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監視カメラ(セキュリティカメラ)市場概観

今回は、監視カメラ(セキュリティカメラ)の市場について概観していきます。
人々のセキュリティ意識の高まりをはじめ、年々、監視カメラの市場は大きくなってきていましたが、コロナ影響により投資意欲自体が一時的に減少しています。
AIの発展等、後押しする背景はありますが、果たしてどのようになっていくでしょうか?

監視カメラ(セキュリティカメラ)市場

市場概観

監視カメラの市場は下記図のように2019年までは増加を続けていました。

2020年の落ち込みは、新型コロナウイルス感染拡大の影響による、監視カメラ自体の設置が出来ない、案件がペンディングになった等になるなどが大きく影響しているとの事です。

矢野経済研究所の推測によると、「あくまでも新型コロナウイルスの影響によるもので、監視/モニタリングカメラの需要自体が消滅したものではない。」としつつも、「監視カメラは設備投資に含まれ、直接本業の利益に影響する製品ではないという点をふまえると、小売・流通分野においては、今後3年ほどは投資が行われにくくなるだろう。」としています。

導入における判断要素としては「直接本業の利益に影響する製品ではない」点から、費用が一番の項目にあがっています。
当然の内容と言えますね。

同上

なお、B向けだけでなく、C向けに関しても費用が一番の判断要素になる点はかわりません。

市場成長を後押しする要素

監視カメラ市場の成長を後押しする要素として、テクノロジーの進歩に触れないわけにはいかないでしょう。

ストレージ、特にHDDはここ30年~40年で劇的に容量あたりの単価が激減し、近年は価格が下がる余地がほとんど無い水準にまで、単価が減少しています。
SSDに関しても同様で、容量あたり単価が急激に減少していっています。

なお、監視カメラにおいては、SSDを使うまでも無く、HDDで十分です。

ストレージの次は通信速度の向上です。

監視カメラの設置において面倒になるのが、費用面もそうなのですが、やはり設置自体の煩雑性です。

電源の確保と、ストレージまでの配線。

電源の確保に関しては、そこまで難易度の高いものでは無いでしょうが、ストレージまでの配線はやはり厄介です。
1台だけの設置ならともかく、複数台設置するならば、配線問題をクリアしなければいけません。

これを簡単にクリアするのが無線通信ですね。
通信速度は、近年、劇的に向上を続けています(動画データは容量が重い)。

監視カメラ(セキュリティカメラ)サービスの単価は劇的に下がっている

上記のような、技術の進歩により、監視カメラ(セキュリティカメラ)の価格も劇的に下がっています。

safie HPより

これは一例なのですが、カメラ本体を初期費用として、月額1,000円代から提供しているクラウド型のサービスが増えています。

コンセントとネットワーク(WiFi)に接続さえできれば利用できるようになるので、価格面も利便性も劇的に改善しているのが現状です。

新型コロナウイルス換算拡大による、経済的な影響が緩和すれば、再度、市場は成長曲線を描いていくでしょう。

監視から見える化に(ネットワークカメラへのシフト)

感染リスク低減のための利用

これまでは、純粋に監視カメラ、つまりセキュリティ面での市場の話をしてきました。
これからは、監視から見える化、ネットワークカメラへのシフトと称して、未来のビジョン的な話をしていきます。

新型コロナウイルス感染拡大により、別の観点でのニーズが産まれました。

それは「ソーシャルディスタンシングテクノロジー」です。

ソーシャルディスタンシングテクノロジーとは、ようは「ソーシャルディスタンス」の実現を補佐するための技術全般のことを指します。

米ガートナーが公表している「先進テクノロジーのハイプ・サイクル」の2020年版に突如として登場し、ここ最近、注目を集めているものです。

ガートナー資料より

これだけだとイメージが掴みづらいと思うので、具体例を見ていきましょう。

こちらはNECが開発・公表した技術なのですが、カメラ画像から人の密集度合を判定することができるのですね。

監視カメラの「三密(密閉、密集、密接)」の防止に向けた利用です。

他には、サーモカメラ(体温測定)としてのニーズも出ています。

非接触での体温測定は、迅速な体温測定のみならず、感染リスクの低減も図れるため、非常に有用と言えます。

このように、設備投資を控える風潮がある一方、別のニーズが誕生しており、向かい風と追い風が混じった状態になっているのですね。

利益につなげる利用へ

さて、上の方で監視カメラに対して「直接利益に影響する類の投資ではない」と言った事を書きました。

これは一般論としてはそうなのですが、近年においてはAI技術の発展により、利益にもつなげよう、という動きがあります。

この図にある通り、監視カメラはネットワークカメラとして、監視から「見える化」へのシフトが起き始めています。

一般的なセキュリティ面の強化のみならず、プラント/工場における、工程管理用途の需要増加がそうですね。

また、店舗/流通においても、利用用途の変化が起き始めています。

この図の通り、「来場者カウント」「行列カウント」「顔認証」「性別・年齢分析」「動線分析」への活用が提案されています。

例えば小売業ですと、POSデータにより、概ね何歳位の男性なのか女性なのか、を判別する事は出来ていましたが、情報量としては不十分です。
ポイントカード等により、バイネームで収集情報を広げる事例もありましたが、限定的でした。

AIの使用を前提にネットワークカメラを活用すれば、様々な角度で顧客分析を行え、提供サービスの価値向上につなげる事が期待できます。

意欲的な製品も続々と登場している

AIの発展から、様々な会社から意欲的な製品が続々と登場しています。

Ring Always Home Cam

例えば、Amazon参加のRingから発表された「Always Home Cam」です。

Ring HPより

この製品は、普段は所定のボックスの中に納まっているのですが、自宅の各所に設置されたセンサーが反応すると、飛びあがり、トラブルが発生したとおぼしき場所まで飛んで監視をはじめることができます。

「監視カメラ + ネットワーク + AI + ドローン」という事ですね。

イメージは動画を見た方が早いので、下記も参照ください。

ATOM CAM

こちらはアトムテック株式会社が発売している「ATOM CAM」です。

これの特徴は大きく2つあります。

1つが劇的に安い事(1台2,500円!)、もう1つが「エッジAI」を搭載している事です。

エッジAIですが、これはカメラ側で簡単なAIの処理を行う事がでいる技術です。
通常は、データをネットワークを介して所定のサーバーに転送、サーバー側でAIの処理を行い、ユーザーにデータを返す、という事を行いますが、「エッジAI」ではサーバーを介す必要が無いのです。

迅速性・タイムリー性が求められる用途においては非常にポテンシャルがあると言える製品です。

アトムテック社HPより

監視カメラは昔からあるレガシーな製品ジャンルですが、ネットワーク、AI、他技術と組み合わされることにより、可能性が拡がったジャンルとなりました。

これからどのような製品やサービスが出てくるのか、非常に楽しみです。

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車載はスマートスピーカー普及のきっかけになるかも

商品のジャンルとしてスマートスピーカーは一定の市場を獲得したものの、まだまだ普及率は低い状態が続いています。
そのような中、Amazonより車載型のスマートスピーカーが日本上陸となりました。
これは、日本におけるスマートスピーカーの普及のきっかけになるかもしれません。

