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マルチタスクを行うと生産性の低下のみならず感情をネガティブにする

マルチタスクの弊害は各所で語られています(下記記事も参照)。
生産性の低下(IQの低下)や疲労の蓄積等が代表的な弊害ですが、どうやら感情をネガティブにする側面もあるようです。
複数大学が協働して行った研究を見ていきましょう。

マルチタスクは感情をネガティブにする

複数大学の研究チームは次のような調査を行いました。

https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3313831.3376282
  • 26人の被験者を対象とした
  • 被験者には期限付きの小論文の課題を与えた
  • 課題に取り組んでいる間に、2つのパターンでメールを送信し、感情の変化を映像で分析
  • パターン①:一括でメールを受信し、期限付きで即時に返信するように指示を与えた
  • パターン②:断続的にメールを受信し、同様に期限付きで即時に返信するように指示を与えた

その結果、パターン①の一括でメール返信した被験者の表情は、ニュートラルな感情を保っているものの(悲しみの感情も一部で見られた)、一方でパターン②の断続的にメール返信した被験者は、悲しみや怒りの感情、また恐怖心も混在していることが示されました。

(被験者の表情は、研究者が主観で判断したものではなく、AIによる判定が行われていたので、精度は高いと考えられる。)

つまり、マルチタスクは、生産性の低下のみならず、精神に負担をかけストレスを増加させ、感情をネガティブにすることが示されたのです。

どのように対処すれば良い?

まず研究者たちは“バッチ処理”を推奨しています。

例えば上述のようなメールに対する返信であれば、返信をするタイミング・時間を決めて、一括で返信を行うようなものです。

とは言え、現実の仕事において、横やりが入ることは珍しくないです。

特にオープンオフィス環境は、集中力を中断させる要素が非常に多く、研究者たちも懸念を示しています(下記記事も参照)。

企業ができるのは、例えばリモートワークやブースで区切られた半個室のようなものを用意し、集中して作業に取り組める環境を用意する一方、従業員間でコミュニケーションが取れるような空間や時間も用意し、適切に使い分けられるような環境やルールを制定することでしょう。

適切で生産性の高い労働環境を構築するためには、上述のような知見をインストールし、使い分けられるようになることが求められると考えられます。

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採食主義はメンタルを不調にする?少なくとも相関関係がある模様

健康ブームや環境保護に対する意識の高まりにより、ヴィーガニズムや、そこまで極端で無いにせよ、菜食主義が一部で広まっています。
人類の歴史は肉食と共にあった中、菜食主義が人の身心にどのような影響を及ぼすのか、十分な研究はされていません。
今回は、菜食主義がメンタルを不調にする可能性がある、という研究を紹介します。

菜食と精神的な健康との関係を調べた研究

南インディアナ大学の研究者は次のような調査を行いました。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10408398.2020.1741505
  • オンラインデータベースを元に、肉食と菜食での精神への影響の違いについて調べた研究をレビューした
  • 18件の研究が諸々の該当基準を満たした
  • 合計160,257名(女性85,843名、男性73,232名、他は不明)について情報を入手した
  • 対象者は複数地域の出身であり、肉食149,559名、菜食8,584名(他は不明)という内訳となった

(ここで言う、“肉食”とは、ごくごく普通に肉も食事の中に含まれている、という意味であり、肉だけを食べている人たちのことではない。一方、菜食は“肉を可能な限り控える人”と定義されている。)

この結果、菜食者(肉を避けている人たち)は、うつ病や不安症のリスクが有意に高いことがわかりました。
(18件の研究の中身としては、11件で菜食が精神的に不健康、4件は曖昧な結果、3件が逆に肉食が精神的に不健康、という内訳だった。)

