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人事・総務

(電子証明書)オンライン登記のハードルがまた下がりました

商業登記規則が2021年2月15日付で改正・施行されました。
あわせて、登記の申請書にマイナンバーカード(公的個人認証サービス電子証明書)が対応可能になり、オンライン登記のハードルがまた一段と下がる形となりました。

印鑑からの解放が進んでいます。

商業登記規則が改正されました

2021年2月15日から、登記の申請(と印鑑証明書の請求)を行う差異、これまでは商業登記電子証明書がなければ対応できませんでしたが、マイナンバーカードでの電子証明書も使用できるようになりました。

これにより、まだ面倒はあるものの、商業登記をオンライン対応する場合のハードルが一段と下がります。

登記実務で何が便利になる?

これまでは、法人実印に代わる電子証明書の取得が必要でしたが、これが不要になります。
(代わりに、マイナンバーカード電子証明書による電子証明書を付す必要がある。)

従前のフローは下記の通りです。

登記に必要な書類PDFを用意する

クラウドサインにて、各登場人物(役員や株主など)が署名対応をする

クラウドサインから電子署名が付されたPDFを出力

法務省指定の「申請用総合ソフト」にて、「法人実印」に代わる「電子証明書」による電子署名を付す

司法書士の先生にデータを提出し、司法書士の先生からオンライン登記を行う

(↓参考:昨年の登記実務対応の緩和案件について)

これらの内、申請書についてはマイナンバーカード電子証明書による電子証明書で良く、添付書類についてはクラウドサインをはじめとするクラウド型電子証明書サービスによる立会人型電子署名でOK、というような流れになります。
つまり、PDFを出力して商業登記用の電子署名を追加で付す必要が無くなりました。

移転等による電子証明書取り直し問題もクリア

移転等の事象により管轄の登記所(出張所含めて)が変更になった場合、電子証明書を取り直す必要が無くなったので、これもまたプラスですね。

代表取締役の変更事案もだいぶ緩和

代表取締役の変更事案についても、大きく利便性が向上しています。

代表取締役の変更事案については、従前は代表者の商業登記電子証明書と、役員のマイナンバーカード電子証明書による電子署名(もしくは特定認証業務電子署名)が必要でした。
これが今回、変更前の代表取締役がマイナンバーカード電子証明書による電子署名があれば、他の役員はクラウド型電子証明書サービスによる電子署名でOKになります。

一部の登場人物がクラウド型電子証明書を使えない場合

一部の登記においては、登場人物が多い場合もあり、仮にクラウド型電子証明書サービス対応が不可の場合、一律紙となる場合がありました。
今回、これもだいぶ緩和されるはずです。

というのも電子署名を付したデータ(電磁的記録)をCD-R等の媒体に記録し、登記所に提出する事が可能となったからです。

申請書は紙、電子署名を付したデータはCD-R、登場人物が多い書類については紙、という対応が可能となりました。

銀行系や古い会社等、対応いただけない所についても、かなりハードルが下がったはずです。
工夫の余地が大きく出てきました。

繰り返しますが、代表者のマイナンバーカード電子証明書は必要です。

対応しているクラウド型電子証明書サービスは?

対応しているクラウド型電子証明書サービスは下記の通りです。

クラウドサイン、GMOサインあたりがメジャーなものでしょうか。

法務省HP’「商業・法人登記のオンライン申請について」より

以上、今回の法改正に伴う登記実務について見ていきました。

この1年でどれだけ世の中が変わったんだ、という感じがしますね。

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株主総会

株主総会の「委任状」回収をクラウド型電子契約でやろう

VCとかが入ったベンチャー企業では、株主総会のに関して委任状を集めるのが一般的です。
この委任状、紙での回収が通常なのですが、非常に面倒。
そこでクラウド型電子契約サービスを活用すると便利になります。

「委任状」のクラウド型電子契約サービスによる回収

結論、株主総会招集通知と委任状をセットにして、クラウド型電子契約サービスで株主(のカウンターパートナー)に送付し、それに対して「承認」をしてもらえればOKです。

登記には、委任状は不要ですし、委任している事が、仮に揉めた場合の証拠として残せれば十分なので、クラウド型電子契約サービスが非常にマッチしているのです。

なお、委任状は紙でも電子でも、両方を選べるようにしておいて、全ての議案に対して賛成の場合はクラウド型電子契約サービスを、一部賛成一部反対のような場合には紙で、と使い分ければ良いです。

その他諸々

代理権限の確認についてはこちらの記事を参照してください。

委任状については、こちらの記事でかなり詳しく解説しているので、併せて参照してください。

他には、参考程度ですが、種類株主総会の省略手続簡素化方法についてはこちらを。

仮に書面決議(みなし決議)でやりたい場合にはこちらを参照してください。

書面決議は、同意書面の全回収が必要で、複数株主がいる場合には現実的ではありませんでした。
クラウド型電子契約サービスですと、書面の全回収が容易なので、書面決議のハードルも大きく下がったと言えます。

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人事・総務

「取締役会決議事項の提案書」をクラウド型電子契約でやろう

取締役会の決議を省略するための方法として提案書方式というものがあります。
通常はPDFデータや紙で送付したものを、メールでの同意、ないしは紙での同意を取得します。
別にこの方式でも問題無いのですが、最近浸透してきたクラウド型電子契約サービスを使うと非常に良いです。

ちなみに、 提案書方式 = 書面決議 = みなし決議 です。

提案書方式をクラウド型電子契約サービスでやると良い理由

結論、内部統制面で一番良いと考えられます。

紙は不便なので電子が良く、電子でもメールで十分と言えば十分です。

ただ、メールの場合、単純に「同意します。」と返信されても、何に対して同意なのかの曖昧性が高く、センシティブな決議の場合、揉める可能性がゼロではありません。
ようは、書面決議で良い旨の同意なのか、それとも議案に対する同意なのかを明確にしてもらわないといけない、という事です。
(忙しい経営者ですと、本当に一言、主語とか省略して「同意します。」って返してきます。)

