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統計・経済

コロナ影響で消費が激減したもの7選

新型コロナウイルス影響により、人々の消費動向は大きく変化しました。
今回は、消費が激減した者を7つ程ピックアップして紹介していきます。

なお、作成しているグラフは、2015年から2019年の各月(1月~6月)の平均を算出(過去5年平均)、
その各月の過去5年平均で、2020年の1月~6月の金額を除したものとなります。
つまり100%であれば、過去5年平均と比較して、概ね消費額が同額だった、となります。

出典は、総務省の家計調査となります。

「激増」したものについては、下記も参照ください。

居酒屋/パブ利用

まず1番目は、居酒屋/パブです。

コロナ感染不安により3月から、多くの人が人が集まる空間を避けるようになり、緊急事態宣言の開始された4月からは、飲食店、特に夜の業態は人がいなくなってしまいました。
もちろん、営業自粛をしたお店が多かったことも指摘できます。

緊急事態宣言が解除された後も、そう簡単には人が戻らず、閑散とした状況が続いています。

なお、リモートワーク影響があるため、居酒屋/パブの業界に関しては、「時間が立てば元の水準まで回復する」というものでもありません。
非常に多くの事業所が、廃業ないしは倒産という運命を迎えることになるでしょう。

居酒屋産業の状況については、次の記事も参照ください。

レジャー系支出

2番目は、レジャー系支出です。

映画館や、美術館等の文化系の施設、遊園地等ですね。

ディズニーランドや各種映画館をはじめ、緊急事態宣言中は営業を自粛していた事業所も多くあります。

美術館や遊園地といったビジネスは、時間と共に回復が一定見込めます。

一方、映画ビジネスに関しては、ネットフリックスをはじめとした、WEB経由の動画配信サービスが台頭しており、「時間が立てば元の水準まで回復する」ことが期待できません。
ミニシアター系をはじめ、多くの施設が廃業を余儀なくされるでしょう。

旅行

3番目は、旅行系です。

これも営業自粛、外出自粛の影響を大きく受けています。
感染拡大懸念から、海外旅行客の激減も指摘できます。

なお、単純に宿泊施設や航空業界へのダメージだけでなく、関連している、例えば有料道路の使用料や、旅行用かばんといった、旅行に関連した支出も大きく激減しています。

直近の話題としてはGoToキャンペーンも、思うように奏功しないようで、回復までに時間がかかると考えられます。

移動(外出そのものの減少)

4番目は、一部旅行とも関連するのですが、移動系全般です。

リモートワーク移行の増加、外出自粛の影響により、3月以降、鉄道・バスの使用料が激減しています。

この業界に関して問題なのが、比較的多くの状況において「その移動手段以外に、公共の移動手段が無い」場合が見られる、という点です。

都心の路線ですら、かなりの経営ダメージを受けている状況ですが、地方や利用者数の少ないバス路線に関しては、廃線が多く発生するでしょう。
限られた足が奪われ、移動手段を自家用車やタクシーに頼らざるを得ない人達が、これまで以上に出るはずです。

そこから関連して、一部の地域においては、過疎化がいっそう進んでしまう懸念が存在します。
地域毎の明暗が大きく分かれるでしょう。

衣服類

5番目は、衣類です。

2つのポイントがあり、1つがリモートワーク移行の増加と外出自粛により、外用衣服の需要が大きく減少した点です。
また5月6月は、非常に気温が低い梅雨でしたが、これも外出控えの影響により、上着等の購入より、暖房の購入、という方向でお金が使われました。

もう1つが、学校における卒業式・入学式、企業における入社式や各種研修が無くなった点です。

背広に関しては、そもそもとして「そのような時代ではない」という点も指摘できます。

アパレル業界に関しては、レナウンの破綻など、大企業も倒産するような状況に陥っています。
まだ、ECに移行しやすい業界ではありますが、そうそう簡単に改革を進められるものではない、ということですね。

節目の代表格「和服」

6番目は、上記衣服類とも関連するのですが、和服です。

和服は、卒業式・入学式の華とも言えるものです。

この和服に関しては数字が不思議な動きを示しています。
3月4月は100%を超える水準で動いている物の、2月とそして5月以降が激減する、という数字の動きですね。

まず、節目のイベントについて。
卒業式等のイベント自体は無くなっても、「記念に」と個別に撮影をした、という話はチラホラ聞きます。
その意味で4月5月に支出がよったとして不思議はありません。

加えてインバウンド、つまり海外旅行客の減や、国内でも観光減により、全国的に呉服系の支出が激減しています。
ようは、旅行減がこのような領域にも影響を与える、という事です。
2月と5月以降の激減は、これが影響していると考えられます。

和服は、在庫として持てるものでもありますが、とはいえ安いものでもありません。
呉服店の資金繰りに大きく影響を与えるので、破綻をする伝統企業も増えるでしょう。
文化的側面で衰退懸念が存在します。

幼児教育

7番目は、幼児教育費用です。

これは2つの点が指摘できます。

1つが、2019年10月より実施された、幼児教育無償化影響です。
これにより、そもそもとして家庭からの支出が激減しました。

もう1つがリモートワーク移行影響です。
家庭でも子供を見れるようになったという点と、幼稚園・保育園の一部休園等により意図せず家庭で見るしかなくなった点が大きく響いています。

一定、需要があり、かつ守られているビジネスなので、今回の支出減影響により、なにか致命的なダメージを追う事業所は少ないでしょう。

(番外編)たんす

最後に番外編的に1つ。

「たんす」も何故か大きな減少を見せています。
衣服類の需要減が大きく響いたのでしょうが、こういう所にまで影響するのですね。

なお、Googleトレンドにて「ミニマリスト」と検索すると、下記のような推移を見せます。

「持たない暮らし」もこれからのニューノーマルの一部を形成する可能性は、多いにあり得ますね。
(2020年2月がピークとなっているので、「コロナ影響により自宅にいることが多くなった → 自宅を充実させよう → ミニマリスト機運の転換点となり今後は下落を続ける」という可能性も十分にあり得ますが。)

