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仕事と健康,運動

昼寝を頻繁にする人は若くして亡くなる傾向がある模様

睡眠は人の健康に非常に重要なものです。
しかしながら、昼寝を頻繁にする人は、そうでない人よりも若くして亡くなる傾向がある、という研究もあります。
これは因果関係を示すものではなく、疲労や疾病が要因と考えられますが、健康を害するサインであるとは言えます。

睡眠不足は身心に多大な悪影響を与える

睡眠不足が身心に多大な悪影響を与えることは広く一般的に知られており、公衆衛生上の課題であると考えられています。

悪影響とは、身体へのダメージ不安の増大生産性の低下認知症リスクの増大、と言った物があげられます。

他にも、先延ばし行動の増加リスクのある判断をポジティブに歪める、というようなあまり知られていない悪影響も存在します。

そのため日々の睡眠不足を補うため、仮眠、例えば昼寝をする、というような行動が推奨されています。

しかしながら、昼寝を頻繁にする人は若くして亡くなる傾向がある、という研究が存在します。

昼寝を頻繁にする人は若くして亡くなる傾向がある模様

ケンブリッジ大学の研究では、昼間に1時間以上の昼寝を頻繁に取る人は、そうでない人に比べて若くして亡くなる傾向があることが示されています。

https://www.smithsonianmag.com/smart-news/consistently-needing-take-long-mid-day-naps-might-be-indicative-underlying-health-problem-180951071/

この研究では40歳から79歳までのイギリス人男性約1万6千人を対象に、13年間に渡る追跡調査が行われました。

その結果、1日に1時間以上の昼寝をする人、1日に1時間未満しか昼寝をしない弘、まったく昼寝をしない人の3グループに分類され、この内、1日に1時間以上の昼寝をする人は、そうでない人に比べて死亡率が32%も高かったことがわかりました。
死亡要因は様々に存在しますが、心臓病やがん、呼吸器系疾患などが含まれていました。
研究では、性別や社会経済的地位、アルコール、うつ病などの精神疾患などについても考慮されています。

おそらく昼寝そのものが問題ではない

この研究は、因果関係を示すものではなく、あくまでも相関性を示すものです。

そして研究者も、おそらく昼寝そのものが問題なのではなく、疲労や、疲労の原因となる基礎的な健康状態が関連しているのでは、としています。

つまり、日中に過度な疲労を覚え、睡眠を欲する、というような状況は健康を害しているサインである可能性があるのです。

忙しい現代社会において、十分な時間と質の睡眠をとるのは難しいことかもしれません。
しかし、長い時間、眠気を覚えているという人は、身心の疲労の原因を追究し、解消するための取り組みを行った方が長期的な健康のためにも良いと言えるでしょう。

言うは易しですが。

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ビジネスと心理学

収入による幸福度の増加には上限があるが悲しみを減らす効果がある

収入による幸福度の増加には上限があることが知られています。
一方で、ブリティッシュ・コロンビア大学の研究によると、お金があることにより日々の悲しみの経験が少なくなることが示されています。
そして、その結果として幸福度を間接的に高める効果があるとしています。

収入による幸福度の増加には上限がある

アメリカ・インディアナ州にあるパデュー大学が行った研究によると、収入による幸福度の増加には増減があり、国や地域にもよるのですが、400万円程から1,400万円程のレンジの中で頭打ちになるとされています。

https://www.nature.com/articles/s41562-017-0277-0

この種の研究は各国各研究者により様々に行われているのですが、概ねこのレンジ感で収まる、ということが知られています。

(繰り返しますが、この金額には地域や社会による影響があります。)

逆に表現すると、上限はあるものの、一定程度、幸福はお金で買える、という相関性について示されている、と言えます。

収入により悲しみを減らす効果がある

上述の通り、収入による幸福度の増加には上限があることが知られていますが、一方で、悲しみとの関連性についてはあまり知られていません。

誤解を受けやすいことなのですが、幸福感と悲しみは正反対の感情ではなく、異なる感情の状態です(関連する感情でありつつ、どちらも両立し得る感情です)。

ブリティッシュ・コロンビア大学は、収入と幸福の関係を調査しました。
この幸福とは、富が幸福よりも悲しみに大きな影響を与えているの可能性があるのでは?という先行研究を受けてのものです。

https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1948550614568161

その結果、収入が高いほど、日々の悲しみの経験が少なくなることが示されました。

この結果は、関連する人口統計やストレス、被験者の日々の時間の使い方等では説明ができないものでした。

この研究では、お金が幸福感の増加よりも、悲しみを減らすのに有効な手段となっており、そしてそれが間接的に幸福度を高める効果があるのでは、ということを示唆しています。