そこで、”締結”という形で同意を取得する意味で、立会人型の電子署名が付されるクラウド型電子契約サービスの登場です。
この方法は、内部統制的に最も適している、と考えられます。

過去の記事で、取締役会議事録の押印に関して、クラウド型電子契約サービスが使えるよ、という事はお伝えしてきましたが、提案書方式でも使えるのですね。

やり方はそんなに複雑では無く、一般的な「取締役会決議事項の提案書」をPDFに起こして、それをクラウド型電子契約サービス上で設定、取締役に送付・回覧すればOKです。

なお、利害関係取締役は提案書の送付対象ではありませんが、人間関係というかビジネス・コミュニケーションの常識として、一応、他役員に送付している旨、伝達した方が良いでしょう。

業務監査権限がある監査役について

監査役に関しては異議が無い事の確認がとれれば良いので、別にこの送付に加える必要はありませんが、その異議が無い旨を明確に確認する意味でも送付対象に加える事は差し支えないでしょう。

(業務監査権限がある監査役がいる場合に、異議無しコメントが必要。定款・登記簿に「当会社の監査役の監査の範囲は、会計に関するものに限る。」との規定が無い場合は、業務監査権限がある監査役となります。)

定款の定め

定款には下記のような定めがあることが前提です。

電磁的記録が入っていなかった場合は、記載の方法で対応するしかないですね。
早々に定款変更を行いましょう。

当会社は、取締役の全員が取締役会の決議事項について書面または電磁的記録により同意したときは、当該決議事項を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす。但し、監査役が異議を述べた場合はこの限りでない。


ここで話は以上になるのですが、提案書や同意書、その後の議事録に関して、テンプレートを参考資料として提示しておきます。

取締役会決議事項に関する提案書テンプレート

2020年mm月dd日

役員各位

株式会社〇〇〇〇
代表取締役 〇〇〇〇

取締役会決議事項に関する提案書

拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

さて、会社法第370条の定めに基づき、下記のとおりご提案致しますので、取締役におかれましては、当該提案内容にご同意いただけます場合は、2020年mm月dd日(aaa)までに、電磁的方法にてご返信下さいますよう、よろしくお願い申し上げます。

敬具

提案の内容

第1号議案 〇〇〇〇の件

本文

第2号議案 〇〇〇〇の件

本文

以上

同意書テンプレート

2020年mm月dd日

株式会社〇〇〇〇
代表取締役 〇〇〇〇 殿

同意書

私は、2020年mm月dd日付にて貴殿から書面により提案のありました、下記提案事項に同意し、会社法第370条の定めに従って、取締役会による決議を行うことなく、全ての提案が可決されたとみなされることに同意いたします。

取締役 〇〇〇〇

提案 

第1号議案 〇〇〇〇の件

第2号議案 〇〇〇〇の件

以上

取締役会議事録テンプレート

取締役会議事録

下記の提案事項に関して、取締役全員が同意の意思表示をするとともに、各々の監査役からは異議が述べられなかったため、会社法第370条の規定により、各提案事項を可決する旨の取締役会の決議があったとみなされた。

1.取締役会の決議があったとみなされた日

2020年mm月dd日

2.取締役会の決議があったとみなされた提案事項

第1号議案 〇〇〇〇の件

本文

第2号議案 〇〇〇〇の件

本文

3.議事録作成に係る職務を行った取締役氏名及び作成日

代表取締役 〇〇〇〇(作成日:2020年mm月dd日)
         
以上のとおり、書面による取締役会の決議があったとみなされた事項を明確にするため、この議事録を作成し、代表取締役(議事録作成者)が次に記名押印する。

2020年mm月dd日

株式会社〇〇〇〇 取締役会

代表取締役 〇〇〇〇 印

以上

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人事・総務

クラウド型の電子契約サービスはどこまで実務に使えるか?

筆者もクライアントにて電子契約導入のサポートを行い、諸々知見が蓄積されてきたので、ここで整理をします。
現実的にどこまで電子化できるか?の参考になるかと思います。

基本的なクラウド型の電子契約サービスの状況については次の記事を参考にしてください。

基本的に、法人実印に代わる電子証明書の取得を行えば、理論上は登記実務まで電子で完結できるようにはなりました。
要注意事項については、下記記事内にて解説しています。

押印そのものに関する基礎的部分に関しては次の記事を参考にしてください。

通常の契約

まず、(相手先がいる)通常の契約締結に関しては、相手先がNGでなければクラウド型の電子契約サービスにての締結で問題がありません。

下記記事にて整理しているのですが、クラウド型の電子契約サービスを導入する上での課題は次の3つです。

  1. 契約の有効性
  2. セキュリティ
  3. 内部統制

この内、1.契約の有効性、2.セキュリティに関しては、法的な解釈整理やサービスが提供する仕様で解決が可能です(解決が可能と整理する)。

内部統制に関しては、代理権限の証明(無権代理のけん制)が必要です。

この代理権限の証明(無権代理のけん制)に関しては、次の2つの記事を参考にしてください。

登記が関係しない取締役会議事録

登記が関係しない取締役会議事録に関しては、これもクラウド型の電子契約サービスにて対応が可能です。
(社内保管用なので、そこまで神経質にならなくても良い。)

この辺りの話は、下記の記事を参考にしてください。
クラウドサイン等の一部クラウド型の電子契約サービスが登記対応する前の記事なので、一部古い記載がありますが、基本的な考え方に関しては参考になるはずです。

