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若い内からの認知症予防まとめ
「若い内からの認知症予防」シリーズのまとめになります。
運動と認知症リスクの関係は比較的よく知られています。
一方で、音楽と認知症リスクの関係は、あまり知られていないのではないでしょうか。
ここでは、お風呂と認知症リスクの関係について科学的知見を見ていきます。
楽器演奏経験は聴力や話の理解力の衰えを緩和できる
まず結論から。
どうやら、若年での楽器演奏経験の有無や、楽器演奏の継続が中高年以降の聴力や、話の理解力に影響をするようです。
どうしても避けられない聴力・理解力の衰え、老化を緩和できる可能性がある、という示唆です。
こちらの記事で紹介されている研究では、楽器演奏を継続している中高年は、雑音の中で話を聞き分ける能力が高いことが示されています。
また、楽器演奏を若年(特に研究では9歳以前としている)で始めた人は、高い聴力を維持していることが示されています。
そしてこちらの研究では、楽器演奏の経験がある人は、経験がない人よりも速い速度で、人の話を認識できることが示されています。
(実験では、ヘッドホンを着けた状態で、様々な速さの音声を聞いて、認識できるか否かがテストされた。)
いずれの研究も20人程の少数の実験であり、現状で確かなことは言えないものの、音楽と認知症リスクの関係がポジティブに示唆されていると考えられます。
マルチリンガルが認知症予防になる、という知見も
音楽以外にも言語について言及している研究があります。
こちらの研究では、マルチリンガルの人は、認知症にかかるまでの時期が遅くなることが示されています。
その効果は、第2言語を学ぶ時期が成人以降であってもその効果は同様だ、としています。
上述の研究では、音楽鑑賞では効果がなく、楽器を演奏する行為が重要だとしています。
こちらの研究から、第2言語を学ぶ行為が重要と考えられるので、受動的なものではなく、能動的なアクションが脳にプラスに作用するものと考えられます。
音楽を学ぶ時期については不明な点が多いですし、可能な限り若年層の方が望ましい、という研究が多いのは事実です。
しかし、言語学習については何歳から始めても問題がないことがわかっています。
楽器演奏も、年齢仮説を否定するものが出ていますので、年齢を気にせず、やりたいと思った時期に取り組んでみるのが良いと考えられます。
運動と認知症リスクの関係は比較的よく知られています。
また、「脳トレ」と言われるように、脳機能とゲームの関係も知られるようになってきました。
ここでは、ゲームと認知症リスクの関係について科学的知見を見ていきます。
ゲームは認知症の予防や治療に役立つかもしれない
こちらの研究では、一部のゲームが認知症の予防や治療に役立つ可能性について示しています。
研究では、55歳から77歳の33名の被験者を対象に、ゲームをプレイするグループ、コンピューター機器で楽器を演奏するグループ、対象群を用意し、半年に渡って研究が行われました。
その結果、ゲームをプレイするグループで優位に記憶に関連する脳部位である海馬の灰白質が増加していることが示されました。
(コンピューター機器で楽器を演奏するグループも同様の結果は得られたものの、効果はゲーム程ではないとのことです。)
なお、ゲームのジャンルは何でもよいわけではないようです(これについては、よくわかっていません)。
おそらく、新しい経験であり、その経験の複雑性が高い場合に効果があるのではないかと推測されます。
認知症の早期発見にも有効
予防や治療だけでなく、早期発見にも有効とする研究もあります。
研究は、50歳から75歳の約2万7千人を対象に行われました。
プレイするゲームの内容は、記憶した地図を元に船を操縦し、目的地にたどり着く、というものです。
その結果、ゲームのプレイデータ(スコア)を分析することで認知症(研究ではアルツハイマー型認知症を対象としている)の予兆を発見できる可能性を示唆しています。
認知症の主な症状として記憶力の低下がありますが、この研究は記憶力の低下に限らず、目的地に向かう最短ルートを予測してその通りに行動する能力(ナビゲーション能力)の観点でも、認知症の早期発見に有効な可能性がある、ということです。
純粋に認知機能の改善にも有効
他にも純粋に認知機能の改善にも有効だ、という知見が多くあります。
- ゲームによって依存症になることはほぼない(ついでにゲームによって暴力的になることもない)
- ゲームは認知機能(IQ的なもの)を向上させる
- ゲームはモラルやチームワークなど、社会性を向上させる