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コロナ影響で消費が激増したもの7選

新型コロナウイルス影響により、人々の消費動向は大きく変化しました。
今回は、消費が激増したものを7つ程ピックアップして紹介していきます。

なお、作成しているグラフは、2015年から2019年の各月(1月~6月)の平均を算出(過去5年平均)、
その各月の過去5年平均で、2020年の1月~6月の金額を除したものとなります。
つまり100%であれば、過去5年平均と比較して、概ね消費額が同額だった、となります。

出典は、総務省の家計調査となります。

「激減したもの」に関しては、こちらも参照ください。

ゲームソフト・テレビ

まず1番目はゲームソフト・テレビです。

これはわかりやすい消費ですね。

「巣ごもり消費」の代表格と言って良いでしょう。
元々増加傾向が見られたゲームソフト消費が、コロナ影響が顕著になりはじめた2月から急増、安定して200%超の消費となっています。

さらにそれに重なる形でテレビも安定して消費増が続き、6月は給付金特需の影響により300%超の急増となっています。

保健用消耗品

2番目は保健用の消耗品です。

これもわかりやすい消費です。

コロナ影響がではじめた2月から消費が増えており、買占め対応の落ち込みからの、全国的なリモートワークの増加により、4月以降、消費が急増したとみて良いでしょう。

一方、このジャンルの商品は、一定の日持ちがあるため、7月以降、場合によっては来年の反動減が考えられます。
トイレットペーパーの買占めを行った家庭の、今のストック状況って、どうなっているんでしょうね?

各種学校系支出

3番目は学校系の支出です。

これは緊急事態宣言による、休校影響が大きく響いています。
本来なら3月4月で消費されるものが落ち込み、消費のタイミングが5月6月にずれ込んだと考えられます。
消費額としては大きな変化は見られません。

一部、書斎系消費に関しては、給付金特需とリモートワーク増加の影響があると考えられます。

各種家具類

4番目は、各種家具類です。

まずリモートワークの増加に伴い、作業をする机が必要だよね、という形でテーブル類の消費が2月に増加しています。
次に、家にこもって生活をするにあたり、自炊が増えたであろう結果として食器戸棚の消費が3月に増加。
あわせて、快適な生活を行いたいであろうとの推測からベッド類も小さいなスパイクを3月に作っています(それでも150%)。

4月は2月3月の消費からの反動が来て、5月以降に再度全ての項目で増加が見られます。
5月以降の消費増は、新生活のずれ込み影響と給付金特需影響が考えられます。

ここまではある程度、イメージしやすいものであったと思います。
ここからは、聞けば成るほど、と思いますが、パッとは出ないものを選出しました。

スクーター等の自動車以外の移動手段

5番目は、スクーター等です。

スクーター等の販売が2月に激増しています(800%!)。
驚くべき増加量です。

これは、買い物に行く移動手段をバスや電車等に頼っていた人たちが、感染リスクを避けるため、スクーター等に切り替えたことが大きく影響しています。

あわせて、自動車教習料も緩やかながら増加傾向が見られます。
これは、リモートワーク影響により、「日中に通うことが可能となった人たち」による消費が推測されます。
5月以降に改めてスクーター等の消費が増加していますが、それに目線をあわせる形で通った人もいるでしょう。

6月の消費増は、これもまた給付金特需が大きく影響しているものと考えられます。

理美容電化製品

6番目は、理美容電化製品です。

これが増加している理由は、いくつか複合的な要因があります。

  • お店に行くことによる感染リスクの忌避
  • リモートワーク増加により、お店で整えなくても、自宅で簡単に整えられれば良いというマインド
  • リモートワーク増加による、自分でセッティングする時間の増加
  • 給付金特需

ここには掲載していませんが、化粧品類の消費減とも連動している消費増と言えます。

腕時計

7番目は、腕時計です。

まず、2月以降、「不要不急」の支出として大きな落ち込みが見られました。
リモートワーク増加により、そもそもとして腕時計って必要無いよね、というマインドも働いたでしょう。

加えて、新生活のズレ込み影響もあります。

腕時計と言えば、新生活における贈り物等で典型的に候補にあがるジャンルの商品です。
これが高校・大学でずれ込んだことにより、消費が後ろにスライドしたことが挙げられます。

さらに給付金特需の影響があります。

腕時計は、高額商品になれば何十万もするものも珍しくありません。
6月に、給付金を得た機会に、と高級腕時計を手にした方も多いでしょう。

(番外編)暖房類

最後に番外編的に、コロナ影響が半分ありつつ、他要因も混ざったものを紹介し、本稿を締めます。

地味に消費が伸びたのが暖房類です。

思い出していただきたいのですが、この5月6月は寒い梅雨でした。
冷夏の影響により暖房を購入したのが増えたのでしょう。
(反動か、7月8月は異常な暑さですが。。。)

リモートワーク増加により、自宅で過ごす時間が増えたのも指摘できますね。

消費の変化というものは、時勢の変化を大きく受けるものです。
この種の統計をウォッチすることは、消費者行動の変化を察知すること、読み解くことにつながります。
是非、興味を持って調べてみるのをお勧めします。

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統計・経済

百貨店販売額統計(2020年6月)

経産省「商業動態統計」の6月分が更新されています。
百貨店もコロナ影響から脱しつつあるものの、いぜんとして厳しい状態が続いています。

商品販売額全体

まずは商品販売額全体です。

百貨店商品販売額全体 経産省「商業動態統計」より

商品販売額は4,259億円、前年比は▲18.4%の着地です。

4月5月は▲60%を下回る水準まで落ち込んだ状況を考えると、大きく回復しはじめています。

とは言え、小売のビジネスで▲18%は壊滅的なダメージであり、いぜんとして厳しい状態が続いています。
(消費税増税前の駆け込み需要の後の、大きな落ち込みに匹敵する数字。)

なお、百貨店という業態は、全体的には前年比マイナスを続けている状態にあり、業態構造自体に改革が求められていた点は指摘できます。
苦境の中、店舗単位では「遅かれ早かれ」という状況はあると考えられます。

