カテゴリー
人事・総務

離職率を下げるにはどうしたらよいか?

離職率を下げるにはどうしたらよいのか?という悩みは多くの企業が抱えています。
そして、離職兆候が出た従業員に対して、色々とアプローチをする企業が多いのですが、効果が出ないのが実際でしょう。
それでは、離職率低下のためには何をしたら良いのでしょうか?

離職兆候の例

離職兆候の例として、次のようなものがあげられます。

  • 挨拶をしていた人が、挨拶をしないようになった
  • 逆に、挨拶をしない人が、清々しい挨拶をするようになった
  • 愚痴や不満が少なかった人が、愚痴や不満ばかりを言うようになった
  • 逆に、愚痴や不満ばかりを言っていた人が、途端に愚痴や不満を言わなくなった
  • これまで複数人でランチに行っていた人が、一人でランチに行くようになった
  • 休憩中に業務とは関係のない勉強をするようになった
  • 業務や自社の業界とは違う話をするようになった
  • 服装が変わった(スーツ等がしっかりするようになった)
  • 遅刻や早退が増えるなど、時間の使い方が変化した
  • スマートフォンを持って離籍する頻度が増えた
  • 会議での発言が明らかに減った
  • 以前より、机や身の回りの物を整理整頓されている
  • 引き継ぎマニュアルを唐突に作り始める

ようは、既に会社を見限り、転職のための行動をはじめているか、転職先が決まったが故にその準備をしている、ということです。

この時点で、何かしらのアプローチをすれば間に合うのでしょうか?
それとも時すでに遅しなのでしょうか?

離職理由

ここでよく言及されるのが、厚労省が出している雇用動向調査のような資料です。

離職理由ランキングを明らかな会社要因(定年等を含む)を除いて考えると男女別に次のようになります。

男性の離職理由

  1. 給料等収入が少なかった:9.4
  2. 職場の人間関係が好ましくなかった:8.8
  3. 労働時間、休日等の労働条件が悪かった:8.3
  4. 会社の将来が不安だった:7.1
  5. 能力・個性・資格を活かせなかった:4.9
  6. 仕事の内容に興味を持てなかった:4.7

女性の離職理由

  1. 職場の人間関係が好ましくなかった:13.3
  2. 労働時間、休日等の労働条件が悪かった:11.6
  3. 給料等収入が少なかった:8.8
  4. 仕事の内容に興味を持てなかった:5.2
  5. 能力・個性・資格を活かせなかった:5.0
  6. 会社の将来が不安だった:3.4

ランキングの並び順はともかくとして、概ねこの6要素が離職理由を占めていることがわかります。

では、この6要素を改善するアクションをとれば離職率を下げられるのでしょうか?

従業員が離職行動に出るメカニズム

少し古い(1994年)研究ですが、従業員が離職行動に出るメカニズムが研究されています。

https://www.researchgate.net/publication/200130237_An_Alternative_Approach_The_Unfolding_Model_of_Voluntary_Employee_Turnover

この研究では次のようなフローチャーを提示した上で、従業員の離職行動について解説しています。

まず論文では、「個人が認識しているシステムに対するショックによって、自己認識=現状ギャップが生まれ、離職行動ないしは定着行動が模索される。」ことを前提に、心理的要素に着目してフローチャートが描かれています。

ここで言う自己認識とは、従業員に何かしらの影響を与え、自分自身の仕事について熟考し、その結果として離職行動にでるような出来事のことです。
上述のような6つの離職理由が例としてあげられます。
会社都合や自分自身の変化は、この自己認識には該当しないとしています。

離職モデル

フローチャートでは、4つの離職モデルが提示されています。

①良い所が見つかったパターン

このパターンでは、個人が認識しているシステムに対してショックがあった際に、今の会社とは別の自分自身の認識しているシステムに合致する会社が見つかったら離職行動に出る、というものです。

ようは、離職理由を起因に転職行動に出て、良い所が見つかったら転職する、というパターンです。

②良い所が見つからなかったパターン

このパターンは、個人が認識しているシステムに対してショックがあった際に、今の会社とは別の自分自身の認識しているシステムに合致する会社が見つからなかった、というものになります。