もちろん、この話は相関性のものであり、因果関係を示したものではありません。

しかし、幸福はお金で買える、ということを一定程度証明している一つの証拠ではないかと考えられます。

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ビジョン的思考

【運を高める方法】運の良し悪しは自分自身が作り出している

運を高める方法、というとスピリチュアルな要素があるように感じますが、実は違うことがわかっています。
運の良し悪しは自分自身が作り出している要素が大きいのです。
運を高めるためには4つの姿勢、「偶然のチャンスに気づく能力」、「直観による幸運な決断」、「ポジティブな期待による自己実現の予言」、「不運を幸運に変える強靭な姿勢」があります。

運の良い人と運が悪い人との違いは?

幸運に関する研究を行った心理学者、リチャード・ワイズマンの研究によると、運の良し悪しの大部分は自分自身が作り出している、とされています。

研究では400人以上の様々な年齢やバックボーンを持つ人を対象に、実験とインタビュー、性格診断、知能テスト等が行われ、運の良い人と運の悪い人との違いが分析されました。

実験では被験者に新聞に目を通してもらい、その中に何枚の写真があるのかを数えてもらいました。

その結果、運の良い人はわずか数秒で答えられたのに対し、運の悪い人は平均して約2分かかったということです。
その理由は、新聞の2ページ目に「数えるのをやめてください。この新聞には43枚の写真があります。」というメッセージが書かれており、運の良い人はそれを見つけられ、運の悪い人は見逃してしまう傾向があるからです。

また実験では、(研究者は“お遊びで”といっている)半分の新聞に「数えるのをやめてください。このメッセージを見たと言えば250ドルがもらえます。」と書かれており、こちらについても運の良い人と運の悪い人の違いの傾向は同様でした。

運の悪い人は、写真を探すのに夢中で、幸運を掴むチャンスを逃しているのです。

運の悪い人は緊張感や不安感が強い

性格診断の結果、運の悪い人は運の良い人よりも、緊張感や不安感が強いことがわかりました。
不安感があると予想外のことに気が付く能力が低下する、という別の研究もあります。

その別の実験では、被験者にパソコンの画面中央にあるドットを見てもらいました。
実験では何の前触れもなく画面の端に大きなドットが表示されることがあります。
ほとんどの人は、この大きなドットに気が付くことができます。
しかし、中央のドットを正確に見ることが出来たら報酬がもらえる、という条件を設定すると、3分の1以上の人が大きなドットを見逃してしますのです。

つまり、何かを一生懸命探せば探すほど、他の何かが見えなくなってしまうのです。

これは運についても同様で、運の悪い人は他の何かを探すことに夢中になり、チャンスを逃してしまう、ということです。
研究者はその事例として、理想のパートナーを見つけようとして良い友達を作る機会を逃してしまう、ある種の求人広告を見つけようとして他の種類の仕事を逃してしまう、というものをあげています。

幸運な人は、不幸な人よりもリラックスしており、自分が探しているものだけでなく、他の別の何かを見つけることができる、ということです。

運の良い人はチャンスを作っている

他にも、運の良い人は、自分の人生に変化を与えるための努力をしている、ということにも言及されています。

研究者があげた事例としては次のような物があります。

ある幸運な人は、重要な決断をする前に、通勤ルートを常に変えている。
パーティーに行くと同じタイプの人とばかりは話す傾向がある、ある幸運な人は、パーティーに行く時に服の色を決めて、同じ色の服を着ている人と話すようにしている。

運の良い人は、普段と異なる行動を取る事によって、人生における新しいチャンスを得る可能性、その機会を増やしている、ということです。

不運に対する心構え

また、運の良い人は、何かしら運が悪いできごとがあったとしても、それに対する捉え方が運の悪い人とは異なります。

運の良い人は、何か運が悪いできごとがあったなら、「もっと悪いことが起きていたかもしれない。それを考えたらラッキーだった。」と考えるとのことです。
こういった思考の習慣が、自分自身や自分の人生について、長く良い気分でいられ、そして将来への期待感が高まり、幸運な人生を続けられる可能性を高めていくのです。

