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生産性・業務効率化

学習は量も大事だけれども質も大事というシンプルな話

著名なマルコム・グラッドウェル氏が提唱した1万時間の法則については、知っている人も多いでしょう。
また、この1万時間の法則が実は間違いである、という話も同様に知られるようになってきました。
今回は、学習は量も大事だけれども質も大事というシンプルな話についてです。

1万時間の法則の間違い

1万時間の法則とは「どんな分野でも、だいたい一万時間程度継続してそれに取り組んだ人は、その分野のエキスパートになるという経験則」のことです。

科学的研究をベースに提唱されたために、あたかも科学的事実かのように広まりましたが、近年は誤りである、という研究が明確に出ています。

https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0956797614535810

プリンストン大学が行った88の研究のメタ分析では、様々な分野でのパフォーマンスの差に練習が占める割合はわずか12%であることを示しています。

そして、その差は分野により大きく異なり、例えば次のような結果が示されています。

  • ゲーム:26%
  • 音楽:21%
  • スポーツ:18%
  • 教育分野:4%
  • 多くの様々な職業:わずか1%

1万時間の法則が適用されるのは、その領域が変化をしない安定した構造になっており、練習の要素が大きいウェイトを占めている分野に限られる、としています。
(例えばクラシック音楽やチェスなどの、ルールの変化が起きず、クローズな世界。)

ここでポイントなのは、練習の量が意味がない、という話ではなく、他にも重要な要素があるはずだ、という点です。

では、その重要な要素は何か?というのが練習の質です。

質の高い練習(学習)のための知見

当サイトでは、質の高い練習(学習)のための知見について、いくつかの記事を掲載しています。

是非、これらも参考にしてください。

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カフェインによって生産性は本当にあがるのか?~タスクの種類による~

仕事に忙しい方にとってカフェインは友と言えるでしょう。
眠気を覚まし生産性をあげるため、朝やランチ後、業務が遅くなった夜にコーヒーを飲む方は珍しくないはずです。
しかし果たして、カフェインによって生産性は本当にあがるのでしょうか?

カフェインによる生産性向上効果はタスクの種類による、という話

カフェインの覚醒効果について、疑いを持つ人はほとんどいないでしょう。

実際、コーヒーの香りを嗅ぐだけで覚醒効果が出る、という研究がある位、人々の生活とカフェインは密接に結びついています。

また、多くの研究がカフェインによる生産性向上効果について支持をする結論を出しています。

しかしながら、タスクの種類によるカフェインの生産性向上効果について研究された実験は少ないのが実際です。

ミシガン州立大学の研究チームは、この点について研究を行いました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34014758/

研究では276人の参加者を対象に、次の変数を与えて生産性について測定しました。
(プレースキーピングとは、プレースキーピングとは、複数の手順を重ねる必要があるタスクを完遂させる能力のことです。)

  • 単純タスクと複雑なタスク(プレースキーピングタスク)
  • 徹夜か睡眠をとるか
  • カフェイン錠剤を摂取するかプラセボ錠剤を摂取するか

その結果、全ての睡眠不足の参加者について、単純タスクであろうが複雑なタスクであろうが、パフォーマンスの低下が起きることが示されました。

また、カフェイン錠剤は単純タスクについては生産性向上効果を示すものの、複雑なタスクについては生産性向上効果をほとんど示さないことがわかりました。

つまり、カフェインは単純タスクにのみ効果があり、複雑なタスクについては意味がない可能性があるわけです。

現実の仕事において

一般的に14時を過ぎたらカフェインは摂取しない方が良い、と言われますが、この助言は守った方が良いと言えます。

というのも複雑なタスクについてカフェインの効果が無いのであれば、午後の遅い時間以降にカフェインを摂取して仕事を頑張るより、仕事を切り上げてきちんとした睡眠をとって翌日にリカバリーした方が効率が良いと考えられるからです。

また、仕事が忙しい、複雑なタスクが多い方程、カフェインに頼らず、きちんとした睡眠をとることを心がけた方が良いことがわかります。

実際に眠気は覚めたとしてもパフォーマンス自体は落ちている、ということを認識し、自分自身を労わることを考えるのが吉と言えます。

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勤務時間外のメールは送ってはいけない~身心への悪影響が甚大~

