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ビジネスと心理学

高IQの人ほどプレッシャーに弱いし心身も病みやすいという話

高IQの人は認知能力の高さ故、多くのことに対処できる、というような印象を持つかもしれません。
しかし、現実には高IQの人ほどプレッシャーに弱いし、心身も病みやすい、という研究があります。
意図的に考えない、リラックスをする、という取り組みを意識的に行うことが重要です。

高IQの人はプレッシャーに弱い

次に紹介されている研究では、ワーキングメモリーの大きさと、プレッシャーによるパフォーマンスの変化について調査がされています。

シカゴ大学では次のような実験が行われました。

まず、被験者をワーキングメモリーテストの成績に応じて、高ワーキングメモリーグループ(HMV)と低ワーキングメモリーグループ(LMV)の2つのグループに分けます。

そして、低プレッシャー、および高プレッシャーの2つの条件で、簡単な数学の問題、そして複雑な数学の問題を解いてもらいます。

低プレッシャーの条件は、与えた問題を「練習」という位置づけで解いてもらい、高プレッシャーの条件は金銭的報酬や、周囲からの圧力、第三者評価などの現実的に起きうるプレッシャーを想定したものが設定されました。

その結果、高プレッシャー条件において、高ワーキングメモリーグループ(HMV)の方が、低ワーキングメモリーグループ(LMV)よりも、パフォーマンスの低下が顕著であることが示されました。

要求が高い時、HMVの方がパフォーマンス低下が起きやすい、つまり高IQの方がプレッシャーに弱い、ということが言えるのです。

高IQの人は心身を病みやすい

他にも次のような研究があります。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0160289616303324

端的に言うと、高IQの人の方がメンタル面や様々な疾病など、心身を病みやすい傾向があるのです。

これらの現象は、高IQの人は使える脳のリソースが大きいが故に過剰に情報を処理してしまうからだ、と推測されています。

つまり、認知能力の高い人は、考えすぎたり、分析しすぎたりする傾向がある、ということです。

なお、人類のIQは伸び続けている、という報告も存在します。

ミシガン大学のNisbett教授によると、IQの平均は1947年から2002年の間に18上昇しているという。30年で約10上昇している。この現象のことをFlynn effect(フリン効果)と呼ぶ。従って20歳の成人と50歳の成人を同じ知能検査で同じ基準で比較するのは難しい。50歳の成人の30年前に受けた知能検査の平均値は、現在の平均値より10近く低い。スウェーデン・ウメ大学のElijah Armstrongとブリュッセル自由大学のMichael Woodleyによると、一定の出題パターンを見抜く事で容易に解けるようになる問題の方が、パターン把握を認識しにくい問題に比べてフリン効果は顕著だという。

Wikipedia「知能指数」より

ただでさえ忙しい現代人ですが、心身を病んでいる人が増えているのは、上述の理由も考えられます。

意図的に考えない、リラックスをする、という取り組みを意識的に行うことが必要かもしれません。


休憩の取り方については、こちらも参照にしてください。

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仕事と健康,運動

職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる、という話

人は承認を求める生き物で、他者との良好な関係性がないと、心身を適切な状態に保てないものです。
今回紹介する研究によると、職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる、ということが示されています。
どれだけ社会に溶け込んでいるか?が健康リスクに影響を与えるというのです。

職場の状況と健康がどのように関係をするのかが調査された研究

次の記事では、職場の状況と健康がどのように関係をしているのか、を調査した研究が紹介されています。

https://www.apa.org/news/press/releases/2011/05/co-workers

研究では、成人820人を対象都市、1988年から20年間に渡る追跡調査が行われました。

被験者は、金融、保険、公共事業、製造業など、幅広い業界に従事している人たちが対象であり、平均労働時間は8.8時間/日、3分の1が女性で、80%が既婚者で子供がおり、45%が12年以上の正規教育を受けていた人たちでした。

