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急成長ベンチャーが使う市場規模指標、TAM/SAM/SOMの意味とは

ベンチャー界隈ではよく使われるTAMという用語。
ざっくり「市場規模」という意味で、何となく捉えられているこの言葉を、関連用語であるSAM、SOMとあわせて、その意味を解説していきます。

TAM/SAM/SOMの重要性

新プロダクト、新サービスを開発する前に、大切なことがあります。
対象となる市場、つまり市場規模を調査することです。
現実のビジネスでは、プロトタイプでも良いのでプロダクト、サービスを投入してみないと実際にはわからないことも多いですが、一定レベルでの市場規模の調査は可能であり、そして非常に重要なことです。

ベンチャー経営者は、自分たちのプロダクト/サービスの市場規模について、当然に検討しているでしょうし、またベンチャーキャピタルをはじめとする投資家からもよく聞かれる話かと思います。
それは、まだどれくらい成長するのかが実際には読みきれないベンチャー企業に投資するにあたって、判断材料が必要だからです。
そもそもとして投資する価値があるのか、また投資する価値があるにせよ、自分たちのファンドサイズから言って適切な投資案件なのか。
そのようなことを検討するのにあたり、市場規模は事業やプロダクト/サービス、チーム構成、将来ビジョンといったもの以外の一つの目安になるのです。

市場規模が小さければ、会社の成長において、アップサイドに限界があると見られてしまいますし、現実にビジネス展開をしていく上での障害になるでしょう。
また、仮に市場規模が十分に大きかったとしても、その前提、ロジックが微妙でツッコミどころが満載でしたら、その数字は疑わしく、ネガティブに見られてしまうでしょう。

TAMそして、関連用語であるSAM、SOMはその市場を評価するための指標です。
今回は、このTAM/SAM/SOMについてとその算出方法について解説していきます。

なんで普通に「市場規模」って言わないの?

日本の外食産業の市場規模はどれくらいでしょうか?
25兆円です。
ググればわかります。

このような、世の中に既にあるプロダクトやサービス、市場については、検索して調べられるか、簡単な調査やロジック構築により算出が容易です。
しかしながら、これまでにない新しいプロダクト、サービス、革新的なテクノロジーを使用して既存市場に革新を起こす、リプレイスを起こす、このような事業においては、その市場規模を定義し、算出することは簡単でしょうか?

既存の市場の考え方で新しい プロダクト/サービスを評価したがために、本来もっと高い価値がある、ポテンシャルのある企業を過少に評価し、その芽を摘んでしまう。
そういったことも考えられます。

少し想像してみてください。
12年前、スマートフォンを持っていた人はどれだけいたでしょうか?
ほぼ、誰も持っていなかったはずで、そのような状況で、スマートフォンがもつポテンシャルをどれだけ正確に評価できたでしょうか?
これはほんの一例ですが、まったくの新しいプロダクト/サービスについては、単純に既存の市場規模をみていては、その価値を正確には捉えられないのです。
(他にも、中古市場もネット販売、特にCtoCが発達してから、その市場規模が膨れ上がることは、どれだけの人が想像できたでしょうか?)

このように、まったくの新しいプロダクト/サービスの市場規模を評価するにあたっては、既存の市場規模の考え方とは異なる分析が必要なのです。
既存のどのようなプロダクト/サービスをリプレイスしていくものなのか、代替していくのか、その対象ユーザーは誰でどれくらいいるのか、その根拠や動機は。
こういった点にこたえる指標として、TAM/SAM/SOMが存在します。

なお、なんとなく流行り言葉っぽいTAMですが、実は1980年代から使用されている用語です。
後述はしますが、元々はSAMの意味合いでTAMが長く使われていて、それが不味いね、となったのが近年のベンチャー企業の勢い、具体例えばUBERで、UBERのTAM(SAM)が蓋をあけてみたら物凄く大きいと。
それで、TAM(SAM)では、価値のあるベンチャー企業の本当の価値が測れないのでは、ということで今現在のTAM的使い方が一般的になっています。

それぞれの用語の意味

¶ TAM(Total Addressable Market)

TAMとは、あるプロダクト/サービスにより「実現可能な最大市場規模」という意味を持つ用語です。
市場におけるプロダクト/サービスの総需要を示しており、対象市場の最大想定規模と言い換えることもできます。
これは、いわゆる「市場規模」が指す直接の競合に限らず、同じ市場や異なる市場が競合するサービスも含んで考えます。

TAMの明確化により、経営者は参入すべき(もしくはできる)市場の選別や、ターゲットとすべき顧客について解像度をあげることが可能になるでしょう。
また、投資家たちに対しては、事業の長期的なポテンシャルを示すこともできます。

なお、既存の市場規模ではその価値を測り切れない新しいプロダクト/サービスに対して使うのが適切であるが故に、明らかに規模が大きい市場に対しては、事細かくTAMの話をすることの意味は、あまりありません。
誰しも人材不足なのは知っていますし、医療費が高騰していくのも知っています。
人口減や関連して空き家が増えていくのも、誰しもが知っているので、この種の話を細かくつつく必要が無いのです。

