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生産性・業務効率化

頻繁なメールチェックをやめるとストレスが軽減するという研究

メールやSlackのようなチャット・ツールが当たり前になり、頻繁にデジタル・コミュニケーションのためのツールを確認する習慣がついている人は多いでしょう。
しかしながら多くの研究がマルチタスクの弊害を否定しています。
実際に、頻繁なメールチェックをやめるとストレスが研究するようです。

メールチェックの「断食」の実験

ドナルドブレンスクール(カリフォルニア大学アーバイン校)の研究チームは、メールチェックの「断食」を行うと、ストレスが減り、集中力が高まることを示しました。

https://news.uci.edu/2012/05/07/email-vacations-decrease-stress-increase-concentration/

研究チームは、被験者に心拍数モニターを装着してもらい、仕事中のウィンドウを切り替える頻度をソフトウェアセンサーにより検出を行いました。

メールチェックを頻繁に行う人はストレスが多い

その結果、メールチェックを頻繁に行う人は、画面を切り替える頻度が2倍になっており、心拍数も「厳戒態勢」で安定化してしまっていることがわかりました。
(電子メールを使用するグループは平均37回/時間の画面切り替え、一方で使用しないグループは平均18回/時間の画面切り替えだった。)

一方、メールチェックの5日間の「断食」を行った人は、自然な心拍数を維持していたことが示されました。

つまり、電子メールを生活から排除するとマルチタスクが減り、ストレスが減少するのです。
(心拍数が「厳戒態勢」で安定化してしまっている人は、ストレスに関連するホルモンであるコルチゾールの分泌が多いことがわかっている。)

現実社会のデトックスは悪影響が多いですが、デジタル・デトックスに関しては、高い検討の価値があるかもしれません。

この研究は、マルチタスクの主な要因が電子メールにある、という過去の研究をベースにしたものです。

マルチタスクは感情をネガティブにさせる

この種の研究は多く、別の研究ではマルチタスクは感情をネガティブにさせることを示しています。

この研究では、メールチェックへの返信を期限付きで行うタスクを2つのグループにわけた被験者に課しています。

一つ目のグループは、メールの受信は一括でありマルチタスク性が緩い条件で、もう一つのグループは、メールの受信が断続的であり、強制的にマルチタスク性が高まる条件です。

いずれも期限付きの条件ですが、マルチタスク性が高い条件では、人の感情をよりネガティブにさせることが示されました。


現代社会はデジタル・コミュニケーションが容易な環境にあります。
しかし、それは自然と高いストレスを誘発するものです。

意図してデジタル・コミュニケーションの環境から離れる、という取り組みは(それが許されるのであれば)心身の健康に有用と考えられます。

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生産性・業務効率化

クリエイティブな仕事をしている時に音楽を聴くとパフォーマンスが下がる

音楽を聴きながら仕事をするのが好きな人は多いでしょう。
そして、クリエイティブティが向上するか?と尋ねると賛否両論はあるでしょうが、「高まる」と答える人も多いでしょう。
この音楽がクリエイティビティを向上させる、という一般的な見方に対して、研究者たちは逆の効果がある、としています。

音楽を聴きながらクリエイティブな作業を行うと、パフォーマンスが下がることが示されているのです。

音楽がクリエイティビティに与える影響の研究

音楽を聴きながらの仕事については賛否両論があるでしょう。

セントラル・ランカシャー大学、スウェーデンのゲーヴル大学、ランカスター大学の心理学者たちは、音楽がクリエイティビティに与える影響について研究を行いました。
つまりは、賛否両論がある音楽とクリエイティビティの関係について、一定の答え(示唆)を出そう、という取り組みです。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/acp.3532

被験者は全員が英語を母国語とし、視力や聴力等には障害はありませんでした。

研究は3つの実験で構成され、クリエイティビティを測定するために、一般的に用いられる課題に取り組んでもらいました。
課題は、3つの単語を提示し、その3つの単語と関連する1つの単語を見つけ出し、またそれらを組み合わせて共通の単語やフレーズを作る、というものです。

