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大戸屋臨時株主総会_経営陣刷新が決議されました

TOBが成立していた大戸屋VSコロワイド。
11月4日に臨時株主総会があり、現経営陣の解約と新経営陣の選任が決議されました。
株主構成だけでなく経営陣も、これで入れ替わった形になります。

成立時の記事はこちらになります。

報道内容

まあ、既定路線ではありましたが、場がひっくり返る、という奇跡は起きなかったようです。

臨時報告書はまだ開示されないでしょうから、どれだけの比率だったのかは不明ですが、報道からは賛否、意見がわかれている様子ですね。

改革は必要だよね、という一方で、納得がいかない、という形です。

牛角などを運営する外食大手コロワイドによる定食チェーンの大戸屋ホールディングスへのTOB=株式の公開買い付けが成立したことを受けた大戸屋の臨時の株主総会が開かれ、コロワイド側が提案していた経営陣の刷新を求める議案が可決されました。

(中略)

「今の経営陣では結果を出せていないことが明らかで、コロワイドがいいかどうかはまだ分からないが、改革は必要だと思った。守るものは守りつついい方向に変わってほしい」

(中略)

「大戸屋の定食が好きでよく食べていたけれど、今後は行かなくなると思う。お金を積んで株を買い上げたものの、十分な説明もなく納得できない」

NHK「大戸屋 臨時株主総会 経営陣の刷新求める議案が可決」より

経営陣は諦めていた模様

招集通知を見ると、経営陣は既に諦めていた様子が伺えます。

当社取締役会の意見

当社は、2020年6月25日開催の定時株主総会に係る株式会社コロワイド(以下「コロワイド」といいます。)の株主提案及びコロワイドにより2020年7月10日に開始された当社の株式に対する公開買付け(以下「本公開買付け」といいます。)について、コロワイドによる当社の連結子会社化は当社の企業価値を毀損し、株主共同の利益を害するおそれが高く、当社の現経営陣が中期経営計画を着実に実行することが最良の判断であることを主な理由として、反対の意見表明を行っておりました。もっとも、2020年9月9日付プレスリリース「株式会社コロワイドによる当社株券に対する公開買付けの結果及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ」においてお知らせいたしましたとおり、一定数の株主が本公開買付けに応募し、本公開買付けが成立したことを踏まえ、当社取締役会において、本臨時株主総会に係る株主提案(第1号議案及び第2号議案)に賛成するか否かについては当社の株主の皆様のご判断に委ねることを決議いたしました。

株式会社大戸屋ホールディングス 臨時株主総会招集ご通知より

最後の抵抗は行わなかったようです。

おそらく現経営陣は退任と共に、社内役員については同時に会社を去る事にもなるでしょう。
真偽定かではありませんが、「社風の違いは明白で、大戸屋では社員の退職が相次ぎ、社内の空気は思いという。」という話もあります。

名実ともに、大戸屋はコロワイドの傘下となったわけですが、果たしてPMIはどこまで順調に行くでしょうか?

(現経営陣、自分達で”真”大戸屋を作るのとか、良いんじゃないでしょうかね?)

コロワイドの勝因は?

結論から言って、今回のコロワイドの勝因は「勝つまで戦う」というスタンスにあります。

こちらの記事でも触れているのですがコロワイドは期間の延長と共に、下限を引き下げるという徹底ぶりでした。

一方、大戸屋側の経営陣は株主に対する、あまり根拠の無い信頼があったのか、具体的な買収防衛策を終始一貫してとっていませんでした。

やれる事があったはずなのに、事実上、ノーガード戦法です。
(もっと言うと、創業家と揉めた段階で対処が必要だった。)

今回の結果は明白だったと言えるでしょう。


今回の大戸屋VSコロワイドからいくつかの教訓があります。

  1. 買収防衛策ってやっぱり大事だよね
  2. 創業家との付き合い方は慎重に(というかコミュニケーションはしっかり)
  3. 言い方って大事(コロワイドの創業者・経営陣ね)

2.と3.に関しては、こちらの記事も参照ください。

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サブスクリプションの管理会計~演習問題解答解説~

今回は、「サブスクリプションの管理会計~演習問題~」の解答および解説になります。

演習問題はこちらになります。

解答解説①

「サブスクリプション・ビジネス」の理解について、最も正確で無いものを1つ選択してください。

  1. サブスクリプションとは、定期購入の意味である
  2. サブスクリプションビジネスにおいて、顧客の体験価値を高める事は重要である
  3. 良い製品を作りさえすれば、サブスクリプションビジネスは成功する
  4. 企業にとって、毎月の費用がわかりやすく、また変動費化できる点もBtoBサブスクリプションサービス導入の動機になっている
  5. 正確で無いものは一つもない

正解は「3.良い製品を作りさえすれば、サブスクリプションビジネスは成功する」です。

良い製品でなければ成功確度が下がるのは確かですが、良い製品であれば成功するか?と考えれば、別にサブスクリプション・ビジネスに限らす、そうではない事がわかります。

サブスクリプション・ビジネスにおいて、最も大事なのは「顧客の成功:カスタマーサクセス」を通じた顧客との関係性構築にあります。

そのため、良い製品であることは前提としつつ、カスタマーサクセスにつながる様々な活動(オンボーディングやサポート、各種コンサルティング等)に取り組んでいく事が必要です。

別の観点で言うと、「良い製品を作れば成功する(売れる)」という考えは今の時代、大前提として非常に危険です。
この発想(プロダクト・アウトの発想)により、日本企業の多くが諸外国に追い抜かれ、現状、遅れをとっている状況に陥っています。

解答解説②

「THE MODEL」の理解について、最も正確なものを1つ選択してください。

  1. THE MODELはどのようなサブスクリプションビジネスにおいても適用できる万能性の高い手法である
  2. THE MODELロールにおいては、各部署が自部署KPIの最大化を図れば、ビジネスは成功する
  3. カスタマーサクセスの至上目的は解約率(チャーンレート)を下げる事である
  4. マーケティングは、大量にリードを確保し、次工程に渡す事が重要である
  5. 正確な理解は一つもない

正解は「5.正確な理解は一つもない」です。

THE MODELロールは、主にSMB(スモールビジネス)において有効性の高い、また再現性の高い手法です。
つまりエンタープライズ(大企業)向けサービスにおいては適合性が大きく下がります。
また、サブスクリプション・ビジネスと一口に言っても様々なサービスが存在しており、例えSMB向けであったとしても、一様にTHE MODELロールが通用するとは限りません。
あくまでも、自社にとって最適な手法にカスタマイズ、模索することが必要です。

自部署KPIの追求はある側面において重要ではありますが、それだけではいけません。
質の悪いリードを大量に渡されてもセールス部門は困りますね。
部分最適化に陥らないよう、あくまでも全社単位での最適化、KPIの最適化が必要です。

カスタマーサクセスの至上目的はカスタマーサクセスです(まぁ、人によって考え方は違うかもですが)。
解約率(チャーンレート)の低減は、詰まる所、カスタマーサクセスの結果として生じる現象です。
チャーンレート低減は重要ですが、ここは決して目的ではありません。

上述した通り、質の悪いリードを大量に渡されてもセールス部門は困ります。
質の良いリード(商談設定率や契約確度の高いリード、さらに言うと長期的に取引してくれそうなリード)を確保し、次工程に渡していく事が求められます。
もっとも上流工程にいるため、全体感を持って、全体施策の最適化を行う役目も一側面としてはあります。