Amazonより車載スマートスピーカーが日本上陸

Amazon Echo Auto プロモーション写真より

海外では先行して展開されていたようなのですが、日本にもついに上陸しました。

Amazonより9月25日、車載向けのEcho端末「Echo Auto」が発売されます。
お値段、4,980円と感覚値としては非常にお手頃感があります。

Amazon Echo Auto 販売サイトより

筆者は車を所有しておらず、また、仕事やレンタカー利用などもないので、全くと言って良いほど車を運転していません。(免許、いい加減、返上しようか否か迷いつつ、身分証明書だけには有用なのでホールドしたまま。)

そのようなために、非常に意識が低かったのですが、車とスマートスピーカーの相性は非常に良いな、これはスマートスピーカー普及のきっかけになるかも、と思った次第です。

スマートスピーカーって、ジャンルとしては定着しているものん、普及率がまだまだ全然なんですね。

スマートスピーカーの統計的数字

まぁ、まずは市場規模からでしょうね。

スマートスピーカー(ハードウェア)の国内市場は、現状100億円レベルです。

5年後の2025年には倍の200億円にまで成長する、と言われています。
これには、但し書きがついています。

ただし、音声アシスタント機能がスマートスピーカー以外の家電製品にも広く普及すると予想されるため伸長率は徐々に鈍化するとみられる。

ようは、ハードウェアに入っているものだけじゃなくて、「会話型AI」という大きな括りの中でも広がっていくから、ハードウェア自体の市場規模については成長が鈍化していくよ、という事ですね。

矢野経済研究所の調査では、ハードウェアを含まない「会話型AI(対話型AI)」の市場も伸びていき、単独で100億円を超えていく、としています。
これは家電製品とかに入るC向けのもののみならず、接客や問い合わせ対応のような、B向け製品も含んでいる形です。

では、この市場規模に対して、普及率はどうなのか?が次の図です。

なんと、スマートスピーカーの普及率はたったの6%なんですね。
(2019年頭資料なので、今はもう少し伸びてはいるはず。)

そんな状況なので、認知度も低いです。
そもそも「知らない」という人が2割強、「名前を知っている程度」が6割弱です。

同上(電通デジタル資料より)

この状況は、致し方ない部分はあるかと思います。

というのも、ぶっちゃけ用途が音楽を聴く位に限定されます。

音声操作やAIの対応だって、まだまだ技術的に不十分で、「おもちゃ」の域を超えないのが使っていての正直な感想。
本格的な使用に耐えるまでは、まだ長い時間を要するでしょう。

とは言え、の中で、車載に関しては相性が良いのでは、と考えます。

車とスマートスピーカーは相性が良い

スマートスピーカーで何をするのか?というアンケート結果が次の図です。

まぁ、当たり前っちゃ、当たり前ですが、何かしらについて「聴く」ことに使われています(当たり前ですね)。

音楽、天気予報、ニュース、ラジオ、予定。
こういった事を「音声」で検索したり指示を出して、「音声」で聴く、というスタイルですね。

同上(電通デジタル資料より)

一方、車を運転している時、(運転と並行して)何をしているか?というと、出てくるトップが「音楽・ラジオを楽しんでいる」です。

(あんまり、この種のアンケートが転がっていなかったので、”主婦”向けの調査になりますが、それ以外の層でも大きく変わらないと推測されます。)

スマートスピーカーの機能と、運転中にやっている事、が見事に合致するんですね。
そして、目で見ずに音声で操作できるのも、運転との相性が良いのは言うまでもありません。

実際、トヨタもAlexaの導入を決めています。

https://response.jp/article/2018/01/10/304515.html

結論は、数年後、蓋をあけてみて、にはなりますが、スマートスピーカーの普及と性能の向上、各種サードパーティーからの多様なサービスの提供を期待してしまいます。


なお、ガートナーが公表しているハイプサイクル(2019年)において、「会話型ユーザー・インターフェース」は、「過度な期待」のピーク期に来ています。

とりあえず、目の前の商品展開自体は、高い期待値に対して、低い価値提供に留まるんだろうなぁ、とは思っています。

これからのジャンルですね。

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お一人様向けサービスは、外食の復活に良いのでは?

数年前から「お一人様需要」という言葉がにわかに使われるようになり、2019年には「お一人様向け」のサービスが各業種から誕生していました。
コロナ影響により、下火にはなりましたが、ここ数ヶ月盛り上がりの兆しが出ています。
お一人様向けサービスは、特に外食の復活に良いのでは?という事を考えていきます。

Googleトレンド「お一人様」より

お一人様向け外食検索サービス「ソロメシ」

今回、なんでこんな話題を出したのか?と言うと、株式会社ホーン、という会社から「ソロメシ」というサービスがリリースされていたのを見たからです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000037035.html

どんなサービスか?と言うと、「お一人様向け」の飲食店を検索できる、というまぁシンプルなサービスです。

「ソロメシとはおひとりさまの食事に特化したグルメアプリです。1人で食事に行く際に出る「今いる場所から近くのお店を知りたい」「1人で入れるお店を知りたい」「1人でも美味しい物を食べたい」というニーズにお応えします。」

という事ですね。

単価、5,000円以上の高価格帯に絞った「ソロメシプレミアム」というサービスも、併せてリリースされているようです。まだβ版のようですが。

http://premium.solomeshi.jp/

なお、日本国内の単身世帯数は年々増加を続けており、今後も増え続ける事は確実ですので、「お一人様」をターゲットとするのは、マクロ感としては非常に正しいです。
デモグラフィー(人口動態)は、数少ない「外れない」統計データですし。

みずほ情報総研「「単身急増社会」を考える」より

「お一人様」での外食は躊躇する方が多い模様

なお、ソロメシのサービスサイトにも記載がありましたが、「恥ずかしい」等の理由で、「お一人様」での外食は躊躇する方が多いようです。

上記のアンケート調査では、男性では2割強、女性では4割前後の方が、一人で飲食店を利用するのが「恥ずかしい」と回答しています。

(全く、理解できん。というか40代男性、君らはなんだ?ただの独り言です。)

そんな形で、下記のような業態が「一人で入れる飲食店」として回答されています。
(下の方が逆に言うと「一人で入れない飲食店」。)

冒頭で紹介した「ソロメシ」は、飲食店全般をカバー、「ソロメシプレミアム」は下の方の料亭やフレンチ等をカバーしている感じですね。

なお、別のアンケート調査では、フレンチ専門店のような業態が「ひとりで行くことに抵抗感を感じる場所」として上位に位置しているので、マッチ感はあるように思います。

いずれにせよ、まぁまぁな種類の業態に対して、消費者は「一人では行きづらい」と感じているわけです。
「お一人様」向けに特化したサービスは、ニッチになるかもしれませんが、ポテンシャルは感じます。

「お一人様」向けにサービスのカスタマイズはした方が良い

ここでポイントだと筆者が考えるのが、「お一人様」向けにサービスをカスタマイズする事です。

こういう場面で、飲食店がやりがちなのが「ただ単純に1人分の料理を用意すること」だったりします。
ようは、複数人に提供していた従来の料理について、シンプルに1人分を用意するだけにカスタマイズを留めてしまうのですね。

これまた別のアンケート調査になるのですが、下記のような点に関して、一人で行動する事に対するネガティブ感を感じているようです。

例えば、ソロメシプレミアムをベースに考えてみると、まずサービス自体で、一番上に来ている「おひとりさまでは入りにくいお店・場所がある」を何とかクリアできるかもしれません。