また、市場規模は大きければ当然良くはあるのですが、当たり前の話、ブルーオーシャンは早々に赤く染まります。
単純に市場規模が大きいから良し、ではなく、自分たちの新しいプロダクト/サービスがどのように、その市場を切り取って、その価値を示していくのか、の方が非常に重要です。

後述はするのですが、TAMはトップダウン方式で算出します。
またTAMは「実現可能な最大市場規模」ですので、100%の市場シェアが達成できた場合を仮定して算出されます。
数字は通常、年額です(以下、SAM、SOMも同様)。

¶ SAM(Serviceable Available Market)

TAMの中で具体的にターゲットとしている部分の需要を意味します。

自分たちのプロダクト/サービスがいかに斬新で革新的なものとはいえ、何かしら競合はいるはずですし、既存のプロダクト/サービスも存在するはずです。
自分たちのプロダクト/サービスが市場からどれだけ評価されても、従来のプロダクト/サービスからスイッチしない層も必ず一定の割合で存在します。
それら対象とする顧客セグメントの需要、つまり「あるプロダクト/サービスが獲得しうる市場規模」を指します。
表現を変えるならば「そのプロダクト/サービスによりアプローチ可能な市場規模」とも言えます。

つまり、企業が当面の目標とする市場シェア全体を示すことになります。
TAMとセットで考えることで、経営者はより、経営者は参入すべき(もしくはできる)市場の選別や、アプローチすべきターゲット顧客は誰なのかについて解像度をあげることが可能になるでしょう。

SAMはトップダウンで算出する場合もありますが、一般的にはボトムアップで考えます。
TAMがこれくらいで、その〇〇%を獲得していくのでSAMはいくらいくら、という算出のやり方では根拠が薄弱、というか根拠がありません。
積み上げで考えていった結果、これくらいは獲得できるはずなので、結果SAMはTAMの〇〇%になる、という文脈の方が説得力があります。

TAMに関しては大きすぎるのは必ずしも良くない、という話をしましたが、SAMに関しては小さすぎる市場を選ぶことは(当然ですが)あまり良くは無いです。
どのようにスケールさせていくのか、スケールさせていった結果として、どのような市場にスライドしてアプローチしていくのか。
こういった点が見える、今々想定のSAMが小さかったとしても、Expantion(拡張)可能な市場を選択することが必要です。

ボトムアップの考え方に関しては、トップダウンの考え方とあわせて後述します。

¶ SOM(Serviceable Obtainable Market)

SOMは、「自分たちのプロダクト/サービスが実際に現実的に獲得できる市場規模」のことです。

TAMは「想定しうる100%のシェアをとった場合の市場規模」のことで、
SAMは「あるプロダクト/サービスが獲得しうる市場規模」のこと、
そしてSOMはそこからさらに具体的に「自社」にとなります。
つまり、SOMは「実際にアプローチする顧客の市場規模」とも言い換えられ、自社が短中期で獲得せねばならない売上の重要目標となりえます。

このSOMの達成具体によって、算出したTAMやSAMに対する評価を考え直します。
アップサイドが大きければ、期待は当然大きくなりますし、ダウンサイドが大きければ反対にその企業の価値を小さく再評価するでしょう。

SOMの検討にあたっては、現実的で蓋然性のある事業計画、つまり自社のマーケティング/セールス努力によってアプローチできるSAM、を算出する形になります。

このようにTAM/SAM/SOMはセットで考え、自分たちのポテンシャルを考えると同時に、具体的な事業計画に落とし込んでいくものになります。

下記がTAM/SAM/SOMの参考イメージです。

AirBnB Pitch Deck より

なお、ビジネスの解像度があがったり、純粋に業容が拡大すれば当然TAM/SAM/SOMについても修正が必要です。
実際にプロダクト/サービスをリリースしてみたら顧客の反応は違った、ということは珍しくありません。
思いもよらない市場に刺さる場合もあります。
海外に進出すれば、TAMは大幅に拡大します。
TAM/SAM/SOMは不変ではなく、常に変わりうる、という前提で捉えておくとよいでしょう。

算出・分析方法

ここからはTAM/SAM/SOMの算出方法の解説になります。
算出には2つのアプローチがあります。

  • トップダウン方式
  • ボトムアップ方式

¶ トップダウン方式

トップダウン方式は、市場規模全体から大きく見ていく方式です。
上述した通り、主にTAMの算出に使用します。

例えば、政府公表の統計資料であったり、矢野経済研究所の調査資料であったりと、世の中に出ている信頼度が高い資料から、その市場規模を見ていきます。

ポイントとして重要なのが、その統計資料がどのような中身、構成要素なのか、です。
同じ〇〇市場規模であっても、調査主体が異なれば結果が異なる場合がほとんどで、その理由としては、調査が定義している市場が異なったり、調査条件や対象カテゴリーが異なったりするためです。
世の中に複数ある統計資料の中から、自分たちが欲する定義、カテゴリーであることを確認していきましょう。