この通り結果はばらけているのですが結論として言えることは、傾向として菜食主義はメンタルを不調にする可能性がある、ということです。

他にも、菜食者は肉食者に比較して自傷行為や自殺者が多いなど、ネガティブな傾向があることも示されました。

あくまでも相関関係があり因果関係はわかっていない

補足をすると、上述のレビューで示されたのは、あくまでも相関関係であり、因果関係ではない、という点です。

研究者もその点は指摘しており、次のような可能性があることも説明しています。

  • 諸々の疾患(精神的な疾患でも、肉体的な疾患でも)がある人は、治療の一環として食事内容を変える場合がある
  • 動物保護や環境保護等に対してセンシティブに考える人は、そもそもとしてうつ病や不安症になりやすい

もちろん、必要な栄養素が欠乏した結果として、メンタルが不調になる可能性もあります。

現時点で言えるのは、統計的傾向として菜食とメンタル不調は関連性が高いので、肉は食べた方がベターである、という点です。

補足:レビューでは、メンタル不調について優位に差がある、ということが示されましたが、ストレスに対する認知や生活の質、という点については差がないことも示されました。
これは、「本人は自覚をしていない。」ということを示す懸念があるとも言え、よりリスクが高いと考えることができます。
また、多くの菜食者(ヴィーガンやベジタリアン)が肉食に戻る傾向があることの理由や、菜食による長期的影響等、不明な点は多くあります。
現時点でわかっているのは大枠としてn菜食とメンタル不調に相関性がある、という点のみです。

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睡眠の質と仕事の先延ばし傾向には関係がある模様~先延ばしを直したいなら寝よう~

先延ばし癖に悩んでいる(もしくは開き直っている)方は多いのではないでしょうか。
実は、筆者もそうです。毎日多くのタスクを先延ばしにし積もりに積もらせています。
どうすれば先延ばし癖を直せるでしょうか?
その鍵は睡眠にある可能性があります。

睡眠の質と仕事の先延ばし傾向について調査した研究

アムステルダム大学の研究チームは、タイトルについての調査を行いました。

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2018.02029/full

研究の概要を次のようなものです。

  • 金融・銀行(17%)、政府・教育(13%)、建設(7%)、ヘルスケア(7%)、販売・マーケティング(6%)など、さまざまな業種に勤務する71名の正社員が対象
  • 性別は男性51%、平均年齢は約35歳、平均勤続年数は約13年
  • 参加者にはアンケートを回答してもらった
  • 最初にアンケートを実施した後に、10日間に渡り睡眠の質と先延ばし傾向についてのアンケートを毎日実施(午前・午後の2回)

その結果、睡眠の質と翌日の仕事の先延ばしには負の関係があることが示されました。
その中で、特性として自制心がある人は悪い睡眠の影響を受けづらく、自制心が低い人程、悪い睡眠の影響を受けやすいこともわかりました。

つまり、自制心が低い人ほど、きちんと寝よう、ということです。
(先行研究で、睡眠の質と仕事の先延ばし傾向について負の関係があることはわかっており、この研究ではその知見を深掘りし、どういう特性があるか、という点について解像度をあげたものになります。)
(なお、自制心が高い人でも、睡眠の質が低い場合には先延ばし行動が増加する。あくまでも、個人の自制心の特性により、緩和される、というだけ。)

先延ばし癖は日単位で影響を受ける

大枠の結果は上述の通りなのですが、では、どれ位の時間軸で影響を受けるのか?というと、どうやら日単位のようです。

調査では、ある日の睡眠の質の低さが、翌日の先延ばし行動の増加と関連しており、個人の自制心の問題以上に、睡眠の質が大きく影響していることがわかったのです。

また、睡眠の質を高く保った場合、自制心の高い人と低い人で翌日の先延ばし行動について、その差がかなり埋まったことも示されました。
(これにより併せて睡眠の質が個人の自制心の問題以上に、先延ばし行動に大きく影響している、ということが示された。)