なお、役員にクラウド型の電子契約サービス上で、押印回覧をするかと思いますが、この場合、必ず役員のメールアドレスを指定するようにしましょう。

社外取締役とかで秘書の方を指定している場合もありますが、この場合は必ず本人から承認する旨の文面をメールでもらうようにしましょう。

後で揉める可能性がゼロではありません。

登記に関係する議事録(取締役会議事録、株主総会議事録)

登記に必要な書類に関しては、現実的に紙の方が便利なんだろうな、という考えです。

まず、そこまで登記が必要な場面が多くない事と、登記書類の電子化にはクラウドサイン等のクラウド型の電子契約サービスでは不足があり、法人実印に代わる電子証明書の取得が必要です。
加えて、押印に関係する登場人物の一人でも(取締役会議事録における社外役員が想定される)、電子NGとなった場合、一部だけ紙で、という対応が不可能な点もあります。

そのため、なんだかんだ、登記に必要な書類は紙の方が良いよね、諸々は司法書士先生にお願いするし、という結論になります。

電子証明書の取得自体は、そこまで難しく無いので、諸々社会全体で電子対応がこなれてくれば、状況は変わるでしょう。

(電子証明書を取得して運用していく事が、関係者含めて苦で無いのならば、電子の方が良いので、そこは悪しからず。)

投資契約のような複雑な契約

投資契約のような複雑な契約に関しては、使い分けが良いという結論です。

下記のような形で、例えば、登記に使う物なのか、払込に必要な物なのか、で整理するとわかりやすいでしょう。

登記に必要な書類 → 紙で準備

  • 定款
  • 株主一覧
  • 株主総会議事録(取締役会に委任していれば取締役会議事録)
  • (★)総数引受契約書
  • 取締役会議事録(投資契約の承認)
  • 資本金の計上に関する証明書
  • 種類株主への通知を証する書面(契約承認、取締役会に委任していれば募集事項の決定も)
  • 払込があったことの証明書
  • 委任状(司法書士先生に依頼する場合)

払込に必要な書類 → 電子でOK(ただし★は登記にも使うので紙で)

  • 株主総会議事録(種類株主総会分も必要があれば)
  • (★)総数引受契約書
  • 投資契約書(株式引受契約書、という名称の場合も)
  • 株主間契約書

種類株主への通知に関しては、簡素化方法がありますので、こちらの記事を参考にしてください。

なお、株主間契約書ですが、株主によっては電子契約NGの所もあります(銀行系VCとか)。

この場合、ハイブリッド型での契約締結が考えられます。

具体的には、押印箇所のみ当該株主から株主人数+会社分、作成・郵送してもらい、他の電子契約OKな株主の押印箇所に関してはクラウド型電子契約サービスの締結を証する画面の印刷を挟み込む形で(他の紙面部分と併せて)製本・割印するイメージです。

登場人物が多い場合、押印部分の収集が一番面倒ですので、これだけでもかなりの手間暇を省力化できるはずです。


以上、現在時点において、現実の実務でどこまでクラウド型電子契約サービスが使えるかを整理してきました。

まだまだ不便な所(システム的な所だけでなく、社会的な受容度の観点で)がありますが、従来の押印実務に比べれば非常に便利になってきています。

押印部分がリモートワーク等の妨げになるだけでなく、業務の非効率化を生んでいる部分もありますので、積極的に電子契約の導入を進めていきたいものです。

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クラウド型の電子契約サービスを導入する上での課題整理

新型コロナウイルス感染拡大とそれに伴うリモートワーク普及により、クラウド型の電子契約サービスが一気に脚光を浴びる形となりました。
今回は、クラウド型の電子契約サービスを導入する上での課題について、基本的な部分を整理します。

クラウド型の電子契約サービスとは

クラウド型の電子契約サービスにより、どのような点が大きく前進したかについては、下記の記事でも触れています。

クラウド型の電子契約サービスは、政府見解により電子証明書の無い電子署名、もっと言うと「立会人型」が認められたことにより、その存在感が大きくなりました。

立会人型のポイントは、電子署名における署名鍵を署名者が事前に準備することなく、立会人であるクラウド事業者が準備・提供することにあります。
これにより、署名鍵のユーザー負担を大幅に低減、非常に手軽に電子署名を付せるようになりました。

(法的には電子署名法に準拠せず、契約当事者が合意締結した書類データに対して、クラウド型電子契約サービス提供事業者が改ざん不可能な電子署名を施す方法により、証拠力を担保している。)

クラウド型の電子契約サービス導入の課題論点

クラウド型の電子契約サービスを自社の契約締結フローに導入する際の課題論点は大きく3つ存在します。

  1. 契約の有効性
  2. セキュリティ
  3. 内部統制

この内、①契約の有効性については、まず大前提として民法上の考え方(契約自由の原則)が存在します。
(契約は口頭での合意でも成立するので、その意味では電子契約での契約締結でも問題無い。)
このため、立会人型のクラウド型の電子契約サービスは入り口として法的に有効であると考えられます。

ただ、一部の法的な縛りがあるもの(定期賃貸借契約や宅建業の媒介契約など)は別で、紙での締結が必要になります。
自社のビジネスや締結する契約内容について、弁護士確認を事前に行っておくのが良いでしょう。

なお、契約の有効性を論ずる上で一番の問題は、なりすまし問題です。

通常、紙+押印での契約では、なりすましは無いという前提に立ちますが、クラウド型の電子契約サービスでは、その前提に立たないのでは?という懸念があります。
(ここは、政府が公式見解を出す可能性がある。)
これに対しては、サービス側の各種仕様での対応する、という整理が妥当でしょう(契約締結ができるのはメールの受信者のみ、加えて改ざん不可能な電子署名が付される)。

