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生産性・業務効率化

頭しか使っていなかったとしても身体は疲れているという話

デスクワーク中心の仕事をしていて、頭しか使っていなかったとしても、身体がだるい、疲れた、という感覚を持った経験がある人は珍しくないでしょう。
その感覚、経験は実際に正しく、どうやら、頭の疲労は身体にも疲労を与えるようです。
英国ケント大学で行われた研究は、頭が疲れた被験者は身体的持久力が低下していることを示しました。

頭の疲労と身体の疲労の研究

英国ケント大学において、頭の疲労と身体の疲労の関係を調べる研究が行われました。

https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/japplphysiol.91324.2008

16人の被験者を対象に、90分間の認知タスクを行うグループ、もしくは90分間のドキュメンタリー番組の視聴を行うグループ(対照群)にわけて、その後の持久力を測定する調査が行われました。
持久力の測定には自転車が用いられました。

その結果、認知タスクを行い精神的に疲労したグループ(頭の疲労)において、対照群に比較して持久力が約85%にまで低下していたことが示されました。

この際、心肺機能や筋力などには影響がないことが示されました。
つまり、頭が疲労すると、なぜか身体も疲労していたということです。

アンケートにおいて、認知タスクを行ったグループは、持久力測定において、運動中の“努力感”が有意に高かったことも示されています。

このことは、頭の疲労が「頑張ろう」とする気力に影響を及ぼし、身体的な疲労感を覚える、ということを意味します。

疲れた帰ってきた日に、何もする気力がわかないのは必然、ということです。

早め早めの休憩を

別の研究では、たまりにたまった疲労は簡単に抜けないことが示されています。

研究では、95人の労働者を対象に、5日間の勤務中にとられた休憩について、その特徴が調べられました。

その結果、シフトの早い時間帯に休憩をとった場合、エネルギー回復の効率が高く、その後の仕事のパフォーマンスが高くなることが示されました。

また、効率の良い休憩により得られた仕事に向かうエネルギーは、健康面の改善、精神的疲労の軽減、仕事満足度の向上、シチズンシップの向上(組織のメンバーを支援しようという行動)等のプラスの影響を及ぼすことがわかりました。

なお、休憩の時間と頻度について、頻繁な短い休憩 > 頻繁でない長い休憩 > 頻繁でない短い休憩 の順でエネルギー回復の効率が変わることも示されました。

可能な限り、疲れた、と感じる前に早めに休憩を、そして休憩の頻度をあげることが重要です。

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生産性・業務効率化

人のために時間を使うと心の余裕が生まれるという話

人の時間は1日24時間で共通です。これは何をどうしようが動かない現実です。
しかし、人が時間をどのように受け止めるのか、つまりは主観的な時間の豊かさについては増やすことができるかもしれません。
キーは「人のために時間を使う」点にあります。

人のために時間を使うと心の余裕が生まれる

複数大学により次の論文を発表しています。

内容を端的に言うと、「人のために時間を使うと心の余裕が生まれる」というものです。

時間が足りないと感じる一般的な問題を解決するために、4つの実験が行われ、それにより直観に反するソリューションが提示されました。
それは「自分の時間の一部を人のために使うこと」でした。
1日24時間という客観的な時間を増やすことはできませんが、主観的な時間の豊かさは増やすことができるかもしれない、ということが明らかになったのです。
人のために時間を使うことが、自分の時間の豊かさに与える影響は、自己効力感の向上によってもたらされます。
つまり、人のために時間を使うことによって、人々は忙しいスケジュールの中でも、将来の活動にコミットしたいと思えるようになるのです。

人のための意思決定の方がクリエイティブになれる

他にも人のための意思決定の方が、自分のための意思決定よりクリエイティブになれる、という研究もあります。

難しい、クリエイティビティが必要な課題を解くとき、自分軸で考えるか、他人のために考えるか、このシチュエーションにおいて、他人のために考える方が答えにたどり着ける傾向が強かったのです。


