「ロジカルシンキング,フェルミ推定」のまとめになります。
タグ: フェルミ推定
先日、とある方による、とあるインフルエンサーへのコメントで「生卵×納豆は栄養相殺なNGな食べ合わせ(以下略)」というものを見かけました。
結論、大げさな話で気にする必要は無いのですが、ネット上では様々な情報があふれており、真偽がわかりづらいです。
今回は、栄養学とかその種の知識抜きに、ロジカルシンキングで判断する方法を考えてみます。
お題:納豆と生卵の食べ合わせは相性が悪い、をロジカルシンキングで反証する
なんでそんな話になるのかよくわからないのですが、
納豆と生卵の食べ合わせは相性が悪い。
なぜならば、卵白に含まれるタンパク質「アビジン」は、
納豆に含まれるビタミン「ビオチン」と結合し、吸収を阻害するから。
「ビオチン」は皮膚や髪の毛の健康を保ったり、身体の酵素の働きを助けるので、
ビオチン不足になると、色々な健康被害がでる。
と言われています。
まあ、この話自体は、論理的に筋が通っています。
テレビなどで偉い風の先生が(おそらく、全体文脈を見るとそんな主張をしていないのでしょうが)、そのように解説をすると、信じてしまう人も出てくるでしょう。
今回は、この話を、専門的な栄養学等々の知識抜きで、
あくまでもロジカルシンキングの観点で反証してみます。
この種の話は、納豆と生卵の食べ合わせに限らず、色んな場面で出てくるので、応用が利くと思います。
ロジックの流れ
この話はそんなに難しく無いです。
まず、常識的な感覚をもって世の中を見渡した時に、「納豆と生卵の食べ合わせ」による健康被害を見聞きしたか?がポイントです。
聞かないですよね?
じゃあ、レアリティの話なのか、単純に話が出回っていないのかどうか、ということで全体の母数を考えます。
ようは、納豆と生卵の食べ合わせで頻繁に食事をされる方が世の中にどれくらいいるのか?という話です。
納豆を頻繁に食べる人の割合 × 生卵を頻繁に食べる人の割合 × 日本の人口
ですね。
別にフェルミ推定でやっても良いのですが、ここでは省略し、資料に頼ります(ググればすぐに出てきます)。
資料の数字、納豆を頻繁に食べる人(毎日を含む、2~3日に1回以上)が36.6%、卵料理を頻繁に食べる人(毎日を含む、週に3~4回程度以上)が71.6%です。
で、生卵の喫食データは無いのですが、「好きな卵料理」で「卵かけごはん」が5位にランクインしているので、超ざっくり10人に1人とパラメータ設定を置きます。
数字をあてはめて見ると、下記の通り約3百万人が該当することがわかります。
納豆を頻繁に食べる人の割合 × 生卵を頻繁に食べる人の割合 × 日本の人口
= 36.6% ×71.6% × 0.1 × 1億2千万人
= 約3,100,000人
考えて見てもください。
3百万人もの人間が健康被害にあうような食べ合わせがあるのならば、もっと世の中的に話題になっているはずですし、厚生労働省とかが警告を出すはずです。
健康被害が仮にあるにしても、影響は小さいか、もっと対象母数が小さいか、のどちらかか両方になるはずです。
つまり、「気にする必要が無い」と言えるわけです。
好きなように食べなよ。
まとめ
今回の話は、「〇〇は良くない!(定性)」という話に対して、「じゃあ、どれくらいの人に影響があるの?(定量)」という流れて切ってみました。
定性情報を定量情報で検討してみる、というビジネスでもよくある思考ですね。
ちなみに医療の話でいうと、卵白の過剰摂取による健康被害は実際にあって、「卵白障害」と言われています。
この話を仮にしっていたら、「卵白障害 患者数」で検索してみる方法もあります。
まあ、数字が出てこないから「あぁ、大したこと無いんだな」とすぐに気づくのですが。
ちなみに話をもう一つ付け加えると、諸々の研究論文を眺めていると、卵を10個以上、毎日摂取するのを数ヶ月から数年間続けると、卵白障害が起きるらしいです。
さらに付け加えると、この話は「卵白×他ビオチンが含まれている食材」の対立軸になるので、潜在患者数は約8百万人と上の数字以上に増加します。
なおさら気にする必要が無いことがわかりますね。
話の中身は違っていても、この種の話は多く溢れています。
ビジネスの現場でもそうです。
定性情報は定量情報に置き換えてみる。
この基本的な思考の流れだけで、大体のことは、大元の知識抜きでも解決できたりします。
アフターコロナにおいては、リモートワーク拡大に伴う巣ごもり消費の影響で、ペット市場が活況になりそうです。
そこで最近、市場が産まれだしたペット・テック市場について、仮に参入した場合の事業規模について考えていきます。
お題:ペット・テック市場に参入した場合の事業規模を求める
こちらの記事で書いた通り、アフターコロナのペット市場は拡大していくものと考えられます。
この前提で考えた時に、仮にペット・テック市場に参入した場合、どれくらいの事業規模になるのかを考えてみます。
試算
さくっと行きます。