そして実験では、静かな環境条件と、次の3つの条件で行われました。

  1. (英語圏の人にスペイン語の歌詞の音楽など)外国語(聞きなれない)の歌詞が入ったBGM
  2. 歌詞(ボーカル)のないインストゥルメンタル音楽
  3. 被験者が理解できる身近な親しみやすい歌詞の音楽

また、3回目の実験では、「図書館の雑音」という条件で実験を行いました。
この条件では、意味不明の遠方からの話し声、コピー機の音、タイピングの音、紙のざわめきなどの環境音が参加者に流れました。

クリエイティブな仕事をしている時に音楽を聴くとパフォーマンスが下がる

実験の結果、音楽を聴きながら課題に取り組んだ場合、音楽のない静かな環境に比べて、クリエイティビティのパフォーマンスが著しく低下することが示されました。

そして、被験者が「気分が乗ってスムーズにこなせた。」と答えた場合であっても、パフォーマンスが低下していることもわかりました。
つまり親しみやすい音楽により気分が高揚したり、ポジティブな感情を抱いたとしても、実際にはクリエイティビティは低下するのです。

研究者たちは、これは音楽が言語的作業記憶(ワーキングメモリ)を混乱させるためではないか、と考えています。
一方で図書館の騒音ではパフォーマンスが低下しないことも示されており、図書館という安定したノイズ環境である「定常状態」では、その影響はクリティカルではないため、としています。

つまり、音楽のような状態変化が起きる騒音が作業記憶を妨げる可能性がある、ということです。

結論として、音楽を聴きながら仕事をする、という一般的に見られる習慣に疑義が投げかけられた、と言えます。
クリエイティブなパフォーマンスは明確に下がるのです。

なお、別の研究では、ホワイトノイズによる生産性向上効果にも疑義が投げかけられており、ノイジィな環境自体が仕事をする上では好ましくない、と考えるのが良いかもしれません。

ただし、音楽を聴くことによるメンタルヘルスと生産性の関連については不明である点には留意が必要です。

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仕事と健康,運動

冷たいシャワーを浴びるとメンタルヘルスの改善につながる可能性

冷たいシャワーを浴びることによる健康増進の効果や、認知機能向上の効果が知られています。
その他にもメンタルヘルスの改善についても報告をする研究があります。
霊長類が数百万年の進化の過程で経験してきた体温の一時的な変化(寒中水泳など)などの生理的なストレス要因を欠いた生活が脳の機能不全を引き起こしている可能性がある、とのことです。

冷たいシャワーを浴びることにより何故、心身にプラスの影響が出るのか?

冷たいシャワーを浴びると様々なポジティブな効果があります。

例えば、健康増進の効果であったり、認知機能の向上効果であったり、です。

それではなぜ、冷たいシャワーを浴びると心身にプラスの影響が出るのでしょうか?

ホルモンの観点では次のような説明があります。

人は冷たいシャワーを浴びると交感神経系が刺激され活性化します。
それにより、ノルアドレナリンというホルモンが放出され、これにより心拍数や血圧の上昇が起き、血流の改善につながり健康増進効果が出る、ということです。
脳内でもノルアドレナリンのシナプス放出が増加することが知られています。

他にも、新陳代謝の活発化により、健康や認識機能へのポジティブな影響が出る、という説明もあります。

次の研究では進化学的な観点で、この問いへの仮設を検証しています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17993252/

その仮説とは、霊長類が数百万年の進化の過程で経験してきた体温の一時的な変化(寒中水泳など)などの生理的なストレス要因を欠いた生活をしており、このような「熱運動」の不足が脳の機能不全を引き起こしているのではないか、というものです。