解答解説③

MRRの定義は?正しいものを1つ選択してください。

  1. 年間定額収益
  2. 月間定額収益
  3. 平均顧客単価
  4. 顧客生涯収益
  5. どれも正しくない

正解は、「2.月間定額収益」ですね。

MRRはMonthly Recurring Revenue:月次収益,月間定額収益の略です。

用語略語の意味をしっかりと理解し覚えていきましょう。

解答解説④

リードを獲得するためのコスト、CPA/CPLに関係する会計科目として適切で無いものは?最も正確で無いものを1つ選択してください。

  1. 売上原価
  2. 人件費
  3. 広告宣伝費
  4. システム利用料
  5. 正確な勘定科目は一つもない

正解は「1.売上原価」です。

CPL(リードを確保するのに必要な費用)ですが、まず代表格としては「広告宣伝費」があります。
SNS/WEBマーケティングを中心に、雑誌や展示会等々、様々な広告手法により認知度を高めリードを確保していきます。

そして、それらの活動を行うにあたって人やシステムが必要であり「人件費」「システム利用料」といった費用がかかってきます。

売上原価は、実際に成約(契約)がとれた後、実際にサービスを提供していく段階になって計上されていく費用科目ですね。

解答解説⑤

Payback Periodsの理解について、正しいものを選んで下さい。

  1. 大きい方が良い
  2. 小さい方が良い
  3. 数字の適切な目安はものにより異なるので、良い悪いはない

正解は「2.小さい方が良い」です。

Payback PeriodsはCACを回収できるまでに必要な期間です。
当たり前ですが、コストをかければかけるほど顧客を獲得するのが容易となり、またかけたコスト(投資)の回収は困難になります。
つまり、Payback Periodが短ければ短いほど、投資回収は容易である事、逆に長ければ長いほど困難になります。

解答解説⑥

Churn Rateの理解について、正しく無いものを1つ選択してください。

  1. 初期導入のお手伝い(オンボーディングやトレーニング)は重要なアクションである
  2. 旧来のコールセンター(カスタマーサポート)も、チャーンレート低減のための重要な役割である
  3. チャーンレートを下げるために、契約やサービス画面の設計で、解約し辛いものにする
  4. チャーンレートは0以下にできる
  5. 正しく無いものは一つもない

正解は「3.チャーンレートを下げるために、契約やサービス画面の設計で、解約し辛いものにする」です。

大前提として。
もし、「チャーンレートを下げるために、解約し辛いようにしてしまおう!」という発想をしているのであれば、早々にその考えを改めた方が良いでしょう。

自分自身の事を考えてみればわかると思うのですが、もう解約したい、というサービスがあったとして、どうやったら解約できるのか、サービスの管理画面やHPを見てもよくわからない。
わかったとしても、その方法がコールセンター(しかも、平日日中しか受け付けていない)への架電での依頼だとしたら、非常に面倒でイライラしませんか?
酷い場合だと、解約専用の電話番号が海外で、言葉がうまく通じず、一向に解約できない、というサービスも存在します。

普通に考えたら、このような目にあったら、そのもう解約しようとしているサービスに対して、憎悪の念を抱く、とわかるはずです。
解約し辛いようにする、という発想は非常に浅ましいものなので、早々に改めましょう。

なお、チャーンレートの中でのネット・チャーンは0以下にすることができ、この状況を「ネガティブ・チャーン」と言います。
KPI解説も参考にしてください。

解答解説⑦

LTV/CAC(ユニットエコノミクス)の理解について、正しいものを選んで下さい。

  1. 大きい方が良い
  2. 小さい方が良い
  3. 数字の適切な目安はものにより異なるので、良い悪いはない

正解は「1.大きい方が良い」です。

ユニットエコノミクスは事業の経済性(収益性)を経済ユニット単位で示したものです。

まず、LTVは、一顧客が、取引期間を通じて企業にもたらす利益の総額でしたね。
そのため大きければ大きい方が良く、またCACはようはコストなので小さければ小さい方が良いです。

つまり、LTV/CACは大きければ大きい方が良い、という事になります。

数値の目安としては、経験則でしか無いのですが、「ユニットエコノミクス > 3」が望ましいとされています。


演習問題の⑧と⑨は自由回答方式なので、別に明確な答えが存在するものではありません。
(そのため、解説的なものは省略します。)

ポイント的なものをあえて解説するのならば、「自社のビジネスを良くするために、どうしていくか?」という、視点が必要、という事です。

日々忙しいと目の前のタスクに埋もれがちです。
日々のタスクは重要ではあるのですが、こういう何かを考えるタイミングでは、もっとマクロ的な視点で「どうあるべきか?」を考え、テキストとしてまとめるのが良いでしょう。

最終的にタスクに落とし込む段階では「どうあるべきか?(何をやるべきか?)」「自分達(もしくは自分自身個人)がやれることは何か?」「自分達(もしくは自分自身個人)がやりたいことは何か?」が極力重なっている領域にフォーカスしていくことが重要です。

自社の課題を整理した上で、マクロ的にどうしていけばよいか?につなげ、最終的に個人レベルのタスクに落とし込めれば、この種の演習としては満点と言えるでしょう。

演習問題⑧
自社のビジネス(サブスクリプション系と想定する)において、あなたがTHE MODELにおける一連のKPIを「最適化」に取り組むとしたら、どのような事に取り組みますか?(自由回答方式)

演習問題⑨
自社のビジネス(サブスクリプション系と想定する)において、カスタマーサクセスの観点で問題だと思う事は何ですか?(自由回答方式)

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サブスクリプションの管理会計~演習問題~

サブスクリプションの管理会計に対する理解度確認用の演習問題です。
解答および解説は次回に行います。

演習問題①

「サブスクリプション・ビジネス」の理解について、最も正確で無いものを1つ選択してください。

  1. サブスクリプションとは、定期購入の意味である
  2. サブスクリプションビジネスにおいて、顧客の体験価値を高める事は重要である
  3. 良い製品を作りさえすれば、サブスクリプションビジネスは成功する
  4. 企業にとって、毎月の費用がわかりやすく、また変動費化できる点もBtoBサブスクリプションサービス導入の動機になっている
  5. 正確で無いものは一つもない

演習問題②

「THE MODEL」の理解について、最も正確なものを1つ選択してください。

  1. THE MODELはどのようなサブスクリプションビジネスにおいても適用できる万能性の高い手法である
  2. THE MODELロールにおいては、各部署が自部署KPIの最大化を図れば、ビジネスは成功する
  3. カスタマーサクセスの至上目的は解約率(チャーンレート)を下げる事である
  4. マーケティングは、大量にリードを確保し、次工程に渡す事が重要である
  5. 正確な理解は一つもない

