシュ・フロー
  2. 投資活動によるキャッシュ・フロー
  3. 財務活動によるキャッシュ・フロー

それぞれ、次のような意味があります。

営業キャッシュ・フロー:事業活動を通してのモノやサービス の販売や仕入れ、製造活動などから 生じた現金の現実的な流れ。

投資キャッシュ・フロー:工事建設や設備導入などの設備投資、 子会社への投資、株式持ち合いなど 投資に係る現金の動きを表す。

財務キャッシュ・フロー:金融機関からの長短期資金の借入や 返済、社債発行による資金調達、増資 による資本金の増加など、会社の資金 調達や返済などを表す。

キャッシュ・フロー計算書(CF)と減価償却費

損益計算書(PL)のパートで、減価償却費について簡単に触れました。

減価償却費とは、投資した額をそれが使われる期間で按分して費用計上することです。

このように、投資した資産を使う期間に渡って費用を按分することにより、各期の利益を正しく計算することが可能になります。

キャッシュ・フロー計算書(CF)との関係の話で言うと、投資キャッシュと営業キャッシュ・フローに関係があります。

まず、何か投資をした際のお金の動きは投資キャッシュ・フローでマイナス表記されます。
お金が会社から出ているからですね。
そして、毎期の損益計算書(PL)では、減価償却費として販売費および一般管理費に按分して計上されていきます。

ここで注意しなければいけないのが、減価償却費ではお金の支払が発生しません。

なぜならば、その投資物件を購入した際に、お金を支払っているからです。

そのため、キャッシュ・フロー計算書(CF)上では、計上した減価償却費分、お金の動きが無かったとして調整、具体的には次のように収入があったものとみなしてプラス計上されます。

ややこしいですねぇ。

とりあえず、「減価償却費ではお金は動かない」「キャッシュ・フロー計算書(CF)上は、減価償却費分調整する必要がある」と覚えて下さい。

キャッシュ・フロー計算書(CF)のパターンで会社の状況を把握できる

なお、キャッシュ・フロー計算書のパターンからざっくりと会社の状況を把握することが可能です。

+はお金が入ってくること、-はお金が出ていくことです。
(資金の増減そのものに、良い悪いは無いことに留意してください。)

営業CF投資CF財務CF現金の残高
営業活動で現金を生み出したうえに、借入などで現金を増やしている。 さらに、固定資産や有価証券なども売却している。将来の大きな投資のためにお金を集めているのだろうか。
営業活動と、固定資産や有価証券などの売却により現金を生み出し、借入の返済を積極的に行っている。 財務体質強化の段階にある会社だろう。
営業活動で現金を生み出したうえに、借入などで現金を増やし、積極的に投資活動を行なっている。 将来の戦略も明確な優良企業のパターン。
営業活動で生み出した現金を投資活動や借入金の返済に充てている。 潤沢なキャッシュフローがある会社であろう。
営業キャッシュフローマイナス分を借入と固定資産や有価証券の売却でまかなっている。 問題会社の一般的なパターン。
営業キャッシュフローマイナス分と借入返済分を固定資産や有価証券の売却でまかなっている。 過去の蓄積を切り売りして事業を継続している。
営業活動で現金を生み出せていないが、将来のために設備投資を行なっている。 営業のマイナス分と設備投資資金をすべて借入や新株発行でまかなっている。 自信がある将来計画があるのだろうか。
営業活動で現金を生み出せていないのに、将来のための設備投資を行ない、借入金の返済も行なっている。 過去に多くの現金の蓄積があった会社なのだろう。
「財務3表一体理解法」國貞克則 朝日新書、2007 より

これだけだとイメージが掴みづらいと思うので、一つ何か事例で見てみましょう。

日本を代表する自動車メーカー、トヨタに登場いただきます。

トヨタ有報より

この通り、流石トヨタ、営業活動によるキャッシュ・フローは毎期多額のプラスを出しています。
そして、投資活動によるキャッシュ・フローも、毎期、安定的に多額の投資を行っています。
投資無くして事業の収益は得られないですからね。
一方、余剰キャッシュも生まれており、財務活動によるキャッシュ・フローで示されている通り、安定的に借入の返済も行われています(2020年3月期は借入が増えており財務活動によるキャッシュ・フローがプラスになっている)。

上の表で言うと、パターン③、パターン④の優良な企業、キャッシュが潤沢にある企業、ということがわかるわけですね。

ぜひ、他の会社のキャッシュ・フロー計算書も見て、どのようなパターンにあるか見てみて下さい。

例題と回答を見てみる

問題8:キャッシュフロー計算書の構造と分類

キャッシュフロー計算書は、営業CF(営業活動の利益)、投資CF(設備投資に係る現金支出)、
財務CF(資金調達と返済)に分けられる。
(+)/(-)は資金の流入/流出を表す。
営業で利益を上げているが、将来のためにそれ以上の設備投資を行い、
不足分を銀行からの借入増で行っている企業Bのキャッシュフロー計算書は(⑲)に、
営業で利益を上げているが、設備投資は抑制して少額実施し、
余剰分を銀行に返済している企業Cのキャッシュフロー計算書は(⑳)となる。

  • 営業(+)、投資(+)、財務(ー)
  • 営業(+)、投資(ー)、財務(+)
  • 営業(+)、投資(ー)、財務(ー)
  • 営業(+)、投資(+)、財務(+)

解答8:キャッシュフロー計算書の構造と分類

⑲ 営業(+)、投資(ー)、財務(+)

⑳ 営業(+)、投資(ー)、財務(ー)


次回は、管理会計本題に入る前の会計基礎としての最後、財務3表のつながりについてです。

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損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)のつながり~管理会計基礎⑥~

前回は、損益計算書(PL)の話をしました。
売上と利益の話で馴染みのある話と共に、減価償却費という、よくわからない話もあったかと思います。
今回は、損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)のつながりの話です。
両者の関係は、どのようなものなのでしょうか?