ベースとしては世帯数で、そこからどれくらいの人たちが飼育しているのか、今後市場はどれだけ成長が見込めるのか、利用状況はどうか、を考えます。
数式で表現すると、次のようになるでしょう。
事業規模 =
世帯数 × 世帯飼育率 × 増加予測率 × アプリ使用率 × 課金率 × 月額課金額 × 12ヶ月
数字もはめてみます。
資料としては、一般社団法人ペットフード協会が出している「全国犬猫飼育実態調査」を参考にします。
とりあえず、メジャーな犬・猫に限定しました。
熱帯魚とか、鳥類・ハムスターのようなものまで含めていくとキリが無いですし、ペット・テックをやるにしても対象動物を絞らないと、やりづらいと思いますので。
それぞれ、フェルミ推定らしく数字の仮説をおいてみても良いのですが、まあググれば一発で出る世界の話なので省略します。
参照するのは、上記リンク先資料内にある「全国犬・猫 推計飼育頭数」部分です。
私が都心に住んでいるからなのか、あまり実感が無いのですが、結構な人が犬・猫を飼っているのですね。
この数字を計算式にはめてみると、次のようになります。
これは、ペット・テック+ペット・フードを織り交ぜて、単価を高くした設計としました。
イメージとしては、ペットの監視機能付き自動給餌機+ペット・フードで、ペット・フードは、その動物個体に応じて成分をカスタマイズしたものを想定しています。
リンク先にあるような、オーダーメイドサプリメントのようなイメージですね。
(普通にマルチビタミン・ミネラルを飲んでいればいいような気もするのですが、こういうサービスもあるんですね。)
数時間として見てみると、ざっくり約60億円とまあまあな規模感です。
結論
上記は自社利用率が全体の1%前提で、サービス単価も給餌機本体とペット・フード代のみです。
- 飼育相談や健康管理アドバイスをオプションで組み込み、近隣の動物病院と連携したようなサービスを開発する。
- 先行者利益をとる形で、ガツっと広告宣伝費投下してマーケット創造とシェア獲得を図る。
そんな形で展開すれば、200億円くらいまでは十分に拡大できそうな気もしますね。
とは言え、べらぼうに規模が大きいわけでも無いので、手ごろなサイズ感まで成長させ、その後はExit(事業売却)をするようなイメージになるでしょうか。
スタートアップ的な組成でやるとよさそうです。
まだプレイヤーは少なく、またこれから一気に拡大していく領域なので、興味のあるベンチャー起業家はチャレンジしてみる価値は十分にありそうですね。
洋菓子店の明暗がわかれているようです。
都心の百貨店は売上が減る仲、EC売上や、各地域の個人店は横ばい、ないしは売上が増えている所があるようです。
一方、個人の消費者では、自宅でお菓子を作る機会が増えている模様です。
今回は、個人向けにスイーツ制作キットを販売した場合の市場規模について考えていきます。
お題:スイーツ制作キット・サブスクリプションの市場規模を求める
今回の条件は、次の2つ位でしょうか。
- ケーキミックスに加え、レシピ冊子、器具類が毎月届くサービス
- 先駆者の立場として、市場シェアを一気に取る想定
なお、海外ですと、リンク先のようなサービスがあるので、荒唐無稽な話では無いですね。
それでは考えてみて下さい。
試算:既存のデータから逆算していく
今回はある程度、ベースとなるデータから市場規模を逆算して行こうと思います。
スイーツ制作キットですので、自宅でのお菓子制作に興味のある、ライトユーザーが対象になると想定されます。
混ぜて焼けばできる系の商材から、利用者数を考えてみます。
つまり、「プレミックス」のデータを参照します。
プレミックス市場全体の売上高はおおむね160億円です。
このプレミックス市場の内、ホットケーキ、パン、ケーキ、焼き菓子系と言った、スイーツ系プレミックスの比率は約45%です。
つまりスイーツ系のプレミックスの市場は約72億円と考えられます。
この約72億円から、サブスクリプション・モデルで毎月販売するモデルでサービス提供をした場合の利用率想定を設定し、そこから利用人数を計算してみます。
利用率想定は1%、プレミックスの値段想定は300円とします。
これは、正しい間違っている、はさして問題ではないので、とりあえず適当におけばOKです。
利用人数としては、想定20,000人の方が利用するイメージになりました。
ここから、先駆者の立場としてどれだけシェアをとるのか(市場を創造するのか)、そしてその他の材料やレシピ、料理キットなどを付け加えて、その付加価値分の値段の上乗せをするのか、を考えてみます。
MAXシェア想定は20%、値段の上乗せ分は1,700円、つまり販売額は2,000円/月とします。
4,000IDをとる前提で、年額約1億円の売上と算出されました。
結論:小規模法人がチャレンジするのは面白いかも
事業規模として、約1億円の売上高では小さいと言わざるをえません。
