カテゴリー
人事・総務

(取締役会議事録の書き方)定時株主総会を招集する場合

ここでは取締役会議事録の「定時株主総会を招集する場合」の書き方例について解説します。
IPO進行上、適法な招集と実際の取締役会運営は、必須です。
取締役会運営上も、議事録に記載がある通りに進行するようにしましょう。

取締役会議事録テンプレート

取締役会議事録

下記の通り、取締役会を開催した。

開催日時:YYYY年MM月DD日hh時mm分
開催場所:当会社の本店会議室
出席者:代表取締役 hogehoge(議長兼議事録作成者)
    取締役 hogehoge
        hogehoge
        hogehoge
        hogehoge
    監査役 hogehoge
        hogehoge
        hogehoge

欠席者:取締役 hogehoge

定刻hh時mm分、代表取締役hogehogeは定款の定めにより議長となり、開会を宣した。

報告事項

① 月次業績報告
議長より別紙の通り、〇月度の月次業績報告があった。
(中略)
.....など詳細な説明があった。

(意見、質疑応答の要旨)

ア.質問内容を記載(取締役 hogehoge)
イ.回答を記載(代表取締役 hogehoge)
ウ.以下略
エ.
オ.

② hogehogeの件
(略)

(意見、質疑応答の要旨)

特になし

書き方のポイント
ここまでは議事録テンプレート部分です。
以下の決議事項からが、定時株主総会を招集する場合の書き方例になります。

決議事項

第〇号議案 第〇回定時株主総会招集の件

議長より、当会社第〇回定時株主総会に関し、以下の通り招集したい旨の説明があった。
また、株主総会参考書類に記載すべき事項については、別紙の招集通知のとおりとし、軽微な修正については代表取締役に一任いただきたい旨の説明があった。
議長がその賛否を議場に諮ったところ、本議案は満場一致をもって原案どおり承認可決された。

日時 YYYY年MM月DD日hh時mm分
場所 当会社の本店会議室
会議の目的事項

報告事項
1 第〇期(YYYY年MM月1日からYYYY年MM月DD日まで)事業報告の内容、連結計算書類の内容ならびに会計監査人および監査役会の連結計算書類監査結果報告の件
2 第〇期(YYYY年MM月1日からYYYY年MM月DD日まで)計算書類の内容報告の件

決議事項
第1号議案 〇〇〇〇の件
第2号議案 〇〇〇〇の件
(以下略)

(意見、質疑応答の要旨)

(省略)

書き方のポイント

取締役会設置会社においては、株主総会を招集したい場合、取締役会において決議します。
また、株主総会の事項についても取締役会の決議で決定します。
通常、送付する招集通知を別紙として添付することが多いです。
ここの手続きが漏れている場合、最悪、株主総会の決議取消しの訴えの事由となりますので、注意が必要です。

軽微な修正については、代表取締役、つまりは事務局側に一任する形としています。
これは、招集通知に修正が入った場合、その都度、修正の決議をとらなければいけない事態になるのを避けるためです。
IPO進行上、取締役会で決議した招集内容と、実際の招集内容に差異がある場合、望ましくない状況になる場合があります。
会社法上、株主総会の目的事項については当該事項を定める、とされているためです。

以上をもって本取締役会の議事を終了したので、議長は閉会を宣し、hh時mm分に散会した。

上記の決議を明確にするため、この議事録を作成し、議長並びに出席取締役及び監査役は記名押印する。

YYYY年MM月DD日

株式会社〇〇〇〇 取締役会

議長 代表取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     監査役 hogehoge 印

     監査役 hogehoge 印

     監査役 hogehoge 印

関連法令等

会社法
(株主総会の招集)
第二百九十六条 定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
2 株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
3 株主総会は、次条第四項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。

会社法
(株主総会の招集の決定)
第二百九十八条 取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主総会の日時及び場所
二 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
三 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
(中略)
4 取締役会設置会社においては、前条第四項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第一項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。

会社法施行規則
(招集の決定事項)
第六十三条 法第二百九十八条第一項第五号に規定する法務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
(以下略)

会社法
(株主総会等の決議の取消しの訴え)
第八百三十一条 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
二 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
三 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
2 前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。

カテゴリー
人事・総務

取締役会議事録テンプレート,書き方のポイント

ここでは取締役会のテンプレートを提示すると共に、書き方のポイントについて解説します。
近年はガバナンス強化が求められると共に、特にIPO準備企業においては、実効性のある取締役会運営が必要です。
取締役会議事録の充実は、その証明にもなるので、きちんと内容を理解し記載するようにしましょう。