ようは、離職理由を起因に転職行動に出たけれども、良い所が見つからなかったパターンです。

この場合、今の会社に居続けることを選択しますが、その後、改めて良い所が見つかり、その際に今の会社が自分自身の希望と合致していない場合に離職行動に出ます。

③会社側が改善のための代替案を持っているパターン

このパターンは、会社側に代替案があるものです(会社側が意識的もしくは自発的に代替案を提示していない状況で、従業員側が既にある代替策を選択できる状態も含む)。

つまり、何かしら改善のための代替案がある状況で、従業員が今の会社ではなく、別の会社の方が良いと判断し離職行動に出たパターンです。

このパターンでは、とりあえず会社を飛び出た者、業務を忌避し者、という形で玉石混交の性格が強くなります。

④会社都合や個人の環境変化等によるパターン

このパターンは、個人が認識しているシステムに対するショックが無いパターンです。

会社都合のものや、個人の環境変化(結婚・出産・介護等)のものであり、会社と従業員の間で致し方がなく乖離が生まれている状況です。

このパターンでは、会社側が代替案を提案し、従業員がそれを検討することにより一定分岐するものになりますが、これも一つの離職行動の一つとなります。

このフローやそれぞれのパターンを見ていくと、パターン②~④においては、きちんと何かしらの代替案を提示し、それについてきちんと検討をすることを促せば離職の決断に対して一定の制御が可能であることが示唆されます。
(パターン①については、離職行動の制御は無理と考えられます。)

つまり、そもそもとしての離職理由が発生しないことは重要ですが、何かしらの兆候が出た場合に、アクションを取っていくことも重要なのも確か、ということです。

離職したいと思う人と在職し続けたいと思う人の離職理由は異なるので、離職防止施策は別に考える必要がある

ここでの注意点が一つあります。

こちらの研究(研究途中の経過報告)では、次のように概要を説明しています。

https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12845/

より重要な点として、「在職者」と「離職者」を比較した場合、「組織に残り続ける理由」と「組織を辞める要因」は表裏一体ではないことが確認された。例えば、在職者が組織に残り続ける理由として「勤務地」や「仕事内容」を挙げる一方、離職者では「給与・待遇」、「パワハラの有無」、「会社の将来性」等が在職者よりも高い割合で挙げられていた。この結果は、在職者をより長く組織に留めるための施策と、離職者の退職防止施策は別々に考えなければならないことを示唆している。

つまり、離職したいと思う人と在職し続けたいと思う人の離職理由は異なるから、離職防止のためのアクションを一律に考えて実施してはいけない、ということです。
(一律のリテンション・マネジメント施策が効果的でない要因がここにあると考えられます。)

人事担当者にとっては、検討しなければならない事項が増えてしまうでしょうが、自社の離職率を下げたいと思うのであれば、離職理由が発生することの防止と、離職理由が発生した場合のアクション、それも従業員の離職行動のパターンに応じて施策をわけることが必要です。

カテゴリー
統計・経済

高年収の人は歩くスピードが速いという話~年収と相関がある統計諸々~

年収が高い人ほど、歩行速度が速く、早歩きの割合が高い、という統計があります。
背景として、高年収の人は時間を大切にする、表現を変えるとせっかちである割合が高く、そのような結果になるのであろうとされています。

今回は年収と相関がある統計について、いくつか紹介をしていきます。

高年収の人は歩くスピードが速い

ドコモ・ヘルスケア株式会社がウェアラブル活動量計により収集した統計データにより、年収が高い人ほど、歩行速度が速く、早歩きの割合が高い、ということが示されました。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000016519.html

対象は19歳から77歳の男女で総計1,229人の統計データとなります。
調査では、ウェアラブル活動量計のデータと、アンケート調査を元に分析がなされました。

ドコモ・ヘルスケア株式会社「年収が高い人ほど歩くスピードが速く、せっかちであることが判明!?」より

年収1,000万円以上の人の平均歩行速度は3.13Km/hであり、日本人平均の400万円以上500万円未満の2.69Km/hに比べると、約16%も歩くスピードが速いことがわかります。