これは「反事実的思考」と呼ばれるものです。

オリンピックで銀メダルと銅メダルを取った人、どちらの方が幸福を感じるのか?というと銅メダルの人の方が幸福を感じる傾向があるそうです。
その理由として、銀メダルの人は「あとちょっと成績が良ければ金メダルだった。悔しい。」と考えるのに対して、銅メダルの人は「あとちょっと成績が悪ければメダルを取れなかったかもしれない。良かった。」と考えるそうです。

これらの話をまとめて、研究者は幸運を作り出すための4つの基本原理として、「偶然のチャンスに気づく能力」、「直観による幸運な決断」、「ポジティブな期待による自己実現の予言」、「不運を幸運に変える強靭な姿勢」を挙げています。

研究者は幸運は科学的に作り出せる、運を良くする能力は磨ける、と主張し、実際に「幸運の学校」を運営し実績を出しているとのこと。

言うは易し系かもしれませんが、思考も癖の集合体ですので、運を良くするための思考を習慣化する努力を続けてみるのは良いかもしれません。

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ビジネスと心理学

荒れそうな会議がある場合にはお菓子を用意するとよいかもしれない

糖分を多く摂っていると、攻撃性が抑制され、“キレる”のを防ぐことができる可能性があります。
オハイオ州立大学で行われた研究では、砂糖が入った甘い飲み物を飲んだ被験者と、人工甘味料入りの甘い飲み物を飲んだ被験者を比較し、前者の方が“キレる”ことが少なかった、という結果が示されました。

甘い飲み物が攻撃性を抑えるという実験

オハイオ州立大学の研究チームは、62人の大学生を被験者に対戦ゲームを用いた実験を行いました。

https://www.dailymail.co.uk/health/article-1334642/Feeling-angry-Why-spoonful-sugar-sweetens-mood.html

実験の概要は次のようなものです。

  • 実験開始前に3時間の断食を行う
  • 被験者はコンピューターを相手に反応時間を競うゲームを行う(被験者は相手がコンピュータだと知らない)
  • 被験者の半分には砂糖で甘くしたレモネード飲料を飲んでもらう
  • 残りの半分には人工甘味料で甘くしたレモネード飲料を飲んでもらう(血糖値が上がらない対象群)
  • 飲料を飲んだ8分後に反応テスト(ゲーム)を実施(糖分が吸収されはじめる時間)
  • 被験者は25回ゲームを実施した
  • ゲームに勝った場合、相手に60デシベルから105デシベルの大音量のホワイトノイズを流せる
  • この範囲内の10段階で勝った方が音量を決められる
  • 勝敗は、実際には無作為に12回かつようにせっていされていた

この実験は、体内の血糖値が怒りの度合いにどれだけ影響するのか?を調べるものです。

砂糖により血糖値があがったグループと、人工甘味料により血糖値があがらなかったグループを比較して、音量という攻撃性がどれだけ示されるのか?がわかるのです。
(攻撃性は、1回目の反撃の強さ、つまり対戦相手に挑発される前に選んだ騒音の強さで測定。)

実験の結果、砂糖入りのレモネード飲料を飲んだグループの方が、対象群より攻撃性が低かったことが示されました。
(実験群は10点満点中、平均4.8点、対象群は同平均6.06点だった。)

怒りの衝動を抑えるにはエネルギー、つまり糖分が重要

研究者たちは、この結果は、脳のエネルギー源となる血中のグルコースにより起きたものであると考えています。

怒りの衝動を抑える自己コントロールにはエネルギーが必要であり、グルコース、つまり糖分がそのエネルギー源となります。

上述の実験では吸収できる砂糖が入ったレモネード飲料を飲むことで、他人への攻撃性を抑制するためのエネルギーが供給されました。

なお、この研究は単純に怒りとエネルギーの関係を示しただけでなく、糖尿病がもたらす社会的影響についても言及しています。

研究者は糖尿病の話に言及した前提で、「(グルコースの正常な代謝が、人々に自己コントロールのためのエネルギーを提供し、より平和な社会に貢献することができるかもしれません。」としています。