利用回数を月1ではなく、月2のプランを用意したり、材料の質や種類などを増やすなどしたプレミアムプランを用意したとしても、精々が2億円ほどでしょう。
売上がそのまま利益にはならず、材料費だけでなく、マーケティングコストもかかるので、利益としては微々たるものになるはずです。
それならば、既存商品(焼き菓子などの賞味期限の長いもの)をベースに、ECでの販売を行う方が、やりやすいと言えるでしょう(実際、EC販売に流れているわけで)。
逆に言うならば、地域で2,3店舗展開しているサイズ感の洋菓子店が、この1億円を取りに行く、というのは面白いかもしれませんね。
Twitter、Youtubeなどの媒体と交えてやれば、まあまあいけるかもしれませんね。
1,000円カットが普及し、どこでも気軽に髪を整えられるようになりました。
ユーザーの一人としては、非常にありがたい話です。
しかし、本当に儲かる商売なのか?、彼ら彼女らの生活は大丈夫なのか?を、片隅で心配します。
そこで今回は、理容師のお給料はどこまで上げられるのか?を考えていきます。
お題:理容師になったとして、どこまでお給料をもらえるのか試算する
条件は次の通りです。
- 1,000円カット業態
- カット時間は10分
- 都心駅近立地
- 10坪以内の小規模店舗
- 3席稼働
- 営業時間は10時~20時
- とりあえず年末年始以外は無休前提
それでは、考えてみて下さい。
試算
これまで、居酒屋やコーヒー店を例に、事業計画を作ってみました。
今回も、事業計画ベースで考えてみます。
居酒屋とコーヒー店の例は次の記事を参照ください。
売上高の検証
売上高は如何に回転させるか?がポイントです。
営業日数、営業時間、席数、店舗稼働率、そして客単価のパラメータを設定すれば数字を作れます。
稼働率は75%位としました。
朝一や昼間、夕方は混みあって順番待ちの一方、それ以外の時間帯は空いている場合が多いので、1日全体としてはこれ位かな、という設定です。
フェルミ推定では、あっているかあっていないかは、さして問題ではなく、まずは前提を置いて考える方が重要なので、これで良いのです。
数字をあてはめて考えると、次のようになります。
人件費の検証
人件費は、想定される稼働状況から、必要な人数を逆算することで計算できます。
カット時間を10分とし、それを売上高検証から算出できる店舗総稼働時間を導き出し、そこから人の稼働率をあてはめて必要な人数を出していきます。
朝礼や資料作成などの雑務があるでしょうから、カットにあてられる時間としては稼働率90%。
その90%の内、実際にお客様が来店しカットする実稼働率は75%と起きました。
そして、人件費です。
人件費はざっくり1人あたり300,000円とします。
会社を経営していると、従業員の年金や保険料などを一部負担しなければならず、加えて諸々の管理費もかかるので、+15%を加算して考えます。
トータル、人件費は1人あたり345,000円/月となります。
人を雇うって、額面以上のお金がかかるんですよ。
これらのパラメータをあてはめて見ると、次のようになります。
賃借料、その他費用の検証
賃借料、つまり家賃ですね。
駅近のどこかのテナント立地を想定すると、30,000円/坪位かな、と思います。
10坪とすると、ざっくり300,000円/月ですね。
その他費用は考えるとキリがないので、その他費用比率を10%、本部費比率を15%とします。
チェーン展開していると、本部費がかかるんですよ。
会社を大きくしていくための必要経費ですね。
損益計算書
最後に、上記全ての情報を統合して損益計算書を作ってみます。
営業利益率が14%超と、大きい印象がありますが、効率的運営を考えると、これ位は目指したいものではあります。
賃借料やその他費用がもうちょっと大きい気はしますが、全体感としては、まあこんなもんなのかな、という印象ですね。
実際の数値感
実際の数字を見ようとQBハウスのIR資料を漁っていましたが、パッとはそれっぽい資料が出てきませんでした。
リサーチ会社が出している資料があったので、そちらを参考にします。
みていると、パラメータとしては下記のような比率になるようです。
- 人件費率:53.0%
- 賃借料:13.6%
- その他費用率:10.8%
- 本部比率:約14.6%
本部比率だけ「約」なのは、記載がなく、一方全体の営業利益率が約8%だったので、そこから逆算をしました。
こうしてみると、概ね一致していますが、賃借料は乖離があるようです。
日本不動産研究所が出している賃料指標をみると、都心立地でも坪単価30,000円位だったので、試算ベースでは大外れでは無かったようですが、少なくともQBハウスはもっと坪単価の高い好立地を使っているのか、それとも想定よりも面積が広い店舗にしているか、なのでしょう。
結論
さて、ここまで見てわかる通り、一月当たりの営業利益は50万円ちょっとです。
ここまで到達したとしても、実際には株主への配当や新規店舗への投資などにお金を回すのが企業経営です。