しかし、2番目以下は工夫が必要そうです。

2番目の「感想を言う相手がいない」に関しては、SNSでアップしやすいように、料理の提供時に「写真をとりますか?」といったお声がけをしてみる、料理の感想に対してコミュニケーションをとってみる、といった工夫が考えられます。

他にも、食べ方に関する丁寧な説明、何か仕切りや死角になるようなスペースで人の目を遮る、少量多種類の料理を提供する、といった形で、一人でも極力最大限に堪能できるような工夫を考えて、サービスのカスタマイズに取り組むのが良いのでは無いでしょうか。

一人行動が好きな人も存外多い

なお、これまでは「一人で飲食店に行くのを躊躇する」人を前提に話をしてきましたが、世の中には当然に一人行動が好きな人も大勢います。

Grapps「【アンケート】一人で外食できる? お一人様事情を調査!」より

単純に「お一人様」が苦手だ、という方の事を想定するだけでなく、「お一人様」が好きだ、という人に対して、楽しみを最大化するような工夫も同時に考えていくのが良いでしょう。


なんにせよ、直近の市況は外食産業にとって冬の時代です。
しかも、それはしばらく続きます。

ありとあらゆる方法、切り口で、顧客に来てもらう方法について考え、工夫を凝らしてくことが必須と言えます。

「お一人様」は、感染リスク的な意味では、非常に合致している利用方法ですし、改めて「お一人様」向けサービスを取り入れていくことは、外食の復活の一助になるかもしれません。

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コンビニの売上が6ヶ月連続で前年比マイナスだそうです

日本フランチャイズチェーン協会にて主要コンビニの業績が公表されており、それにあわせていくつかのメディアが、6ヶ月連続で前年比マイナスとの報道を行っていました。
今回は、コンビニ業界で起きている事を概観していきます。

6ヶ月連続の前年比マイナス報道

報道の内容は次の通りです。

日本フランチャイズチェーン協会が23日発表した8月の主要コンビニ7社の既存店売上高は、前年同月比5.5%減の9059億円だった。
(中略)
売上高、来店客数ともに6カ月連続で前年同月を下回った。

共同通信「コンビニ売上高5.5%減」より

これを見て、なるほど、コンビニ業界も大変なんだな、と受け止めるのは、まぁその通りだとは思います。

ネットの中には、24時間営業問題、フードロス問題、プラゴミ問題で逆風が吹いていた中でのコロナ影響だから、そもそもを見直さないと、と厳しい意見も出ていました。

この意見は一部の正しさはありつつ、もう少し数字を分解して考えてみた方が良いでしょう。

コンビニの苦境は観光客減とリモートワーク影響

こちらの記事でも解説したのですが、基本的にコンビニの苦境は「観光客減」と「リモートワーク影響」が大きいです。

下図の通り、主要な観光地域、そしてビジネス都市において前年比マイナスが大きくでています。

ようは、観光客に支えられていた消費はコロナ影響により観光客が激減している事、ビジネス都市においてはリモートワークに移行した企業が相対的に多いであろう都市から労働者の姿が減った事、が影響しているわけです。

緊急事態宣言が明けた6月以降は、従前の勤務形態に戻った会社も多いのか、各地で消費が回復しつつあった、というのがこれまでの状況です。

(7月以降の数字は、9月末に8月分までが更新されるので、それを持って数字を集計して記事をあげます。)

コンビニという事業運営、そしてその経営母体に対するモラル的云々は、まぁあまり関係が無いと言って良いでしょう。

コンビニ別に見てみる

コンビニ別に状況を見てみると、実は明暗がはっきりと分かれます。

下記はコンビニ各社が公表している業績資料を元に作成したグラフです。

各社公表資料より作成

セブンイレブン、スリーエフは今回のコロナ影響下においても影響を最小限に抑えて踏みとどまっています。

一方、ローソン、ファミリーマート、ポプラは著しいマイナス影響を受けている状況です。

規模の影響もあるのかと思いましたが、どうやらそうではなさそうです。

おそらく、どの領域の商品に力を入れているのか?が大きく影響しているのでは無いかと考えられます。

非食品、つまり食品類以外の商品については、各社とも取り組みの切り口は異なれど、一様に商品を取り揃えていますが、食品類は違います。

今回のコロナ影響下においては、日持ちのしない日配食品より、日持ちのする加工食品の方が、売上の下げ幅が小さいことがわかっています。

セブンイレブンは、日配食品より、加工食品が強い印象です。
(特に、パックのお惣菜類は非常に美味ですし、消費者から受け入れられるのがよくわかります。)

ファミリーマートも、「お母さん食堂」と言ったパックのお惣菜類はあるものの、店内調理品が多いのも特徴です(コンビニ内におけるファーストフード)。
ローソンも同様で、店内調理が多く、今回のコロナ影響下においてはマイナスに働いたものと考えられます。
(さらにローソンは、各種PB商品のデザイン改悪もあり、お惣菜類のマイナス影響は大きいものと思われます。)

ミニストップも店内調理を強く押していますね。
ポプラは全体の中途半端感がそもそも良くないものと思われます。
スリーエフの堅調は謎なのですが、地域毎のカスタマイズは他コンビニよりも柔軟に行われている印象なので、その柔軟性がコロナ影響下を最小限に抑えた可能性があります。


いずれにせよ、コンビニ業界の苦境は、しばらくは継続するものと考えられます。
特に、都心部、観光地のコンビに影響は地獄でしょう。

状況が改善されるのを座して待っていては、衰退するのみです。

如何に新たな価値を提案できるか?その魅力をPRできるか?
コンビニ各社の知恵の見せ所でしょう。

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新潮の言う通りコロワイドは債務超過なのか?

少し古い話題なのですが、新潮社が記事(著者は細野祐二氏)にてコロワイドは債務超過なのでは無いか?と掲載し、コロワイドとバチバチやっていました。
今回は、コロワイドは本当に、新潮の言う通り債務超過なのか否かを考えてみます。

新潮社とコロワイドのやりとり経緯

新潮社は、大戸屋VSコロワイドとのやり取りに関連して、いくつかの切り口でコロワイドを批判する記事を掲載していました。

新潮社 VS コロワイド

その内の一つが「コロワイド、大戸屋プロキシーファイトに敗れて…前門の虎と後門の狼」(2020年7月6日)です。
記事の中では、ざっくり下記の通りを指摘しています。

  • コロワイドはM&Aをベースに成長し、700億円を超える「のれん」の他、200億円近い”疑似資産”を計上している
  • 「のれん」の評価(減損テスト)は適正ではなく、「のれん」の減損想定分を考慮するとコロワイドは債務超過状態になる(関連して監査法人の交代を行っている事を指摘)
  • 大戸屋株式についても、多額の「のれん」を計上するので、実質債務超過は膨らむ

一見、それっぽい内容となっており、会計に明るくない人なら、「そんな状態なのか、、、、、」とネガティブに受け止めてしまうかもしれません。

それに対して、コロワイドは自社IRにて反論(2020年7月6日)を行っています。
反論の内容は、下記のようなものです。

  • 新潮社は複数回に渡りコロワイドを誹謗中傷する記事を掲載している
  • 「のれん」の減損テストはIFRSベースの会計基準に則って行われており、記事の内容は「IFRSはもとより一般的会計知識を著しく欠く、全くもって虚偽のもの」
  • あずさ監査法人とは円満に監査契約を終了している
  • 記事筆者の細野氏は、「会計士界のレジェンド」と呼ばれているが、2004年に有価証券報告書虚偽記載事件により、最終的に執行猶予付き懲役刑が確定し、公認会計士登録が抹消されている