取締役会議事録テンプレート

取締役会議事録

下記の通り、取締役会を開催した。

開催日時:YYYY年MM月DD日hh時mm分
開催場所:当会社の本店会議室
出席者:代表取締役 hogehoge(議長兼議事録作成者)
    取締役 hogehoge
        hogehoge
        hogehoge
        hogehoge
    監査役 hogehoge
        hogehoge
        hogehoge

欠席者:取締役 hogehoge

書き方のポイント

ここは定型部分なので、基本的には使いまわしで日時だけ更新すれば良いでしょう。
取締役会議事録には、取締役会が開催された日時と場所の記載が必要です。
元号記載より西暦記載の方が間違い等が減るので良いです。
開催場所は、基本的には本社の会議室になるかと思いますが、仮に社外で実施する際には所在地を明確にする必要があります。

欠席者については記載する必要がありませんが、定足数を充たしているか否かは重要なので、全ての役員を記載し、出席者の欄と欠席者の欄にわける方が利便性は高いでしょう。

なお、途中退席をした取締役や監査役がいる場合には、どの報告事項・決議事項のタイミングで途中退席をしたのか?は記載する必要があります(定足数は、各議案毎に充足している事が求められるため)。

定刻hh時mm分、代表取締役hogehogeは定款の定めにより議長となり、開会を宣した。

書き方のポイント

議事の進行について記載する必要があります。
議長を別に選出した場合には次のような記載が必要です。

「出席取締役の互選によりhogehogeが議長となり開会を宣し、議事に入った。」

また、仮に議長が途中で交代した場合には次のような記載が必要です。

「定刻hh時mm分、代表取締役hogehogeは定款の定めにより議長となり、開会を宣した。なお、第〇号議案hogehogeの件いついては、議長である代表取締役hogehogeが_____のため、取締役hogehogeが議長となり、議事を進行した。」

____の部分は、特別利害関係人であるため、というように理由を明確に記載します。

役員全員がWEB会議参加の場合の書き方例については、下記を参照してください。

報告事項

① 月次業績報告
議長より別紙の通り、〇月度の月次業績報告があった。
(中略)
.....など詳細な説明があった。

書き方のポイント
取締役会議事録は、本質的には会社法および法務省令等に規定された記載事項が、確実かつ漏れなく記載されていることが必要です。
多くの会社はルーズな場合が多いですが、IPO準備企業においては、簡潔に要旨では良いものの、どのような説明があったのか、きちんと記載する必要があります。
テンプレートだけが毎回記載されている場合、取締役会の実効性や形骸化を懸念されます。
とは言え、実務面での簡素化のため、別紙の活用は良いでしょう。

(意見、質疑応答の要旨)

特になし

② hogehogeの件
(略)

(意見、質疑応答の要旨)

ア.質問内容を記載(取締役 hogehoge)
イ.回答を記載(代表取締役 hogehoge)
ウ.以下略
エ.
オ.

書き方のポイント
上述に加え、取締役会の中で、どのような説明があったのか、だけでなくどのような議論があったのか、を簡潔に要旨では良いものの、きちんと記載する必要があります。
ここは抜けている会社も多いですが、IPO準備企業では(意見、質疑応答の要旨)というような欄を設けて、要旨を記載するようにしましょう。

決議事項

① hogehogeの件
議長の指名により、取締役hogehogeより、hogehogeの件について説明した。
(中略)
議長がその賛否を議場に諮ったところ、本議案は満場一致をもって原案どおり承認可決された。

(意見、質疑応答の要旨)

(省略)

以上をもって本取締役会の議事を終了したので、議長は閉会を宣し、hh時mm分に散会した。

上記の決議を明確にするため、この議事録を作成し、議長並びに出席取締役及び監査役は記名押印する。

YYYY年MM月DD日

株式会社〇〇〇〇 取締役会

議長 代表取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     監査役 hogehoge 印

     監査役 hogehoge 印

     監査役 hogehoge 印

押印行為を電子署名で行う場合

下記文言を記載し、押印欄は省略する。
「上記議題及び決議内容を明確にするため、この議事録は電磁的記録をもって作成し、議長並びに出席取締役及び監査役は電子署名を付す。」