前回は、こちらです。

===URL===

財務3表、再登場

ここで、財務3表の概要図に再登場してもらいます。

この図の通り、財務3表にはつながりがあります。

今回は、このつながりの内、損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)にフォーカスしたものになります。

損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)のつながり

というわけで、両者のつながりの図解を示します。

事業活動を行うことにより、資産や負債が増減します。
そして最終的に出た利益は、税引後当期純利益は、繰越利益剰余金という科目に集計されていきます。

ここで、上記図を改めて観察してみて下さい。

貸借対照表(BS)は、ある瞬間の数字を、損益計算書(PL)は期間に渡っての流れの数字を示しているように見えませんか?

そう見えたら、すごいです。
(そう見えなかったとしても、上記の通り理解してください。)

貸借対照表(BS)は期末という「瞬間」を、損益計算書(PL)は年度という「期間」を表します。

これを、貸借対照表(BS)は「ストック」、損益計算書(PL)は「フロー」とも表現します。

今回、覚えて欲しいのは、次の2点です。

貸借対照表(BS)は、ある「瞬間」を切り取って表現した、「ストック」の数字である。

損益計算書(PL)は、ある「期間」に渡って取引された数字を集計して表現する、「フロー」の数字である。

細かい会計のルールは別によいですが、この話は会計を理解する上で、非常に重要なことなので、覚えて下さい。


本記事は管理会計基礎講座というテーマで連載を進めています。

次回は、キャッシュ・フロー計算書(CF)の概要についての解説です。
その後の予定として、財務3表のつながりについて、ざっくりとした見方やポイントについて解説する流れで考えています。

財務3表の話が終わったら、管理会計の話に入っていきます。

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比較的馴染みやすい損益計算書(PL)~管理会計基礎⑤~

前回は、貸借対照表(BS)の話をしました。
お金をどのように集めているか、そして集めたお金を、何に投資しているか、を示した表だ、ということを理解できたでしょうか?
今回は、損益計算書(PL)です。
これは、仕事をしている方にとっては比較的馴染みのあるテーマかと思います。

前回はこちらです。

財務3表について簡単におさらい

前に財務3表について、簡単に触れました。

財務3表とは、
どれくらい利益をあげているのか、を示す損益計算書(PL)
お金をどのように集め、何に投資しているのか、を示す貸借対照表(BS)
会社の現預金の動き、を示すキャッシュ・フロー計算書(CF)
の3つのことです。

今回のテーマは損益計算書(PL)。

売上を通して、どれくらい利益をあげているのか、を示す表になります。

損益計算書(PL)の構造

損益計算書(PL)は次の図のような段階的な構造があります。

それぞれの段階の項目について、簡単に説明します。

売上高:会社の本業の稼ぎです。本業外の稼ぎは売上高には含めません(下でも軽く触れますが、銀行の利息とかですね)。

売上原価:売上高に直接的に対応する費用です。原材料費や仕入高などがそうです。

販売費および一般管理費:売上原価以外の、事業活動を行う上でかかった費用です。人件費、水道光熱費、家賃、クラウドサービスの利用料、WEB広告の出稿費用、出張等の移動や宿泊経費などが該当します。多くの費用がこの項目に集計されます。そして多くの勘定科目と呼ばれる集計科目が存在します。細かい事を覚える必要は、とりあえず、ありません。

営業外収益:本業以外の稼ぎです。銀行の利息などが代表例です。他には、例えば創業社長の外部での講演料とか、何か使っていない事業資産が外部に貸した際のレンタル代とかですね。

営業外費用:本業以外で使用した費用です。例えば、銀行からお金を借りた際の利息などです。

特別利益・特別損失:本業以外で発生した稼ぎや費用で、イレギュラーなものです。色々なルールがあるので、とりあえず、こういうものがある、とだけ知っていればOKです。有価証券売却益、固定資産除却損、減損損失などが該当します。

色々と面倒だとは思うのですが、上記の内容程度はインプットしておいた方が良いとは思います。

5つの利益

次に5つの利益についてです。

損益計算書(PL)の構造の図を再掲します。

損益計算書(PL)には5つの利益があります。

売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、税引後当期純利益です。

売上総利益:「売上高 - 売上原価」で示せる利益で、売上原価(仕入高や製造コストなど)より、どの程度高く商品を販売できているか、という指標です。この数字が高ければ高いほど、販売する商品・サービスに競争力がある、と言えます。