他にも、人によりこの状態がより顕著に出る遺伝的な構造を持っている場合も有り得る、としています。

つまり、現代社会の自然から受けるストレスが減少し、それがかえって脳にとってのストレスになっている可能性がある、ということです。

冷たいシャワーを浴びるとメンタルヘルスが改善する可能性の実験

上述の実験では、1日1~2回、冷水シャワー(20℃、2~3分、その前に5分間の段階的適応を行い、ショックを和らげる)を浴びることを数週間から数か月間実施し、メンタルヘルスに与える影響を見ています。

そして、実験の結果として、冷たいシャワーにより抑うつ症状を緩和することが示されました。

なお研究者は、仮設の検証のためには、より幅広い分野での厳密な研究が必要である、としています。

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生産性・業務効率化

冷たいシャワーを浴びると認知機能が向上する可能性がある模様

暖かいお風呂に入ることの効能は様々に知られており、認知症の予防や、睡眠の質の改善など、多岐にわたります。
冷たいシャワーを浴びることについても健康効果が知られており、病気になるリスクが減るという研究報告が出ています。
更に、冷たいシャワーを浴びると認知機能が向上する可能性についても報告がされています。

冷たいシャワーと認知機能の関係を調べる実験

ドイツの高齢者施設にて、冷たいシャワーと認知機能の関係を調べる実験が行われました。
皮膚刺激が認知機能に与える影響を、健康な老人ボランティアを対象に行われた形です。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10378499/

実験では24名の被験者(男性1名、女性23名)を無作為に2つのグループに分け行われました。

実験群では10秒間、10度から12度の冷たいシャワーを浴びた後に、首筋に10度から12度のウェットバックを利用した刺激が1分間与えられました。

対照群は、同様の手順と時間ですが、34度から36度の温水と中間程度の温度で実験が行われました。

認知機能の測定には脳電位の測定により行われました(認知機能が関係すると考えられている脳波が計測されました)。

冷水刺激は認知機能を向上させる

実験の結果、冷水刺激により認知機能が有意に変化する結果が示されました。

冷水刺激を与えた後、CFFは刺激の10分後に32.55+/-2.26/秒(mean+/-SD)から33.06+/-2.25/秒(p = 0.003)に上昇した。30分後のCFFは32.95+-2.3秒(p=0.043)とまだ上昇していた。冷水をかけた後のP-300潜伏時間は、266.5+/-21.1msec(平均+/-SD)から253.7+/-16.9msecへと4.8%減少した(p < 0.001)。温かい刺激を与えた後は、258.69+/-14.8msecから266.17+/-20.1msecへと増加した(p = 0.01)。P-300の振幅は、寒冷刺激後にのみ5%(p=0.004)の有意な上昇を示した。

この実験は少数の高齢者を対象としたものであり、実際の効果の程や若年層に効果あるのか等、不明な点は多々あります。

ただ、健康効果の存在も併せて考えると、冷水シャワーの有用性が推測されます。

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生産性・業務効率化

長時間労働は認知機能や記憶力の低下を招く

長時間労働が身心にダメージを与えることは広く知られており、日本においても「働き方改革」の名のもとに長時間労働の是正が各所で進められています。
フィンランド産業保健研究所の研究によると、長時間労働が健康被害をもたらすだけでなく、認知機能や記憶力の低下を招くことが示されました。