関連法令等

会社法施行規則
(取締役会の議事録)
第百一条 法第三百六十九条第三項の規定による取締役会の議事録の作成については、この条の定めるところによる。
2 取締役会の議事録は、書面又は電磁的記録をもって作成しなければならない。
3 取締役会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。
一 取締役会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)
二 取締役会が法第三百七十三条第二項の取締役会であるときは、その旨
三 取締役会が次に掲げるいずれかのものに該当するときは、その旨
イ 法第三百六十六条第二項の規定による取締役の請求を受けて招集されたもの
ロ 法第三百六十六条第三項の規定により取締役が招集したもの
ハ 法第三百六十七条第一項の規定による株主の請求を受けて招集されたもの
ニ 法第三百六十七条第三項において準用する法第三百六十六条第三項の規定により株主が招集したもの
ホ 法第三百八十三条第二項の規定による監査役の請求を受けて招集されたもの
ヘ 法第三百八十三条第三項の規定により監査役が招集したもの
ト 法第三百九十九条の十四の規定により監査等委員会が選定した監査等委員が招集したもの
チ 法第四百十七条第一項の規定により指名委員会等の委員の中から選定された者が招集したもの
リ 法第四百十七条第二項前段の規定による執行役の請求を受けて招集されたもの
ヌ 法第四百十七条第二項後段の規定により執行役が招集したもの
四 取締役会の議事の経過の要領及びその結果
五 決議を要する事項について特別の利害関係を有する取締役があるときは、当該取締役の氏名
六 次に掲げる規定により取締役会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要
イ 法第三百六十五条第二項(法第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)
ロ 法第三百六十七条第四項
ハ 法第三百七十六条第一項
ニ 法第三百八十二条
ホ 法第三百八十三条第一項
ヘ 法第三百九十九条の四
ト 法第四百六条
チ 法第四百三十条の二第四項
七 取締役会に出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主の氏名又は名称
八 取締役会の議長が存するときは、議長の氏名
4 次の各号に掲げる場合には、取締役会の議事録は、当該各号に定める事項を内容とするものとする。
一 法第三百七十条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた場合 次に掲げる事項
イ 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
ロ イの事項の提案をした取締役の氏名
ハ 取締役会の決議があったものとみなされた日
ニ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
二 法第三百七十二条第一項(同条第三項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により取締役会への報告を要しないものとされた場合 次に掲げる事項
イ 取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
ロ 取締役会への報告を要しないものとされた日
ハ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

会社法
(取締役会の決議)
第三百六十九条 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
2 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
5 取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。

会社法
(議事録等)
第三百七十一条 取締役会設置会社は、取締役会の日(前条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた日を含む。)から十年間、第三百六十九条第三項の議事録又は前条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその本店に備え置かなければならない。
2 株主は、その権利を行使するため必要があるときは、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 前項の議事録等が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 前項の議事録等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
3 監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社の営業時間内は、いつでも」とあるのは、「裁判所の許可を得て」とする。
4 取締役会設置会社の債権者は、役員又は執行役の責任を追及するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該取締役会設置会社の議事録等について第二項各号に掲げる請求をすることができる。
5 前項の規定は、取締役会設置会社の親会社社員がその権利を行使するため必要があるときについて準用する。
6 裁判所は、第三項において読み替えて適用する第二項各号に掲げる請求又は第四項(前項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の請求に係る閲覧又は謄写をすることにより、当該取締役会設置会社又はその親会社若しくは子会社に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、第三項において読み替えて適用する第二項の許可又は第四項の許可をすることができない。

会社法
(取締役会への出席義務等)
第三百八十三条 監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。ただし、監査役が二人以上ある場合において、第三百七十三条第一項の規定による特別取締役による議決の定めがあるときは、監査役の互選によって、監査役の中から特に同条第二項の取締役会に出席する監査役を定めることができる。
(以下略)

昭和40(オ)68,株主総会決議取消等請求,昭和41年8月26日,第20巻6号1289頁
判示事項
二 議決時に定足数を欠くにいたつた取締役会の決議の効力
裁判要旨
二 株式会社の取締役会の定足数は、開会時に充足されただけでは足りず、討議・議決の全過程を通じて維持されるべきであり、議決時にこれを欠くにいたつた場合には、当該決議は無効というべきである。

カテゴリー
株主総会

株主総会の「委任状」回収をクラウド型電子契約でやろう

VCとかが入ったベンチャー企業では、株主総会のに関して委任状を集めるのが一般的です。
この委任状、紙での回収が通常なのですが、非常に面倒。
そこでクラウド型電子契約サービスを活用すると便利になります。