また、大掛かりな調査は時間も費用も要するものです。
つまり、「最新」の統計資料であるにも関わらず、何年も前のものであったり、毎年更新されていた調査が更新されておらず存在しない場合は珍しくないのです。

適切な統計資料が見つからない場合、そのTAMの算定が重要ならば、調査会社に依頼するのも一つの手です。
ただ、別に企業価値の算定のために第三者を入れるよう、大げさな話でもありません(大概は)。
極力、世の中にある統計資料でもって、工夫して算出を行うのがよいでしょう。

¶ ボトムアップ方式

ボトムアップ方式は、積み上げによって市場規模を推測・算出していく方式です。
SAM/SOMに算出に使用します。

大枠の計算式はSOMの場合は「顧客全体の数 × 顧客が支払う年間総額」、もしくは「(顧客全体の数 - 競合を利用している顧客全体の数) × 顧客が支払う年間総額」となります。
対象となる顧客のニーズや実際の支払意思、購買行動、そして既存の各種統計資料を織り交ぜながら必要となる計算式(ロジック)を構築していく形になります。

SAMの場合は、そこから更に、自分たちのリソースまでも含めて、どこまで顧客のニーズに対して市場を切り出して、作っていけるのか、を分析します。
自社には、どれだけのマーケティング予算があって、セールスの人員はどれだけいて、それでこういう事業計画なんだ、という点を現実的でかつ蓋然性を高くもって見ていきます。

精度高くSAM/SOMを算出するにあたって、実際のプロダクト/サービスをもってヒアリング調査を行ったり、支払意思や購買行動の確認のためアンケート調査を行ったりします。
その際のポイントとしては、いきなり大規模な調査を行うのではなく、複数の小規模なパイロット的調査を、やり方を変え、PDCAをまわしながら行う方が良い、という点です。
サンプル数が少数でも、まあまあな精度で情報をとれますし、ある一つの調査だけですと、その調査の設計によっては曖昧性が高かったり、誘導的な内容になったりと、本当に欲しい情報がとれるとは限りません。
実際にプロダクト/サービスがあるならばそれを、まだ無いのならばプロトタイプで良いので、パイロット調査を積み重ねていきましょう。

アンケートのサンプル数の算定にあたっては、こちらの記事も参考にしてください。

数字も大事だけれども、過程も大事

まだ、どこの馬の骨とも言えないベンチャー企業にとって、自社の価値をわかってもらうことは非常に大変です(自分だってわかっていない)。
その中で、このTAM/SAM/SOMを用いれば、一定レベルはコミュニケーションをとることが可能になります。

ここで重要なのは数字そのものもそうですが、その数字を算出するにあたっての過程です。
市場規模や競合環境、それに対する自社のアプローチを蓋然性高く説明できれば非常に説得力が高まります。
適切な泥くさい調査を積み重ねていれば、投資家たちからの、分析能力に対する評価もあがるでしょう。

夢を大きくもつことは当然良いことではありますが、同時に、現実的な視点をもち、蓋然性の説明を精度の高いロジックでできることも重要であると心がけていきましょう。

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ストックオプションの配分の考え方

ストックオプションはスタートアップ/ベンチャー企業の経営者にとっては、非常に重要な経営のツールであると同時に、専門性が高く、あまり世の中に情報も無いため、悩みの種の一つでもあります。
ここでは、ストックオプションの配分の考え方について、解説していきます。

これを読めば、ストックオプションの配分の考え方について、少しでも「最適」に近づけるでしょう。

なお、ストックオプションについて、最低限の知識があることを前提に記載しています。

ストックオプションとスタートアップ/ベンチャーとの相性のよさ

ストックオプションの発行は、当然諸費用は生じるものの、大きなCashOutを伴いません。
そのため、資金が常に足りないスタートアップ/ベンチャーとは、非常に相性が良いツールです。

ただし、大きなCashOutを伴わないからといって、安易な発行は危険です。

まず、会計上の費用として計上されるので、バリュエーションに影響を与える可能性があります。
株式の希薄化懸念により、IPOの審査に影響を与える場合もあります。
また、株式の希薄化懸念がある、ということは既存株主からの反発を招く可能性も当然にあります。

ストックオプションの発行にあたっては、あくまでも人件費の内数であると認識して、適切に設計する必要があります。

思想が一番大事

ストックオプションの配分について考えるにあたって、最も大事な事はなんでしょうか?