長時間労働と精神機能との関連を調べた研究

フィンランド産業保健研究所は、長時間労働と精神機能との関連について次のような研究を行いました。

研究ではイギリスの中年の公務員2,214人を対象に行われています。

1997年から1999年、また2002年から2004年にかけて、2回の調査が行われ、被験者は5種の精神機能を測定するテストを受講しました。

その結果、週55時間以上働いている人は、標準的な労働時間の労働者に比べて、推論力と語彙力を評価するテストのスコアが低いことがわかりました。

そしてこの影響は累積的なもので、残業時間が多い人ほどスコアが低いことが示されました。

つまり、より高い生産性を求めるためにハードワークを行うことは、結果として生産性を下げることにつながるのです。

なぜ長時間労働が精神機能に悪影響を与えるのかは不明

ただ、なぜ長時間労働が精神機能に悪影響を与えるのかはわかっていません。

研究者は、長時間労働の結果として、睡眠障害の増加やうつ病、不健康なライフスタイル、心血管リスクの上昇等が起き、これらにより引き起こされるのでは?としています。

つまり、ストレスを受けた結果として、巡って精神機能である認知機能や記憶力に悪影響を与えるのでは、ということです。

ストレス過多な状態が続くと「性格が悪くなる」ことも知られており、その結果として職場がギスギスして生産性がさらに低下することも容易に想像できます。

アルコール摂取量も増える

長時間労働の労働者は、標準的な労働者に比べて、アルコール摂取量が多いこともわかっています。

過度なアルコール摂取は健康被害をもたらすことも広く知られており、長時間労働が負のサイクルを生み出す要因になることが容易に推測できます。

研究者は、長時間労働を強要することは実際にはビジネスのためにならないということを経営者に伝えるべきだ、としています。

従業員が仕事と生活のバランスをうまく取れるようにすることは、ビジネス上の意義があるのです。

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仕事と健康,運動

睡眠不足は不安を増大させる

睡眠不足がパフォーマンス、つまりは生産性に悪影響を与える、ということは非常に知られています。
また、健康にも様々な悪影響を与えることも同様によく知られています。
加えてメンタルとの関連性もよく語られますが、睡眠不足に陥ると不安が増大する、ということはあまり知られていません。

慢性的な睡眠不足は、不安を増大させる可能性があるのです。

睡眠不足の時に活性化する脳領域と不安を感じた時に活性化する脳領域は同じ

慢性的な睡眠不足に陥ると、生産性が落ちたり、体調が悪くなったりした経験がある人は多いでしょう。
また、もしかしたら、不安な気持ちになった経験がある人もいるかもしれません。

一般的に、不眠症の人は、不安障害を抱えるリスクが多いとされています。
しかし、これは相関性が見られたのみで、臨床的にどのように関係しているのか?は示されてきませんでした。

カリフォルニア大学の研究チームは、睡眠不足の時に活性化する脳領域と不安を感じた時に活性化する脳領域は同じであり、睡眠不足が不安を増大させる可能性について示しました。
たった一晩寝なかっただけで、fMRI検査において、不安を感じた時に示す脳活動パターンが見られたのです。

https://www.researchgate.net/publication/327021316_Sleep_loss_causes_social_withdrawal_and_loneliness

意図的に睡眠不足の状態を作ると不安が増大した

この研究では18人の健康な成人を被験者とし、半分を睡眠不足グループ、半分を対象群となる通常グループにわけて、2晩過ごしてもらいました。
そして、それぞれの夜と朝に被験者の不安レベルが測定されました。

その結果、睡眠不足グループにおいて、翌日の不安レベルが30%上昇することが示されました。
この水準は、臨床的に不安障害と診断される可能性がある水準です。

併せてfMRI検査が行われ、上述の通り、睡眠不足グループにおいて不安を感じた時に示す脳活動パターンが見られました。

睡眠不足により増大した不安は、ぐっすり眠ると解消される

この睡眠不足により誘発された不安は、被験者が一晩しっかりと睡眠をとると、正常なレベルにまで回復したこともわかりました。

研究者は、「十分に休息しているときには、感情をコントロールする脳領域が不安を抑えるが、たった一晩の睡眠不足でも感情を制御するプロセスが発動しなくなる。」としています。