土日祝日や就業時間後にメールを送り、また返信を期待する人は多いでしょう。
もしくは、返信を期待されているような状況に立っている人も多いのではないでしょうか。
オンラインでの待機は、仕事に対するプロフェッショナル意識の高さの現れという考えもありますが、多くの弊害があります。

(メールに限らず、チャットツールでの連絡等、オンラインでのコミュニケーション手段全般を含みます。)

勤務時間外のメールは従業員の身心に悪影響を及ぼす

仕事熱心な方で、土日祝日や就業時間後に仕事のメールを送る人は珍しくないでしょう。
また同時に、送ったメールに関して、なるべく早い返信を期待する人も珍しくないでしょう。

そして、そのような方がいるということは、土日祝日や就業時間後に仕事のメールを受け取り、なるべく早い返信を期待されている人もいる、ということです。

迅速なレスポンスは、仕事に対するプロフェッショナル意識の高さの現れだとして、一般的には好意的に評価されます。
軽快なコミュニケーションが成立することは、一見、高い生産性があるかのようにも見えます。

しかし、果たして、本当に高い生産性があるのでしょうか?
何か弊害はないのでしょうか?

オーストラリアでの大規模な研究

オーストラリアで大規模な研究が行われました。

https://www.unisa.edu.au/research/cwex/projects/digital-communication-and-work-stress-in-australian-university-staff-a-multilevel-study/

内容としては、デジタル・コミュニケーションの状況について調べると共に、従業員(研究では大学職員が対象)の身心の健康について調べられました(他にも関連する研究がプロジェクトとして行われている)。

その結果、勤務時間外のメールは従業員の身心に悪影響を及ぼすということが明らかになりました。

研究では、従業員がグループ分けされています。

  1. 回答者の21%が、仕事に関連したメール、電話、電子メールに仕事後に対応することを期待する上司がいた
  2. 55%が夕方に仕事に関するデジタルコミュニケーションを同僚に送っていた
  3. 30%が週末に、同日中の返信を期待しながら、仕事に関するデジタルコミュニケーションを同僚に送った

これらのグループの内、上司から仕事のメッセージへの返信を期待されている従業員は、されていないグループと比較して、心理的苦痛(45.2%に対して70.4%)と精神的疲労(35.2%に対して63.5%)のレベルが高いこと、また、頭痛や腰痛などの身体的な症状も報告されました(11.5%に対し22.1%)。

さらに上司だけでなく、同僚とのコミュニケーションでも同様の傾向が見られました。

就業時間外に同僚からの業務連絡に対応しなければならないと感じている従業員は、そうでない従業員に比べて、心理的苦痛の度合いが高いこと(39.3%に対して75.9%)、また、精神的疲労(35.7%に対して65.9%)や身体的な健康症状(12.5%に対して22.1%)も高いことが示されました。

この結果は、一般的に想像されるであろう影響よりも甚大な悪影響があると考えられます。

従業員が休職すると人件費の3倍のコストがかかる

上述の結果は、生産性の高さ 対 従業員の負担、という構図に見えるかもしれません。

ハイパフォーマー達にとって、迅速で軽快なコミュニケーションは望ましいものであり、生産性を高くするために必要なことと捉えられています。

「そんな大げさな。」であったり、場合によっては「必要な犠牲だ。」と考えられていることもあるでしょう。

しかし、従業員の負担という事実は、あまり軽視して良いようには思いません。

一部の試算(厚労省試算)によると、従業員1人が仮に休職した場合、人件費の3倍のコストがかかるとしています。

この試算も大げさなポジション・トークのように感じるかもしれませんが、休職に至るまでのパフォーマンスが落ちている期間の人件費、休職中の休業手当、休職明け後のリハビリ出勤期間、上司のフォローコスト、代替要員の手配コスト、代替要員の教育コスト、代替要員をフォローする同僚の人件費、といった費用が発生することを考えると、試算の正しさはともかくとして、イメージする以上のコストがかかることは容易に想像できます。

つまり、ハイパフォーマー個人の生産性の高さではなく、組織全体の生産性の高さの追求のためにも、勤務時間外のメール(デジタル・コミュニケーション)は取らない方が吉の可能性が高いのです。