研究では、生活習慣のアンケート、身体測定や血液検査等による健康診断、そして職場の状況についてのアンケートが実施されました。
職場の状況についてのアンケートは、仕事で要求されていること、職場でのコントロールの状況、上司や同僚によるサポートの状況についてが聞かれています。

ここ言う“コントロール”とは、主体性を発揮でき自分のスキルをどのように使うのが最善かを決める機会があった、与えられた仕事をどのように達成するか、仕事の中で何をすべきかを自由に決定できた、という状態について、コントロールがある、としています。

20年間の追跡調査中、53名の被験者が死亡しました。

職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる

上述の調査の結果、職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる、ということが示されました。

職場で、同僚から適切なサポートを受けられる状態にある人は、そうでない人と比較して健康リスクが有意に低かったのです。
この結果は、38歳か43歳までの年齢層で顕著に見られたということです。

ここで言う“適切なサポート”とは、同僚が問題解決に役立ち友好的である状態、のことを示しています。

一方、上司からのサポートについては、健康リスクに影響を与えませんでした。
上から、ではなくて、横のつながりが大切だ、ということなのでしょう。

なお、別の研究によると、男性においては地位や権力が高いと感じていると同様の健康リスクの低減効果があることがわかっています。
逆に女性の場合は、地位や権力、といったパラメータは健康リスクにマイナスの影響があることも示されています。

成功するチームは、メンバー同士が協調しており、またEQが高い

別の研究では、ある種の課題をうまく遂行できるチームは、別の課題についても同じようにうまく遂行できる傾向があること、そのチームの特性として集団的知性(EQ)が高いという特徴があることが示されています。

ここで面白いのが、メンバーにIQが高い人が入っているチームが必ずしも適切に機能するとは限らない、という点です。

高いEQがメンバーの状況を適切に把握し、サポートをする協調関係のベースになることは容易に想像がつきます。
上述の研究とも関連付けられ、適切なサポートがある状況では仕事のストレスが減り、間接的に健康にプラスの影響を与えるのでしょう。

そして、このようなチームを意図的に組成する上において重要な要素として、「行動規範」が存在します。

この成功する「行動規範」としては2つのものがあげられています。

1つ目が「会話のターンテイキング分布の均等性」、つまり、良いチームは、メンバーがほぼ同じ割合で発言していること。
2つ目が「チームの平均的な社会的感受性が高い」こと。

会社や上司は、これらのことを意識すると、チームのパフォーマンスをあげて、またメンバーのウェルネスを向上させることができるはずです。

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仕事と健康,運動

健康のための1日の歩数は1万歩ではなく1日7,000歩から長生きにつながる

健康のためにウォーキングは様々なところで推奨されており、歩数の基準として「1日1万歩」が標準的な数字として頻繁に取り上げられます。
最近の研究では、1万歩以上は健康効果としては横ばいになることがわかっています。
また、必ずしも1万歩を歩く必要はなく、7,000歩からでも高い健康効果が得られることも分かっています。

ウォーキングの歩数と死亡率の関係を調べた研究

ウォーキングと言えば、多くの人が思い浮かべる数字として「1日1万歩」があげられるでしょう。
長年、この1万歩は、健康増進のための基準として用いられてきました。
実際科学的にも、歩数を増やすことが健康増進につながる証拠が多く提示されています。

わかりやすい基準は、人々に対して覚えやすくし、習慣づけをする上で重要であり、便利なものです。

しかし、研究により結果や分析にバラつきがあり、解釈等も微妙にことなります。

次に紹介する論文では、比較的大規模にウォーキングの歩数と死亡率の関係を調べた研究が実施されています。

https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2783711

米マサチューセッツ大学運動学部にて、米国の4つの都市から集められた2,000人以上の中年(平均45歳)の男女(黒人・白人両方を含む)を対象にした研究が行われました。