いわゆる「聖書」の一節に「一番先になりたい者は、すべての人の最後となり、すべての人に仕える者になりなさい。」という言葉があります。

他人のために考え行動すること、が幸福感にもパフォーマンスにもポジティブな影響を与えるという、昔からある知恵なのかもしれません。

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生産性・業務効率化

ガムを噛むと認知機能や集中力が高まるという話

一流のスポーツ選手がガムを噛んでいる姿はありふれた光景です。
いわく、集中力が高まるから、ということなのですが、どうやらそれは科学的に正しいようです。
複数の研究により、ガムを噛むことにより、認知機能や集中力が高まることが示されています。

https://www.wired.com/2011/11/the-cognitive-benefits-of-chewing-gum/

ガムと認知機能の関係

セントローレンス大学では、159人の学生を対象に、ガムと認知機能の関係を調べた実験が行われました。

内容は、半分の学生はガム(無糖のものと加糖のもの)を噛むグループ、残り半分は何も与えられない対照群として設定し、難しい論理パズルを解くなどの認知機能を測るものです。

実験の結果、テスト前に5分間ガムを噛んだグループは、対照群と比較してほとんどのテストで有意にテストの結果が優れていたことが示されました。

ガムを噛むと認知機能が向上する

実験では6つのテストが行われ、5つのテストで認知機能の向上が見られ、残り1つの例外は「動物」などの与えられたカテゴリーからできるだけ多くの単語を挙げるように指示された「言語能力」を測るもののみでした。

噛むガムは無糖でも良い

なお、ガムが無糖であるか、加糖であるかは関係がなく、ガムに含まれている糖分が認知機能に与える影響ではないことが示されています。

つまり、ガムが認知機能を向上させる理由は、咀嚼により誘発される覚醒作用だ、ということです。

ただし、効果は20分間のみ

実験では、ガムを噛むことにより向上する認知機能について時間経過の影響も調べられています。

その結果、認知機能の向上はガムを噛んだ後の約20分間に限定されることがわかりました。

20分が経過した後は、ガムを噛んでいない対照群と同じ成績に落ち着いたとのことです。

ガムを噛むのは、大事な仕事や難しい仕事がある直前5分間とし、バシッと集中して物事にあたるのが吉と言えるでしょう。

タスク実行中に水を飲むとパフォーマンスが向上する、という研究もあります。
うまく組み合わせると、高いパフォーマンスを維持し続けられるかもしれません。

他にも集中力の向上やメンタルの安定効果がある

他にもガムを噛むことにより、様々なポジティブな影響があることが報告されています。

例えば、コベントリー大学で行われた研究では、ガムを噛んでいる人は眠気が劇的に減少し、集中力が向上する効果があること。

カーディフ大学で行われた研究では、、明らかに不快で集中力が妨げられる環境に置かれていても、ガムを噛むことによりメンタルが安定すること、が示されました。

ガムをくちゃくちゃ噛んでいる光景は、人によっては不快に感じるかもしれませんが、その効果の程を考えると一概に切って捨てるのはナンセンスと言えるかもしれません。

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マネジメント・リーダーシップ

人は褒められるとパフォーマンスが向上し問題解決能力があがるという話

世の中には、褒めると調子にのってつけあがるからパフォーマンスが落ちる。だから褒めない。
という人が意外にいるのですが、これは間違いです。
その理由は、褒められるのが嫌いな人は基本的にはいないこと、人は褒められるとパフォーマンスが向上し問題解決能力があがるからです。