それは、会社としての思想やポリシーです。

配分についての正解は存在せず、経営の方向性や社風などを考慮する必要もあります。
ストックオプションの配分は、給料以上にメッセージ性が強いです。
その設計に関して安易に考えず、あくまでも思想やポリシーを大前提において、慎重に経営者の意思を込めて検討すべきです。

なぜこんな話をするのかと言うと、ストックオプションの配分数(付与個数)は、隠しても上場時にオープンになるからです。
(目論見書、という書類に記載される。)
また、上場前でも、人の口は軽いものですから、存外に広まるものです。
日常の会話の中や、飲み会の場など、自然と話題にあがり、こぼれてしまうのです。

お金に関して表面的には出さなくても、嫉妬の温床になります。
人の心も荒むので、組織が乱れるリスクもあります。
IPO達成後の一斉行使による、大量退職も珍しくありません。

つまり、説明がしっかりとできるように思想やポリシーを明確にし、設計をしておかねばならない、ということです。
むしろ、オープンにする位のつもりで、制度設計を行うのが良いでしょう。

ストックオプションの総枠は10%前後

もう一つ抑えておかねばならない点が、ストックオプションの総枠は10%前後だ、という点です。

これは、ただの慣習で、理論的な話ではありません。
株式市場の投資家の感覚なのか、証券会社の希望感なのか、不明ですが、とりあえず10%前後、という感覚値が常識として横たわっています。
合理的では無いのですが、相場観になっているのです。

つまり、できあがりの発行済み株式数の15%を超えてくると、多い、と受け止められます。

ストックオプションは上記の通り、限りがあるので、今後の活躍が期待されるキーマン、特にCxOクラスを中心に、順に枠を確保していく考え方が定石です。
つまり、逆算して考えて、残りの枠から従業員に配分していく、という形とするのが良いです。

ここでも思想やポリシーの話が出てきます。
限りのある10%を、限られたキーマンに重点配分するのか、広く配分するのか、という点ですね。
この点を考えるにあたり、目的の整理を行う必要があります。

目的の整理

ストックオプションの目的は大きく3つあります。

  • これまでの働きに報いる、過去の視点(感謝の気持ちの表現であったり、リテンションとしての機能)
  • 採用やリテンションにつなげる、現在の視点(出せる給料と市場価値との乖離を埋める機能)
  • これからの活躍に期待する、未来の視点(パフォーマンスのドライブとリテンションの機能)

ストックオプションを発行する場合は、どのような目的をもつのか、視点でいるのか、を明確にしておくとよいでしょう。
これのうち、どの視点に立つのか、で大きく設計の方向性が変わります。

なお、採用のツールとして使う場合は、安易な口約束はしないようにしましょう。
面接時に、口頭でストックオプションを出す、と言いつつ、実際に蓋をあけてみたら貰えなかった、もしくは想定以上に少なかった、として揉める話はよく聞きます。
あるある話です。
会社としての信頼性にも影響を与えますし、組織を乱すことにもつながるので、口約束をするくらいならば、明確に「言わない」かオファーレターに明記すべきでしょう。
明確な決定は怖いものですが、曖昧さが未来に与える悪影響よりかは怖くないはずです。

配分方法の例

過去の視点の場合

これまでの働きに報いる、感謝の表現であったり、今まで頑張ってくれた人たちへのリテンションを意識する、過去の視点の場合です。
(ジョイン時に、給料をダウンして入社してくれた人への、差額分の補填の意味合いを乗せる場合もあります。)

この場合、「在籍年数」と「グレード」、これに何かしらの「人事評価」でマトリクスを作り、傾斜配分をする方法が考えられます。
なお、一定の曖昧さを残しておきたい場合は、「ミッション・ビジョンへの共感度合い、体現度合い」など、定性的な評価項目も組み込んでおくと、鉛筆なめなめをできる余地が残ります。

この場合は、今後のコミットに関して期待を乗せるような設計は微妙です。
身も蓋もない話ではあるのですが、多くの場合、ストックオプションの価値がわかる方は少数派です。
ですので、変に行使条件をつけても、今後のパフォーマンスへのドライブ効果はほぼありません。

現在の視点の場合

会社が一定程度成長してくると、未来への成長のため、今この瞬間、CxOクラスやそれに準ずるキーマンを採用する必要性が出てきます。
ここでの採用ツールとして使う、という考え方です。

会社として出せる給料と、その人の現在給料や市場価値との差異、ここの乖離を埋めるだけのストックオプションを発行する、という計算になります。
(つまり、資本政策バリュエーション想定はもって、一定レベル以上できちんと計算できる状況である必要があります。)

この場合は、独自の行使条件をつけるなど、コミットをしてもらえるような設計にすると良いでしょう。
場合によっては、出来上がりの金額感が、普通にサラリーマンをやっていたのでは得られない規模にすることも考えられます。
ただし、ストックオプションの価値をきちんと理解できる人に限られます。
(CxOクラスやそれに準ずるキーマンを対象とするはずなので、通常は心配が無いはずですが。)

なお、一般メンバークラスの採用で、給料ギャップを埋めるためのツールとして使う場合も考えられますが、これは微妙です。
というのも、何度も書きますが、ストックオプションの価値がわかる方は少ないので、いくら発行しても、結局のところ目の前の給料の額でモチベーションが影響されがちなので、あまり意味が無いのです。
リテンション機能もあまりありません。
「在職条件」をつける場合が一般的なので、辞めてもらっても影響がないのが幸いですが、、、。