荒れそうな会議がある場合にはお菓子を用意するとよいかもしれない

この話は糖尿病という疾病の話に限らず、様々な場面で活用ができそうです。

例えば、荒れそうな会議がある場合には、事前にお菓子を用意しておくとよいかもしれません。

場が和む、という効果もそうですが、お菓子を食べて脳内に糖分を供給することにより、会議が荒れることを抑えられる可能性が考えられます。

また、何でも良いのですが、何かしらイライラしている時に一口でも良いのでお菓子や甘い飲み物を食べると、アンガーコントロールがうまくいくかもしれません。

甘い物の食べ過ぎは健康に良くはないですが、適度な活用は良いでしょう。
ギスギスしない職場環境構築の一つのネタにどうでしょうか。

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ビジョン的思考

三つ子の魂百までは誤りで、人の性格は変わり続ける

三つ子の魂百まで、と言われるように人の性格は一般的には変わらないと言われていますが、これは誤りで、近年の研究では人の性格は変わり続けることがわかっています。
特に、20歳~40歳の間において変化は顕著で、理由としては社会からの期待値の変化が要因として大きく、年齢と共に落ち着きや自信が増していきます。

60年もたてば別人と言って良いほど性格が変わる

イギリス心理学会は、次のような研究を行いました。

  • 1950年に14歳の男女1,208人に性格診断のアンケート調査を行った
  • 性格診断では、自信、粘り強さ、落ち着き、オリジナリティ、誠実性、学習意欲の6要素が診断された
  • 63年後、当時の被験者の内174人がアンケート調査に参加
  • 被験者の家族や友人など周囲の人からの評価アンケートも実施

この調査の結果、14歳の時点と77歳の時点では、別人と言って良いほど性格が変わることがわかりました。
14歳の時のアンケート結果と77歳のアンケート結果では、重複する部分がほぼなかったのです。

年齢と共に落ち着きや自信が増していく

この種の調査は様々な形で各所で行われていて、例えば次の研究ではより大規模な調査が行われています。

https://doi.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fpspp0000210
  • 1960年に高校生44万人を対象にビッグファイブ性格診断が実施された
  • ビッグファイブ性格診断は、開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症的傾向が診断される
  • 50年後、当時の被験者の内1,952人がアンケート調査に参加

その結果、前に紹介した研究と同様の結果が示されました。

この研究では、年齢と共に落ち着きや自信、リーダーシップ、外向性、良心さ、という性格要素が高くなることがわかりました。

一般的に言われる、人間としての成熟、というものが研究により証明された形になります。

性格の変化は20歳から40歳に顕著だが他の年齢でも変化は起きる

性格の変化は、非常に緩やかであり、また周囲の人間も同様に緩やかに性格が変わっていくこともあり、気が付きづらいものです。

しかし、次の研究では、性格の変化が若年成人期である20歳から40歳に顕著であることが示されました。

https://journals.sagepub.com/doi/10.1111/j.1467-8721.2008.00543.x

若年成人期に顕著な性格変化が見られるものの、どの年齢でも変化が起きることも併せて示されています。

なお、この研究でも、上2つの研究と同様に年齢と共に、自信、自制心、情緒の安定性、人としての温かさ、という性格要素が高まることが示されています。

性格の変化は、ライフステージの変化と共に、周囲の期待値も変化していき、それにより起きるものだ、と考えられています。

逆に言うと、何歳になっても幼稚な精神のままでは非常にみっともない、と言えますね。

こちらの記事も参考に(仕事が忙しくてストレス過多だと正確が悪くなる)。

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マネジメント・リーダーシップ

仕事が忙しくてストレス過多だと性格が悪くなる

三つ子の魂百まで、と言われるように人の性格は一般的には変わらないと言われていますが、それは誤解です。
例えば、仕事が忙しくてストレス過多の状況が続くと、神経症傾向が増加し、外向性と誠実性が減少することがわかっています。
有体に言えば、性格が悪くなるのです。

仕事が忙しくてストレス過多な状況が続くと性格が悪くなる

次に紹介する論文では、仕事の状況と性格の変化について記されています。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0001879115300191

研究では、オーストラリアの1,814人の家計・所得・労働動態調査を元に、仕事上の忙しさやストレス、ジョブコントロールの状況が性格がどのように変化していくのか?のモデルが探られました。
性格はビッグ5性格診断により測定されました。

その結果、まず第一に、仕事の忙しさとジョブコントロールが、仕事のストレスに正または負の影響を与えることがわかりました。
また、仕事の忙しさはストレスを増大させること、そして長期的には神経症傾向の増加と外向性と誠実性(良心)の減少を誘発することがわかりました。