営業利益:「売上総利益 - 販売費および一般管理費」で示せる利益で、本業の利益、となります。この数字が高ければ高いほど、本業の収益力が高いと言えます。重要な数字です。

経常利益:「営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用」で示せる利益で、本業の利益に加えた、経常的に得られる利益となります。会社のステージにもよりますが、銀行への支払利息分、経常利益の方が小さい場合が多いです。
ちょっと難しくなりますが、リースにより何か事業用資産を用意している企業は、リース代金として利息を支払わなければいけないため、経常利益が事実上、本業の利益と言える場合があります。

税引前当期純利益:「経常利益 + 特別利益 - 特別損失」で示せる、税金を支払う前の最終利益です。とりあえず、こういうものだ、とだけ覚えておけば十分です。

税引後当期純利益:「税引前当期純利益 - 法人税等」で示せる、会社としての、その期の最終利益となります。この金額が、株主への配当の源泉となったり、内部留保として次期に繰り越されたりします(再投資などに活用)。結論として黒字なのか赤字なのか、を見る利益となるので、重要な利益です。

これも、面倒だとは思うのですが、上記の内容程度はインプットしておいた方が良いです。

減価償却費の考え方

そして、気持ち難易度が高い話になってしまうのですが、減価償却費について触れておいた方が良いでしょう。

例えば、何か1億円の投資をしたとしましょう。

その投資をした年の売上高は0円で、売上があがるのが、次の期以降だとします。
この時、1億円の投資をした年に、「はい、1億円の赤字ねー」なんて言われたら、納得ができますか?
翌期以降に、その投資に対応する売上があがる見込みなのにです。

普通は納得が行かないはずです。

そこで出てくる考え方が「減価償却費」です。

減価償却とは、投資した額をそれが使われる期間で按分して費用計上することです。

イメージ図を示します。

このように、投資した資産を使う期間に渡って費用を按分することにより、各期の利益を正しく計算することが可能になります。
この費用が「減価償却費」と言います。
(この考え方を「費用収益対応の原則」と言います。投資した資産以外にも、棚卸資産など、様々な場所で登場します。とりあえず、名前だけ認識しておいてください。)

1億円の投資の例で言うなら、売上1億円を5年に渡って稼げるとします。
1億円の投資が5年の効果があるので、1年あたり2千万円の費用が5年に渡って按分されます。
結論、毎年「売上高1億円 - 減価償却費2千万円 = 利益8千万円」と利益を計算することができます。

ここで減価償却費の考え方を理解しておかないと、キャッシュ・フロー計算書の所で躓くので、概念的に難しいと思うかもしれませんが、頑張ってください。

例題と回答を見てみる

問題6:設備投資と減価償却費

A社の今期の本社投資は10億円、これを10年で均等償却するものとする。
この投資にかかわる今期の減価償却費は(⑭)である。
減価償却の意味は投資時にすべての金額を費用として認識するのではなく、
その投資が有効な期間にわたって均等に費用按分するのが合理的というものである。
この金額は、損益計算書の(⑮)の項目に含まれる。

  • 10億円
  • 1億円
  • 売上原価
  • 販売管理費
  • 営業外費用
  • 特別損失

解答6:設備投資と減価償却費

⑭ 1億円

⑮ 販売管理費

問題7:損益計算書の構造

損益計算書の中で、本業の利益を表す(⑯)は金利支払前の利益であり、
(⑰)は金利支払後かつ税金支払前の利益である。
損益計算書上の利益は会計上の利益であり、1年間に稼いだキャッシュの額とは異なる。
簡易的にキャッシュ創出額を計算するには、(⑯)に、
会計上は費用とみなされるか実質的に当期にキャッシュ流出を伴わない(⑱)を加算すればよい。

  • 当期利益(純利益)
  • 経常利益
  • 営業利益
  • 減価償却費
  • 設備投資

解答7:損益計算書の構造

⑯ 営業利益

⑰ 経常利益

⑱ 減価償却費


本記事は管理会計基礎講座というテーマで連載を進めています。

次回は、貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)のつながりについての解説です。
その後の予定として、キャッシュ・フロー計算書(CF)に入り、最後に財務3表のつながりについて、ざっくりとした見方やポイントについて解説する流れで考えています。

財務3表の話が終わったら、管理会計の話に入っていきます。

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ようやく貸借対照表(BS)~管理会計基礎④~

前回は、超重要なビジネス活動の全体の流れ、そして財務3表の話をしました。
今回は、貸借対照表(BS)の話をしていきます。

前回はこちらです。

貸借対照表(BS)について

ようやく貸借対照表(BS)にたどり着きました。
(ちなみに、BSはバランス・シート、の略です。)

まずは、こちらの図を見て下さい。

前回も触れましたが、貸借対照表(BS)は、
お金をどのように集めているか、そして集めたお金を、何に投資しているか
を示した表になります。

この貸借対照表(BS)の中身を見ていきましょう。

右側のお金をどのように集めているか部分のことを貸方(かしかた)
左側の何に投資しているか部分のことを借方(かりかた)
と言います。

この借方と貸方が対照している、バランスしているから貸借対照表(BS)と呼びます。

つまり、左(借方)と右(貸方)の金額はイコールになります。
1円たりとてズレることはありません。

貸借対照表(BS)の構造

本記事は、別に会計の専門的知識を身に着けてもらおう、という意図はあまり無く、ビジネスで使う、特に管理会計的観点で使うにあたって不都合が無いレベルで知識があれば良いよね、という感覚で書いています。

ですので、個々の分類の意味的なものや、勘定科目に関して触れるつもりはありません。

また、まずはざっくりと全体像を抑えることのメリットも指摘できます。
(一気にインプットしても、絶対に覚えられないですしね。)

貸借対照表(BS)右側の分類①

というわけで、貸借対照表(BS)の構造について見ていきましょう。
まずは右側の分類についてです。

右側はどのような使われ方をしていたか、もう覚えましたか?