早歩きをすれば年収があがる、という因果関係の話ではありませんが、高年収の人が如何に時間を気にしているのか、示唆されます。
(調査では、「年収が高い人ほど、せっかちな傾向が!?」としています。)

高年収の人は朝食を大事にする傾向がある

もう一つの調査はスムージーのメーカーによる、若干のポジショントークが入ったものになりますが、一定納得があるものです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000026950.html

調査では、20代から50代の男女総計500人を対象に、年収と朝起きる時間、食事に対する意識等について調査がされました。

株式会社アントレックス「年収800万円以上の人の7割は朝の時間に余裕がある!」より

その結果、年収が高い人ほど、朝は早めに起きる傾向があること、また朝ごはんを一番大事にする傾向があること、がわかりました。

朝食は一日の活力の源であり、一定納得が行く話です。
(もちろん、そもそも活力があるから朝を早く起きれて朝ごはんを食べられるだけの余裕があるのじゃないか、という見解もあり得ます。「やる気」が一定程度、遺伝子に左右されるという示唆も別の学術的研究であり、その時点からして差が出てしまっている、という可能性は考えられます。)

高年収の人は読書量が多い。

こちらは有名な話です。

https://gentosha-go.com/articles/-/34844

読書量と年収には相関関係があり、富裕層と年収300万円以下の人では次の図の通り、とてつもないまでの開きがあります。

こちらも上述の「やる気」問題が関係している可能性があるにはあるのですが、努力と「成功」には関係性があることが示唆されます。
(高年収であることが必ずしも成功であるとは限らないので、鍵括弧「」で成功という言葉を括っている。)

筆者は次のように主張しています。

時間がないから読書ができないのではなくて、「読書をしないから時間がない」のです。「時間がないから読書ができない」というセリフは、絶対に言ってはいけないことだと思っています。

疑似相関には注意

この種の話を見る時は、必ず疑似相関には注意を払う必要があります。

例えば、年収と体重の関係です。

リンク先のブログ記事では、年収と体重の関係について、疑似相関であることを紹介しています。
歳を取ればとるほど、活動的ではなくなりますし、代謝も落ちるので、必然的に体重が増えやすいと。
一方で、歳を取ればとるほど、年収は高くなる傾向が当然にあります。

THE STRETCH.「トレーナーが知っておきたい相関関係と因果関係の話」より

このような関係を疑似相関であるとして、筆者は注意を促しています。

他にも、年収とワクチン接種の意欲の関係や、年収と語学力の関係も一定の疑いがあります。

JIJI.com「性別や預貯金額も関係? ワクチン接種の意欲調査―経産研究所」より
ITmediaビジネス「やっぱり英語ができる人は、年収が高い?」より

つまり、歳が高いほど新型コロナウイルス感染症の脅威度が高く、積極的にワクチンを接種する動機が生まれます。
そして、繰り返しになりますが、歳が高いほど、年収は当然に高くなる傾向があります。

語学力は一見、グローバルに活躍ができるから、高い年収の仕事につきやすくなる、という風に見える可能性はあります。
しかし、語学力と学歴には一定の相関があることを考えると、この話はシンプルに学歴と年収の、周知の話なのでは無いか?と考えることもできます。

改めて、相関があるからといって、因果関係があるとは限らない、という点は意識したいものです。

分布についても意識したい

もう一つ注意点が。

この種の話をした時に、必ず「私、歩く速度速いけれど年収低いよ。」とか、「俺の知り合いで、全然本読まないで遊び歩いているけれど高年収な人がいるよ。」というような事を仰る方が出てきます。

「そういうとこだぞ」と言いたくなりますが、それはともかくとして、とりあえず、分布というものを意識してもらいたいな、と思います。

いちばんやさしい、医療統計「正規分布とは?わかりやすく標準偏差との関係もガウス分布に関して解説」より

統計データというものは、必ず、このような観測データと生じる確率にバラつきが出て、そのデータ全体の中で平均というものが計算されます。
上述のようなツッコみをされても、まぁ、そういう人もいるだろうね、としか言えないのです。