演習問題③

MRRの定義は?正しいものを1つ選択してください。

  1. 年間定額収益
  2. 月間定額収益
  3. 平均顧客単価
  4. 顧客生涯収益
  5. どれも正しくない

演習問題④

リードを獲得するためのコスト、CPA/CPLに関係する会計科目として適切で無いものは?最も正確で無いものを1つ選択してください。

  1. 売上原価
  2. 人件費
  3. 広告宣伝費
  4. システム利用料
  5. 正確な勘定科目は一つもない

演習問題⑤

Payback Periodsの理解について、正しいものを選んで下さい。

  1. 大きい方が良い
  2. 小さい方が良い
  3. 数字の適切な目安はものにより異なるので、良い悪いはない

演習問題⑥

Churn Rateの理解について、正しく無いものを1つ選択してください。

  1. 初期導入のお手伝い(オンボーディングやトレーニング)は重要なアクションである
  2. 旧来のコールセンター(カスタマーサポート)も、チャーンレート低減のための重要な役割である
  3. チャーンレートを下げるために、契約やサービス画面の設計で、解約し辛いものにする
  4. チャーンレートは0以下にできる
  5. 正しく無いものは一つもない

演習問題⑦

LTV/CAC(ユニットエコノミクス)の理解について、正しいものを選んで下さい。

  1. 大きい方が良い
  2. 小さい方が良い
  3. 数字の適切な目安はものにより異なるので、良い悪いはない

演習問題⑧

自社のビジネス(サブスクリプション系と想定する)において、あなたがTHE MODELにおける一連のKPIを「最適化」に取り組むとしたら、どのような事に取り組みますか?(自由回答方式)

演習問題⑨

自社のビジネス(サブスクリプション系と想定する)において、カスタマーサクセスの観点で問題だと思う事は何ですか?(自由回答方式)


解答および解説は次回に行います。

上記演習問題利用したい場合は自由にご利用ください。
カスタマイズもご自由に行ってください。

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IPO準備企業の公告方法~日刊新聞紙が一番良い理由~

公告の方法について、そこまで真剣に考えずに、何となく一般的に落ちている(ダウンロード)できるテンプレートを使って起業している、という経営者は多いのでは無いでしょうか?
そして、それがそのままの場合も。
今回はIPO準備企業において、公告の方法を日刊新聞紙にしておくのが一番良いよ、という話をします。

(なお、一部の手続き手間暇考えなければ電子公告の方が安いのは確かです。後述します。)

公告とは

とりあえず基本的な所を簡単に。

株式会社は、会社法によって公告(広告じゃないですよ。”公”です。)を行う義務があります。
(怠ると100万円いかの過料が科される場合がある。とされているが、現実問題として決算公告を怠ったことにより過料を科された、という事例が無いため、ほとんどの会社がこの義務を守っていない。最低限必要な決定公告、決算公告をしぶしぶやっているのが現実。)

この公告は、会社から各種の利害関係者に各種の情報や決定について公に告知することです。

そして、その公告の方法は会社法によって定めがあります。

下記の通り、官報、日刊紙、電子公告のいずれかの方法を選択する必要があります。

(会社の公告方法)
第九百三十九条
会社は、公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定款で定めることができる。
一 官報に掲載する方法
二 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
三 電子公告

さて、この公告ですが、決算公告と決定公告の2種類があります。

決算公告は毎期、総会後に遅滞なく実施する必要があるのですが、上述かっこ書きの通り、ほとんど守っている会社はありません。

減資や吸収合併などのイベントがある時に、しぶしぶ行われるのが実態で、極力手間暇を削りたいと考える経営者や管理部門担当者は多いです。

公告方法は日刊紙が良い

さて、IPO準備企業(ベンチャー企業もですね)にとっては日刊紙を選択するのが一番良い、と私は考えています。

何故ならば、一番手間暇が少ないからです。

単純に決算公告を出すだけの会社ならば、電子公告の方が実際コストは安いですし、そもそも出さなくとも、現実的な損害がまずありません(という事を声を大にして言ってはいけないんですけれどね)。

ただ、急成長中の企業にとっては、増資に関連する減資(エクイティ調達後の減資)やM&Aに関連して吸収合併などのイベントが比較的多く発生するのが現実です。

この場合に、手続き的に必須になってくるのがダブル公告です。

減資や吸収合併等を行う場合、経済的な影響度が大きいという理由で(本当に大きいのかどうかは問題ではなく)、債権者の利益をほごするために、会社法上「債権者保護手続き」を行う事が求められています。
方法として個別催告(債権者一人一人に減資や吸収合併等の事実を通告する)があるのですが、じゃあ、どこまでの債権者に送らなければいけないのか、全員なのか影響度が大きい所なのか等々、非常にあいまいな部分の存在や厳密にやろうとした時の無意味な事務作業が発生します。
そこでこの債権者保護手続きを簡素化する方法があり、これがダブル公告です。
定款に定める公告方法の他に、官報公告を行う事により、この格別催告を省略できます。

ここで意外に勘違いしている方が多いのですが、公告方法を官報に指定しておくと、このダブル公告が機能しません。
官報公告に加え、定款に定める方法により公告することにより、債権者保護手続きの個別催告を省略できる、とされているからです。

というわけで、公告方法の選択肢として、官報がまず消えます。

次に電子公告です。

電子公告は会社のウェブサイト等に掲載するだけで事足りるので、決算公告を出す場合には非常に便利です。
PDF形式の決算書をDLできるような形でおいておけば、それでフィニッシュだからです。
(ただし、貸借対照表の要旨ではなくすべてを、5年間掲載する必要がある。)

しかし、吸収合併等の手続きを行う場合には別の問題が発生します。
それは登記を行う際に、添付書類として「公告をしたことを証する書面」が必要となる点です。

この書面は、調査会社なるものに、自社が決定公告を出している事に関して調査をしてもらい、証明書の発行をお願いする形で入手できるのですが、数万円から十数万円以上の費用がかかります。

そして、その依頼手続き等を熟知している管理担当者はそこまで世の中に存在せず、手続きが発生する度に大慌てになるのが現実です。

電子公告調査機関:電子公告は紙面による公告と異なり、改ざん等が容易ですし、またサーバーダウンのリスクなど必ずしも安定的に掲載し続ける事ができるとは限りません。
そのため、電子公告が適法に行われたか否かについて客観的な証明として、第三者の調査機関の調査を受ける必要があります。

正直、あまり意味があるとは思えませんし、無駄にお金がかかるのですが、法律で求められているので、必要なのです。

よくわからんイベント(合併、会社分割、資本減少、準備減少等)は会社として無いよ、というようならば電子公告で良いのですが、急成長企業にありがちな各種のイベントがあるようならば、結局お金がかかるのなら、手間暇が極力少ない手続きの方が良いに決まっています。

その点、日刊紙(日経新聞でも日刊工業新聞でも)+官報という形ならば、出す先が違うだけで、手続きとしては同じ公告掲載依頼です。
また、公告は手続き経験がある管理担当者も多いので、スムーズな場合が多いです。

大多数の会社にとっては電子公告+官報方式が一番、費用面ではお安いのは確かなのですが、時間的にも人的にもリソースの限られているIPO準備企業(ベンチャー企業も)にとっては、手間暇が少ない方法が結局一番リーズナブルなはずです。


というわけで、総合的に考えると公告の方法は日刊紙が一番良い、となります。
個人的には日刊工業新聞とかが良いですね。

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個変分解をExcelで~管理会計基礎講座各論~

限界利益を出したい時、損益分岐点分析を行いたい時。
悩ましいのが個変分解です。
今回は、Excelで簡便的に個変分解を行う方法を紹介します。
いわゆる回帰分析法により行います。