お金をどのように集めているか

ですね。
ようは、お金の調達元です。

そして、このお金の調達元は3つに分類できます。

1つ目が信用創造
事業継続により無償で調達している資金です。

いきなりピンとこないかもしれませんが、ちょっとだけ想像してみて下さい。

どこの馬の骨ともわからん会社が、いきなり「掛けで仕入れたい」と言ってきたら、どう思いますか?(掛け仕入、がわからなければググってください。)
どうとも思わないかもしれませんが、普通のビジネス感覚で言うなら、貸し倒れリスクが高いので「いや、前払いで頼みます。」となるはずです。

みなさんもどうでしょう。
働いている会社が、仮に今にも潰れそう(倒産しそう)な状況の場合、「自分の給料、支払われるのかな。。。???」と心配になりませんか?

買掛金や未払費用(例えば後払いの給料とか)は、会社が必ず支払う、という信用の元に成り立っているものです。
そしてこれは、事業継続が前提にあるものです。
利息がつかない無償の短期貸付金のようなものなので、「事業継続により無償で調達している資金」ということです。

2つ目が他人の金
ようは銀行からの借入のことです。

利息が付くので(有償での借入)、「有利子負債」と呼んだりします。

3つ目が自分(株主)の金
株主からの出資金のことです。

「株主から調達しているのに、自分の金?」と疑問に思った方もいるかもしれません。
ここで誤解がないように言っておかなければいけないのが、外部の株主からお金を調達した段階で、その会社は創業社長(最初の一人目の株主)だけのものでは無くなります。
会社の”所有権”は、株主全員に、出資比率に応じて分配されます(厳密には異なるが、脇に置く)。

創業社長も含めた「自分」のお金、という位置づけが、この3つ目のお金です。

ここでは、次の3つが貸借対照表(BS)の右側の分類だ、ということを覚えて下さい。

  • 信用創造(事業継続により無償で調達している資金)
  • 他人の金(有利子負債)
  • 自分(株主)の金(純資産)

貸借対照表(BS)右側の分類②

一応、もう一つの分類、ある意味正当な分類方法についても簡単に触れます。

貸借対照表(BS)の右側は、負債の部と純資産の部というものの2つに分かれます。
そして、この内、負債の部はさらに2つに分かれます。

それが、「流動負債」と「固定負債」です。

流動負債とは、短期(1年内)の負債のことで、
固定負債とは、長期(1年超)の負債のことです。

例えば他人の金(有利子負債)、つまり銀行からの借入については、1年以内に返済する分と、1年超以降で返済する分にわけて記載する必要があります。
面倒ですが、お金の出入りの目途を立てるのに、必要なルールですので、そういうもんだ、と覚えておきましょう。

後、純資産の部の内、利益剰余金は特殊な項目で、これは過去の利益、又は損失の蓄積がされていく項目になります。
これは財務3表のつながり部分で触れる話なので、ここでは「こういうもんがある」位に留めておきましょう。

貸借対照表(BS)左側の分類

分類の最後に、貸借対照表(BS)の左側について見ていきます。

左側は、流動資産と固定資産に分類できます。

流動資産は、現預金や売掛金、棚卸資産などが該当し、
固定資産は、建物や工具器具備品などの有形固定資産、ソフトウェアなどの無形固定資産、そして敷金や子会社株式などが該当します。

ここでは、この分類については、「こんなもんだ」位の認識に留め、次の表を見て下さい。

重要なのは、事業に使う資産(本業資産)がどれ位なのか?と、余剰資金はどれ位なのか?の2点です。

簡単に言うと、本業資産に使われているお金以上に稼がないと、利益が出ません。
ですので、単純にある期間での業績で「利益が出ている!」と喜んでも意味が無く、長期にわたって、きちんと投資した分、回収できるのか?を考えなければいけないのです。

そして余剰資金。

会社の経営において大事なのが「現金」です。
どんなに赤字を出していたとしても、「現金」がある限り、倒産はしません。
逆に言うと、黒字でも「現金」が枯渇した時点で倒産です。

ここまでの話をしなくとも、日々の事業運営において、現金は必要です。
この日々の事業運営分野、事業が黒字で安定的に運営ができていたとしても、事業の下振れリスク等々を勘案して、一定の余剰資金を確保しておく必要があります。