セキュリティに関しては、基本的にサービス側の仕様で対応する以外にありません。
一般的に使用されているクラウド型の電子契約サービスならば、セキュリティ上の問題もクリアしているものと考える、という整理が妥当でしょう。
(IPO進行上は、証券会社が推薦したものを使えばよいです。)

内部統制は、ようは契約双方の代理権限の有無(無権代理の排除)です。
これに関しては、下記記事にて、その対応について記載しています。


上記の通り、クラウド型の電子契約サービスを導入する上での課題論点は、①契約の有効性、②セキュリティ、③内部統制の3つであり、この内①は法解釈とサービス側の仕様、②はサービス側の仕様で整理できることがわかります。
つまり、会社としてきちんと対応しなければいけないのは③内部統制になります。

クラウド型の電子契約サービスを導入し、何となく運用している企業も多いでしょう。
折角の機会ですので、改めて自社の決裁権限と法務フローについて整備してみるのは良いのでは無いでしょうか。

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電子署名管理規程(印章管理規程)テンプレート

クラウド型の電子契約を導入する上での代理権限の証明(無権代理のけん制)について、別記事で解説をしていますが、あわせて印章管理規程の電子版を制定しておくと実務上の利便があります。
今回は電子署名管理規程のテンプレートを提示します。

クラウド型の電子契約を導入する上での代理権限の証明(無権代理のけん制)の記事はこちら↓です。

クラウド型の電子契約導入において規程を制定するメリット

基本的には上記「クラウド型電子契約における代理権限者の証明実務(テンプレート有り)」にて記載した実務フローで対応すれば良いのですが、契約の相手先様によっては、代理権限者の証明について更なる資料提供を求めてくる場合があります。

電子署名管理規程は、その際の提供用資料として使う事が可能です。

決裁権限規程等で代替する事も可能なのですが、不要な自社情報を開示する事になります。
証明書を別に作成する方法もありますが、煩雑です。

そこで、外部に提出する前提の規程を予め制定してしまおう、という発想です。

また、電子署名に関連する規程を、通常の印章管理規程とは別にルール制定し明確に運用していれば、内部統制上のリスク低減にもつながります(IPO進行中の企業にとっては重要ですね)。

というわけで、早速テンプレートを提示します。
(会社の実情にあわせてカスタマイズする事は必須です。当然ですが。)

電子署名管理規程テンプレート

電子署名管理規程

第1章 総則

(目的)第1条
本規程は、電子文書に対する電子署名及び電磁的処理(当社において発行または受理する電子文書に付与する、電子的な徴証であり、紙文書における印章やサイン(署名)に相当する役割を果たすものであって、直接的または間接的に当社の権利義務を発生させる証とするものまたは手段。以下、あわせて「電子署名」という。)について、第2章に定める電子署名の制定、改廃、署名及び管理に関する事項を定める。

(定義)第2条
1.本規程において「署名」とは、電子署名を行なう行為を意味する
2.本規程において「電子証明書」とは、行政手続きをオンライン申請時等、申請人の本人確認等をオンラインで行なうために、用いられる証明書を意味する。
3.本規程において「管理責任者」とは、本規程すべての責任を負う者とする。
4.本規程において「電子署名権限者」とは、電子署名に署名できる権限者とする。
5.本規程において「所管担当者」とは、署名以外の行為である、電子署名の制定、改廃、管理等の手続きを行う者とする。

(管理責任者)第3条
管理責任者は、総務部門管掌取締役とする。

第2章 電子署名の署名、制定、改廃、管理

(原則)第4条
当社に対外的な権利義務を発生させる電子文書には、原則としてこの規程に定める電子署名を使用する。

(署名)第5条
電子署名で署名する電子署名権限者は、代表取締役とする。ただし、電子署名権限者の代わりに署名を行なう権限の承認を受けた者(ただし、総務部門の社員に限る)は、代理権限者として電子署名権限者の代理で署名することができる。
2.第三者より、代理権限者であることを証明することを求められた際は、本規程及び電子署名権限者一覧表(前条第1項但書に基づき電子署名権限の承認を受けたものを一覧にまとめたものをいう)を提示することで証明する。

(制定、改廃の決定)第6条
電子署名の制定及び改廃については、電子署名権限者、所管担当者等が起案し、管理責任者が決定する。

(制定・改廃の手続)第7条
1.当該電子署名の制定・改廃の手続に関する事項は、管理責任者の承認を受けた所管担当者が行なう。
2.1項において承認を受けた場合、所管担当者が一定の期間内に電子署名の制定・改廃の手続を行なうこととする。

(管理責任)第8条
1.管理責任者は、この規程に関する全ての管理責任を負う。
2.人事異動等により管理責任者が交代する場合、前任者と後任者は、電子署名に関する業務の引継を正確に行う。

(保管)第9条
電子署名を施した電子文書の保管及び管理は、管理責任者が行なう。やむを得ない事情により代行者を定める場合は、管理責任者の事前承認事項とする。

(電子署名に関連する事故)第10条
電子署名に関連する事故が発生した場合、管理責任者は自らの責任の元、適切に対処をする。

第3章 電子署名申請

(署名申請)第11条
電子署名を求める者は、稟議規程に従って申請を行い、承認後に署名が可能となる。

(署名申請書の保存)第12条
電子署名の署名請求に使用した署名申請書の保存については、電子署名に使用したシステム内、もしくは所定の電磁方式保存形式で保存できる方法によって保存する。

