カテゴリー
ビジネスと心理学

収入による幸福度の増加には上限があるが悲しみを減らす効果がある

収入による幸福度の増加には上限があることが知られています。
一方で、ブリティッシュ・コロンビア大学の研究によると、お金があることにより日々の悲しみの経験が少なくなることが示されています。
そして、その結果として幸福度を間接的に高める効果があるとしています。

収入による幸福度の増加には上限がある

アメリカ・インディアナ州にあるパデュー大学が行った研究によると、収入による幸福度の増加には増減があり、国や地域にもよるのですが、400万円程から1,400万円程のレンジの中で頭打ちになるとされています。

https://www.nature.com/articles/s41562-017-0277-0

この種の研究は各国各研究者により様々に行われているのですが、概ねこのレンジ感で収まる、ということが知られています。

(繰り返しますが、この金額には地域や社会による影響があります。)

逆に表現すると、上限はあるものの、一定程度、幸福はお金で買える、という相関性について示されている、と言えます。

収入により悲しみを減らす効果がある

上述の通り、収入による幸福度の増加には上限があることが知られていますが、一方で、悲しみとの関連性についてはあまり知られていません。

誤解を受けやすいことなのですが、幸福感と悲しみは正反対の感情ではなく、異なる感情の状態です(関連する感情でありつつ、どちらも両立し得る感情です)。

ブリティッシュ・コロンビア大学は、収入と幸福の関係を調査しました。
この幸福とは、富が幸福よりも悲しみに大きな影響を与えているの可能性があるのでは?という先行研究を受けてのものです。

https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1948550614568161

その結果、収入が高いほど、日々の悲しみの経験が少なくなることが示されました。

この結果は、関連する人口統計やストレス、被験者の日々の時間の使い方等では説明ができないものでした。

この研究では、お金が幸福感の増加よりも、悲しみを減らすのに有効な手段となっており、そしてそれが間接的に幸福度を高める効果があるのでは、ということを示唆しています。

もちろん、この話は相関性のものであり、因果関係を示したものではありません。

しかし、幸福はお金で買える、ということを一定程度証明している一つの証拠ではないかと考えられます。

カテゴリー
ビジネスと心理学

ビジネスに役立つ「バイアス」まとめ

ビジネスに役立つ「バイアス」に関する記事のまとめになります。

人間関係のバイアス

マネジメントのバイアス

勉強とか諸々のバイアス

情報収集時のバイアス

カテゴリー
ビジネスと心理学

内向的な性格な人は無理に外向的に振舞おうとしない方が良い

一般的に外向的であることは良しとされています。
また、多くの心理学的研究により、外向的な行動はポジティブな感情を高め、幸福感を抱くことにつながるという知見が示されています。
しかし、これは全ての人に当てはまるとは限りません。
内向的な性格な人は無理に外向的に振舞おうとしない方が良いのです。

外向的に振舞うことは良しとされているが

上述の通り、社会一般的に外向的であることは良しとされ、多くの場面で高い評価をうけがちです。
外向的に振舞うことはポジティブな感情(PA)を高め、幸福感(ウェルビーイング)にもつながります。

また、出世にプラスの影響がある性格として「外向性」が唯一のものである、という研究もあります。

これだけ聞くと、外向的に振舞うことは良いことばかりのように見えますが、実際には見えないコストが隠れています。

外向的に振舞うことのコスト

複数大学の研究者は、外向的に振舞うことのコストと便益について調査を行いました。
良しとされている外向的行動についてのコストがこれまで研究されてこなかったからです。

https://www.researchgate.net/publication/327119699_Costs_and_Benefits_of_Acting_Extraverted_A_Randomized_Controlled_Trial

研究では147名の参加者に対して一週間に渡り「外向的に振舞うこと」を指示したグループと対象群にわけて、ウェルビーイング等に与える影響について調査しました。
この研究のポイントは、外向性・内向性という気質的な要因について深掘りした点です。

調査では、その場および事後的な振り返りで、ポジティブな感情(PA)、ネガティブな感情(NA)、疲労感等、ウェルビーイングの評価が行われました。

その結果、外向的な性格な人は、「外向的に振舞うこと」によりPAが増加し、”自分自身が本物であるという感情”にもプラスの影響を与えるという従来示されていた知見の確認がされました。
一方、内向的な性格の人は、PAの増加が弱く、NAと疲労感が増加し、“本物の感情”にマイナスの影響が出ていました。

つまり、内向的な性格の人が無理に外向的に振舞うとネガティブな感情を抱き、また疲れてしまうのです。


もし、自身が内向的な性格だ、外向的に振舞うと疲れる、という自覚があるならば、無理に外向的に振舞うようなことは避けた方が良い、ということは明確です。
周囲から得られるアドバイスについて、「人による」ということを意識し、自分にあった方法を適切に取り入れていくことが望ましいと考えられます。