新潮社(細野氏)側は上記に対しても、再反論「コロワイドの反論に反論する…のれんと監査法人の変更について」(2020年7月17日)を行っています。
内容としては、ざっくり「コロワイド側の主張は、適切な根拠に基づいておらず、監査基準に基づく合理的な推論を自らの意に沿わないとして抑圧するのは、言論の自由を保障する日本国憲法違反であり、上場会社としてあってはならない。」という物です。

やり取りに関して、どちらに総合的な適正性があるかはここでは論じませんが、新潮社(細野氏)側の言い分は言いがかりに近いものがあるようには感じます。

(参考)議論の是非に関する補足

例えば、新潮記事では、下記のようにコロワイドを批判しています。

=====
「のれんの減損テストは、回収可能額としての公正価値と使用価値のいずれか高い金額と、対象事業に関する資産帳簿価額を比較し、帳簿価額が回収可能額を上回る場合に、のれんの減損を認識する」と言うばかりで、公正価値算定の基礎となった事業計画の内容を開示しない。これでは減損テストで使用した公正価値の妥当性を検証的に判断することはできない。自らは根拠を示すことなく、根拠の全てを示す論述を論難することはできない。
=====

ただ、会計基準に則って、会計処理を行うのは当然です。
また公正価値算定の基礎となった事業計画の内容自体を開示しないのも、上場企業であっても一般的であり、これを持って「自らは根拠を示すことなく」と批判するのは、流石に言い過ぎのように思います。

なお、他記事でもコロワイド側を擁護するものが出ています。

「著者も、デイリー新潮の記事に掲載されている、のれんの超過収益力を認めることができないとする「根拠」について、一般の会計基準に照らした会計処理から納得し難いと考える。
(中略)
投資家が独自の指標で企業価値を算定するのであれば構わないが、監査法人はこのような手法で減損テストは行わない。したがってROEが低いからのれんの超過収益力が認められないと判断することは、あまりに乱暴な判断だといわざるを得ない。」
ITmedia「減損テストから見る、コロワイドが新潮にブチ切れた理由(後編)」より

一方、下記の指摘も新潮社側は行っています。

=====
会社は連結株主持分250億円をはるかに上回る718億円もの「のれん」を資産として計上しているのだから、もとよりその資産性には強い根拠が求められることは言うまでもない。巨額ののれんを計上する上場企業が強い社会的批判の目にさらされるのは当然のことであり、それを《IAS第36号に則り「のれん」の減損テストを実施しています》というだけではお話にならない。
=====

これに関しては確かに一理ある部分はあります。

下記参考画像の通り、コロワイドの自己資本に対するのれんの金額比率は尋常じゃなく高く、その資産性や計算の合理性に対して、他社以上に丁寧に説明することは、IR的観点で必要なようには思います。

IFRSの肝は、比較可能性にもありますが、「自社にとって開示しなければいけない本質的な論点」の開示についてもあるはずです。
会計ルール・開示基準に記載されていないから、と言って、説明が基準内のものに留まっている事に関して、一定の批判をうけるのは致し方無い面はあります。

(参考画像)「のれん」の比率が高い居酒屋企業ランキング

もう少しシンプルに考えてみる

とりあえず、現状としてコロワイドが開示している資料は監査法人の適正意見をもって開示されているものであり、真に正しいかはともかくとして、ルールに則っているものと判断するのが適切です。

ここで会計処理の適正性等々に関して論じても致し方が無いと思うので、別の観点でシンプルに考えてみます。

日本基準だったとしたら「のれん」影響はどうなっていた?

まずは、コロワイドののれんの金額と、その内訳です。
(出典は㈱コロワイドの2020年3月期有価証券報告書からです。)

この通り、700億円超の「のれん」が計上されています。

さて、コロワイドは前段でも触れていましたが「IFRS(国際会計基準)」を適用しています。
このIFRSベースでは、のれんは償却をせず、その”価値”を算定し計上している金額との差額を損益処理する手続きが行われます(何度か触れている「減損テスト」とかですね)。

小難しいことは省略しますが、ようは、毎期一定額ずつ償却する日本基準に対して減損判断をするIFRSという違いがあります(これでも小難しいですけれどね。。。)。
で、この話の何がよく問題になるかというと、IFRSを適用し、減損に該当しないだけの業績が上がり続けているならば、日本基準より利益が高く見える(償却されないので)、逆に業績が傾いた時に一気に減損も入りダブルパンチを受ける、という点です。

ここがシンプルに考えるポイントです。

仮に、コロワイドが日本基準を採用していて、毎期「のれん償却額」を計上していたら、どのような業績になるでしょう?
(超厳密には、このシミュレーションも詮無いことなのですが、まぁ頭の体操だと思ってください。)

コロワイドがIFRSに移行したのが2017年3月期からで、開示資料としては2015年4月1日以降のものが、IFRSベースの数字になっています。

2016年3月期以前の有価証券報告書を見る限り、のれんの償却年数は20年を設定していたようです。

この20年をベースに考えると、ざっくり毎期の償却額は約3,500百万円(35億円)です。

過去5年間、56億円から100億円の事業利益が計上されていましたが、これがざっくり35億円ずつ小さくなる、という事がわかります。
事業利益ベースですと赤字では無いものの、黒字幅が大きく減少、事業利益率は0.9%~2.7%という状況になるとシミュレーションされます。
(当期純利益に関しては、税効果分があるので35億円ダイレクトにはヒットしない事に留意。)

経常利益ベースで考えると?

次に経常利益ベースで考えてみましょう。
営業利益もそうですが、経常利益で会社業績を見るのは一般的ですからね。

まずはPL全体像です。

ここで注目していただきたいのが金融収益と金融費用です。

営業外収益と営業外費用は、日本基準だと特別項目に入るものも混じっているのと(減損損失とか)、金額感、ニアリーイコールなので、金融部分に絞って考えます。

金融収益は銀行預金の利息や、他法人への貸付によるもので、
金融費用は銀行借入や社債、そしてリース(使用権資産)の支払利息です。

期によって計上額が異なるのですが、少なくとも2019年3月期は約13億円、2020年3月期は約42億円の利益アンダーインパクトがあることがわかります。

つまり、上記のれん分を含めて、2020年3月期は約21億円の経常赤字を計上していた(2019年3月期は約36億円の経常利益)、とシミュレーションできることになります。


繰り返しますが、コロワイドはIFRS適用会社なので、日本基準に換算してどうのこうの、というのは詮無いことではあります。
ですので上記の論考に対しては、別に是非を問いたいものでは無い、という事はご承知おきください。

いずれにせよ、コロナ影響もあり非常に厳しい経営環境にある事、そして大戸屋株式の買収に伴う「減損予備軍」のれんの多額の計上に関しては、事実ではあります。

今後、どのように経営を舵とっていくのか、継続して見ていきましょう。

最後、微妙に忘れていましたが、35億円×5年分で、約170億円がバーチャルなのれん償却額です。
2021年3月期第1四半期報告書ベースですと「親会社の所有に帰属する持分合計」は約200億円、資本合計が約325億円なので、ざっくりシミュレーションベースでも債務超過とは、まだ言えない感じです。
(ただし、2021年3月期も通期赤字の場合は税効果の話や、話題にあがっていた「のれん」の評価の話もあるので、一気に債務超過に転落するリスクは、結構高いとは感じています。)