また、余剰資金が潤沢にあるならば、これを別の所に投資をすることも可能です。

なんだかインプット量が多くなってきて、混乱してきた方もいらっしゃるかもしれませんが。
ポイントを抽出して記載していますので、なんとか頑張ってください。

貸借対照表(BS)の大きさや項目の構成から健全性を把握できる

貸借対照表(BS)の解説の最後に、貸借対照表(BS)の機能についても解説していきます。

総資産規模

まず、総資産規模を把握できます。

資産の部の合計金額 = 負債の部 + 純資産の部 = 総資産

この数式で計算できる数字で、この金額の大小が、会社の事業活動に使用している資産(資金)の規模(大きさ)を示しています。

基本的には、数字が大きい会社 = 規模が大きい会社、であり、大体において健全性の高い会社と言えます(今、ものすごくざっくり説明しましたからね)。

負債と純資産の関係

次に、負債と純資産の関係です。

純資産 = 総資産 - 負債の部

この金額が、ざっくりと会社の「富の蓄積」を示します。

この金額がマイナスのことを、いわゆる“債務超過”と言い、債務超過の状態になると、銀行がお金を貸してくれなくなります。

自己資本比率 = 純資産(正確には自己資本) ÷ 総資産

そして、この数式で計算される数字のことを「自己資本比率」と呼び、会社としての健全性を示す指標として使われています。
高ければ、安定性がある会社、ということであり、また銀行からの借入余力も高い会社、と見ることができます。

左右の比較

最後に、貸借対照表(BS)の左右の比較についてです。

まず、ざっくりと1年ルールで流動と固定にわけられる、という話をしました。

この内、「流動資産」と「流動負債」、そして「固定資産」と「固定負債+純資産」は、その金額が釣り合っているのが良いとされています。
(その釣り合いの程度は、ビジネスの内容によっても大きく異なります。)

「流動資産」と「流動負債」の比率のことを、流動比率と呼びます。

「固定資産」と「固定負債+純資産」の比率のことを、固定長期適合率と呼びます。

例題と回答を見てみる

問題2:貸借対照表とは

貸借対照表の右側は(④)を示し、左側は(⑤)を示している。

  • 資金の調達元
  • 資金の貸付先
  • 資金の使用使途
  • 資金の支払先

解答2:貸借対照表とは

④ 資金の調達元

⑤ 資金の使用使途

問題3:貸借対照表の右側の分類(1)

貸借対照表の右側の性質は、大きく分けて(⑥)(純資産)、(⑦)(有利子負債)、(⑧)(事業継続により無償で調達している資金)の3つに分類できる。

  • 信用創造
  • 他人の金
  • 自分(株主)の金
  • 利益の額
  • 価値創造

解答3:貸借対照表の右側の分類(1)

⑥ 自分(株主)の金

⑦ 他人の金

⑧ 信用創造

問題4:貸借対照表の右側の分類(2)

貸借対照表の右側は、(⑨)と純資産(自己資本)の3つに分類されている。
⑨は返済期限が(⑩)以内か否かによって区別され、純資産は資本金(株主が振り込んだ金額)と(⑪)(過去の利益蓄積)に大別できる。

  • 短期借入金、長期借入金
  • 流動負債、固定負債
  • 1年
  • 5年
  • 配当金
  • 利益剰余金

解答4:貸借対照表の右側の分類(2)

⑨ 流動負債、固定負債

⑩ 1年

⑪ 利益剰余金

問題5:貸借対照表の左側の分類

貸借対照表の左側は流動資産と固定資産(固定資産+投資その他の資産)に大別できる。
流動資産の主なものは、現預金、(⑫)、売掛金(売掛債権)、
固定資産の主なものは、土地・建物・工具器具備品、子会社株式、(⑬)である。

  • 買掛金(支払債務)
  • 在庫(棚卸資産)
  • リース料
  • 敷金・保証金
  • 社債

解答5:貸借対照表の左側の分類

⑫ 在庫(棚卸資産)

⑬ 敷金・保証金


ものすごく一気にインプットが入ったと思いますが、ここまではまだ初歩なので、サクサクっと進んでいきましょう。

本記事は管理会計基礎講座というテーマで連載を進めています。

次回は、損益計算書(PL)の概要についての解説です。
その後の予定としては、キャッシュ・フロー計算書(CF)、そして改めて財務三表のつながりについて、ざっくりとした見方やポイントについて解説する流れで考えています。

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財務3表を軽く、でも超重要~管理会計基礎③~

前回は、いきなりインプットから入るより、アウトプットできない部分を明確にしてからインプットした方が良いよ、ということで、いきなりですが例題から入ってみました。
今回は、簡単に財務3表の解説を行っていきます。
とは言え、結構、というか超重要です。

前回はこちらです。

企業はどんな活動をしているの?

何かを仕入れて、何かを売る。

こういう「営業活動」については、多くの働く方にとって馴染みの深い経済活動かと思います。

でも実は、会社という存在は、実に様々な活動を行っています。

次の図を見てみて下さい。

これは、事業会社の活動の全体像概要図です。

まず何かしら事業を行うにあたって、「お金」というものが必要になります。

このお金はどこから調達してくるのでしょうか?
何も無い空間から、ぽっと出てくる、なんてことは無いですよね?