一人が望める給料向上額は、精々2万円~3万円程度でしょう。
上記の試算ですと、年収は360万円ほどで仮に望めたとしても、精々が400万円ほどです。
別資料の理容師の平均年収が300万円ほどなので、これでも優れている試算になります。
結論、好きでなければやり続けられる仕事ではない、と考えられます。
(現役の理容師の方々、好きでやっている方々を貶めようという意図は一切無いので留意ください。)
仮にやるとしたら、自分自身がオーナーとなって、店舗収益の配分をとるか(自分が株主となるわけなので)、複数店舗経営するか、になるでしょう。
別の観点で考えた時に、客単価をあげる、という選択肢も考えられます。
実際、QBハウスは1,000カットでは既に無くなっていますね。
その場合でも精々が1割2割の上昇幅なので、インパクトは小さいです。
理容師業界全体で、もっと客単価をあげても、自分で髪を切り出す人がではじめるので(アタッチメント付きのバリカンだと、髪型にこだわらなければ簡単に切れる)、限界があります。
やはり、しっかり儲けようと思うならば、自分自身が経営者になる、という選択肢しか無いのでしょう。
(参考)試算資料
試算に使用した資料はこちらになります。
ご興味のある方は、DLしてお使いください。
前回に引き続き、飲食店系で事業計画を考えてみます。
今回は居酒屋の事業計画です。
こちらも脱サラ・独立開業の定番ですね。
なお、前回のコーヒー店はこちらになります。
お題:居酒屋の事業計画を作ってみよう
条件としては、次の通りです。
- 池袋、新宿、渋谷のような週末も人が来るビジネスエリア
- 駅からは10分以上離れた場所
- 60席くらいの中規模店舗
- 古いビルの地下店舗、もしくは2階以上の空中店舗
- 営業は夜のみ
それでは、考えてみて下さい。
試算:週末と繁閑が重要
飲食店の売上高の構成要素
コーヒー店でも示した通り、飲食店における売上高の構成要素は次の通りです。
売上赤 = 客数 × 客単価
まずは、これが基本になります。
週末
次に考えるのが週末です。
週末とは、金曜日と土曜日、加えて祝休日が続く場合の休日中日も該当します。
こういった日は、他の日に比べて多くのお客様が来店する傾向があります。
そのため、シミュレーション上は週末日数をカウントし、別に計算する必要があります。
繁閑
更に考えるのが繁閑です。
飲食店の売上は年を通して一定ではなく、波があります。
12月は忘年会、3・4月は歓送迎会で盛り上がるのはイメージがつきやすいでしょう。
逆に2月や6月など、ほとんど客の入りが無いのも、何となくは伝わるかと思います。
こういった、繁閑を月単位で考えていく必要があります。
事業計画を考えてみる
上記をもとに作成した年間の事業計画は、例えば次のようになります。
これは当然、一つのシミュレーションなので、提供する商品の内容や単価設定、立地・客層に応じて大きく変動していきます。
結構、ボリューミーな印象を受けるかもしれません。
図もちっちゃいですね。
しかし、これでも事業計画策定上のミニマムな粗々なものです。
全体を通して見えること
一番右端の数字を見て下さい。
3.4%とあります。
これは年間の営業利益率です。
飲食店の営業利益率は、大体1桁%台半ば前後なので、どこの飲食店もおおむねこんな感じでしょう。
まあまあ普通の飲食店ですね。
ようは、非常に厳しい、ということです。
仮に、うまく営業していても、何かの外部要因によってお客様が前年より数%減ってしまったらどうなるでしょうか?
他にも、食品原価があがったり、お客様が暴れて店舗備品が壊れた修繕費用がかかったり(当該、客は逃げるなり、弁償しなかったり、訴訟するにも手間とお金がかかるし。)、そんなマイナス要因が一発、二発来たら、あっという間に赤字です。
次の図を見て下さい。
これは居酒屋業界の5F(ファイブ・フォース)分析です。
なんで、このような業界なのかというと、上記の図の通り、居酒屋は参入障壁が低く、また業界内競争・業界外競争も激しく、加えて全体として交渉力が低い、という点が指摘できるからです。
飲食店は居酒屋に限らず、3年で7割、10年で9割が廃業します。
飲食店の世界でうまくやっていきたいのであれば、うまくいかない前提で、入り口から精緻にシミュレーションし、マーケティングも顧客調査から確実に行い、加えて流行の変化なども敏感にとらえて即座に対応する、ということが必要です。
カンマ何%の積み上げにより、ようやく利益が出る世界。
それが飲食業界です。
私は、数ある業界の中で、飲食店がもっとも難易度が高いと考えています。
だからこそ面白いと思うし、好きなんですけれどね。
脱サラ・独立開業を、一度は夢見た、もしくは目標としている人は多いのではないでしょうか。
ここでは、独立開業で参入しやすい飲食店業態、コーヒー店をサンプルに、事業計画の基礎を作ってみましょう。
コーヒー店を開業したら、どれくらいの売上を見込めるのでしょうか?