商品種別

次は、商品種別で見てみましょう。

百貨店販売額 商品種別 経産省「商業動態統計」より

衣料品、食料品、その他の3つのジャンルが概ね同規模で百貨店の売上を支えていることがわかります。

このグラフだけだと、状況が今ひとつ掴めないので、前年比を見てみましょう。

百貨店販売額前年比 商品種別 経産省「商業動態統計」より

こちらの通り、全てのジャンルで同じような推移で厳しい状態にあることがわかります。

家電小売のような給付金特需の伸びの特徴が出ておらず、給付金の流入先として、うまく営業ができていない様子が伺えます。

百貨店はECに対応しておらず(対面営業がバリューであったため)、今回のコロナ影響下でわざわざお店に行って買おう、という消費者が少ないであろうことは容易に想像ができます。
前年比が慢性的に続いている状況を鑑みると、業態として「オワコン化」が進んでいると言う人が出ていることも納得ができます。

百貨店販売額指数推移 商品種別「商業動態統計」より

指数で見ると、主力商品である衣料品が一番落ち込んでいることがわかります。
これはコロナ危機前からも同様の傾向です。

  • 安くて高品質なアパレルが多数存在すること
  • そしてリモートワーク移行により衣料品需要が減ること
  • ECへの対応不全

これらを踏まえると、百貨店における衣料品販売は、早急に改革が必要であることがわかります。

リモートワーク移行が進んでいくのならば、食料品の売上も落ち込むでしょう。
その他の商品についても、ECでの対応が容易な世界で、これに対応していないのであれば、将来があるようには思えません。

その他内訳

ここで、その他の内訳も見ていきます。

百貨店販売額 その他内訳 経産省「商業動態統計」より

百貨店は、文字通り、多様な商品を販売しており、分類をすると細かいことになる「その他の商品」のウェイトが大きい事がわかります。
食器や芸術品をはじめとした、様々な商品です。

この領域は、軽く上述しましたが、ECへの対応も容易のはずなので、早々にEC上での販売を進めた方が良いでしょう。
EC上でも、情報量の充実や、チャットシステムの活用等により、上質な接客は可能なはずです。

百貨店販売額前年比 その他内訳 経産省「商業動態統計」より

なお、前年比の推移は上記の通りとなっており、家具や電気機器類を伸ばせていないことがわかります。
ようは、これも上述の通り、給付金特需を全く活かせていない、ということです。

地域別内訳

最後にエリア別の状況を示します。

どの地域もおしなべて苦境にあることがわかります。

百貨店販売額 エリア別の状況 経産省「商業動態統計」より

当該資料のまとめは、また2か月後位にアップデートする予定です。

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統計・経済

【経済統計・景気動向】新型コロナウイルスによる景気・経済への影響(2020年5月~7月)

新型コロナウイルス影響による経済統計・景気動向について、2020年5月~7月までの状況をアップデートしました。
消費支出の回復が傾向として見られ始めていますが、旅行業など、いまだ回復しない産業があります。
雇用環境も悪化が見られ、“まだ”倒産数の大幅な増加にはつながってはいないものの、今後が懸念されます。

前回分はこちらになります。

景気動向指数は甚大な悪化が見られる

前回では、まだ景気動向指数、各種産業活動指数に大きな影響は出ていませんでしたが、6月までの指標では次の図の通り、甚大な悪化が見られます。

景気動向・産業指数

2015年=100で、先行指標は78.4、一致指標は73.4とここ5年間で見た事のない数字が出ています。

第3次産業活動指数(総合)は87.9、鉱工業指数(生産)は80.8、稼働率指数(製造工業)は70.6です。

旅行業を除き消費支出は回復に向かっている

消費統計は、次の通り、2020年6月で大きく回復に向かっています。
ただし、旅行業を除き、です。

消費統計

小売販売額は▲1.2%と劇的に回復しており、これは給付金特需の影響も大きいでしょう。

百貨店売上高も▲19.1%までは回復してきました。
ただし、今後も継続して厳しい事業環境が続くことは容易に想像ができます。
百貨店に関しては、別に経済統計をまとめてみようと思います。

旅行取扱高が壊滅的で、2020年5月時点で▲97.6%となっています。
致し方無いことではありますが、産業として危機的状況にあると言えるでしょう。

この点に関しては、下記記事(外部ブログ)も参考にしてみると良いかもしれません。

トータルとして、消費支出は▲16.2%までは回復してきている状況です。

新車販売台数

新車販売台数も回復を見せ始めており、昨年対比▲13.7%にまではきました。
数字の通り、傾向として回復してきた、というだけで厳しい状況にあることは間違いがありません。
各自動車メーカーも、事業計画の見直し・下方修正、減損損失の計上などを行っています。

失業率が悪化をはじめ、明確に雇用環境が悪化しはじめている

労働統計としては、常用雇用指数、完全失業率共に悪化しはじめています。

労働統計

過去になかったか?と言えば、あった状況ではあるのですが、常用雇用指数は1%を切り、完全失業率も3%に迫る水準です。

有効求人倍率

有効求人倍率の落ち込みも止まりません。
1倍に迫る勢いで悪化を見せており、今後、労働統計含めて回復して行くのか、注視です。

所定労働時間

なお、所定外労働時間の指数は大幅な改善(?)を見せています。

所定外労働時間が減ったこと自体は良い事だと思うのですが、今この状況での数字は、単純に「仕事が無い」というだけでしょうから、多くの労働者にとって、厳しい収入状況にあると容易に推測されます。

企業倒産件数はまだ増えていないが、休廃業は増えている

企業倒産件数は、裁判所もリモートや時短などで止まっていた件を超えても、大幅な増加は見られない状況です。

企業倒産件数とM3増加率

M3は大幅に増加していますね(当然ですが)。

共同通信記事図表「東京商工リサーチまとめ:休廃業・解散企業の推移」より

なお、東京商工リサーチのまとめでは、休廃業・解散企業の数が急激に伸びており、5万件をこえるのでは?と言われています。
「倒産」としてカウントされていなくとも、コロナ影響をうけての休廃業は大幅に増加していることは間違いが無いようです。

日経平均は堅調だが、本当に実態を表しているのか?