未来の視点の場合

こちらのパターンでは、概ね「現在の視点」の考え方と同じになります。

違うのは、乖離を埋める、という考え方を持つ必要がない点です。
「これからの活躍が見込める」「代えられない存在なので絶対に頑張り続けて欲しい」という方に重点配分をする考え方です。

ですので、グレード間や報酬間での逆転現象も十分に考えられます。

なお、補足ですが、基本的にストックオプションは、生株を持ってない人に割り当てるのが定石です。

筆者の考え方

これまで、いくつかの視点で記述してきましたが、筆者は「未来の視点」で設計するのが最も合理的であると考えています。
絶対に残って欲しい代えられない人、圧倒的な活躍が見込まれる人、そういった方には多く偏りをもって付与するのが良いでしょう。

なぜならば、会社の成長にあわせて、その会社にとって必要な人物像は変わってくるからです。
そのため、過去の視点で設計したとしても、未来へのインパクトはほとんど見込めないからです。
感謝が不要とは決して思いませんが、経営においては、合理的にいられる領域に関しては、とことん合理的であるべきと考えます。
在籍年数は過去の話であり、未来の話は一切含まれていません。
情はどうしても湧いてしまうものですが、冷静に、合理的であるべきです。

また、未来の視点で設計する限り、今現在での採用ツール、リテンションツールとしての機能も内包できます。
つまり、非常に柔軟性高く、かつ強力にストックオプションの性質を活用できるのです。

抑えておくべき注意点としては、ストックオプションの価値を理解できる人に重点配分すべき、という点です。
誤解を招く言い方ではあるのですが、ストックオプションの価値を理解できない人に多めに配分しても無駄です。

ストックオプションは、大きな意味合いで給料の内数ではあるのですが、その性質は大いに異なります。
在籍し続けなければ行使ができないですし、業績が伸びなければ当然にその価値はあがりません。
通常の給与制度と同じ枠組みで考えては、ストックオプションの性質を活用しきることはできないでしょう。

最後に、できあがりのイメージに関して触れます。

  • CxOクラスの方々で合計6%程度
  • CxOクラスに準ずるキーマン上位約10人で合計3%程度
  • 残りを他の従業員で配分

この形で大枠の配分を考えるのが良いでしょう。
発行のスケジュール感としては、CxOクラスの採用時には1%弱、それに準ずるキーマンの採用時に0.1%程度を発行、残りを活躍の想定などをみながら発行、という流れになります。
都度都度の発行では、無償なのか有償なのか、などなど、様々に設計も可能です。
これなら総枠10%の相場観にも合致しますし、未来の視点での配分もできるのです。

(補足)持株比率に関する懸念に対して

なお、経営者の中には、ダイリューションという、持株比率の低下を気にする方もいらっしゃいますが、本質的ではありません。

経営のコントロール権はあくまでも業績成果で示すべきものであり、持株比率でえるものではないからです。

持株比率の過半数や3分の1という考え方は、経営企画などの資本政策を実務で考える方たちに任せて、経営者自身は早々にその考え方を捨てるのが良いです。

ダイリューションに関しては、こちらの記事でも詳細を解説しています。

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ビジネスで大切なこと~膨大な量の選択肢の中での正しい意思決定プロセスの心理学~

常に何かしらの意思決定を行わなければいけない。
これがビジネスの現場です。
膨大な量の選択肢がある中で、どのようにすれば正しい意思決定ができるでしょうか?

ここでは、意思決定の正しいプロセスについて、科学的な側面から解説していきます。

膨大な量の選択肢は意思決定の質を落とす

意思決定を行う上で、選択肢が多いことは良いことではあるのですが、多すぎる選択肢は悪影響をおよぼすことがあります。
多すぎる選択肢は迷いを生み、ストレスの原因となり、場合によっては合意の妨げになるのです。

スーパーマーケットでの場面を例にあげてみましょう。
北カリフォルニアのスーパーマーケット、ドレーガーズで行われた有名な実験です。
このマーケットでは、膨大な種類のオリーブ油や香辛料など、非常に豊富な食材を取り揃えています。
ここで心理学者たちが実験をしました。
具体的には、ある週では24種類のジャムを、別の週では6種類のジャムを並べて買い物客の反応を調べ、購買行動にどのような差がでるのかを実験したのです。

結果、24種類のジャムが並べられていたときは、60%の客が試食をしたけれども、6種類のときには40%しか試食しなかったそうです。
しかしながら、実際の購買行動においては逆の反応をしめしており、24種類のジャムのパターンでは3%の客が、6種類のパターンでは30%の客が購買した、という結果になりました。
つまり、あまりにも多い選択肢は、そもそも意思決定ができない、ということになりかねないのです。

この結果は他の場面にもみられており、証券会社や保険・年金での商品選択において、選択肢を多く提案することは、かえって購買意欲を減らしてしまうことにつながる例など、選択肢の多さは意思決定の質を落としてしまうことは、ほぼ間違いないであろうと言われています。

なぜ選択肢が多いと意思決定の質が下がるのか?