懸念、というか悩み

結論として、きちんと寝よう、という話ではあるのですが、一つ懸念、というか悩みが存在します。

それは、睡眠の質が低下した結果として、「寝る」という行動自体を先延ばしにしてしまう、という点です。
(覚えがあるかと思います。夜中、さっさと寝た方が良いのはわかりきっているのに、ついつい夜更かししてスマホをいじったりしちゃうの。)

研究者たちは、その点についても指摘しており、寝ることを先延ばしにしてしまう理由や原因を解決するための行動をとった方が良いとしています。
例えば、一定の時間を過ぎたら、パソコンやスマートフォンを触れない様に、アクセスをブロックする機能の導入等です。

行動を変えたいならば環境を変えよう、ということですね。

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適度な運動は睡眠不足による悪影響を相殺する可能性がある

現代人にとって、睡眠不足は質の悪い友達のようなものです。
睡眠不足が認知機能の低下や、健康状態の悪化など、様々な悪影響を及ぼす、ということがわかっていたとしても、良質な睡眠を純分にとることは贅沢な世の中です。
そのような中、適度な運動が睡眠不足による悪影響を相殺する可能性が示されました。

運動と睡眠による健康への影響を調べた長期研究

シドニー大学の研究チームは、次のような調査を行いました。

https://bjsm.bmj.com/content/early/2021/05/25/bjsports-2021-104046
  • 380,055人の中年成人を対象に分析を行った
  • 調査では身体活動のレベルと睡眠の状況について調査された
  • 身体活動レベルは世界保健機関(WHO)のガイドライン(※)に基づき、高、中、低、中度から重度の運動無しに分類
  • 睡眠は、総合的な睡眠スコアを用いて、健康、中間、不良に分類
  • これらに基づいて、12種類のパターン別に11年後の疾病状況等について追跡調査を行った

※ WHOのガイドライン

ガイドラインの上限は、週に300分の中強度の運動、または150分の激しい運動、またはその両方。
ガイドラインの下限は、週に150分の中強度の運動、または75分の激しい運動、またはその両方。
中強度の運動とは、通常、数分間継続すればわずかに息が切れる程度のもので、早歩きやゆったりとしたペースでのサイクリングなど。
激しい運動とは、通常、息が切れるほどで、ランニング、水泳、テニス、ネットボール、サッカー、フットサルなどのスポーツのこと。

適度な運動は睡眠不足による悪影響を相殺する可能性がある

11年後の長期追跡調査の結果、非常に興味深いことが判明しました。

(追跡調査の段階では、15,503人の参加者が亡くなり、そのうち4,095人が心臓病で、9,064人ががんで亡くなりました。)

結果、健康的な睡眠をとっている人に比べて、睡眠不足の人は、早死にするリスクが23%、心臓病で亡くなるリスクが39%、がんで亡くなるリスクが13%高くなることが示されました。
また、運動量との比較では、心臓病やがんで死亡するリスクが高かったのは、睡眠状況が不良で、WHOの身体活動レベルのガイドラインを満たしていない人たちでした。

一方、睡眠不足であったとしても、ガイドラインを満たす身体活動を行っている人は、睡眠不足でガイドラインを満たしていない人に比べて、心臓病やがんで死亡するリスクはそれほど高くはない、という結果が示されました。

つまり、WHOガイドラインの下限値を満たす身体活動レベルであれば、睡眠不足による健康被害の悪影響を、一定程度軽減、または解消できることがわかったのです。

WHOガイドラインの下限値を満たす身体活動レベル:週に150分の中強度の運動、または75分の激しい運動、またはその両方

注意点、もしくは懸念

この研究の問題は、観察研究であるが故に、あくまでも相関性が示されただけ、という点にあります。
メカニズムもわかっていませんし、因果関係も示されています。

つまり、運動できるだけの、そもそもの気力、体力、健康がある人が運動をしているだけで、実は関係が無い、という可能性がゼロではないのです。

とは言え、各種の研究により、運動が健康にプラスの影響を与えることは一定わかっている話ですので、上述の話には、高い水準で信ぴょう性があると考えられます。

運動がメンタルに対してもプラスの影響を与えることも、同様の観察研究で示されているので、心身ともに健康的な生活を送りたいのであれば、適度な運動は必須と言って良いでしょう。