この事業活動を行うにあたって必要になるお金、これは株主や銀行から「①資金調達」をする必要があります。
出資をしてもらったり、お金を貸してもらったりするんですね。
なお、一番最初に会社を設立する際の出資、これは大体の場合、社長様ご自身が出資をする例が多いです。

そして、この調達したお金をもって、「②投資」を行います。
事務所としての本社や、何か売る商品を作るための工場、サービス提供のためのシステム投資をはじめ、別の会社を買収するM&Aなどが、この投資です。
この投資を行うことによって、ようやく営業活動が行えるようになります。
(もちろん、行う事業によって、この投資の大小は異なります。)

そうして、行った「③営業」において、物を仕入れて、商品を売って、経費を支払って、利益を出します。
(場合によっては損、つまり赤字を出します。むしろ、創業初期は赤字である場合の方が多いですね。)

出した利益は、「④資金分配」として、銀行への利払・元本返済、つまり借りたお金の返済を行ったり、株主への配当を行ったりします。
そうしてそうして、余ったお金、つまり余剰資金が出て、これを再投資して、改めて投資活動や営業活動を回していきます。

この一連の流れが「事業活動」です。

複雑なように見えるかもしれませんが、流れ自体は慣れればシンプルなものです。

営業活動だけに注目されがちですが、全体の流れを俯瞰してみる事が、数字に、会計に強くなるための第一歩です。

ここで家計簿について考えてみよう

それでは次に、家計簿について、ちょっと考えてみて下さい。

家計簿について考えてみる

みなさん、家計簿はつけるでしょうか?
最近は紙の家計簿だけでなく、アプリにより、一定自動で集計できるサービスも増えています。

この家計簿には次のような機能があります。

  • 一定期間のお金の出し入れを時系列に沿って記録できる
  • 収入や支出を項目別に分けて記載できる
  • 記録が簡単(面倒ではあるけれど)
  • 収入や支出の内訳・構成がわかる
  • 現預金の残高もわかる

しかし、家計簿では、ビジネスをやる上で足りない機能が多くあります。

家計簿ではビジネスで使うには不足がある

ビジネスにおける足りない機能とは、例えば次のようなものです。

  • 資産や債務の状況がわからない
  • ある期間にいくら儲かったのかの正確な数字は解らない(カード払いや銀行のローンなどにより)
  • 記録する人によりルールがまちまちで統一性が無い

そこで発明されたのが財務3表です。

超大事な財務3表

財務3表には次のような利点があります。

  • お金を集め、何に投資し、利益をあげる、という3つの活動を表現できる
  • 資産や債務を正確に把握できる
  • 期間利益を正しく算出できる(収支の期間を一致させる機能により)
  • 統一された会計のルールがある
  • 財務3表通しで数字がリンクしている(複式簿記の機能により)

図で見てみましょう。

財務3表とは、
どれくらい利益をあげているのか、を示す損益計算書(PL)
お金をどのように集め、何に投資しているのか、を示す貸借対照表(BS)
会社の現預金の動き、を示すキャッシュ・フロー計算書(CF)

の3つのことです。

これら3つはそれぞれリンクし、
「資金を集め、投資し、売上を通して利益をあげ、そして出したキャッシュ(お金)を分配する」
という企業の活動を表現することができます。

財務3表が存在することにより、企業は自分たちの事業活動が適正か否かを判断でき、そして銀行や株主も会社にお金を出して良いのか否かの判断ができるようになるわけです。

つまり、超大事、ということです。

この3つ、財務3表をここで覚えて下さい。

  • 損益計算書(PL)
  • 貸借対照表(BS)
  • キャッシュ・フロー計算書(CF)

例題と回答を見てみる

問題1:財務3表とは

財務3表とは、(①)をあらわす「貸借対照表(BS)」と、(②)を表す「損益計算書(PL)」、(③)を表す「キャッシュフロー計算書(CF)」のことを指す。

  • どのくらい利益をあげているか
  • どのくらいの経営効率があるか
  • 会社のお金の動き
  • どのようにお金を集め、それを何に投資しているか
  • 会社の資本の動き

解答1:財務3表とは

① どのようにお金を集め、それを何に投資しているか

② どのくらい利益をあげているか

③ 会社のお金の動き


今回、押さえていただきたいのは、ビジネスの流れの話と、その流れが財務3表によって示されているという点についてです。

この話は、仮に起業をしたい、ということになったのなら、必然的につきまとってくる話です。
また、会社員として働いていても、役職があがればあがるほど、関係性が強くなってくる話です。

会計の話は、本当に小難しいことが多いですが、是非、しっかり押さえていただければと思います。

本記事は管理会計基礎講座というテーマで連載を進めています。

次回は、貸借対照表(BS)の概要についての解説です。
その後の予定としては、損益計算書(PL)、キャッシュ・フロー計算書(CF)、そして改めて財務三表のつながりについて、ざっくりとした見方やポイントについて解説する流れで考えています。

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【例題】本題の前に会計基礎を~管理会計基礎②~

前回、会計というスキルは経理だけのものではないですよ、普遍性の高いスキルですよ、という話をしました。
今回は、使える会計スキル、に入る前に、簡単にそもそもの会計の基礎について話をしようと思います。
小難しいかもしれませんが、ここを通過する必要がまぁあるので、頑張っていきましょう。