第4章 電子証明書の制定、発行、管理

(電子証明書の制定)第13条
当該電子証明書の制定は、電子署名権限者、所管担当者が起案し、該当する稟議規程に従って承認を受けなければならない。

(電子証明書の発行)第14条
当該電子証明書の発行は第13条で承認後、一定期間以内に所管担当者もしくは管理責任者が管轄の官公庁で発行の手続きを行なう。

(電子証明書の管理)第15条
当該電子証明書の管理は、所管担当者が行なう。管理の責任は管理責任者が負う。

第5章 その他

(改廃)第16条
この規程は、取締役会の決議により、改廃する。

附 則

この規程は、202×年××月××日から施行する。

運用のポイント

提出用データの作成

まず、この規程をPDF化(原本証明の押印済みのものをスキャン)したものを予め用意しておくのが良いです。

(参考)原本証明の付し方
下記の文言を印字ないしは記入後、会社認印でよいので押印すればOKです。
後は、製本したものを保管しつつ、スキャンをしPDF化しておきましょう。

この電子署名管理規程の写しは、原本と相違ないことを証明します。
202×年××月××日
住所〇〇県〇〇市〇〇町〇町〇番〇
株式会社〇〇〇〇
代表取締役〇〇〇〇 印

加えて、誰が現時点での代理権限者なのかについて、名刺のスキャンデータ(画像データ)を付した一覧表を作成しておきます。

仮に、契約の相手先から証明を求められた際には、この規程PDFと代理権限者一覧を先方に提出すれば大体はOKです(これで納得しない企業はほとんど無い)。

規程制定上のポイント

なお、規程を作成する上でのポイントですが「守れないルールは制定しない」点にあります。
形だけのルールを策定し、それを守れなかった場合は内部統制上のエラーになります。
ですので、なるべく緩めに策定し、運用の中で少しずつブラッシュアップをしていくのが良いです。

まぁ、これは本規程に関わらずの話なんですけれどね。


新型コロナウイルスの感染拡大後、クラウド型の電子契約サービスが一気に普及してきましたが、その前提での内部統制やIPO審査の事例は少ないのが実際です。

本記事を参考に内部統制上のリスク低減につなげていただければと思います。

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クラウド型電子契約における代理権限者の証明実務(テンプレート有り)

クラウド型の電子契約が今回の新型コロナウイルス感染拡大の影響をうけて、一気に普及しようとしています。
この電子契約システムにおける悩みの一つが代理権限者の証明です。
今回は、この代理権限者の証明について簡便的な実務対応について紹介いたします。
(記事内で紹介しているテンプレートは、記事下部でダウンロード可能です。)

クラウド型電子契約の何が問題なのか?

以前、下記の記事でクラウド型電子契約システムであるクラウドサインが、登記実務にも耐えうるものになった、という事を紹介しました。

この話は、あくまでも自社内の話になるため、そこまで大きな問題は無く、あくまでも社内関係者間の調整と社内システムの整備だけで済む話でした。

ただ、外部との契約行為については話が別になってきます。

クラウド型の電子契約は、誰でも締結する事ができるため、本来権限を持っていない担当者でも契約行為を行う事ができるのです(無権代理者による契約)。

そのため電子契約を行う(電子署名をする担当者)が、正規の代理権限者である事の証明が双方で必要となります。

書面での代理権限者の証明 ⇒ 電子署名を行う意味が無いので×

電子署名における代理権限の有無確認、証明のポイントは、代表者(大元の権限者)による契約締結担当者(電子署名担当者)への権限移譲です。

そのため、最も確実な方法は、書面による権限の委譲の証明書を双方交わす事になるのですが。

これを行うのならば、最初から紙での契約締結をすれば良いじゃん、という話になり、電子署名を行う意味がほぼほぼ無くなります。

ようは、この話を進めるうえで、権限移譲が行われている事の証明を如何に煩雑でなく効率的に行うか?が論点となります。

電子契約承認者(代理権限者)情報の交換と回覧での対応

そこで、この権限移譲の証明を簡単に行う方法として「電子契約承認者(代理権限者)情報の交換」を提案します。

このサンプルにあるような形で、双方の権限者情報(代表者情報)と代理権限者情報(実際の署名担当者)を交換しあいます。

この情報交換シートは、電子契約実務を進行する上での効率化、が目的の一つです。
加えて、下の方に「宣誓書」が付されており、あまり法務的観点を理解していない方が安易に契約を行う事の牽制が行えます。
また、どちらかが「無権代理者による勝手な契約行為だ」と仮に主張したとしても、明確に書類をやり取りしており、係争案件に発展した場合の材料の一つにできます。
つまり、①実務上の効率化、②無権代理者による契約締結行為へのけん制、③係争案件に発展した場合の材料、の3つの機能があります。

論点である権限移譲証明のタイミングは2つあります。

1つが、上記の情報交換のやり取りに、双方の代表者を含めるというやり方(通常は電子メールが使われると思うので、CCに入れる)。

2つが、電子署名を行う上で、多くのクラウド型の電子契約サービスについている「回覧」機能で代表者に回覧送付する、というやり方です

この2つのタイミングの内、いずれかの方法をとれれば、無権代理者による契約締結のリスクを大幅に低減する事が可能です。

契約締結やり取りの共有の際、仮に権限移譲を容認していない場合において事後的にすぐに異議を述べなければ、代表者の権限移譲について、承認の意思表示が推認されます。

なお、先方代表者のメールアドレスを方針として開示できない、という会社も存在します。
(大企業だと、まぁまぁある。)