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体力が低いとメンタルが病みやすい模様

これまで多くの研究により、体力が低いとメンタルが病みやすい傾向がある、ということがわかっていましたが、あまり客観的なデータが存在していませんでした。
今回紹介する研究では、大量のデータを元に、客観的にこの結果が示されています。

https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-020-01782-9

15万人を対象に体力とメンタルの相関性を調査

ロンドン大学の研究チームは、次のような調査を行いました。

  • 40歳から69歳までの152,978人を対象とした
  • いわゆるエアロバイクで持久力を、握力テストで筋力を測定した
  • うつ病や不安症に関するアンケート調査も行った
  • 7年後、うつ病や不安症に関するアンケート調査(追跡調査)を実施した

その結果、持久力であろうが、筋力であろうが、「体力がある人」は「体力が無い人」に比較して、うつ病・不安症・その他一般的な精神疾患になりにくい、ということが示されました。

また、持久力もあり筋力もある、「特に体力がある人」は、真逆の「特に体力が無い人」に比較して、最大約2倍近くもメンタルが病みにくい、ということがわかりました。
(総合的な体力が高い人に比べて、総合的な体力が無い人は、うつ病になる確率が98%、不安になる確率が60%、一般的な精神疾患のいずれかになる確率が81%高かった。)

体力とメンタルの強さは相関性がある、ということです。

因果関係は不明だけれども運動をした方が良い

この研究の問題点は、あくまでも相関関係を示しただけで、因果関係を示したものではありません。

研究者も、「あくまでも観察的なもので、実験的に何かを変えたわけではない。因果関係を明確に示すためには、証拠に基づいて試験を行うことが必要。」としています。

また、「食事や社会・経済的地位、慢性疾患、精神疾患の症状など、様々な要因も考慮したが、調査には限界がある。」としています。

そのため、“運動を行った結果としてメンタルが強くなったのか”それとも、“元々、運動をしようという意欲がある位にメンタルが強い人が運動をしているのか”が不明なのです。

しかし、それでも運動をした方が良いでしょう。

運動不足が多くの健康不良につながるということは多くの人が知っていることですし、感覚的に、身体を動かすと心も軽くなるということも多くの人が体験したことがあるはずです。

また、一部の研究では、現代人の悩みの一つである睡眠不足についても、適度な運動により、その悪影響が減少することが示されています。

https://bjsm.bmj.com/content/early/2021/05/25/bjsports-2021-104046

結論、無理のない範囲で、隙間時間を活用して、身体を動かしましょう。

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生産性をあげる可能性があると言われているホワイトノイズは耳に悪いかもしれない

ホワイトノイズは生産性をあげる可能性があると言われています。
以前にこちらで書いた記事では、集中力に欠ける人にとっては生産性をあげる効果が、一方で集中力がある人にとっては下げる効果がありそうだ。ただ、適度な騒音レベルというものがあるようで、人によるかもしれない、と結論づけています。
このホワイトノイズですが、長時間聞くと、耳に悪いかもしれません。

長時間騒音に晒されると脳が変化する可能性

こちらの論文では、耳鳴りの患者に対して行われる治療法の一つであるホワイトノイズが有害である可能性を示しています。

https://jamanetwork.com/journals/jamaotolaryngology/article-abstract/2697852

ホワイトノイズへの暴露が、脳に対して可塑的な影響を与え、神経の健康を損ない、認知機能を低下させることを誘発するとのことです。

この論文のシチュエーションは、対象は成人であり、また非外傷性のホワイトノイズでも悪影響が誘発されるとしています。
論文では、加齢と同様の変化が脳に起きているとしており、ホワイトノイズ(と耳鳴り)が脳の老化を促進している示唆があるとのこと。