この研究により、不安が睡眠不足を誘発する、という従来の知見に加えて、睡眠不足が不安を誘発する、という双方向の相互作用がある可能性が示されました。


忙しい現代人は、睡眠不足を削って「生産的」なことに時間を費やしたいと考えがちです(その「生産的」が仕事なのか、趣味のことなのかは問わず)。

しかし長期的に見れば、「生産的」なことよりも、睡眠をしっかり取ることの方がはるかに重要であると言えます。

睡眠不足により、不安サイクルという完全な悪循環に陥るリスクがあるのですから。

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仕事と健康,運動

睡眠不足は身心に悪影響を与えるのみならず肥満や歳をとった時の体力にも悪影響を与える

睡眠不足がパフォーマンス、つまりは生産性に悪影響を与える、ということは非常に知られています。
そして、生産性に悪影響を与えるだけでなく身心にダメージを与え、幸福を感じにくくなってしまうこと、また肥満や歳をとった時の体力にもマイナスの影響を与えることが研究でわかっています。

睡眠不足は身心に悪影響を与える

米・サウスフロリダ大学の研究で、わずか1日だけでも睡眠不足になると身心に悪影響を与える、ということが示されています。

https://academic.oup.com/abm/advance-article-abstract/doi/10.1093/abm/kaab055/6314765?redirectedFrom=fulltext

研究では約2,000人の中年を対象に、8日間の睡眠時間や感情、生活行動等についてデータを収集し、分析がされました。
その結果、睡眠時間が6時間を下回った人において、有意にネガティブな感情(怒り、いらだち、神経質、フラストレーション、神経質等)が増加したことがわかりました。
また、ネガティブな感情のみならず、胃腸や呼吸器等、健康上の悪影響も増加したことがわかりました。

この悪影響は睡眠不足が続くと悪化を続け、3日目でいったん落ち着くものの、6日目で更に悪化する事も示されました。

この悪影響から逃れるためには十分な睡眠が必要である、としています。

睡眠不足は幸福度を下げる

カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究では、睡眠不足がポジティブな出来事からうける幸福な感情が低下し、ネガティブな感情が増加すること、つまりは幸福度が下がることが示されました。

https://doi.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fhea0001033

研究は、約2,000人の中高年を対象に行われ、8日間の睡眠時間、ポジティブもしくはネガティブな出来事、その出来事から感じた感情等についてインタビュー調査が行われました。

その結果、睡眠不足になると、ポジティブな出来事からうける幸福な感情の増加幅が低下すること、逆にネガティブな出来事からうける幸福な感情の減少幅が増加することがわかりました。

一方で、十分な睡眠をとっている被験者は、ポジティブな出来事からうける幸福な感情の増加幅が増加すること、ネガティブな出来事からうける幸福な感情の減少幅が低下することもわかりました。

研究者は、睡眠が与える身心への影響のみならず、人生の幸福にも影響をしていることを指摘しています。

睡眠不足は肥満につながる可能性

さらに、睡眠不足が肥満につながる可能性についても指摘されています。

フランス・国立衛生医学研究所の研究では、睡眠不足が肥満と関連があることが示されています。

https://www.afpbb.com/articles/-/2375648

研究では、睡眠不足の状態になると、食欲抑制ホルモンであるレプチンが体内で18%減少すること、一方で食欲増進ホルモンであるグレリンが28%増加することが示されました。

この睡眠不足が言う睡眠の時間は、1日4時間睡眠を2日間繰り返した場合、とのことですが、現代人の睡眠状況では珍しくないかもしれません。

他の研究でも、睡眠時間が短い人は肥満傾向があることが示されており、肥満と言う観点でも、長期的な身体への悪影響が推測されます。

睡眠不足は将来、介護施設に行くリスクを高める可能性

そして、睡眠不足は将来、介護施設に行くリスクを高める可能性があることが示されました。

この研究では、平均年齢83歳の高齢女性約1,600人を対象に、ウェアラブルデバイスによる3日間の行動データが取得され、そして追跡調査により5年後の介護施設への入居状況が調査されました。

https://cakehealth.com/2865-sleep-disturbance-nursing-homes.html

その結果、睡眠時間が短い女性(夜間に起きている時間が長かった女性)は、有意に介護施設に入居する割合が高かったことが示されました。

この結果は、認知症との関連も考えられるため、睡眠不足と介護施設に行くリスクが直接的に結びついているとは限りません。
また、高齢者が眠らない、ということが周囲の介護者のストレスを増大させ、介護施設に入居させるインセンティブが高まる、という可能性も考えられます。