カテゴリー
ビジョン的思考

MBAは役に立たないのか?優秀な人材を活用する姿勢が日本企業には必要

持家か賃貸か?程ではないにせよ、長く議論がされている話題に「MBAは役に立つのか?」というものがあります。
そして、理論を振りかざすだけで実務には役に立たない等々の理由で否定的に見られることが多いです。
この現状を改めてレビューしてみましょう。

以前にこちらの記事で自分自身の体験を元に同様のテーマで書いたのですが、今回は外部の記事を参照していきます。

MBAに対する賛否

こちらの日経ビジネスの記事では、MBAに対してその賛否を過去の記事を元に紹介しています。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00081/090300242/

簡単にまとめると、次のようになります。

  • 否定:一般的なMBAでは科学的根拠は得られるが経験は得られない
  • 否定:典型的なMBAは実務から切り離されている
  • 否定:MBAの論文は学問的に評価されず、結果として教科書がアップデートされていない
  • 肯定:立ち止まって体系的に経営学を学ぶことができる、直接仕事とは関係のないことも学ぶ必要がある
  • 肯定:MBAにより理不尽に耐える精神力が見について、優秀な人材の牙を抜いた企業は今現在、右往左往している
  • 肯定:ものの考え方が身につき実際の経営に役立った

ざっくりと言うと、理論先行で経験が追い付いていないのはよろしくない、ということなのでしょう。

海外では断定的に肯定されている

一方で、こちらの記事では借金する価値がある、と断定しています。

https://jp.wsj.com/articles/a-graduate-degree-that-pays-off-the-m-b-a–11635400426

その論拠はMBAっぽいもので、MBAプログラム修了後の年収増加を考えると、2年後にはMBAにかかった負債(ローン)を所得が上回る、というものです。

確かに筆者も、MBAに要した費用は2年程度で上昇した収入でカバーしてしまいました。

企業側から見た時にMBAホルダーは使いづらいのかもしれませんが、MBAホルダー側から見れば関係がない、ということなのでしょう。
(筆者のMBA同期も、大体の人が収入が増加した、と言っています。また転職をした人が非常に多いです。)

やはり国内だとMBAホルダーは否定的に捉えられがち

しかし、やはり国内だとMBAホルダーは否定的に捉えられがちのようです。

例えばこちらの記事では「MBA取得者の多くは、経営者に向かない」としています。

https://president.jp/articles/-/50911

その理由は次のようなものです。

「知識はある。知識は力の源泉だから、彼らは一定の役には立つし、弁も立つ。しかし人の心には通じていないことが多い。あまりにも多い。人が喜んで働くように働きかけるのがリーダーだから、人の心に通じていないようでは、経営者にはなれない。」

確かに一理あります。

「こうすれば高効率にもっとうまくやれる。」としても人は簡単には納得しないし動きません。

その意味で、冒頭の賛否の記事でもありましたが「経験」の重要性を再認識できます。

しかしながら、この主張を額面通りに受け止めるのは非常によろしくありません。

海外トップ企業のCEOの約31%はMBAホルダー

文部科学省が出している資料に次のようなデータがあります。

米国の上場企業の管理職等の約4割はMBAホルダーなのに対して、日本の企業の役員等は、大学院修了者が1割以下だというのです。

また、世界トップ500社のCEOの約31%はMBAホルダーなのです。


これらのことを考えると、日本と言う国が全体としてMBAホルダーを有効活用できていないだけなのでは?と考えるのが自然なように思います。

優秀な活用すべき人材を活用できていない日本企業の現状はどうなっているでしょう?
日本の経済状況はどうでしょう?