つながらない権利

このような知見が少しずつ広まり、つながらない権利、という言葉も誕生しています。

つながらない権利とは、労働者が勤務時間外には仕事のメールや電話などへの対応を拒否できる権利のことです。

日本では一般的ではないですが、欧州諸国等では従業員の権利として法律で定めている所が増えています。

この“つながらない権利”は、単純な(企業と対立する)従業員の権利として考えて良いようには思いません。
何故ならば、上述の通り、従業員に負担がかかり休職等が発生した場合に、そのコスト負担を被るのは企業だからです(従業員の人生にも当然に影響を与えますが。)。

技術が進歩し、デジタル上のコミュニケーションが容易になった現代だからこそ、高い生産性を出したいと望むならば、企業は率先して、この“つながらない権利”を推し進めた方が良いと言えるでしょう。
これは、企業が永続的に発展・成長するために必要な価値観の切り替えです。

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【生産性向上】休憩中は大体のことは何でもしていて良い

休憩中、ゲームをしている人、動画を見ている人、本を読んでいる人。
様々に自由な時間を過ごしているでしょうが、そのような別の何かを行っていると、果たしてそれは休憩になるのでしょうか?答えは「休憩になる」です。
今回は、様々な休憩のとり方が生産性に与える影響について見ていきます。

様々な休憩がタスク遂行上の生産性に与える影響

複数大学の研究チームが、鉄道のオペレーターを模して、様々な休憩がタスク遂行上の生産性に与える影響について実験を行いました。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/acp.3334

実験は、87名の大学生に対して、休憩を取らせない、ゲームをする、何もせず座る、音楽を聴く、動画を見る、というような様々な休憩のとり方でグループ分けをし、鉄道を制御するオペレーターを模したシミュレーションタスクを行わせました。
20分間のタスク遂行の間で、休憩が5分間、挟まれました。

この結果、どのような休憩のとり方であれ、休憩を取らないよりも高い生産性を出すことが示されました。

ゲームをする、というような一見休憩にならないようなことでも、タスクから離れることにより、パフォーマンスを高く保つことができるということです(パフォーマンスの低下を抑制できる、という方が正しいか)。

「異なる刺激」に休憩の効果があるようだ

別の研究では、「異なるタスクを行うだけでも休憩になる」「40秒間、緑を眺めるだけでも休憩になる」ということが示されています。

これらの知見を踏まえると、「異なる刺激」を脳に与えることが、休憩の効果を示す、と言えます。

忙しい現代人ですが、タスクを切り替えていく、異なる種類の仕事を挟んでいく、というようなアクションを取ることで、高い生産性を維持できると考えられます。

なるべく早く、しっかりと休むことも忘れない様に

なお、なるべく早く、しっかりと休むことも忘れない様にすることが重要と考えられます。

こちらの記事では、休憩はなるべく早く、できれば午前中に取る方が望ましい、ということを書いています。
理由としては、蓄積された疲労は、ちょっとやそっとの休憩では簡単に癒せないから、です。

1時間弱の仕事 ⇒ 短い時間で完了できる別のタスク ⇒ 1時間弱の仕事 ⇒ 午前休憩 ⇒ 1時間弱の仕事 ⇒ 短い時間で完了できる別のタスク ⇒ 午後休憩 ⇒ 残りの仕事。

このような形で1日のスケジュールを組めると良いのではないでしょうか。

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【生産性向上】異なるタスクを行うだけでも休憩になる

40秒間、緑を眺めるだけでも休憩効果がある、という研究があります。
朗報ではあるのですが、ぼーっとしている姿そのものがNGな職場もあるでしょう。
そういった会社での短い休憩に関して、別のアプローチがあります。
それは異なるタスクを行うこと、です。

異なるタスクを行うと集中力が回復する

こちらの記事で、40秒間、緑を眺めすだけでも一定の休憩効果がある、という内容のことを書きました。

推測の中で、異なるタスクを行うだけでも一定の休憩効果があるのでは?とも書きましたが、この点に関する研究もなされています。

イリノイ大学の研究チームは、短時間の極短い“精神的な”休憩が集中力の低下を防ぐ(回復を行う)効果があることを示しています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21211793/