まだ研究レベルの話なので確かなことはわかりませんが、ホワイトノイズが生産性に与えるプラスの影響が不明瞭なことを考えると、程々にするのが良いのでしょう。

現代人はイヤホン難聴も心配

ホワイトノイズへの暴露もそうなのですが、現代人にとってみればイヤホン難聴も心配です。

リモートワークも増え、また勤務中のイヤホン装着への抵抗感も減少している昨今。
仕事中の会議や、動画視聴、音楽鑑賞など、様々な場面でイヤホンを使います。

周囲の騒音からシャットするために、ついつい音量を上げてしまう人も多いでしょう。
しかし、大きな音は難聴を誘発する原因になりますし、上述の研究のことを踏まえると、耳だけでなく、脳に対しても悪影響が起きないか懸念を感じます。

こちらの記事(外部記事)では、単純に音量だけでなく、時間も問題であるとしています。
(上述の研究とも整合がとれます。)

https://medicalnote.jp/nj_articles/190717-001-MV

繰り返しになりますが、単純に音量だけでなく、時間の長さも問題であると認識して、きちんと耳を休める時間の確保にも努めるようにしましょう。
何にしても、程々が一番ということです。

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気温(もしくは室温)による生産性への影響は?

暑い日が続き、熱中症が不安になる季節です。
照度や騒音等について、生産性との関係が多く研究されていますが、果たして気温(もしくは室温)と生産性の関係はどうなのでしょうか?

約29度を超えると1度毎に生産性が3%低下する

ボストン大学の教授ら他複数大学のチームとインドの縫製メーカーがある調査を行いました。

https://www.npr.org/sections/goatsandsoda/2018/07/23/629871725/why-a-drop-of-4-degrees-made-a-big-difference-for-a-garment-makers-bottom-line

インドの工場では、空調設備が整っておらず、非常に暑い環境で働かなくてはならないとのこと。

そのような中、照明を蛍光灯からLEDに変えてみたら、工場内の温度が低下するのではないか?それにより生産性に良い影響を与えるのでは無いか?という着想のもと、26の工場の照明をLEDに切り替え、その前後で外気温と衣服の生産性について1日ごとに調査しました。
なお、切り替える前は4分の1の工場で、工場内の温度が約29度(熱ストレスのしきい値)を超えていたとのこと。

その結果、次のような成果を得られたそうです。

  • 切り替えた後は、工場内の温度が4度以上も低下した
  • 温度がしきい値を超え1度上がるごとに、生産性が3%、利益が2.2%低下することがわかった
  • 労働者も、暑くないと感じるようになった
  • LEDに交換したコストは8ヶ月以内で回収できる計算となった

クールビズの「28度」は意外に的を得ている模様

2005年にはじまり、今ではあまり語られることが無くなったクールビズですが、「室温28度」で快適に過ごせるよう工夫しましょう、と言われています。

法律面では労働安全衛生法というものがあり、その中の「事務所衛生基準規則」では次のような規定がされています。

(空気調和設備等による調整)
第五条 (中略)
3 事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない。

世の中的には、あまりこの28度に根拠は無い、という話ですが、意外に的を得ていると言えそうです。


とは言え、28度という環境は、わりかし暑苦しいのが現実です。
上述の話は、あくまでも「しきい値」と認識して、快適な労働環境を構築すると良いでしょう。

なお、空調の温度設定(冷房の設定温度)を28度にしても、室温は28度にはなりません。
設定温度は一定、下げる必要があることは認識する必要があります。

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睡眠不足はパフォーマンスを下げるだけでなく、リスク判断を歪める

睡眠不足は酩酊と同じくらいに、人のパフォーマンスを下げる悪影響がある、と言われるようになりました。
この話は、多くの方が実体験としても同意するものでしょう。
そして、睡眠不足はパフォーマンスへの悪影響だけでなく、リスク判断を歪める可能性もあります。