MBAホルダーに限らず、優秀な人材を活用しようという姿勢が日本には必要なように考えます。

カテゴリー
生産性・業務効率化

睡眠不足は仕事の効率、つまりはパフォーマンスを低下させる

良く知られた話ではありますが、睡眠不足は仕事の効率を下げます。
一方で、週末に寝だめして睡眠不足分を補おう、という考えもありますが、こちらについて効果がない、ということはあまり知られていません。
今回は睡眠不足がパフォーマンスに与える影響について見ていきます。

睡眠不足は酔っているのと同じレベルでパフォーマンスが低下する

睡眠不足は仕事の効率、つまりはパフォーマンスを低下させる悪影響があります。

このパフォーマンスの低下は、一部の研究によると、ビールを1,2本空けた、ほろ酔いと同じレベルとされています。

https://www.forbes.com/sites/kellyclay/2013/09/04/didnt-get-enough-sleep-you-might-as-well-be-drunk/?sh=657e6bb010e2

睡眠不足分を、カフェインによる覚醒効果でカバーしようという考えが一般的ですが、生産性向上効果は限定的です。
単純作業の効率は確かに回復しますが、複雑な思考を要するタスクの効率は全く回復しないことがわかっています。

お酒を飲んで仕事をしてはいけない、というのは社会の常識となっていますが、睡眠不足にならざるを得ない位に仕事が多いのは何故なんでしょうね???

なお、仕事の効率だけでなく、もちろん勉強の効率も下げます。
社会人だけでなく、学生にとっても睡眠不足は大敵、ということです。

https://www.bbc.com/future/article/20180815-why-sleep-should-be-every-students-priority

16分程度の睡眠不足でもパフォーマンスは低下する

では、どれくらい睡眠時間が短いと、パフォーマンスの低下がおきるのでしょうか?

この答えは次の論文で研究がされており、その時間は16分程度からパフォーマンスの低下が起き始める、とされています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30905693/

研究では、IT系企業に勤める会社員130人を対象に行われ、睡眠時間とパフォーマンスの関係についてアンケート調査が行われました。
その結果、平均して睡眠時間が16分短くなるとパフォーマンスの低下が起きる、ということがアンケートの回答から示されました。

対象人数も少ないことと、アンケートによる自己申告によるものなので16分という時間の正確性については、まだまだ疑問があるものの、わずかな時間でも睡眠時間が短くなると悪影響を受ける、ということはわかります。

週末に寝だめしても睡眠不足によるダメージは回復できない

睡眠不足に対して、週末に寝だめして解消しよう、とする人が大勢います。

しかし、その効果ははっきりと言ってありません。

こちらで紹介されている研究で、寝だめによる認知機能回復効果について検証が行われています。

https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2003652/Lack-sleep-Weekend-lie-doesnt-work-days-just-6-hours-sleep.html

そして、結論として、寝だめの効果をはっきりと否定しています。

眠気だけは確かに解消されますが、それによる認知機能回復は期待できない、ということです。
カフェインによる覚醒効果の話と一緒ですね。

この話は実は非常に恐ろしく、脳神経に物理的にダメージを与える、という研究もあります。

https://www.pennmedicine.org/news/news-releases/2014/march/penn-medicine-researchers-show

寝だめするよりも平日にちょっとでも良いので昼寝を

結論として言えるのが、寝だめをするよりも、ほんのわずかな時間でも良いので日中に昼寝をしましょう、ということです。

こちらのまとめでは効率的な休憩のとり方について記事をまとめています。

忙しい現代人は、短い休憩でもとることが難しい方が多いでしょうが、効率的な休憩のとり方を知れば、多少でも生産性をあげることができるはずです。

カテゴリー
生産性・業務効率化

「寝てないアピール」がプラシーボ効果で本当に寝不足と同じ悪影響を受ける可能性

「寝てないアピール」がダサい、ということは大分周知されてきています。
一方で、「寝てないアピール」がプラシーボ効果で本当に寝不足と同じ悪影響を受ける可能性についてはほぼ知られていません。
プラシーボ睡眠、プラシーボ寝不足の悪影響について見ていきます。

プラシーボ睡眠のポジティブな効果

睡眠不足はパフォーマンスに多大な悪影響を与えます。

それのみならず、リスク判断を歪める可能性や、認知症等のリスクの向上など、様々なデメリットが睡眠不足にはあり、この悪影響はカフェインの覚醒効果ではカバーできない、ということもわかってきています。