答えはシンプルで、単純に人の知的能力の限界を超えてしまうと、判断ができなくなるからです。
ようは、頭がオーバーロードし、働かなくなってしまうのですね。

アメリカの心理学者、ジョージ・ミラー博士の実験では、人は新しく与えられた情報については1度に7個(7個プラスマイナス2個)の情報しか覚えておけない、という結果示されています。
この7個というのは、意味をもった情報のかたまり(チャンクと言う)のことで、例えば、単純な数字情報から、何かの出来事のような情報量が多いものも、この7個の範囲でしか脳に一時ストックできないそうです。
これをもって、現代では「マジカルナンバー7」という言葉が使われています。
(なお、当然にこの話には諸説があるのですが、概ね人がぱっと覚えられる限界量としては、感覚値的にもそう外れてはいないかと思います。)

この話から、あまりにも選択肢が多いと、検討するにしても脳のワーキングメモリーが働くなってしまうことが推測されます。

別の心理学的な意見としては、選択肢が多い中で1つを選択した結果として、それ以外の方が正しかった場合のことを考えて、委縮して決断できなくなってしまう、ということも指摘されています。
後になって後悔してしまうのではないか?
周囲から、間違った決断をした結果として責められるのではないか?
そういった思考が、心理的に負担になってしまうのです。

また、こちらの記事でも解説していますが、雑事に対しても一つ一つ意思決定を行っていると、IQが低下し、生産性も大幅に低下することが示されています。
そのため、一部の一流経営者は毎日同じ服をきるなど、極力意思決定を行う数を減らしているのです。
(一説では、人が一日に行える意思決定の数には限りがあるようです。)

では、正しい意思決定プロセスは何か?

それでは、ここからは正しい意思決定のプロセスについて、科学的知見も交えて解説していきます。

① 幅広く選択肢を用意する

これまでの話とは逆行するようですが、まずは幅広く選択肢を用意しましょう。
人は与えられた数少ない情報から、偏見でもって意思決定をしたり、逆に情報を収集しようとしても「自分が欲しい情報を積極的に集める」習性があります。
偏りなく、幅広く情報を収集し、多くの選択肢をまずは取り揃えることが必要です。

② 選択肢の評価を行う~メリット・デメリット~

次に、出そろった選択肢のメリット・デメリットの評価を行います。
この際も、偏りなく評価を行うことが重要です。
できれば多くの人の意見を聞きながら、公平に実施するのが良いです。

あわせて、選択肢の前提となる情報の質に関しても評価を行うのが良いでしょう。
こちらの記事でも解説しましが、情報にはレベルがあり、純粋に「事実」なのか、推測や意見・感想が混じった「主観」なのか、それとも誰かが言っていることの「伝聞」なのかがあります。
情報の質の評価が漏れてしまうと、当然に選択肢の質も落ち、意思決定の質も落ちてしまいます。

なお、この評価の段階で重要なのが、「検討しすぎない」ことです。
ようは、ざっくりと手っ取り早く、大雑把に検討していきましょう、ということです。
といのも膨大な量の選択肢を検討していくことは、同様に膨大な時間と費用がかかってしまいます。
メリット・デメリットの評価を行いたいのではなく、意思決定を行いたいのですから、ここにリソースを割きすぎるのは、あまり健全とは言えません。

③ 選択肢の絞り込み

ざっくりとしたメリット・デメリットの評価を終えたら、その次が選択肢の絞り込みです。
この段階でいきなり「これだ!」と意思決定をするのではなく、「これは無いよね」というものをどんどん削っていくのです。
ようやく、選択肢の数が多いと意思決定の質が下がるの話とリンクしてきました。

この段階で重要なのが「自分自身にとって譲れないこと」「優先しなければいけない事項」「そもそもの目標」などを明確化することです。
何かの意思決定を行う、ということは、なにかしらのゴールがあるはずです。
そのゴールに沿った、重要な軸に沿って、「これは無いよね」というものを削っていくのです。

この絞り込みの段階では、3個程度に選択肢を絞るのがよいでしょう。
いくつかの研究では、二者択一や、選択肢が4つ以上よりも、選択肢3個程度の時が、その後の成果調査ともあわせ、もっとも質の高い意思決定ができるという結果がでています。

④ そして意思決定

3個程度に選択肢が絞られれば、メリット・デメリットの解像度の高い再評価が行えるでしょう。
すでに、今回の意思決定にあたっての重要な軸も明確になっています。
十分な調査の時間と費用も投入し、頭の中にはたくさんの情報も入っています。
あとは、これまでのビジネス経験と目指すべきゴールに沿って、勇気をもって決断するだけです。

(参考)評価にあたって点数をつけることの是非

よく、メリット・デメリットの評価にあたって、比較検討表に点数をつけることが多くあります。
これは、趣味やポリシーの世界にも突入してしまうので何とも言えないのですが、あまりおすすめできないです。
というのも、非常に恣意性が高いからです。