研究は2005年に開始され、2018年まで定期的な追跡調査が行われました。
2018年時点で72人がなくなっています。

被験者は加速度計を装着し、起きている間の1日の歩数と歩幅が測定されました。

健康効果は1日7,000歩以上が基準で1万歩

この研究の分析の結果、1日の歩数が約7,000歩の人は、歩数が少ない人に比べて死亡するリスクが50%~70%も低いことがわかりました。
この結果は、黒人と白人の中高年男女で同じものでした。

なお、歩く速度(歩数強度)は死亡率には影響しないこともわかりました。

一方で、1万歩以上歩いたとしても死亡率のさらなる低減にはつながらない、という結果も示されました。

このグラフの縦軸は対数であることに注意して見てください。

歩数が増えるごとに死亡率は低減していき、概ね7,000歩から効率は低下、1万歩からはほぼ横ばい、という結果になっています。

歩数が増えれば健康増進の効果があることは従前から知られていましたが、この研究により1つの基準値として7,000歩という数字が新たに提案された形です。
1万歩を達成できなかったとしても、悔やむ必要は全くない、ということがわかります。

短い時間でも良いので歩こう

ウォーキングは認知症予防にもなる、という研究もあります。

その基準は1週間で12Kmです。

高齢者を基準に1Km2,000歩と考えた場合、必要な1日の歩数は約3,500歩です。

上述の図では、短い歩数でも、歩けば歩くほど健康増進効果が高まっていくことが示されています。

短い時間でも良いので、歩く習慣を身につけると良いでしょう。

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仕事と健康,運動

冷たいシャワーを浴びるとメンタルヘルスの改善につながる可能性

冷たいシャワーを浴びることによる健康増進の効果や、認知機能向上の効果が知られています。
その他にもメンタルヘルスの改善についても報告をする研究があります。
霊長類が数百万年の進化の過程で経験してきた体温の一時的な変化(寒中水泳など)などの生理的なストレス要因を欠いた生活が脳の機能不全を引き起こしている可能性がある、とのことです。

冷たいシャワーを浴びることにより何故、心身にプラスの影響が出るのか?

冷たいシャワーを浴びると様々なポジティブな効果があります。

例えば、健康増進の効果であったり、認知機能の向上効果であったり、です。

それではなぜ、冷たいシャワーを浴びると心身にプラスの影響が出るのでしょうか?

ホルモンの観点では次のような説明があります。

人は冷たいシャワーを浴びると交感神経系が刺激され活性化します。
それにより、ノルアドレナリンというホルモンが放出され、これにより心拍数や血圧の上昇が起き、血流の改善につながり健康増進効果が出る、ということです。
脳内でもノルアドレナリンのシナプス放出が増加することが知られています。

他にも、新陳代謝の活発化により、健康や認識機能へのポジティブな影響が出る、という説明もあります。

次の研究では進化学的な観点で、この問いへの仮設を検証しています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17993252/

その仮説とは、霊長類が数百万年の進化の過程で経験してきた体温の一時的な変化(寒中水泳など)などの生理的なストレス要因を欠いた生活をしており、このような「熱運動」の不足が脳の機能不全を引き起こしているのではないか、というものです。

他にも、人によりこの状態がより顕著に出る遺伝的な構造を持っている場合も有り得る、としています。

つまり、現代社会の自然から受けるストレスが減少し、それがかえって脳にとってのストレスになっている可能性がある、ということです。

冷たいシャワーを浴びるとメンタルヘルスが改善する可能性の実験

上述の実験では、1日1~2回、冷水シャワー(20℃、2~3分、その前に5分間の段階的適応を行い、ショックを和らげる)を浴びることを数週間から数か月間実施し、メンタルヘルスに与える影響を見ています。