しかし、もしかしたら「よくネタ」と思いこむことがパフォーマンスへの悪影響を緩和できるかもしれません。

こちらの記事では「プラシーボ睡眠」について紹介しています。

https://www.theatlantic.com/health/archive/2014/01/study-believing-you-ve-slept-well-even-if-you-havent-improves-performance/283305/

プラシーボ睡眠の研究概要

研究では、学生達に前日夜の睡眠の質について10段階評価で報告してもらいました。

その後、研究者は学生達に実験の背景を説明するために、睡眠が認知機能に及ぼす影響について簡単なレクチャーを実施しました。
そのレクチャーでは、「成人は通常、睡眠時間の20〜25%をレム睡眠に費やしており、レム睡眠が少ないと学習テストの成績が低下する傾向があること、また、レム睡眠の割合が25%以上の人は、学習テストの成績が良くなる。」という虚偽の説明がされました。

また、脈拍、心拍数、脳波の周波数を測定する機器に接続され、「これらの機器により、前日夜にどれだけのレム睡眠をとったのかを把握することができる。」という、これまた虚偽の説明がされました。

そして、被験者一人一人に、16.2%または28.7%のレム睡眠をとったと伝えました。
(実際には脳波しか測定していないし、どれだけのレム睡眠をとったのかの計算もされていない。)

このような心理的なコントロールを受けた後、被験者は聴覚的注意力と処理速度を測定するテストを受けました。
(実験は2回行われ、実験の偏りをコントロールしながら、同じ条件の実験が繰り返された。)

プラシーボ睡眠、もしくはプラシーボ寝不足によりパフォーマンスが変わる

上述の実験の結果、レム睡眠が平均以上であると言われた被験者はテストのパフォーマンスが高いことが示されました。
また、レム睡眠が平均以下であると言われた被験者は、テストのパフォーマンスが低いことが示されました。

この結果は、被験者が自己申告した睡眠の質にフォーカス(自己申告による偏りを排除)をしても同様の結果が得られました。

つまり、実際の睡眠の質に関する自己申告よりも、研究者から与えられた「嘘の情報」に大きな影響を受け、パフォーマンスが変化したのです。

まとめると、「寝てないアピール」はプラシーボ効果で本当に寝不足と同じ悪影響を受ける可能性があるということです。

自分がどれだけ疲れているのか、口にすることはパフォーマンスに悪影響を与える可能性があることを考えると、「よく寝た」「元気だ」と口にする方が良いと言えるでしょう。
「寝てないアピール」は、マウンティングとしても効果がありませんしね。

カテゴリー
フェルミ推定・ロジカルシンキング

孤独が好きな人は高い「知能」を持つ傾向がある、という話

興味深い研究があり、「知能」が高い人は一人、つまりは孤独を好む傾向がある、とされています。
多くの幸福に関する研究が、対人関係の充実と幸福に関連があることを示しています。
ただし、それは例外があるようで、「知能」という変数が影響を与えます。

最初に補足:「知能」の種類

最初に補足をしておきます。

知能には様々な要素があります。

  1. 論理・数学的知能
  2. 博物学的知能
  3. 視覚・空間的知能
  4. 内省的知能
  5. 言語・語学知能
  6. 身体・運動感覚知能
  7. 音楽・リズム知能
  8. 対人的知能

このような知能が存在する中で、上述の「知能」は1~5のいわゆる「IQ」的な「知能」を指しています。

つまり、以降の話で言う「知能」の高低は、頭が悪いとか良いとか、そのような話ではないということは留意ください。

孤独が好きな人は高い「知能」を持つ傾向がある、という研究

こちらの研究では、「知能」の高い人が友人等との付き合いを頻繁にすると、人生の満足度が下がる理由について説明しています。

https://bpspsychub.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/bjop.12181

その観点は、進化心理学に基づいたものです。
「知能」は、ある特定の課題を解決するための能力であり、「知能」の高い人は集団の中で仲間たちの助けを借りずに問題を解決することができました。