一方、ジョブコントロールの増加は、協調性、誠実性(良心)、寛容さを増加させること、そして神経症傾向や外向性には影響しないことがわかりました。

つまり、三つ子の魂百まで、という言葉は誤りであり、職場の環境により人の性格は容易に変わり得る、ということです。

忙しさは成功に必要な性格である「外向性」に悪影響を与える

上述の研究は個人や組織の成功に関係している可能性があります。

例えば、次の記事では、出世にプラスの影響がある性格として「外向性」が唯一のものであること、そして、内向的な性格の人が無理に外向的に振舞うとネガティブな感情を抱き、疲労しやすいこと、を解説しています。

仕事が忙しくてストレス過多な状況が続くと外向性を減少させてしまう、ということは成功のために忙しく動いていると、成功につながる性格要素に影響を与える、というパラドックスがうまれる可能性があるのです。

また、誠実性の減少は成功に必要な性格の一要素であり、それが失われることにより悪影響が出るものです。

怒りっぽくなると過去の失敗から物事を学ばなくなる傾向についても知られており、反省し成長するためのアクションが減少してしまう可能性も考えられます。

ジョブコントロールが低い組織は成功に必要な要素に悪影響を与える

組織の成功についてはどうでしょう。

こちらの記事では、組織の成功のためにはチームの平均的な社会的感受性が高いこと、チームとして感情知能(EQ)が高いこと、が重要であることを解説しています。

忙しさは外向性や誠実性を減少させるため、チームとしての社会的感受性や感情知能に悪影響を与えることが一定推測できます。

また、ジョブコントロールも低いのならば、協調性、誠実性、寛容さ、という性格の増加が妨げられるため、同様にチームとしての社会的感受性や感情知能に悪影響を与えることが一定推測できます。


これらのことは組織設計を考える上で、非常に重要なことであると推測されます。

現代人が忙しくてストレス過多なのは、一定程度仕方がないにしても、組織設計・文化形成における努力と工夫で緩和することが必要でしょう。
成功のために忙しくなる結果として、成功に必要な性格要素が失われるリスクがあるのですから。

最低限、ジョブコントロールを従業員に渡すよう努めることには取り組んだ方が良いでしょう。

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マネジメント・リーダーシップ

部下に自分事で考えて動いてもらうためにはどうしたら良いのか?

統制の所在(locus of control:ローカス・オブ・コントロール)の考え方を元にした研究では、部下の職務上の自律性を高めれば、時間の経過とともに統制の所在が内的になる、つまりは自分事で考えて動いていく形にパーソナリティが変化していく、としています。

ここでは、部下に自分事で考えて動いてもらいたい、と考えるマネージャーや経営者へのヒントを提示します。

統制の所在の考え方

まずはじめに統制の所在についてです。

統制の所在(とうせいのしょざい、英: locus of control)またはローカス・オブ・コントロール(LOC)は、行動や評価の原因を自己や他人のどこに求めるかという教育心理学の概念。
統制の所在が内側 – 良くも悪くも自分のせいと考える。テストで良い/悪い点を取ると、自身の努力や能力を褒める/責める。
統制の所在が外側 – 良くも悪くも環境のせいと考える。テストで良い/悪い点を取ると、テスト内容や教師の質を褒める/責める。

Wikipedia「統制の所在」より

統制の所在が内的の人は、何かしらの課題を達成した後、目標のハードルを上げやすく、逆に失敗した場合には目標を下げる、という傾向があります。
他にも、次のような傾向があるとのことです。

  • ~したい、~することを選ぶ、是非とも~したい、という用語を使う
  • 他の人に影響を与えようとする
  • 誰が言ったか?ではなく、何を言ったか?に着目する
  • 失敗や失望に対して、自分自身を抑圧する
  • 自分がコントロールできることに時間とエネルギーを集中し、また出来事を定義し物事を実現していく

統制の所在が外的な人は、逆に、何かしらの課題を達成した後、目標のハードルを下げやすく、失敗した場合には目標をあげる、という傾向があります。
他の傾向は次のようなものです。

  • できない、~しなければならない、~するべきだ、という用語を使う
  • 周囲の人々に影響を受けやすい
  • 何を言ったか?ではなく、誰が言ったか?(ステータス、地位、肩書等)に着目する
  • 失敗に対して、不安や罪悪感を感じにくい
  • 日々の出来事に反応する、人に頼りがち