しかし、睡眠不足が身心に悪影響を与える、ということを考えると、長期的な身体機能や認知機能の低下を招き、介護施設に行くリスクを高める可能性は十分にあると言えます。


現代人は、睡眠を十分にとれる環境の確保が難しいのは確かなことでしょう。

しかし、これだけの悪影響があることを踏まえれば、如何に睡眠時間を確保するのか?は重大な検討事項であるのは間違いがないでしょう。

自分自身の人生を大事にするのであれば、良質な睡眠を十分な時間、取れるよう、最大限の工夫をすべきと言えます。

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睡眠不足は仕事の効率、つまりはパフォーマンスを低下させる

良く知られた話ではありますが、睡眠不足は仕事の効率を下げます。
一方で、週末に寝だめして睡眠不足分を補おう、という考えもありますが、こちらについて効果がない、ということはあまり知られていません。
今回は睡眠不足がパフォーマンスに与える影響について見ていきます。

睡眠不足は酔っているのと同じレベルでパフォーマンスが低下する

睡眠不足は仕事の効率、つまりはパフォーマンスを低下させる悪影響があります。

このパフォーマンスの低下は、一部の研究によると、ビールを1,2本空けた、ほろ酔いと同じレベルとされています。

https://www.forbes.com/sites/kellyclay/2013/09/04/didnt-get-enough-sleep-you-might-as-well-be-drunk/?sh=657e6bb010e2

睡眠不足分を、カフェインによる覚醒効果でカバーしようという考えが一般的ですが、生産性向上効果は限定的です。
単純作業の効率は確かに回復しますが、複雑な思考を要するタスクの効率は全く回復しないことがわかっています。

お酒を飲んで仕事をしてはいけない、というのは社会の常識となっていますが、睡眠不足にならざるを得ない位に仕事が多いのは何故なんでしょうね???

なお、仕事の効率だけでなく、もちろん勉強の効率も下げます。
社会人だけでなく、学生にとっても睡眠不足は大敵、ということです。

https://www.bbc.com/future/article/20180815-why-sleep-should-be-every-students-priority

16分程度の睡眠不足でもパフォーマンスは低下する

では、どれくらい睡眠時間が短いと、パフォーマンスの低下がおきるのでしょうか?

この答えは次の論文で研究がされており、その時間は16分程度からパフォーマンスの低下が起き始める、とされています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30905693/

研究では、IT系企業に勤める会社員130人を対象に行われ、睡眠時間とパフォーマンスの関係についてアンケート調査が行われました。
その結果、平均して睡眠時間が16分短くなるとパフォーマンスの低下が起きる、ということがアンケートの回答から示されました。

対象人数も少ないことと、アンケートによる自己申告によるものなので16分という時間の正確性については、まだまだ疑問があるものの、わずかな時間でも睡眠時間が短くなると悪影響を受ける、ということはわかります。

週末に寝だめしても睡眠不足によるダメージは回復できない

睡眠不足に対して、週末に寝だめして解消しよう、とする人が大勢います。

しかし、その効果ははっきりと言ってありません。

こちらで紹介されている研究で、寝だめによる認知機能回復効果について検証が行われています。

https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2003652/Lack-sleep-Weekend-lie-doesnt-work-days-just-6-hours-sleep.html

そして、結論として、寝だめの効果をはっきりと否定しています。

眠気だけは確かに解消されますが、それによる認知機能回復は期待できない、ということです。
カフェインによる覚醒効果の話と一緒ですね。

この話は実は非常に恐ろしく、脳神経に物理的にダメージを与える、という研究もあります。

https://www.pennmedicine.org/news/news-releases/2014/march/penn-medicine-researchers-show