用意したサンプルPL

そもそも限界利益とか損益分岐点とかがわからん、という方はこちらの記事を参照してください。

今回は、上記記事で触れた回帰分析法による個変分解を、Excelでやってみましょう、という話です。

用意したサンプルPLは次のようなものです。

これの内、売上高をx(エックス)、営業利益をy(ワイ)として、y = ax + b の数式を、Excelの機能で算出します。

使用する関数紹介(SLOPE関数、INTERCEPT関数)

使用する関数はSLOPE関数とINTERCEPT関数の2つです。

SLOPE関数は、回帰直線の傾きを求める関数です。

SLOPE(yの範囲,xの範囲)で式の入力とセルの選択を行います。

yの範囲およびxの範囲は、それぞれ既知の値をセル範囲または配列で指定します。

INTERCEPT関数は、回帰直線の切片を求める関数です。

INTERCEPT(yの範囲,xの範囲)で式の入力とセルの選択を行います。

こちらも、yの範囲およびxの範囲は、それぞれ既知の値をセル範囲または配列で指定します。

(もし、そもそもy=ax+bとか、傾き・切片とかがわからなければ、中学数学を勉強してみましょう!)

実際の具体を見た方がわかりやすいと思うので、これから提示します。

関数を用いて傾きと切片を求めてみる

冒頭で提示したサンプルPLに、上で紹介した関数を適用してみます。

まずはSLOPE関数です。
適当なセルに下記図のようなイメージで入力とセル選択を行います。

INTERCEPT関数も同様ですね。
適当なセルに下記図のようなイメージで入力とセル選択を行います。

これにより算出した結果が下記図です。

y = 0.73x – 5,297 という結果が出ました。

この計算式を元に、個変分解後のPLを算出したのが次のPL図です。

元のPLと比較しても、精度高く計算できている事がわかりますね。

このような形で、Excelの関数を用いると、簡単に個変分解を行う事ができます。

(もちろん、会社のPLは複雑なので、ここまでキレイな結果が出る事は稀ですが、シンプルなPLですとかなり精度高く出す事ができます。)

グラフから算出する方法もある

今度は関数を用いずにグラフから算出する方法も紹介します。

元のPLの内、X部分とY部分を選択します(わかりやすい様に色を黄色に変えています)。

そして、Excelのタブの内「挿入」タブを選択。

中央辺りにグラフの選択フォームが表示されているはずなので、この内「散布図」を選択し、左上の一番シンプルなサンプルを選択します。

そうすると出てくるのが次のような簡単なグラフです。

細かい書式の調整は省略します。

この後、点の部分を右クリックして表示される「近似曲線の書式設定」を選択します。

そうすると出てくるのが次の書式設定画面です。

次の内「線形近似」を選択し、また下の方にある「グラフに数式を表示する」をチェックします。

これにより、下記図のように数式が表示されます。

関数を用いて算出した傾き・切片と同じ数字ですね。

関数で出した数字のチェックに用いる事もできます。


このように、あくまでも簡便的な方法ですが、簡単に個変分解を行う事ができます。

サンプルExcelもダウンロードできるようにしているので、試してみて下さい。

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限界利益と損益分岐点(CVP)~管理会計基礎講座各論~

今回は、管理会計上の考え方である限界利益と損益分岐点(CVP)について解説します。
基本的かつ非常に重要な概念ですので、確実に習得しましょう。

限界利益

限界利益は次の式で表現されます。

限界利益 = 売上高 - 変動費

変動費とは、売上高に連動して(一定、比例して)増減していく費用の事です。
売上高と変動費、そして限界利益の関係を図で示すと、次の通りとなります。

濃い灰色の部分が限界利益ですね。

なお、変動費の例としては、商品原価、販売手数料、消耗品費などが該当します。

この限界利益ですが、会社組織の数字感を把握する上で非常に重要でして、私の感覚値ですが、優秀な経営企画担当者は、「限界利益率は?」と聞かれた時に、大体、即答できます。

損益分岐点(CVP)

次に損益分岐点(CVP)なのですが、その前に固定費に関して。

固定費とは、変動費とは異なり、売上の増減に関わらず、一定額発生する費用の事です。

固定費の例としては、各種人件費(特に正社員費用)、地代家賃、水道光熱費、減価償却費、リース料などが該当します。

先ほど紹介した限界利益の図に固定費を加えると次のようになります。

横に長い点線が、どのような売上高であっても一定額発生する固定費のラインだとして、薄い灰色の変動費部分に、固定費の幅分上乗せしたのが黒色直線のライン。
これが会社運営上、発生する費用の総額です。

売上高のライン(オレンジ色の線上)と、費用のライン(黒色直線)が交差する点が「損益分岐点」であり、その損益分岐点の時の売上高が「損益分岐点売上高」です。

ようは、損益分岐点とは、売上高と費用の額がちょうど等しくなるポイントの事で、そのポイントの売上高を損益分岐点売上高と言うわけです。

会社運営上、固定費という、売上高に関係無く一定額発生する費用がある以上、最低限、それを賄えるだけの限界利益を創出する必要があります。
また、会社として利益を出して行く以上、損益分岐点売上高よりも高い売上高を出して行かなければいけません。

実際の売上高と、損益分岐点売上高との差から算出される、安全余裕率についても把握し、自社の状況について、より正確に把握しておくことも、考えると良いでしょう。

安全余裕率 = (実際の売上高 - 損益分岐点売上高) ÷ 実際の売上高 × 100

売上高、限界利益、変動費、固定費、利益の関係を箱で表現すると、次のようになります。

固変分解の考え方

ここで課題になるのが、何が変動費で、何が固定費なのか?という問題です。

よく使われる分類方法(固変分解)は、次に2つです。

  • 勘定科目法
  • 回帰分析法

勘定科目法

勘定科目法は、勘定科目毎に、これは変動費、これは固定費、とフラグ付けをして割り振る簡便的な方法です。

固変分解は、結構難易度が高く、会社規模が大きくなればなるほど、正確なものを算出するのは不可能になってきます。
(もちろん、不可能では無いのですが、時間リソース的に現実的で無く、また変動費・固定費の額が毎月、毎期変わる事を考えると、正確なものを出す意味がほぼ無い。)

そのため、簡便的に算出をして、ざっくりと限界利益率は何%、固定費ないくらいくら、と把握する事は、一つ考えられる方法です。

多少発展的に考えると、勘定科目毎に、固定費は内何%と設定して、そのパーセント分の金額総額を固定費、他は変動費、とするやり方もあります。

いずれにせよ、Excel等の表計算を用いれば、比較的簡単に算出できるので、計算してみるのが良いでしょう。

回帰分析法

回帰分析法は、毎月のPLを並べて見て、その売上高の推移と、費用の推移から、統計的に変動費率、固定費額を割り出す方法です。

学生時代の数学でやって、y = ax + b を算出するイメージです。

手動でやるのは、ほぼ不可能なので、Excel等の表計算を利用して計算します。
具体的には、散布図を作成して、数式を自動で出す方法が考えられます。

回帰分析法については、こちらの記事でも解説しているので参照してください。

上記、勘定科目法、回帰分析法のどちらも、結局、バーチャルな数字になるので、両方作ってみて、肌感覚的に正しいと思う方を使えば良いでしょう。
(数字の肌感覚は重要ですよ。)