「委任状」のクラウド型電子契約サービスによる回収

結論、株主総会招集通知と委任状をセットにして、クラウド型電子契約サービスで株主(のカウンターパートナー)に送付し、それに対して「承認」をしてもらえればOKです。

登記には、委任状は不要ですし、委任している事が、仮に揉めた場合の証拠として残せれば十分なので、クラウド型電子契約サービスが非常にマッチしているのです。

なお、委任状は紙でも電子でも、両方を選べるようにしておいて、全ての議案に対して賛成の場合はクラウド型電子契約サービスを、一部賛成一部反対のような場合には紙で、と使い分ければ良いです。

その他諸々

代理権限の確認についてはこちらの記事を参照してください。

委任状については、こちらの記事でかなり詳しく解説しているので、併せて参照してください。

他には、参考程度ですが、種類株主総会の省略手続簡素化方法についてはこちらを。

仮に書面決議(みなし決議)でやりたい場合にはこちらを参照してください。

書面決議は、同意書面の全回収が必要で、複数株主がいる場合には現実的ではありませんでした。
クラウド型電子契約サービスですと、書面の全回収が容易なので、書面決議のハードルも大きく下がったと言えます。

カテゴリー
人事・総務

「取締役会決議事項の提案書」をクラウド型電子契約でやろう

取締役会の決議を省略するための方法として提案書方式というものがあります。
通常はPDFデータや紙で送付したものを、メールでの同意、ないしは紙での同意を取得します。
別にこの方式でも問題無いのですが、最近浸透してきたクラウド型電子契約サービスを使うと非常に良いです。

ちなみに、 提案書方式 = 書面決議 = みなし決議 です。

提案書方式をクラウド型電子契約サービスでやると良い理由

結論、内部統制面で一番良いと考えられます。

紙は不便なので電子が良く、電子でもメールで十分と言えば十分です。

ただ、メールの場合、単純に「同意します。」と返信されても、何に対して同意なのかの曖昧性が高く、センシティブな決議の場合、揉める可能性がゼロではありません。
ようは、書面決議で良い旨の同意なのか、それとも議案に対する同意なのかを明確にしてもらわないといけない、という事です。
(忙しい経営者ですと、本当に一言、主語とか省略して「同意します。」って返してきます。)

そこで、”締結”という形で同意を取得する意味で、立会人型の電子署名が付されるクラウド型電子契約サービスの登場です。
この方法は、内部統制的に最も適している、と考えられます。

過去の記事で、取締役会議事録の押印に関して、クラウド型電子契約サービスが使えるよ、という事はお伝えしてきましたが、提案書方式でも使えるのですね。

やり方はそんなに複雑では無く、一般的な「取締役会決議事項の提案書」をPDFに起こして、それをクラウド型電子契約サービス上で設定、取締役に送付・回覧すればOKです。

なお、利害関係取締役は提案書の送付対象ではありませんが、人間関係というかビジネス・コミュニケーションの常識として、一応、他役員に送付している旨、伝達した方が良いでしょう。

業務監査権限がある監査役について

監査役に関しては異議が無い事の確認がとれれば良いので、別にこの送付に加える必要はありませんが、その異議が無い旨を明確に確認する意味でも送付対象に加える事は差し支えないでしょう。

(業務監査権限がある監査役がいる場合に、異議無しコメントが必要。定款・登記簿に「当会社の監査役の監査の範囲は、会計に関するものに限る。」との規定が無い場合は、業務監査権限がある監査役となります。)

定款の定め

定款には下記のような定めがあることが前提です。

電磁的記録が入っていなかった場合は、記載の方法で対応するしかないですね。
早々に定款変更を行いましょう。

当会社は、取締役の全員が取締役会の決議事項について書面または電磁的記録により同意したときは、当該決議事項を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす。但し、監査役が異議を述べた場合はこの限りでない。


ここで話は以上になるのですが、提案書や同意書、その後の議事録に関して、テンプレートを参考資料として提示しておきます。

取締役会決議事項に関する提案書テンプレート

2020年mm月dd日

役員各位

株式会社〇〇〇〇
代表取締役 〇〇〇〇

取締役会決議事項に関する提案書

拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

さて、会社法第370条の定めに基づき、下記のとおりご提案致しますので、取締役におかれましては、当該提案内容にご同意いただけます場合は、2020年mm月dd日(aaa)までに、電磁的方法にてご返信下さいますよう、よろしくお願い申し上げます。

敬具

提案の内容

第1号議案 〇〇〇〇の件

本文

第2号議案 〇〇〇〇の件

本文

以上

同意書テンプレート

2020年mm月dd日

株式会社〇〇〇〇
代表取締役 〇〇〇〇 殿

同意書

私は、2020年mm月dd日付にて貴殿から書面により提案のありました、下記提案事項に同意し、会社法第370条の定めに従って、取締役会による決議を行うことなく、全ての提案が可決されたとみなされることに同意いたします。