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新しい飲食店の形(アイデア)を考えてみる

飲食業界、特に居酒屋業界は相変わらず非常に厳しい経営環境に置かれています。
まだ数字は出揃ってはいないですが、2020年8月は既存店前年比40%~50%の会社が多い雰囲気です。
今回は、withコロナ時代の新しい業態イメージについてアイデアを考えてみます。

居酒屋業界は相変わらず異常に厳しい

まだ、2020年8月の既存店売上高前年比の数字は出揃っていないのですが、主要な所として、ワタミは36.4%、チムニーは33.1%、鳥貴族は59.1%と、相変わらず厳しい状況が続いています。

他業態も全体的に、8月は7月より落ち込んでいる所が多く、飲食業界全体のダメージは中々回復する兆しが見えません。

このような状況が続いているのは、飲食事業は一種の箱ものビジネスであり、中々変化対応をさせるのが難しい、という点が指摘できます。

一度設計した席配置は、什器の入れ替えをしないといじれない場合も多いですし、価格感も業態毎にある程度イメージを持たれてしまっているため、一度設定した価格はそう簡単にいじれません(いじると顧客数が大きく変動する)。

となると、考えなければいけないのは、入り口から「柔軟に変更対応ができる店舗づくり」になると考えられます。

色々とアイデア出しをしてみましょう。

柔軟に変更対応ができる店舗づくり

二業態イメージ(二毛作スタイル)

古典的な方法として思いつくのが二業態イメージ(二毛作スタイル)があります。

これは、例えば昼はカフェ、夜はバーというスタイルがあげられます。

代表的なお店としては「PRONT(プロント)」がありますね。

https://www.pronto.co.jp/index.html

これは流行り廃りがあり、時代や、また経営者により、負担だけが増えてうまくいかないぞ、いやいや意外に利益出るよ、と様々な意見が存在します。

理論的には、朝のカフェ、昼は軽食ランチ、午後はカフェ、夜はバー、と大きく4サイクル、ランチ帯と夜の時間帯はさらに2回転くらいはできるので、1日で6回転が期待できる業態になります。

他には、居酒屋業態でも、昼はランチ、夜は居酒屋、というスタイルが考えられます。

一昔前までのノウハウでは、昼に来た顧客は、夜に来店しない、という話があり、実際、数字としてそうなっていたので(筆者経験値)、避ける店舗オーナーは沢山いました。
しかし、今の状況を考えると、ランチ営業をした方が良いと考えられます。

なお、よく、二毛作スタイルは体力的につらい、というデメリットが語られる時がありますが、そもそもとして長時間の肉体労働を辛い、と思うようであれば、根本的に飲食店経営はおすすめできないので、参入しない方が良いと思います。

コワーキングスペース

飲食店ではアイドルタイム、ようはお客様が来ず、開店休業状態になっている時間帯というものが、しばしばあります。

その時間帯を有効活用しよう、お客様に来てもらおう、という発想の1つがコワーキングスペース化です。

この発想も昔から色々あったのですが、多くの飲食店、特に居酒屋においていくつかの問題がありました。
それは次のような点です。

  • コンセントが各席に無い(工事が大変)
  • 地下や古いビルの場合、携帯の電波が届かない(WiFiを店舗内に用意しないといけない)
  • 席が狭く、作業スペースに向いていない(什器入れ替えや、固定席は工事が必要)

ですので、入り口(店舗設計段階)として、コワーキングスペース対応していくことが必要です。

箱(店舗)自体が、コワーキングスペースに対応したもので設計できていたら、後は最近は下記のようなサービスも登場しています。
コワーキングスペース事業にも、容易に参入ができるのです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000055584.html

お客様が入り始めて、オペレーションが大変になる時間帯になったら、席が埋まっている、と管理サイト上で実行すれば良いので、柔軟性高く対応が可能です。

店舗内複合業態

これは発想自体は古いのに、実行している店舗が少ないのが実際です。

言葉だと説明が難しいので、イメージを提示します。

写真は品川にある「品川魚介センター」という業態の写真です。

これ、写真だとわかりづらいのですが、左側、奥川、右側でそれぞれ別のお店になっています。
一つの箱の中に、複数の業態が入っているのですね。

店舗内イメージは下記のような形になります。

このように、1つの箱の中に複数の業態を入れて、顧客のニーズにあわせて入れ替えを実施できるようなイメージで店づくりを行うと、柔軟性が増すと考えます。

オペレーションコストは高くつきそうですが、厨房設計や席配置の検討により、通常型店舗と同等レベルのオペレーションコストで運営できそうな気はします。

仮想複合業態

これは、例えばウーバーイーツ上での出店について指しています。

下記はウーバーイーツのトップ画面に表示されていたもののサンプルです。

ウーバーイーツサイトより

このように、1つの画面に複数の店舗が表示されているのですが。
これを見て、思いませんか?

自分のお店を複数開店して、複数を画面上に表示させたら注文率があがるのでは?と。

これが可能なのがバーチャル店舗の強みです。

レストラン拠点に関しては、配送専門店でも店舗型でも問題はありません。
また、同じ屋号で複数店舗の出店が可能です。
屋号が同じで複数店舗の出店が可能ということは、クラウドレストランには追い風です。
要するに、キッチンだけ用意すれば、同じキッチンを共有することで複数店舗(ブランド)出店が実現するのです。

「メリットだらけのUBEREATS(ウーバーイーツ)出店解説します。」より

上述の二毛作型や、複数業態型においても、親和性が高く、お店の回転率を底上げできることが期待できます。

そもそもとして、今の時代、宅配に対応していない業態は辛いので、前提として、このような仮想複合業態を考慮するのは、当然に有りでしょう。
売れなかったら、入れ替えれば良いですし(業態転換は、バーチャル上だと異常なまでに容易)。

細かい設計について

後は、細かい諸々の設計は考慮した方が良いでしょう。

例えば調理についてです。

サイゼリアキッチンモデル

サイゼリアでは「包丁が無い」ことで有名です(実際にはあるのですが、使用場面がほとんどない)。パックされた材料を盛り付けて、所定の最終工程を行うだけ、という工程になっています。

人を集めるのが大変な時代ですので、オペレーションコストを極力最小化するのはマストでしょう。

セントラル・キッチンがあれば比較的容易に対応ができますし、セントラル・キッチンが無くても実行は可能です。

新橋にある「烏森百薬」という業態があるのですが、ここは「お取り寄せ」で商品を構成しており、店内では焼く等の最終工程を実行するだけにしています。

https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13225528/

似たような事をやっている業態は他にもあるのですが、ようはサイゼリアモデルを、セントラル・キッチンを持てない小さい会社でも実行できる、という事ですね。
(サイゼリアモデルは、厳密には違うのですが、とりあえず、最終工程だけをやれば良い、店内調理は無いよ、というものを指しています。)