睡眠不足は酩酊と同じ

時間外労働に対する規制が強化され、働き方改革の名のもとに、生活習慣や職場環境を見直す企業や人が増えています。
コロナ禍も、それに拍車をかけていると言えます。

そして、見直す対象の一つに「睡眠」もあげることができます。

睡眠不足はパフォーマンスに対して多大な悪影響を与えることが、昔から体験的に、そして近年は科学的に理解されるようになってきました。

下記の記事では、次のように海外の研究についてまとめています。

ペンシルベニア大学とワシントン州立大学が行った実験では、1日平均7~8時間睡眠をとっている健康な男女を48名集め、3つのグループに分けました。
14日後、8時間睡眠のグループに比べると、4・6時間睡眠のグループの注意力が確実に欠如していることがわかりました。
まず、6時間睡眠のグループは、酒に酔っている時と同じような状態になっていたことがわかり、4時間睡眠のグループはテストの途中で寝てしまう人も現れる始末。

https://tabi-labo.com/146649/few-hours-sleep

そして、睡眠不足によるパフォーマンスの影響はリアルに経済への影響も与えており、米シンクタンク「ランド研究所」の試算(2016年)では日本国内で1380億ドル(約15兆円)の経済的損失、国内総生産(GDP)の3%に当たる額の規模にのぼるとしています。

また、経済的な影響のみならず、労災事故や健康被害にもつながる、悪影響が目立つのが睡眠不足です。

この睡眠不足ですが、実はまだあまり知られていない悪影響があります。
それは、リスク判断を歪める可能性についての指摘です。

睡眠不足はリスク判断を歪める

デューク大学の研究チームは、平均年齢22歳の健康な成人ボランティア29人を対象に、睡眠不足が意思決定に与える影響を、注意力への影響とは別に検証しました。

被験者は、一連の経済的意思決定課題を、通常の睡眠をとった後の午前8時と、睡眠不足の後の午前6時の2回行いました。

実験では、MRIにより、ギャンブルの結果を肯定的に捉えたか、否定的に捉えたかを見ると共に、朝のセッションでは課題を与え、リスクに対する評価について計測を行いました。

https://corporate.dukehealth.org/news/sleep-deprived-people-make-risky-decisions-based-too-much-optimism

その結果として、睡眠不足がポジティブな結果を評価する脳領域の活動が活性化すると共に、逆にネガティブな結果を評価する脳領域の活動が低下することが示されました。
(それにより、ポジティブな報酬に対しては感度が高くなる一方、ネガティブな報酬に対しては感度が低下していた。)

また、金銭的な利益を重視する傾向があり、損失を軽減するような選択は減少することも示されました。


これらのとおり、睡眠不足は人へのパフォーマンス影響を与えるのみならず、リスク判断を歪める可能性が大いにあるのです。

対処法としては睡眠はしっかりとりましょう、という当たり前の話もそうなのですが、重要な意思決定は睡眠不足の時には行わないことが考えられます。

まぁ、踏ん切りがつかなくて、何かしらの後押しが必要ならば話は別なのでしょうが。

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適度な騒音はパフォーマンスをあげるのか?さげるのか?

仕事をする上において、基本的には静かであることが求められます。
一方で、適度な騒音があること、例えばホワイトノイズはパフォーマンス向上効果がある、という説もあります。
果たして、適度な騒音はパフォーマンスをあげるのでしょうか?それともさげるのでしょうか?