取締役 〇〇〇〇

提案 

第1号議案 〇〇〇〇の件

第2号議案 〇〇〇〇の件

以上

取締役会議事録テンプレート

取締役会議事録

下記の提案事項に関して、取締役全員が同意の意思表示をするとともに、各々の監査役からは異議が述べられなかったため、会社法第370条の規定により、各提案事項を可決する旨の取締役会の決議があったとみなされた。

1.取締役会の決議があったとみなされた日

2020年mm月dd日

2.取締役会の決議があったとみなされた提案事項

第1号議案 〇〇〇〇の件

本文

第2号議案 〇〇〇〇の件

本文

3.議事録作成に係る職務を行った取締役氏名及び作成日

代表取締役 〇〇〇〇(作成日:2020年mm月dd日)
         
以上のとおり、書面による取締役会の決議があったとみなされた事項を明確にするため、この議事録を作成し、代表取締役(議事録作成者)が次に記名押印する。

2020年mm月dd日

株式会社〇〇〇〇 取締役会

代表取締役 〇〇〇〇 印

以上

カテゴリー
取締役会

社外取締役の任期を短縮したい場合の実務的手順

ベンチャー企業も大きくなってくると、社外取締役を選任するようなステージがいつかは訪れます。
その際、候補者の方が適切に役目を果たしてくれるのか不安に思うのは社長ならば当然でしょう。
ここでは、社外取締役の任期を、社内取締役より短く設定し、適切な方なのか否かについてリスクを下げる方法について解説していきます。

大枠の流れ

① 定款を変更する

② 株主総会招集通知上で、社外取締役候補者の任期を明記する

③ 株主総会議事録上、選任された社外取締役の任期を明記し、登記する

定款変更内容

まずは定款の変更です。

取締役の任期に関して、会社法上では、「(取締役の任期)第三百三十二条 取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。」と記載があります。

つまり下記の通り定款を変更すれば、社外取締役の任期を柔軟に変更できることが可能になります。

定款変更後の実務としては、株主総会にて、普通決議での任期付き選任を行う形になります。

(取締役の任期)
第〇〇条
取締役の任期は選任後2年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会の終結時までとする。ただし、株主総会の決議によって社外取締役の任期は短縮することができる。

招集通知の記載例

それでは、招集通知の記載に関して、具体的に示していきます。
定款変更が既にされているという前提のもの(通常の記載例)と、定款変更と同時に選任を行う場合でわけます。

通常の記載例

第〇号議案 取締役〇名選任並びに社外取締役の任期決定の件

企業の活性化及び一層の業績向上を期すため、社外取締役〇名の選任をお願いするものであります。

なお、社外取締役の任期を1年として上程するものであります。

取締役候補者は次のとおりであります。

定款の変更と同時に行う場合の記載例

第〇号議案 取締役〇名選任並びに社外取締役の任期決定の件

企業の活性化及び一層の業績向上を期すため、社外取締役〇名の選任をお願いするものであります。

なお、第□号議案が承認可決され社外取締役の任期が株主総会の決議によることとなることを条件として、社外取締役の任期を1年として上程するものであります。

取締役候補者は次のとおりであります。

株主総会議事録の記載例

株主総会後は議事録の作成です。
任期については、認識相違を生みやすいので、少々くどいくらいに確認をする方が良いでしょう。

こちらも、選任のみの場合と、定款変更と同時に行う場合で記載例を示します。
定款変更と同時に行う場合では、1文を追加すれば問題はありません。

なお、新任の取締役については、実印と印鑑証明書が必要になりますので、事前に取得依頼を出しておきましょう。
現実的に大きな問題は考えづらいですが、期限内の登記対応ができない原因の1つに、必うような書類が揃わない、というのはあるある話ですので。

通常の記載例

第〇号議案 取締役〇名選任並びに社外取締役の任期決定の件

議長は、企業の活性化及び一層の業績向上を期すため、下記取締役〇名を社外取締役として選任の必要がある旨を述べた。社外取締役の任期は、選任後1年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会終結時までとしたい旨を述べた。その賛否を諮ったところ、満場一致をもってこれに賛成した。

よって、議長は次の通り選任することに可決された旨を宣した。

取締役 〇〇○○(新任)

※ 取締役 〇〇〇〇については、▲月◇日に承諾予定である旨が説明されると共に、社外取締役としての選任であることが確認され、その任期は1年となる旨が確認された。

定款変更と同時に行う場合の記載例

社外取締役の任期は、前号議案での定款変更を受け、選任後選任後1年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会終結時までとしたい旨を述べた。