日経平均は、数字上は堅調です。

日経平均、上場株価時価総額

正直な所、この数字は実体経済を表しているのか?と疑問に思います。

ただ、各国が金利を下げに進んでいる中、行き場を無くしたお金が株式市場に流れ込んでいる、とシンプルな構造で考えれば、回復期待を含めた実態と言えないことも無いのも確かです。
とりあえず、現状で筆者がいえるのは「これが現実」という点のみです。


本統計は、また2か月後位にアップデートしようと考えています。
元データは下記になります(Excelデータ)。

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統計・経済

ホームセンター 販売額統計(2020年6月)

経産省「商業動態統計」の6月分が更新されています。
前回の4月分から2ヶ月が経過し、どのように状況が推移しているのか、見ていきます。
劇的な数字の伸びを見せています。
これは、リモートワーク移行に伴う家庭内消費の増加に加え、給付金特需の影響(家電製品)が大きいです。

前回(2020年4月)はこちらです。

ホームセンターの販売額概観

販売額全体としては、3,147億円、前年同月比+17.3%の着地になっています。

ホームセンター販売額全体 経産省「商業動態統計」より

商品種別の所でも書きますが、これは給付金特需の影響が大きいです。

家電の販売統計でも示した通り、給付金を家電製品の買い替えに使う、と回答している方は多く、家電量販店で購入するのか、それともホームセンターで購入するのか、と顧客がわかれたイメージになります。

商品種別の販売状況

商品種別で見てみると、下記の通りです。

ホームセンター販売額 商品種別 経産省「商業動態統計」より
ホームセンター販売額前年同月比 商品種別 経産省「商業動態統計」より

DIY用具・素材の伸びが落ち着きを見せ始めています(前年比推移で見ると5月以前に比べて落ちている)。
リモートワーク移行により、家庭での消費として、DIY等の活動を行う方が増えたのは容易に想像ができますが、趣味としてやるにしても長続きは難しいでしょうし、数字の伸びとしてはこのようなイメージでしょう。
来年は反動減が来そうです。
気温が高くなると、園芸・エクステリアの活動も抑制されるので、7月以降は園芸領域含めて減少傾向が見られるはずです。

伸びているのは、家庭用品・日用品、そして電気、インテリアのカテゴリーです。

家庭用品・日用品には、給付金特需部分のお金が流れている点と、コロナ不安の継続による、消耗品の品薄警戒があるものと考えられます。

電気の伸びは、上述の通り、給付金特需の影響です。

今回、インテリアも数字上大きく伸びています。
これはリモートワーク移行に伴う、家庭内での生活快適化のための消費、WEB会議の増加に伴う「見せるためのインテリア」への消費が増えたものと考えられます。
4月あたりで伸びると考えていたものの、前年比トントンで不思議に思っていましたが、給付金特需もあり5月・6月でようやく流れてきたというイメージでしょう。

そして、ここに来て、カー用品・アウトドアのような、「外出」に関係するものの数字も回復傾向が見られます。
緊急事態宣言が明けて、ようやくこの領域への消費も増えてきたのでしょう。
当然、給付金特需の影響も考えられます。

このように考えると、ホームセンターという業態は、給付金の恩恵を大きく受けた業態と言えるでしょう。

地域別の状況

都道府県別の状況です。

まずは4月。

都道府県別ホームセンター販売額前年比 経産省「商業動態統計」より

次に2020年6月分です。

都道府県別ホームセンター販売額前年比 経産省「商業動態統計」より

4月時点では東京のみマイナス、という状況でしたが、6月になって、ようやく東京も大きな回復を見せました。

今後は、給付金特需の影響も落ち着くでしょうから、数字上の伸びは期待できないものの、一定、コロナ影響からは脱したと言えるのではないでしょうか。

当該資料のまとめは、また2か月後位にアップデートする予定です。

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ドラッグストア 販売額統計(2020年6月)

経産省「商業動態統計」の6月分が更新されています。
前回の4月分から2ヶ月が経過し、どのように状況が推移しているのか、見ていきます。
コロナ不安需要が落ち着きを見せている一方、大阪や東京といったエリアの回復は途上です。

前回(2020年4月)はこちらです。

ドラッグストア販売額概観

2020年6月のドラッグストアの商品販売額は6,127億円、前年同月比+6.5%の着地となっています。
ビフォー・コロナから、ドラッグストアの販売額は伸長傾向にあったので、全体感としては平常時に戻ったという印象です。

ドラッグストア販売額全体 経産省「商業動態統計」より

店舗数も増加が続いています。

ドラッグストア店舗数 経産省「商業動態統計」より

前回も書きましたが、ドラッグストアがいかに地域のインフラとして定着しているか、が読み取れます。

商品種別の販売状況

次に商品種別の推移です。

ドラッグストア販売額 商品種別 経産省「商業動態統計」より

ボリュームの大きい食品の伸びが落ち着きを見せています。
食品の伸びとして、リモートワーク移行による家庭内消費の増加が指摘できますが、加えて食料品不足不安もあったものと推測されます。
つまり、今の数字の落ち着きは、保存食の溜め込みの一巡と、焦って購入に走らなくても食料品不足は発生しない、という安心感から来るものと考えられます。

前年同月比の推移で見ると、特徴的な動きが見て取れます。

ドラッグストア販売額前年同月比 商品種別 経産省「商業動態統計」より

食品、調剤医薬品は、もともと+10%前後の伸びを示していたので、その水準に落ち着いたと言えます。

OTC医薬品、健康食品も、もともと±0%前後で推移しており、その水準に戻った状況です。

一方、衛生用品・介護・ベビー用品(そして家庭用消耗品その他)は、高い水準で推移しています。
これは、市場に商品が潤沢になってきたことに加え、また品不足になるのでは?という不安を払しょくしきれないからではないかと推測されます。
第2波の影響と、年末には再度感染症が流行する時期になるので、消費者不安が反映されている、ということです。