人の集中力は、ある一つのフォーカスすべき課題に対して、長時間にわたってその集中力を維持できないという認知システムになっています。

研究では、タスク(フォーカスすべき課題)の切り替えを行うことにより、集中力の低下を防げるのではないか?という仮説の元、事件が行われました。
タスクの内容は、数字を記憶してもらい、そのまま視覚的に集中力を要する課題を遂行する、というものです。

実験では、課題の遂行が長時間に渡ると集中力が低下することを示していますが、同時に、課題の合間に数字を思い出すように指示を与えると(フォーカスすべき課題の切り替えを行うと)、集中力の低下を防げることがわかったのです。

つまり、異なるタスクを行うと集中力が回復する、一定の休憩効果がある、ということです。

(刺激的で楽しい仕事でも、長く続けているとだらけるでしょ?という話のようです。)

スケジュール設定においてこれは重要ではないか?

プログラミング・エンジニアや、クリエイティブ系職種の方が「作業日」というような形で、終日、もしくはまとまった時間、作業に集中する日を設ける場合をよく見かけますが、もしかしたらこれは良いことではない可能性があります。

(諸説ありますが)人間の集中力は45分程度だ、という話をよく聞きます。

この前提に立つと、45分程度の作業の後、別のタスクを挟んでいく方が集中力維持の観点では望ましいかもしれません。

集中力に関するいくつかの知見も踏まえると、定期的に短い休憩を挟む、定期的に異なるタスクも挟む、疲れ切らない内に休憩を入れる。
そういったことが重要なようです。

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【生産性向上】40秒、緑を眺めるだけでも休憩になる

忙しい現代人。まとまった休憩をとる時間がない方は、多いのではないでしょうか。
そんな方に朗報があります。
(本当に朗報か否かは疑問がありますが)どうやら、ちょっとした休憩、それこそ40秒の休憩でも緑を眺めるとリフレッシュ効果があるようです。

マイクロブレーク(短い時間)の役割

こちらの記事で、休憩は可能な限り早い時間帯、つまりは午前中に取るのが望ましい、という話をしました。
理由は簡単で、こびりついた汚れが簡単にとれないように、一定ラインを超えた疲労は、1時間程度の休憩ではとれないので、疲労が蓄積されていない午前中に休憩をとった方が、生産性維持のためには良い、というものです。

一方で、忙しい現代人が午前中に果たして休憩がとれるのか?と言うと、現実問題として難しい方が多いのではないでしょうか。
それのみならず、そもそもまとまった休憩をとることすら難しい方も多いのではないでしょうか。

メルボルン大学の研究チームは、マイクロブレーク(短い時間)の役割について研究を行いました。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0272494415000328

研究の内容は、被験者に対してグループ分けをし、短い休憩をとってもらい、生産性がどれだけ維持されるのか?という点について調査が行われました。

グループ分けでは、大学生150名を対象に、2種類の風景を見せる形で行われました。
1つがコンクリートの街の風景で、もう1つが緑が多い街の風景です。

被験者は、生産性のベースラインを把握するためにタスクを遂行後、40秒間、風景を眺め、続いてタスクを再開しました。

その結果、緑が多い街の風景を眺めるグループは、コンクリートの街の風景を眺めたグループより、有意にタスクのエラーが少ないことが示されました。

ちょっとした休憩(マイクロブレーク)でも、きちんと条件を整えれば生産性の維持(低下の抑制)が可能、ということです。

ちょっと窓辺に立つだけで良い

こちらの記事では、短い休憩を頻繁に挟むと、学習の効率が上がる、という話をしました。
理由は、脳に蓄積された情報を処理する余裕を確保できるためであろうとされています。

ここから、もしかしたら業務遂行上の生産性という観点でもマイクロブレーク(短い休憩)は効果があるのではないか、と考えていましたが、どうやらその考えは正しいようです。

(もしかしたら人の目は気になるかもしれませんが)まとまった休憩をとるのが難しい方は、定期的に窓辺に立ち、1分間だけでも良いので外の風景を眺めるだけでも良いでしょう(外の風景が明媚であれば、ですが)。

管理監督者も、自分たちのチームの生産性向上を望むのであれば、ちょっとした休憩を推奨するのは良いと言えます。

そして、推測なのですが、「緑の風景」というのは、「非日常」のことを指しているのではないか?とも考えられます。
普段見ない画像、例えば芸術作品や知らない町の画像でも、ぼーっと眺めるだけでも休憩の効果はあるのではないでしょうか。

忙しい方だからこそ、色々な休憩のとり方について、自分自身を被験者として実験してみるのは良いかもしれません。

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休憩はどのタイミングで取るのが適切なのか?