まずは、いきなりですが例題からです。

前回はこちらです。

さっそく例題に取り組んでみましょう

さて、先日、このようなツイートをしました。

ようは、いきなりインプットから入るより、アウトプットできない部分を明確にしてからインプットした方が良いよ、ということですね。

というわけで、さっそく例題に取り組んでみましょう。

問題1:財務3表とは

財務3表とは、(①)をあらわす「貸借対照表(BS)」と、(②)を表す「損益計算書(PL)」、(③)を表す「キャッシュフロー計算書(CF)」のことを指す。

  • どのくらい利益をあげているか
  • どのくらいの経営効率があるか
  • 会社のお金の動き
  • どのようにお金を集め、それを何に投資しているか
  • 会社の資本の動き

問題2:貸借対照表とは

貸借対照表の右側は(④)を示し、左側は(⑤)を示している。

  • 資金の調達元
  • 資金の貸付先
  • 資金の使用使途
  • 資金の支払先

問題3:貸借対照表の右側の分類(1)

貸借対照表の右側の性質は、大きく分けて(⑥)(純資産)、(⑦)(有利子負債)、(⑧)(事業継続により無償で調達している資金)の3つに分類できる。

  • 信用創造
  • 他人の金
  • 自分(株主)の金
  • 利益の額
  • 価値創造

問題4:貸借対照表の右側の分類(2)

貸借対照表の右側は、(⑨)と純資産(自己資本)の3つに分類されている。
⑨は返済期限が(⑩)以内か否かによって区別され、純資産は資本金(株主が振り込んだ金額)と(⑪)(過去の利益蓄積)に大別できる。

  • 短期借入金、長期借入金
  • 流動負債、固定負債
  • 1年
  • 5年
  • 配当金
  • 利益剰余金

問題5:貸借対照表の左側の分類

貸借対照表の左側は流動資産と固定資産(固定資産+投資その他の資産)に大別できる。
流動資産の主なものは、現預金、(⑫)、売掛金(売掛債権)、
固定資産の主なものは、土地・建物・工具器具備品、子会社株式、(⑬)である。

  • 買掛金(支払債務)
  • 在庫(棚卸資産)
  • リース料
  • 敷金・保証金
  • 社債

問題6:設備投資と減価償却費

A社の今期の本社投資は10億円、これを10年で均等償却するものとする。
この投資にかかわる今期の減価償却費は(⑭)である。
減価償却の意味は投資時にすべての金額を費用として認識するのではなく、
その投資が有効な期間にわたって均等に費用按分するのが合理的というものである。
この金額は、損益計算書の(⑮)の項目に含まれる。

  • 10億円
  • 1億円
  • 売上原価
  • 販売管理費
  • 営業外費用
  • 特別損失

問題7:損益計算書の構造

損益計算書の中で、本業の利益を表す(⑯)は金利支払前の利益であり、
(⑰)は金利支払後かつ税金支払前の利益である。
損益計算書上の利益は会計上の利益であり、1年間に稼いだキャッシュの額とは異なる。
簡易的にキャッシュ創出額を計算するには、(⑯)に、
会計上は費用とみなされるか実質的に当期にキャッシュ流出を伴わない(⑱)を加算すればよい。

  • 当期利益(純利益)
  • 経常利益
  • 営業利益
  • 減価償却費
  • 設備投資

問題8:キャッシュフロー計算書の構造と分類

キャッシュフロー計算書は、営業CF(営業活動の利益)、投資CF(設備投資に係る現金支出)、
財務CF(資金調達と返済)に分けられる。
(+)/(-)は資金の流入/流出を表す。
営業で利益を上げているが、将来のためにそれ以上の設備投資を行い、
不足分を銀行からの借入増で行っている企業Bのキャッシュフロー計算書は(⑲)に、
営業で利益を上げているが、設備投資は抑制して少額実施し、
余剰分を銀行に返済している企業Cのキャッシュフロー計算書は(⑳)となる。

  • 営業(+)、投資(+)、財務(ー)
  • 営業(+)、投資(ー)、財務(+)
  • 営業(+)、投資(ー)、財務(ー)
  • 営業(+)、投資(+)、財務(+)

解答

さて、どうでしたでしょうか?

会計にあまり触れていない多くの方にとっては小難しい内容だったかと思います。
とりあえず解答を示します。

問題1:財務3表とは

① どのようにお金を集め、それを何に投資しているか

② どのくらい利益をあげているか

③ 会社のお金の動き

問題2:貸借対照表とは

④ 資金の調達元

⑤ 資金の使用使途

問題3:貸借対照表の右側の分類(1)

⑥ 自分(株主)の金

⑦ 他人の金

⑧ 信用創造

問題4:貸借対照表の右側の分類(2)

⑨ 流動負債、固定負債

⑩ 1年

⑪ 利益剰余金

問題5:貸借対照表の左側の分類

⑫ 在庫(棚卸資産)

⑬ 敷金・保証金

問題6:設備投資と減価償却費

⑭ 1億円

⑮ 販売管理費

問題7:損益計算書の構造

⑯ 営業利益

⑰ 経常利益

⑱ 減価償却費

問題8:キャッシュフロー計算書の構造と分類

⑲ 営業(+)、投資(ー)、財務(+)