また、人の性格が「外向的」or「内向的」とキレイに分かれるわけではなく、誰しもが外向的な部分と内向的な部分を持ち合わせています。
そのことを踏まえると、自分自身が無理なくできる範囲での外向性の発揮からはじめるのも、コミュニケーションの訓練の意味も含め良いと考えられます。
同じ気質をもった人たちの中で、外向的に振舞うようにすることも良いでしょう。

外向的に振舞うことのメリット自体は明確なので、うまく享受したいものです。

カテゴリー
統計・経済

外食産業前年比(2020年8月)および最近の消費者動向

外食産業前年比の8月は、回復傾向を見せていた7月から再度転落傾向が出た月となりました。
最近の消費者動向と併せて、数字を見ていきます。

外食産業業績推移

まず、売上高前年比推移です。

こちらにある通り、7月までは回復傾向を見せていましたが、8月に入り全体的に減少、転落傾向を見せています。

要因としては客数の減少が大きく、客単価は業種毎に若干の違いはあるものの概ね横ばいです。

特に居酒屋系は客数も客単価も減少傾向にあるので、非常に厳しい状況にあると言えます。

同上
同上

理由としては、新型コロナウイルス感染者数の数字上の増大にあると考えられます(いわゆる”第二波”)。
実態の脅威以上に、心理的な恐怖心や忌避感の他、無難な安全行動を優先する方向に消費者が動いたのでしょう。

消費者の利用動向の変化

利用動向概観

上記の客数推移からも利用頻度が減少した事自体は明確ではあるのですが、アンケート調査によると、下記のような利用頻度の変化があったようです。

ソフトブレーン・フィールド株式会社「コロナでも利用が増加した、外食チェーンの施策をレシートから探る」より

計算してみると各層で下記のようになり、月に2~3回程度以上外食する人全てにおいて利用頻度が減少し、しかし月に1回以下程度は外食利用をする、という人が大幅に増加した形になります(まぁ、当たり前の数字ではありますけれどね)。

月に1回以下:31.7% → 52.4% (165%)

月に2~3回程度:33.8% → 25.9% (77%)

月に1~2回程度:24.3% → 15.0% (62%)

週に3~5回程度:7.8% → 4.9% (63%)

ほぼ毎日:2.5% → 1.8% (72%)

同上

外食利用における変化では、利用回数の変化は上述の通りですが、それ以外ですと、「利用する店舗」「利用時間」「利用人数」「ジャンル」「金額」に大きな変化があった模様です。

飲食業においては数%の変化でも業績に大きな影響を与えるので、上記は全てにおいて外食産業全体にダメージを及ぼしたはずです。

同上

利用シーンの変化では、ランチ帯とディナー帯においてテイクアウト(デリバリー含む)が増えた結果です。

ランチ帯のテイクアウト比率は高いので、如何にランチ帯に最適化したデリバリー対応商品を開発できるか?は今後の外食経営において重要な要素となるでしょう(もちろんディナー帯も)。

デリバリーに関しては、下記2つの記事においても触れているので、参考にしてください。

嗜好(店舗選択ポイント)の変化

店舗の選択ポイントとしては、最近はやはり「ソーシャルディスタンス」や「感染症対策」をポイントとしてあげている消費者が多い模様です。

飲食店利用時の行動を見ても、「ソーシャルディスタンス」や「感染症対策」に気を払っている傾向は同じで、特に女性を中心に、「マスク着用」「他の客との距離」「消毒」が行われています。
(一方、男性の特に20歳代において「特に対策を行っていない」の数字は大きいですね。まぁ、ロジカルに考えたら、当然の行動結果だとは思いますが。)

これらの調査は一定の示唆があり、女性目線で安心”感”がある店舗作りを行えるか?が重要と考えられます。

苦境はいつまで続くのか?

各所で語られてはいますが、ワクチンと治療薬が完成・普及し、終息宣言やそれに準じた発表がされない限り、状況は続くものと考えられます。

NRIの推計では、2021年4月においても、まだ今の低消費水準が続くという事です。

新型コロナウイルスそのものは、実体として”落ち着いた”状況と言え、マスク着用、手洗い・うがい・消毒等の当たり前の衛生対策を行えば、危ない物では無いのですが、如何せん人々の「心理」は難しいものがあります。
感染症より、人の方が恐ろしいのです。

飲食店に限らず、ダメージを受けている事業者は、まだ1年は最低でも続く、という前提で経営の方向性を検討していく必要があるでしょう。

カテゴリー
経営企画

ビジネスで大切なこと~膨大な量の選択肢の中での正しい意思決定プロセスの心理学~

常に何かしらの意思決定を行わなければいけない。
これがビジネスの現場です。
膨大な量の選択肢がある中で、どのようにすれば正しい意思決定ができるでしょうか?

