「悪者探し」はほどほどに~責任追及より原因究明が大事~

マネジメント・リーダーシップ

何か事件や問題が発生すると、責任追及を行いたいという処罰感情が生まれるのが人の心です。
今も、新型コロナウイルスの影響で、一部大学に対する批判や、別の会社での感染デマなど、悪者探し、魔女狩りの様相を呈しています。
ここでは、責任追及と原因究明の両方が大事で、バランスが重要だよ、という話をしていきます。

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忙しい人向けまとめ

  • 何か事件や問題が発生した時に行われるのが、責任追及と原因究明
  • 責任追及はネガティブなイメージがあるが、原因究明に役立ち、組織のモラルや規律維持に役立つ
  • 原因究明の方が比重としては大事で、再発防止につなげなければいけない
  • 責任追及と原因究明の間には矛盾が存在する
  • 責任追及に比重が傾くと、隠ぺいのリスクをはじめ原因究明の妨げになる
  • 原因究明につなげる責任追及のためには心のハードルを下げてあげる必要がある
  • ようは、責任追及と原因究明のどちらも大事で、バランスが重要
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責任追及よりも原因究明がしたいし、現在進行形の話なら問題解決を優先したい

冒頭に書いた通り、先に結論を言うと、責任追及も大事だし、原因究明も大事で、ようはバランスの問題、となります。
まず、一般的な理解と、そこから原因究明、責任追及のそれぞれの重要性を解説します。

責任追及と原因究明の一般的な理解

ビジネスにおけるマネジメントの世界では「責任追及は無意味だ」という考えが基本になっています。
理由としてはシンプルで、あくまでも発生した事件や問題に対して、同じことが起きないよう、再発防止を行いたいからです。
また、発生した事件や問題が現在進行形の場合は、再発防止のための原因究明のための時間も惜しく、まずは問題の対処・解決を図りたいからです。

そのため、一定程度、仕事ができる人は、「責任追及は無意味だ」と考えます。
しかし、この理解は不十分で、あくまでも責任追及と原因究明とのバランスが大事で、比重を原因究明に偏らせるだけ、というのが正確な理解になります。

責任追及にこだわる人がいますが、それは論外なので、いったんこの場では話題にあげません。

原因究明の重要性

原因究明の重要性は言うまでもないでしょう。
発生した事件や問題の再発防止のため、既存施策の改善点の発見や、新しい対策の導入が必要になります。
また、原因と対策に関する情報やノウハウを組織内で共有することにより、同種の事件や問題の発生を防ぐことが望めるようになります。

責任追及の重要性

責任追及はネガティブなイメージがありますが、これも重要です。
重要な理由は次の4点になります。

  • 純粋に原因究明の一助になる
  • モラルの維持・向上
  • 組織不信の防止
  • 最悪の事態におけるリスクヘッジ

純粋に原因究明の一助になる

まず、責任追及が原因究明の助けになりうる、という点です。

責任追及は故意(わざと、意図的)なのか、過失(わかるはずなのに、不注意をした)なのかを明確にできるプロセスです。
この故意なのか過失なのかは、原因究明につながります。

ですので、責任追及自体が原因究明のプロセスの一つである、という点は理解した方が良いでしょう。

モラルの維持・向上

故意や過失に関して調べ、責任の所在が明確になることにより、組織としてのモラルを保つことにつながります。
つまり、適正な処罰が行われることにより、これが抑止力となって再発防止につながる要素にもなります。
過度な責任追及は組織を委縮させますが、免責が過ぎると、逆にモラルの低下にもつながります。

組織不信の防止

例えばですが、何か問題を起こした社員がいて、この方が免責された、不問だったとします。
この社員が社長のお気に入りだった場合、他の従業員から見たら「あいつは社長のお気に入りだから許されたんだ」と受け止められる可能性があります。

別の例を考えて、何か問題を起こした社員がいて、この方が周囲の人たちから好かれていない方だったとします。
この場合、問題を起こした社員の尻ぬぐいを周囲の人たちが行ったと受け止められ、組織内で処罰感情が生まれます。
この時に、問題を起こした社員が免責された、不問であったら、どのように受け止められるでしょうか?

どちらも、一定の処罰を行わないと組織不信につながりかねないのです。

最悪の事態におけるリスクヘッジ

加えて、最悪の事態が起きた場合、会社として従業員に対して損害賠償を請求し、組織としての責任を一部切り離すことにもつながります。

ようは、責任追及は組織統治における重要な機能であり、大事なのは責任追及と原因究明のバランス、さじ加減なのです。
そして、バランスが故に、この2つには悩ましい矛盾が存在します。

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責任追及と原因究明の間に横たわる矛盾

もう一度確認すると、事件や問題が発生した際、一番やりたいのは再発防止、つまり原因究明です。
しかし、責任追及も行われないと何が起きるかというと、組織統治上の問題、モラルの低下や組織不信などが起きえます。

では、責任追及のための調査を行うと何が起きるでしょうか?
それは、再発防止のための原因追及の妨げになりうる可能性がある、ということです。
リソースの問題で、責任追及に重きが置かれると、原因究明の調査に抜け漏れが発生する可能性がありますが、重大な妨げは「隠ぺいのリスク」です。

隠ぺいのリスク

普通の人は、「自分のせいにはされたくない」という感情を持ちます。

責任追及をされると、必要な情報を提供しない、つまり黙秘であったり、ひどい時は責任逃れのために嘘の情報を話す可能性があります。
正直に、正確な情報を話してくれれば原因究明に多いに役立つはずの情報が得られない可能性があるのです。

心のハードルを下げてあげないと、正直に、正確には話をしてくれないのが人間です。
最終的に有効な再発防止につなげるためには、故意や重過失でなければ、それが責任の対象者であっても協力的ならば一定の優遇が必要でしょう。
(これがいわゆる「司法取引」というやつですね。)

ルール(就業規則)の考え方

具体的な処罰のルール(就業規則)の考え方を見てみます。

誰でも過ちはあるので、故意や重過失でなければ、初回は協力の度合いに応じて免責をするような設計が有効です。
就業規則内の罰則規定に関しても、そのポリシーを明記すると良いでしょう。
問題を繰り返した場合に処罰するフローを採用すれば、モラル低下や組織不信を防止することが可能になります。

まとめ

これまで見てきた通り、責任追及も原因究明のどちらも大事であり、あくまでバランスが重要です。

ここ最近を含めた過度な悪者探し、魔女狩りには全く意味がありません。
しかし、「責任追及は無意味だ。」という意見も視点が欠けており、正す必要があります。

状況やタイミングによって、どちらかに偏らざるをえないことはあるかとは思います。
そのような場面においても、責任追及と原因究明の目的や効果を意識し、混同しないようにしましょう。

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