子どもを対象にした実験

ストックホルム大学にて、子どもを対象に、ホワイトノイズがパフォーマンスをあげるのか、それともさげるのか、研究が行われました。

https://behavioralandbrainfunctions.biomedcentral.com/articles/10.1186/1744-9081-6-55

実験では次のようなことが行われました。

  • 11~12歳の生徒51名(男子25名、女子26名)が対象となった
  • 生徒には、7段階の“注意力”の評価が行われ、6と7の評価対象生徒は“不注意グループ”とされた
  • “不注意グループ”にはADHDの診断を受けた者はおらず、薬による治療を受けた者もいなかった
  • 2×2デザイン(騒音レベル:低い高い)(グループ間変数は不注意レベル:普通不注意)を使用
  • 51人の学生が、2つの騒音条件下でエピソードに基づく言葉の自由想起テストを行った
  • 高騒音条件では、聴覚的背景雑音(ホワイトノイズ、78 dB)の中で動詞-名詞文を提示し、低騒音条件では、雑音なしで文を提示した

この結果、騒音の影響は、不注意グループの子どもの成績を向上させ、普通グループの子どもの成績を悪化させることとなりました。
(騒音が不注意グループと普通グループのエピソード記憶のスコア差を解消させた。)

騒音と注意力を変数とする記憶力の違い(普通N = 41,不注意:N = 10)

つまり、適度な騒音は、注意力に欠ける人にとってはパフォーマンス向上につながるものになる可能性がある、ということです。

“適度”の加減は人により違いがある?

研究のバックグラウンドとして得られていた知見としては、次のようなものもあるようです。

こちらのグラフは、縦軸が認知機能テストのパフォーマンスで、横軸が騒音レベルで、一般的には騒音レベルが低すぎる場合と高すぎる場合にパフォーマンスが減衰する傾向があるようです。
また、不注意な子ども(成績の悪い子どもも)は、普通の子ども(成績の良い子どもも)に比べて、パフォーマンスが最適化されるためには、より高いレベルの騒音が必要とのこと。

つまり現状では、何が一番良いのかが判断つかない状況と言えそうです。

個人レベルで、自分にとって最適と思われる静粛さ(騒音の加減)を探っていくのがよさそうです。

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成功と失敗をわける要因は?粘り強さではなく、失敗への対処が重要

失敗は成功のもと、と言われますが、果たしてそれは正しいでしょうか?
ビッグデータにより成功パターンと失敗パターンを分析した研究では、非常に興味深い統計的傾向が示されています。
そして「粘り強さではなく、失敗への対処が重要」という知見が導き出されました。

https://www.scientificamerican.com/article/failure-found-to-be-an-essential-prerequisite-for-success/

ビッグデータによる成功パターンと失敗パターンを分析

研究では、次のような分析が行われました。

  • 研究では、ビッグデータにより成功パターンと失敗パターンを予測する統計的パターンを見出した
  • 米国国立衛生研究所(NIH)に提出された776,721件の助成金申請書、46年分のVCによるスタートアップ投資、48年分の17万350件のテロ攻撃のデータを分析
  • NIHでの成功は助成金申請の通過、ベンチャー企業での成功はIPOやM&Aの成功、テログループでの成功は犠牲者の発生、と定義された

その結果、次のような統計的傾向を示すことがわかりました。

  • 成功パターンでも失敗パターンでも、努力の量は基本的に同じだった
  • 成功パターンでは、うまくいかなかった点を把握し、改善すべき点に焦点を当てていた
  • また早く失敗し、加えて次の失敗までの期間が短い程成功確率は高くなった(挑戦までの時間に間があくほど失敗確率が高くなる)
  • 成功するまでに一度でも失敗した場合の平均失敗回数は、NIHでは2.03回、ベンチャー企業では1.5回、テログループでは3.90回

つまり端的に表現すると「粘り強さ」の問題ではなく、「高速PDCA」の有無、ということです。


一部では、「もうPDCAは古い、今の時代はOODAだ。」という言説もチラホラ見かけますが、PDCAは非常に重要な改善のプロセスであると言えるでしょう。

※ OODA:Observe(観察)、Orient(状況判断、方針決定)、Decide(意思決定)、Act(行動)

Amazonを除けば、PDCAに関する書籍が非常に多く存在します。

改めてPDCAを見直してみるのも良いかもしれません。

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