カフェ業態をやる場合はコーヒーマシン、バー業態でもビールサーバーをお客様が操作できるようにすれば、オペレーションコストを更に削れます。

ダイナミックプライシング

飲食店の悩みの一つが、一日の中でも繁閑差が大きい事です。

これへの対応策の一つがダイナミックプライシングです。

ダイナミックプライシングとは、簡単に言うと、繁閑に応じて値付けを変えますよ、というものです。
混んでいる時は高いし、空いている時は安い、ということですね。

これを飲食店でも導入してしまおう、という発想です。

これは実は、個店レベルでは対応している、賢い店主をチラホラ見かけます。

具体的には、常連客とLINE等々のSNSでつながって、来店客が少ない時に、「今なら〇〇が安いですよ。」と発信して、来店してもらっているお店があるのです。
(キャバクラとかでも、あるらしいですね。似たようなのが。まず行かないので、聞いただけの話ですが。)

常連客と直接つながり、来店してくれたら安くする、というような上記図の②のやり方は当然に有りです。
チェーン展開を考えるなら、専用アプリを用意して③の方式でポイントバックするのが、スムーズなように思いますね。

内装イメージ

お店を持つ、というのは外食マンにとって、非常に重みのある事です。

メニューもそうですし、店内内装外装についても非常に凝る方が決して珍しくありません。

それ自体は全く悪く無いのですが、じゃあ柔軟性が高いか?というと全くもってそうではありません。
仮に業態転換をしたい場合は、お金をかけての改装を行う事になります。

柔軟性を高く持つには、普遍性の高いデザインにしておくことが重要です。
例えば次のようなイメージです。

  • 壁はコンクリ打ちっぱなしそのまま
    天井は配管等を黒く塗り、基本むき出しにする
    照明は色と明るさを変えられるLEDで
    什器は、特定の国や文化の色が出ないような汎用性の高い物
    固定ソファやカウンター席のような、変更に工事が必要ものは極力控える

インテリアや看板・のれんで店舗イメージを演出し、それ以外はベースいじらなくても良いような形にすると、業態転換が容易になります。

作り込みや世界観の構築、という観点ですと、非常に弱くはなってしまいますが、変化対応力は抜群に高くなります。

顧客とのつながり

お客様が常連客になっていただける割合って、どれくらいかご存知ですか?

結論、1,000人のお客様の内、2年後も来店してくれるのは2人だけです。

これは、リアル店舗ですと、顧客との接点が、最初の来店1回に限定される事も大きいと考えられます。

専用アプリだったりSNSなりで、つながることができるならば、関係性構築、ありていに言えばCRMが可能となります。
今の時代風に言えば、カスタマーサクセスにつなげることができるわけです。

この数字を抑えた上で、如何にお客様とつながりを持つか、という点は非常に重要でしょう。

リアルな再来店動機の形成の仕方ですと、例えば池袋のうなぎ名店「かぶと」では、初回時には養殖のうなぎしか食べられませんが、2回目以降は天然物を食べられる、というような商品提供で再来店動機を醸成していたりしますね。


色々とアイデアを出してみたのですが、意外にいけそうな感じがしてきました。

1つの箱の中に複数の業態をリアルでもバーチャルでも持ち、店内飲食・宅配に両対応する。
朝・午後はカフェ業態兼コワーキングスペース、昼はランチ、夜はバー・居酒屋。
ダイナミックプライシングを専用アプリ上で実行し、また調理や配膳工程を大きくカットしたオペレーションを組み、来店コントロールとコストカットを思いっきり行う。

結構、面白そうなお店を作れるかもですね。
やりたくなってきました。

最後に言いたい事を一つだけ。
飲食店をはじめる方は「料理が好き」とか「一国一城の主になりたい」とかあると主のですが。
そういう発想は、とりあえず捨て去るのが良いと思いますね。

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経営企画

「高級食パン」戦国時代が激化の模様

ちらほらちらほら目にするなぁ、と感じていましたが、どうやら「高級食パン」戦国時代が到来しているようです。
この数週間(2020年9月)だけでもあちこちでお店がオープンしています。
ちょっと、状況を調べてみましょう。

「高級食パン」の検索トレンド

まずはトレンド感からです。

Googleトレンド「高級食パン」より

上図は「高級食パン」の検索トレンドの5年推移です。

2018年末あたりからトレンドが伸び始め、2019年12月の1回目のピーク、その後約10ヶ月弱、長くトレンドが続いています。

大枠の雰囲気としては、クリスマスの時期に一つ伸びて(2018年も12月にスパイクが出来ている)、夏に消費が落ち込む(まぁ、そうですよね)、またクリスマスの時期に消費が伸びる、というサイクルになっているように見えます。

2020年は、新型コロナウイルス感染拡大による外出控えの影響により、自宅での消費増加を受け、通年で長いトレンドが続きそうな印象です。

なお、「戦国時代」という捉え方は、メディアの方でもされているようです。

「高級食パン」専門店3大チェーン

今の主要プレイヤーを見ていきます。

乃が美

1店目が「乃が美」。

https://nogaminopan.com/

日本各地に189店舗存在する、ビッグチェーンです。

2斤864円(税込)の食パンが主力商品のようですね。

業績の方は、まだまだこれから、という状況のようです。
(売上高は不明ですが、下から2段目で「うち当期純損失」とあり、まだ投資フェーズであることが推測される。)


資本金の金額5千万円で、一方資本剰余金が54億円となっています。

おそらく、結構な赤字を出しながら急拡大している店舗なのでしょう。
約54億円の減資を実行し、利益剰余金と相殺をしている数字に見えます。
固定資産の額が111億円ですので、どこかからの大型出資をうけて、一気に市場を抑えに行こう、という戦略をとっているのでは無いかと考えられます。

(一応、クレアシオン・キャピタル㈱という会社が出資をしているようですが、金額は不明です。)


銀座に志かわ

2点目が「銀座に志かわ」です。

トップページ

現時点で、84店舗を日本各地に展開している模様です。

お値段、2斤880円(税込)となっており、乃が美と同価格帯です。

決算公告は探したのですが、見つかりませんでした。どうやら、出していないようです(一応、会社法違反ではある。大多数の中小は出していないけれどね。)。

2018年の設立との事で、100店舗に迫る勢いですので、銀行からの融資をうけるなり、もしくは減資をしていないだけでエクイティでの調達を実行しているかもしれません(登記簿とればわかるかもですが)。

一応、2019年からはフランチャイズ展開に力を入れている、との事ですので、そこまで資金を要しないビジネスモデルとしているのかもしれません(どの程度の規模かは不明)。


一本堂

3店目が「一本堂」です。

こちらも日本各地に124店舗を展開している、ビッグチェーンです。

1斤あたり320円(税抜)なので、700円台と、他2社よりかは気持ち低めの価格設定のようです。

こちらも決算公告は出していないようです。

資本金の額が7百万円という数字ですが、これで100店舗規模の展開は難しいですが、どうやらFC方式での展開がメインのようです。


各社、微妙に展開戦略が異なっており、どこがうまく業績をのばせるのか、見ものです。

VCからの支援をうけている「乃が美」なのか、FC方式ハイブリッドの他2社なのか、それとも別の会社が台頭してくるのか。

その他にも続々と登場

さて、この1ヶ月だけでも、沢山の店舗が出店しているようです。

沢山ありすぎるので、記事のタイトルだけ10個ほど事例としてあげます。

価格帯も800円~900円前後の、3大チェーンの値付け感と同じ所もあれば、数千円の価格帯で出している超高級パンも存在します。

更に、例えば下記のような、高級パンに絞って宅配を行う業者も登場しているようです。

消費者としては非常に楽しみな状況です。

ブーム性もあるでしょうから、これから正に成長と生き残りをかけた戦いがはじまっていくのでしょう。

ブームの起点は大手小売りの模様

なお、もう少し過去を辿ってみると、2016年頃までのパン市場はほぼ横ばいの、ゆるやかな伸びが続いている状況でした。

それが2016年頃以降で、コンビニをはじめとして「高級パン」が登場し、それが消費者の間で人気をはくす形になります。

矢野経済研究所によると、この辺りが高級パンブームの起点になったのでは、との事でした。
そして、その後「乃が美」をはじめとした専門店が火付け役となった、と解説されています。