固定費は厄介である(難易度高めの考え方)

ここまで書いてきた事は、ぶっちゃけ管理会計の本を読めば書いてある、初歩的な事です。

ここからが少し重要になってくるのですが。
この種の話をする時、当然に管理会計、もっと直接的に言うならばコストカットを意識しているものと考えられます。

その際に、どうしても固定費の考え方が厄介になってきます。

例えば人件費。

人件費は、正社員である以上、簡単に解雇等の措置を取る事ができないのが日本の法律であり、じゃあ、パートやアルバイト、派遣は解雇したりできるか、というと、現実問題として目の前に業務がある以上、簡単に整理ができないのがよくある実際です。
人の感情もありますし。

そんな事もあり、一般的には固定費として扱われる事が多いのですが、管理可能性が高いのもそうで、業務が多くて残業が発生すれば、その分は変動費と言えますし、非正規雇用の方の人件費はやはり変動費として扱うのが適切である場合も多いです。
更に、本当に業績が悪ければ、退職者分を補充しなかったり、早期退職者の募集等の方法で削減も可能です。

つまり、純粋固定費か?というと、そういうわけでも無いのが人件費です。
(上記例の場合は、固定費として扱いつつ、固定費部分の経費削減、として整理するのが一般的です。)

他には、家賃もそうですね。

こちらのパターンとしては、多店舗展開している場合における店舗家賃(と人件費)がわかりやすいです。

端的に言うと、店舗を出店すれば固定費は増え、店舗が減れば固定費は減ります。

これを会社全体で見ると、本社家賃や本部人件費のような純粋固定費性が高いものがある一方、店舗の家賃や人件費のような変動費性が高い固定費が存在、他は純粋変動費、という状況になるのです。

何をどこまで整理して考えるのか?というと厄介なのですが、この純粋固定費と変動性固定費、そして純粋変動費、という整理ができると、損益分岐点の計算精度が非常に高くなりますし、事業計画を組むうえでも非常に解像度が高くなります。

経営企画担当者は、自社の純粋固定費、変動性固定費、純粋変動費の率と額について、試算をして頭に入れておく事は、非常に重要と言えます。
特に、複数の事業がある場合、多店舗展開している場合は、重要性が高くなります。

なお、固定費も変動費も、結局はバーチャルなものなので、その意味で純粋固定費は存在せず、全て変動性固定費と言えますし、同様に変動費の中にも固定性のものがあります。
会社により、この辺りは全く状況が変わってくるので、自社の場合はどうか?をしっかり考える必要があります。

後、上記、純粋固定費、変動性固定費、純粋変動費という言葉は私の造語で、他の人にこの用語を使っても通じませんこと、ご留意ください。

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KPI設定・運用の間違い,失敗パターン10

KPI設定は重要で、非常に多くの会社が実際にKPIを設定し、その運用と改善に取り組んでいます。
しかし同時に、多くのKPI設定・運用の間違いや失敗も目にします。
今回は、KPI設定・運用のよくある間違いパターンを10個紹介します。

KPIが多すぎ問題

よくあるKPI設定の間違いパターンの1つが、KPI多すぎ問題です。

KPIの設定自体は、非常に重要でやった方が当然に良いのですが、多すぎると弊害が出てきます。

まず、マネジメントするのが大変です。
適切に測定し、日々のトラッキングを行っていく。
これはマネージャーのみならず、メンバーにとっても結構なマネジメント・コストがかかるので、部門運営コストが高くなります。

また、メンバーにとっても、追いかけなければいけないKPIが増えると、労力の増大もそうですし、業務の柔軟性の低下などが起きます。
そもそもとして、スキル水準が低いメンバーの場合、複数のKPIを同時に追いかける事が不可能な場合もあります。

部署としてどれだけのKPIを追いかけ、管理ができるのか。
重要なKPIに絞る事が肝要です。

可能であれば、「これさえ追いかければ良い!」というKPIに絞る、つまり1つのKPI設定に絞るのが最高です。

KPI測定しにくい問題

KPIの測定が難しい場合も、よくある失敗例です。

例えば、コールセンターを設置したとして、平均通話時間や、平均応答速度を測定したいとします。

これは、指標の計算などはシンプルでわかりやすいのですが、人力で測定しようとすると、ほぼほぼ無理ゲーになります。
コールセンター用の専用システムを導入する事が、KPI管理上、必須になってきます。
人力の場合、100%間違えますし、その測定コストだけで専用システム費用を賄える場合もあります。

他には、例えば人事部門として、部下との面談時間を各部門マネージャーにKPIとして課したとします。
こちらも、高い確率で虚偽報告が入ります。

このような、測定に困難性が伴うKPIは、むしろ設定しない方が良いです。

設定をするのならば、測定が簡単なものにしましょう。
上記例の場合、単純に対応件数に絞るとか、面談シートの提出率にするとかが、簡易かつ、KPIの水準をあげていくためのステップアップにつながるため、入り口の工夫としては考えられます。

KPI達成が難しすぎ問題

最近の、経営者やマネージャーがしっかり勉強している会社だと、あまり見なくなってきたのですが、それでもまだまだあるのが、達成するの無理じゃねKPIの存在です。

わかりやすい例ですと、明らかに達成が困難な営業目標の設定ですね。

これは、マネージャー含めて従業員のモチベーションを明らかに下げますし、不正につながる場合もあります。
(達成困難な目標を背景に、不正が起きた、というのは全く珍しくなく、あちらこちらで飽きる程聞きます。)

他には、食品業界における事故発生率0%、toCビジネスにおけるクレーム発生率0%などの、100%達成不可能なKPI設定などもあげられます。

取り組みのコストが無制限にかかってしまいますし、1件でも発生した段階でKPI達成が失敗、という状態になるので(従業員に、KPI達成しなくて良いんだね、という誤ったメッセージを送ることになる)、「マインドセット」としては0件達成を目標にするのは良いですが、KPI設定として、この種のものを設定するのは絶対に避けなければいけません。

この種の派生形として、KPI設定の段階で、前年の120%で行こう、的に根拠なく数字の上乗せが来るパターンがあります。
「昨年度は、年間で一人100件の成約がとれたから、今年は120件の成約を取りに行こう。月当たり2件程度増やせば良いだけだから簡単だよね!」的な。
この考えでKPIを設定していくと、いつか絶対に破綻が起きる事は、重々承知してください。

KGIにつながらない問題

これもまた、よくあるパターンです。

ようは、そのKPIを達成したとして、業績の向上につながらない、というパターンですね。

営業部門において、架電件数をKPIに設定したとします(そもそも、行動指標である架電件数をKPIに設定するのが良いのかは、脇に置く)。

この場合、架電件数“だけ”は達成して、実際の成約には結びつかない、というパターンは全く珍しい話ではありません。

他には、マーケティング部門における見込顧客数(リード数)の獲得もです。
質の悪いリードを渡されても、営業部門が疲弊するだけ、というのはよくある光景です。
(リード獲得を成功報酬として、広告宣伝費投資行った結果として、業者が質の悪いリードを大量に持ってくる、という事もありますね。)

この種のパターンが起きる要因として、経営者やマネージャーのKPIに対する理解が浅いという事もよくあるのですが、一番の要因は、自社の成功要因、つまりKFS(Key Factor for Success:もしくはKSFと言う場合も)がわかっていない場合です。