とは言え、溜め込んでも消費ができるものでも無いですし、日持ちする物も多いので、来年あたりは反動減が出そうな印象です。
ドラッグストア業界においては、来期の事業計画を策定するにあたり、この点を織り込んでおくと良いでしょう。

化粧品・小物は、回復傾向が出始めている物の、未だ▲10%アンダーです。
これは、リモートワーク移行で固定化した企業の存在によるものでしょう。
今後、化粧品・小物は▲10%アンダーあたりの販売額が標準となる可能性があります。

地域別の状況

最後に地域別の状況です。

まずは前回の2020年4月の状況。

都道府県別ドラッグストア販売額前年比 経産省「商業動態統計」より

そして2020年6月の状況。
全体感としては回復している物の、都道府県別の状況は概ね同様ですので、サマリーしたものにしました。

エリア別ドラッグストア販売額前年比 経産省「商業動態統計」より

相変わらず、大阪や東京は、リモートワーク移行の影響を受けているのか、マイナスの着地です。
沖縄の数字は、やっぱりよくわからないです。

大阪の数字は、割高な商品は買わない、という消費者心理が表出している点もあるのではないでしょうか。
店頭に商品が並ぶようになったとはいえ、ビフォーコロナに比べると、割高感は否めません。
リモートワーク移行もそうでしょうけれども、この点から来る、財布の紐の固さが影響しているのでは、と考えます。

大阪、東京が落ち着けば、ドラッグストア業界のコロナ影響は、落ち着いたと考えて良いでしょう。

当該資料のまとめは、また2か月後位にアップデートする予定です。

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家電大型専門店 販売額統計(2020年6月)

経産省「商業動態統計」の6月分が更新されています。
前回の4月分から2ヶ月が経過し、どのように状況が推移しているのか、見ていきます。
全体的に劇的な回復を見せています。
給付金の影響のようですね。

前回(2020年4月)はこちらです。

家電大型専門店の販売額概観~劇的に回復~

まず、全体概観です。

家電大型専門店販売額全体 経産省「商業動態統計」より

2020年6月の家電大型専門店の商品販売額は4,728億円,前年同月比25.6%の着地となりました。

これは10万円の給付金の影響です。

アンケートの結果によると、家電製品に給付金を使用する、と回答した方が約15%いるそうです。

WEB東奥「給付金の使い道、生活維持まず優先の風潮」2020年5月23日 より

25.6%の前年比ですので、金額的には約1,000億円の増加です。

人口1億2千万円の内、約15%の方が家電製品に使いたいと考えていて、全員が実際に買うとは限らない、全額を使うとは限らない、ということを考えても、まだまだ少ない増加額、という印象です。
7月・8月も継続して増加傾向が続く可能性があります。

この反動減が来年来るのでしょうが、来ると分かっていれば備えはできるはずです。

一定、家電業界は問題が無い水準まで、コロナ影響から回復したと判断して良いでしょう。

商品種別の販売状況

次に商品種別で見てみます。

家電大型専門店販売額 商品種別 経産省「商業動態統計」より
家電大型専門店販売額前年同月比 商品種別 経産省「商業動態統計」より

やはり、主に外出して使用する「カメラ類」は厳しい状態が続いています。
スマートフォンのカメラの進化もまだまだ続くでしょうから、今後、カメラ業界の再編が起きる可能性があります。

情報家電、つまりパソコン類の販売は、リモートワーク移行時の3月~5月で落ち着いた様子です。

一方、生活家電・AV家電は大幅な伸びを示しており、給付金が主にこの種の商品に流れたことが読み取れます。

地域別の状況

まずは2020年4月の状況を改めて提示します。

都道府県別家電大型専門店販売額前年比 経産省「商業動態統計」より

次に2020年6月の状況です。

都道府県別家電大型専門店販売額前年比 経産省「商業動態統計」より

この通り、全都道府県において、大幅な増加となっています。

東京や大阪のようなエリアの伸びが小さいのは、まだ感覚的に理解できるのですが、神奈川や愛知、広島でも伸びは大人しいです。
おそらく、元々の数値が相対的に小さい地方の消費に対して、給付金をつぎ込んだ分の消費額が大きく、相対的に大幅な伸びになっているのであろう、と考えられます。

なお、店舗数の増加傾向も見られます。

家電専門店店舗数推移 経産省「商業動態統計」より

数字が伸びているから、ということなのでしょうが、反動減が来年に発生することが容易に想像できる中、この増加は関心できません。

家電業界の経営者は、少し冷静の状況を考えた方が良いでしょう。

当該資料のまとめは、また2か月後位にアップデートする予定です。

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コンビニエンスストア販売額統計(2020年6月)

経産省「商業動態統計」の6月分が更新されています。
前回の4月分から2ヶ月が経過し、どのように状況が推移しているのか、見ていきます。
全体的にかなり回復傾向が見られますが、未だ途上です。

前回(2020年4月)はこちらです。

指数ベースでは回復

まず、全体概観です。

コンビニ商品販売額全体 経産省「商業動態統計」より

コンビニ商品の販売額全体は9,596億円、前年比▲5.1%という着地になっています。
指数ベース(2015年=100)では105.6と、一定の回復が見られます。

▲5%は、小売店レベルで考えれば、まだまだ大きいマイナスですので、回復が見られるとは言え、途上と言えるでしょう。

なお、6月はリモートワークから従来出社に戻した企業もいるであろう状態の数値と見られ、今後、継続してリモートワーク推進が社会全体で進んでいくことを考えると、厳しい市場環境が継続する可能性はあります。

商品別の販売指標

それでは、商品別に推移を見ていきましょう。

区分は下記の通りです。

日配食品:(ファストフード含め)お弁当、おにぎり、サンドイッチ、消費期限設定されている生鮮食品など
加工食品:飲料、カップ麺、お菓子などの賞味期限設定がされているもの、冷凍ものなど
非食品:食品以外の雑貨、雑誌、ゲームなどの商品
サービス:コピー、宅配便、チケット、プリペイドカードなど