しかし、2016年度以降、高級食パンや大手ホールセールメーカーブランド食パンの商品リニューアル等、市場を牽引する商材の存在感が増したことがパン市場を後押しした。大手ホールセールメーカー主導による「こだわりシリーズ」などの展開や使用原材料の向上等により、以前は低価格志向に走っていた消費者の購買力が高まったと考える。
(中略)
数年前から続く高級食パンブームの火付け役となったのが、大阪市内で創業した「乃が美」である。また、「日常の食卓に幸せを」との想いから、焼きたて食パン専門店を全国展開するのが「一本堂」である。

矢野経済研究所「2017年度の国内パン市場規模は前年度比101.4%の1兆5,582億円」より

矢野経済研究所資料内にもありましたが、今後の人口減少、そして上述のブーム性の話もありますので、今この拡大ベースが続くとは到底思えません。

どこのライン(市場規模)がコアなファンが継続して買い支えられるのか?というポイントまで育ち、淘汰がはじまるはずです。

いずれにせよ、「乃が美」は出資をうけて展開しているので、何かしらのExitを求められます。
(IPOも目線に入っているはずです。)

「高級食パン」市場は、今が熱いです。
(なお、今から専門店で参入しよう、という発想はリスクが高いですね。いつ、ブームが終わるか不明なので。)

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経営企画

VR市場は伸びるのか?VRの成長について考えてみる

VRという言葉を聞きつつ、実際に体験をした事が無い方、もしくは単発で終わってしまったの方が圧倒的に多いのがVR関連では無いでしょうか?
今回は、VR市場は伸びるのか?について、今後のVRの成長をテーマに考えていきます。

VR市場規模推移

まず国内のVR市場規模推移です。

2019年度は500億円位、2020年度は1,000億円位に成長、というような伸びでしょうか。

2017年の資料なので、実際の所、直近どのように推移しているのは不明です。
矢野経済研究所のXR(VR、AR、XR等を併せた総称)の伸び予測資料を見ても、大きく伸びていく事が予想されているのと、全体感として4,000億円というような数字なので、概ね良い数時感なのでしょう(矢野研のは工業用途も含めている)。

とりあえず、今後、VR市場が伸び続けていくことが予想されています。

矢野経済研究所「2019年の国内XR(VR/AR/MR)360°動画市場規模は3,951億円の見込」より

今回の疑問・テーマって、ようは、この数字の通りに行くんだろうか?という話です。

話題としては何気にピークを過ぎている

ハイプ・サイクルで「啓蒙活動期」に

実は「VR」というワードは、2016年の10月をピークに、ブームが過ぎてしまっています。

Googleトレンド、VRで検索

これを持ってVRって萎んでいくんじゃね?的な話を出したいわけではありません。

ガートナー、ハイプサイクル資料(2017年8月)

ガートナーが出しているハイプサイクルの資料によると、2017年8月時点で「啓蒙活動期」に入っています。

啓蒙活動期は、過度な期待やそこからの幻滅を乗り越えて、粛々と市場拡大のためのアクションをとっていきましょー、というフェーズですが、ではこの時期におけるVR普及の状況を振り返ってみて下さい。

ほぼほぼ、現在進行形で使っているよ、という人はいないのでは無いでしょうか?

そして、もう一つ考えてみると当たり前なのですが、VRデバイスは家じゃないと落ち着いて使用できません。

スマホで外出先からでも気軽に各種コンテンツにアクセスできる、仕事が忙しいから家ではゆっくり落ち着いてコンテンツを楽しむ時間がそこまであるわけではない。

このような状況で、確かに一定の市場を形成はしているのでしょうが、どうしても先進的な人向けのデバイスがVR、という状況に落ち着いているように見えていました。

価格の問題も普及の妨げに

価格感も問題です。

DGLAB「アンケート結果から見えたVRの今 多様化する要望と高まる期待」より

これ位の値段なら買うよ、というゾーンが10,000円~30,000円のレンジです。

一方、主要な製品を見てみると、なんとか5万円前後のラインにいるか、というような状況です。

いわゆるアーリー・アダプターは買うでしょうが、どこまでキャズムを超えられるのか?という印象です。

外出自粛・リモートワーク普及が追い風に?

そんな状況に変化の兆しが見えたのが、新型コロナウイルス感染拡大の影響です。

なんでも、外出自粛、そしてリモートワーク普及により、VR関連の消費が激増している、というのです。

まぁ、考えてみれば当然で、外に行けないから家にいるしかない、リモートワークなら移動時間分、家で時間を使える、という状況なら、これまでVRに興味を持っていた方で踏み込んでいなかった方が、「じゃあ、改めてVR」となっても不思議ではありません。

さらに加えて、高性能ハードウェアの登場と価格低下です。

10月に発売されるという、oculus QUEST 2 は、37,100円(税込)から購入されます。
発表前から話題にあがり、発表後には各所で熱く語られている新製品となっています。

当然、コンテンツあってのVRですが、魅力的なハードウェアの登場にあわせてコンテンツの拡充も行われていくでしょう。

スマートフォンの登場時は、ハードウェアの登場が先にあって、次にライフスタイルの変化が起きていました。
VRについては、ライフスタイルの変化が先にあって、ハードウェアとの適合、という状況のように見えますが、なにはともあれ追い風である事には変わりません。

今後のVR市場の発展が期待されます。


(参考)VRだけでなく、XR全体では、ゲームや動画コンテンツ等に限らず、様々な分野で活躍が期待されているのも指摘できます。

上述矢野経済研究所資料より
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経営企画

冬のボーナス7割削減のオリエンタルランドは大丈夫なのか?

ディズニーランド運営のオリエンタルランドが冬のボーナスを7割削減するという報道が出ていました。
果たして、オリエンタルランドの経営は大丈夫なのでしょうか?
決算書を元に、数字を見ていきます。

オリエンタルランド 冬のボーナス7割削減

まずは報道を見てみましょう。

東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを運営するオリエンタルランドは、新型コロナウイルスの影響で業績が悪化していることから、人件費の大幅な削減を打ち出し、およそ4000人いる正社員と嘱託社員を対象に、ことしの冬のボーナスを7割削減することを決めました。

NHK「オリエンタルランド 冬のボーナス 7割削減 当初計画比 コロナ」より

オリエンタルランドは、新型コロナウイルス感染拡大をうけ、2月末から7月の再開まで、約4ヶ月間の休園をしていました。

上記措置により業績が悪化、コスト削減の一環として正社員4,000人を対象にボーナスの7割を削減するということです。
(2,000人の限定社員に関しても、ボーナス5割を削減するとのこと。あわせて、役員報酬の減額も継続および拡大するとのことです。)

果たして、オリエンタルランドの経営は大丈夫なのでしょうか?