お題:コーヒー店を開業したら、どれくらいの売上が見込めるか?
条件としては、次の通りです。
- 半住宅街、半ビジネス街のエリア
- 駅から歩いて3分~5分ほどのまあまあ人通りがある路面店
- 15坪~25坪程度で、席数も20席未満の小規模な店舗
- 業態は夕方まではコーヒー店で軽食も提供、夜はバー形式
それでは、考えてみて下さい。
試算:事業計画では条件を細かく設定しないといけない
飲食店の売上高の構成要素
飲食店において売上高の構成要素は何か?
それは次の公式であらわせます。
売上高 = 客数 × 客単価
これをベースに、条件を細かくわけて考えていきます。
具体的には時間帯と、平日・土日祝日の区分、繁閑についてです。
コーヒー店がどのように営業しているかをまずは想像してみてください。
時間帯
まずは時間帯で考えます。
朝の少数ながら朝食需要とテイクアウトのコーヒー。
昼はランチ需要とテイクアウトのコーヒー。
午後はちらほらとスイーツ需要と、仕事スペースを探すビジネスマン利用。
そして夜はバー需要。
それぞれ利用形態に併せて、利用人数や客単価が異なってくるでしょう。
平日・土日祝日の区分
同様に、平日・土日祝日の区分についても考えます。
半ビジネス街というエリアだと、土日祝日の朝と昼は、基本的に客の入りを期待できません。
場合によっては、終日、全く入らない日もあってもおかしくないでしょう。
事業計画を考える上では、これらも見込まなければいけません。
繁閑
繁閑もそうで、飲食店というものは、1年を通して同じような売上高で推移するものではありません。
冬はホットコーヒー、夏はアイスコーヒー需要があるでしょうが、それ以外の月ではあまりコーヒーの販売が伸びない可能性があります。
逆に季節要因を利用するという観点ならば、コーヒーギフトを用意すれば、12月の売上の足しになるかもしれません。
バーも同様で、2月や8月のような時期は基本的に厳しい数字になるはずです。
季節要因で考えるならば、12月はギフト需要同様、バー業態の売上も伸びるでしょう。
カップル向けに雰囲気を整えてあげると効果的でしょうね。
事業計画(売上計画)を考えてみる
これらの要因のパラメータをそれぞれ設定し事業計画(売上計画)を計算すると、例えば次のようになります。
上記は、提供する商品の内容や単価設定、立地・客層に応じて大きく変動していきます。
結構複雑に見えるかもしれませんが、ビジネスをやる上では最低限、このレベルでシミュレーションをしなければなりません。
これでも、最初期に検討する、本当に粗々なものです。
変数がいくつかあるので、その条件設定を見誤れば、せっかく意気込んで独立開業したにもかかわらず、失敗で終わりかねません。
より正確に表現するならば、飲食店は3年以内に7割が廃業します。
それくらい厳しい世界なのです。
業績全体としてはどうなるだろう
今度は、上で作った売上計画を元に損益計算書を簡単にシミュレーションしてみます。
損益計算書とは、事業における通信簿(成績表)みたいなものです。
損益計算書を考えるにあたり、費用の構成要素も考えなければなりません。
飲食店においては、FLR(フード:原価率、レイバー:人件費率、レント:家賃・減価償却費率)という3つの費用が大きな構成要素として存在します。
飲食店における原価率は20%~30%位で、コーヒーの原価率は25%位、フードやお酒も提供するなら平均で30%位になるでしょう。
人件費率と家賃・減価償却費率も20%~30%で設定されるのが一般的です。
(減価償却費とは、内装や機器類の費用を月単位で按分したものです。)
加えて、その他の諸経費として10%程度がかかります。
これらを組み込んで損益計算書を作ってみると、例えば次のようになります。
(借入金は500万円で期限一括の利率2%としました。)
これを見て、どう感じましたか?
独立開業は覚悟が必要だね
オーナーの取り分
独立開業をするからには、やはり「お金持ちになりたい!」という気持ちが大なり小なりあるのではないでしょうか?