点数をつけるにあたっての項目の数や、抽出の方法によって、いくらでも操作ができてしまうため、結局のところ、評価者の偏りに沿った結果になってしまいがちです。

決して、絶対ダメだとは思いませんが、必ずしも良いものでは無い、という点は抑えておくべきでしょう。

(参考)メリット・デメリットについて~プロコン~

これまで、メリット・デメリットという言葉を使ってきましたが、コンサルや経営企画の世界ではあまり使いません。
では、どういう言葉を使うかというと「プロコン」という言葉を使います。
Pros & Consの略で、良い点(Pros)と悪い点(Cons)という意味です。

ようはメリット・デメリットと同じことではあるのですが、相手によっては「わかっていないな」「プロフェッショナル感に欠けるな」という風に捉えられてしまうので、一定の使い分けを行うか、そういうったことがあると素直に割り切ってどちらかを使うのかを決めてしまうのかをするのが良いでしょう。

(参考)交渉におけるテクニック

上記で自分にとって譲れない重要な軸を明確にすることの大切さを説きましたが、これは交渉にも使えます。
どういうことかと言うと、交渉における交換条件において、優先度・重要度の低いことに関して、交渉の対価として譲れることができるからです。
ここは譲れない、ここは譲って良い、を明確にしておくと、交渉はスムーズになります。

また、提案においては、言葉の使い方にも注意は必要です。
具体的にはポジティブに言うか、ネガティブに言うか、です。

①「どちらを選択すべきか?」
②「どちらを選択すべきでないか?」

この2つの問いかけ方をした場合、①の言い方ではポジティブ要素を大きく評価する傾向があり、②の言い方ではネガティブ要素を大きく評価する傾向があるのです。
ようは、「どちらを選択すべきか?」と問いかけると、ある選択肢のメリット、そのことの強み、得られる利益などを高く評価するのですが、
「どちらを選択すべきではないか?」と問いかけると、デメリット、それにより負担しなければいけないマイナスのリスク、失敗した場合の損失などを高く評価してしまいがちなのです。
それが人間心理なのです。

これは交渉時においても重要で、ポジティブ要素、ネガティブ要素のどちらを高く評価して欲しいのか?でもって、問いかけ方を変えるのは、一定考慮に値します。

ただ、最終的にこういうテクニックを使うのが良いのか、というと、個人的な意見としては微妙だと思っています。
というのも、私自身の立場からすると、相手が小賢しいテクニックを弄してきたら不快だと感じるからです。
相手が自分のことを操作しようとしている、というのは、上記のことがわかっている人にとってみれば、まあまあ不快なものです。
最終的には人と人とのぶつかりあいなのですから、正直まっすぐ正々堂々が一番なのでは?と考えています。

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オフショア開発を成功させる方法~コミュニケーションの重要性~

日本のエンジニア人材の枯渇は深刻なままであり、採用コストも人件費も非常に高く推移しています。
そこで話題として出るのがオフショア開発。
ここでは、オフショア開発についての基本的な点を解説します。
ようは、しっかりとコミュニケーションをとりましょう、という話です。

オフショア開発とは

オフショア開発とは、システム開発などの業務を、海外に委託することを言います。
この場合の海外とは、海外の別法人であったり、海外に存在する自社グループ法人である場合があります。
切り出して委託する業務としては、製造工程、テスト工程である場合が一般的です。

日本においては主に2つの目的をもって、オフショア開発の検討が行われます。
1つ目が、コスト面で、人件費が比較的安い中国やベトナム、インドなどのを委託先として選定することによって、大幅に人件費を削減することが可能になります。
2つ目が、日本のエンジニア不足の深刻さからで、教育水準が高く、人口も多い地域を選定すれば、このエンジニア不足を解消する手段となりえます。

他にも、ラボ型開発と呼ばれる手法をとり優秀な人材を低価格で確保したり、人件費が安いことを逆手にとって日本で開発するよりも高品質なシステム開発体制を構築することなどを目的とする場合もあります。

委託先として多いのが、上記であげた国の内、特に「ベトナム」が人気で、話題としてあがりやすく、事例も多く見聞きします。
なぜベトナムが選ばれやすいかと言うと、親日で、日本人の気質に比較的似ていて、英語でのコミュニケーションが取りやすいこと(場合によっては日本語が通じることもある)などがあげられ、そのため、共同での開発プロジェクトが進めやすい、ということです。
他にも、フィリピンやミャンマーも日本人の気質にマッチしやすい国として、候補にあがります。

失敗事例が多い

では、実際のところはどうなのかと言うと、失敗事例の方が多く見聞きするのが現実です。
なぜ、失敗してしまうのでしょうか?