「褒め」とパフォーマンスの関係の研究

ハーバード・ビジネス・スクールは、「褒め」とパフォーマンスの関係の研究を行いました。

https://www.thecut.com/2015/09/please-tell-me-about-a-time-i-was-awesome.html

実験では、75人の被験者を対象に、問題解決能力を測るテストが行われました。

半分の被験者については、友人や家族、同僚に、被験者を褒める内容や場面について書いてもらいました。
そして、テストを行う直前に、そのテキストが提示されました。

残り半分の被験者については、特になにもせずに、そのままテストを行ってもらいました。

なお、行うテストは、「ドゥンカーのロウソク問題」と言われる、古典的な問題解決能力を測るための認知能力テストです。

ドゥンカーのロウソク問題:このテストでは、被験者に1つの問題が与えられる。それは、コルクボードの壁にロウソクを固定し、点火するというものである。ただし、溶けたロウが下のテーブルに滴り落ちないようにする必要がある。この問題を解決するにあたり、被験者はロウソク以外に、1束のマッチ、1箱の画鋲だけを使うことが許される。

ロウソク問題の解答:箱から画鋲を取り出して画鋲で箱をコルクボードに固定し、ロウソクを箱の中に立ててマッチで火をつけるというのが答えである。機能的固着のコンセプトが予測するところによると、被験者は箱について画鋲を入れるための道具としてのみ見て、そこに問題解決に有効活用できる別個の機能要素があるとはすぐには気付くことができない。

Wikipedia「ロウソク問題」より

人は褒められるとパフォーマンスが向上する

テストの時間制限は3分で、実験の結果、時間内に問題を解けたのは「褒められた」グループでは約51%、対照群である「褒められていない」グループでは約19%にとどまる形となりました。

つまり、人は褒められるとパフォーマンスが向上するのです。

この傾向は他の実験でも示されており、「良い状態の自分」を想起できたグループは、忍耐力が向上したり、スピーチを問題なくこなすなど冷静さを保つ能力が向上することがわかっています。

人は褒めた方が良い

これらのことから、基本的には人は褒めた方が良い、ということがわかります。

褒められることが嫌いな人は、多くの場合いないことも容易に想像できるでしょう。
実際、(それがどこまで健全かはともかく)人間関係を長く続けるためには、否定的コミュニケーションより、肯定的なコミュニケーションを重視した方が良い、とされています。

また、人は自分にとって都合の悪い、耳に痛いフィードバックについては正確性に欠ける、信頼できないものと判断する傾向があるという研究もあります。
つまり、成功の要因は個人に起因するものであり、失敗の要因は外的なものであると、以前よりも強固に感じるようになってしまう傾向があるのです。

ビジネスでも育児でも。

もちろん、褒めるだけではダメなシチュエーションもあるでしょうが、褒めることを重視してみると、非常に良い結果が返ってくるでしょう。

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生産性・業務効率化

自然に触れ合うと認知機能やクリエイティビティが向上するという話

現代は多くの人が都市部に住むようになり、自然は身近なものではなくなりました。
自然には人の緊張した神経を落ち着かせ、疲労を癒す効果があるとされています。
また、どうやら自然に触れ合うと認知機能やクリエイティビティが向上するという効果もあるようです。

Mom Was Right: Go Outside

自然に身を置くとクリエイティビティが向上する

カンザス大学で行われた研究では、人里離れた場所でのハイキングがクリエイティビティにどのような効果を与えるのか、調査が行われました。

その結果、バックパッカーにトレイルに入る前と入った後で、クリエイティビティに関するテストを行った所、テストの結果が約50%も向上したことが示されました。

自然は、虫や温度・湿度等、不快に感じる環境ではあるのですが、脳にはポジティブな影響を与えるようです。

研究では、自然に身を置いて3日間で、ポジティブな影響がピークになる、としています。

緑の中を散歩するとメンタルが回復し、認知機能も向上する

他の研究でも同様の効果が示されています。

ミシガン大学で行われた研究では、大学生にGPS受信機を装着した状態で散歩をしてもらいました。

樹木園を歩く学生も入れば、繁華街を歩く学生もいました。

その後、複数の心理テストを受けてもらいました。

その結果、自然の中を散歩した人は、メンタルがポジティブに向上し、注意力や短期記憶の点数が有意に向上していることが示されました。

短い時間でも良いので緑を眺めると休憩になる

別の研究では、短い時間でも緑を眺めるだけで生産性が向上する、という結果も示されています。

これらの研究は、都市部に身を置いている人に限定された効果かもしれません。

しかし、現代人の多くは大なり小なり自然と身近でない人の方が多いでしょう。

そんな現代人にとって、定期的な旅行やちょっとした散歩、もしくはほんのちょっとの短い時間の休憩でも良いので、自然に触れ合うことは様々なポジティブな影響があるということです。