統制の所在が内的だと「自分事で考えて動ける」

この統制の所在自体には良し悪しは無いはずではあるのですが、一般的には統制の所在が内的の方がメリットが多いと言われています。

例えば、母親の統制の所在が内的の子どもは、学力が高くなる傾向があるとされています。

子どものためにより良い食事を与えたり、物語を聞かせたりするため、子どもも勉強に関心を持ちやすい、ということです。
逆に統制の所在が外的な人の子どもは、自分の子どもの成績が悪いのは遺伝の影響や、学校の問題だ、と言う風に考える傾向があります。

そして、統制の所在が内的だと「自分事で考えて動ける」ため、成功者に多い気質だとされています。

部下に権限を与えて自由に仕事をしてもらえば、自分事で考えて動けるようになっていく

部下に仕事上の自律性を与えると統制の所在が内的になる

それでは本題ですが、次に紹介する論文は、部下に仕事上の自律性を与えると統制の所在が内的になる、つまりは自分事で考えて動けるようになることを示唆しています。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0001879115000585

研究では、約3千人の被験者を対象に、4年間に渡る追跡調査が行われました。
調査では、仕事上の自律性やスキル活用が、従業員満足度や統制の所在にどのように影響を与えるのかが分析されました。

分析の結果、仕事上の自律性が、統制の所在を内的にすることに影響していることが示されました。
スキルの活用度合については、従業員満足度を高めることには繋がれど、統制の所在に影響を与えることはありませんでした。
また、従業員満足度が統制の所在に影響を与えることも確認できていません。

部下に権限を与えるのが重要、ということ

つまり、部下に権限を与えて自由に仕事をしてもらえば、自分事で考えて動けるようになっていく、ということです。

ジョブとスキルがマッチした環境とか、従業員満足度が高い環境とか、そういうものは部下が自分事で考えて動くかどうかには、関係がない、ということでもあります。
(日本だと、ここにフォーカスした施策の方が多い感じですね。)

非常に当たり前で、一般的にそうだよね、と思われるであろうことです。

しかし、多くの職場で、「自分事で考えろ!」「もっと自律的に動け!」と言うものの、適切な権限を与えない、自分で考えて行動したら「勝手なことをするな!」と叱られる、というようなことが行われているのではないでしょうか?

部下が自分事で考えない、尻が重くて中々動かない、とするのであれば、その責任は部下ではなく上司や経営者にあります。
そして、そのように捉えることこそ、統制の所在が内的であると言えます。

部下に「統制の所在が内的であって欲しい」と思うのであれば、それを実行するのは上司・経営者からです。

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仕事と健康,運動

睡眠不足は不安を増大させる

睡眠不足がパフォーマンス、つまりは生産性に悪影響を与える、ということは非常に知られています。
また、健康にも様々な悪影響を与えることも同様によく知られています。
加えてメンタルとの関連性もよく語られますが、睡眠不足に陥ると不安が増大する、ということはあまり知られていません。

慢性的な睡眠不足は、不安を増大させる可能性があるのです。

睡眠不足の時に活性化する脳領域と不安を感じた時に活性化する脳領域は同じ

慢性的な睡眠不足に陥ると、生産性が落ちたり、体調が悪くなったりした経験がある人は多いでしょう。
また、もしかしたら、不安な気持ちになった経験がある人もいるかもしれません。

一般的に、不眠症の人は、不安障害を抱えるリスクが多いとされています。
しかし、これは相関性が見られたのみで、臨床的にどのように関係しているのか?は示されてきませんでした。

カリフォルニア大学の研究チームは、睡眠不足の時に活性化する脳領域と不安を感じた時に活性化する脳領域は同じであり、睡眠不足が不安を増大させる可能性について示しました。
たった一晩寝なかっただけで、fMRI検査において、不安を感じた時に示す脳活動パターンが見られたのです。

https://www.researchgate.net/publication/327021316_Sleep_loss_causes_social_withdrawal_and_loneliness

意図的に睡眠不足の状態を作ると不安が増大した

この研究では18人の健康な成人を被験者とし、半分を睡眠不足グループ、半分を対象群となる通常グループにわけて、2晩過ごしてもらいました。
そして、それぞれの夜と朝に被験者の不安レベルが測定されました。

その結果、睡眠不足グループにおいて、翌日の不安レベルが30%上昇することが示されました。
この水準は、臨床的に不安障害と診断される可能性がある水準です。

併せてfMRI検査が行われ、上述の通り、睡眠不足グループにおいて不安を感じた時に示す脳活動パターンが見られました。

睡眠不足により増大した不安は、ぐっすり眠ると解消される

この睡眠不足により誘発された不安は、被験者が一晩しっかりと睡眠をとると、正常なレベルにまで回復したこともわかりました。

研究者は、「十分に休息しているときには、感情をコントロールする脳領域が不安を抑えるが、たった一晩の睡眠不足でも感情を制御するプロセスが発動しなくなる。」としています。