ごく平均的な労働者は12時を過ぎたあたりで1時間弱の休憩を取るのが一般的でしょう。
当たり前すぎて、このことに違和感を持たない方も多いのではないでしょうか。
ある研究によると、休憩はなるべく早いタイミングでとった方が効率が良いことが示されています。

よりよい休憩のタイミングは?

ベイラー大学の研究チームは、どのタイミングで休憩をとるのがより高い効率で仕事に向かうエネルギーを回復させるのか?について調査を行いました。

https://content.apa.org/record/2015-36861-001

研究では、95人の労働者を対象に、5日間の勤務中にとられた休憩について、その特徴が調べられました。

その結果、シフトの早い時間帯に休憩をとった場合、エネルギー回復の効率が高く、その後の仕事のパフォーマンスが高くなることが示されました。

また、効率の良い休憩により得られた仕事に向かうエネルギーは、健康面の改善、精神的疲労の軽減、仕事満足度の向上、シチズンシップの向上(組織のメンバーを支援しようという行動)等のプラスの影響を及ぼすことがわかりました。

なお、休憩の時間と頻度について、頻繁な短い休憩 > 頻繁でない長い休憩 > 頻繁でない短い休憩 の順でエネルギー回復の効率が変わることも示されました。

固定概念を打破すべき

冒頭に書いた通り、ごく平均的な労働者は12時を過ぎたあたりで1時間弱の休憩を取るのが一般的でしょう。
これは、繰り返しますが、あまりにも当たり前すぎて、疑問を持っていない方も多いのではないでしょうか。
場合によっては、混雑するお昼の時間帯を割けて、午後になってから休憩をとる方もいらっしゃるでしょう。

上述の研究は、可能な限り早い時間帯(午前)に休憩をとった方がエネルギー回復の効率が高いことが示されています。

研究者は、午後に入った段階ですでに労働者の脳は疲労しきっており、ちょっとやそっとの休憩では十分なエネルギー回復が図れず、元の生産性を取り戻せないのでは、と推測しています。

より高い生産性を望むならば、可能な限り早い時間帯の休憩を取り入れてみてはいかがでしょうか。

頻繁な休憩もおすすめ

なお、こちらの記事でも提示したのですが、短い休憩を頻繁に挟むことは学習効率を高めることもわかっています。
(この事例では、本当に頻度の高い、「頻繁な短い休憩」なのですが。)

上述の研究でも、頻繁な短い休憩は望ましいことが示唆されています。

これらのことを踏まえると、脳は使えば使うだけ疲労(もしくは情報)が蓄積していき、疲労回復のために要する休憩が長くなるのではないでしょうか(もしくは、脳に蓄積された情報を処理する時間が長くなる)。

時間帯をわけて短い休憩を頻繁に取ることは、もしかしたらより良いエネルギー回復効率をもたらすかもしれません。

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コーヒーは、香りを嗅ぐだけでも、コーヒーのことを考えるだけでも覚醒効果がある模様

コーヒーを友にする仕事好き人間は多いでしょう。
コーヒーには様々なプラスの効果、例えば覚醒効果だけでなく疾病予防や体力増強などの効果があります。
どうやらこの効果、実際に飲まなくても、香りを嗅いだり、コーヒーのことを考えるだけでも恩恵を受けられるようです。

コーヒーの香りを嗅ぐだけでも効果がある

複数大学の研究チームは、コーヒーの香りを嗅ぐことによる覚醒効果について実験を行いました。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0272494418302615

実験は簡単なもので、114人を対象に2つのグループに分け、GMATによる数学のテストを受験してもらいました。
あるグループはコーヒーに似た香りが漂う部屋で受験をし、別のグループは香りのない部屋での受験となりました。