以上です。

カテゴリー
取締役会

取締役会議事録・株主総会議事録の電子化~リモート対応にあわせたハンコ廃止はどこまでできるか~

全員がWEB会議参加の取締役会が増えてきました。
あわせて出る悩みが「議事録の押印」、つまりハンコです。
今回は議事録の電子化、つまりハンコ廃止はどこまでできるのかを解説していきます。
結論、社内文章としての保存と、登記申請用の議事録で対応が異なります。

役員全員がWEB会議参加の場合の取締役会招集通知・議事録の書き方に関しては、こちらの記事を参照ください。

忙しい人向けまとめ

  • 社内文書として保存する場合と登記・申請等で行政機関等に提出する場合で考え方が異なる
  • 取締役会議事録の場合は、技術用件を満たしたサービスを利用すれば電子化対応は可能
  • 株主総会議事録の場合は、そもそもとしてハンコがマストでない(真正の担保のために実印押印が一般的)
  • 登記を要する場合は、難点が多く、書類の電子化対応が現実的でないため、運用でカバーした方がよい
  • 電子化対応を行う場合、定款の定めで「電子署名」に対応していることが必要

社内文章としての保存の場合(登記が必要ない場合)

社内文章としての保存の場合も、取締役会議事録と株主総会議事録で取扱いが変わってきます。

取締役会議事録の場合(登記が必要ない場合)

まず、前提の確認からです。

取締役会議事録を電子化する場合は電子署名が必要

取締役会の場合、その議事録は書面でも電磁的記録(以下、「電子データ」と表現)でも作成可能とされています(正確には、どちらかで作成しなければならない)。

会社法

第三百七十一条 取締役会設置会社は、取締役会の日(前条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた日を含む。)から十年間、第三百六十九条第三項の議事録又は前条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその本店に備え置かなければならない。

(略)
会社法施行規則

第百一条 法第三百六十九条第三項の規定による取締役会の議事録の作成については、この条の定めるところによる。

2 取締役会の議事録は、書面又は電磁的記録をもって作成しなければならない。

(略)

そして、ご存知でしょうが、この取締役会議事録には出席取締役・監査役(以下、「出席役員」と表現)が署名または記名押印することとされています。
もしくは、署名または記名押印に代わる措置を取らなければならない、とされています。

会社法

第三百六十九条 (略)

3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。

(略)

4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

この「代わる措置」が電子署名です。
つまり、取締役会議事録を電子化した場合は、署名または記名押印に代えて電子署名をすることが必要となります。

会社法施行規則

第二百二十五条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置は、電子署名とする。

(略)

六 法第三百六十九条第四項(法第四百九十条第五項において準用する場合を含む。)

電子署名の要件

電子署名の要件は次の2つです。

  • 本人性の確認:署名を行った者が本人、つまり出席役員であることを確認できる
  • 署名の改変・改ざん防止:署名が改変や改ざんされていないことを確認できる
会社法施行規則

第二百二十五条 (略)

2 前項に規定する「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。

一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。

二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
電子署名及び認証業務に関する法律

第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。

一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。

二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

そして、この電子署名の要件2つを満たすためには、技術的要件を満たす必要があります。
逆にいうと、技術的要件を満たした方法であれば、取締役会議事録の電子化が可能となります。

電子署名及び認証業務に関する法律

第二条 (略)

3 この法律において「特定認証業務」とは、電子署名のうち、その方式に応じて本人だけが行うことができるものとして主務省令で定める基準に適合するものについて行われる認証業務をいう。
電子署名及び認証業務に関する法律施行規則

第二条 法第二条第三項の主務省令で定める基準は、電子署名の安全性が次のいずれかの有する困難性に基づくものであることとする。

一 ほぼ同じ大きさの二つの素数の積である二千四十八ビット以上の整数の素因数分解

二 大きさ二千四十八ビット以上の有限体の乗法群における離散対数の計算

三 楕円曲線上の点がなす大きさ二百二十四ビット以上の群における離散対数の計算

四 前三号に掲げるものに相当する困難性を有するものとして主務大臣が認めるもの

その他の要件

その他、取締役会議事録の電子化のために、以下の要件を満たす必要があります。

  • 電子データの見読性の確保:モニターで鮮明に表示され、読むことができる
  • 紙かモニター表示のみ:インターネットを経由した方法は不可
  • 紙同様10年の保存が必要:電子署名に加えてタイムスタンプが必要
  • バックアップ:データの消失を避けるためのバックアップ保存が必要