この研究により、不安が睡眠不足を誘発する、という従来の知見に加えて、睡眠不足が不安を誘発する、という双方向の相互作用がある可能性が示されました。


忙しい現代人は、睡眠不足を削って「生産的」なことに時間を費やしたいと考えがちです(その「生産的」が仕事なのか、趣味のことなのかは問わず)。

しかし長期的に見れば、「生産的」なことよりも、睡眠をしっかり取ることの方がはるかに重要であると言えます。

睡眠不足により、不安サイクルという完全な悪循環に陥るリスクがあるのですから。

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統計・経済

なぜ、選挙で開票率が0%なのに当確が出るのか?

選挙で開票率が0%、もしくは開票がはじまって間もないのに当確が出る理由は、統計的なデータを元に当確を算出しているためです。
各局は、出口調査により、選挙が終わり投票所から出てきた人に無作為でアンケートを取り、何人がどの候補者に投票を行ったのか?のデータのサンプルを収集します。
このサンプルを元に計算が行われ、その精度は多くの人が考えるものより高いものになります。

お味噌汁のたとえ~一口味見をすれば当確がわかる~

なぜ、選挙で開票率が0%なのに当確が出るのか?をわかりやすく説明するために、よく使わられる例えに「お味噌汁の味見」の話があります。

数学者の秋山仁先生に「開票5%で当確がでるのがおかしい」といったところ、秋山先生が「それが統計学ですよ。少ないサンプルで全体を見る。これが統計学です」とおっしゃる。
「でも先生、そんなこといっても5 %ですよ」
「じゃああなたね、大きな鍋一杯にみそ汁作って、味見するとき、どんぶりばち一杯に入れてぐーって全部飲む?」
「・・・小皿ですよね。」
「それが5 %よ。」

立川志の輔さんの落語のマクラということなのですが、ようは、一すくいの味噌汁からなべ全体の味が予想できるように、無作為に取り出したデータがあれば、すのサンプル数が全体のほんの一部でも、全体の姿を予測することができる、ということです。

実際には、地域ごとに強い政党の色があることや、支持組織の存在がある故に単純に出口調査をすれば良い、というものではないのですが、大枠の理論としてはこの考えが「なぜ、選挙で開票率が0%なのに当確が出るのか?」への答えになります。

選挙で開票率0%の状況で当確を算出するのに必要なデータ数

必要なサンプル数の考え方の詳細はこちらの記事で解説をしています。

数時感としては次の図表のようになります(白いエリアが必要なサンプル数)。

許容誤差5%、信頼度95%で設定するならば、約400のサンプルがあれば統計的には事足りることがわかります。

用語の意味は次の通りです。

許容誤差:母集団からどの位のズレがあるのかの可能性を示す指標

例えば、許容誤差5%の設定で、ある事象への好感度が70%だとした場合、その「ある事象への好感度」は「65%~75%」ということになります。
ようは、アンケートからえられた結果が「どれだけ実態からかけ離れているか」を示します。
アンケートの目的にもよるのですが、通常は許容誤差5%が設定されます。

信頼度:えられたサンプルが、どれくらいの確率で許容誤差内の結果におさまるのかを示す指標
例えば、信頼度95%の設定で、回答者数が100人、上記の許容誤差5%、ある事象への好感度が70%の場合、「100人中95人」は「ある事象への好感度が65%~75%」ということになります。
アンケートの目的にもよるのですが、通常は信頼度95%が設定されます。
なお、信頼度は許容誤差以上に、必要なサンプル数に与える影響度(感度)が大きいので、無理に高めようとする場合には、よく検討が必要です。


統計を親しんでいる人にすれば当たり前の話なのですが、多くの人にとって見ればわかりにくい考えでしょう。

お味噌汁のたとえなら、感覚的にこの統計の話が理解できるはずです。

なお、味噌が固まっていて十分に混ざっていない場合はどう考えるの?という話が、正に統計のだいご味で、「よくかき混ぜる」ステップが必要です。
一定の誤差も考慮した上で無作為にサンプルを抽出する、という部分ですね。