言語が異なる

言語の差によるコミュニケーション上のミスや、コミュニケーション自体が成立しない、薄い、という話は、もっともよく聞く事例です。
せめて英語であればまだ良いのですが、現地の言語でないとスムーズに受け入れられない状況もあり、この場合、非常にコミュニケーションが厳しくなります。
英語(ないしは現地語)ができるエンジニア、ないしは日本語ができる委託先エンジニアを雇った結果として、コスト削減につながらなかった、という話もあります。
また、物事を図表でまとめて整理して考えるのが不得手であったりもするので、コミュニケーションにおける工夫がなかなか実らないという事例も見聞きします。

文化が異なる

親日で、気質が比較的似ているとはいえ、異なる国・文化の人たちだということを忘れてしまったパターンは失敗事例の一つとして、良く見聞きします。

日本人よりは時間にルーズですし、要件や仕様は英語でのやり取りの場合が多いですが、阿吽の呼吸は通用しないので、行間に書かれている真意を汲み取ることは基本しません。
書いていないことは全く期待できないため、出来上がってきた成果物を見た結果、期待と全く異なるものであったという話は珍しくないのです。

委託先が日本側に譲歩する場合もあり、真意が伝わらないままに委託先が勝手に作業をしたり仕様を変えてしまったりして、二重コストがかかってしまうことも珍しくありません。
この場合、委託先は委託先で、善意で良かれと思ってやっている場合も実際に多く、揉める話は多いです。

教育水準が高いとはいえ、技術力不足による品質上の問題の発生や、文化の違いによる作りこみの甘さが障害となる場合もあります。

また、委託先の文化や生活スタイルについて指摘した結果として、プライドを傷つけてしまい、決定的な亀裂が生じてしまった話も見聞きします。

こういった諸問題を解決するためハイレイヤー人材を選定したり、異なる言語・文化を乗り越えられる運用体制を敷いた結果、結局の所、日本で開発するよりコストが高くなってしまった、という話は非常に多く見聞きする失敗事例です。

どうすれば成功させられるか?

上述の通り失敗の事例を見てきましたが、発注者サイドの管理不足やグローバルレベルでのプロジェクトマネジメントの力量不足が根本的な問題というわけです。
業務を委託しているからといって、全体の進捗管理に関して丸投げは決してやってはいけません。
プロジェクトマネジメントについては必ずグリップし、開発のブラックボックス化が進まないようにしていきましょう。

オフショア開発を成功させるための方法は、至極シンプルなことでして、それはチームビルディングをしっかりと行いましょう、「コミュニケーション」を取りましょう、という話です。

作業内容の確認や進捗管理にがっつり入り込む、場合によっては現地に赴くことも必要です。
委託先のメンバーがどういう人たちで、どんなスキル感、考え方を持っているのかを知るのは、プロジェクトマネジメント上、非常に有効に機能します。
なお、現地に赴くのは、存外に歓迎されます。
(想像してみれば当たり前ですが、自分たちのお客様が、自分たちに興味をもって話を聞きに来てくれたら、普通に嬉しいですよね。)

こちらの企業では、CTOがベトナムに引っ越して、一緒に開発するなど、思い切りのある取り組みをしています。
かなり現地に入り込んで、現地の方々と同化して一体となって開発をしています。
ここまでのエネルギー感があれば、成功するのも当然であろうというイメージが強く湧くでしょう。
つまり、相手にこちらへの歩み寄りを強くは求めず、こちらから先方に歩み寄り、どれだけ同化するような努力をしたか、ということです。

ブリッジエンジニアと呼ばれる、コミュニケーションの仲介ができるエンジニアを採用することも有効に機能します。
委託先として、日本語の理解力が高い方がいる所を選定したり、オフショア開発を成功させた企業のエンジニアを採用し、ノウハウを社内に取り込むことなどが方法としてあげられます。
阿吽の呼吸を期待せずに、きちんとロジカルに説明していけば、最終的にはうまくコミュニケーションがとれるはずです。

委託先のエンジニアを日本に招いて、自社の取り組みを体験してもらったり、実現したいことの認識を直接すりあわせたりする事例も成功例として聞きます。
問題意識の共有を行うことは、異なる文化だからこそ、有効に機能します。

責任と要求水準についてしっかりと理解してもらうことも重要です。
不安な部分や、開発における要所部分については、コードを送ってもらい、定期的に確認をしていくなどの管理は必要でしょう。
成果物に不備がある場合に、発生するコミュニケーションを嫌い、発注者側で修正をしてしまい、差し戻しやクレームなどは入れなかった、というパターンも良くなく、どこまでの品質を要求しているのか、という点を示し続けることは必須です。

まとめ

ここまで見てわかると思いますが、オフショア開発に取り組む場合は、新規事業を行うくらいのつもりで、かなり気合を入れて、エネルギーを投入して行うことが必要です。
コスト削減や人材不足、という点だけに着目して行うと、失敗をする確率が非常に高まります。

相手も同じ人間ですので、しっかりと正しいコミュニケーションをとっていけば、オフショア開発の成功確率は高まっていきます。

また最後に、中国やベトナム、インドの人件費も年々高騰している点は留意すべきです。
つまり、コスト削減に取り組んでいたはずが、そのメリットがいつかは必ず失われる、ということです。
オフショア開発を行う場合は、別の地域でのオフショア開発に移し替えられるように発注者側でそのノウハウを蓄積していくことが必要でしょう。

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