ここでは、意思決定の正しいプロセスについて、科学的な側面から解説していきます。

膨大な量の選択肢は意思決定の質を落とす

意思決定を行う上で、選択肢が多いことは良いことではあるのですが、多すぎる選択肢は悪影響をおよぼすことがあります。
多すぎる選択肢は迷いを生み、ストレスの原因となり、場合によっては合意の妨げになるのです。

スーパーマーケットでの場面を例にあげてみましょう。
北カリフォルニアのスーパーマーケット、ドレーガーズで行われた有名な実験です。
このマーケットでは、膨大な種類のオリーブ油や香辛料など、非常に豊富な食材を取り揃えています。
ここで心理学者たちが実験をしました。
具体的には、ある週では24種類のジャムを、別の週では6種類のジャムを並べて買い物客の反応を調べ、購買行動にどのような差がでるのかを実験したのです。

結果、24種類のジャムが並べられていたときは、60%の客が試食をしたけれども、6種類のときには40%しか試食しなかったそうです。
しかしながら、実際の購買行動においては逆の反応をしめしており、24種類のジャムのパターンでは3%の客が、6種類のパターンでは30%の客が購買した、という結果になりました。
つまり、あまりにも多い選択肢は、そもそも意思決定ができない、ということになりかねないのです。

この結果は他の場面にもみられており、証券会社や保険・年金での商品選択において、選択肢を多く提案することは、かえって購買意欲を減らしてしまうことにつながる例など、選択肢の多さは意思決定の質を落としてしまうことは、ほぼ間違いないであろうと言われています。

なぜ選択肢が多いと意思決定の質が下がるのか?

答えはシンプルで、単純に人の知的能力の限界を超えてしまうと、判断ができなくなるからです。
ようは、頭がオーバーロードし、働かなくなってしまうのですね。

アメリカの心理学者、ジョージ・ミラー博士の実験では、人は新しく与えられた情報については1度に7個(7個プラスマイナス2個)の情報しか覚えておけない、という結果示されています。
この7個というのは、意味をもった情報のかたまり(チャンクと言う)のことで、例えば、単純な数字情報から、何かの出来事のような情報量が多いものも、この7個の範囲でしか脳に一時ストックできないそうです。
これをもって、現代では「マジカルナンバー7」という言葉が使われています。
(なお、当然にこの話には諸説があるのですが、概ね人がぱっと覚えられる限界量としては、感覚値的にもそう外れてはいないかと思います。)

この話から、あまりにも選択肢が多いと、検討するにしても脳のワーキングメモリーが働くなってしまうことが推測されます。

別の心理学的な意見としては、選択肢が多い中で1つを選択した結果として、それ以外の方が正しかった場合のことを考えて、委縮して決断できなくなってしまう、ということも指摘されています。
後になって後悔してしまうのではないか?
周囲から、間違った決断をした結果として責められるのではないか?
そういった思考が、心理的に負担になってしまうのです。

また、こちらの記事でも解説していますが、雑事に対しても一つ一つ意思決定を行っていると、IQが低下し、生産性も大幅に低下することが示されています。
そのため、一部の一流経営者は毎日同じ服をきるなど、極力意思決定を行う数を減らしているのです。
(一説では、人が一日に行える意思決定の数には限りがあるようです。)

では、正しい意思決定プロセスは何か?

それでは、ここからは正しい意思決定のプロセスについて、科学的知見も交えて解説していきます。

① 幅広く選択肢を用意する

これまでの話とは逆行するようですが、まずは幅広く選択肢を用意しましょう。
人は与えられた数少ない情報から、偏見でもって意思決定をしたり、逆に情報を収集しようとしても「自分が欲しい情報を積極的に集める」習性があります。
偏りなく、幅広く情報を収集し、多くの選択肢をまずは取り揃えることが必要です。

② 選択肢の評価を行う~メリット・デメリット~

次に、出そろった選択肢のメリット・デメリットの評価を行います。
この際も、偏りなく評価を行うことが重要です。
できれば多くの人の意見を聞きながら、公平に実施するのが良いです。

あわせて、選択肢の前提となる情報の質に関しても評価を行うのが良いでしょう。
こちらの記事でも解説しましが、情報にはレベルがあり、純粋に「事実」なのか、推測や意見・感想が混じった「主観」なのか、それとも誰かが言っていることの「伝聞」なのかがあります。
情報の質の評価が漏れてしまうと、当然に選択肢の質も落ち、意思決定の質も落ちてしまいます。