「サバンナ理論」によると、人間は太古の昔から基本的な性質は変わっていない、とされています。

サバンナ理論:人間の脳は、はるか昔アフリカのサバンナで暮らしていた頃から基本的に変わっておらず、現在でも、サバンナになかったものはうまく認識できないという。
現代人の、テレビやポルノへの反応にも、この原則が当てはまる。テレビについては、画面に映っている映像がつくりものに過ぎないことが、われわれにはわからない。サバンナにはテレビなどなかったからである。
この原則を知能にあてはめたものが、「サバンナーIQ相互作用説」である。それによれば、大昔の祖先の環境(サバンナ)に存在しなかったものをどれだけ理解できるかで、知能の高低を説明することができる。
音楽を例に挙げれば、楽器の演奏(とくにクラシック)に惹かれる人は、知能が高い傾向にある。サバンナには楽器などなかったからである。音楽の起源は「歌」(声を出すこと)だったと考えられている。
また書かれた文章、活字に惹かれる人も同様である。そのほか、さまざまなことが、この説によって説明されるという。
Wikipedia「サトシ・ナカザワ」より

そして、認知能力が低い人にとって都市環境はストレス負荷が高い、とされている。

そのように考えれば、現代社会がデフォルトで、人にとってストレスフルであろうことは当然と言えます。
意識的に自然の中に身を置くことを意識すると良いでしょう。

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生産性・業務効率化

タスク実行中に水を飲むとパフォーマンスが向上するかもしれない

仕事中に何かしらの飲み物を横においている人は珍しくないでしょう。
このことは単純にのどが渇いた時の飲み物、という意味以上にパフォーマンス向上効果があることが一部の研究で示されています。
どうやら、タスク実行中に水を飲むとパフォーマンスが向上するかもしれないのです。

テストの成績と飲み物の関係を調べた研究

次の研究では、学生を対象に飲み物を飲む学生と飲まない学生で、テストの成績に差が出ることを示しました。

https://www.sciencedaily.com/releases/2012/04/120417221621.htm

研究では、学生447人を対象に行われました。
71人は基礎学年、225人は1年生、151人は2年生です。
学生の内、水のボトルを持ってテストに臨んだ人は約25%でした。

そして、学生のテストの点数と、飲み物の持ち込み状況について関連付けて分析が行われました。

なお、研究では「テストの点数が高い優秀な学生は飲み物を持ち込む傾向がある」という可能性を排除するために、学生の成績に関して均一化して調査が行われています。

テストに飲み物を持ち込むと成績が上がる

調査の結果、飲み物を持ち込んだ学生は、持ち込んでいない学生と比較して平均4.8%、高い得点を得られました。

学年別には高学年ほど飲み物を持ち込む傾向があり、2年生は約31%、基礎学年と1年生は約21%の持ち込み率でした。

成績の向上幅としては、基礎学年が最大約10%、1年生では5%、2年生では2%の改善が見られました。

つまり、若年層ほど改善効果が高い、ということが示されています。

飲み物を飲むと成績が向上するのはなぜか?

飲み物を飲むと成績が向上するのはなぜなのでしょうか?