この場合、先方の決裁権限規程等と担当者名刺をデータでもらい、先方規程上、明確に代理権限を有している事を確認する方法でも代替は可能です。

会社側として、電子署名管理規程のような、外部にお出しする前提の規程を作成し、提出を求められた際に、即時に提示できるようにするのも良いでしょう。


いずれにせよ、お付き合いする会社により、方針や考え方等々はかなり異なるものです。

一律での対応、というのは現実的に難しい所があると思いますので、相手先の状況や要望、取り引きする内容や重要性、金額の大小等々を考慮して、手間負担とリスクのバランスを適宜探るのが良いでしょう。

なお、上記シートのサンプル(テンプレート)はこちらからダウンロードできます。

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契約書の認印は必要無し(内閣府、法務省、経済産業省が連名)

「押印についてのQ&A」として、内閣府、法務省、経済産業省が連名で書類を出しています(2020年6月19日)。
書類の内容は、契約書への押印行為についてのQ&Aで、内容を一言でまとめると「認印ってあまり意味無いよね」と言っています。
これは、元々そうなのですが、府省が連名で出している点にポイントがあると考えています。

契約書への認印押印は意味が無い

法務省「押印についてのQ&A」

まず、法務省が出しているQ&Aの内容です。

問1.契約書に押印をしなくても、法律違反にならないか。
・私法上、契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない。
・特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。

押印についてのQ&A 令和2年6月19日 内閣府 法務省 経済産業省

契約書には、契約当事者双方が押印行為をするのが一般常識ですが、実は法的には必須条件では無いのです。
今回の、Q&Aは、上述の通りの内容で3つの府省が連名で出している点にポイントがあります。

契約書への認印押印は意味が無い

これまで法的な意味合いがあまり無いにも関わらず、ただの商習慣で「紙」+「認印による押印」が一般的になっていました。
そして、この商習慣がリモートワーク(テレワーク)の普及を妨げてきました。

3つの府省が連名で、やめなされ、と言っているので、ビジネスの現場、官公庁において、今後の印鑑廃止が進むものと期待できます。

なお、ここでは契約書に限定して言及していますが、ビジネスに関連する書類全般がそうです。
例えば、よく請求書に角印が押印されている場合が多いですが、これも必須ではありません。

では契約が成立していることを証明するには?

ここで出てくる問題は、じゃあ、締結した契約書が本物(真正)であることを、どうすれば証明できるのか?という点です。
これまでは、意味は無いと言っても、認印を双方押印していることにより、その契約書が本物であると”推測”され、確かに契約が成立しているよね、ということが一定言えていました。
(ここが争われることは、通常は無いのですが。)

そこで対応した方が良いのが、Q&Aの問6で言及されています。

問6.文書の成立の真正を証明する手段を確保するために、どのようなものが考えられるか。

・次のような様々な立証手段を確保しておき、それを利用することが考えられる。

① 継続的な取引関係がある場合

取引先とのメールのメールアドレス・本文及び日時等、送受信記録の保存(請求書、納品書、検収書、領収書、確認書等は、このような方法の保存のみでも、文書の成立の真正が認められる重要な一事情になり得ると考えられる。)

② 新規に取引関係に入る場合

・契約締結前段階での本人確認情報(氏名・住所等及びその根拠資料としての運転免許証など)の記録・保存
・本人確認情報の入手過程(郵送受付やメールでの PDF 送付)の記録・保存
・文書や契約の成立過程(メールや SNS 上のやり取り)の保存

③ 電子署名や電子認証サービスの活用(利用時のログイン ID・日時や認証結果などを記録・保存できるサービスを含む。)

・上記①、②については、文書の成立の真正が争われた場合であっても、例えば下記の方法により、その立証が更に容易になり得ると考えられる。また、こういった方法は技術進歩により更に多様化していくことが想定される。
(a) メールにより契約を締結することを事前に合意した場合の当該合意の保存
(b) PDF にパスワードを設定
(c) (b)の PDF をメールで送付する際、パスワードを携帯電話等の別経路で伝達
(d) 複数者宛のメール送信(担当者に加え、法務担当部長や取締役等の決裁権者を宛先に含める等)
(e) PDF を含む送信メール及びその送受信記録の長期保存

押印についてのQ&A 令和2年6月19日 内閣府 法務省 経済産業省

内容としては上記の通りなのですが、言っている事は「先方とのやり取りを、きちんとデータ(書面含む)で残しておこう」ということです。

上記にある通り、やりとりのメールや、交換した連絡先情報もそうですし、重要な契約の場合はクロージング会議の録画データ、録音データを保管しておく、ということも考えられます。
最近はZoomなどのWEB会議も一般になり、録画や録音も容易になっています。

また、上記③で言及されている通り、クラウドサインなどのクラウド型契約締結サービスを利用すれば問題が無い話なので、契約書の電子化・ペーパーレス化は日本全体で推進していきたいものです。


印鑑に関する基礎知識に関しては、こちらの記事もご参照ください。

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人事・総務

【朗報】クラウドサインが登記対応!議事録・契約書の電子化が大きく前進

弁護士ドットコム社「クラウドサイン」が商業登記に対応、という報が出ていました。
慎重に検討と協議を重ねた結果、取締役会議事録、株主総会議事録、その他契約書等添付書類といった、商業登記に必要な書類の電子化が大きく前進するという結論に至りました。
今回は、上記件を解説していきます。

クラウドサインが商業登記に対応

リンク先にて、「法務省が商業登記に利用可能な電子署名サービスにクラウドサインを指定」と題して、弁護士ドットコム社が提供する「クラウドサイン」が商業登記に対応する旨の報が出ていました。

本件について、司法書士の先生、弁護士ドットコム社と協議を重ねた結果、「クラウドサイン」にて、登記に必要な様々な書類を電子化することができる、という結論に至りました。
必要な書類とは、取締役会議事録、株主総会議事録、その他契約書等添付書類を指しています。
(クラウドサインを指定しているのは当方が利用しているからで、GMOアグリーも可とのことです。)