どのようなアクションや、どういう傾向の数字が出ていれば、自社の業績貢献につながるのか。
これがわかっていなければ、そもそもKPIの設定がしようが無いのですね。

何よりもまず、自社の業績貢献につながる要因は何なのか、これを明確化する事が重要です(仮説でも良いんですよ!経営は永遠の仮説検証です)。

この種の派生形として、KPIが時代や状況の変化に対応していない、というパターンもあります。
例えば、先進的な商品/サービスを開発し、顧客を独占的に確保しているステージでは、新規顧客獲得数は重要なKPIだったでしょう。
しかし、競合がどんどん誕生しているようなステージになると、解約率や顧客満足度のような指標を重要KPIとして検討していく事も必要です。もしかしたら、再契約率が重要かもしれません。
時代、顧客、会社を取り巻く環境、そういったものを良く観察し、分析を行い続ける事が肝要だ、という事ですね。

視野狭い問題

視野が狭い、目先の利益しか考えていない。

こういうのは、一個人にあたはまる話だけでなく、会社組織にもよくあてはまります。
このパターンの上記「KGIにつながらない問題」との違いは、こちらはKGIへの貢献度が高いKPIを設定していても、同時にKGIにマイナス影響がある要素があり、それが目に見えていない、という状況ですね。

例えば、事業部門で売上に関係する指標を最重要として設定し、売上を伸ばしたとします。
しかし、顧客フォローが不十分で、顧客離れが増加していったとしたら、いつかは売上増より売上減の方が大きくなるでしょう。

他には、KPIの達成のために人員を増やしたとして、効率は全く改善していない、というような光景もよく目にします。

蟻の目、鷹の目、魚の目、と言いますが、フォーカスする範囲を狭くしたり広げたり、場合によってはフォーカスするのを変えたりしながら、本当に今の状態が正しいのか?を考える事が必要です。

丸投げ問題

KPIって重要だよね!と言い、その設定や管理をマネージャーに丸投げする経営者。
もしくはマネージャーがメンバーに丸投げする事も。

当たり前ですが、そんな事をやっていて、KPI運用がうまくいくわけがありません。

トップ自らが、KPI運用を成功させる姿勢を見せ、そして行動に移す事が重要です。

  • 会社として目指すべき方向性やポリシーを明確化する(ポリシー)
  • 定期的なKPIトラッキングの会議を設定する(PDCA)
  • 適切な予算を各部署に割り当てる(予算)

このような、ポリシー、PDCA、予算の3点セットを会社として、きちんと提供するようにしましょう。
これが経営ができるKPI運用のための具体の姿勢と行動です。

本気度が低かったり、予算が適切でない場合。
KPIを経営側が見れるようになるのが非常に遅くなる事が珍しくありません。
正確で無いことも多くなります。
事実上の遅行指標になってしまったKPIは、変化の早い今の時代、役立たずとしか言いようがありません。
やるなら本気で、やれる範囲内でリアルタイムに、正確にとれるKPI運用を考えましょう。

KPI押し付け問題

上記「丸投げ問題」とは逆のパターンです。

関係者間で合意を取らずに、経営者や経営企画などが押し付けたKPI。
これは達成確度が著しく低下します。

実際に業務を行う担当部門とその責任者をはじめ、関係者間で明確にKPIに対する合意を取っておく必要があります。

また、KPIに対する認識に相違がある場合も珍しくないので(KPI自体の定義や測定方法、達成のスケジュール感や温度感)、その辺りも曖昧にせずに明確にすり合わせた方が良いでしょう。

とは言え、現場の声を聞きすぎて、成長を鈍化させる、という事がおきては本末転倒です。

「会社の目標として、大枠でこれだけの成長を行う必要がある。そのために各部署に割り振るKGIはこうだ。このKGIを達成するための具体のKPIとKAIを検討し、ぶつけてきて欲しい。」

一定、会社としての姿勢は示しつつ、その中で各部署で自立して設定し動けるようなコミュニケーションを取る事が必要です。

なお、よく聞く話として、自分達で決めた事ならば、反発が少なく達成に向けて自主的に行動しやすい、とありますが、これ間違いです。
状況が悪くなり、達成が困難になると、結局「元々達成が困難なKPIだった」とか「状況が変わったので、KPIをリセットして考える」とかなります。
必要なのは「合意」と「達成に向けた働きかけ」です。
色々なエクスキューズ(言い訳)が出てきた時、「では、達成するためには何が必要で、どのような行動にでるべきであろうか?」というコミュニケーションを取っていく事が重要です。

コントロール不能問題

「KPI達成が難しすぎ問題」にも近しいのですが、こちらは、そもそもとしてコントロール不能案件を指しています。

例えば、チェーン経営している飲食店で、コスト削減をしよう、というような話が起きたとします。
この時、お店側にできる事と言えば、極力少ない人員でお店を運営する事や、食材のロスが起きないような管理や調理技術の向上、水や電気の節約、といった事に絞られます。
会社が、メニューや各種備品・消耗品の仕様を決めていて、お店側に決定権が無い場合や、店舗減価償却費や家賃のような、そもそもとして削減がほぼ不可能なものは、削減不可能、つまりコントロール不能と言えます。

このようなコントロール不能な領域まで含めてKPIに設定すると、目標自体が曖昧になりますし、KPI達成のための行動もバラけたりします。

あくまでもコントロール可能な領域に限定してKPIを設定する事が必須です。

人口動態(商圏内の人口)や、感染症関連での顧客動向、競合の動向、各種固定費、権限外の事象、予算的に不可能なもの。
こういったものが、コントロール不能なものです。

他には、例えばメンバーの力量含めて成熟した営業部門があったとします。
売上は、商談数×成約率×価格で決まりますが(この内、価格はコントロール不能性が高い)、仮に商談数や成約率が、理論・現実的にほぼほぼ限界値に達していたとしたら、これ以上のKPI向上はコントロール不能と言えます(類似の「KPI達成が難しすぎ問題」は、できるっちゃできるけれど難しいよね、という話)。

このような状況にある組織の場合、そもそもとして別のアプローチを探る必要があります。

給料あがらない問題

これもまぁ、よくあるパターンです。

KPIをどれだけ達成しても、自分達の給料に反映されない。
そうなると、シンプルにモチベーションがあがりませんね。

目標を達成したのであれば、何かしらの追加報酬が発生する、という仕組みは一定必要です。
(やり過ぎは良くないです。既得権益化すると、報酬によるモチベーション向上施策は効果を発揮しなくなります。)

会社の業績やトータルの予算的に、そう給料単価をあげる事が難しいという状況もあるでしょう。
この場合でも、ストックオプションによる人参ぶら下げや(そんなに効果無いよね、とはよく聞きますが)、日々のチームマネジメントの中での達成意欲の醸成など、別の切り口でのモチベーション向上は工夫した方が良いでしょう。

場合によっては、未達成における罰(叱責等)を設定する事も必要です。
(退職率の向上等のデメリットは起きますが。)

後のこと考えていない問題

やれると思っていて、蓋をあけてみたら実際は達成困難だった。
期中で環境が激変し、KPI管理も何もなくなった。
等々、想定していた通りに物事が推移しないのが経営の現実です。