仮にオーナーであるあなたが一人で営業していても得られるお金は、人件費部分の約472万円と純利益の約125万円です。
合計で600万円にも届きません。
営業を少しでも楽しようと、アルバイトを雇えば、オーナーの取り分はもっと減ります。
小さなコーヒー店を1店舗開業するならば、安全性・安定性含め、どこかの会社で正社員として働いていた方が、割が良いかもしれません。
儲けようと思うならば、何店舗かお店を出して、人を使いながら、うまく切り盛りする必要があるでしょう。
実際のお金の動きに関しても注意が必要です。
借入の返済分も含めて考えれば、手元に残る会社としてのお金は1年で100万円~200万円です。
精々が1月分の売上高です。
今現在のコロナの影響を考えてみて下さい。
外出自粛が続いたらどうなるでしょう?
これまで汗水流して、何年もかけて稼いだお金が、たったの数ヶ月で溶けて消えてしまうのです。
独立開業には、かなりの覚悟が必要
ここまで見て考えれば、独立開業にはかなりの覚悟が無ければやれない、ということがわかるでしょう。
そして、やりたいことが好きでないと続けられない、ということも何となくわかるかと思います。
中途半端な覚悟ならば、絶対にやらない方が良いでしょう。
しかし逆に考えれば、覚悟さえあるならば、うまくやれるとも考えられます。
どういうことか?と言うと、まわりのお店の多くは、何かしらのチェーン店で、そこで働いている人たちは雇われている人たちです。
つまり、ライバルのほとんどは、中途半端な覚悟しか持っていない人たちのはずです(当然、正社員として働いていても、本気で取り組んでいて優秀な人はいますが)。
「そんな人たちに、私が負けるはずがない!」
飲食店は結局のところ、店長の力量で業績が決まりますので、本気で事業に取り組めるのであれば、勝算は十分に見込めるはずです。
(実際、チェーン店で働いていたトップクラスの店長が独立開業して、他のお店を押しのけて大繁盛しているケースは多いですね。)
今回の「今日のフェルミ推定」はインフルエンザの予防接種のコスパ試算です。
個人の視点と、企業の視点(会社で補助すべきか否か?)のそれぞれで考えてみます。
それでは、見ていきましょう。
(参考)フェルミ推定とは
フェルミ推定をご存じない方は、別で検索いただくか、下記記事も参考にしてみてください。
インフルエンザの予防接種の状況
参考までですが、インフルエンザの予防接種を受ける人は4割超ほどです。
予防接種を受けない人は、その理由の3番目(事実上2位タイ)に「費用が高い」「費用が高そう」をあげており、27%ほどです。
お題:インフルエンザの予防接種はコスパが良いか?
あなたは、インフルエンザの予防接種を受けようか否かを迷っている状況です。
今までかかったことがあるない関係なく、とりあえず時間的にも金銭的にも問題が無いとします。
つまり、純粋にインフルエンザの予防接種を受けるためにかかるコストと、万が一かかった時に失う時間との比較で考えてみて下さい。
試算
それでは、試算していきます。
感染率の推測と、かかってしまった場合に失う時間の見積もりがポイントでしょう。
感染率はざっくり10%、失う時間は3日×16時間の合計48時間とします。
時間価値は日本人の平均給与から逆算して2,000円を設定します(これは他の推定でも使用している)。
計算式は次の通りになります。
インフルエンザに感染した場合の損失
= 感染率 × 失う時間 × 時間価値
= 10% × 48時間(3日×16時間) × 2,000円
= 9,600円
予防接種にかかる費用は、直接の費用だけが注目されますが、当然、受診にかかる時間についても加算すべきでしょう。
計算式は次の通りになります。
予防接種にかかる費用
= 直接の費用 + 受診にかかる時間 × 時間価値
= 4,000円 + 2時間 × 2,000円
= 8,000円
比較すると、9,600円 > 8,000円なので、インフルエンザにかかってしまった場合の損失の方が大きい、つまり予防接種をした方がよい、と考えられます。
少なくとも損はしなさそうですので、感染して苦しむ際の苦痛損失を考慮すると、むしろ安いと言ってよいのではないでしょうか。
なお、実際の感染率は約9.7%のようです。
これは、厚生労働省の資料を元に、「人口 ÷ 患者数」の計算式で算出しています。
加えて、実際の直接費用は3,631円とのことです。
補足すると、単純に感染率で考えるのではなく、実際には感染率と発症率で考えなければ正確性に欠けます。
感染率に関しては、国立感染症研究所の資料ではざっくり30%ほど、発症率は日本臨床内科医会の資料ではざっくり40%ほどとなっています。
つまり、30%×40%で、上記で言う「感染率」で換算すると約12%となり、少なくともフェルミ推定で考えるベースの数字としては納得感のある数値と言えます。
見方を変えてみる:企業は予防接種の補助をすべきか?