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仕事と健康,運動

睡眠不足は身心に悪影響を与えるのみならず肥満や歳をとった時の体力にも悪影響を与える

睡眠不足がパフォーマンス、つまりは生産性に悪影響を与える、ということは非常に知られています。
そして、生産性に悪影響を与えるだけでなく身心にダメージを与え、幸福を感じにくくなってしまうこと、また肥満や歳をとった時の体力にもマイナスの影響を与えることが研究でわかっています。

睡眠不足は身心に悪影響を与える

米・サウスフロリダ大学の研究で、わずか1日だけでも睡眠不足になると身心に悪影響を与える、ということが示されています。

https://academic.oup.com/abm/advance-article-abstract/doi/10.1093/abm/kaab055/6314765?redirectedFrom=fulltext

研究では約2,000人の中年を対象に、8日間の睡眠時間や感情、生活行動等についてデータを収集し、分析がされました。
その結果、睡眠時間が6時間を下回った人において、有意にネガティブな感情(怒り、いらだち、神経質、フラストレーション、神経質等)が増加したことがわかりました。
また、ネガティブな感情のみならず、胃腸や呼吸器等、健康上の悪影響も増加したことがわかりました。

この悪影響は睡眠不足が続くと悪化を続け、3日目でいったん落ち着くものの、6日目で更に悪化する事も示されました。

この悪影響から逃れるためには十分な睡眠が必要である、としています。

睡眠不足は幸福度を下げる

カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究では、睡眠不足がポジティブな出来事からうける幸福な感情が低下し、ネガティブな感情が増加すること、つまりは幸福度が下がることが示されました。

https://doi.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fhea0001033

研究は、約2,000人の中高年を対象に行われ、8日間の睡眠時間、ポジティブもしくはネガティブな出来事、その出来事から感じた感情等についてインタビュー調査が行われました。

その結果、睡眠不足になると、ポジティブな出来事からうける幸福な感情の増加幅が低下すること、逆にネガティブな出来事からうける幸福な感情の減少幅が増加することがわかりました。

一方で、十分な睡眠をとっている被験者は、ポジティブな出来事からうける幸福な感情の増加幅が増加すること、ネガティブな出来事からうける幸福な感情の減少幅が低下することもわかりました。

研究者は、睡眠が与える身心への影響のみならず、人生の幸福にも影響をしていることを指摘しています。

睡眠不足は肥満につながる可能性

さらに、睡眠不足が肥満につながる可能性についても指摘されています。

フランス・国立衛生医学研究所の研究では、睡眠不足が肥満と関連があることが示されています。

https://www.afpbb.com/articles/-/2375648

研究では、睡眠不足の状態になると、食欲抑制ホルモンであるレプチンが体内で18%減少すること、一方で食欲増進ホルモンであるグレリンが28%増加することが示されました。

この睡眠不足が言う睡眠の時間は、1日4時間睡眠を2日間繰り返した場合、とのことですが、現代人の睡眠状況では珍しくないかもしれません。

他の研究でも、睡眠時間が短い人は肥満傾向があることが示されており、肥満と言う観点でも、長期的な身体への悪影響が推測されます。

睡眠不足は将来、介護施設に行くリスクを高める可能性

そして、睡眠不足は将来、介護施設に行くリスクを高める可能性があることが示されました。

この研究では、平均年齢83歳の高齢女性約1,600人を対象に、ウェアラブルデバイスによる3日間の行動データが取得され、そして追跡調査により5年後の介護施設への入居状況が調査されました。

https://cakehealth.com/2865-sleep-disturbance-nursing-homes.html

その結果、睡眠時間が短い女性(夜間に起きている時間が長かった女性)は、有意に介護施設に入居する割合が高かったことが示されました。

この結果は、認知症との関連も考えられるため、睡眠不足と介護施設に行くリスクが直接的に結びついているとは限りません。
また、高齢者が眠らない、ということが周囲の介護者のストレスを増大させ、介護施設に入居させるインセンティブが高まる、という可能性も考えられます。

しかし、睡眠不足が身心に悪影響を与える、ということを考えると、長期的な身体機能や認知機能の低下を招き、介護施設に行くリスクを高める可能性は十分にあると言えます。


現代人は、睡眠を十分にとれる環境の確保が難しいのは確かなことでしょう。

しかし、これだけの悪影響があることを踏まえれば、如何に睡眠時間を確保するのか?は重大な検討事項であるのは間違いがないでしょう。

自分自身の人生を大事にするのであれば、良質な睡眠を十分な時間、取れるよう、最大限の工夫をすべきと言えます。

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