なお、この評価の段階で重要なのが、「検討しすぎない」ことです。
ようは、ざっくりと手っ取り早く、大雑把に検討していきましょう、ということです。
といのも膨大な量の選択肢を検討していくことは、同様に膨大な時間と費用がかかってしまいます。
メリット・デメリットの評価を行いたいのではなく、意思決定を行いたいのですから、ここにリソースを割きすぎるのは、あまり健全とは言えません。

③ 選択肢の絞り込み

ざっくりとしたメリット・デメリットの評価を終えたら、その次が選択肢の絞り込みです。
この段階でいきなり「これだ!」と意思決定をするのではなく、「これは無いよね」というものをどんどん削っていくのです。
ようやく、選択肢の数が多いと意思決定の質が下がるの話とリンクしてきました。

この段階で重要なのが「自分自身にとって譲れないこと」「優先しなければいけない事項」「そもそもの目標」などを明確化することです。
何かの意思決定を行う、ということは、なにかしらのゴールがあるはずです。
そのゴールに沿った、重要な軸に沿って、「これは無いよね」というものを削っていくのです。

この絞り込みの段階では、3個程度に選択肢を絞るのがよいでしょう。
いくつかの研究では、二者択一や、選択肢が4つ以上よりも、選択肢3個程度の時が、その後の成果調査ともあわせ、もっとも質の高い意思決定ができるという結果がでています。

④ そして意思決定

3個程度に選択肢が絞られれば、メリット・デメリットの解像度の高い再評価が行えるでしょう。
すでに、今回の意思決定にあたっての重要な軸も明確になっています。
十分な調査の時間と費用も投入し、頭の中にはたくさんの情報も入っています。
あとは、これまでのビジネス経験と目指すべきゴールに沿って、勇気をもって決断するだけです。

(参考)評価にあたって点数をつけることの是非

よく、メリット・デメリットの評価にあたって、比較検討表に点数をつけることが多くあります。
これは、趣味やポリシーの世界にも突入してしまうので何とも言えないのですが、あまりおすすめできないです。
というのも、非常に恣意性が高いからです。

点数をつけるにあたっての項目の数や、抽出の方法によって、いくらでも操作ができてしまうため、結局のところ、評価者の偏りに沿った結果になってしまいがちです。

決して、絶対ダメだとは思いませんが、必ずしも良いものでは無い、という点は抑えておくべきでしょう。

(参考)メリット・デメリットについて~プロコン~

これまで、メリット・デメリットという言葉を使ってきましたが、コンサルや経営企画の世界ではあまり使いません。
では、どういう言葉を使うかというと「プロコン」という言葉を使います。
Pros & Consの略で、良い点(Pros)と悪い点(Cons)という意味です。

ようはメリット・デメリットと同じことではあるのですが、相手によっては「わかっていないな」「プロフェッショナル感に欠けるな」という風に捉えられてしまうので、一定の使い分けを行うか、そういうったことがあると素直に割り切ってどちらかを使うのかを決めてしまうのかをするのが良いでしょう。

(参考)交渉におけるテクニック

上記で自分にとって譲れない重要な軸を明確にすることの大切さを説きましたが、これは交渉にも使えます。
どういうことかと言うと、交渉における交換条件において、優先度・重要度の低いことに関して、交渉の対価として譲れることができるからです。
ここは譲れない、ここは譲って良い、を明確にしておくと、交渉はスムーズになります。

また、提案においては、言葉の使い方にも注意は必要です。
具体的にはポジティブに言うか、ネガティブに言うか、です。

①「どちらを選択すべきか?」
②「どちらを選択すべきでないか?」

この2つの問いかけ方をした場合、①の言い方ではポジティブ要素を大きく評価する傾向があり、②の言い方ではネガティブ要素を大きく評価する傾向があるのです。
ようは、「どちらを選択すべきか?」と問いかけると、ある選択肢のメリット、そのことの強み、得られる利益などを高く評価するのですが、
「どちらを選択すべきではないか?」と問いかけると、デメリット、それにより負担しなければいけないマイナスのリスク、失敗した場合の損失などを高く評価してしまいがちなのです。
それが人間心理なのです。

これは交渉時においても重要で、ポジティブ要素、ネガティブ要素のどちらを高く評価して欲しいのか?でもって、問いかけ方を変えるのは、一定考慮に値します。

ただ、最終的にこういうテクニックを使うのが良いのか、というと、個人的な意見としては微妙だと思っています。
というのも、私自身の立場からすると、相手が小賢しいテクニックを弄してきたら不快だと感じるからです。
相手が自分のことを操作しようとしている、というのは、上記のことがわかっている人にとってみれば、まあまあ不快なものです。
最終的には人と人とのぶつかりあいなのですから、正直まっすぐ正々堂々が一番なのでは?と考えています。

モバイルバージョンを終了