研究者は、次のような要因を指摘しています。

  • 水分を摂取することで思考機能に生理的な影響を与え、その結果としてテストの成績が向上した
  • 水分を摂取することで、テストの成績に悪影響を与えるネガティブな不安感が和らいだ

社会人にも有用なはず

上述の研究は学生に対して行われたものですが、社会人にも有用な知見と考えられます。

例えば会議中や締め切りが迫っているタスクの遂行中を想定すると、適切な水分摂取を行えれば、渇きによるパフォーマンス低下を防げるでしょうし、不安感が和らげば仕事に集中ができるようになるはずです。

特に、経験の浅い社会人や、入社したばかりの人において、効果があると考えるのは不自然ではありません。

実際、別の研究では甘い飲み物を飲むと攻撃性が和らぐ、ということが示されています。

水分摂取は非常に安価で手軽な方法です。
会議中や仕事中など、飲み物を持ち込むことを従業員の判断に委ねるのではなく、積極的に推奨するのはいかがでしょうか。

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生産性・業務効率化

空腹だと判断力が落ちて安易な意思決定をするようになるという話

疲労やストレス睡眠不足が意思決定やリスク判断を歪めて、ネガティブ面を軽視し、ポジティブな方向に走りがちにしてしまう、ということは知られています。
そして、疲労の一種でもあろう空腹についても同様で、判断力が落ちて安易な意思決定をするようになってしまうことが示されています。
今回は非常に恐ろしい研究を紹介します。

空腹と裁判官の判断の関係

次の論文では、司法判断に与える外部要因について研究がされています。

https://www.pnas.org/content/108/17/6889

まず、このグラフを見てください。

こちらのグラフは、10ヶ月間にイスラエルの刑務所で行われた1,112件の仮釈放審査会の結果をまとめたものです。
縦軸は、裁判官が仮釈放を認めたケースの割合で、横軸は、1日の中で審問が行われた順番を示しています。
点線は、裁判官が食事休憩をとったタイミングを示しています。

囚人が仮釈放される確率は、はじめは65%程度と高いのですが、数時間後には劇的に低下していきます。
そして、食事休憩から戻ってくると、再度確率があがり、また時間を置くと低下していく、ということが明らかです。

囚人の人生は、1日のうちのどの時間帯で心理されたのかに左右されてしまう、ということであり、もっと言うと、裁判官のお腹の空き具合に左右されてしまう、ということです。

空腹以外の要因の影響では無い模様

この結果は、空腹以外の別の要因の可能性もあります。

しかしながら、心理に携わったのは平均22年の裁判官経験を持つベテランであり、また研究は10ヶ月間の期間に渡った調査を集計したものです。
集計対象は、研究対象国の国内で行われた仮釈放申請の40%に相当し、極端な事例を集めたものではないことも指摘できます。
(なお、各裁判官は1日14件から35件の案件を検討し、1つの判断に約6分を費やします。食事休憩は2回であり、審理は1日3回に分けて行われます。)

また、再犯の可能性がある囚人や、特定の更生プログラムに参加していない囚人には仮釈放を認めない傾向があるなど、適切に審理が行われているという印象も持てます。

その他にも、性別や民族、罪の重さ等々の要因の影響も見られませんでした。

つまり、裁判官は全ての囚人を平等に扱っていたのです。
空腹という要因を除いて。

お腹が空くと人は簡単な選択肢を取るようになる

心理学者は、この現象について簡単な原理により説明ができる、としています。

意思決定を繰り返す作業は精神的リソースを消耗させます。
そして、判断回数が多ければ多いほど消耗し、最も簡単な選択肢を選ぶようになります。
つまりは仮釈放申請の却下です。

この消耗は食事休憩により一定回復させることができるため、休憩から戻った後は、仮釈放を認める確率が向上するのです。

優秀な裁判官も所詮は人間であり、人間である以上、心理的バイアスから逃れきることはできません。

人である以上、疲れたら判断ミスをする。

そのことを意識する必要があるでしょう。

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生産性・業務効率化

仕事中、適度にネットサーフィンをする方が生産性を高く保てる、という話

仕事中にネットサーフィンをするのは“サボり”であるとみられるのが一般的です。
しかしながら、人の集中力には限界があり、業務時間中全てを集中して仕事をするのは不可能です。
ある研究によると、適度にネットサーフィンをする方が生産性が高い、という結果が示されました。