そして朗報なのが、エクイティによる資金調達時に必要な株式総引受契約といった、登場人物が多すぎる書類についても対応が可能、という点です。
一度経験したことがある人はわかるのですが、スーパーウルトラミラクルハッピーですよ、これは。


なお、社内保管用の取締役会議事録などについては、元々クラウドサイン対応で問題ありませんでした。
この点(社内保管用)については、下記記事を参照ください。

要対応事項1点

それでは何か対応しなければいけない重要なことがあるか?というと1点だけあります。

それは、「法人実印」に代わる「電子証明書」の取得です。

逆に言うと、これだけです。

電子証明書取得については、法務省HPをご参照ください。
リンク先が直接、電子証明書取得に関するページになります。

具体的なフロー

具体的にフローを説明していきます。
登記実務を自分たちでやっている会社は(おそらく)ほとんど存在しないと思われるので、司法書士の先生に依頼する前提です。

登記に必要な書類PDFを用意する

クラウドサインにて、各登場人物(役員や株主など)が署名対応をする

クラウドサインから電子署名が付されたPDFを出力

法務省指定の「申請用総合ソフト」にて、「法人実印」に代わる「電子証明書」による電子署名を付す

司法書士の先生にデータを提出し、司法書士の先生からオンライン登記を行う

以上です。

びっくりするぐらい簡単です。

為念、書きますが、個別に電子証明書を取得しなければいけないのは「法人実印」に代わる「電子証明書」だけです。
各取締役、監査役、各株主が個別に電子証明書を取得する必要はありません。

法務省指定の「申請用総合ソフト」について

この点は、元の弁護士ドットコム社記事で十分な解説がなされています。

(2)法務省指定の申請用総合ソフトを使用すること

(1)の 商業登記署名の付与を行う際は、法務省が指定する「申請用総合ソフト」(無料)を利用して行なっていただくよう、お願いします。
(略)
Adobe Acrobat有償版と法務省が提供する「PDF署名プラグイン」を使用して電子署名を行う手法もあるのですが(クラウドサインでは検証済み)、この方法ですと登記所による電子ファイルの検証がスムーズに行えないため、とのことです。

サインのリ・デザイン「法務省が商業登記に利用可能な電子署名サービスにクラウドサインを指定」

「申請用総合ソフト」は、リンク先よりダウンロードが可能です

手順書も用意されているので、簡単に対応ができそうです。

注意事項

ここからは注意事項です。
残念事案になりかねないので、よくご確認ください。

代表取締役の変更事案について

これは元記事にも記載がある点です。

代表取締役の就任承諾書や改選などの一部の事象が発生した場合は、
「代表者個人の実印」もしくは「代表者個人が取得した個人の電子証明書による電子署名」が必要
です。

ここで、代表者個人が電子証明書を取得していなかった場合、一律紙の書類での登記対応になります。
紙と電子署名書類の混在ができないからです。

あまりある事象では無いので気にしなくても良いとは思いますが、当該事象が発生する場合は事前に対象の代表取締役候補者の方に電子証明書を取得していただくよう、手配をしておきましょう。

その他、会社の状況に応じて、代表者個人の実印や電子証明書が必要になる場合があるので、司法書士の先生に照会をとっておくと良いでしょう。

一部の登場人物がクラウドサイン対応が不可となった場合

これは結構、笑えないかもしれません。

結論、登場人物がの内、一部(一人)でもクラウドサインサイン対応が不可となった場合、一律紙での申請になります。

ベンチャー企業ですと、VCや投資元事業会社から役員を受け入れている場合があるかと思います。
この場合に、当該VCや投資元事業会社内の規程・ルールにより、クラウドサイン対応が不可となってしまう可能性が存在します。

株式総引受契約なども同様です。
銀行系VCですと、クラウドサイン対応が不可の所が多いので、ある意味、一番省略したいポイントで使えない、ということが想定されます。

この点は、時代がもっと進み、各社が対応を行うことを期待する以外にありません。
そのためにも、世の中全体で要望(プレッシャー)をあげていくことが良いでしょう。

移転等の事象により管轄の登記所(出張所含めて)が変更になった場合

もう一つ、気持ちめんどくさいポイントです。

結論、移転等の記載事項の変更が生じた場合です。

この場合、「法人実印」に代わる「電子証明書」の再取得が必要です。

東京内の移転でも、管轄する登記所(出張所含めて)が変更になった場合、改めて電子証明書を再取得する必要があります。

急成長企業では、会社移転は当たり前だったりするので、きちんと認識しておいた方が良いです。

なお、電子証明書の発行手数料に関しては、節約のテクニックがありますので、併せて認識しておくと良いかもしれません。

クラウドサインの署名回覧について

これは実務進行上のポイントなのですが、クラウドサインは仕様上、登場人物全員が一斉に署名対応をすることができません。

一人一人、順番ずつ署名対応をする形になります。
そのため、一人でも対応が遅い方が出てくると、署名対応全てが停滞することになります。

期日が差し迫っている書類の場合は、回覧の順番や事前の調整・念押し等が必要になってくると思われますので、留意ください。

この点は、弁護士ドットコム社にも改善要望を出しておきましたので、期待して待ちましょう。
皆さまにおかれましても、弁護士ドットコム社に要望をあげるとアップデートが早くなるかもしれません。

定款の記載が電子署名に対応しているか?