そして、実験の結果として、冷たいシャワーにより抑うつ症状を緩和することが示されました。

なお研究者は、仮設の検証のためには、より幅広い分野での厳密な研究が必要である、としています。

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生産性・業務効率化

冷たいシャワーを浴びると認知機能が向上する可能性がある模様

暖かいお風呂に入ることの効能は様々に知られており、認知症の予防や、睡眠の質の改善など、多岐にわたります。
冷たいシャワーを浴びることについても健康効果が知られており、病気になるリスクが減るという研究報告が出ています。
更に、冷たいシャワーを浴びると認知機能が向上する可能性についても報告がされています。

冷たいシャワーと認知機能の関係を調べる実験

ドイツの高齢者施設にて、冷たいシャワーと認知機能の関係を調べる実験が行われました。
皮膚刺激が認知機能に与える影響を、健康な老人ボランティアを対象に行われた形です。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10378499/

実験では24名の被験者(男性1名、女性23名)を無作為に2つのグループに分け行われました。

実験群では10秒間、10度から12度の冷たいシャワーを浴びた後に、首筋に10度から12度のウェットバックを利用した刺激が1分間与えられました。

対照群は、同様の手順と時間ですが、34度から36度の温水と中間程度の温度で実験が行われました。

認知機能の測定には脳電位の測定により行われました(認知機能が関係すると考えられている脳波が計測されました)。

冷水刺激は認知機能を向上させる

実験の結果、冷水刺激により認知機能が有意に変化する結果が示されました。

冷水刺激を与えた後、CFFは刺激の10分後に32.55+/-2.26/秒(mean+/-SD)から33.06+/-2.25/秒(p = 0.003)に上昇した。30分後のCFFは32.95+-2.3秒(p=0.043)とまだ上昇していた。冷水をかけた後のP-300潜伏時間は、266.5+/-21.1msec(平均+/-SD)から253.7+/-16.9msecへと4.8%減少した(p < 0.001)。温かい刺激を与えた後は、258.69+/-14.8msecから266.17+/-20.1msecへと増加した(p = 0.01)。P-300の振幅は、寒冷刺激後にのみ5%(p=0.004)の有意な上昇を示した。

この実験は少数の高齢者を対象としたものであり、実際の効果の程や若年層に効果あるのか等、不明な点は多々あります。

ただ、健康効果の存在も併せて考えると、冷水シャワーの有用性が推測されます。

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仕事と健康,運動

冷たいシャワーを浴びると病気になるリスクが減る可能性

暖かいお風呂に入ることの効能は様々に知られており、認知症の予防や、睡眠の質の改善など、多岐にわたります。
一方で、冷たいシャワーを浴びることによる健康効果もあるようで、病気になるリスクが減る可能性も報告されています。
ある研究では、温かいシャワーを浴びた後に冷たいシャワーを浴びると、病欠率が29%減少したそうです。

温かいシャワーを浴びた後に冷たいシャワーを浴びる実験

オランダで行われた実験では、18歳から65歳までの3,018人の被験者が参加しました。

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0161749

実験では、30日間連続で30秒、60秒、90秒の(温→冷)シャワーを浴びる群と対照群に無作為に(1:1:1)割り当てられ、その後、介入群は60日間、自分の判断で冷たいシャワーを浴びることとなりました。

実験での評価項目は、何かしらの病気にかかる日数と、それによる病欠日数であり、副次的にODL(生活の質)、仕事の生産性、不安、温熱感等が測定されました。

実験は、介入群の79%が一連のフローを完了しました。

冷たいシャワーは病気のリスクを低減させる可能性

上述の実験の結果、対照群と比較して、(温水-冷水)シャワー効果により病気欠勤が29%も減少したことが示されました。

参加者はいずれも重度の併存疾患がなく、他の疾患の影響の可能性が低いこともあり、冷たいシャワーの健康効果が確認された形になります。

冷たいシャワーを浴びる時間は30秒・60秒・90秒の3段階で設定されていましたが、冷たいシャワーを浴びる時間は実験結果に影響しませんでした。

仕事の生産性にも直接的な影響を与えていませんが、病欠が減る、という形で間接的に生産性を高めています。

冷水シャワーが具体的にどのような機序でもって健康効果をもたらすのか、またプラシーボ効果でない可能性が排除できていないことなどがありますが、健康にプラスの効果があることが実験で明確に示されました。