適切なリスクヘッジ策を事前に準備しておければベストです。

それが難しい場合は、緊急事態体制に移行する事を決めておいて、迅速に次善策を練れるような取り決めをしておきましょう。
(CFOなのかCEOなのか、最終責任者を決めておくのも重要です。)

例えば、変動費性・コントロール可能性が高い費用項目・投資項目を明確化しておいた企業は、今回の新型コロナウイルス影響下において、迅速なコストコントロールを実行できています。


以上、「KPI設定・運用の間違い,失敗パターン10」を見ていきました。

これらは、言われればそうだよね、というような話ばかりなのですが、現実として発生してしまうものです。

定期的に、自分達の状況がどうなのか、振り替える癖を身に着けておくと良いですね。

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【会計基礎講座Q&A】会計の歴史を知りたい

このコーナーでは、セミナー等々で受けた質問に対して回答しています。
今回は会計の歴史についてですね。

質問

「会計の歴史を知りたいです。昔から、今の形なのか。
それとも、現代においては色々と変化しているのでしょうか?」

おぉぉ。

個人的には、この種の質問は非常に嬉しいものです。
まがりなりにも、会計の世界で飯を食べているので、興味を持ってくれるのは、やっぱ良いですね。

というわけで、簡単に会計の歴史を解説していきます。
(しっかり説明すると、本が書ける。)

回答

~1500年(簿記の起源)

まず、簿記の起源からです。

簿記の起源に関しては諸説があり、古代ローマ起源説と中世イタリア起源説の2説が対立しています。

詳細を書き始めると、それだけで本が書けるレベルのものになってしまうので省略しますが、とりあえず言える事は、上記2説のどちらも「メモ」レベルの簡易なものでした。

明確に簿記の原型的に語られているのが15世紀のイタリアになります。

この頃のイタリアは、学生時代にやったと思うのですが「東方貿易」なるものが流行っていました。
当時の航海は、自然との闘いや海賊の存在など、様々なリスクがありました。
このリスク低減のために誕生したのが「銀行」と「手形」です。

そして、「銀行」が「手形」を扱うために必要な物が共通の言語、つまり「簿記」だったのです。

この時に誕生したのが「B/S」、つまり「貸借対照表」です。

この時代には「P/L:損益計算書」は存在せず、シンプルに、いくらの出資をうけていたのか、債務はどうなのか、そして資産はどれくらいあるのか、というものが記載されているのみでした。
この時代は、航海の度に、会社に相当するものが成立し、航海が終わる度に清算する、という事が行われていました。

こんな杜撰なやり方で良いのか?と思うかもしれませんが、当時には「公証人」という、現代で言う会計士と弁護士を足し合わせたような職業があり、この「公証人」が各種書類の証人となっていました。
(まぁ、それでも杜撰オブ杜撰な時代だったんですけれどね。)

要約しても長いんですよ。
この種の話。

~1700年(株式会社の起源)

さて、上記で会社に相当するものは単発のものだった、と書きました。
今現代の株式会社の姿を見知っているのなら感覚的にわかるかもなのですが、これでは非効率で、財産を増やすのが非常に面倒です。

そんな中で誕生したのが「株式会社」です。
17世紀頃の事ですね。

有名な「東インド会社」の誕生です。

こうして、多くの「株主」からお金を集めてビジネスをする「株式会社」が発達する土台が誕生していきました。
(なお、東インド会社の話も、だいぶ混沌としているので、これを整理して話をすると、非常に膨大になる。)

ついでに、「監査役」が誕生したのも、この頃です。
(まぁ、それでも杜撰オブ杜撰な時代だったんですけれどね。)

~1900年(産業革命)

さて、少し想像して見ていただきたいのですが。

パソコンも無い、電卓も無い、まともな教育を受けている人達も少ない。
ついでに監視カメラも無く、貧乏な人達も多い。

そんな時代に会社運営をしていたら、何が起きると思いますか?

杜撰オブ杜撰な事が頻発するに決まっていますよね?

間違った会計報告、適当な監査、不正や盗難。
当然、お金を出している株主は激おこぷんぷん丸です(表現、もう古いか)。

「バブル」そして「バブル崩壊」があったのは学生時代の歴史でも触れられていたので、覚えていらっしゃる方も多いかと思います。
粉飾決算の影響を受けて、公認会計士なるものが誕生したのも、1800年代後半です。

そういった事もあり、各種会計手法の発達もそうですし、諸々株式会社としての役目も発達していきました。
特筆すべき点としては、「減価償却」と「連結決算」の誕生でしょうか。

1800年初頭から中頃、産業革命を背景に鉄道が発達しました。
この時、どんな事があったかというと。

鉄道の投資って、莫大なお金が必要だというのはわかりますよね。
では、ある年に行った投資が全て「費用」として扱われたら、その会社、大幅な赤字を計上する事になると思いませんか?
Cashがあれば倒産はしませんが、株主的にも赤字だと配当を受けられないので、非常に困ります。

そう、ここで誕生したのが「減価償却」であり、期間損益の概念でした。

(同時に、この辺りで、いわゆる「原価計算」も誕生、発達してきました。産業革命の時代ですし。)

更に、上記鉄道会社もそうなのですが、会社の統廃合的な物が活発になったもこの時代。
いわゆる「連結決算」もこの頃に誕生し、現代会計の礎となっています。

そうそう、下記忘れていましたが、「P/L:損益計算書」の誕生は、まだです。
この時代、何をやっていたかというと、年度はじめのB/Sと年度終わりのB/Sの差額を損益として算出し、その内訳書を収益勘定表として出す、という事をやっていました。

~2000年(現代会計学の発達)

1900年代は、現代会計学や現代金融が急激に発達した時代です。

明確に公認会計士の業務が「監査」を行う事、となったのもそうですし、アメリカをはじめ世界各国で証券法、証券取引法の類が定められてきました。

また、グローバル経済の発達と競争環境の激化も起き、単純に物を作って運んで売れば利益が出る、という時代でも無くなった来ます。
とすると、必要なのがコスト管理。
管理会計の発達です。

「P/L:損益計算書」も、そういった事もあり、ようやく誕生しました。
1900年代初頭辺りの事で、また1929年、イギリスで損益計算書の作成が義務付けられるようになりました。

なお、「C/F:キャッシュ・フロー計算書」は、1979年、アメリカの会計基準改定がきっかけで、明確に誕生、世界に広がる形となっています。

つまり、P/LやC/Fの歴史って、会計の歴史の中では、結構短いんですね。

2000年~(国際会計の時代)

さて、現代はグローバル会計、国際会計基準の時代です。
この時代の特徴は「時価」にあります。

ようは、これまでの会計は原価、コスト観点での会計だったのですが、これからの会計は価値、リターン観点での会計に変わってきている、という事ですね。

こうして、会計(アカウンティング)は、ファイナンスへと領域を広げ、今現代でも発達を続けているのです。
(まぁ、一般的にはアカウンティングとファイナンスは別分野だ、と認識される事の方が多いですが。)


物凄く端折って説明しても、これだけのボリュームになるのが会計の歴史です。
誕生の歴史を踏まえると、その会計手法の意味をより深く知ることができるので、個人的には歴史のお勉強を推奨しています。
ご興味あれば、是非、歴史の勉強にも取り組んでみて下さい。