⑳ 営業(+)、投資(ー)、財務(ー)


できた方も、できなかった方も、
「自分は何をどこまで理解していて、何を理解していないのか?」
を明確に理解しておくと学習効率は高まります。

問題に対する解説は次回以降で順番ずつ出していきます。

本記事は管理会計基礎講座というテーマで連載を進めています。

次回は、財務3表の概要についての解説です。
その後の予定としては、貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、キャッシュ・フロー計算書(CF)、そして改めて財務三表のつながりについて、ざっくりとした見方やポイントについて解説する流れで考えています。

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会計は経理だけのものではない~管理会計基礎①~

簿記や会計、というビジネス・ジャンルが存在します。
多くの諸先輩方が「学んだ方が良い」という一方で、苦手意識を持っている人も多い領域です。
結局「経理が学ぶ領域」という状態になってしまっています。
ここれでは、会計は経理だけのものではないよ、と題して、その意味を解説していきます。

「〇〇に強い」とはどういう状況?

さて、唐突ですが、「〇〇に強い」とはどういう状況でしょうか?

と言われても困ると思うので、この〇〇に「英語」をあてはめて見ます。

「英語に強い」とは?

それでは、「英語に強い」とは、どういう状況でしょうか?どのようなスキルを身に着けていたら「英語に強い」と言えるでしょうか?

ちょっと考えてみて下さい。

はい、考えてみたでしょうか?
それとも、すっとスクロールしたでしょうか?

それはともかくとして、「英語に強い」を分解すると次のようになると例示できます。

  • 読める
  • 書ける
  • 聴ける
  • 話せる

ようは、読み書き会話の要素をいずれか、ないしは全部できて「英語に強い」ということですね。
その水準感を脇において考えれば、とりあえず大きな反論は無いかと思います。

それでは、今度は〇〇に「会計」をはめてみましょう。

「会計に強い」とは?

「会計に強い」という状況はどのようなものでしょうか?

さきほどの英語の例にならって、考えてみて下さい。
どのような使用場面に分解できるでしょうか?
スキル的にはどのような切り分けができるでしょうか?

もったいぶってもあれなので、早速、ここでの回答を示します。

「会計に強い」は次の3つに分解することができます。

  • 読む
  • 活かす
  • 作る

これだけだとわかり辛いと思うので、図解で解説します。

まず、会計の「読む」スキル。

これは、決算書や財務資料の読解力です。

上場会社はIR情報として、各種決算資料を公開しています。

こういった資料を、ざっくりでも良いので、読むことができるか?
雰囲気として、会社がどういう状況にあるのかを掴むことができるか?という読解力です。
自社内の管理会計資料を読むスキルもこれにあたります。

文字通り「読む」だけのスキルなので、専門性は低く、慣れの問題でクリアできるレベル感です。

次に、「活かす」スキル。

これは、経営分析、財務といった領域で使うスキルになります。

仕事をしていれば、会社の状態を集計された数字を活用して、経営の判断や、タスクの水準向上に繋げるかと思います。
こういった管理会計のスキルがこれに該当します。

また、管理会計の数字を詳細に分析して、アクションの改善につなげる経営分析のスキルや、会社の財政状態を適切に把握し外部からお金を調達するスキルもここに含まれます。

ようは、そこにある数字を活用して、仕事に反映させるためにスキルですね。

最後に、「作る」スキル。

これは、会社の状態を日々集計していくスキルです。

経理が行うような簿記、会計がこれに該当します。

専門性が高い領域になるので、確かな知識と経験が必要になります。

会計は経理でしか有効活用できないのか?

こうして書くと、仕事をする上で必要なのは、「活かす」スキルなんだな!と思われるかもしれません。
そして、会計の「作る」スキルは経理にとって有効で、それ以外の部署には必要ないスキルなのかも?とも思うかもしれません。

この考え自体は、概ねは間違ってはいません。概ねは、です。

しかし考えてみて下さい。

みなさんも、日々の仕事の中でKPIの集計を行ったりしませんか?

今期のOKRをどう設定しようか考えたりしませんか?

ここまで書けばわかるかと思いますが、「作る」スキルは経理だけのものではなく、普遍的なビジネス・スキルです。

何か問題が発生した時や、改善したい事象が出てきた時、(まともな人なら)起きていることを冷静に把握し分析を行うはずです。
そして、その分析は数字ベースで実施するはずです(と期待を込めて書く)。
分析の結果として設定する、改善の結果を示すファクターとしてKPIも見ていくはずで、これも数字で表されているはずです。

つまり、何か乗り越えなければいけない問題を数字で捉え、そして改善進捗も数字で管理する、ということです。
私はこれを、立派な会計のスキルだと考えます。

是非、会計を経理だけのものと思わず、そして苦手意識を持たずに勉強をしてみてください。
仕事の展望が開けるはずですし、できるようになると面白いですよ。


本記事は管理会計基礎講座というテーマで連載を考えています。

次回以降は、何回かにわけて、会社にとって重要な会計要素を読み解く基礎として、BS/PL/CFについて、管理会計的観点で解説していきます。

次回はこちらです。

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