寝だめするよりも平日にちょっとでも良いので昼寝を

結論として言えるのが、寝だめをするよりも、ほんのわずかな時間でも良いので日中に昼寝をしましょう、ということです。

こちらのまとめでは効率的な休憩のとり方について記事をまとめています。

忙しい現代人は、短い休憩でもとることが難しい方が多いでしょうが、効率的な休憩のとり方を知れば、多少でも生産性をあげることができるはずです。

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「寝てないアピール」がプラシーボ効果で本当に寝不足と同じ悪影響を受ける可能性

「寝てないアピール」がダサい、ということは大分周知されてきています。
一方で、「寝てないアピール」がプラシーボ効果で本当に寝不足と同じ悪影響を受ける可能性についてはほぼ知られていません。
プラシーボ睡眠、プラシーボ寝不足の悪影響について見ていきます。

プラシーボ睡眠のポジティブな効果

睡眠不足はパフォーマンスに多大な悪影響を与えます。

それのみならず、リスク判断を歪める可能性や、認知症等のリスクの向上など、様々なデメリットが睡眠不足にはあり、この悪影響はカフェインの覚醒効果ではカバーできない、ということもわかってきています。

しかし、もしかしたら「よくネタ」と思いこむことがパフォーマンスへの悪影響を緩和できるかもしれません。

こちらの記事では「プラシーボ睡眠」について紹介しています。

https://www.theatlantic.com/health/archive/2014/01/study-believing-you-ve-slept-well-even-if-you-havent-improves-performance/283305/

プラシーボ睡眠の研究概要

研究では、学生達に前日夜の睡眠の質について10段階評価で報告してもらいました。

その後、研究者は学生達に実験の背景を説明するために、睡眠が認知機能に及ぼす影響について簡単なレクチャーを実施しました。
そのレクチャーでは、「成人は通常、睡眠時間の20〜25%をレム睡眠に費やしており、レム睡眠が少ないと学習テストの成績が低下する傾向があること、また、レム睡眠の割合が25%以上の人は、学習テストの成績が良くなる。」という虚偽の説明がされました。

また、脈拍、心拍数、脳波の周波数を測定する機器に接続され、「これらの機器により、前日夜にどれだけのレム睡眠をとったのかを把握することができる。」という、これまた虚偽の説明がされました。

そして、被験者一人一人に、16.2%または28.7%のレム睡眠をとったと伝えました。
(実際には脳波しか測定していないし、どれだけのレム睡眠をとったのかの計算もされていない。)

このような心理的なコントロールを受けた後、被験者は聴覚的注意力と処理速度を測定するテストを受けました。
(実験は2回行われ、実験の偏りをコントロールしながら、同じ条件の実験が繰り返された。)

プラシーボ睡眠、もしくはプラシーボ寝不足によりパフォーマンスが変わる

上述の実験の結果、レム睡眠が平均以上であると言われた被験者はテストのパフォーマンスが高いことが示されました。
また、レム睡眠が平均以下であると言われた被験者は、テストのパフォーマンスが低いことが示されました。

この結果は、被験者が自己申告した睡眠の質にフォーカス(自己申告による偏りを排除)をしても同様の結果が得られました。

つまり、実際の睡眠の質に関する自己申告よりも、研究者から与えられた「嘘の情報」に大きな影響を受け、パフォーマンスが変化したのです。

まとめると、「寝てないアピール」はプラシーボ効果で本当に寝不足と同じ悪影響を受ける可能性があるということです。

自分がどれだけ疲れているのか、口にすることはパフォーマンスに悪影響を与える可能性があることを考えると、「よく寝た」「元気だ」と口にする方が良いと言えるでしょう。
「寝てないアピール」は、マウンティングとしても効果がありませんしね。

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睡眠とパフォーマンスのTipsまとめ

睡眠とパフォーマンスのTipsに関する記事のまとめになります。

睡眠の質を高める

睡眠とパフォーマンス

睡眠と健康

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