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【会計基礎講座Q&A】ベンチャー企業のキャッシュフロー成長パターン

このコーナーでは、セミナー等々で受けた質問に対して回答しています。
今回はベンチャー企業のキャッシュフローについて、どういうパターンがあるのか?どうしていくのが良いのか?という質問です。

下記記事を元にした質問です。

なお、あまり傾聴的観点は盛り込まず、素朴に実利的観点で回答していきます。

質問

「ベンチャー企業のキャッシュフローについて、成長ステージ毎の状況で教えてください。」

企業におけるキャッシュ・フローの状態にはパターンがあります(下記表参照。このパターンから、一定、会社の状態を読み取れる。)。

営業CF投資CF財務CF現金の残高
営業活動で現金を生み出したうえに、借入などで現金を増やしている。 さらに、固定資産や有価証券なども売却している。将来の大きな投資のためにお金を集めているのだろうか。
営業活動と、固定資産や有価証券などの売却により現金を生み出し、借入の返済を積極的に行っている。 財務体質強化の段階にある会社だろう。
営業活動で現金を生み出したうえに、借入などで現金を増やし、積極的に投資活動を行なっている。 将来の戦略も明確な優良企業のパターン。
営業活動で生み出した現金を投資活動や借入金の返済に充てている。 潤沢なキャッシュフローがある会社であろう。
営業キャッシュフローマイナス分を借入と固定資産や有価証券の売却でまかなっている。 問題会社の一般的なパターン。
営業キャッシュフローマイナス分と借入返済分を固定資産や有価証券の売却でまかなっている。 過去の蓄積を切り売りして事業を継続している。
営業活動で現金を生み出せていないが、将来のために設備投資を行なっている。 営業のマイナス分と設備投資資金をすべて借入や新株発行でまかなっている。 自信がある将来計画があるのだろうか。
営業活動で現金を生み出せていないのに、将来のための設備投資を行ない、借入金の返済も行なっている。 過去に多くの現金の蓄積があった会社なのだろう。
「財務3表一体理解法」國貞克則 朝日新書、2007 より

今回は、ベンチャー企業における成長ステージ毎のキャッシュ・フロー・パターンの推移について、今々の状態から、目指すべき姿は何か?解説します。

回答

さて、会社の成長推移ですが、順調に走り出す事ができた会社の辿る推移は次のようになると言われています。
(そもそもとして創業期を抜けられず、消滅していく会社も多いし、成熟期を脱せずゾンビ状態になっている会社も多い。日本の中小企業の多くがゾンビ状態。)

この成長推移にしたがって、ベンチャー企業のキャッシュ・フローの状態について見ていきます。

創業期~(シード~ミドル):営業- 投資- 財務+

営業活動で現金を生み出せていないが、将来のために設備投資を行なっている。 営業のマイナス分と設備投資資金をすべて借入や新株発行でまかなっている。 自信がある将来計画があるのだろうか。

創業時は、売上規模は小さい一方、コストだけはかかる状態なので営業キャッシュ・フローはマイナスの状態が普通です。
(何か実業を既に持っている状態で、従業員が創業者一人、とかいうパターンなら、創業期から営業キャッシュ・フローがプラスになる事もある。)

そして、事業を成長させていくためには投資も必要なので、投資キャッシュ・フローもマイナスの状態が普通です。

では、営業キャッシュも投資キャッシュもマイナスなら、そのお金はどうするのか?という問題があります。
それを賄うのが財務キャッシュ・フローですね。

創業時は、創業者や共同創業者の出資から。
多少、事業がまわりはじめたのであれば、シードの投資(エクイティによる資金調達)を受けられ、また、小規模ながら銀行から融資を受けられる場合もあります。

このような形で、投資家や銀行からお金を調達し、それを営業や投資にまわしていく、というのが創業期~成長期のキャッシュ・フローの状態になります。

成長期~:(レイター~IPO後):営業+ 投資- 財務+

営業活動で現金を生み出したうえに、借入などで現金を増やし、積極的に投資活動を行なっている。 将来の戦略も明確な優良企業のパターン。

順調に事業が成長していくと、どこかのタイミングで営業キャッシュ・フローがプラスに転じます。
(ただし、成長を優先して、営業キャッシュ・フローをプラスにする事ができる状態であっても、意図的に投資キャッシュ・フローには該当しない事業投資、例えば人の採用とかですね、を行い、営業キャッシュ・フローがマイナスになっている会社もあります。
ただ、当たり前ですが、事業本体でキャッシュを創出できないのであれば、その事業に投資をする価値は無いので、あくまでも「営業キャッシュ・フローをプラスにする事ができる状態」には到達する必要があります。)

そして、事業が順調に成長している状態ならば、更なる成長ドライブをかけたいのが投資家マインドです。
投資キャッシュ・フローに関してはマイナス、事業成長を促進させていく状態は継続します。

この「事業が順調に成長している)状態では、投資キャッシュ・フローのマイナス分を、営業キャッシュ・フローのプラス分で賄いきれないのが一般的です。
この賄いきれない不足分は、これまた銀行からの融資や、投資家からの出資で対応していきます。

営業キャッシュ・フローのマイナス状態を意図的に作っている場合は、銀行融資の難易度があがるので、エクイティ調達(投資家からの出資)のウェイトが大きくなります。
逆に営業キャッシュ・フローがプラスの状態では銀行融資を受けやすくなるので、ダイリューション(株式希薄化)等のデメリットを追ってまでエクイティ調達をする必要が無く、銀行融資のウェイトが増えます。

成熟期~:(IPO後~):営業+ 投資- 財務-

営業活動で生み出した現金を投資活動や借入金の返済に充てている。 潤沢なキャッシュフローがある会社であろう。

そして、更に事業が成長すると、営業キャッシュ・フローだけで、成長投資も、これまで借りてきた銀行融資の返済分や、投資家への配当が賄える状態に成長していきます。
これが、企業の成長ステージにおける、一つの最終段階です。

どのような成長ステージにある会社であっても、基本的に投資キャッシュ・フローはマイナスの状態が望ましいので、投資キャッシュ・フローはマイナスが継続します。

このステージに来た財務キャッシュ・フローは、資金残高の調整弁となります。
成長をドライブさせたいのであれば、銀行融資を厚くして資金の確保を行いますし、余剰資金が多いのであれば返済にまわしていきます。
ただ、常に返済余力がある状態を実現しているのが望ましいと言えます。


なお、栄枯盛衰と言うか、盛者必衰というか、どんな大企業であっても、いつかは傾くものです。

経営者の役割は、上記「成熟期」の状態を、更なる「成長期」に乗せていく事にあるのですが。
そうそう簡単に行かないのが世の常で、「衰退期」からの倒産ないしは「再生期」という流れになる会社が日々でています。

今、自分達の会社がどのような成長ステージにあるのか?何を目指すべきなのか?
キャッシュ・フローのパターンから考えてみるのも、面白いかもですし、身を守るという意味でも重要だと思いますね。

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会計基礎講座Q&A

このコーナーでは、セミナー等々で受けた質問に対して回答をしています。
こちらは、その回答のまとめ集になります。

質問等あれば、一番下の「コメントを書き込む」から質問いただいても問題ございません。

コンテンツは、作成次第、随時拡充していきます。

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