結果は、コーヒーの香りが漂う部屋で受験をしたグループの方が、スコアが有意に高いことが示されました。

つまり、コーヒーの香りによるプラシーボ効果があったのです。

この研究は別の調査も行われており、実験に参加していない208人を対象に香りに対するイメージについてヒアリングを行ったところ、コーヒーの香りがする部屋では、香りがない場合や花の香りがする部屋よりも、生理的な刺激を感じる、と回答していました。
つまり、香りのイメージと得られる効果が脳内で結びついた可能性があります。
その意味で、コーヒー以外にも、紅茶や日本茶にも覚醒効果があるとイメージを持っている人の場合、コーヒーの香りでなくても同様の効果が得られる可能性があります。
もちろん、コーヒーに対する覚醒効果のイメージがない場合には、プラシーボ効果がない可能性があります。
この示唆による懸念は、いわゆる“デカフェ”のコーヒーですが、プラシーボ効果により覚醒してしまい、折角の“デカフェ”が意味をなさない可能性もある、という点が指摘できます。)

そして、コーヒーのことを考えるだけでも覚醒効果がある

別の複数大学の研究チームは、コーヒーに対する想起と覚醒効果について調査を行いました。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1053810018303350

複数の調査が行われているのですが、例えばコーヒーのことを考えた場合に、自己申告または心拍数が向上、つまりは生理的な覚醒度があがることが示されました。

これは、紅茶のことを考えたり思い出したりする場合に比べて、コーヒーの方が覚醒効果が高いことから、抱いているイメージ、心理的な早期が生理的に作用することを示唆しています。
(紅茶にもカフェインが多く含まれており、コーヒーと同様に覚醒効果があるのですが、一般的には頭をスッキリさせるならばコーヒー、紅茶にはそのような効果がない、とイメージされている。)

また、文化圏による差も出るようです。
コーヒー文化圏の出身者には上述の効果があるものの、そうではない主にアジア圏の被験者には、コーヒーを想起することによる覚醒効果は弱い、ないしは見られないことも示されました。

上の段落のメモで、紅茶や日本茶にも覚醒効果があるとイメージを持っている人の場合~~~、と記載しましたが、この研究により、「覚醒効果に対するイメージ」が影響することがわかります。
つまり、紅茶や日本茶に対して覚醒効果のイメージを強く抱いているならば、コーヒーに限らなくてもプラシーボ効果があると考えられます。
同様に、“デカフェ”に対する懸念が強まったとも言えます。


これらの研究は、人の身体は心理的な影響を強く受ける、ということを示しています。

コーヒーによる覚醒効果を高めたい場合、その覚醒効果をイメージしながら飲むと、より効果が高まるかもしれません。
そしてそれはコーヒーに限らず、紅茶や日本茶などの、同様にカフェインが多く含まれている飲料でも同じな可能性があります。

また、“デカフェ”に対する懸念もそうです。
夜、ぐっすりと寝たいならば“デカフェ”であっても避けた方が良いかもしれません。

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オープンオフィスは何故、生産性を下げるのか?

数多くの研究がオープンオフィスが生産性を下げる、という意見を支持しています。
その弊害は、集中力の低下、プライバシーの喪失、健康への悪影響、騒音への暴露、コミュニケーションの質の低下と多岐に渡ります。
しかし、どのような要因が生産性低下を招いているのか、推測しかされていませんでした。

オープンオフィスが生産性を下げる要因

オープンオフィスは、一般的に同僚間のコミュニケーションや交流を促進し、職場の満足度やチームワークの向上など、生産性を高める効果があると信じられています。

しかし、数多くの研究が、オープンオフィスが生産性を下げる、という意見を支持しています。

シドニー大学の研究チームは、カリフォルニア大学バークレー校の研究センターであるCenter for the Built Environment (CBE)が提供している居住者調査のデータベースに基づいて実証分析を行いました。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0272494413000340

その結果が次のグラフです(オフィスについて、どのような点に不満があるのか?を示したグラフ)。

5色のグラフはそれぞれ次のことを表しています。

  • Enclosed private:完全個室で従業員毎に部屋が与えられている
  • Enclosed shared:完全個室だが従業員同士でシェアードする
  • Cubicles with high partitions:高い仕切りがあるオフィス
  • Cubicles with low partitions:低い仕切りがあるオフィス
  • Open office with no/limited partitions:仕切りがないか限定的な、いわゆる「オープンオフィス」