なお、この実験に参加した被験者のうち、約91%が冷水シャワーを「続ける」と答えているそうです。

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仕事と健康,運動

劇場や美術館などに行く芸術に楽しむ人は長期的な死亡リスクが低い模様

イギリスの50代以上の7,000人以上を対象とした、余暇の使い方の調査で、美術館、博物館、コーンサートなどに定期的に行く人は寿命が長い傾向があることがわかっています。
あくまでも相関性が強い話であり、因果関係を説明したものではないのですが、芸術活動が精神的・肉体的な健康を増進させる可能性があります。

月に一度は劇場や美術館に行くと早死にのリスクが抑えられる

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームは、50歳以上の約7,000人を対象に、12年間に渡る追跡調査を行いました。

https://www.dailymail.co.uk/health/article-7802547/Want-live-longer-theatre-trip-month-cuts-risk-death-30.html

研究では2004年から2005年に開始され、オペラ鑑賞を含む芸術活動の頻度が測定されました。

参加者は平均12年間に渡り追跡調査され、6,710人の参加者の内、3分の1にあたる2,001人が死亡しました。

その結果、数ヶ月に1度、何かしらの芸術活動を行う被験者は、研究終了時までの死亡率が約14%低かったこと、また美術館や劇場、アートギャラリーなどを月1回以上の頻度で訪れている被験者は死亡率が約31%低いことが示されました。

メンタル面での改善や身体活動の促進を考慮しても関連性がある模様

この話は観察研究であり、定期的に劇場に足を運ぶことが健康リスクの低減につながる直接の証明であることの説明はできません。

また、美術館等に足を運ぶことがメンタル面での改善や身体活動の促進につながることも考えられます。

しかし研究者たちは分析の結果として、メンタル面での改善や身体活動の促進を考慮しても、芸術活動と健康の関連性が残っていると説明しています。


この種の研究は非常に少なく更なる研究が望まれるものではあります。
芸術活動という比較的容易に取り組めることで健康上の利点を得られるのであれば、それは非常に素晴らしいことと言えます。

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仕事と健康,運動

昼寝を頻繁にする人は若くして亡くなる傾向がある模様

睡眠は人の健康に非常に重要なものです。
しかしながら、昼寝を頻繁にする人は、そうでない人よりも若くして亡くなる傾向がある、という研究もあります。
これは因果関係を示すものではなく、疲労や疾病が要因と考えられますが、健康を害するサインであるとは言えます。

睡眠不足は身心に多大な悪影響を与える

睡眠不足が身心に多大な悪影響を与えることは広く一般的に知られており、公衆衛生上の課題であると考えられています。

悪影響とは、身体へのダメージ不安の増大生産性の低下認知症リスクの増大、と言った物があげられます。

他にも、先延ばし行動の増加リスクのある判断をポジティブに歪める、というようなあまり知られていない悪影響も存在します。

そのため日々の睡眠不足を補うため、仮眠、例えば昼寝をする、というような行動が推奨されています。

しかしながら、昼寝を頻繁にする人は若くして亡くなる傾向がある、という研究が存在します。

昼寝を頻繁にする人は若くして亡くなる傾向がある模様

ケンブリッジ大学の研究では、昼間に1時間以上の昼寝を頻繁に取る人は、そうでない人に比べて若くして亡くなる傾向があることが示されています。

https://www.smithsonianmag.com/smart-news/consistently-needing-take-long-mid-day-naps-might-be-indicative-underlying-health-problem-180951071/