適度にサボることが生産性に与える影響を調べる実験

次の記事で、適度にサボることが生産性に与える影響について調べた実験が紹介されています。

https://www.wsj.com/articles/SB10001424053111904070604576518261775512294

研究では96人の学生を被験者に、休憩グループ、ネットサーフィングループ、対照グループに分けて簡単な課題を行わせる実験を行いました。

課題は20分間、サンプルテキストの中にある「e」の文字をできるだけ多く強調表示にするというものです。

20分の課題後、10分間、別のアクションが差し込まれます。
休憩グループはネットサーフィン以外の好きなことを、ネットサーフィングループはネットサーフィンを、対照グループは別の簡単な課題を行ってもらい時間を過ごしてもらいました。

その後、再度10分間、文字を強調表示するタスクを再開してもらいます。

ネットサーフィンを行うと生産性が高くなる

上述の実験の結果、他の2つのグループより、ネットサーフィングループの方が、タスクの生産性が有意に高く、精神的な疲労感や退屈感も少ない、ということが示されました。

つまり、ネットサーフィンは、何かしら個人的な別のことをして休憩時間を過ごしたり、全く休まずに働き続けるより、高いリフレッシュ効果がある、ということです。

適度にサボることを推奨した方が良い

別の様々な研究において、これまで行っていたこととは別の何かを行うと生産性が回復する、という結果が支持されています。

上述の研究は、これらの事実を支持するものと言えるでしょう。

とりあえず言えることは、仕事中にネットサーフィンを行うことは必ずしも悪いことではない、ということです。

むしろ本業に差し支えなければ、推奨する位の方がパフォーマンスを高く保つ可能性があります。

日本人は真面目が過ぎるきらいがありますので、適度にサボる、ということを覚えると良いでしょう。

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生産性・業務効率化

思いついたアイデアは移動をすると何故すぐに忘れてしまうのか?という話

何かアイデアを思いついて、そのアイデアを書き留めよう、実行しようとして部屋を移動します。
すると何故か、さっき思いついたばかりのアイデアを忘れてしまう。
そんな経験をしたことがある人も多いでしょう。
何故、このような現象が起きるのでしょうか?

バーチャルリアリティーにおける記憶保持の実験

記憶というものは、本の中の情報のように、連続した章やエピソードとして、脳に記録されます。

そのため、今現在のエピソード記憶は、過去のエピソード記憶よりも記憶が保持されやすく、また思い出しやすくなるのです。

この点について、リンク先の記事でいくつかの実験が紹介されています。

最初に紹介された実験では、部屋を移動するたびに新しい記憶のエピソードがつくられ、その結果として、前にいた場所での記憶を思い出すことが難しくなる、ということについて研究が行われています。

実験はバーチャルリアリティー空間で行われました。

数十人の被験者を対象に、モニターに表示されたバーチャルリアリティー空間の中を移動してもらいました。
VR空間には大小55の部屋があり、小さな部屋にはテーブルが1つ、大きな部屋には両端に計2つずつのテーブルが置かれています。

実験では、テーブルに置かれている物を拾い、部屋の中や次の部屋に移動しながらテーブルに置かれていた物と交換していく、というアクションが繰り返されました。

テストでは、新しい部屋に入るタイミング、もしくは大きな部屋を横切るタイミング(次のテーブルに移動するタイミング)で行われ、画面上に表示された物の名前を見て、それが今持っている物なのか、それとも今置いた物なのか、思い出してもらいます。

その結果、同じ部屋の中を移動するよりも、次の部屋に移動した場合の方が記憶力が低下することがわかりました。

つまり、次の部屋に移動したタイミングで、新しいエピソード記憶により上書きされていく、ということです。

リアル空間における記憶保持の実験

それではリアル空間ではどうでしょうか?