コンビニ商品別販売額推移 経産省「商業動態統計」より

このグラフの通り、サービス以外の区分で数字が改善しています。

コンビニ商品別販売額前年比推移 経産省「商業動態統計」より

前年比ベースで見ても、非食品は前年比を上回る状態、日配食品・加工食品も約▲5%前後までは回復してきています。

サービス売上が落ちている理由として、チケット売上など外部要因も大きい点もあげられるので、しばらくは回復の見通しは立たないでしょう。
全体の影響は小さいので、成りに任せるのが良いでしょう。

コンビニ商品別販売額指数推移 経産省「商業動態統計」より

なお、販売指数で見ると、サービスを除き、全て100を上回っている状況です。

地域別の状況

最後に地域別の状況です。

まずは前回の2020年4月単月の図表。

コンビニ商品販売額および前年比,地域別の状況 経産省「商業動態統計」より

次に2020年6月単月の図表です。

コンビニ商品販売額および前年比,地域別の状況 経産省「商業動態統計」より

全体傾向として、観光地、そしてリモートワーク移行が多いであろうエリアの落ち込みが大きい状況には変化がありません。

落ち込み幅自体は、大きく改善しています(縮尺は良く見て下さい)。

東京・大阪のような、主要なビジネスエリアは、一度リモートワークに振り切って完全移行した企業が、そうそう簡単に従来型出勤に戻すとは思えないので、今の状況(約▲10%)が固定化する可能性が考えられます。
▲10%は小売店としては、甚大な影響ですので、ビジネスエリアを中心に、廃業するコンビニが続出したとしても全く不思議では無いでしょう。
(前述している通り、6月は従来型出勤に戻った企業もある前提の数字なので、一定、withコロナ時代のスタンダードの数字に近い状況と思われます。)

各種報道を見ていると、コンビニ・ユーザー自体の傾向や消費動向が変わっているとの事。
消費者のニーズにマッチした柔軟な変化対応ができる所が生き残り、パイを占有する状況になるでしょう。

当該資料のまとめは、また2か月後位にアップデートする予定です。

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統計・経済

外食産業回復状況~2020年6月期前年比~

2020年6月期時点、外食産業のコロナ影響の回復状況を見ていきます。
中華、寿司系、焼き肉は数字が戻りつつあるも、まだ▲10%前後の売上高。
回復途上にあるのが和風ファストフード(丼もの系)、麺類、ファミレス、喫茶、ディナーレストラン。
居酒屋/パブ系は未だ厳しい状況にあります。

資料出典は一般社団法人日本フードサービス協会です。

回復状況のグローピング

2020年6月時点での回復状況をグルーピングすると下記のようになります。

A ファーストフード-洋風
B ファーストフード-寿司系
B ファミレス-中華
B ファミレス-焼き肉
BC ファーストフード-和風
C ファーストフード-麺類
C ファミレス-洋風
C ファミレス-和風
C ディナーレストラン
C 喫茶
D パブ/居酒屋-合計

Aグループ:ほぼほぼコロナ影響を受けなかった
Bグループ:概ね数字が戻っているものの、未だ▲10%前後の回復状況
Cグループ:回復途上にあり▲40%~▲60%の状況
Dグループ:産業として危機的・壊滅的状況にある(▲40%ライン)

売上高前年比

Aグループの洋風ファストフード、つまりハンバーガー等は、コロナ影響に強く耐えていたものの、6月は数字が落ち込みました。
緊急事態宣言明け後、他業態に顧客が流れたのが要因でしょう。

Bグループの寿司系、中華、焼き肉系は、ようやく▲10%前後まで数字が回復してきました。
寿司や焼き肉は、ハレ要素があるので、緊急事態宣言明け後の解放ムードのなかで消費が回復したのでしょう。
中華は、お一人様需要に対応しやすい業態であり、ハンバーガーや丼もの系でルーチンをまわしていた顧客が流れたものと考えられます。

和風ファストフード、つまり丼もの系等は、元々、数字の落ち込みが激しくなかった業態なのですが、今一つ数字が回復しません。
そのためBとCの中間、という位置づけにしています。
安定して利用されてはいるものの、ビフォーコロナのような活況には戻らない可能性が高くなってきました。
▲10%前提で事業設計をしていった方が良い業態と考えられます。

Cグループは回復途上ですが、急激に数字が戻りつつあります。
7月の数字公表に期待です。
ラーメン系、ファミレス、ディナーレストラン、喫茶系です。
ただ、ビジネスエリアで展開しているラーメン系、ディナーレストラン、喫茶系は7月も回復は厳しいでしょうし、今後数字が戻るイメージが描けません。
早々に事業戦略の見直しを図った方が良いでしょう。

居酒屋/パブ系は非常に厳しい状態です。
ものすごく大きなくくりで、夜の街、としてネガティブな見方もされてしまっています。
ビジネスエリア展開しているお店も多く、産業として危機的状況にあると言えます。
お店そのもののバリューが無い所から、順々に消滅していき、最悪、従来の半分ほどまでお店が減る可能性があります。

客単価前年比

客数の前に客単価の推移を見ましょう。

この通り、概ね数字が正常化されつつあります。
ハンバーガー系は未だ好調ですが、こちらも数字が元に戻りつつあります。

消費者心理として、客単価に関しては、一定の落ち着きが見えたと言って良いでしょう。

客数前年比

上記の通り、客単価は概ね正常化しつつあります。

つまり、売上高に影響を与えている要素は客数です。

こうして見ると、Aグループのハンバーガー系も客数という観点では中々厳しい戦いをしていることがわかります。

客単価で稼ぐ方法にも限界があるでしょうから、今後、各社とも継続して厳しい生存競争環境に晒されることとなります。

ここが如何に回復するか?が外食産業の運命の分かれ道です。


7月も間もなく終わります。

この先1,2週間で主要な会社の数字は出てきます。

Cグループ、Dグループは、そろそろ限界に達する事業所がマジョリティになってくるはずです。
7月の数字の状況、注視が必要です。

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経営企画

アフターコロナの映画館経営をどう考えるか?