株主総会議事録の場合(登記が必要ない場合)

次に株主総会議事録の場合です。

株主総会議事録はそもそもとして押印が義務ではない

知らない人も多いと思いますが、株主総会議事録には押印義務がありません。
つまり、株主総会議事録の電子化にあたって、電子署名に対応しなければならない義務がないです。

会社法

第三百十八条 株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。

(略)

4 株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。

(略)

二 第一項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

ただし、、、真正担保

ただ、作成した議事録の真正を担保するために、会社代表印、つまり実印を押印するのが一般的でしょう。
後々のトラブルを回避するためにも、押印対応しておいた方がよいでしょう。

つまり、株主総会議事録の電子化対応の場合も、取締役会議事録の電子化対応に準じた対応が望ましいと考えられます。

ついでに、株主から閲覧または謄写の請求があった場合には対応が必要となりますので、これについても取締役会議事録の電子化対応に準じた対応が必要です。

電子契約サービス

それでは、具体的にどのように取締役会議事録・株主総会議事録の電子化対応を行うか、です。
今は、電子契約サービスが充実しています。
安くて使い勝手の良いサービスがたくさんありますので、任意に選定すれば良いでしょう。
ここでは1社だけ紹介します。

GMO agreeは安くて使い勝手がよく、電子署名の技術的要件を満たしたサービスです。
また、GMO熊谷社長は、先般のIT大臣の発言をうけて、積極的にハンコを廃止していく旨のコメントを出しています。
今後のサービス向上にも期待できますし、無料期間も設定されたようですので、これを機に導入検討をするのは有りでしょう。

登記・申請等で行政機関等に提出する場合

(2020年6月18日追記)

ついに念願が叶い、クラウドサインが登記対応となりました。
そのため、本記事の本項は古い内容となります。

詳細は下記記事をご参照ください。


一方、登記のために役所に書類を提出する場合は難点が多くあります。
結論、あまり実用的で無いので、運用でのカバーが良いです。

登記・申請等で行政機関等に提出する場合

登記申請の際、取締役会議事録・株主総会議事録・就任承諾書・委任状などの書類を添付して法務局に申請することが必要です。
これらの書類には、実印による記名押印が必要です。
そのため、実印による記名押印に代わる電子署名が必要となります。

商業登記規則

第六十一条 定款の定め又は裁判所の許可がなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなる申請については、申請書に、定款又は裁判所の許可書を添付しなければならない。

(略)

4 設立(合併及び組織変更による設立を除く。)の登記の申請書には、設立時取締役が就任を承諾したことを証する書面の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。取締役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書に添付すべき取締役が就任を承諾したことを証する書面の印鑑についても、同様とする。

しかも、その電子署名(代表印/実印)に用いる電子証明書は「電子認証登記所登記官が発行した電子証明書に限る」となっています。
(役員の場合は、認定認証業者が発行している電子証明書による電子署名、もしくは、マイナンバーカードに内蔵されている電子証明書による電子署名。)
つまり、認定認証業者が発行している電子証明書だけで登記ができないのです。

商業登記法

第十九条の二 登記の申請書に添付すべき定款、議事録若しくは最終の貸借対照表が電磁的記録で作られているとき、又は登記の申請書に添付すべき書面につきその作成に代えて電磁的記録の作成がされているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を記録した電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を当該申請書に添付しなければならない。
商業登記規則

第三十六条 法第十九条の二の法務省令で定める電磁的記録は、第三十三条の六第四項第一号に該当する構造の電磁的記録媒体でなければならない。

2 前項の電磁的記録には、法務大臣の指定する方式に従い、法第十九条の二に規定する情報を記録しなければならない。

3 前項の情報は、法務大臣の指定する方式に従い、当該情報の作成者(認証を要するものについては、作成者及び認証者。次項において同じ。)が第三十三条の四に定める措置を講じたものでなければならない。

4 第一項の電磁的記録には、当該電磁的記録に記録された次の各号に掲げる情報の区分に応じ、当該情報の作成者が前項の措置を講じたものであることを確認するために必要な事項を証する情報であつてそれぞれ当該各号に定めるものを、法務大臣の指定する方式に従い、記録しなければならない。

一 委任による代理人の権限を証する情報 次に掲げる電子証明書のいずれか
イ 第三十三条の八第二項(他の省令において準用する場合を含む。)に規定する電子証明書
ロ 電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号)第三条第一項の規定により作成された署名用電子証明書
ハ 氏名、住所、出生の年月日その他の事項により当該措置を講じた者を確認することができるものとして法務大臣の指定する電子証明書