上記の試算は難易度が低かったと思います。
これでは面白くないですね。
見方を変えて、企業の総務・人事の担当者の立場で考えてみましょう。
会社で、予防接種の補助をすべきか否かです。
結論を言うと、予防接種費用の補助はコスパが良いのでやった方が良い、です。
予防接種の効果には「有効率」という考え方があります。
こちらはここで解説すると長くなってしまうので、別で検索ください。
ようは、予防接種をしても、必ずしも効果があるわけではない、ということです。
この有効率の考え方と、上述の感染率、発症率を含めて、従業員数100人の企業でシミュレーションをしてみます。
会社内での接種率ごとに、発症者数が下記の表のように変化していきます。
前提
- 社員数 100人
- 有効率 70.0% 諸研究より
- 感染率 30.0% 国立感染症研究所より
- 発症率 40.0% 日本臨床内科医会より
これをベースに費用対効果を算出します。
接種率目標を70%とすると、約5人、発症者を減らせる計算になります。
補助額を3,631円で設定します。
感染した場合、従業員を1週間休ませなければいけないので、5営業日分の労働力ロスです。
会社補助負担額
= 100人 × 70% × 3,631円
= 254,170円
労働力ロス額
= 5.1人 × 8時間 × 5営業日 × 人件費単価2,000円
= 408,000円
シミュレーションの結果、明らかに会社で予防接種の負担額を補助した方が良い、ということになります。
労働力ロスが発生したとしても、休ませている間は給料が発生しないから、いる人で何とかカバーすれば実額損失は無い、という考えでも良いのですが。
現代の企業経営者に対する目線で考えれば、明らかなブラック思考ですよね。
とりあえず、個人レベルでも、企業レベルでも、インフルエンザの予防接種はコスパが良い、ということでまとめさせていただきます。
毎朝ヒゲを剃り、スーツを身にまとい出勤する。
どうしても仕事の関係で、そのような生活をしている方が大勢いるでしょう。
ヒゲ剃りは面倒です。
いっそのこと脱毛をしてしまえば?と思ったことがある人もいるでしょう。
今日は、このヒゲ脱毛に関して、コスパが良いか否かを試算してみます。
(参考)フェルミ推定とは
フェルミ推定をご存じない方は、別で検索いただくか、下記記事も参考にしてみてください。
お題:ヒゲ脱毛は時間節約の観点でコスパが良いか?
会社はリモートワークをやらない、ヒゲも剃らなければいけない。
あなたはそんなサラリーマンだとします。
ヒゲは濃く、毎日のことで手馴れてはいるけれども、最低でも5分はかかってしまう。
そんなある日、永久脱毛の広告を見ました。
お値段は、全部で20万円です。
そのような前提です。
さて、ヒゲ脱毛は時間節約の観点でコスパが良いでしょうか?
コスパ試算
これまでは市場規模や事業規模を推定してきました。
つまりマクロな試算ですね。
これを応用して、ちょっとしたことの投資判断に役に立たないか?考えてみます。
ようは、生涯の中でヒゲ剃りにかかる時間から換算される金額的価値と、永久脱毛にかかる費用との比較になります。
計算式は次のようになるでしょう。
生涯の中でヒゲ剃りにかかる金額的価値
= 1回あたりのヒゲ剃りにかかる時間 × 年間あたりヒゲ剃りの回数 × 現役で働く期間(年数) × 時間価値
ヒゲ剃りにかかる時間を5分、1年に働く労働日数を260日、現役でいるであろう残り期間を30年、時給換算の時間価値を2,000円として、上記式にあてはめてみます。
生涯の中でヒゲ剃りにかかる金額的価値
= ヒゲ剃りの時間5分/回 × 年間260回 × 30年 × 時給換算2,000円
= 130万円
結構な金額です。
永久脱毛のコスト20万円と比較しても圧倒的な差があります。
永久脱毛という投資にかかる回収期間も5年程度で済みます。
投資回収期間
= ヒゲ脱毛のコスト200,000円 ÷ ヒゲ剃りの時間価値(43,333円/年) = 約5年
結論
数字上は圧倒的に明らかな結果となりました。
ヒゲに対する憧れとかが無いのならば、早々にヒゲ脱毛をした方がよいでしょう。
平日の朝の5分を確実に確保ができます。
実際は5分以上の時間がかかるものなので、時間節約には間違いなく有用です。
これは一種の価値観や好みも混じってくる話ではあるので、万人におすすめするものではありません。
しかし、過去の時間を買い戻すことはできません。
将来の時間を買う、という観点で若い内に、早々に永久脱毛という投資をするのは、十分に価値のある検討だと言えるでしょう。
環境志向・健康志向の高まりと、科学技術の発展を背景に、培養肉による代替食品(人工肉)が開発されはじめています。
この培養肉市場への参入は有りなのか無しなのか?
フェルミ推定をベースに考えていきましょう。
(参考)フェルミ推定とは?