上述もしましたが、重要なことは新しい刺激的であり複雑な経験を得ること、と考えられます。
ゲームは非日常的な世界で、新しい複雑なタスクを多くこなす必要があります。
ゲームをプレイする時間が少ない人にとって、それらの経験は非常に刺激的なものになり、脳にポジティブに働く可能性があります。
実際、ボードゲームも脳機能改善に有効だ、とする研究もあります。
いつもと異なる刺激、をポイントに日々の趣味を見直してみるのは良いかもしれません。
運動と認知症リスクの関係は比較的よく知られています。
一方で、お風呂と認知症リスクの関係は、あまり知られていないのではないでしょうか。
ここでは、お風呂と認知症リスクの関係について科学的知見を見ていきます。
お風呂にしっかり入る人は認知症リスクが下がる模様
こちらの研究では、サウナ風呂と認知症リスクの関係について調査が行われています。
被験者は中年の男性約2千人で、サウナ風呂に入る頻度をヒアリングの後、健康の状態について追跡調査が行われました。
その結果、週に2回以上サウナ風呂に入る人は、そうでない人に比較して認知症にかかる確率が約66%も低いことが示されました。
この研究はサウナ風呂が対象ですが、外部要因で身体をあたためることが重要であり、通常の湯に浸かるお風呂でも問題は無いはずです(次項も参照)。
認知症に限らず入浴は健康に良い
実際、認知症に限らず、入浴は健康に良い、ということが多くの研究で示されています。
例えばこちらの研究では、定期的に入浴をすると免疫力が向上することが示されています。
また、この外部から熱を与えられることによる効果は、運動によって得られるものと近しい、という示唆も得られています。
他にも、心臓発作や脳卒中といった重大な疾患のリスクが減らせる可能性。
このような形で、多くの研究が入浴による健康増進効果を報告しています。
適切な入浴は睡眠の質も改善させる
他にも次の記事では、就寝前に次の条件で入浴をすると、睡眠の質が改善するという内容に触れています。
- 就寝時刻の1~2時間前
- 約40~42.5度
忙しい現代人は中々、しっかりと入浴をする時間を確保していない方も多いでしょう。
しかしそれでも、きちんと入浴をし、身体をあたためる、という行為がどれだけ健康増進や生活の質向上に寄与するのか、意識してなんとか生活の中に組み込みたいものです。
運動と認知症リスクの関係は比較的よく知られています。
一方で、空気と認知症リスクの関係は、あまり知られていないのではないでしょうか。
ここでは、空気と認知症リスクの関係について科学的知見を見ていきます。
花粉症と認知症が関係がある???
まずは、花粉症と認知症リスクの関係についての研究です。
こちらの研究では、花粉症の“薬”を長期間に渡って服用すると認知症リスクが高まる、としています(花粉症の薬に限らず、不眠症等の薬も対象)。
3千人以上の65歳以上の高齢者を対象に、服薬履歴と認知症リスクについて追跡調査を行ったところ、長期に渡り服薬をしていた患者は、有意に認知症リスクが高くなることが示されました。
研究チームは、いくつかの薬について代替となる医薬品や治療方法等、別の手段を模索することを提案しています。
間接的にですが、花粉症が認知症リスクを高める可能性について示唆している形になります。
ただ、この話は過剰に心配する必要はないことも研究者たちは補足しています。
現状でわかっていることが少ないという点もそうですし、服薬についても特定の医薬品について長期に渡り多量な投与をされていること、が条件となるためです。
空気が悪いと認知症リスクが高まるのは確からしい模様
一方、こちらの研究では服薬とは関係なしに、空気が悪い(大気汚染の状況が酷い)と認知症リスクが高くなることを示しています。
研究では、65歳以上の女性約3,600人を対象に、居住環境の大気の状況と認知機能の関係について分析が行われました。
研究では、他の要因(経済的要因や社会的要因等々、認知機能に影響を与える様々な要因)を除去する前提で調査されました。
その結果、空気が悪い(大気汚染の状況が酷い)環境に居住している高齢者(女性)は、認知機能に悪影響を受けるリスクが約81%、認知症リスクが約92%高くなることが示されました。
このボリュームは、認知症患者全体の内、約2割が大気の影響を受けている可能性があることも併せて示されています。
空気の良し悪しは、日頃あまり意識をすることはないでしょうが、長期的な健康のみならず、認知機能の観点でも気を使った方が良い可能性が高いです。
近年は感染症の蔓延という背景もありマスクを着用することが当たり前になっていますが、関係無しにマスクは着用した方が良いかもしれませんし、家の中に空気清浄機を設置した方が良いかもしれません。