二 前号に規定する情報以外の情報 次に掲げる電子証明書のいずれか
イ 前号イ、ロ又はハに掲げる電子証明書
ロ 指定公証人の行う電磁的記録に関する事務に関する省令(平成十三年法務省令第二十四号)第三条第一項に規定する指定公証人電子証明書
ハ その他法務大臣の指定する電子証明書

5 前項の場合において、当該作成者が印鑑の提出をした者であるときは、当該電磁的記録に記録すべき電子証明書は、同項第一号イに掲げる電子証明書に限るものとする。ただし、第三十三条の三各号に掲げる事項がある場合は、この限りでない。

6 第二項から第四項までの指定は、告示してしなければならない。

7 前条第三項の規定は、第一項の電磁的記録媒体に準用する。

(なお、認定認証業者としてはリンク先のような事業者が対応していますが。)

難点が多く実用的でない

つまり、登記に対応できる取締役会議事録・株主総会議事録の電子化にあたっては、満たさなければいけない要件が多く、実用的でないのです。

まず、よっぽどの大企業でなければ、登記をしなければならないような事象が限られます。
そのために、役員全員に認定認証業者が発行する電子証明書を発行するのか?という悩みがでます。
役員がITまわりに苦手な場合、わざわざ設定のためのフォローが必要になります。
社外役員の場合は、その手間はもっと増えます。
パソコンですので、突然壊れて使えなくなることも十分に考えられます。
当然、イニシャルコストだけでなく、月額のランニングコストがかかります。

これだけの負担感があるので、現状の制度やサービスの中では、登記要件に充足する電子化対応は難しいと言えます。
実際、多くの会社が、登記については従来通りのハンコ対応を行っている状況です。

運用でカバーが無難

これまでみてきた通り、登記書類の電子化対応は実務上、現実的と言えません。

となると、運用でのカバーが無難と考えられます。

具体的には、登記が必要な案件に関しては、登記を要しない議案の取締役会や株主総会とはわけて対応するのです。
登記が必要な案件は、どこか特定の時期に集中させて、まとめて対応すれば、書類の回覧負担が減ります。
発生した時だけは面倒ですが、要登記事項自体を減らしてしまえば良いのです。

ついでに定款も注意が必要

ここまで、取締役会議事録・株主総会議事録の電子化対応について解説してきました。
実は、もう1点確認が必要です。
それは、会社の定款にどう定められているか?の確認です。

電子化対応を視野に入れているのならば、どこかの総会のタイミングで定款変更をかけておくのが無難でしょうね。

取締役会の議事録に関する定款の定め

A:取締役会における議事の経過の要領及びその結果並びにその他法令に定める事項は、議事録に記載または記録し、出席した取締役及び監査役がこれに記名押印する。

B:取締役会における議事の経過の要領及びその結果並びにその他法令に定める事項は、議事録に記載または記録し、出席した取締役及び監査役がこれに記名押印または電子署名する。

パターンAの場合、記載通り、出席役員のハンコ対応が必要です。
パターンBの場合、電子署名に対応しているならば、ハンコを廃止することができます。

株主総会の議事録に関する定款の定め

A:株主総会議事録については、法令で定めるところによりその経過の要領及びその結果等を記載又は記録し、議長及び出席した取締役がこれに記名押印又は電子署名を行う。

B:株主総会における議事の経過の要領およびその結果ならびにその他法令に定める事項については、これを議事録に記載または記録する。

パターンAの場合、記載通り会社実印と出席取締役のハンコが必要です。
パターンBの場合、登記を要しない議案であれば、ハンコは必須ではない形になります。

最後に

これまで書いてきたことは、IPOを視野にいれていない中小企業にとっては、おそらく重要性の低い話でしょう。
おそらく、議事録自体を整備していないでしょうから。

しかし、IPOを目指す場合は別です。
IPO進行上、議事録の整備は論点の一つとなるため、避けては通れない話になります。
書類の電子化は要件を満たしてさえいえれば審査上の問題はありませんの、どうせなら最初から電子化前提で管理体制を構築するのが良いのではないでしょうか。

その際は、オンライン上に機密情報を保存する形になりますので、セキュリティ面だけ十分な注意を払いましょう。

取締役会議事録・株主総会議事録の電子化は、登記という観点を除けば、リーズナブルに対応可能です。
管理体制の整備自体が業績向上に直接的に寄与するものではありませんので、効率的に進めたいものです。

モバイルバージョンを終了