この研究では40歳から79歳までのイギリス人男性約1万6千人を対象に、13年間に渡る追跡調査が行われました。

その結果、1日に1時間以上の昼寝をする人、1日に1時間未満しか昼寝をしない弘、まったく昼寝をしない人の3グループに分類され、この内、1日に1時間以上の昼寝をする人は、そうでない人に比べて死亡率が32%も高かったことがわかりました。
死亡要因は様々に存在しますが、心臓病やがん、呼吸器系疾患などが含まれていました。
研究では、性別や社会経済的地位、アルコール、うつ病などの精神疾患などについても考慮されています。

おそらく昼寝そのものが問題ではない

この研究は、因果関係を示すものではなく、あくまでも相関性を示すものです。

そして研究者も、おそらく昼寝そのものが問題なのではなく、疲労や、疲労の原因となる基礎的な健康状態が関連しているのでは、としています。

つまり、日中に過度な疲労を覚え、睡眠を欲する、というような状況は健康を害しているサインである可能性があるのです。

忙しい現代社会において、十分な時間と質の睡眠をとるのは難しいことかもしれません。
しかし、長い時間、眠気を覚えているという人は、身心の疲労の原因を追究し、解消するための取り組みを行った方が長期的な健康のためにも良いと言えるでしょう。

言うは易しですが。

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仕事と健康,運動

睡眠不足は身心に悪影響を与えるのみならず肥満や歳をとった時の体力にも悪影響を与える

睡眠不足がパフォーマンス、つまりは生産性に悪影響を与える、ということは非常に知られています。
そして、生産性に悪影響を与えるだけでなく身心にダメージを与え、幸福を感じにくくなってしまうこと、また肥満や歳をとった時の体力にもマイナスの影響を与えることが研究でわかっています。

睡眠不足は身心に悪影響を与える

米・サウスフロリダ大学の研究で、わずか1日だけでも睡眠不足になると身心に悪影響を与える、ということが示されています。

https://academic.oup.com/abm/advance-article-abstract/doi/10.1093/abm/kaab055/6314765?redirectedFrom=fulltext

研究では約2,000人の中年を対象に、8日間の睡眠時間や感情、生活行動等についてデータを収集し、分析がされました。
その結果、睡眠時間が6時間を下回った人において、有意にネガティブな感情(怒り、いらだち、神経質、フラストレーション、神経質等)が増加したことがわかりました。
また、ネガティブな感情のみならず、胃腸や呼吸器等、健康上の悪影響も増加したことがわかりました。

この悪影響は睡眠不足が続くと悪化を続け、3日目でいったん落ち着くものの、6日目で更に悪化する事も示されました。

この悪影響から逃れるためには十分な睡眠が必要である、としています。

睡眠不足は幸福度を下げる

カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究では、睡眠不足がポジティブな出来事からうける幸福な感情が低下し、ネガティブな感情が増加すること、つまりは幸福度が下がることが示されました。

https://doi.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fhea0001033

研究は、約2,000人の中高年を対象に行われ、8日間の睡眠時間、ポジティブもしくはネガティブな出来事、その出来事から感じた感情等についてインタビュー調査が行われました。

その結果、睡眠不足になると、ポジティブな出来事からうける幸福な感情の増加幅が低下すること、逆にネガティブな出来事からうける幸福な感情の減少幅が増加することがわかりました。

一方で、十分な睡眠をとっている被験者は、ポジティブな出来事からうける幸福な感情の増加幅が増加すること、ネガティブな出来事からうける幸福な感情の減少幅が低下することもわかりました。

研究者は、睡眠が与える身心への影響のみならず、人生の幸福にも影響をしていることを指摘しています。

睡眠不足は肥満につながる可能性

さらに、睡眠不足が肥満につながる可能性についても指摘されています。

フランス・国立衛生医学研究所の研究では、睡眠不足が肥満と関連があることが示されています。

https://www.afpbb.com/articles/-/2375648

研究では、睡眠不足の状態になると、食欲抑制ホルモンであるレプチンが体内で18%減少すること、一方で食欲増進ホルモンであるグレリンが28%増加することが示されました。