一方で、「知能」の低い人は、問題解決のために仲間たちと協力をすることが必要です。

そのため、進化の過程で、「知能」の高い人は孤独を好み、「知能」の低い人は誰かと一緒にいる方が幸福を感じるようになっていきました(というのが研究の主張)。

「知能」と孤独、幸福の研究の概要

研究では、18歳から28歳までの15,197人にアンケート調査を行い、幸福度、知性、健康等について測定が行われました。
その結果、友人と付き合うと幸福になる、という傾向が示されました(人が密集している所にいると人は不幸になる、という傾向も併せて示されています)。

つまり、大多数の人にとって、友人との付き合いは幸福度の向上につながります。

ただし、上述の通り、「知能」の高さが例外を生みます。

詳細は「幸福のサバンナ理論/サバンナ幸福論/サバンナ理論」というキーワードで参照いただきたいのですが、現代の歪な社会構造(太古の時代には無かった人間関係の構造)では、不特定の知り合いでも無い人たちとの交流が求められます。
知り合い以上、友達未満のような関係性の浅い人間関係もです。

この環境は非常にストレスが多く(実際、都市部の方が地方よりもストレスが多いことが示されている)、高い「知能」は特定の方向に、この高ストレス環境に適応をしました。

それが孤独です。

「一般的に、高い知能を持つ人は、私たちの祖先が持っていなかった不自然な嗜好や価値観を持っている可能性が高いです。人間は友人関係を求めるのは極めて自然なことなのですが、その結果として知能の高い人は逆に友人関係を求めなくなる可能性が高いのです。」と研究者は言います。

ようは、自分を理解してくれる人が少なければ、一人でいることを好むのは自然なことなはず、ということです。

孤独はストレスのリセットにもなる

また研究により、「知能」が高い人は、交流関係から恩恵を受けていない(と感じている)にもかかわらず、「知能」が低い人よりも多くの人付き合いをしていることが示されています。

つまり、高い「知能」を持っている人は、孤独をストレスのリセット機能として活用しているのです。

高ストレス環境下にうまく適応する形で進化していると、研究者たちは言及しています。

加えて書くと、「知能」の傾向として、都市部の平均値の方が、地方の平均値より高いということもわかっています。
また、地方で産まれた「知能」の高い人は、その後都市部に移り住む傾向が高いこともわかっています。

忙しくて疎外感を受ける環境は、高い「知能」を持つ人にとって悪影響を与えない、ということです。


この研究は非常に興味深いものです。

誰かが一人でいるからと言って、その誰かが寂しい人だとか、本当に孤独だとは限らないのです。
加えて、高い「知能」を持っている人にとって、孤独は同時に高い生産性につながる時間を作り出します。

一方で、留意しなければならない点も多くあります。

上述の研究は、相関関係を示しただけであり、因果関係を示したものではありません。
人付き合いを好む人の「知能」が低い、とは限りませんし、そもそもとして知能には様々な種類があり、IQ的観点だけで語れるものではありません。

また、別の研究で、高い「知能」を持っている人は、同時に孤独の原因となるストレスを抱えやすい傾向があることもわかっています。

繰り返しますが、この話は良し悪しの話ではなく、傾向であったり、性質の話です。
「知能」に対する理解を深める題材として捉えると、世の中の見え方が拡がるかもしれません。

カテゴリー
生産性・業務効率化

睡眠とパフォーマンスのTipsまとめ

睡眠とパフォーマンスのTipsに関する記事のまとめになります。

睡眠の質を高める

睡眠とパフォーマンス

睡眠と健康

カテゴリー
人事・総務

リモートワーク/テレワークのTipsまとめ

リモートワーク/テレワークのTipsに関する記事のまとめになります。

リモートワークのマネジメント

リモートワークの実務

補足

カテゴリー
ビジネスと心理学

ビジネスに役立つ「バイアス」まとめ

ビジネスに役立つ「バイアス」に関する記事のまとめになります。

人間関係のバイアス

マネジメントのバイアス

勉強とか諸々のバイアス

情報収集時のバイアス

カテゴリー
フェルミ推定・ロジカルシンキング

ロジカルシンキング,フェルミ推定まとめ

「ロジカルシンキング,フェルミ推定」のまとめになります。

ロジカルシンキング

フェルミ推定

補足

モバイルバージョンを終了