フェルミ推定については、下記の記事も参照し、イメージを掴んでいただければと思います。
お題:代替食品(培養肉)市場はどれだけのサイズ感を見込めるか?
生理的な拒否感が大きそうな培養肉ですが、アメリカを中心に欧米では一定のマーケットができはじめています。
食肉の生産コストは高く、また環境負荷も大きいため、日本もいずれは培養肉が一般的になる時が来るでしょう。
では、仮にあなたが食品メーカーに務めていて、最新技術に関連するポジションについていたとします。
培養肉市場に参入するでしょうか?
とりあえず、生理的なものは脇においておいて、市場規模だけで考えてみましょう。
フェルミ推定
まず、培養肉が普及しはじめた段階と普及した段階で考えた時、そしてその中間で考えます。
アーリー、ミドル、レイターですね。
アーリー期
アーリー期は、本当にごくごく一部の極めて関心が高い層が、高い値段を払って購入・消費するようなイメージになるでしょう。
計算式は次の通りになります。
アーリー期の市場規模
= 人口 × 健康や健康志向に極めて関心が高い層 × 培養肉への関心も高い層 × 購入単価/日 × 消費ペース
それぞれ仮でパラメータを当ててみると、下記の通り、125億円がざっくり見込めます。
テストマーケティングとしては、十分すぎるほどのサイズ感と言えます。
週1消費ではなく、月1消費としても約29億円ですので、初期の市場形成段階としては良い数字でしょう。
アーリー期の市場規模
= 人口1.2億人 × 関心度極めて高い率1% × 培養肉高関心率20% × 1,000円/日 × 52日(週に1回消費)
= 約125億円
ミドル期
ミドル期では、値段が下がり、そこまで関心が高くない層も買うような想定になると思われます。
関心無し層、中間層、高関心層の3パターンで分けて考え、それぞれざっくりとパラメータをはめてみます。
すると、市場規模としては約677億円となり、マーケットとしては大企業でも狙うに値する数字感になってきました。
ミドル期の市場規模
① 人口 × 健康や環境志向への関心度0%(60%) × 培養肉関心率(0%) × 0円 × 0日 = 0円
②人口 × 健康や環境志向への関心度50%(39%) × 培養肉関心率(5%) × 300円 × 52日 = 約365億円
③人口 × 健康や環境志向への関心度100%(1%) × 培養肉関心率(20%) × 500円 × 260日 = 約312億円
① + ② + ③ = 約677億円
レイター期
レイター期になると、市場のあり方が大きく変わると推測されます。
具体的には、加工食品や、ひき肉などに、培養肉がまざるような状況です。
この場合、食肉市場全体のうち、単価の安い培養肉が〇〇%の割合で構成される、というようなイメージ感になると考えられます。
まずは食肉市場の規模を考えます。
食肉市場規模
= 人口 × 1日あたりの肉消費額 × 365日
= 1.2億人 × 100円 × 365日
= 4兆3,800億円
そして、培養肉が最終的に30%混ざるような構成で考えます。
(現在でも、植物性タンパク質が食肉加工品に当たり前のように含まれているので、これくらいはいくだろうと推測。)
そうすると、下記の通り約1.3兆円の市場規模が想定されます。
結構な数字です。
レイター期の市場規模
= 食肉市場規模 × 培養肉添加割合
= 4兆3,800億円 × 30%
= 1兆3,140億円
実際の数値をはめてみる
まずリンク先資料の通り、現時点での世界の培養肉市場は1,200億円と推計されているようです。
欧米を中心としたアーリー期と言えるので、仮に日本で培養肉を販売した場合、10%位まではアーリー期でも取れるであろうと考えた場合、125億円という推計は、かなり良い線いっているのではないでしょうか。
ミドル期も同様の話で、培養肉の市場は年間約8%で成長していくことを踏まえると、時間はかかるにせよ約677億円は到達しそうです。
普及に伴う価格の低下と、味・品質の向上、イメージ感の改善次第で、普及スピードはあがるでしょう。
なお、食肉市場の2020年時点の市場規模は約3兆円とのことです。
推測の4兆3,800億円からは、まあまあ外れてしまいましたが、それでもレイター期の割合を30%とした場合、市場規模が約1兆円ですので、結構なサイズ感です。
最後に
培養肉の普及の努力は、特に生理的な嫌悪感の払拭を中心に大変なものになるでしょう。
しかし、ここまで見てきた通り、その市場規模はかなりのサイズ感が見込めます。
仮に10数年後、5社程度の主要プレイヤーで培養肉市場を競うような状況になっていたとしても、その事業規模は2,000億円ほどを見込めます。
大企業でも、2,000億円の売上高は相当なものです。
結論、現時点でこの先未来を見越して、培養肉の開発は参入する価値あり、と考えられます。