結果は一目瞭然で、個室vsオープンオフィスという単純な構図で見た場合、オープンオフィスが勝てる要素がありません。

不満の要素としては「音のプライバシー(会議の声等がまわりに漏れる)」「視覚的なプライバシー」「騒音」が上位を占めています。

不満=生産性低下、という構図がきれいに成立するとは限りませんが、この要素を見る限り、一定の生産性低下効果があることは確実と言えるでしょう。

コラボレーション効果(交流のしやすさ)について

また、論文の中では、オープンオフィスにより生まれるコラボレーション(交流のしやすさ)が、この生産性低下分を補うのか否か?という話の中で、コラボレーションの効果を否定しています。
過去の研究では、複雑で重要なタスク程、オープンオフィスによる生産性低下の影響を受けやすい、ということも示されています。

どのようなタイプのオフィスであっても、「交流のしやすさ」を問題にしている労働者は少なかったことも指摘されています。

これは、「クローズドな環境が多いオフィスでは、話をするためのプライベートな場所を探すという、あまりにも一般的な課題が回避されるから。」とされています。

何が満足度に影響を与えるのか?

研究では、何が不満だったのか?という観点だけでなく、何が満足度に影響を与えているのか?という観点でも調査を行っています(回帰分析)。

結論としては、「ワークスペースの不足(もしくは広さ)」が大きく影響しているとのこと。


これらの結果を踏まえると、生産性の高いオフィスは「十分な広さがある個室」ということになります。
そしてそれは、多くの企業にとって、従業員全員に与えることが不可能と言えるでしょう。

この意味でも、改めてテレワークの有用性を見直すべきではないでしょうか。

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生産性・業務効率化

短い休憩を頻繁に挟むと学習効果は高くなる

多くの学習熱心な方にとって、繰り返し繰り返しの反復練習が非常に重要なことは当たり前の認識でしょう。
この反復練習は確かに重要ですが、同時に短い休憩を頻繁に挟むことが学習効果を高めることがわかってきました。

短い休憩を頻繁に挟むと学習効果を高める

アメリカ国立衛生研究所の研究チームは次のような実験を行いました。

https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(19)30219-2
  • 参加者は右利きの27人名
  • 左手(利き手とは逆の手)でタイピングタスクを実行
  • 10秒間タスクを実行し、またその後10秒間の休憩を挟むルーチンを35回実行
  • タスク実行の翌日にも再度タスクを実行

その結果、タスクへの習熟がタスク実行中ではなく、休憩中に行われているのではないか、ということが示されました。

また、一般的にタスクへの習熟が行われると言われている睡眠と比較しても(翌日の習熟度と比較しても)、休憩中に行われたタスク習熟効果の方が高いことがわかりました。

また研究チームは、脳の活動を計測する専用のプログラムを開発し、休憩中に脳内でタスクを遂行している再生活動が活発に行われていることも発見しました。

https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(21)00539-8

つまり、学習は、学習中に行われている要素もそうですが、覚醒状態(睡眠ではなく起きている状態)での休憩が非常に重要な役割を果たしている、ということです。

現実に活用するには

この知見は、まだ疑問はありつつも、非常に有用と考えられます。

例えば、工場での研修において、頻繁に短い休憩を挟むような研修プログラムを開発することが考えられます。
(短い休憩中は、「作業を頭の中でイメージしてください。」といった声掛けも有効かもしれない。)

これまでは簡単な研修の後、実際に現場に投入、OJTで少しずつ習熟度を高めていく、という光景が一般的だったでしょうが、この知見を活かせば、初期のキャッチアップ速度を大きく高められる可能性があります。

他にも動作を伴う作業、それこそ実験で行われていたようなタイピング(ブラインドタッチ)や、外国語の発音、新しいソフトウェアの操作、そういったものの学習に応用できる可能性があります。

残っている疑問は、動作を伴わない学習です。
これは多くの「勉強」が該当します。

人間の集中力は限られているので、適度な集中を挟むと集中力を高く維持できる、というようなテクニックが広く知られていることを考えると(例:ポモドーロテクニック)、おそらく「勉強」にも応用は可能なはずです。

勉強メモを取る際に、キーボードより、紙とペンの方が効率が良い、という知見もありますし、「勉強」に動作を伴わせるような工夫も考えられます。

学習は手段であって目的ではないので、可能な限り効率的に行いたいものです。

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