結論から言えば大丈夫です

オリエンタルランドは超がつく優良企業であり、経営そのものは全く問題がありません。

結論、大丈夫です。

数字を見ていきましょう。
まずは2021年3月期第1四半期の決算短信からです。

この通り、前期の5%の売上しか立っていません。
第1四半期は休園影響を全て受けているので当然と言えば当然です。

ただ驚きなのが、経常損失です。
売上がほぼ全てと言って良い数字吹き飛んでいるにも関わらず、152億円の赤字で済んでいます。
驚愕のコストカットです(おそらく、設備の減価償却費と正社員人件費位しか大きくかかっていないものと推測されます)。

この時点で自己資本比率も81.9%と、これもまた超がつく優良な数字です。

これだけでも、融資を容易に引っ張ってこれるというのがわかります。
(実際、銀行借入では無いですが、社債の方式で1,000億円を調達する、というほうどうが先日9月10日に出ていました。)

東京ディズニーランド(TDL)と東京ディズニーシー(TDS)を運営するオリエンタルランド(OLC)は10日、総額1000億円の社債を発行すると発表した。償還期間が5年、7年、10年の3種類を発行し、調達資金は主にTDSで計画されている大規模開発に充てられる。

時事ドットコム「OLC、社債で1000億円調達 ディズニーシー開発へ」より

むしろガンガン投資するスタンスっぽい

ここでCashを見てみましょう。

下の資料は同じく2021年3月期第1四半期決算短信からで、BS資産の部です。

なんと現預金が830億円、減少しています(2020年6月末残高1,780億円)。
赤字以上の減少幅です。

使途としては、(推定)300億円規模の設備投資、100億円規模の投資その他の資産の支出、約80億円の配当金、営業CF(100億円ほど?)、後はその他諸々といった感じでしょう(超ざっくり)。

既に予定されていたものもあって致し方ない部分もあるのでしょうが、ガンガン投資しています。

この投資スタンスは決算説明資料でも示されており、2021年度の新規エンターテイメントや、トイ・ストーリーのディズニーホテル、ファンタジースプリングスの予定通りの開業を計画しているようです。

単純に静かにしゃがむだけならば手持ちのCashだけでも問題無いですが、現状から既に将来に向けて投資をかけていこう、というのならば懸念がある、と。
で、その懸念を潰すために1,000億円の社債による調達を実行する、という考えのようです。


ディズニーランド、ディズニーシーは、営業時間の短縮や人数制限を掛けており、第2四半期決算についても、第1四半期ほどでは無いにせよ、厳しい数字になると見込まれます。

しかし、盤石ともいうべき財務状況があり、かつ将来の投資を打ちながら、資金の手当ても打てています。

貫禄の対応を数字から感じますね。

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経営企画

SBG:英アームの米エヌビディア売却はネガティブなのか?

ソフトバンクが、保有する英アームを米エヌビディアに売却する、という報道が流れています。
こちら、各所で投資会社というスタンスになったのか、とか英アームを活かしきれなかった、とか言われており、どちらかというと冷めた意見が多いように感じます。
果たして、SBGによる英アームの米エヌビディア売却はネガティブな結論だったのでしょうか?

なお、記事執筆時点(2020年9月14日)ではまだ確報では無く、取り引きが流れる可能性がある、ということは付しておきます。

SBGによる英アームの米エヌビディアへの報道

まずは報道を見てみましょう。

グラフィックスプロセッサーを開発するNVIDIAが、ソフトバンクグループからチップメーカーArmを買収することで合意に近づいており、早ければ今週にも発表されるという。Bloombergが米国時間9月12日、匿名情報筋の話として報じた。Bloombergによると、Armの企業価値は約400億ドル(約4兆2500億円)と評価され、現金と株式で取引される。チップ業界で過去最大規模の買収となる可能性があるとされている。

CNET japan「ソフトバンク、NVIDIAにArmを4兆円超えで売却か–合意間近と報道」より

ソフトバンクは英アームを米エヌビディアに約4兆2千億円で売却するそうです。

ソフトバンクによる英アーム買収時(2016年)の金額が約3兆円4千億円ですので、差額約8千億円がソフトバンクの利益となる形になります。

これを受けて、各所で次のように言われています。

「ソフトバンクを投資会社として見るならば大成功なのでだろうか?」

「IoT構想はどこにいったのだろうか?」

「もともとグループシナジーについて懐疑的だった」

冷めて意見を散見するのですが、この見方は果たして正しいのでしょうか?

英アーム売却に対価に株式が入っている

売却額は約4兆2千億円ですが、報道によると、どうやら対価として、エヌビディアは自社の普通株式も入れるようです。

これにより、約6.7%~8.1%のエヌビディア株をソフトバンクが保有することになります。

(もちろん、まだ確定じゃないですよ!:9月14日時点)

つまり、支配という形では無いにせよ、ソフトバンクはエヌビディアに対して最大株主として影響力を持つ事になります。

しかも、今回売却するアームに対してもそうで、間接的に影響力を及ぼせる形になります。

ようは、過去の投資の対価を回収しつつ、エヌビディア-アーム両社に対する影響力も獲得する、という中々とんでもないスキームなのです。

なお、この話はエヌビディアにとっても良い話で、GPUイメージが強いエヌビディアですが、CPUも獲得する形になります。
今後の戦略の幅が広がるわけです。
(しかも、実はエヌビディアとアームはつながりが強い事も指摘できる。)

ソフトバンクの構想は?

実はソフトバンクは、過去にエヌビディアの株式を保有していた時期がありました。

AI群戦略の一環という形だったのですが、諸々の経緯があり結論として2019年1月に売却する事となりました。

つまり、改めてソフトバンクはエヌビディアに対して投資をする事になったわけですね。

ソフトバンクのアームに対する投資姿勢も、基本はAI群戦略がベースにあったはずです。
事実、ソフトバンクはアームのIoT事業をSBGに移管、AIへの強化を図っていました。

(参考)ソフトバンクのIoTサイト

https://www.softbank.jp/biz/iot/

(参考)ソフトバンクの自動運転サイト

https://www.softbank.jp/drive/

ここでポイントなのが、実はエヌビディアは、上述の通りGPUイメージが強いですが、IoT自動運転という領域にも強いという点です。

ようは、アームを買収してAI・IoT構想を進めたいけれども、なんかうまく進まないぞ、という状態。
それなら、エヌビディアと一緒にやった方が早いんじゃないか?という発想ですね。

さらに、上でも軽く触れたのですが、エヌビディアとアームは元々IoT領域で提携関係にもありました。
今回の取引が成立したのならば、この提携関係が支配関係という形に変わるわけですが、両社の事業の促進がスムーズに進むのでは、と推測されます。

まとめるとソフトバンクは、自社のAI群戦略構想を進めるための打ち手として、英アームを米エヌビディアに売却、そして米エヌビディアと英アームに対する影響力を手に入れる、という今回の取引を進めている、と読み取れます。

結構、すごい取引だし、中々ヤバ味の強い構想ですよ。


まぁ、端的にまとめると、こんな感じです。

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