「リアル店舗」系を中心に、多くの企業が新型コロナウイルス感染症拡大の経済的影響を受けています。
映画館経営も同様です。
今回は、アフターコロナの映画業界を如何に捉えるか、考えていきます。

感染症拡大により大打撃

前置きはともかくとして、コロナ影響により、映画館の業績が急激に悪化しています。
休業の影響は大きく、2020年4月は前年比として1桁%の着地となっています。

東洋経済オンライン「東宝、映画館再開でも全く安心できない事情」2020年6月10日より(元出典は東宝)

仮に各種ワクチンや治療薬などが開発され、感染拡大が落ち着いたとしても、多くの企業でリモートワークを導入。
消費の形態変化が維持し続けることは間違いが無いでしょう。

また、言うまでもなく、巣ごもり消費により急速に普及しているNetflixなどのネット動画配信サービスの存在も忘れてはいけません。

つまり、将来的に映画業界、特にリアル店舗としての「映画館」の経営が悪化し続けることは間違いが無いのです。

それでは、アフターコロナの映画館経営を、どのように考えていけば良いでしょうか?

映画館という業態の経済統計

まず、映画館というものの統計データを見ていきます。

映画興行収入の推移ですが、マクロ感としては増加を続けており、2019年は約2,612億円となっています。

一般社団法人日本映画製作者連盟「日本映画産業統計」より作成

一方、映画館数は近年は横ばいとなっています。

2点、注釈があります。

1960年代に映画館数が激減した理由は、テレビの普及です。
映画館に行く理由が無くなったのですね。

もう一つが、統計の取り方が2000年を境に変わっている点です。
1999年以前は、映画館数ですが、2000年以降は「スクリーン数」という指標に変わっています。
2000年のタイミングでポコッと増加しているのは、それが理由ですね。

それでは、2000年以降にフォーカスして数字を見てみます。

マクロ感では横ばいでしたが、年々増加を続けており、2019年は近年最大となる3,583のスクリーン数となっています。

入場者数も見ていきます。

マクロ感では、以下の通り、横ばいです。

2000年以降は、全体としては増加を続けており、2019年は194,910人の着地となっています。

2011年は東日本大震災があったこともより、急激に落ち込みが見られます。
これが震災前の水準に戻るのが2016年なので、回復に5年もの時間を要したことになります。

今回の新型コロナウイルス影響も、楽観的に見て、5年は回復に時間がかかると考えた方が良いでしょう(回復するならば、ですが)。

ここからは、もう少し要素別に見ていくのですが、それにあたり、映画館について分類の話を先にします。

映画館は、「一般館」と「シネコン」という2つの大きなものに大別されます。

詳細は下記表をご確認ください。

上記前提で見てみた時に、「一般館」「シネコン」別にスクリーン数を見ると、次のようになります。

シネコンのスクリーン数は増加を続けていますが、一般館は減少の一途をたどっています。
一般館、特に「ミニシアター」と呼ばれる業態は、顧客層が少ないうえに、ファンも減少を続けているため、非常に厳しい経営環境が続いています。

邦画、洋画別の効果本数は次の通りになりますが、ここ10年で急増しています。
上で収益数は増加しているもののの、この公開本数ほどの増加では無い印象なので、感覚的に「作品数多くないか?」という疑問が出てきます。

ここからは収益効率について見ていきます。

まずは1スクリーン当たりの収益効率です。

この通り、直近2019年は好調な数字を出している物の、2000年代初頭の数字にようやく追いついた、という印象です。
1スクリーンあたりで見ると、効率の悪化感はそこまでありません。

次は公開本数当たりの収益効率です。

この通り、明らかに、公開本数当たり入場者数、公開本数当たり興行収入共に悪化を続けています。

上記の公開本数の推移でも何となくわかるのですが、2000年を「1」とした場合の、邦画別、洋画別の公開本数指数は次の通りになります。

やはり、作品数多すぎやしないか???

供給過剰感が満載です。
近年の映画業界の好調は、公開本数、という「数」で強引に出した数字と言えるかもしれません。

日本だけ特段、映画が見られる、というわけでも無いでしょうし、グローバル展開する前提ならば、本数で稼がなくても良いはずなので、制作している映画の数は、非効率な量になっているのでは?と推測が立ちます。

実際、興行収入は、公開している映画の上位20本で、市場シェアの50%を占有している状況です。
完全なロングテール商法になっています。

映画業界の構造

ここで映画業界の構造の話です。

映画業界には大きく3つのプレイヤーがいます。

制作会社、配給会社、興行会社です。

下記が参考になりますね。

配給会社が中央集権的に、映画作品のコントロールをしている構図になっています。

中央集権的と書くと、一見悪い感じに聞こえます。
実際、収益を半ば独占しているのは確かです。

一方、新作映画のネット配信を遅らせ、映画館供給を優先させる図式は、各シネコンや小規模シアターを守っている構図にもなっており、一概に何が良い悪いは言えません。

この図式は配給会社にとって崩したくない構図のはずで、実際に次のようにコメントを出しています。

配給会社としては多くの利益を生むネット同時配信だが、映画館の運営会社にしてみれば優良コンテンツを独占できないことになる。映画館の需要を食いつぶしかねないため、多くの映画館を持つ東宝のような会社はネット同時配信に消極的にならざるをえないのだ。「配信でFukushima 50が大ヒットして、映画館がいらないということになるのは困る」(前出の関係者)。

東宝は「東宝が配給する作品は、最も投資回収率の高い『映画館』という窓口で興行を行うことを前提に製作している。配信を前提とした作品が増える可能性はあるが、(映画館と同時に)同時配信を行う予定はない。」(同社広報)としている。