定款の記載内容が電子署名に対応しているか?の確認も必要です。

下記の取締役会議事録に関する定めの事例の通り、定款で定められているのならば問題はありません。
しかし、対応しておらず、その上で電子化対応を視野に入れているのならば、どこかの総会のタイミングで定款変更をかけておいた方が良いです。

パターンAが電子署名に対応していない記載例、
パターンBが電子署名に対応している記載例です。

A:取締役会における議事の経過の要領及びその結果並びにその他法令に定める事項は、議事録に記載または記録し、出席した取締役及び監査役がこれに記名押印する。

B:取締役会における議事の経過の要領及びその結果並びにその他法令に定める事項は、議事録に記載または記録し、出席した取締役及び監査役がこれに記名押印または電子署名する。


弁護士ドットコム社より、クラウドサイン電子署名の使い方ポイントに関する記事もでておりますので、あわせてご確認ください。

以上、商業登記書類の電子化対応について解説していきました。

この種の実務は難解で、法務局担当者によっても微妙に対応が異なる場合もあります。
ここが違うよ!とかございましたら、ご指摘いただければ幸いです。

以前、下記記事などで電子化対応について残念結論を考察・解説をしてまいりましたが、本当に変化のスピードがはやい世の中です。
良い事ですね!

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取締役会

法務省の取締役会議事録電子署名容認、登記に使えるのか?

日経新聞より、法務省が取締役会議事録の電子署名を容認、という報道を出しています。
議事録押印でのポイントは、登記に使えるか否か、であり今回の報道ではそこに触れていません。
おそらく、今までも容認されていたことを明確にしただけだと思われます。
登記に使えるか否かは情報が少なく、現状では判断ができません。

(2020年6月18日追記)クラウドサインが登記対応

ついに念願が叶い、クラウドサインが登記対応をとなりました。

詳細は下記記事にて記載していますので、ご参照ください。

法務省が取締役会議事録の電子署名を容認

日経新聞にて、「取締役会の議事録承認、クラウドで電子署名 法務省が容認」と題する報道が出ていました。

 法務省が取締役会の議事録作成に必要な取締役と監査役の承認についてクラウドを使った電子署名を認める。これまで会社法が容認しているかを明示する規定はなかった。新型コロナウイルスの感染防止策の一環で、署名や押印に関わる手続きを簡素にしたい経済界の要望を反映し、明確な方針を定めた。
(略)
 法務省は取締役会の議事録確認であれば「取締役会に出席した取締役らが議事録の内容を確認し、意思表示するものであれば事足りる」としてクラウド型などの署名の利用を認めた。

取締役会の議事録承認、クラウドで電子署名 法務省が容認 2020/05/31 日経速報ニュース

これに関して、大きな前進、というムードが出ていますが、本当にそうなのでしょうか。

こちらの記事でも書いたのですが、取締役会議事録が社内保管用なのか、それとも登記に使用するものなのか、で取扱いが変わってきます。

元々として、社内保管用であれば、クラウドサインやGMOアグリーのようなクラウド型のサービスで問題がありませんでした。

一部、電子署名法の取扱いの問題で、クラウド型サービスの是非が微妙だ、という議論を見かけますが、本質的にここがポイントになるとはあまり思えません。

取締役会議事録実務においては、登記に使えるか否かがポイントで、少なくとも5月31日の日経新聞の報道では、このポイントについて触れているようには読めません。

結論、今まで別に問題無かった点を、法務省があらためて問題無い旨を明確にした、というだけの報道では無いかと見ています。

登記上(商業登記法)のボトルネック

登記申請の際、取締役会議事録・株主総会議事録・就任承諾書・委任状などの書類を添付して法務局に申請することが必要です。
これらの書類には、実印による記名押印が必要です。

そのため、リアルな印鑑を廃止しようとすると、実印による記名押印に代わる電子署名が必要となります。

しかも、その電子署名(代表印/実印)に用いる電子証明書は「電子認証登記所登記官が発行した電子証明書に限る」となっています。
そして役員の押印に関しては、認定認証業者が発行している電子証明書による電子署名、もしくは、マイナンバーカードに内蔵されている電子証明書による電子署名が必要となっています。
つまり、認定認証業者が発行している電子証明書だけで登記ができないのです。

登記に対応できる取締役会議事録・株主総会議事録の電子化にあたっては、満たさなければいけない要件が多く、実用的でありません。

この点に関して、仮に登記にも使える、ということであれば朗報です。
もう少し情報を集める必要があり、そして、ぬか喜びになりそうな気はしてますが、、、。

(参考)電子署名法上で曖昧だった点

2001年に電子署名法が成立しました。
内容としては、電子文書(デジタルデータによる文章)に本人のみがつけることができる電子署名がついていれば、そのデジタルデータは本物であり、確かに電子署名者による署名がなされた、とみなすことができるものです。

クラウドサインやGMOアグリーのようなクラウド型の署名サービスが存在します。
これらのサービスでは契約者(取締役会議事録の場合だと署名もしくは記名押印する人)が確認をし、押印行為を行ったかのようなインターフェースになっているため、あたかも本人たちが電子署名をしているかのように見えます。

ただ、法的には取扱いが微妙で、契約者(押印者)たち本人が、書類を確認しましたよ、ということをクラウド型署名サービス事業者が電子署名をした、というのが実際の所です。
(つまり、押印の当事者たち本人が電子署名をしたわけではないのです。立会人型、とか言います。)

そのため、これらのサービスによる押印行為が法的にどうなのか?というのが議論になります。
電子署名法の観点にたってしまうと、ここがグレーというか微妙にアウトという曖昧なものになってしまうため、現状でも慎重に取り扱う方がいるわけです。

契約行為自体の観点でいうと、当然クラウド型の署名サービスは当然に適法のはずなので、上記の曖昧な点を問題視するのはナンセンスな話だとは思いますけれどね。
(判例的に、ここが評価されたことが無い点もまた曖昧性に拍車をかけてます。)

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