この睡眠不足が言う睡眠の時間は、1日4時間睡眠を2日間繰り返した場合、とのことですが、現代人の睡眠状況では珍しくないかもしれません。

他の研究でも、睡眠時間が短い人は肥満傾向があることが示されており、肥満と言う観点でも、長期的な身体への悪影響が推測されます。

睡眠不足は将来、介護施設に行くリスクを高める可能性

そして、睡眠不足は将来、介護施設に行くリスクを高める可能性があることが示されました。

この研究では、平均年齢83歳の高齢女性約1,600人を対象に、ウェアラブルデバイスによる3日間の行動データが取得され、そして追跡調査により5年後の介護施設への入居状況が調査されました。

https://cakehealth.com/2865-sleep-disturbance-nursing-homes.html

その結果、睡眠時間が短い女性(夜間に起きている時間が長かった女性)は、有意に介護施設に入居する割合が高かったことが示されました。

この結果は、認知症との関連も考えられるため、睡眠不足と介護施設に行くリスクが直接的に結びついているとは限りません。
また、高齢者が眠らない、ということが周囲の介護者のストレスを増大させ、介護施設に入居させるインセンティブが高まる、という可能性も考えられます。

しかし、睡眠不足が身心に悪影響を与える、ということを考えると、長期的な身体機能や認知機能の低下を招き、介護施設に行くリスクを高める可能性は十分にあると言えます。


現代人は、睡眠を十分にとれる環境の確保が難しいのは確かなことでしょう。

しかし、これだけの悪影響があることを踏まえれば、如何に睡眠時間を確保するのか?は重大な検討事項であるのは間違いがないでしょう。

自分自身の人生を大事にするのであれば、良質な睡眠を十分な時間、取れるよう、最大限の工夫をすべきと言えます。

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仕事と健康,運動

【若い内からの認知症予防】お風呂と認知症リスクの関係

運動と認知症リスクの関係は比較的よく知られています。
一方で、お風呂と認知症リスクの関係は、あまり知られていないのではないでしょうか。
ここでは、お風呂と認知症リスクの関係について科学的知見を見ていきます。

お風呂にしっかり入る人は認知症リスクが下がる模様

こちらの研究では、サウナ風呂と認知症リスクの関係について調査が行われています。

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/12/161216114143.htm

被験者は中年の男性約2千人で、サウナ風呂に入る頻度をヒアリングの後、健康の状態について追跡調査が行われました。

その結果、週に2回以上サウナ風呂に入る人は、そうでない人に比較して認知症にかかる確率が約66%も低いことが示されました。

この研究はサウナ風呂が対象ですが、外部要因で身体をあたためることが重要であり、通常の湯に浸かるお風呂でも問題は無いはずです(次項も参照)。

認知症に限らず入浴は健康に良い

実際、認知症に限らず、入浴は健康に良い、ということが多くの研究で示されています。

例えばこちらの研究では、定期的に入浴をすると免疫力が向上することが示されています。
また、この外部から熱を与えられることによる効果は、運動によって得られるものと近しい、という示唆も得られています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21818123/

他にも、心臓発作や脳卒中といった重大な疾患のリスクが減らせる可能性

https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2130724

高血圧にも効果があるという示唆

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27270841/

このような形で、多くの研究が入浴による健康増進効果を報告しています。

適切な入浴は睡眠の質も改善させる

他にも次の記事では、就寝前に次の条件で入浴をすると、睡眠の質が改善するという内容に触れています。

  • 就寝時刻の1~2時間前
  • 約40~42.5度

忙しい現代人は中々、しっかりと入浴をする時間を確保していない方も多いでしょう。
しかしそれでも、きちんと入浴をし、身体をあたためる、という行為がどれだけ健康増進や生活の質向上に寄与するのか、意識してなんとか生活の中に組み込みたいものです。

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