東洋経済オンライン「東宝、映画館再開でも全く安心できない事情」2020年6月10日より引用

誰にとっても微妙に幸せでない状態

ここまで調査し考えたのが、今の状態は誰にとっても微妙に幸せな状態ではないのでは?という仮説です。

一般顧客を交えて各登場人物の状況を書くと次のようになります。


大手配給会社:自前で映画館を持っているし、配給先との関係もありネットに振り切れない、後ガンガン作ってガンガン配給しないと市場が成長しない

シネコン,各地域の興行館(一般館含む):配給元から映画を供給されないと困るからネットに振り切って欲しくない、しかし最近は配給数が多すぎてコスト嵩むなぁ

ミニシアター:顧客のミニシアター離れ、とはいえ大手配給会社の支配下には入りたくない、がしかし映画館文化は大手も小規模も全体感を持って醸成しないといけない

制作会社:制作しないといけない本数多すぎ、負担多すぎ、実入りも少ない

制作スタッフ:長時間労働、給料安い、でも自分たちが活躍する場は減って欲しくない

一般顧客:見たい新作映画をわざわざ映画館にいかないといけない、ネットでいいのに、じゃあいいやコロナ怖いし作品もたくさんあるし準新作・旧作をNetflixで楽しもう


こういう膠着状態に陥っている業界には、必ずあるものが登場します。

日本の映画業界はゆでガエル状態に、そしてカテゴリーキラーに・・・

このような膠着状態で起きること

それは、カテゴリーキラーの誕生です。

想定できるのが、次の事象です。

「海外の大資本、ないしは大資本から資金供給を受けているベンチャーで、ネット配信専業の配給会社となり、日本の制作会社を事実上の支配下置いていく。」

もしこのような事象が発生すると、制作会社はネット配信専業の配給会社にリソースを割き、従前の配給会社に作品を流さなくなる可能性があります。
グローバル展開をうまくやってくれるのならば、そっちの方が儲かるからです。

そうなると、配給会社は配給する作品が少なくなり、興行会社が上映する作品が絞られてきます。

過去の作品があるとは言え、大手配給会社はゆでガエル状態になっていくでしょう。
シネコンや各地域の興行館は、配給待ちをする立場なので、ゆでガエルどころか、急激に経営が悪化していきます。
ミニシアターは、ある意味変わらずで、これまで通り尻すぼみに業界が縮小していくでしょう。

一方、制作会社は、経営の方針転換は大きく必要なものの、大きな影響は受けない可能性が高いです
むしろ、制作本数あたりの負担が減り、製作スタッフ共々、ハッピーになるかもしれません。

一般顧客にとっては、見たい新作映画がネット配信で即座に見れ、作品も充実し続けるので、こちらもむしろ嬉しいはずです。
たまに、大きな映画館で、臨場感たっぷりに何か見れれば十分に満足できます。
ただし、身近な映画館、は減少するでしょう。

どのような映画館が生き残っていくか?

それでは、どのように対処すれば良いでしょうか?

まず興行会社、つまり映画館が生き残っていく道です。

もう、これはシンプルで、自宅では実現できない価値の提供です。
それも大画面、大音量、という価値提供だけでは不十分で、最新の設備が整った、整えられる所のみが生き残っていくはずです。

例えば、MX4DやTCXなどです。

MX4D(MediaMation MX4D)は、3D映画以上の体験型シアターシステムで、映画のシーンに合わせ、シートが動いたり、数が吹いたりするなど、様々な特殊効果を、映画鑑賞とあわせて体験できます。
TCXは左右の壁から壁まで一面に広がる大型のスクリーンのことで、従来の大画面以上の迫力があり、映画への没入体験を味わえます。

このような、最新のアトラクションを価値提供できる一部の映画館のみが生存を許されるはずです。

(後は精々、個人単位で作品の選別眼に優れた運営者がいる、一部の興行館が「味のある映画館」として細々と生き残っていく程度になるはずです。)

仮に小規模興行会社が生存の道を模索するなら?

少なくとも言える所は、現状で大多数のリアル映画館(興行会社)は消えていくであろうということです。
これは動かしがたいでしょう。

もし、仮に取り組むとしたら、小規模興行会社で連合し大資本を組むことです。
そして、自分たちでネット配信を立ち上げることが考えられます。

高い商品選別眼があって、今まで経営を続けて来れたのだから、その強みを最大限に活かすやり方です。

ただ、誰が鈴をつけて、音頭をとるのか?というと、日本人の気質的に非常に怪しいので、現実的ではないでしょう。
どこまでの事業規模を狙えるのかも不明です。

上述したカテゴリーキラーとなる海外大資本に、商品選別眼を売り込む形で、個人レベルで細々と生き残っていくのが精々となってしまうのでは、とも考えます。

大手配給会社や大手シネコンがとるべき方策

最後に、大手配給会社や大手シネコンがとるべき方策は何でしょうか?

これはもう、タブー(ネット配信)に振り切ることでは無いでしょうか。

全員にとって幸せな解決策があるとは思えません。

もう、リアル映画館は最新の設備が整っている所、整えられる所を残して、もう駄目だと割り切るのです。
そして、素直にネット配信に振り切ります。

リアル映画館は、単純に映画を視聴する、という空間ではなく、上述最新設備で体験できる、アトラクション性をもった空間と位置づけるのです。

多くの出版社、書店が、Amazonの台頭を指を加えて見ていた過去を、よく考えた方が良いでしょう。
ドラスティックな改革は、体力がある内しかできません。


以上、映画業界の今後の姿について、「映画館」を軸に考察してきました。

私は、映画業界は専門ではないので、詳しい方にしてみれば噴飯ものの内容かもしれません。

ただ、多くの業種業界の栄枯盛衰と趨勢を見てきた立場として、マクロ感としてどうなっていくか?は推測ができうると考えています。

繰り返しますが、映画業界は、新型コロナウイルスの感染症拡大による経済影響と、ネット配信サービスの台頭、という2つの大きな波をまともにうけている状態です。
ドラスティックに変化していかなければ、業界全体が外資に飲み込まれていくでしょう。
(私は、グローバル化そのものは否定していないので、このこと自体をネガティブには捉えていません。しかし、当の業界に所属する方々はそうではないでしょう。)

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