2つ目の実験では、現実の空間に、複数の部屋とテーブル、様々な物を設置し、VR空間と同様の環境が作られました。

そして、物を持って移動、交換しまた移動、というアクションが繰り返されました。
自分が今現在持っている物は箱の中に隠れており見えない状況です。

そしてVR空間と同様に、時折、持っている物や直近置いた物について、記憶のテストがされました。

その結果、部屋の中を移動するよりも、別の部屋に移動する時の方が記憶力が低下する、という事象が再現されました。

アイデアを思い付いたらすぐにメモを取ろう

なお、前の部屋に戻った際の記憶についてもテストされ、同様に記憶力の低下が起きることが示されています。
これは、前の部屋に戻った時に過去のエピソード記憶を想起するのではなく、部屋を移動するたびに、例えそれが前にいた部屋であっても新しいエピソード記憶が作られていく、ということを意味します。

人の記憶力というものは非常にあやしいものということがよくわかる研究です。

結論として言えることは、アイデアを思い付いたらすぐにメモを取ろう、という所でしょうか。

なお、長時間労働を行うと記憶力が低下する、という研究もあります。
これは睡眠により記憶の定着が行われない状態が続くとエピソード記憶がたまりすぎて脳が混乱するからかもしれません。

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仕事と健康,運動

運動はエネルギー感、クリエイティビティ、生産性を向上させるという話

運動を行うことによる健康へのポジティブな影響は広く知られています。
また、運動は認知症の改善等、それ以外の様々な事柄にポジティブな影響を与えます。
今回は、運動がエネルギー感(活力)、クリエイティビティ(創造性)、生産性を向上させるという研究を紹介します。

運動がエネルギー感を向上させるという研究

まずは運動がエネルギー感を向上させるという研究です。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18277063/

従前から何かしらの疾患を抱えていたり、原因は不明なれど疲労症候群として診断の基準にあてはまっている人たちを対象とした運動実験により、疲労感が改善することは知られていました。

この論文では、診断基準には達していないけれども原因不明な疲労感を訴える人たちを対象とした運動実験です。

実験では座り仕事の多い若年層36名の被験者を対象に、6週間の運動実験を実施し、エネルギー感(活力)と疲労感の気分について自己申告によるスコアが取得されました。
実験では中強度の運動群、低強度の運動群、運動を行わない対象群に分けられました。
6週間の間、週3回、合計18回運動を行うためのトレーニングルームを訪れてもらい、有酸素トレーニングを実施されました。

結果、運動トレーニングの結果は、エネルギー感が中強度でも低強度でも向上していたことがわかりました。
また、エネルギー感と疲労感は、それぞれ独立して変化することもわかりました。

運動がクリエイティビティを向上させるという研究

次はクリエイティビティ(創造性)に運動が与える影響の研究です。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1332529/

こちらの実験では63名の被験者を対象に、運動(エアロビクス)を実施する群と、ビデオ鑑賞(ニュートラル群)を行う群に分けて、クリエイティビティを測るテストが実施されました。
(クリエイティビティを測るテストでは、トーランステスト、というものが実施された。)

結果、運動後にはポジティブな気分が大きく有意に増加し、一方対照群ではポジティブな気分が有意に減少したことが示されました。
クリエイティビティについては、いずれの条件でも向上したとのことで、運動により気分とクリエイティビティがそれぞれお独立して改善されることがわかりました。

いずれにせよ、運動によりクリエイティビティ(創造性)が向上するのです。

運動が生産性を向上させるという研究

最後は生産性の向上の研究です。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21785369/

177人の被験者を対象に、週の労働時間を2.5時間短縮し運動を行う群、同様の短縮条件で運動を行わない群、何も介入しない対照群の3つのグループに分けて、実験が行われました。
生産性については自己申告により測定されました。

その結果、週の労働時間を2.5時間短縮し運動を行った群について、自己評価生産性が向上、つまりは仕事量の増加、仕事のしやすさの向上が行われ、また病気欠勤の減少が確認されました。

つまり、労働時間を短くし運動を行う時間を確保することにより、より高いレベルの生産性を得られる、ということです。


結論として、運動はエネルギー感、クリエイティビティ、生産性を向上させるのです。

仕事をよりエネルギッシュに効率的にこなしたい、仕事関係なく日々を楽しみたい、という人にとって、運動を行わない理由は無いでしょう。

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